(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6723218
(24)【登録日】2020年6月25日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】ブレーキ・ディスクから離れるようパッドを移動させるデバイスを備えたアッセンブリ
(51)【国際特許分類】
F16D 55/228 20060101AFI20200706BHJP
F16D 65/02 20060101ALI20200706BHJP
F16D 65/092 20060101ALI20200706BHJP
F16D 65/097 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
F16D55/228
F16D65/02 B
F16D65/092 D
F16D65/097 E
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-502688(P2017-502688)
(86)(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公表番号】特表2017-521616(P2017-521616A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】IB2015055374
(87)【国際公開番号】WO2016009375
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2018年6月15日
(31)【優先権主張番号】BG2014A000026
(32)【優先日】2014年7月16日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】501016696
【氏名又は名称】フレニ・ブレンボ エス・ピー・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100138874
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト・プレヴィターリ
(72)【発明者】
【氏名】アリスティデ・ヴェネツィアーノ
【審査官】
的場 眞夢
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−108631(JP,U)
【文献】
実開平01−098329(JP,U)
【文献】
実開平01−124435(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリパ本体(12)を有するディスク・ブレーキ・キャリパ(2)と、ディスク・ブレーキ・パッド(3)と、ブレーキ・ディスク(5)からパッドを後退させる少なくとも1つのパッド後退デバイス(4)と、からなるアッセンブリ(1)であって、
パッド後退デバイス(4)は、ブレーキ・ディスク(5)の対向する制動面(6、7)の一方から上記パッドを後退させるのに適しており、
上記パッド(3)は、
− 制動面(6、7)に当接して、制動アクションを及ぼすのに適した摩擦材(8)と、
− 摩擦材(8)を支持し、かつキャリパ本体(12)に受け入れられた少なくとも1つのスラスト・デバイス(10)からスラストを受けるのに適している、支持板(9)と、を有しており、
上記支持板(9)は、プレート開口(13)を規定するプレート部分(14)を備え、当該プレート開口(13)は、キャリパ本体(12)の方を向くとともに、支持板(9)内に少なくとも部分的に設けられたプレート・シート(15)へのアクセスを可能とし、
上記パッド後退デバイス(4)は、各スラスト・デバイス(10)から分離されており、
上記パッド後退デバイス(4)は、
− キャリパ本体(12)に一体的に固定された少なくとも1つのガイド・ピン(11)を備えていて、
− 当該ガイド・ピン(11)は、キャリパ本体(12)からの片持ち梁の態様で突出するとともに、そのピン端部分(16)をプレート・シート(15)内に位置させた状態でプレート開口(13)内に受け入れられ、以下のことを特徴とする、
すなわち、
パッド後退デバイス(4)は、プレート部分(14)を跨ぐように配置されたキャリッジ(17)を備え、当該キャリッジ(17)は、プレート部分(14)に関して、キャリパ本体(12)の方を向く第1キャリッジ部分(18)と、摩擦材(8)およびブレーキ・ディスク(5)の少なくとも一方の方を向く第2キャリッジ部分(19)とを有していて、
パッド後退デバイス(4)は、さらに、キャリッジ(17)とガイド・ピン(11)との間に所定の干渉力をもって組み込まれたキャリッジ・ガイド(20)を備えていて、それにより、キャリッジ(17)が、上記所定の干渉力を超えるアクションが作用したときにガイド・ピン(11)に沿ってスライドすることが可能となり、
パッド後退デバイス(4)は、第2キャリッジ部分(19)とプレート部分(14)との間に配置された弾性デバイス(21)をさらに備えており、当該弾性デバイス(21)は、キャリッジ・ガイド(20)およびガイド・ピン(11)によって決まる上記所定の干渉力よりも小さい程度の弾性アクションが可能な弾性特性を有していて、支持板(9)に力を加えて第2キャリッジ部分(19)から遠ざかるように移動させ、そのとき、第2キャリッジ部分(19)は、ガイド・ピン(11)と一体のままであって、したがって所定距離だけブレーキ・ディスク(5)から離れていることを特徴とする、アッセンブリ(1)。
【請求項2】
請求項1記載のアッセンブリ(1)であって、下記(i)〜(iii)の少なくとも1つが満足される、アッセンブリ(1)。
(i)
ガイド・ピン(11)は、ネジが切られたピン部分(22)を備えていて、当該ピン部分(22)は、キャリパ本体(12)内に設けられたネジ孔(23)にしっかりとネジ留めされていて、
ネジ孔(23)は、貫通孔であって、キャリパ本体(12)の表面をパッド(3)に向けて、キャリパ本体内に設けられた軽量化チャンバまたは区画(25)と連通している。
(ii)
ガイド・ピン(11)は、ブレーキ・ディスク(5)に近づいたり遠ざかったりするパッド(3)のスライド方向と平行な方向に、キャリパ本体から片持ち梁の態様で突出するガイド・ステム(24)を備えて、これによって、キャリパ本体と一体的な支持部を与えており、当該支持部は、制動アクションの終わりにおいてスラスト・デバイス(10)によるより大きなスラスト・アクションが無い場合には、キャリッジ・ガイド(20)による上記所定の干渉力によってキャリッジ(17)をステムに係止するものであり、
ガイド・ステム(24)は自由端部(26)を備え、当該自由端部(26)は、操作手段のための係合手段(27)を備え、それは、ネジ回し又はネジ回し工具のためのキーである。
(iii)
弾性デバイス(21)の上記弾性アクションは、キャリッジ・ガイド(20)によりガイド・ピン(11)上に作用する干渉アクションよりも小さな所定の範囲内にある。
【請求項3】
請求項1記載のアッセンブリ(1)であって、下記(i)または(ii)のいずれか1つが満足される、アッセンブリ(1)。
(i)
プレート部分(14)は、支持板(9)の本体の中央に配置された部分であって、囲まれた開口端(14)を形成しており、当該開口端(14)は、開口(14)の全周を包囲する環状のアンダーカット表面を形成し、キャリパ本体に対して弾性デバイス(21)を支持していて、
プレート・シート(15)は、ピン端部(16)およびキャリッジ(17)の全周を包囲する区画を構成して、第2キャリッジ部分(19)が支持板(9)または摩擦材(8)と直接干渉するのを回避するとともに、制動の初期段階において、パッド(3)を摩擦面(6、7)に当接させつつ、それらがキャリッジ(17)に対してスライドすることを防止する。
(ii)
プレート部分(14)は、支持板(9)の本体の側部または縁部であって、囲まれていない開口端(14)を形成しており、当該開口端(14)は、開口(14)の全周を包囲することを避けるアンダーカット表面を形成し、キャリパ本体に対して弾性デバイス(21)を支持していて、
プレート・シート(15)は、ピン端部(16)およびキャリッジ(17)の全周を包囲することのない区画を構成して、第2キャリッジ部分(19)が支持板(9)または摩擦材(8)と直接干渉するのを回避するとともに、制動の初期段階において、パッド(3)を摩擦面(6、7)に当接させつつ、それらがキャリッジ(17)に対してスライドすることを防止する。
【請求項4】
請求項1記載のアッセンブリ(1)であって、下記(i)または(ii)のいずれか1つが満足される、アッセンブリ(1)。
(i)
キャリッジ(17)は、単一ピース、または一体的に作られた複数のパーツから構成されたキャリッジ本体を有していて、それらが相互に分離するのを回避しており、キャリッジ(17)は、上記開口(13)を定めるプレート部分(14)を跨ぐように配置されており、
キャリッジ(17)は、C形状のキャリッジ本体を有していて、側方ブリッジによって、第1および第2のキャリッジ部分(18、19)が連結されており、
第1および第2のキャリッジ部分(18、19)は、ガイド・ピン(11)の一部を受け入れるのに適した貫通孔を有している。
(ii)
キャリッジ(17)は、互いに連結された少なくとも2つのピース、または複数の個別パーツで構成されるキャリッジ本体を有していて、上記開口(13)を定めるプレート部分(14)を跨いで配置され、当該開口(13)の中央を通過しており、
キャリッジ(17)は、第1および第2のキャリッジ部(18、19)が管状の中央ブリッジによって接続されてなる管状のキャリッジ本体を有しており、当該キャリッジ本体は、ガイド・ピン(11)の一部を受け入れるのに適しており、
弾性デバイス(21)は、上記管状の中央ブリッジ上にフィットしており、
第2キャリッジ部分(19)は、ネジ付き部分で終了していると共に第1キャリッジ部分(18)に接続されている中央ブリッジと一体に構成され、そのネジ付き貫通孔を上記ネジ付き部分に係合させている。
【請求項5】
請求項1記載のアッセンブリ(1)であって、下記(i)または(ii)の少なくとも1つが満足される、アッセンブリ(1)。
(i)
キャリッジ・ガイド(20)は弾性リングを備え、当該弾性リングは、キャリッジ内に設けたシートに受け入れられるとともに、ガイド・ピン(11)上に所定の干渉力をもってフィットしおり、それにより、弾性デバイス21のパッキングを通してキャリッジ17に作用するスラスト・アクションが所定値を超えただけで、弾性リングはガイド・ピン上をスライドする。
(ii)
キャリッジ・ガイド20は、少なくとも1つのOリングを備えている。
【請求項6】
請求項1記載のアッセンブリ(1)であって、下記(i)〜(iii)のいずれか1つが満足される、アッセンブリ(1)。
(i)
弾性デバイス(21)はスプリングを備えており、当該スプリングは、螺旋形スプリングであって、ガイド・ピン11上にフィットしている。
(ii)
弾性デバイス(21)はスプリングを備えており、当該スプリングは、カップ状、円錐リング状、または円錐ブッシュ形状のスプリングであって、ガイド・ピン(11)上にフィットしている。
(iii)
弾性デバイス(21)はスプリングを備えており、当該スプリングは、エラストマー材料からなるスプリングであって、ガイド・ピン(11)上にフィットしている。
【請求項7】
請求項1記載のアッセンブリ(1)であって、
上記キャリパは固定キャリパ本体を備えたキャリパであって、当該キャリパ本体は、少なくとも1つのスラスト・デバイス(10)を備えており、当該スラスト・デバイス(10)の対向する両サイドは、当該キャリパがブレーキ・ディスク(5)を跨ぐように配置されたとき、対向する制動面(6、7)と向き合うように配置されている、アッセンブリ(1)。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のアッセンブリ(1)であって、
少なくとも2つの分離したパッド後退デバイス(4)が設けられていて、そのうちの少なくとも1つは、対向するパッド(3)のそれぞれに対して機能する、アッセンブリ(1)。
【請求項9】
ディスク・ブレーキ・パッド(3)をブレーキ・ディスク(5)から離れるように移動させる方法であって、
− 請求項1で特定されるアッセンブリを用意する行程と、
− 制動動作の間に、スラスト・デバイス(10)によるスラスト・アクションが弾性デバイス(21)による弾性アクションを超え、したがって弾性デバイスをパッキングするとき、およびスラスト・デバイス(10)によるスラスト・アクションが、キャリッジ・ガイド20によってガイド・ピン(11)上に作用する干渉アクションを超えるとき、キャリッジ17をスライドさせる行程と、
− スラスト・デバイス(10)によるスラスト・アクションが終わるとき、弾性デバイス(21)の弾性アクションによって、パッド(3)を所定のストロークで後退させる行程と、を含む方法。
【請求項10】
各パッドが他のパッドから独立して後退させられる、請求項9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ブレーキ・ディスクから離れるようパッドを移動させるデバイスを備えたアッセンブリに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、ブレーキ・ディスクを跨ぐよう配置されると共にパッドを収容するキャリパ本体を備えたディスク・ブレーキ・キャリパ・アッセンブリに関する。パッドは、キャリパ本体に収容されたスラスト手段で付勢されたとき、ブレーキ・ディスクの対向する制動面に当接して、ブレーキング・アクションを作用させるものである。
【0003】
知られているように、車両のブレーキング・アクションが一旦終了すると、ブレーキング・システムは、スラスト・デバイスによるスラストの発生を停止する。スラスト・デバイスは、通常は、サスペンションに固定されたキャリパ本体内に設けたシリンダに収容されたピストンであって、回転するホイール・ハブに固定されたブレーキ・ディスクを跨ぐように配置されている。スラストが終了したとき、パッドは、必ずしも、ディスクの制動面から離れるよう移動するものではない。さらに、ディスクの回転により、および製造上の公差により、あるいはブレーキの使用に起因した変形により、パッドは制動面への接触を続け、残余制動トルクが発生する。その結果、ノイズ、望まれない燃料消費、性能の低下、および他の欠点につながる。
【背景技術】
【0004】
この問題を回避するために、例えば、ピストンとシリンダの間に設けたガスケットの弾性回復によってピストンを僅かにロールバックさせることが提案されている。また、スプリングを設けて、パッドをブレーキ・ディスクから離れる方向へ付勢し、不用意な接触および残余制動トルクの発生を回避することも知られている。
【0005】
しかしながら、これらの知られているスプリングは、解決できない欠点を有する。パッドの摩擦材の摩耗が進行すると、スプリングによって負荷される応力が増加し、したがって、ピストンに作用する負荷が増加する。その結果、パッドにスラストが作用することで次のようなリスクが生じる。すなわち、スプリングがピストンをロールバックすることも可能となるので、この過剰なストロークを遅れ(あるいは、ブレーキング・システムの望まない不能)と認識したユーザからのコマンドに応じて、ピストンの望まれないストロークが生じて、パッドを再度ディスクの制動面に押し付けることとなる。
【0006】
したがって、命令に基づくブレーキング・アクションが終わったら、ブレーキ・ディスクの制動面から所定の量だけパッドを引き戻すことが可能なデバイスが、強く望まれている。
【0007】
同時に、強く望まれる対照的な要求として、次のものがある。すなわち、パッドを依然としてそのシート(seat)内にある程度まで維持して、パッド領域において(とりわけ、ブレーキングのために予め定められ、かつ最適である制動面において)、ピストンのスラスト・アクションが常に生じることを確実としたい。
【0008】
十分にその問題を理解するために、制動面からのパッドの望ましい引戻しをどのようにして最少とするのかを考慮しなければならない。何故なら、パッドをできるだけディスクに近接した状態とし、車両のユーザ(時に、競技で車両を使用するレーシングドライバー)がブレーキが非常に緩い(あるいは柔らかい)と感じるのを防ぐ、という要求を同時に満たす必要があるからである。何故なら、ピストンによってパッドに必要なスラストを作用させて、パッドを制動面に押し付ける前に、残余トルクを回避するために生じさせたパッドのクリアランスおよびピストンのロールバックを回復させることが必要となるからである。
【0009】
したがって、ブレーキング・アクションの終わりにおいて、ブレーキ・ディスクからパッドを引き離し、しかもそれと同時に、過剰に離れてしまうのを防止する、という対照的な要求を同時に満たす必要がある。これによって、ユーザからのコマンドに対してブレーキングをあまり敏感ではなくする。
【0010】
これらの対照的な要求を満たすために、ブレーキ・ディスクからパッドを引き離すシステムに加えて、ブレーキング・アクションの終わりにピストンを後退させた後におけるますます正確なロールバック・システムが提案されてきた。
【0011】
このタイプの解決策は、浮遊ボディを備えたブレーキにおいて知られている。それは例えば、US2551252、US3618714、US3500966、US2830680、US2948356、US3613849、US4345674において知られている。さらに、例えばEP2314895に示されたような固定ボデイを備えたキャリパにおいて知られている。
【0012】
しかしながら、構成および維持が簡単であって、しかも先行する設計において知られているキャリパ本体に使用するのに適したアッセンブリを得るにあたって生じる多くの問題は、これら知られている解決策では、どのようにしても解決することはできない。その問題は、構造および適用の簡単さ、ブレーキ・ディスクからのパッド引戻しの正確さを維持しながら、本発明を既存のブレーキに適用して、ブレーキング・アクションが終わったとき、ピストンおよびそのロールバック・デバイスに影響を与えることがないようにするにあたって、生じるものである。それは、とりわけ、スポーツ用途のためのブレーキのような実質的な用途、例えば、ブレーキ・ディスクの両サイドに配置されたピストンを備えた固定ブレーキ・キャリパのためである。
【発明の概要】
【0013】
したがって、本発明の目的は、従来技術における上述した欠点を克服できるとともに、上述した要求を達成できるアッセンブリを提供することである。
【0014】
これらおよび他の目的は、請求項9に記載した方法により、そして請求項1に記載したアッセンブリによって達成される。幾つかの有利な実施形態は、従属請求項の対象となっている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明に係るアッセンブリのさらなる特性および利点は、以下の好適な実施形態からより明らかになるだろう。それらは、添付の図を参照しつつ、非限定的な説明として与えられている。
【
図1】ブレーキ・ディスクを跨ぐように配置されたディスク・ブレーキ用キャリパッセンブリの斜視図。
【
図2】別の実施形態のディスク・ブレーキ・キャリパの正接方向断面。異なる2つの実施形態に従って、ブレーキ・パッドをブレーキ・ディスクから後退させる(あるいは、引き離す)ための2つのデバイスを示している。
【
図3】
図2のIII−III線断面図。第1実施形態に従いパッドをブレーキ・ディスクから後退させるデバイスの詳細を示している。
【
図4】
図2のIV−IV線断面図。第2実施形態に従いパッドをブレーキ・ディスクから後退させるデバイスの詳細を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記図面を参照し、そして一般的な実施形態にしたがって、アッセンブリ1は、キャリパ本体12を有するディスク・ブレーキ・キャリパ2と、ディスク・ブレーキ・パッド3と、少なくとも1つのパッド後退デバイスと、を備える。パッド後退デバイスは、ブレーキ・ディスク5からパッドを後退させるもので、ブレーキ・ディスク5の対向する制動面6、7の一方から当該パッドを後退させる(引っ込ませる)のに適している。
【0017】
パッド3は、次のものを備える。
−制動面6または7に当接し、かつ制動力を及ぼすのに適切な摩擦材8。
−摩擦材8を支持し、かつキャリパ本体12内に保持された少なくとも1つのスラスト・デバイス10から推進力を受けるのに適切な支持板9。
【0018】
支持板9は、プレート部分14を備える。プレート部分14は、キャリパ本体12の方を向くプレート開口13を規定するとともに、支持板9に少なくとも部分的に形成されたプレート・シート15へのアクセスを可能とする。
【0019】
パッド後退デバイス4は、各スラスト・デバイス10から分離されていて、いかなる時においても、上記ロールバック・デバイスとの干渉を避けている。
【0020】
パッド後退デバイス4は、次のものを備える。
− キャリパ本体12に一体的に固定された、少なくとも1つのガイド・ピン11。
− ガイド・ピン11は、片持ち梁の態様で、キャリパ本体12から突出して、プレート開口13に受け入れられる。そして、ガイド・ピン11のピン端部16は、プレート・シート15内に位置する。
【0021】
有利なことに、パッド後退デバイス4は、プレート部分14を跨いで配置されたキャリッジ17を備える。キャリッジ17は、プレート部分14に関して、キャリパ本体12の方を向く第1キャリッジ部分18と、摩擦材8および(または)ブレーキ・ディスク5の方を向く第2キャリッジ部分19と、を備える。
【0022】
パッド後退デバイス4は、キャリッジ17とガイド・ピン11と間に所定の干渉力をもって嵌め込まれたキャリッジ・ガイド20をさらに備える。それによって、当該所定の干渉力を超えた力が作用した場合に、キャリッジ17は、ガイド・ピン11に沿ってスライドすることが可能となる。
【0023】
パッド後退デバイス4は、さらに、第2キャリッジ部分19とプレート部分14との間に配置された弾性デバイス21を備える。
【0024】
弾性デバイス21は、キャリッジ・ガイド20およびガイド・ピン11によって決まる上記所定の干渉力よりも小さい程度の弾性アクションが可能な弾性特性を有している。その弾性アクションは、第2キャリッジ部分19から遠ざかるように移動する支持板9に影響を与え、第2キャリッジ部分19はガイド・ピン11と一体のままであって、したがって所定距離だけブレーキ・ディスク5から離れたままである。
【0025】
一実施形態では、ガイド・ピン11はネジが切られたピン部分22を備えていて、このピン部分22は、キャリパ本体12内に設けられたネジ孔23にしっかりとネジ止めされている。
【0026】
一実施形態では、ネジ孔23は、貫通孔であって、キャリパ本体内に形成された軽量化チャンバまたは区画25と連通していて、キャリパ本体12の表面をパッド3に向けて配置させる。
【0027】
一実施形態では、ガイド・ピン11は、ガイド・ステム24を備えている。このガイド・ステム24は、ブレーキ・ディスク5へ向かって、あるいは遠ざかるようにスライドするパッド3のスライド方向と平行に、キャリパ本体から片持ち梁の態様で突出する。それによってキャリパ本体と一体的なサポート部が与えられ、制動動作の最後においてスラスト・デバイス10によるより大きなスラスト・アクションが存在しない場合には、キャリッジ・ガイド20からステム24に作用する上記所定の干渉力によって、キャリッジ17が止められる。
【0028】
一実施形態では、ガイド・ステム24は自由端部26を備え、この自由端部26は、操作手段のための係合手段27(例えば、ネジ回し又はネジ回し工具のためのキー)を備える。
【0029】
一実施形態では、プレート部分14は、支持板9の本体の中央に存在し、囲まれた開口端14を形成している。この開口端14は、開口14の全周を包囲する環状のアンダーカット表面を形成し、キャリパ本体に対して弾性デバイス21を支持する。
【0030】
一実施形態では、プレート部分14は、支持板9の本体の側部または縁部にあり、囲まれていない開口端14を形成している。この開口端14は、開口14の全周を包囲することを避けるアンダーカット表面を形成し、キャリパ本体に対して弾性デバイス21を支持する。
【0031】
一実施形態では、プレート・シート15は、ピン端部16およびキャリッジ17の全周を包囲する区画を構成して、第2キャリッジ部分19が支持板9または摩擦材8と直接干渉するのを回避するとともに、制動の初期段階において、それらがキャリッジ17に対してスライドすることを防止する。その間、パッド3は、摩擦面6、7に当接している。
【0032】
一実施形態では、プレート・シート15は、ピン端部16およびキャリッジ17の全周を包囲することのない区画を構成して、第2キャリッジ部分19が支持板9または摩擦材8と直接干渉するのを回避して、制動の初期段階において、それらがキャリッジ17に対してスライドすることを防止する。その間、パッド3は、摩擦面6、7に当接している。
【0033】
一実施形態では、キャリッジ17は、単一ピースの(または、連結固定された複数のパーツからなる)キャリッジ本体を有していて、相互に分離するのを回避している。キャリッジ17は、開口13を定めるプレート部分14を跨ぐように配置される。
【0034】
一実施形態では、キャリッジ17は、C形状のキャリッジ本体を有していて、側方ブリッジによって、第1および第2のキャリッジ部分18、19を連結している。
【0035】
一実施形態では、第1および第2のキャリッジ部分18、19は、ガイド・ピン11の一部を受け入れるのに適した貫通孔を有している。
【0036】
一実施形態では、キャリッジ17は、互いに連結された少なくとも2つのピース(または、複数の個別パーツ)で構成されるキャリッジ本体を有していて、開口13を定めるプレート部分14を跨いで、開口13の中央を通過している。
【0037】
一実施形態では、キャリッジ17は、第1および第2のキャリッジ部18、19が管状の中央ブリッジによって接続されてなる管状のキャリッジ本体を有している。この管状のキャリッジ本体は、ガイド・ピン11の一部を受け入れるのに適している。
【0038】
一実施形態では、弾性デバイス21は、管状の中央ブリッジ上にフィットする。
【0039】
一実施形態では、第2キャリッジ部分は、ネジ付き部分で終了している中央ブリッジと一体に構成され、そのネジ付き貫通孔をネジ付き部分に係合させることで、第1キャリッジ部分18に接続されている。
【0040】
一実施形態では、キャリッジ・ガイド20は、弾性リングを備える。弾性リングは、キャリッジ内に設けたシート(seat)に受け入れられていて、ガイド・ピン11上に所定の干渉力をもってフィットしている。それにより、弾性デバイス21のパッキングを通してキャリッジ17に作用するスラスト・アクションが所定値を超えただけで、弾性リングはガイド・ピン上をスライドする。
【0041】
一実施形態では、キャリッジ・ガイド20は、少なくとも1つのOリングを備える。
【0042】
一実施形態では、弾性デバイス21は、スプリング(例えば、螺旋形スプリング)を備えていて、ガイド・ピン11上にフィットしている。
【0043】
一実施形態では、弾性デバイス21は、スプリング(例えば、カップ・スプリング、円錐コイルスプリング、または円錐形のワッシャ)を備えていて、ガイド・ピン11上にフィットしている。
【0044】
一実施形態では、弾性デバイス21は、スプリング(例えば、エラストマー材料からなるスプリング)であって、ガイド・ピン11上にフィットしている。
【0045】
一実施形態では、キャリパは、固定キャリパ本体内のキャリパであって、少なくとも1つのスラスト・デバイス10を備える。スラスト・デバイス10の対向する両サイドは、当該キャリパがブレーキ・ディスク5を跨ぐように配置されたとき、対向する制動面6、7と向き合う。
【0046】
一実施形態では、少なくとも2つの分離したパッド後退デバイス4が設けられ、そのうちの少なくとも1つは、対向するパッド3のそれぞれに対して機能する。
【0047】
次に、本発明に係るアッセンブリの想定される運転方法を説明する。
【0048】
ブレーキ・ディスクから離れるようブレーキ・パッドを移動させる方法は、次の各ステップを備える。
− 上に説明したいずれかの実施形態で規定されているアッセンブリを用意する。
− 制動動作の間に、スラスト・デバイス10によるスラスト・アクションが弾性デバイス21による弾性アクションを超え、したがって弾性デバイスをパッキングするとき、およびスラスト・デバイス10によるスラスト・アクションが、キャリッジ・ガイド20によってガイド・ピン11上に作用する干渉アクションを超えるとき、キャリッジ17をスライドさせる。
− スラスト・デバイス10によるスラスト・アクションが終わるとき、弾性デバイス21の弾性アクションによって、パッド3を所定の程度またはストロークで後退させる。
【0049】
上の方法の一実施形態では、次のさらなるステップが採用される。
− 各パッドを、他のパッドから独立して後退させる。
【0050】
上の方法の一実施形態では、次のさらなるステップが採用される。
− キャリパ2と一体であるガイド・ピン11に一時的に固定されたキャリッジ17の反作用によりパッドに作用する弾性アクションによって、各パッド3を後退させる。
【0051】
上の方法の一実施形態では、次のさらなるステップが採用される。
− 弾性デバイス21の弾性アクションは、キャリッジ・ガイド20によりガイド・ピン11上に作用する干渉アクションよりも小さな所定の範囲内にある。
【0052】
上述のような各特性によって、各特性が別々に、あるいはそれらの組合せにより、上述の対照的な要求を同時に満足するアッセンブリを得ることができる。とりわけ、以下の通りである。
【0053】
− パッドを制動面から離れるように移動させて、制動アクションの終わりにおける残余トルクの発生を回避することを可能にするアッセンブリを見つける、という強い要求を解決できる。
【0054】
− ノイズ、望まれない燃料消費、性能の低下、および他の欠点をもたらす原因となる残余制動トルクの発生を回避できる。
【0055】
− ピストンをパッドと共にキャリパ本体にあるシート(seat)内に付勢して、ピストンが過度に後退することを回避できる。
【0056】
− 摩擦材の摩耗の程度に関係なく、パッドは、予め定めた常に一定の量だけ、制動ブレーキから離れるように移動される。
【0057】
− したがって、パッドをできるだけディスクに近接した状態に維持すること、および車両の使用者がブレーキが非常に緩い(あるいは、柔らかい)と感じるのを回避すること、が同時に満足される。そのために、クリアランスが過度になることが回避されている。このクリアランスとは、残余トルクを回避するために設けられるもので、パッド上のピストンに必要なスラストを作用させてピストンを制動面に当接させる前に回復しているべきものである。
【0058】
− 制動アクションの終わりにおいて、パッドを制動ディスクから離れるように移動させることが可能となる。パッドが過剰に離れ過ぎるのを回避できるとともに、ユーザからの指令に対するブレーキの制動アクションがそれほど過敏では無くする、という対照的な要求を満足できる。
【0059】
− パッドは、キャリパ本体によって正確な態様でガイドされ続けることが可能となる。
【0060】
− ピストンのロールバック・アクションおよびパッドが後退するアクションは、別々に維持される。
【0061】
当業者であれば、本発明のアッセンブリに対し、付随的または特定の要件を満たすために、多くの改変および変更を為すことができる。特許請求の範囲で規定しているように、それらの全てが本発明の保護の範囲である。
参照数字
1. アッセンブリ
2. ディスク・ブレーキ・キャリパ
3. ディスク・ブレーキ・パッド
4. パッド後退デバイス
5. ブレーキ・ディスク
6. 対向する制動面
7. 対向する制動面
8. 摩擦材
9. 支持板
10 スラスト・デバイス
11. ガイド・ピン
12. キャリパ本体
13. プレート開口
14. プレート部分
15. プレート・シート
16. ピン端部
17. キャリッジ
18. 第1キャリッジ部分
19. 第2キャリッジ部分
20. キャリッジ・ガイド
21. 弾性デバイス
22. ネジ付きのピン部分
23. ネジ孔
24. ガイド・ステム
25. 軽量化区画
26. 自由端部
27. 操作手段のための係合手段
T−T 正接方向(あるいは、パッドがスライドする方向)
R−R T−Tに垂直な方向(あるいは、半径方向)
A−A 軸方向(あるいは、スラスト方向に垂直な方向)