特許第6723360号(P6723360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6723360第1のブレーキ装置を解除するための方法、コントロールユニット、ブレーキシステム、および、車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6723360
(24)【登録日】2020年6月25日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】第1のブレーキ装置を解除するための方法、コントロールユニット、ブレーキシステム、および、車両
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20200706BHJP
   B60T 13/12 20060101ALI20200706BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20200706BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20200706BHJP
   F16D 121/02 20120101ALN20200706BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20200706BHJP
   F16D 123/00 20120101ALN20200706BHJP
【FI】
   B60T7/12 A
   B60T13/12
   B60T13/74 D
   B60T13/74 G
   F16D65/18
   F16D121:02
   F16D121:24
   F16D123:00
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-530727(P2018-530727)
(86)(22)【出願日】2016年11月7日
(65)【公表番号】特表2019-502586(P2019-502586A)
(43)【公表日】2019年1月31日
(86)【国際出願番号】EP2016076848
(87)【国際公開番号】WO2017102176
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2018年6月12日
(31)【優先権主張番号】102015225041.5
(32)【優先日】2015年12月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100175743
【弁理士】
【氏名又は名称】田渕 周作
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ,ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】エングラート,アンドレアス
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−052643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
B60T 13/12
B60T 13/74
F16D 65/18
F16D 121/02
F16D 121/24
F16D 123/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(101)のための、自動パーキングブレーキとして構成された電動機作動式の第1のブレーキ装置(102)を解除するための方法であって
前記第1のブレーキ装置(102)と、前記第1のブレーキ装置(102)と異なる第2のブレーキ装置(103)と、に連動接続されたコントロールユニット(104)が、前記車両(101)の運転者による始動要求を検知し、
前記コントロールユニット(104)が、前記始動要求の検知においては、アクセルペダル位置がアクセルペダルの予め定められた限界位置を超える、および/または、アクセルペダル操作の時間勾配が予め定められた限界勾配を超える場合にのみ、前記第1のブレーキ装置(102)および前記第2のブレーキ装置(103)に共通に対応配設されたブレーキピストン(6)において発生している前記第1のブレーキ装置(102)による締付力を完全に消滅させるために、前記第1のブレーキ装置(102)締め付けられた状態で前記第2のブレーキ装置(103)を締付方向に制御し、前記第2のブレーキ装置(103)の前記締付方向への制御によって前記第1のブレーキ装置(102)による前記締付力が完全に消滅する前に、前記第1のブレーキ装置(102)を解除方向に制御する、
法。
【請求項2】
前記コントロールユニット(104)が、前記第1のブレーキ装置(102)および前記第2のブレーキ装置(103)を共通に制御する
ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
記第2のブレーキ装置(103)は、液圧式である
ことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記車両(101)のブレーキシステム(1)のための前記コントロールユニット(104)であって
求項1からまでのいずれか1項記載の方法を実施す
ことを特徴とする、コントロールユニット(104)。
【請求項5】
前記車両(101)のためのブレーキシステム(1)であって、
前記第1のブレーキ装置(102)と、前記第2のブレーキ装置(103)と、前記コントロールユニット(104)とを有し、
前記コントロールユニット(104)が、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法を実施す
ことを特徴とする、ブレーキシステム(1)。
【請求項6】
記第2のブレーキ装置(103)が、前記車両(101)の常用ブレーキとして構成されている
ことを特徴とする、請求項記載のブレーキシステム(1)。
【請求項7】
前記車両(101)であって
請求項5または6記載のブレーキシステム(1)を有している
ことを特徴とする、車両(101)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機作動式のブレーキ装置を解除するための方法、車両のブレーキシステムのためのコントロールユニット、このようなコントロールユニットを備えた車両のためのブレーキシステム、およびこのようなブレーキシステムを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機作動式のブレーキ装置では、好適にはスピンドルナットシステムを介して締付力が生ぜしめられ、この場合、スピンドルナットシステムは好適にはブレーキピストン内に配置されている。このようなブレーキ装置は、電気機械式の制御に基づいて、およびギヤ段によって構造的に制限された機械的な変速比に基づいて、特に純粋に液圧式のブレーキ装置と比較して、締付過程および解除過程のための、より長い適用時間を有している。この場合、特に、締付力解消のための時間は、車両の運転者の迅速な始動要求に反することになる。例えば、この方法の可能性を高めるために、電動機により作動された、締め付けられたパーキングブレーキ装置を有する状態から出発して行われるべき、いわゆる急発進が考慮され得る。この場合、パーキングブレーキ装置は、車両が速度を高める前に、解除方向に制御されなければならない。特に高性能の車両において、または始動トルクが迅速に形成されるか若しくはエンジン停止時に既に始動トルクが提供される電気駆動式の車両において、パーキングブレーキ装置の保持力がなくなる前に、始動トルクが提供され得る。
【0003】
電動機作動式のブレーキ装置を比較的ゆっくりと解除するための主な理由は、このようなシステムがセルフロッキング式に設計されていて、締付力に基づいて高い摩擦を受けるので、比較的高い負荷下で電動機の回転数上昇が行われ、この際にアイドル回転数が比較的後になってから初めて得られる、という点にあるということは明らかである。特許文献1によれば、液圧作動式の第2のブレーキ装置を作動させることによって電動機作動式の第1のブレーキ装置を負荷軽減し、それによって第1のブレーキ装置の改善された解除を可能にすることが公知である。このような方法においてはもちろん、電動機作動式のブレーキ装置が解除方向に制御される前に、まず所望の液圧が完全に形成される。これは、時間がかかり、ひいては解除過程を遅らせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/073043号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、前記欠点が生じないような、電動機作動式の第1のブレーキ装置を解除するための方法、ブレーキシステムのためのコントロールユニット、車両のためのブレーキシステム、およびこのようなブレーキシステムを備えた車両を提供することにある。特に、電動機作動式のブレーキ装置の、改善された特に迅速な解除が可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、独立請求項の対象が得られることによって解決される。好適な実施態様は従属請求項から得られる。
【0007】
前記課題は特に、車両のための、電動機作動式の第1のブレーキ装置を解除するための方法が提供され、この場合、両ブレーキ装置に共通に対応配設されたブレーキピストンで予め定められた締付力を発生させるために、第1のブレーキ装置の締め付けられた状態で車両のための第2のブレーキ装置が締付方向に制御されることによって、解決される。第1のブレーキ装置は、第2のブレーキ装置が予め定められた締付力を得る前に、解除方向に制御される。つまり、予め定められた締付力が第2のブレーキ装置によって完全に形成されるまで待機されるのではなく、むしろ、第1のブレーキ装置と第2のブレーキ装置との並行制御が行われ、この場合、第1のブレーキ装置は、第2のブレーキ装置が予め定められた締付力を形成する前に既に制御される。これによって、第1のブレーキ装置は第2のブレーキ装置によって負荷軽減され、それにより解除過程が加速され、既に比較的早い時点で制御され、これは解除過程を加速するために追加的に有利に作用する。つまり全体として、第1のブレーキ装置の非常に迅速な解除を行うことができる。
【0008】
ブレーキ装置とは、特に、車両を減速させるためにおよび/または停止状態を保つために設計され、従って車両が上り坂または下り坂でも動き出すことはないように設計された装置であると解釈される。
【0009】
好適には、第1のブレーキ装置は、自動パーキングブレーキ(APB)、特に好適には、車両のホイールブレーキ特に後車軸のホイールブレーキに直接位置する電動機を有する自動パーキングブレーキである。このようなシステムは一般的にAPB−M(Motor on Caliper;モーターオンキャリパー)と称呼される。
【0010】
締め付けられた状態とは、ブレーキ装置が制動力を発揮するブレーキ装置の状態であると解釈される。ブレーキ装置は特に、締め付けられた状態と解除された状態との間でシフト可能であり、この場合、ブレーキ装置は解除された状態では制動力を発揮しない。
【0011】
相応に、締付方向とは、ブレーキ装置が解除された状態から締め付けられた状態へ移動せしめられる、ブレーキ装置の制御方向であると解釈される。相応に、解除方向とは、ブレーキ装置が締め付けられた状態から解除された状態へ移動せしめられる方向であると解釈される。
【0012】
第1のブレーキ装置および第2のブレーキ装置に、好適にはブレーキピストンが共通に対応配設されており、このことは、第1のブレーキ装置も、また第2のブレーキ装置も同じブレーキピストンに作用する、ということである。
【0013】
この場合、ブレーキピストンとは、特に、ブレーキライニングを支持し、かつブレーキライニングをブレーキディスクに向かって移動させるために設計および配置された構成要素であると解釈される。第1のブレーキ装置は好適にはスピンドルナットシステムを有しており、このスピンドルナットシステムはブレーキピストン内に配置されている。第2のブレーキ装置は、好適には別の形式で特に液圧式にブレーキピストンに作用する。
【0014】
第2のブレーキ装置は、特に第1のブレーキ装置とは異なっている。好適には、第2のブレーキ装置は電動機式に作動されるのではなく、別の形式で、特に液圧式に作動される。好適には、第2のブレーキ装置として車両の常用ブレーキが使用される。つまり車両の間違いのない通常の走行運転中に車両を減速させるために使用されるブレーキ装置が使用される。
【0015】
第2のブレーキ装置が予め定められた締付力を得る前に第1のブレーキ装置が制御されるとは、第2のブレーキ装置が締付方向に制御される前に第1のブレーキ装置が制御されるか、または第2のブレーキ装置が締付方向に制御されてから第1のブレーキ装置が制御されることを含む。いずれの場合も、前記利点が得られる。
【0016】
本発明の1実施態様によれば、第1のブレーキ装置および第2のブレーキ装置が共通に制御されるようになっているが、これによって、同じく簡単かつ特に迅速なブレーキ装置の制御が可能である。特に、第1のブレーキ装置および第2のブレーキ装置は、好適には同時に制御される。これは特に、第1のブレーキ装置および第2のブレーキ装置を有するブレーキシステムのためのコントロールユニットが、両ブレーキ装置に共通に、特に同時に制御命令を下すか、またはコントロールユニットが、命令を同時に下すために設計されていないかぎりは、直接相次いで、つまり特にことさら設けられた遅延または無駄時間なしに、この命令を下す、ということである。
【0017】
本発明の1実施態様によれば、締付力が第2のブレーキ装置によって液圧式に発生されるようになっている。これは特に、第2のブレーキ装置が、好適には液圧式のブレーキ圧を形成するためのブレーキ倍力装置を備えた液圧式のブレーキ回路を有する、車両の常用ブレーキである場合である。第2のブレーキ装置として、特にこれがアクティブな液圧形成を実現するために設計されている場合、電子式制動力配分システム(Elektronisches Stabilitaetsprogramm「エレクトロニックスタビリティプログラム」−ESP)が使用されてもよい。追加的にまたは選択的に、第2のブレーキ装置が、真空を使用しない特に電気式または電子式のブレーキ倍力装置を有していてもよい。
【0018】
本発明の1実施態様によれば、ブレーキ装置を有する車両の運転者の始動要求が検知されたときに、第1のブレーキ装置および第2のブレーキ装置が制御されるようになっている。これによって、一方では締め付けられている第1のブレーキ装置により、運転者の始動要求があるまで車両を確実に停止させることができ、それと同時に始動要求があると迅速に始動させることができる。特に急発進を意図した迅速な始動が可能である。
【0019】
本発明の1実施態様によれば、運転者の始動要求は、車両のペダル位置を用いて検知される。この場合、ペダル位置は、アクセルペダル位置、ブレーキペダル位置および/またはクラッチペダル位置であってよい。特に、アクセルペダル位置を用いて、運転者の始動要求は確実に検知され得る。
【0020】
選択的にまたは追加的に、運転者の始動要求は、ギヤ選択を用いて、特にギヤセレクトレバーの位置を用いて検知され得る。従って、例えば運転者の始動要求は、運転者が1速ギヤを入れるかまたはオートマチックトランスミッションがドライブモード(drive−D)に切り替えられると、検知される。
【0021】
本発明の1実施態様によれば、この方法は、アクセルペダルの予め定められた限界位置を超える高すぎる要求トルクに向かうアクセルペダル位置が検知されたときにのみ、実施される。この場合、予め定められた限界位置は特に、この方法が運転者によって要求された急発進時にのみ、特にアクセルペダルが完全に踏み込まれたときに、特にいわゆるキックダウンされたときに実施されるように、選定されてよい。このような状況において、運転者は特に迅速な始動過程を要求するので、ここでは特別な形式でこの方法の利点が実現される。
【0022】
追加的にまたは選択的に、好適には、この方法は、運転者によるアクセルペダル操作の時間勾配が予め定められた限界勾配を超えてより急勾配に向かって変化することが検知されたときにのみ、実施される。特に、アクセルペダル操作の勾配を監視し、それによって迅速な始動要求を検知することが可能である。アクセルペダル操作の時間勾配が、つまり特に操作速度、予め定められた限界勾配、特に予め定められた操作速度を超えると、迅速な始動要求が推測される。
【0023】
前記課題は、方法の前記実施例のいずれか1つを実施するために設計された、車両のブレーキシステムのためのコントロールユニットが提供されることによっても解決される。この場合、特に方法に関連して既に説明された利点が、コントロールユニットに関連して実現される。
【0024】
前記課題は、電動機作動式の第1のブレーキ装置を有する、車両のためのブレーキシステムが提供され、この場合、前記ブレーキシステムはさらに、第1のブレーキ装置とは異なる第2のブレーキ装置を有していることによっても、解決される。ブレーキシステムはさらにコントロールユニットを有しており、このコントロールユニットは、前記実施例のうちの1つによる方法を実施するために設計されているか、または前記実施例のうちの1つに従って構成されている。この場合、特に方法およびコントロールユニットに関連して既に説明された利点が、ブレーキシステムに関連して実現される。
【0025】
好適には、第1のブレーキシステムが自動パーキングブレーキ(APB)として構成されている。この場合、特に、好適には少なくとも2つの電動機が、特に車両の後車軸の少なくとも2つのホイールブレーキに配置されているので、第1のブレーキ装置はAPB−Mシステム(Motor on Caliper:モーターオンキャリパー)として構成されている。
【0026】
第2のブレーキ装置は、好適には車両の常用ブレーキとして、特に液圧式のブレーキ装置として構成されている。この場合、第2のブレーキ装置は、電子式制動力配分システムとして構成されており、および/または電気式または電子式のブレーキ倍力装置を有していてよい。
【0027】
好適には、ブレーキシステムは圧力変換装置を有しており、この圧力変換装置は、高い圧力ダイナミックスを提供するために設計されている。これによって、非常に迅速な圧力上昇が生ぜしめられ、上昇された制動力を非常に迅速に再び低下させることができ、これは、特に迅速な始動過程を可能にする。
【0028】
追加的にまたは選択的に、好適には、ブレーキシステムは高いダイナミックスを有する力変換装置を有している。これも、特に好適な形式で迅速な始動を可能にする。
【0029】
前記課題は、前記実施例のいずれか1つによるブレーキシステムを有する車両が提供されることによっても解決される。この場合、方法、コントロールユニットおよびブレーキシステムに関連して既に説明された利点が、車両に関連して得られる。
【0030】
車両は、好適には自動車として、特に乗用車として、トラックとしてまたは商用車として構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ブレーキシステムを備えた車両の1実施例の概略的な詳細図である。
図2】第2のブレーキ装置による支援なしの電動機作動式のブレーキ装置の解除過程の線図である。
図3】第2のブレーキ装置による支援ありの解除過程を示す相応の図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明を以下に図面を用いて具体的に説明する。
【0033】
図1は、電動機作動式の第1のブレーキ装置102および電動機作動式でない第2のブレーキ装置103を有する、車両101のブレーキシステム1の簡略的な断面図を示す。ブレーキシステム1はディスクブレーキを有しており、この場合、ブレーキキャリパ2が設けられていて、このブレーキキャリパ2は複数のブレーキライニング3を有していて、これらのブレーキライニング3間で、車両101のホイールに接続されたブレーキディスク4が締め付け可能若しくは挟み付け可能である。このために、ブレーキキャリパ2に、ここでは液圧式のブレーキ装置として構成された第2のブレーキ装置103に対応配設された液圧式のアクチュエータ5が対応配設されており、このアクチュエータ5は、ブレーキピストン6を有していて、このブレーキピストン6は、ブレーキディスク4を必要であればブレーキライニング3間に挟み付けるために、液圧式に操作可能である。これによって、特に車両101の走行運転中に、車両101を減速させるために役立つブレーキトルクをブレーキディスク4およびひいてはホイールに加える。
【0034】
第1のブレーキ装置102は、パーキングブレーキ装置として、特に自動パーキングブレーキとして構成されていて、電動機式のアクチュエータ7を有しており、このアクチュエータ7は、電動機8と、ここではスピンドル伝動装置として構成されたアクチュエータ伝動装置9と、アクチュエータエレメント10とから形成されている。この場合、電動機8の被駆動軸はアクチュエータ伝動装置9の駆動スピンドル11と相対回動不能に結合されている。駆動スピンドル11は雄ねじを有しており、この雄ねじは、駆動スピンドル11に沿って移動可能なアクチュエータエレメント10の雌ねじと協働する。従って、電動機8の制御によって、駆動スピンドル11はアクチュエータエレメント10を移動させるために回転運動せしめられる。この場合、アクチュエータエレメント10は解除位置から締付位置、およびその逆に移動可能であり、この場合、アクチュエータエレメント10は締付位置でブレーキピストン6をブレーキディスク4に向かって移動させ、それによってブレーキキャリパ2を締め付ける。従って、ブレーキピストン6は、第1のブレーキ装置102および第2のブレーキ装置103に共通に対応配設されている。
【0035】
アクチュエータエレメント10は、ブレーキピストン6に対して同軸的に、ブレーキピストン6内に配置されている。アクチュエータ伝動装置9によって、駆動スピンドル11の回転運動がアクチュエータエレメント10の並進運動に変換される。そのかぎりでは、ホイールブレーキ装置は公知のホイールブレーキ装置に相当する。
【0036】
コントロールユニット104が設けられており、このコントロールユニット104は、第1のブレーキ装置102および第2のブレーキ装置103を制御するために設計されている。
【0037】
第1のブレーキ装置102が締め付けられると、締付力がブレーキピストン6を介してアクチュエータエレメント10および同時に駆動スピンドル11に作用し、この場合、第1のブレーキ装置102はセルフロッキング式に構成されているので、非常に高い締付力が作用する。これによって、第1のブレーキ装置102が解除されると、電動機8に高い負荷トルクが作用し、この高い負荷トルクは電動機8の始動を妨げ、特に減速させる。
【0038】
解除過程を加速させるために、第2のブレーキ装置103によって特に液圧式のブレーキ圧が形成され、この液圧式のブレーキ圧はブレーキピストン6を締め付け方向に押しやり、それによってアクチュエータエレメント10を負荷軽減する。次いで、電動機8は負荷なしで始動することができ、非常に迅速にそのアイドル回転数に達し、これによって解除過程が著しく加速される。
【0039】
これは、第2のブレーキ装置103が予め定められた締付力に達する前に、第1のブレーキ装置102が既に解除方向に制御されると、特に迅速に可能である。
【0040】
従って、第1のブレーキ装置102を解除するために、好適には第1のブレーキ装置102の締め付けられた状態で第2のブレーキ装置103が締付方向に制御され、それによってブレーキピストン6で予め定められた締付力が生ぜしめられ、この際に、第2のブレーキ装置103が予め定められた締付力を得る前に、第1のブレーキ装置102が解除方向に制御される。
【0041】
好適には、第1のブレーキ装置102および第2のブレーキ装置103は共通に、特に同時に制御される。
【0042】
第1のブレーキ装置102および第2のブレーキ装置103は好適には、車両101の運転者の始動要求が検知されると、制御される。運転者の始動要求は、特に車両101のペダル位置を用いておよび/または運転者のギヤ選択を用いて検知され得る。ここに記載した解除方法は、アクセルペダルの予め定められた限界位置または予め定められた操作速度を超えるアクセルペダル位置またはアクセルペダル操作が検知されるときにだけ、実施されることが可能である。これは特に、いわゆるキックダウン時、つまり特に急発進を実施するためにアクセルペダルを完全に踏み込んだ場合であってよい。
【0043】
図2は、第2のブレーキ装置103の支援なしの、第1のブレーキ装置102の解除過程の線図を示す。この場合、ここでは、時間tに関連した、第1の実線の曲線K1および第2の破線の曲線K2がグラフで示されており、第1の実線の曲線K1は、第1のブレーキ装置102が解除されたときの締付力の変化を示し、第2の破線の曲線K2は、解除過程時の電動機8の回転数変化を示す。この場合、第1の曲線K1で示した締付力は比較的ゆっくりと低下され、第1の時点tになって初めて完全に消滅する。相応に、第2の曲線K2で示されているように、電動機8のトルク形成も遅れて実施される。何故ならば電動機8は負荷下で始動し、この場合、アイドル回転数は概ね第1の時点tになって初めて得られるからである。これによって、解除過程は全体的に著しく減速される。
【0044】
以下の議論は、アクチュエータエレメント10は、締付力が完全に消滅するまで第1の時点tで所定のストロークだけ進むことを前提としている。
【0045】
図3には、第2のブレーキ装置103の支援ありの、第1のブレーキ装置102の解除過程の線図が示されている。同じおよび機能的に同じ構成要素には同じ符号がつけられているので、そのかぎりにおいて前記説明が参照される。図3には、さらに、一点鎖線で示された第3の曲線K3が時間に関連してグラフで示されており、この第3の曲線K3は、第2のブレーキ装置103によってもたらされる締付力の変化を示す。この場合、締付力は第3の曲線K3による締付力と同じ程度だけ第2のブレーキ装置103によって形成され、第1の曲線K1で示した、電動機8に制動作用を加える締付力が低下することが示されている。つまり、電動機8は一層負荷軽減され、この場合、これは特に第2のブレーキ装置103の高いダイナミックスによって非常に迅速に行うことができる。
【0046】
さらに、第1のブレーキ装置102と第2のブレーキ装置103とは並列制御されるので、この効果によっておよび電動機8の負荷軽減によって、非常に迅速に、第2の曲線K2を用いて示されているように、アイドル回転数を得ることができる。
【0047】
この場合、図2に示された、締付力が完全に解除されるまでの、負荷を受けて進んだアクチュエータエレメント10のストロークが、図3に示した負荷なしの条件下でここでは第2の時点tで既に終了され、この場合、第2の時点tは、比較のためにここに同様に記された第1の時点tと比較して、より短いことが明らかである。従って、第1のブレーキ装置102の解除過程が、第2のブレーキ装置103による特にブレーキ装置102,103の並行制御による支援に基づいて迅速に行われ得ることができることが明らかである。この場合、全解除時間の好適には25%またはそれ以上を節約することができる。
【0048】
全体として、この方法、コントロールユニット104およびブレーキシステム1によって、車両101において第1のブレーキ装置102の迅速な解除が可能であり、この場合、特に運転者の、特に急発進の形での迅速な始動要求が支援され得ることが明らかである。
【符号の説明】
【0049】
1 ブレーキシステム
2 ブレーキキャリパ
3 ブレーキライニング
5 アクチュエータ
6 ブレーキピストン
7 電動機式のアクチュエータ
8 電動機
9 アクチュエータ伝動装置
10 アクチュエータエレメント
11 駆動スピンドル
101 車両
102 第1のブレーキ装置
103 第2のブレーキ装置
104 コントロールユニット
K1 第1の実線の曲線
K2 第2の曲線
K3 第3の曲線
t 時間
第1の時点
第2の時点
図1
図2
図3