【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、独立請求項の対象が得られることによって解決される。好適な実施態様は従属請求項から得られる。
【0007】
前記課題は特に、車両のための、電動機作動式の第1のブレーキ装置を解除するための方法が提供され、この場合、両ブレーキ装置に共通に対応配設されたブレーキピストンで予め定められた締付力を発生させるために、第1のブレーキ装置の締め付けられた状態で車両のための第2のブレーキ装置が締付方向に制御されることによって、解決される。第1のブレーキ装置は、第2のブレーキ装置が予め定められた締付力を得る前に、解除方向に制御される。つまり、予め定められた締付力が第2のブレーキ装置によって完全に形成されるまで待機されるのではなく、むしろ、第1のブレーキ装置と第2のブレーキ装置との並行制御が行われ、この場合、第1のブレーキ装置は、第2のブレーキ装置が予め定められた締付力を形成する前に既に制御される。これによって、第1のブレーキ装置は第2のブレーキ装置によって負荷軽減され、それにより解除過程が加速され、既に比較的早い時点で制御され、これは解除過程を加速するために追加的に有利に作用する。つまり全体として、第1のブレーキ装置の非常に迅速な解除を行うことができる。
【0008】
ブレーキ装置とは、特に、車両を減速させるためにおよび/または停止状態を保つために設計され、従って車両が上り坂または下り坂でも動き出すことはないように設計された装置であると解釈される。
【0009】
好適には、第1のブレーキ装置は、自動パーキングブレーキ(APB)、特に好適には、車両のホイールブレーキ特に後車軸のホイールブレーキに直接位置する電動機を有する自動パーキングブレーキである。このようなシステムは一般的にAPB−M(Motor on Caliper;モーターオンキャリパー)と称呼される。
【0010】
締め付けられた状態とは、ブレーキ装置が制動力を発揮するブレーキ装置の状態であると解釈される。ブレーキ装置は特に、締め付けられた状態と解除された状態との間でシフト可能であり、この場合、ブレーキ装置は解除された状態では制動力を発揮しない。
【0011】
相応に、締付方向とは、ブレーキ装置が解除された状態から締め付けられた状態へ移動せしめられる、ブレーキ装置の制御方向であると解釈される。相応に、解除方向とは、ブレーキ装置が締め付けられた状態から解除された状態へ移動せしめられる方向であると解釈される。
【0012】
第1のブレーキ装置および第2のブレーキ装置に、好適にはブレーキピストンが共通に対応配設されており、このことは、第1のブレーキ装置も、また第2のブレーキ装置も同じブレーキピストンに作用する、ということである。
【0013】
この場合、ブレーキピストンとは、特に、ブレーキライニングを支持し、かつブレーキライニングをブレーキディスクに向かって移動させるために設計および配置された構成要素であると解釈される。第1のブレーキ装置は好適にはスピンドルナットシステムを有しており、このスピンドルナットシステムはブレーキピストン内に配置されている。第2のブレーキ装置は、好適には別の形式で特に液圧式にブレーキピストンに作用する。
【0014】
第2のブレーキ装置は、特に第1のブレーキ装置とは異なっている。好適には、第2のブレーキ装置は電動機式に作動されるのではなく、別の形式で、特に液圧式に作動される。好適には、第2のブレーキ装置として車両の常用ブレーキが使用される。つまり車両の間違いのない通常の走行運転中に車両を減速させるために使用されるブレーキ装置が使用される。
【0015】
第2のブレーキ装置が予め定められた締付力を得る前に第1のブレーキ装置が制御されるとは、第2のブレーキ装置が締付方向に制御される前に第1のブレーキ装置が制御されるか、または第2のブレーキ装置が締付方向に制御されてから第1のブレーキ装置が制御されることを含む。いずれの場合も、前記利点が得られる。
【0016】
本発明の1実施態様によれば、第1のブレーキ装置および第2のブレーキ装置が共通に制御されるようになっているが、これによって、同じく簡単かつ特に迅速なブレーキ装置の制御が可能である。特に、第1のブレーキ装置および第2のブレーキ装置は、好適には同時に制御される。これは特に、第1のブレーキ装置および第2のブレーキ装置を有するブレーキシステムのためのコントロールユニットが、両ブレーキ装置に共通に、特に同時に制御命令を下すか、またはコントロールユニットが、命令を同時に下すために設計されていないかぎりは、直接相次いで、つまり特にことさら設けられた遅延または無駄時間なしに、この命令を下す、ということである。
【0017】
本発明の1実施態様によれば、締付力が第2のブレーキ装置によって液圧式に発生されるようになっている。これは特に、第2のブレーキ装置が、好適には液圧式のブレーキ圧を形成するためのブレーキ倍力装置を備えた液圧式のブレーキ回路を有する、車両の常用ブレーキである場合である。第2のブレーキ装置として、特にこれがアクティブな液圧形成を実現するために設計されている場合、電子式制動力配分システム(Elektronisches Stabilitaetsprogramm「エレクトロニックスタビリティプログラム」−ESP)が使用されてもよい。追加的にまたは選択的に、第2のブレーキ装置が、真空を使用しない特に電気式または電子式のブレーキ倍力装置を有していてもよい。
【0018】
本発明の1実施態様によれば、ブレーキ装置を有する車両の運転者の始動要求が検知されたときに、第1のブレーキ装置および第2のブレーキ装置が制御されるようになっている。これによって、一方では締め付けられている第1のブレーキ装置により、運転者の始動要求があるまで車両を確実に停止させることができ、それと同時に始動要求があると迅速に始動させることができる。特に急発進を意図した迅速な始動が可能である。
【0019】
本発明の1実施態様によれば、運転者の始動要求は、車両のペダル位置を用いて検知される。この場合、ペダル位置は、アクセルペダル位置、ブレーキペダル位置および/またはクラッチペダル位置であってよい。特に、アクセルペダル位置を用いて、運転者の始動要求は確実に検知され得る。
【0020】
選択的にまたは追加的に、運転者の始動要求は、ギヤ選択を用いて、特にギヤセレクトレバーの位置を用いて検知され得る。従って、例えば運転者の始動要求は、運転者が1速ギヤを入れるかまたはオートマチックトランスミッションがドライブモード(drive−D)に切り替えられると、検知される。
【0021】
本発明の1実施態様によれば、この方法は、アクセルペダルの予め定められた限界位置を超える高すぎる要求トルクに向かうアクセルペダル位置が検知されたときにのみ、実施される。この場合、予め定められた限界位置は特に、この方法が運転者によって要求された急発進時にのみ、特にアクセルペダルが完全に踏み込まれたときに、特にいわゆるキックダウンされたときに実施されるように、選定されてよい。このような状況において、運転者は特に迅速な始動過程を要求するので、ここでは特別な形式でこの方法の利点が実現される。
【0022】
追加的にまたは選択的に、好適には、この方法は、運転者によるアクセルペダル操作の時間勾配が予め定められた限界勾配を超えてより急勾配に向かって変化することが検知されたときにのみ、実施される。特に、アクセルペダル操作の勾配を監視し、それによって迅速な始動要求を検知することが可能である。アクセルペダル操作の時間勾配が、つまり特に操作速度、予め定められた限界勾配、特に予め定められた操作速度を超えると、迅速な始動要求が推測される。
【0023】
前記課題は、方法の前記実施例のいずれか1つを実施するために設計された、車両のブレーキシステムのためのコントロールユニットが提供されることによっても解決される。この場合、特に方法に関連して既に説明された利点が、コントロールユニットに関連して実現される。
【0024】
前記課題は、電動機作動式の第1のブレーキ装置を有する、車両のためのブレーキシステムが提供され、この場合、前記ブレーキシステムはさらに、第1のブレーキ装置とは異なる第2のブレーキ装置を有していることによっても、解決される。ブレーキシステムはさらにコントロールユニットを有しており、このコントロールユニットは、前記実施例のうちの1つによる方法を実施するために設計されているか、または前記実施例のうちの1つに従って構成されている。この場合、特に方法およびコントロールユニットに関連して既に説明された利点が、ブレーキシステムに関連して実現される。
【0025】
好適には、第1のブレーキシステムが自動パーキングブレーキ(APB)として構成されている。この場合、特に、好適には少なくとも2つの電動機が、特に車両の後車軸の少なくとも2つのホイールブレーキに配置されているので、第1のブレーキ装置はAPB−Mシステム(Motor on Caliper:モーターオンキャリパー)として構成されている。
【0026】
第2のブレーキ装置は、好適には車両の常用ブレーキとして、特に液圧式のブレーキ装置として構成されている。この場合、第2のブレーキ装置は、電子式制動力配分システムとして構成されており、および/または電気式または電子式のブレーキ倍力装置を有していてよい。
【0027】
好適には、ブレーキシステムは圧力変換装置を有しており、この圧力変換装置は、高い圧力ダイナミックスを提供するために設計されている。これによって、非常に迅速な圧力上昇が生ぜしめられ、上昇された制動力を非常に迅速に再び低下させることができ、これは、特に迅速な始動過程を可能にする。
【0028】
追加的にまたは選択的に、好適には、ブレーキシステムは高いダイナミックスを有する力変換装置を有している。これも、特に好適な形式で迅速な始動を可能にする。
【0029】
前記課題は、前記実施例のいずれか1つによるブレーキシステムを有する車両が提供されることによっても解決される。この場合、方法、コントロールユニットおよびブレーキシステムに関連して既に説明された利点が、車両に関連して得られる。
【0030】
車両は、好適には自動車として、特に乗用車として、トラックとしてまたは商用車として構成されている。