特許第6723406号(P6723406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6723406コンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6723406
(24)【登録日】2020年6月25日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】コンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20200706BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20200706BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20200706BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20200706BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20200706BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   G02C7/04
   B05D3/00 D
   B05D7/00 K
   B05D5/00 Z
   B05D7/24 302M
   B05D7/24 302F
   B05D7/24 302G
   B05D7/24 301C
   B05D1/36 Z
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-64224(P2019-64224)
(22)【出願日】2019年3月28日
(65)【公開番号】特開2020-42253(P2020-42253A)
(43)【公開日】2020年3月19日
【審査請求日】2019年3月28日
(31)【優先権主張番号】107132068
(32)【優先日】2018年9月12日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】519112324
【氏名又は名称】優▲に▼康光學股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Unicon Optical Co.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】林 紀宇
(72)【発明者】
【氏名】蕭 旭貴
(72)【発明者】
【氏名】林 庭萱
【審査官】 後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−532060(JP,A)
【文献】 特表2013−525842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水和工程を行って、非水和性ポリマーから水和性ポリマーを形成させるステップと、
第1の水化工程を行い、すなわち第1の温度において、前記水和性ポリマーを、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、略称PVA)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、略称PVP)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、略称PEG)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種を含む第1の溶液と第1の処理時間だけ接触させるステップと、
第2の水化工程を行い、すなわち第2の温度において、前記水和性ポリマーを、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の第2の溶液と第2の処理時間だけ接触させるステップとを順に含み、
ただし、前記第1の温度及び前記第2の温度は、互いに独立して、50〜70℃の間の温度であることを特徴とするコンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法。
【請求項2】
前記第1の温度及び前記第2の温度は、互いに独立して、55〜65℃の間の温度であることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法。
【請求項3】
前記第1の溶液及び前記第2の溶液のうちの一方は、前記ポリビニルピロリドン及び前記ポリエチレングリコールを含む水溶液であり、重量パーセントを基準として、前記水溶液におけるポリビニルピロリドンとポリエチレングリコールの含有量比は1:100〜30:1であることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法。
【請求項4】
前記第1の溶液は、0.01〜5重量パーセントのポリビニルアルコールを含む水溶液であり、前記第2の溶液は、0.05〜3重量パーセントのポリビニルピロリドン及び0.1〜5重量パーセントのポリエチレングリコールを含む水溶液であることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法。
【請求項5】
前記第1の溶液は、0.05〜3重量パーセントのポリビニルピロリドン及び0.1〜5重量パーセントのポリエチレングリコールを含む水溶液であり、前記第2の溶液は、0.01〜5重量パーセントを含むポリビニルアルコールの水溶液であることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法。
【請求項6】
前記水和工程が50〜70℃の温度において行なわれることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法。
【請求項7】
前記第1の処理時間及び前記第2の処理時間は、互いに独立して、10〜120minであることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法。
【請求項8】
前記水和工程を行う前に、アルコール系溶液を用いて前記非水和性ポリマーに対して表面処理を行う表面処理工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法。
【請求項9】
前記第2の水化工程が行われた後、処理済みの前記水和性ポリマーを、炭酸ナトリウムを含む平衡溶液と第3の処理時間だけ接触させる平衡工程をさらに含み、ただし、前記第3の処理時間は、前記第1の処理時間又は前記第2の処理時間より長いことを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法。
【請求項10】
前記コンタクトレンズが、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)系又はシリコーン(silicone)系のコンタクトレンズであることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視力矯正の効果を有する医療装置の製造方法に関し、より詳しくは、コンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、長い間の発展を経て今のスタイルに定着してきている。最初、技術者は、レンズを直接目に付けるという考えに基づき、ガラス材質のコンタクトレンズを開発したが、その掛け心地の悪さだけではなく、ガラス材質の酸素透過率が低いため目の疾患を引き起こしやすいという問題があった。その後、その他様々な材料を用いたコンタクトレンズとして、最初のポリメタクリル酸メチル(PMMA)材質のコンタクトレンズや、最近の酸素透過性ハードコンタクトレンズ(RGP)材質のハードコンタクトレンズ、及びメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)材質又はヒドロゲル材質のソフトコンタクトレンズ等が挙げられる。
【0003】
コンタクトレンズは、従来のメガネのようにフレームを持たないため、着用していても見かけを損なう恐れがないだけでなく、従来のレンズの割れやすいという欠点も回避できる。このような様々な利点から、視力矯正のニーズを有する消費者は、従来のメガネに替えてコンタクトレンズを選択するようになっている。
【0004】
コンタクトレンズ市場の明るい将来性を見込み、消費者のニーズにも応えるために、関連分野の技術者は、角膜拡大レンズ、アンチブルーレイなど視力矯正以外の機能も備えるコンタクトレンズの開発に成功しているだけでなく、研究開発を続行している。
【0005】
例えば、特許文献1は、抗微生物コーティング層を開示している。当該技術をコンタクトレンズに用いることができ、複数のフラノンを共有結合によって基材に結合させるものであり、場合によっては、例えば、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、又はプラズマ重合等の方法により、基材に界面層を形成させてからフラノンを当該界面層に結合させるようにしてもよい。
【0006】
また、特許文献2は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに安定的なコーティング層を付与する方法を開示している。それは主に、ポリマー組成物をレンズ金型に入れて硬化させることによって、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを形成し、そして当該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを平均分子量が少なくとも10万ダルトン(Daltons)でカルボキシル基を含むポリアニオン性ポリマー水溶液に60〜240min浸漬し、次いでpH6.5〜9.5の生理食塩水で当該リンスし、最後に60〜140℃の温度で当該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを加熱することによって、架橋された親水コーティング層を形成させるものである。
【0007】
ところが、コンタクトレンズは一種の医療器具として、基本的に、安全性を有し、掛け心地がよく、効果的に視力を矯正できるものでなければならない。そのため、それを設計し、製造する際は、理想的なコンタクトレンズを得るために持続的に研究を繰り返す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許登録第1296673号
【特許文献2】米国特許出願公開第20170165932号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、使用者が着用している時、優れた快適性を有するように、簡単な方法により、親水性に優れ、タンパク質及び脂質がその表面に堆積しにくいコンタクトレンズを得るために、コンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法を提供することをその主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、コンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法を提供する。当該コーティング方法は順に、
水和工程を行って、非水和性ポリマーから水和性ポリマーを形成させるステップと、
第1の水化工程を行い、すなわち第1の温度において、当該水和性ポリマーを、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種を含む第1の溶液と第1の処理時間だけ接触させるステップと、第2の水化工程を行い、すなわち第2の温度において、当該水和性ポリマーを、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種を含む第2の溶液と第2の処理時間だけ接触させるステップとを含む。
上記ステップにおいて、当該第1の温度及び当該第2の温度は、互いに独立して、50〜70℃の間の温度である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るコーティング方法によれば、水和工程の後に、50〜70℃の間の所定の温度において、第1の水化工程、第2の水化工程を順に行って処理することによって得られるコンタクトレンズは、その接触角の範囲が約30〜65°であり、親水性に優れ、着用している時、優れた濡れ性を保つことができる。また、従来のコンタクトレンズでは、タンパク質及び脂質が当該コンタクトレンズの目と接触する表面に堆積しやすいため、視野を不明瞭にしたり、さらにはタンパク質の変性によりアレルギー等の不具合を生じさせたりするという状況に対し、本発明によるコンタクトレンズは、親水性に優れるため、タンパク質及び脂質がコンタクトレンズの表面に堆積しにくいため、従来のコンタクトレンズに生じやすい上記種々の不具合を大幅に緩和して、使用者が着用している時、視野を鮮明に保つことができ、優れた快適性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るコンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法の一実施形態のフローチャートを概略的に示す図である。
図2】本発明に係るコンタクトレンズの一実施形態の外観を概略的に示す図である。
図3】本発明に係るコンタクトレンズの一実施形態の構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、関連する各図を参照して本発明の技術を詳しく説明する。
【0014】
後述する術語やその命名方法等については、別途定義のある場合を除き、その意味は当業者に理解される一般的な意味を有するものであり、本明細書に記載されている「1つ」及びこれに準ずる他の用語は、1つだけを備えるという場合に限定されず、複数を備える形態をも含む。
【0015】
本明細書における「約」という表現は、当該数値の±10%の範囲に及ぶというように定義する。例えば、「約60℃」と記載される場合には、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃等54〜66℃の間の温度を含んでもよい。
【0016】
なお、本明細書における「ポリマー」というのは、複数のモノマーから重合又は架橋によって形成された材料を指すものであり、「分子量」とは、ポリマー材料の数平均分子量を指すものである。
【0017】
本発明に係るコンタクトレンズの表面を親水化するコーティング方法によれば、図1に示すように、ステップS1として、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)系又はシリコーン(silicone)系材質などの非水和性ポリマーを用意し、当該非水和性ポリマーを純水と接触させて水和工程を行うことによって、当該非水和性ポリマーから水を含む水和性ポリマーを形成させる。上記水和工程は約50〜70℃の温度で約30〜50min行うことができ、例えば、約60℃の温度で40min、又は約65℃の温度で35min行ってもよい。
【0018】
次に、ステップS2として、第1の水化工程を行い、すなわち50〜70℃の間の第1の温度において、上記ステップで形成された当該水和性ポリマーを第1の溶液と接触させる。本実施形態において、当該第1の溶液は、ポリビニルアルコール(PVA)を含む水溶液であり、当該第1の溶液の総重量を基準として、ポリビニルアルコールの含有量は0.01〜5重量パーセントであってもよい。本発明のコーティング方法に用いられるポリビニルアルコールは、その分子量が約1万〜200万の範囲であり、実施に際して、ニーズに応じて選択を行うことができ、本発明はこれについて特に限定しない。
【0019】
最後に、ステップS3として、第2の水化工程を行い、すなわち第2の温度において、当該第1の水化工程で処理した当該水和性ポリマーを第2の溶液と第2の処理時間だけ接触させる。
【0020】
本実施形態において、当該第2の溶液は、ポリビニルピロリドン(PVP)及びポリエチレングリコール(PEG)を含む水溶液であってもよい。なお、重量パーセントを基準として、当該水溶液におけるポリビニルピロリドンとポリエチレングリコールの含有量比は、1:100〜30:1であってもよい。詳しく言えば、例えば、当該水溶液の総重量を基準として、0.05〜3重量パーセントのポリビニルピロリドン及び0.1〜5重量パーセントのポリエチレングリコールの水溶液を含んでもよい。ただし上記割合は例示的なものに過ぎず、重量パーセントを基準にして、当該第2の溶液におけるポリビニルピロリドンとポリエチレングリコールの含有量比は1:100〜30:1にあればよい。
【0021】
本発明のコーティング方法に用いられるポリビニルピロリドンは、その分子量が約1万〜約200万であってもよく、1つの好ましい実施形態として、約1万〜約1万5000であってもよい。ポリエチレングリコールの分子量については、約1000〜約1万であってもよく、1つの好ましい実施形態として、約1000〜約4000であってもよい。
【0022】
本実施形態に記載されている「接触」というのは、例えば、当該水和性ポリマーを当該第1の溶液及び/又は当該第2の溶液に浸漬するように行われてもよい。かかる場合において、操作温度は約50〜70℃であってもよく、約55〜65℃であることが好ましく、約60℃であることがより好ましい。また、本実施形態において、当該第1の処理時間及び/又は当該第2の処理時間は、互いに独立して、10〜120minである。例えば、約55℃の温度で50min、又は約60℃の温度で40min行ってもよく、本発明で限定されている範囲において、実際の状況に応じて適宜調整を行うことができる。1つの好ましい実施形態において、前述したように水和工程を行う前に、アルコール系溶液を用いて、当該非水和性ポリマーに対して表面処理を行うという表面処理工程を行ってもよい。当該アルコール系溶液は、揮発性を有する溶液であることが好ましく、例えば、総重量を基準として、0.1〜50重量パーセントのエタノール水溶液を含む。本実施形態において、当該表面処理工程は約20〜50℃の温度で約10〜40min行われてもよく、例えば、約35℃の温度で40min、又は約40℃の温度で30min行われてもよい。
【0023】
また、上記実施形態では、ポリビニルアルコールを含む当該第1の溶液で処理してから、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールを含む当該第2の溶液で処理を行うものであるが、その他の実施形態において、処理の順序を逆にしてもよい。すなわち、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールを含む当該第1の溶液で処理してから、ポリビニルアルコールを含む当該第2の溶液で処理を行うようにしてもよい。順序が異なる以外は、処理温度、処理時間や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールの含有量等は前述したものと同じであるため、ここでは重複する説明をしない。
【0024】
当該第2の水化工程を行った後に、平衡工程を含んでもよい。すなわち処理済みの当該水和性ポリマーを、炭酸ナトリウムを含む平衡溶液と接触させる。当該平衡溶液のpH値は約7〜8であり、例えば、7.3、7.4又は7.5等であってもよく、かつ、浸透圧(osmotic pressure)は300〜320mmHgであってもよく、305〜315mmHgであることが好ましい。なお且つ当該平衡溶液には、炭酸ナトリウムが含まれる以外は、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、又はリン酸二水素ナトリウムから選択される少なくとも1種の成分を含んでもよい。当該平衡工程は、約15〜35℃の温度で約60〜180min行われてもよい。ただし上記温度及び処理時間は実際の状況に応じて調整することができ、当該ステップの処理時間は当該第1の水化工程の当該第1の処理時間及び当該第2の水化工程の当該第2の処理時間より長いことを満たせばよい。
【0025】
場合によっては、当該第2の水化工程と当該平衡工程との間において、当該水和性ポリマーに残留する溶剤を除去するように、リンス工程を追加してもよい。当該リンス工程は、例えば、約50〜70℃、好ましくは約55〜65℃、より好ましくは約60℃である操作温度において、当該水和性ポリマーを純水に30〜50min浸漬するように行ってもよい。
【0026】
上記ステップを行った後、当該水和性ポリマーは、高圧蒸気滅菌等の方法により滅菌を行い、パッケージしてコンタクトレンズを形成することができる。本発明の一実施形態において、コンタクトレンズ1は、「図2」及び「図3」に示す構造のように、外界と接触する外表面11及び目と接触する内表面12を備えるものであってもよい。
【0027】
コンタクトレンズ1は、コア構造13及びコーティング層14を含み、コーティング層14は、コア構造13の少なくとも一部に共有結合され、かつ、コンタクトレンズ1の内表面12に形成されて目の表面と接触するものであり、コーティング層14により当該コンタクトレンズの濡れ性を向上させ、コーティング層14はポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールを含む。
【0028】
さらに、具体例として、コンタクトレンズ1の接触角に関する試験を行った。接触角は、材料自体の親水性、疎水性を示す重要な指標であり、一般的に、固体の表面と液体の表面との夾角のように定義される。ここで、キャプティブバブル法(captive bubble method)により試験を行った。キャプティブバブル法は本分野で従来から用いられている接触角の計測方法の一つであるため、ここでは重複する説明を省略する。
「試験例1」
【0029】
本試験例において、サンプル1をコア構造13として処理を行った。サンプル1の成分には2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(2−hydroxy−2−methylpropiophenone)、ポリジメチルシロキサン(poly(dimethylsiloxane)、略称PDMS)、N−ビニル−2−ピロリドン(N−vinyl−2−pyrrolidone、略称NVP)、N,N−ジメチルアクリルアミド(N,N−dimethylacrylamide、略称DMAA)、エチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethylacrylate、略称EGDMA)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(2−hydroxy−2−methyl−1−phenyl−propan−1−one)及びトナーが含まれている。
【0030】
当該第1の溶液又は当該第2の溶液の総重量を基準にすると、本試験例の比較例1、比較例2及び実施形態1では、当該第1の溶液は0.05重量パーセントのポリビニルアルコールを含み、当該第2の溶液は0.05重量パーセントのポリビニルピロリドン及び0.1重量パーセントのポリエチレングリコールを含む。
【0031】
比較例1では、当該第1の温度を40℃とし、当該第2の温度を40℃とした。比較例2では、当該第1の温度を60℃とし、当該第2の温度を40℃とした。実施形態1では、当該第1の温度を60℃とし、当該第2の温度を60℃とした。計測された接触角は表1に示すとおりである。
【0032】
「表1」
「試験例2」
【0033】
本試験例において、サンプル2をコア構造13として処理を行った。サンプル2の成分はサンプル1とほぼ同じであり、両者の相違点はサンプル2の水含有量がサンプル1に比べて10%少なく、43%だったということだけにある。
【0034】
当該第1の溶液又は当該第2の溶液の総重量を基準にして、本試験例の比較例3、比較例4及び実施形態2では、当該第1の溶液は3重量パーセントのポリビニルアルコールを含み、当該第2の溶液は3重量パーセントのポリビニルピロリドン及び5重量パーセントのポリエチレングリコールを含む。
【0035】
比較例3では、当該第1の温度を40℃とし、当該第2の温度を40℃とした。比較例4では、当該第1の温度を60℃とし、当該第2の温度を40℃とした。実施形態2では、当該第1の温度を60℃とし、当該第2の温度を60℃とした。計測された接触角は表2に示すとおりである。
【0036】
「表2」
「試験例3」
【0037】
本試験例では、上記サンプル1をコア構造13として処理を行った。当該第1の溶液又は当該第2の溶液の総重量を基準にして、本試験例の比較例5、比較例6及び実施形態3では、当該第1の溶液は0.05重量パーセントのポリビニルアルコールを含み、当該第2の溶液は0.05重量パーセントのポリビニルピロリドン及び0.1重量パーセントのポリエチレングリコールを含む。
【0038】
比較例5では、当該第1の温度を40℃とし、当該第2の温度を40℃とした。比較例6では、当該第1の温度を60℃とし、当該第2の温度を40℃とした。実施形態3では、当該第1の温度を60℃とし、当該第2の温度を60℃とした。計測された接触角は表3に示すとおりである。
【0039】
「表3」
「試験例4」
【0040】
本試験例では、サンプル1をコア構造13として処理を行った。当該第1の溶液又は当該第2の溶液の総重量を基準にして、本試験例の比較例7、比較例8及び実施形態4では、当該第1の溶液は3重量パーセントのポリビニルアルコールを含み、当該第2の溶液は3重量パーセントのポリビニルピロリドン及び5重量パーセントのポリエチレングリコールを含む。
【0041】
比較例7では、当該第1の温度を40℃とし、当該第2の温度を40℃とした。比較例8では、当該第1の温度を60℃とし、当該第2の温度を40℃とした。実施形態4では、当該第1の温度を60℃とし、当該第2の温度を60℃とした。計測された接触角は表4に示すとおりである。
【0042】
「表4」
【0043】
接触角の大きさは、物体の表面の疎水性に関係するものであり、コンタクトレンズの水滴との接触角が大きいほど、その疎水性が高い。逆の場合、コンタクトレンズの水滴との接触角が小さいほど、その親水性が高い。表1〜表4から分かるように、比較例1〜比較例8における第1の温度と第2の温度の組み合わせが本発明で限定されている範囲内にない場合、実施形態1〜実施形態4で計測された接触角よりも大きいことから、疎水性が比較的高く、着用している時の快適性は、本発明の実施形態によるコンタクトレンズより劣ることが分かった。
【0044】
以上のとおり本発明を詳しく説明したが、上述した内容は、本発明の1つの好ましい実施形態であるに過ぎず、本発明の実施範囲を限定するものではない。本発明の特許請求の範囲においてなされた同等な変更や修飾などは、いずれも本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0045】
1 コンタクトレンズ
11 外表面
12 内表面
13 コア構造
14 コーティング層
S1―S3 ステップ
図1
図2
図3