特許第6723529号(P6723529)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東洋新薬の特許一覧

<>
  • 特許6723529-ホップ葉含有飲食用組成物 図000005
  • 特許6723529-ホップ葉含有飲食用組成物 図000006
  • 特許6723529-ホップ葉含有飲食用組成物 図000007
  • 特許6723529-ホップ葉含有飲食用組成物 図000008
  • 特許6723529-ホップ葉含有飲食用組成物 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6723529
(24)【登録日】2020年6月26日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】ホップ葉含有飲食用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20200706BHJP
   A23L 2/38 20060101ALI20200706BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   A23L33/10
   A23L2/38 J
   A23L2/38 C
   A23L2/00 F
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-68220(P2016-68220)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-18089(P2017-18089A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2019年3月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-140296(P2015-140296)
(32)【優先日】2015年7月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】吉本 雄
(72)【発明者】
【氏名】森川 琢海
(72)【発明者】
【氏名】鍔田 仁人
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/192357(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/080354(WO,A1)
【文献】 特開2011−000032(JP,A)
【文献】 特開2001−292729(JP,A)
【文献】 特開2011−074062(JP,A)
【文献】 特開2010−173942(JP,A)
【文献】 特開2009−173583(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/070970(WO,A1)
【文献】 特表2013−526875(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/175180(WO,A1)
【文献】 特開2015−023871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホップの葉及び/又は茎と、大麦の葉及び茎、甘藷の葉及び茎、長命草の葉及び茎並びに桑の葉及び茎からなる群から選ばれるいずれか一種の成分と、を含有する飲食用組成物。
【請求項2】
前記大麦の葉及び茎、甘藷の葉及び茎、長命草の葉及び茎並びに桑の葉及び茎の含有量が、ホップの葉及び/又は茎の含有量と同一又はホップの葉及び/又は茎の含有量よりも多い、請求項1に記載の飲食用組成物。
【請求項3】
ホップの葉及び/又は茎と、大麦の葉及び茎、甘藷の葉及び茎、長命草の葉及び茎並びに桑の葉及び茎からなる群から選ばれるいずれか一種の成分と、を混合することを含む、ホップの葉及び/又は茎を含有する飲食用組成物の風味、呈味又は呈色を改善する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホップ葉と大麦、甘藷、長命草、桑又は水溶性食物繊維を含有する飲食用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホップは、アサ科の多年草で、雌雄異株の蔓性植物である。ホップの毬花(球花、球果)はビールの原料として用いられており、苦味、香り、泡などの要素でありながら、雑菌の繁殖を抑制して保存性を高める働きがある。また、ホップの毬花は、生薬としても健胃効果があるとされ、ハーブの一種として天然薬効成分として用いられる場合もある。ホップの毬花粉末を製造する方法として、特許文献1に記載の方法が知られている。
【0003】
また、ホップの毬花が種々の用途で用いられている一方、ホップの葉はほとんど利用されていなかった。近年になってホップの葉の薬理作用が着目されるようになり、例えば、特許文献2にはホップ葉抽出物が抗がん作用、血圧上昇抑制や抗酸化作用を有する可能性があることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−139185号公報
【特許文献2】特開2012−153659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法によれば、ホップの毬花粉末が得られる。しかし、特許文献1には、ホップの毬花粉末は、ホップの毬花本来の苦味が抑えられたものであることが記載されているが、日常的に摂取が可能であるか否かなど、その嗜好性については記載がない。
【0006】
特許文献2には、ホップの葉の抽出物が抗がん作用、血圧上昇抑制や抗酸化作用を有し、該抽出物は食品に添加して用いることができることが記載されている。しかし、食品へ添加して用いる記載がされるのみで、ホップ葉の摂取形態について具体的な記載はない。
【0007】
そこで、本発明は、日常的に摂取が可能な程度に嗜好性に優れた、飲食用途に適したホップを含有する組成物を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、飲食用途に適したホップを含有する組成物について鋭意研究したところ、ホップの毬花は甘味や旨味などが乏しいために飲食用途に適さないことを見出した。また、ホップの葉単独についてもその苦味やえぐ味のために飲食用途に適さないことを見出した。そこで、嗜好性に優れた組成物について試行錯誤を重ねた結果、驚くべきことに、ホップの葉と、大麦若葉、甘藷葉茎、長命草葉茎、桑の葉茎又は水溶性食物繊維とを組み合わせることにより、風味や呈色に優れた組成物を創作することに成功した。本発明は、かかる成功例に基づき、完成された発明である。
【0009】
したがって、本発明によれば、ホップの葉及び/又は茎と、大麦の葉及び茎、甘藷の葉及び茎、長命草の葉及び茎、桑の葉及び茎並びに水溶性食物繊維からなる群から選ばれるいずれか一種の成分と、を含有する飲食用組成物が提供される。
【0010】
好ましくは、本発明の飲食用組成物において、前記大麦の葉及び茎、甘藷の葉及び茎、長命草の葉及び茎、桑の葉及び茎並びに水溶性食物繊維の含有量が、ホップの葉及び/又は茎の含有量と同一又はホップの葉及び/又は茎の含有量よりも多い。
【0011】
本発明の別の側面によれば、ホップの葉及び/又は茎と、大麦の葉及び茎、甘藷の葉及び茎、長命草の葉及び茎、桑の葉及び茎並びに水溶性食物繊維からなる群から選ばれるいずれか一種の成分と、を混合することを含む、ホップの葉及び/又は茎を含有する飲食用組成物の風味、呈味又は呈色を改善する方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の飲食用組成物は、ホップの葉を含有しつつも、風味や呈色などの嗜好性に優れた組成物であることから、日常的に摂取することが可能なものである。また、本発明の方法によれば、ホップの葉を含有する飲食用組成物の風味、呈味又は呈色を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例の例1における、ホップと大麦若葉との組み合わせの官能評価結果を示した図である。
図2図2は、実施例の例1における、ホップと水溶性食物繊維との組み合わせの官能評価結果を示した図である。
図3図3は、実施例の例2における、ホップと大麦若葉又は水溶性食物繊維との組み合わせの配合量の影響をみた官能評価結果を示した図である。
図4図4は、実施例の例2における、ホップと甘藷、長命草又は桑との組み合わせの影響をみた官能評価結果を示した図である。
図5図5は、実施例の例2における、マスキング剤の影響をみた官能評価結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明の飲食用組成物は、ホップの葉及び/又は茎と、大麦の葉及び茎、甘藷の葉及び茎、長命草の葉及び茎、桑の葉及び茎並びに水溶性食物繊維からなる群から選ばれるいずれか一種の成分と、を含有する。以下、これらの成分についてそれぞれ説明する。なお、本明細書では、「葉及び/又は茎」を、葉、茎又はその両方を表わす用語として茎葉とよぶ。
【0015】
ホップは通常知られているとおりのアサ科の多年草であって、雌雄異株の蔓性植物であるホップ(セイヨウカラハナソウ;Humulus lupulusHumulus lupulus L.)であれば特に限定されない。また、ホップは、カラハナソウ(Humulus lupulus var. cordifolius)のような同じカラハナソウ属(Humulus)に属するホップの変種であってもよい。本発明において、ホップは、その雌株、雄株又はその両方の茎葉を用いれば特に限定されず、その茎葉に加えて、例えば、その花(毬花、球花、球果)、種子、枝、根などを用いてもよい。ホップの品種は特に限定されず、いずれかの品種の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
大麦は通常知られているとおりの中央アジア原産とされ、イネ科に属する一年生又は越年生草本である大麦(Hordeum vulgare L.)であれば特に限定されない。
【0017】
桑はクワ科(Moraceae)植物であれば特に限定されず、例えば、桑の葉及び茎が挙げられる。
【0018】
甘藷はヒルガオ科に属する植物をいい、一般にサツマイモと呼ばれるものであれば特に限定されない。甘藷の品種は、特に限定されない。例えば、すいおう、ジョイホワイト、コガネセンガン、シロユタカ、サツマスターチ、アヤムラサキなどの品種が挙げられる。なかでも、ポリフェノール含有量が高いすいおうが好ましい。甘藷は、全体を用いてもいずれの部位を用いても良いが、茎葉が好ましく、茎葉の先端部分(若茎葉)がより好ましく、黄味がかった緑色を保持している状態の若茎葉がさらに好ましい。
【0019】
長命草は学名がPeucedanum japonicum又はPeucedanum japonicum Thunb.であるものであれば特に限定されず、地方によってボタンボウフウ、チョーメイソウ、チョーメイグサ、チョミーフサ、ボーフー、サクナ、ウプバーサフナ、チョーミーグサ、牡丹防風などと呼ばれている。長命草は全体を用いてもいずれの部位を用いても良いが、例えば、葉、花、根などを用いることができるが、好ましくは葉が用いられる。
【0020】
ホップの茎葉及び大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉は、これらの茎葉から得られる各種の加工物であってもよい。そのような加工物としては、例えば、ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の乾燥粉末、ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の細片化物及びその乾燥粉末、ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の搾汁及びその乾燥粉末、ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の抽出物及びその乾燥粉末などが挙げられるが、これらに限定されない。ただし、加工、貯蔵、運搬などの容易性や使用形態の汎用性といった観点から、ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の乾燥粉末であることが好ましい。
【0021】
例えば、ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉を乾燥粉末化するには従来公知の植物体を乾燥粉末化する方法を用いることができる。そのような方法としては、ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉に対して、乾燥処理及び粉砕処理を組み合わせた方法を用いることができる。乾燥処理及び粉砕処理はいずれを先に行ってもよいが、乾燥処理を先に行うことが好ましい。乾燥粉末化は、この方法に、さらに必要に応じてブランチング処理、殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理を組み合わせてもよい。
【0022】
乾燥処理は特に限定されないが、例えば、ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の水分含量が10%以下、好ましくは5%以下となるように乾燥する処理が挙げられる。乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、遠赤外線乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の植物体を乾燥する方法により行われ得る。加熱による乾燥は、例えば、40℃〜140℃、好ましくは低温乾燥時の温度は40℃〜70℃程度にて、高温乾燥時の温度は70℃〜100℃程度にて、加温により茎葉が変色しない温度及び時間で行われ得る。また、乾燥処理の回数は1回又は2回以上としてもよく、例えば、遠赤外線などを用いて40〜70℃程度にて数時間〜数十時間で低温乾燥処理に供した後に、80℃〜100℃程度にて数時間〜数十時間で高温乾燥処理に供することなどが挙げられる。
【0023】
粉砕処理は特に限定されないが、例えば、手作業やクラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などの粉砕用の機器や器具などを用いて、当業者が通常使用する任意の方法により植物体を粉砕する処理が挙げられる。粉砕されたホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉は、必要に応じて篩にかけられ、例えば、30〜250メッシュを通過するものをホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の粉末として用いることが好ましい。粒径が250メッシュ通過のもの以下とすることで、さらなる加工時にホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の粉末が取り扱いやすくなり、粒径が30メッシュ通過以上のものとすることで、ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の粉末と他の素材との均一な混合が容易になる。また、粉砕処理の回数は1回又は2回以上としてもよく、例えば、手作業などで粗粉砕処理に供した後に、粉砕機などを用いてより細かく粉砕する微粉砕処理に供することなどが挙げられる。
【0024】
具体的なホップの茎葉の乾燥粉末化の方法としては、例えば、直射日光を浴びて生育したホップの茎葉を収穫し、次いで目視によって異物を除去することにより選別し、次いで選別したホップの茎葉を乾燥し、次いで乾燥後のホップの茎葉を粗粉砕し、次いで粗粉砕したホップの茎葉をアトマイザーを用いて微粉砕し、次いで微粉砕したホップの茎葉を殺菌し、振動篩(16メッシュ)を用いて篩過したことによる、ホップの茎葉の乾燥粉末を得る方法が挙げられる。
【0025】
具体的な大麦の茎葉の乾燥粉末化の方法としては、例えば、大麦の茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥し、その後粉砕する方法が挙げられる(特開2004−000210号公報を参照)。この他にも、例えば、大麦の茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで揉捻し、その後、乾燥し、粉砕する方法(特開2002−065204号公報、特許第3428956号公報を参照);大麦の茎葉を乾燥し、粗粉砕した後、110℃以上で加熱し、さらに微粉砕する方法(特開2003−033151号公報、特許第3277181号公報を参照)などが挙げられる。
【0026】
具体的な甘藷の茎葉の乾燥粉末化の方法としては、例えば、甘藷の茎葉を熱風乾燥機、直火式加熱機、回転式乾燥機などを用いて乾燥し、次いで乾燥後の甘藷の茎葉を粗粉砕し、次いで粗粉砕後の甘藷の茎葉を殺菌し、次いで殺菌後の甘藷の茎葉をクラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などの機器や器具を用いて微粉砕する方法が挙げられる。
【0027】
具体的な長命草の茎葉の乾燥粉末化の方法としては、例えば、長命草の茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥し、その後粉砕する方法が挙げられる。また、長命草の茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで揉捻し、その後、乾燥し、粉砕する方法が挙げられる。また、長命草の茎葉を乾燥し、粗粉砕した後、110℃以上で加熱し、更に微粉砕する方法(特開2003−033151号公報を参照)などが挙げられる。
【0028】
具体的な桑の茎葉の乾燥粉末化の方法としては、例えば、桑の茎葉を熱風乾燥機、直火式加熱機、回転式乾燥機などを用いて乾燥し、次いで乾燥後の桑の茎葉を粗粉砕し、次いで粗粉砕後の桑の茎葉を殺菌し、次いで殺菌後の桑の茎葉を衝撃式ミル、ジェットミルなどの機器や器具を用いて微粉砕する方法が挙げられる。
【0029】
ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉を細片化する方法は特に限定されないが、例えば、スライス、破砕、細断などの当業者が植物体を細片化する際に通常使用する方法を用いることができる。細片化の一例として、スラリー化してもよい。スラリー化は、ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉をミキサー、ジューサー、ブレンダー、マスコロイダーなどにかけ、ホップの茎葉又は大麦の茎葉をどろどろした粥状(液体と固体との懸濁液)にすることにより行う。このようにスラリー化することにより、茎葉は、細片の80質量%以上が、好ましくは平均径1mm以下、より好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下、なおさらに好ましくは0.05mm以下となるように細片化され、流動性を有するようになる。
【0030】
ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉を搾汁する方法は特に限定されないが、例えば、ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉又はその細片化物を圧搾する方法、該細片化物を遠心やろ過する方法などを挙げることができる。具体的な搾汁方法の例としては、ミキサー、ジューサーなどの機械的破砕手段によって搾汁し、必要に応じて、篩別、濾過などの手段によって粗固形分を除去することにより搾汁液を得る方法が挙げられる。より具体的には、特開平08−245408号公報、特開平09−047252号公報、特開平5−7471号公報、特開平4−341153号公報などに記載の方法が挙げられ、これらの公知の方法を当業者が適宜選択して実施できる。
【0031】
ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の抽出物を得る方法は特に限定されないが、例えば、ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草又は桑の茎葉又はその細片化物に、エタノール、水、含水エタノールなどの当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて攪拌や加温して抽出する方法などを挙げることができる。抽出物は、必要に応じて濃縮してもよい。
【0032】
ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の加工物のうち、特に、ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の乾燥粉末を用いることが、本発明の飲食用組成物をより一層色が鮮やかで風味が良好なものとできる点などから好ましい。ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の乾燥粉末の特性は特に限定されないが、例えば、その安息角について、20°〜80°が好ましく、30°〜70°がより好ましく、40°〜60°がさらに好ましく、45°〜55°がなおさらに好ましい。なお、安息角の測定方法は、安息角測定器(アズワン、ASK−01)を用いて、サンプル約50gを高度12cmから半径4.3cmのシャーレ中央に落下させ、次いで山型に堆積したサンプルの高さを測定し、次いでシャーレの半径及び堆積したサンプルの高さから下記式にて安息角を算出できる。
安息角=tan−1(b/a)×180÷π(式中、a=シャーレ半径、b=堆積したサンプルの高さを表わす。)
【0033】
水溶性食物繊維は通常知られているとおりのものであれば特に限定されず、例えば、難消化性デキストリン、アルギン酸、ガラクトマンナン、グアーガム、グアーガム加水分解物、グルコマンナン、ペクチン、ポリデキストロース及びカラギーナンなどが挙げられる。これらの水溶性食物繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉、桑の茎葉及び水溶性食物繊維は、その取得方法について特に限定されず、その種類に応じて、収穫したもの、天然物由来のもの、合成したもの、市販されているものなどを利用できる。これらの市販されているものとしては、例えば、実施例に記載のものが挙げられる。
【0035】
ホップの茎葉の含有量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されないが、例えば、本発明の飲食用組成物の固形分中、乾燥質量で、1質量%以上95質量%以下、好ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましくは20質量%以上80質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以上75質量%以下である。ホップの茎葉の含有量が75質量%より多い場合、本発明の飲食用組成物の味や色は良くなるが、苦味、喉ごし及び口当たりが悪化する傾向にある。ホップの茎葉の含有量が25質量%より少ない場合、色や香りが悪化し、苦味、えぐ味、喉ごし及び口当たりが良好になる傾向にある。
【0036】
大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の含有量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されないが、例えば、本発明の飲食用組成物の固形分中、乾燥質量で、1質量%以上95質量%以下、好ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましくは20質量%以上80質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以上75質量%以下である。大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の含有量が75質量%より多い場合、本発明の飲食用組成物の色や香りは良くなるが、味や苦味などの嗜好性が悪化する傾向にある。大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の含有量が25質量%より少ない場合、嗜好性が悪化し、色や香りが良好になる傾向にある。
【0037】
水溶性食物繊維の含有量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されないが、例えば、本発明の飲食用組成物の固形分中、乾燥質量で、1質量%以上95質量%以下、好ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましくは20質量%以上80質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以上75質量%以下である。水溶性食物繊維の含有量が75質量%より多い場合、本発明の飲食用組成物のホップの茎葉による風味が得られなくなる傾向にある。水溶性食物繊維の含有量が25質量%より少ない場合、苦味、えぐ味、喉ごし及び口当たりが悪化し、味、色や香りが良好になる傾向にある。
【0038】
本発明の飲食用組成物は、ホップの茎葉及び大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉を含有するもの、ホップの茎葉及び水溶性食物繊維を含有するもの、並びにホップの茎葉及び大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉及び水溶性食物繊維を含有するものとすることができる。本発明の飲食用組成物において、ホップの茎葉と大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉、桑の茎葉及び/又は水溶性食物繊維との配合比は本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されないが、例えば、[ホップの茎葉]:[大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉]は1:0.05〜2000であり、好ましくは1:0.1〜1000であり、より好ましくは1:0.2〜500であり、[ホップの茎葉]:[水溶性食物繊維]は1:0.05〜2000であり、好ましくは1:0.1〜1000であり、より好ましくは1:0.2〜500である。ただし、本発明の飲食用組成物において、より優れた風味の向上及び苦味やえぐ味の低減を期待するのであれば、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉、桑の茎葉及び水溶性食物繊維の含有量は、ホップの茎葉の含有量と同一又はホップの茎葉の含有量よりも多いことが好ましい。
【0039】
本発明の飲食用組成物は、風味や色合いを向上させる目的や、健康飲食品としての種々の目的などに応じて、ホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉及び水溶性食物繊維の6成分以外のその他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。その他の成分は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に限定されず、飲食用組成物の剤形や品質などに応じて適宜選択することができ、例えば、種々の賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、添加剤などを挙げることができる。
【0040】
例えば、本発明の飲食用組成物に、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、カルシウム、キトサン、レシチンなどを含有させて、本発明の飲食用組成物に栄養補助としての機能を付与するようにしてもよい。また、本発明の飲食用組成物の味を整えることを目的として、糖液や調味料を含有させてもよい。その他の成分の使用量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されず、適宜調整される。
【0041】
本発明の飲食用組成物の形態は特に限定されず、任意の形態とすることができる。本発明の飲食用組成物の形態としては、例えば、飲食などの経口摂取に適した形態、具体的には粉末状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、液状、飴状、ペースト状、クリーム状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、タブレット状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、チュアブル状、シロップ状、スティック状などの各形態が挙げられる。本発明の飲食用組成物の使用量は、1回使用量及び1日使用量ともに特に限定されない。
【0042】
本発明の飲食用組成物は、その形態に応じて、そのまま経口摂取してもよいし、水などに分散又は溶解して経口摂取してもよい。ホップの茎葉及び大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉を粉末として用いる場合は、水溶性食物繊維もまた粉末状にして、本発明の飲食用組成物を粉末飲料用組成物とすることが好ましい。なお、粉末飲料用組成物とは、組成物中の粉末状成分を水や乳などの液体中に分散又は溶解することにより液状物として摂取する形態のものをいう。
【0043】
本発明の飲食用組成物の製造方法は特に限定されず、使用態様に応じて当業者に知られる一般的な製造方法に準じて製造され得る。例えば、顆粒状や固形状のものについては、ホップの茎葉の乾燥粉末と大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の乾燥粉末及び/又は水溶性食物繊維粉末をそのまま又は上記のその他の成分と同時又は数段階に分けて混和したものを、流動層造粒法、攪拌造粒法、押出造粒法などの造粒方法に従って造粒して顆粒状とし、さらに打錠機などを用いる常法に従って圧縮成形することによって錠状に成形できる。
【0044】
本発明の飲食用組成物の包装形態は特に限定されず、剤形などに応じて適宜選択できるが、例えば、PTPなどのブリスターパック;ストリップ包装;ヒートシール;アルミパウチ;プラスチックや合成樹脂などを用いるフィルム包装;バイアルなどのガラス容器;アンプルなどのプラスチック容器などが挙げられる。
【0045】
本発明の飲食用組成物は、後述する実施例において例証されるとおり、ホップの葉を単独で含有するもの、ホップの毬花を含有するもの又は大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉又は桑の茎葉の代わりに大麦の麦芽を含有するものと比べて、色が鮮やかであることから見た目が美しく;甘味、旨み、美味しさ及び香りが優れていることから風味が良く;苦味やえぐ味が低減され、かつ、喉ごし及び口当たりがよいことから飲みやすく嗜好性に優れるものである。また、本発明の飲食用組成物は、一般的にマスキング剤として知られているものを含有するものに比べて、甘味、美味しさ、香り、旨みなどの風味が良いだけではなく、えぐ味や苦味が低減されていることから後味が良いといった特性を有することが期待できる。したがって、本発明の飲食用組成物におけるホップの茎葉と組み合わせられる大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉、桑の茎葉や水溶性食物繊維は、単にホップの茎葉の苦味やえぐ味を抑制又は低減することだけに作用するのではない蓋然性がある。このような本発明の飲食用組成物は、ホップの茎葉や該茎葉に含有されている成分を摂取することを期待する使用者に対して、格別顕著に有用なものである。
【0046】
また、本発明の飲食用組成物は、ホップの茎葉と組み合わせられるべき大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉、桑の茎葉や水溶性食物繊維に由来するビタミン類、ミネラル類、食物繊維などを摂取することができるものであることから、これらに基づく副次的な効果を奏し、使用者の健康維持に資する。
【0047】
本発明の飲食用組成物は、生体に対して一定の機能性を有する飲食品である機能性飲食品の形態又は機能性飲食品に配合されるものとすることができる。機能性飲食品は、例えば、特定保健用飲食品、機能性表示飲食品、栄養機能飲食品、保健機能飲食品、特別用途飲食品、栄養補助飲食品、健康補助飲食品、サプリメント、美容飲食品などのいわゆる健康飲食品;乳児用飲食品、妊産婦用飲食品、高齢者用飲食品などの特定者用飲食品を包含する。さらに機能性飲食品は、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)の食品規格に基づく健康強調表示(Health claim)が適用される健康飲食品を包含する。
【0048】
ホップの茎葉とホップの茎葉、大麦の茎葉、甘藷の茎葉、長命草の茎葉、桑の茎葉及び/又は水溶性食物繊維とを組み合わせたものは風味、呈味又は呈色を改善したものであることから、本発明の別の態様は、ホップの葉及び/又は茎と、甘藷の葉及び茎、長命草の茎葉、桑の葉及び茎並びに水溶性食物繊維からなる群から選ばれるいずれか一種の成分と、を混合することを含む、ホップの葉及び/又は茎を含有する飲食用組成物の風味、呈味又は呈色を改善する方法である。
【0049】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例】
【0050】
[例1 官能評価(1)]
以下の表1に示す配合を含有する組成物を製造した。同表中、ホップ葉及びホップ毬花としては、それぞれ市販されるホップ葉微粉及び市販されるホップ花微粉を用いた。大麦若葉としては、大麦若葉末(東洋新薬社)を用いた。水溶性食物繊維としては、難消化性デキストリン(松谷化学工業社;「パインファイバーBi」)を用いた。なお、ホップの葉は以下のとおりにして製造されたものである。
【0051】
直射日光を浴びて生育したホップの茎葉を収穫し、次いで目視によって異物を除去することにより選別し、次いで選別したホップの茎葉を乾燥し、次いで乾燥後のホップの茎葉を粗粉砕し、次いで粗粉砕したホップの茎葉をアトマイザーを用いて微粉砕し、次いで微粉砕したホップの茎葉を殺菌し、振動篩(16メッシュ)を用いて篩過したことにより、ホップの葉の試料を得た。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示す実施例1〜2、参考例1〜3及び比較例1〜4の組成物について、甘味、苦味、えぐ味などの項目について官能評価を実施した。実施例1〜2及び比較例1〜4の組成物については2gを、又は参考例1〜3の組成物については1gを、水100mlに懸濁して、各被験試料を得た。被験者として、健常な成人9名を無作為に選出した。
【0054】
これらの被験者9名のそれぞれに対し、各被験試料を経口摂取させ、官能に関する評価を評点法により実施した。評価項目は、「甘味」、「苦味」(苦味の弱さ)、「えぐ味」(えぐ味の弱さ)、「美味しさ」、「色」(色の鮮やかさ)、「香り」、「旨み」、「喉ごし」及び「口当たり」の9項目とした。
【0055】
官能評価の各項目について、以下のとおりに、評点をつけた。なお、参考例1(ホップ葉)についての各項目の評点を5とした。
甘味:甘くない 1 ← 5 → 9 甘い
苦味:苦い 1 ← 5 → 9 苦くない
えぐ味:えぐ味が強い 1 ← 5 → 9 えぐ味が弱い
美味しさ:美味しくない 1 ← 5 → 9 美味しい
色:鮮やかでない 1 ← 5 → 9 鮮やか
香り:悪い 1 ← 5 → 9 良い
旨み:旨みがない 1 ← 5 → 9 旨みがある
喉ごし:悪い 1 ← 5 → 9 良い
口当たり:悪い 1 ← 5 → 9 良い
【0056】
各項目の評点の平均値をとった官能評価の結果について、ホップと大麦若葉との組み合わせの結果を図1に、ホップと水溶性食物繊維との組み合わせの結果を図2にそれぞれ示す。
【0057】
図1に示されているとおり、ホップ葉及び大麦若葉を用いた実施例1は、ホップ毬花や大麦麦芽を用いた比較例1〜3と比べて、甘味、苦味、えぐ味、美味しさ、香り、旨み、喉ごし、口当たりといった風味に対する評価が優れていた。また、驚くべきことに、実施例1は、成分の含有量が2倍でありながらも、甘味、苦味、えぐ味、美味しさ、色、香り、旨みはホップ葉のみの参考例1よりも優れており、さらにこれらの項目のほとんどにおいて大麦若葉のみの参考例2と遜色がなかった。特に、呈味において重要な評価項目である旨みについては、実施例1は、参考例2よりも優れた値を示した。これらの結果からは、ホップ葉及び大麦若葉を含有する組成物は、風味及び呈色が優れたものであり、特にホップ葉の有する風味や呈色を改善し得るものであることから、むしろホップ葉の有する風味や呈色をマスキングする効果がある可能性があることが示唆される。
【0058】
また、図2に示されているとおり、ホップ葉及び水溶性食物繊維を用いた実施例2は、ホップ毬花及び水溶性食物繊維を用いた比較例4と比べて、すべての項目において優れていた。また、実施例2は、成分の含有量が2倍でありながらも、全ての項目において参考例1よりも優れている、又は同程度であった。特に、実施例2が、比較例4や参考例1に対して、甘味、苦味、えぐ味、美味しさ、旨みといった呈味に対する評価が優れていたことは、本発明者らによって初めて見出された驚くべきことである。これらの結果からは、ホップ葉及び水溶性食物繊維を含有する組成物は、呈味が優れたものであり、特にホップ葉の有する呈味を改善し得るものであることから、むしろホップ葉の有する風味や呈色をマスキングする効果がある可能性があることが示唆される。
【0059】
以上の結果から、実施例1〜2の組成物は、風味、呈味及び呈色のいずれか1種又は2種以上の特性が優れたものであり、ホップ葉の有するこれらの特性を改善又はマスキングすることができるものであることから、ホップ葉を含有しながらも、旨みなどの風味が良い、えぐ味や苦味が低減されていることから後味が良い、喉ごしや口当たりが良い、見た目が美しいといった特性を有することが期待できる、飲食において嗜好性に優れるものであった。
【0060】
[例2 官能評価(2)]
以下の表2及び表3に示す配合を含有する組成物を製造した。同表中、ホップ葉、大麦若葉及び水溶性食物繊維としては、例1と同一のものを使用した。甘藷茎葉、長命草及び桑葉は、それぞれ、「甘藷若葉末」(東洋新薬社)、「長命草末」(東洋新薬社)及び「桑若葉末」(東洋新薬社)を用いた。また、マスキング剤としては、マルチトール(上野製薬社;「粉末マルチトールウエノ60M」)を用いた。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
表2及び表3に示す実施例1〜19及び比較例1〜8の組成物について、甘味、苦味、えぐ味などの項目について、例1と同様に官能評価を実施した。なお、比較例1(ホップ葉)についての各項目の評点を5とした。
【0064】
各項目の評点の平均値をとった官能評価の結果について、素材の配合量の影響をみた表2に示す実施例1〜19並びに比較例1〜3及び6〜8の結果を図3及び図4に、マスキング剤の影響をみた表2及び表3に示す実施例2、7、12、15及び18並びに比較例1、4及び5の結果を図5にそれぞれ示す。
【0065】
図3に示されているとおり、ホップ葉及び大麦若葉又は水溶性食物繊維の比(ホップ葉:大麦若葉又は水溶性食物繊維)が0.0066〜1.5:1.9934〜0.5である組成物は、これらのいずれかの素材のみと比べて、甘味、美味しさ、香り及び旨みといった嗜好性に直接影響する項目の評価が優れていた。
【0066】
図4に示されているとおり、ホップ葉と、甘藷茎葉、長命草又は桑葉との比(ホップ葉:甘藷茎葉、長命草又は桑葉)が0.5〜1.5:1.5〜0.5である組成物は、これらのいずれかの素材のみと比べて、総合点に係る官能評価が優れていた。
【0067】
図5に示されているとおり、ホップ葉と大麦若葉、水溶性食物繊維、甘藷茎葉、長命草又は桑葉とを含有する組成物は、マスキング剤又はマスキング剤を含有する組成物(比較例4及び5)に比べて、甘味、美味しさ、香り及び旨みといった嗜好性に直接影響する項目に加えて、驚くべきことに、苦味やえぐ味といったマスキング効果が期待される項目について高い評価が得られた。さらに、ホップ葉と大麦若葉、水溶性食物繊維、甘藷茎葉、長命草又は桑葉とを含有する組成物は、従前のマスキング剤により消失される香りの評価についても良好な評価が得られた。
【0068】
これらの結果からは、例1と同様に、ホップ葉と、大麦若葉、水溶性食物繊維、甘藷茎葉、長命草又は桑葉とを含有する組成物は、嗜好性に優れたものであり、さらに従前のマスキング剤よりもホップ葉の有する風味や呈色をマスキング又は改善する効果がある可能性があることがわかった。
【0069】
したがって、ホップ葉と、大麦若葉、水溶性食物繊維、甘藷茎葉、長命草又は桑葉とを含有する組成物は、風味、呈味及び呈色のいずれか1種又は2種以上の特性が優れたものであり、ホップ葉の有するこれらの特性を改善又はマスキングすることができるものであることから、ホップ葉を含有しながらも、甘味、美味しさ、香り、旨みなどの風味が良い、えぐ味や苦味が低減されていることから後味が良いといった特性を有することが期待できる、飲食において嗜好性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、ホップ葉を含有しながらも、風味や呈色が良好で嗜好性が高く、日常的な飲食に適した飲食品、例えば、一般飲食品、特定保健用飲食品、機能性表示飲食品、栄養機能飲食品、保健機能飲食品、特別用途飲食品、栄養補助飲食品、健康補助飲食品、サプリメント、美容飲食品、その他の健康飲食品、医薬用部外品として、又はこれらに配合される飲食品配合剤として利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5