(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の振動モータは、該振動モータの回転軸を結ぶ平面が前記延伸ロッドと直角になるようにして、前記取付台座を介して前記延伸ロッドに設置されていることを特徴とする請求項2又は3記載の破砕機。
前記複数の振動モータは、前記油圧シリンダの下方に延伸し、前記中央ウェッジを保持するロッドに取付台座を介して対向するようにして設置されていることを特徴とする請求項5記載の破砕機。
前記複数の振動モータは、該振動モータの回転軸を結ぶ平面が前記ロッドと直角となるようにして、前記取付台座を介して対向するように前記ロッドに設置されていることを特徴とする請求項6又は7記載の破砕機。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、図面を参照して本発明の破砕機について説明する。
図1(a)は、本発明の破砕機本体の構成を示した図であり、
図1(b)は、振動ユニットの側面を示した図であり、
図2は、破砕機を構成する油圧シリンダの断面を示した図である。
まず、
図1(a)に示すように、破砕機100は、ボディ10と、楔20と、油圧シリンダ30と、振動ユニット40と、破砕機支持体50とから構成されている。
【0019】
図2に示すように、楔20は、一対のウェッジライナー21,21と、一対のウェッジライナー21,21の間隙に配置される中央ウェッジ22から構成されている。一対のウェッジライナー21,21は、ボディ10の下部に保持されており、中央ウェッジ22は、ボディ10の内部に挿通されているピストンロッド31の下端にジョイント31aを介して保持されている。
【0020】
ピストンロッド31は、ピストン32に接続され、その動作により油圧シリンダ30内を上下方向に移動する。ピストン32は、油圧シリンダ30の上方に向かって延伸した延長ロッド33と接続されている。
【0021】
図1に戻って、振動ユニット40は、油圧シリンダ30の上部に設けられており、2つの振動モータ41と、振動モータ41を延長ロッド33に取り付けるための振動モータ取付台座42と、防音・防水カバー43とから構成されている。
振動モータ41は、一対の偏心ウェイトを備えた回転軸の回転により回転振動を発生させる一般的な振動モータであり、本実施形態において、延長ロッド33に設置する場合には、2つの振動モータ41を対向するようにして振動モータ取付台座42を介して固定する。
なお、図中では、2つの振動モータ41を対向するようにして振動モータ取付台座42に固定しているが、例えば、4つの振動モータ41をそれぞれ対向するようにして振動モータ取付台座42に固定してもよい。また、振動モータ取付台座42に固定される振動モータ41は2つ以上でかつ、偶数個である。
【0022】
振動モータ取付台座42は、油圧シリンダ30に設けられている延長ロッド33と接続されており、振動モータ41で発生する高周波振動を延長ロッド33へ伝達させる。
また、防音・防水カバー43は、ゴム製または鋼鉄製で振動モータ取付台座42の周囲を囲むようして取り付けられている。
なお、振動ユニット40は、ピストン32の動きと同様に上下方向に移動する。
【0023】
破砕機支持体50は、油圧パワーショベル(図示せず)のアーム60の先端に接続されたアタッチメント51と、アタッチメント51に取り付けられるスイベルを含むフック部材52と、吊り金具53と、ワイヤー54と、台座55とから構成されている。
【0024】
アタッチメント51は、油圧パワーショベルのバケットを取り外したアーム60の先端部に設けられているバケット取付用の軸ピン61を利用して取り付けられている。このアタッチメント51の中央部からはスイベルを含むフック部材52が吊り下げられており、フック部材52の先端に吊り金具53が接続されている。
【0025】
吊り金具53の両端にはワイヤー54が取り付けられ、ワイヤー54の下端は、油圧シリンダ30の上端に設けられている台座55に接続している。
これにより、破砕機支持体50は、振動ユニット40を含む破砕機100を支持することができる。
【0026】
次に、
図3を参照して破砕機を用いて岩盤を割岩する方法について説明する。
図示するように、破砕機100を用いて岩盤を圧壊するには、まず、削岩機など(図示せず)で岩盤に下穴を空け、下穴に破砕機100を差し込む(
図3(a))。
この下穴の内径は、ウェッジライナー21,21の間隙に中央ウェッジ22が収まっている状態のウェッジライナー21,21の外径よりも大きく、中央ウェッジ22がウェッジライナー21,21の間隙から押し出された状態の外径よりも小さい。
そして、中央ウェッジ22をウェッジライナー21,21の間隙に収まっている状態で下穴に差し込む。
【0027】
次に、油圧シリンダ30を作動させることにより中央ウェッジ22を下方へ前進させる(
図3(b))。油圧シリンダ30を作動させるとピストン32の下降により、ピストンロッド31にジョイント31aを介して接続されている中央ウェッジ22が下方に前進する。この中央ウェッジ22の前進によって、下穴の底面を圧壊することができる。
【0028】
また、岩盤が硬く中央ウェッジ22が前進できない場合には、振動ユニット40が備える振動モータ41を作動させる(
図3(c))。2つの振動モータ41を作動させ、これらの回転運動が同期すると、一軸の上下方向に高周波振動が発生し、この高周波振動が上下運動として加わり、振動モータ取付台座42を介して延長ロッド33、ピストン32及びピストンロッド31を伝達して中央ウェッジ22に伝わる。
これによって、静圧による割岩力とは別の衝撃を岩盤へ伝えて岩盤に亀裂を生じさせ、従来の静圧より多くの破砕効果を期待することができる。
【0029】
次に、振動ユニットを備えた破砕機で岩盤を割岩する実験を行った。その方法及び結果について下記に示す。
図4は、本実施形態に係る振動ユニットを備えた破砕機による割岩を行った場合の掘削量の実測値を示した表である。
【0030】
まず、割岩する岩盤の切羽造成及び表面処理を行い、次に、穿孔作業を行う。この穿孔作業は、破砕機100の楔20を挿入するための孔(孔径76mm)を空けるためのものである。そして、穿孔した孔に破砕機100の楔20を挿入し、油圧シリンダ30と振動モータ41とを作動させて割岩作業を行う実験を行った。
【0031】
図4に示すように、割岩作業を3日間にわたって6回行った。
1回目は、孔数が17本であり、割岩数量が1.0×1.0×1.0で、破砕量が17.0m
3であった。
2回目は、孔数が14本であり、割岩数量が1.0×1.4×1.0で、破砕量が19.6m
3であった。
3回目は、孔数が28本であり、割岩数量が1.0×1.2×1.0で、割岩数量が33.6m
3であった。
4回目は、孔数が15本であり、割岩数量が1.0×1.0×1.0で割岩数量が15.0m
3であった。
5回目は、孔数が29本であり、割岩数量が1.0×1.2×1.0で、割岩数量が34.8m
3であった。
6回目は、孔数が23本であり、割岩数量が1.0×1.0×1.0で、割岩数量が23.0m
3であった。
【0032】
なお、実験終了後に測量した結果、振動ユニットを備えた破砕機によって掘削した面積は186m
2で掘削高は2.6mであることから全掘削数量は、
186m
2×2.6m=483m
3
となる。
ただし、岩盤表面処理とブレーカによる仕上げ分の掘削高は1.6mであるため、その掘削数量は、
186m2×1.6m=297m3
となる。
そこで、全岩数量は、
483m
3−297m
3=183m
3となる。
【0033】
しかしながら、
図4に示すように、計算上の割岩数量は、抵抗線W1.0mが55孔、抵抗線W1.2mが57孔、抵抗線W1.4mが14孔、合計126孔を割岩したので、孔間隔Bと掘削高Hを全孔1.0mにして実施した割岩数量は143m
3となる。ところが、上記したように、本実施形態の破砕機で掘削した割岩数量は186m
3であって、実際には、
186m
3−143m
3=43m
3
であり、43m3多く割岩破砕することができた。
【0034】
なお、使用した振動モータは、高周波振動モータKHE−7.5−2T(180Hz3.5A 0.75kw×2台=1.5kw(一軸最大:1.5t) ユーラステクノ株式会社製)である。割岩時の高周波振動値は、
図4(b)に示す。そして、今回の160Hzの周波数で割岩を行った。
【0035】
このように、本実施形態の破砕機によれば、振動ユニットで発生した高周波数の振動がウェッジライナー20,20及びウェッジ21に伝わることによって、より多く割岩することができるため、短時間で割岩作業を終わらせることができる。
【0036】
また、硬い岩盤を割岩する際に、従来の油圧振動機(打撃・パーカッション)では動作音が高く騒音となるといった問題があるが、これに対し、本実施形態の破砕機では、
図4(b)に示すように約6000〜10000rpmの回転数によって高周波を発生させることができる振動モータを採用しているため、高周波によって割岩を行うことができ、動作音を低くすることができることから騒音を抑え、低公害を実現させることができる。
【0037】
また、油圧による機構では打撃数が最大1500rpmが一般的であり、その性質は振動というよりは打撃に近く、その振幅の長さも起因し、結果、連続的な打撃音となり、本実施形態に係る破砕機の高周波振動の振幅の短さや静寂性と比較した場合とでは異なる。
【0038】
<第2の実施形態>
次に、
図5を参照して、第2の実施形態に係る破砕機について説明する。
図5(a)は、第2の実施形態に係る破砕機の構成を示した図であり、
図5(b)は、第2の実施形態に係る破砕機の振動ユニット部分の側面を示した図である。
図示するように、破砕機200は、振動ユニット40がボディ10の下部に設置された構成となっている。
具体的には、ボディ10内に挿通されているピストンロッド31の下端に延長ロッド33が接続されており、この延長ロッド33に対向する2つの振動モータ41が振動モータ取付台座42を介して固定されている。また、第2の実施形態では、延長ロッド33の下端に中央ウェッジ22が接続されている。
なお、ピストンロッド31の下端に延長ロッド33を接続させることなく、ピストンロッド31の下端に中央ウェッジ22を接続させてもよい。この場合、ピストンロッド31はボディ10の下部から延出した長さのものがピストン32に接続されており、このピストンロッド31に取付台座42を介して2つの振動モータを固定する。
【0039】
このような構成により、対向する2つの振動モータ41と中央ウェッジ22との距離が短くなるため、対向する2つの振動モータ41から発生する高周波振動を減衰させることなく中央ウェッジ22に伝えることができる。この破砕機200では、まず、2つの振動モータ41を稼働させ、2つの振動モータ41の回転の上昇に伴い同期することにより上下運動の一軸の高周波振動が発生し、この高周波振動がピストンロッド31や延長ロッド33を介してを介して中央ウェッジ22に伝わる。
なお、振動モータ41の数については、第1の実施形態と同様に、2つ以上で偶数個であることが望ましい。
【0040】
また、第2の実施形態に係る破砕機200の場合、油圧シリンダ30の上部に吊り金具53が設置され、スイベルを含むフック部材52で直接吊り上げることで破砕機200本体を支持している。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る破砕機は、油圧シリンダによる押し込み力では割岩できない岩盤に対して、対向する2つの振動モータから発生する高周波振動を中央ウェッジに伝達させ、静的な通常の油圧による圧力に加え、高周波振動による力が加わることにより、油圧のみの割岩より割岩力を増加させることができる。また、高周波振動によって中央ウェッジが振動することにより、ウェッジライナーと中央ウェッジとの接触面積を小さくし接触を低減させることで油圧力をより有効に割岩力に変換することができ、また、摩擦熱の発生を抑制することができ、ウェッジライナーと中央ウェッジを破損させることなく硬い岩盤を割岩させることができる。