【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、各核実験での被験者は、その実験での被験者の番号を意味するだけであり、「被験者1」や「被験者2」が全ての実験で同一人物を意味するものではない。
【0060】
[実験1]
図3に示すめがね型の噴霧装置(「1号機」)を作製した。めがねフレームは、JINS MOISTURE(品番:MST−13A−003、株式会社ジェイアイエヌ)を使用し、左側のテンプル6の水タンクを外してできた空間に収容部11と噴霧素子16とを装着した。収容部11として、水を染みこませたスポンジを入れたプラスチック容器(容量約5mL)を用い、適度な量が噴霧素子16に接触するように噴霧素子16に接触するスポンジの面積を調整した。噴霧素子16は、透液型の超音波振動板(発信周波数120kHz、電源5V・500mA)を用いた。この超音波発振板は、微細孔を有しており、一方の面に接触した水を微細孔に通過させてミストにすることができる。この1号機により、発生したミストを、めがねと眼の間に空間に送り込んだ。
【0061】
(湿度測定1)
図9は、めがねと眼との間の湿度と、1号機の作動時間との関係を示すグラフである。湿度計は、Sensiron社製温湿度計評価キット(EK−H4)を用い、温湿度センサーも同社のSHT−21を使用し、めがねに内側に取り付けてデータを取得した。
図9に示すように、1号機を20秒間作動させることにより、47%だっためがね内の相対湿度が93%まで上昇し、飽和状態になった。計30秒間動作させた後に超音波発振素子をOFFにしたが、その後もしばらく湿度の飽和状態は続いた。時間の経過とともに、めがねと顔の隙間から湿気が逃げていくに伴い、湿度が緩やかに下がっていき、5〜6分かけて元の環境湿度に戻っていくのが観測された。湿度の時間変化の測定結果を以下に示す。
【0062】
(湿度測定2)
図10は、超音波発振素子をON/OFF制御したときの湿度と作動時間との関係を示すグラフである。
図10に示すように、湿度を80%±10%の範囲に湿度を収めることができた。
【0063】
[実験2]
めがね型の噴霧装置(「2号機」)を作製した。この2号機は、噴霧素子16には透液型の超音波発振板(振動周波数は100kHz、電源:5VDC、micro−USB接続)を用い、収容部11には容量約5mL容器を用い、この容器と超音波発振板を左右のテンプル6に噴霧可能に装着した。超音波発振板を電気的にON/OFF時間を設定し、ON/OFFが左右交互になるように作動させた。それ以外は、1号機と同様とした。
【0064】
(湿度測定)
図11は、ON=30ms、OFF=100msのサイクルで水を噴霧した時の右眼前空間の湿度変化を示すグラフである。実験1に比べて超音波発振板での発振が弱めであり、当初からフレーム周囲の隙間からミストが逃げがちであったが、
図11中の矢印で示すように、4分30秒頃に隙間を少しふさぐことにより、約70%の湿度となり、湿度を安定させることも可能であった。
【0065】
[実験3]
実験1で用いた1号機を用い、水のミストを眼前の空間に噴射し、前後でのドライアイの指標である涙液層破壊時間(Tear film break-up time/BUT)を評価した。実験は、超音波発振板を作動して90%を超える程度に湿度を上げ、その状態を30秒間維持し、その前後でBUTを測定した。なお、1号機は左眼のみに容器と超音波発振板が設けられているので、左眼のみ測定した。BUTの測定方法は、フルオレセイン染色液(0.5%)約1μLを点眼し、涙液層が破壊されるまでの時間を測定した。正常は10秒以上、異常は5秒以下とされている。
【0066】
2名の被験者で評価した。被験者1は、BUTが3秒から5秒になり、被験者2はBUTが3秒から10秒になり、両者ともBUTが上昇してドライアイ症状の軽減が見られた。特に被験者2のBUTは10秒と正常値まで顕著に上昇した。
図12は、この結果をまとめたグラフである。
【0067】
[実験4]
実験2と同様の2号機を用い、水のミストを眼前の空間に噴射し、前後でのドライアイの指標であるBUTを評価した。実験は、フレーム周りをテープで覆って湿気が逃げるのを防いだ後、超音波発振板を作動して、30ミリ秒ON、100ミリ秒OFFの繰り返しで、ON/OFFが左右交互になるように5分間作動させた。その前後でBUTを測定した。BUT測定は、上記実験3と同じ方法で行った。評価は、スタート前から終了まで、1分ごとに眼の気持ち良さについて官能評価した。官能評価は、スタート時を0(ゼロ)とし、1(少し気持ち良いような感じがする)、2(少し気持ち良い)、3(気持ち良い)、4(結構気持ち良い)、5(最高に気持ち良い)の5段階とした。
【0068】
2名の被験者で評価した。被験者1は、「左/右」のBUTが3秒/3秒から5.7秒/4秒になり、官能評価もスタート時の0から4になった。被験者2も、「左/右」のBUTが3秒/1秒から4秒/2秒になり、官能評価もスタート時の0から1/4になった。
図13は、この結果をまとめたグラフである。被験者1はBUT及び官能評価の改善が見られた。一方、被験者2は、ドライアイ症状のひどい左眼の官能評価は0から1への僅かな改善のみであったが、これは2号機が水のミスト噴射の程度が弱いためであり、その程度の改善により解決できる。
【0069】
[実験5]
実験2と同様の2号機を用い、実験2よりも長いON時間にして、1回のミスト噴射量を増やした。水のミストを眼前の空間に噴射し、前後でのドライアイの指標であるBUTを評価した。実験は、フレーム周りをテープで覆って湿気が逃げるのを防いだ後、超音波発振板を作動して、1024ミリ秒ON、10ミリ秒OFFの繰り返しで、ON/OFFが左右交互になるように15分間作動させた。その前後でBUTを測定した。BUT測定は、上記実験3と同じ方法で行った。評価は、スタート前から終了まで、1分ごとに眼の気持ち良さについて官能評価した。官能評価は、スタート時を0(ゼロ)とし、1(少し気持ち良いような感じがする)、2(少し気持ち良い)、3(気持ち良い)、4(結構気持ち良い)、5(最高に気持ち良い)の5段階とした。
【0070】
1名の被験者で評価した。被験者1は、「左/右」のBUTが3秒/3.3秒から5分後には4秒/4秒になり、10分後には4.7秒/4秒となった。
図14は、この結果をまとめたグラフである。官能評価もスタート時の0から10分後には4になった。被験者1ではBUT及び官能評価の改善が見られた。また、めがねレンズは曇ることがなかった。
【0071】
[実験6]
実験2と同様の2号機を用い、超純水で500倍希釈のメントール(株式会社北見ハッカ通商、「ハッカ油セット」)を使用し、そのミストを眼前の空間に噴射し、前後での官能評価のみ行った。実験は、フレーム周りをテープで覆ってメントール湿気が逃げるのを防いだ後、超音波発振板を作動して、実験2と同様、30ミリ秒ON、100ミリ秒OFFの繰り返しで、ON/OFFが左右交互になるように5分間作動させた。官能評価は、スタート前から終了まで、1分ごとに眼の気持ち良さについて官能評価した。官能評価は、スタート時を0(ゼロ)とし、1(少し気持ち良いような感じがする)、2(少し気持ち良い)、3(気持ち良い)、4(結構気持ち良い)、5(最高に気持ち良い)の5段階とした。
【0072】
1名の被験者で評価した。官能評価は、スタート時の0から、1分後から5分後まで4であったが、涙はあまり出なかった。2号機は、1号機に比べて噴霧量が弱いため、爽快感はあるが最高度ではなく、涙も出るほどではなかった。
【0073】
[実験7]
カップ型の噴霧装置31を作製した。カップ型の噴霧装置は、小林製薬株式会社の「アイボン(登録商標)」を購入し、付属のアイカップを利用して、
図8に示す形態のものを試作した。超音波発振素子は、実験1で用いた超音波発振板と同じ120kHzタイプのものを用いた。付属のアイカップの底面に穴を開け、そこに超音波発振板を設置した。
図8に示すように、超音波発振板の裏面にプラスチック容器(スポンジが中に入っている)を当てることで、カップ内にミストが噴霧されるようにした。
【0074】
アイボン(登録商標)の原液を使用し、さらにその原液を超純水で種々の倍率に希釈したものを用い、そのミストを眼前の空間に噴射し、前後での官能評価(爽快感、痛み、涙が出たかどうか)を行った。実験は、カップの開口部を眼の周囲に押し当てた後、超音波発振板を作動して、30秒間噴霧した。爽快感は、−3(不快最大)、−2、−1、0(変化無し)、1、2、3(爽快最大)のランクで相対評価した、痛みは、0(無し)、1(少し痛い)、2(痛い)、3(とても痛い)のランクで相対評価した。
【0075】
1名の被験者で評価した。官能評価の結果を表1に示した。表1に示すように、原液での通常使用ほどの爽快感ではないが、希釈液でも爽快感が得られることがわかった。薄める度合いが低いと、原液での洗浄と比べて、ミストだと痛みと共に涙が出た。ことから、ある程度薄めての使用が必要であることがわかった。
【0076】
【表1】
【0077】
[実験8]
実験7のカップ型の噴霧装置を用い、超純水でメントール(株式会社北見ハッカ通商、「ハッカ油セット」)の希釈倍率を変えて、そのミストを眼前の空間に噴射し、前後での官能評価(爽快感、痛み、涙が出たかどうか)を行った。それ以外は、実験7と同じである。
【0078】
2名の被験者で評価した。官能評価の結果を表2に示した。表2に示すように、メントールは刺激が強く、爽快感は高いが、涙も出る(ドライアイ症状の人は、涙が出ることが爽快だと感じる傾向にある)。それに加えて、薄める度合いが低いと痛みが起こる。10倍希釈(一番濃い)では、被験者1は爽快(3)だが、痛い(3)と評価した。一方、被験者2は痛みが強く(3)、爽快ではない(0)と評価した。
【0079】
【表2】
【0080】
[実験9]
実験2と同様の2号機を用い、超音波発振板のパワーを4倍に上げて水の噴射量を増した実験を行った。超音波発振板の作動は、59ミリ秒ON、41ミリ秒OFFの繰り返しで、ON/OFFが左右同時になるように5分間作動させた。その前後でBUTを測定した。なお、BUT測定では、前もって測定(BEFORE測定)し、5分間作動させた後にメガネをかけたまま測定(AFTER測定)し、めがねを外してさらに5分後に再度測定(最終測定)した。評価は、スタート前から終了まで、1分ごとに眼の気持ち良さを官能評価した。官能評価は、スタート時を0(ゼロ)とし、1(少し気持ち良いような感じがする)、2(少し気持ち良い)、3(気持ち良い)、4(結構気持ち良い)、5(最高に気持ち良い)の5段階とした。4名の被験者で評価した。
【0081】
被験者1はドライアイ症状のある被験者である。「左/右」のBUTは、BEFORE測定=2.3秒/3.0秒、AFTER測定=7.0秒/7.0秒、最終測定=6.3秒/5.0秒であり、AFTER測定及びメガネを外した最終測定でも良い状態であった。そこで、さらに5分後にBUT測定したところ、3.7秒/3.3秒となって元の値に戻りつつあった。官能評価は、0(BEFORE測定)、4(AFTER測定)、4(最終測定)、3(さらに5分後の測定)になった。
【0082】
被験者2はドライアイ症状のない被験者である。「左/右」のBUTは、BEFORE測定=5秒/8秒、AFTER測定=10秒以上/10秒以上(健常者はBUTが10秒以上になるので10秒まで測定して停止した)、最終測定=10秒以上/10秒以上であった。官能評価は、0(BEFORE測定)、4(AFTER測定)、3(最終測定)になった。この被験者2は、元々ドライアイではないので「濡れた」という感覚はあったが、それ以外に、角膜のキズが癒されているような感覚はわからなかった。
【0083】
被験者3はドライアイ症状のある被験者である。「左/右」のBUTは、BEFORE測定=4秒/5秒、AFTER測定=7秒/10秒、最終測定=5.5秒/4.0秒であった。官能評価は、0(BEFORE測定)、3(AFTER測定)であり、最終測定は行わなかった。
【0084】
被験者4はドライアイ症状のある被験者である。「左/右」のBUTは、BEFORE測定=10秒/7.3秒、AFTER測定=10秒以上/10秒以上、最終測定=6.7秒/8.3秒であった。官能評価は、0(BEFORE測定)、1(AFTER測定)、4(最終測定)であった。AFTER測定では、化粧が眼に入って眼が沁みたとのことであったが、AFTER測定後にめがねを外すと目の沁みも引き、爽快さが残った。
【0085】
図15は、これらの結果を示すグラフである。被験者1〜4の4人のBUTの平均値は、BEFORE測定が5.6秒であり、AFTER測定が8.9秒であった。t検定(t−test)を行ったところ、p値は0.009と小さく、有意差があることが認められた、
【0086】
以上説明したように、大量の液体を使うのではなくほんの僅かな量の液体をもってして局所的な小空間を必要なミストで満たし、狙った効果を得ることができ、十分な原理確認ができた。上記した実験結果から、水を超音波発振素子でミスト化して眼前の局所空間に飛ばすことで、眼は心地良さを感じ、ドライアイの指標であるBUTも改善の傾向を明らかに示した。機器として、1号機は湿度が短時間で90%を超えるほど噴霧のパワーは十分ではあるが、ON/OFFしかできないために湿度の制御が容易ではない。2号機はON/OFF時間をそれぞれ制御できる優位性があるが、噴霧パワー自体が比較的弱く、湿度が70%程度までしか上がらない(よって、めがねが曇ることもない)。めがねフレームと顔の隙間から湿気が漏れることも明らかになり、フレーム周囲に漏れをガードするための覆いを付けると効果的なことが分かった。また、パワーアップした2号機では、噴霧量を増すことができ、効果があった。
【0087】
また、ドラッグデリバリーへの応用の可能性を見た結果、アイボンをミスト化して眼に飛ばすことで、希釈の必要はあるが爽快感を得ることができた。アイボン(登録商標)を原液で通常の様に使うときのような洗浄力を得るには、噴射のパワーを強める必要がある。メントール希釈液は濃いと爽快感よりも痛みが先行するため、500倍まで薄める必要があった。500倍まで薄めると痛みも軽減し、メントール固有の爽快感を得ることができた。
【0088】
[実験10]
図16は、帽子のつばに噴霧装置を設けた実施形態を示す写真である。この実施形態で用いた噴霧装置は、帽子のつばに噴霧素子部と収容部とが設けられている。噴霧素子部は、円形部材の中央部の開口から、霧状物が眼に向かうように噴霧する噴霧素子を備えている。噴霧素子として円形の超音波発振素子が用いられている。この超音波発振素子は、実験1と同じ透液型の超音波振動板(発信周波数120kHz、電源5V・500mA)を用いた。収容部は、噴霧素子部に連結されて一体的に設けられている。噴霧素子である超音波発振素子への給電は、
図16の例では、バッテリー(図示しない)からリード線を介して行っている。
【0089】
図17は、
図16の噴霧装置を実施したときの相対湿度の変化(A)と温度の変化(B)のグラフである。この図からわかるように、噴霧装置をONにして40秒程度経過すると、顔の鼻部に取り付けた湿度・温度センサーでの測定では、当初の相対湿度40%・温度32.3℃程度から相対湿度90%・温度28℃程度に変化し、相対湿度の上昇を確認できた。また、顔の顎部に取り付けた湿度・温度センサーでの測定でも、当初の相対湿度40%RH・温度31.5℃程度から相対湿度60%・温度28.5℃程度に変化し、相対湿度の上昇が確認できた。なお、いずれの箇所でも、温度が低下していた。室内の測定環境は、相対湿度35%、室温28℃であった。
【0090】
[実験11]
図18は、めがね型噴霧装置の実施形態例を示す写真である。
図19は、
図18のめがね型噴霧装置で行った実験形態の例である。このめがね型噴霧装置は、実験1で用いた1号機及び2号機をさらに改良したものであり、具体的には、
図19(A)(B)に示すように、めがねフレームは、JINS MOISTURE(品番:MST−13A−003、株式会社ジェイアイエヌ)を使用し、左側のテンプル6の水タンクを外してできた空間に収容部と噴霧素子とを装着している。バッテリは、これまでの有線でモバイルバッテリーやAC電源につないでいたものから、薄型のリチウムポリマー電池(電力容量400mAh)に替え、充電タイプに改良した。収容部についても、1.5mL容量に小型化し、取り外しができるカートリッジ方式へと変更した。さらに、1号機及び2号機で使っていたスポンジの使用もやめ、水が素子に直接導入される形態とした。電気系については、バッテリからの5Vの入力電圧を±25Vまで昇圧し、発信周波数108kHzで振動する超音波圧電トランスデューサ(材質:チタン酸ジルコン酸鉛)で振動させた。こうした噴霧装置により、
図19(C)に示すように、微小液体を発生させ、眼に向けて供給することができる
【0091】
なお、装着は、
図19(D)のマネキンへの装着形態のように被験者に装着することができる。湿度測定は、実験1と同様、Sensiron社製温湿度計評価キット(EK−H4)を用い、温湿度センサーも同社のSHT−21を使用し、めがねに内側に取り付けることにより、データを取得することができる。
【0092】
図20は、噴霧スケジュールと、到達湿度とOn Time/Period比の関係を示す模式図である。超音波振動素子は、それぞれ「Period」(周期)で繰り返し「On Time」時間振動し、微小液体を噴霧する。左右の素子は、互い違いに振動し、「Period」の半分位相がずれている。
図19(D)に示すマネキンを用いた予備実験から、「On Time」と「Period」の比が、眼前空間が到達する湿度を決定することが分かった。
【0093】
図21は、湿度の上昇が速く(20秒以下)、安定的に90%超まで上昇する場合のグラフである。On Time=8.4ms、Period=250msの条件より、On Time/Period=3.4%である。
図21の結果より、湿度の上昇が速く(20秒以下)、安定的に90%超まで上昇しているのが確認された。
【0094】
図22は、涙液層破壊時間(BUT)の結果の説明図である。噴霧条件は、「噴霧強レベル」(On Time/Period=8.4ms/250ms=3.4%)とし、モイスチャーミストを10分間装用し、装用前後で眼科検査及び問診票での回答を得た。2回実施(水ありケースとコントロール(水なしのAirケース)の2回)した。被験者数は5人(男性3名、女性2名、平均年齢44.6歳±12.7歳)で行った。主要眼科検査項目として、細隙灯顕微鏡検査(涙液層破壊時間(BUT)、角結膜上皮障害程度(フルオレセイン染色スコア))、涙液浸透圧検査、実用視力(FVA(logMARスケール))、視力(VAS)とした。
図22の結果より、涙液層破壊時間(BUT)は、10分の装用で優位に上昇し、その10分後も値は下がらず、有効性が示された。
【0095】
次に、実用視力(FVA(logMARスケール))と毎分あたり瞬き回数の結果を表3に示した。表3の結果より、実用視力(FVA(logMAR))と瞬き回数(1分間での)は共に改善し、有効性が示された。
【0096】
【表3】
【0097】
次に、視力(Visual Analog Scale=VAS)の結果を表4に示した。表4の結果より、視力に優位な改善が見られ、有効性が示された。
【0098】
【表4】
【0099】
次に、フルオレセイン染色スコアを表5に示した。表5の結果より、スコアに変化がなく、安全性の保持が示された。
【0100】
【表5】
【0101】
以上のように、本発明に係る噴霧装置は、ピエゾ素子を逆圧電効果によって超音波振動させ、水のミスト(微小液体)として飛ばし、眼前空間を加湿する。そして、湿度の電気制御回路や水導入カートリッジ(収容部)等を備えるので、通常のめがねと変わらない外観に仕上げることができる。油・水・ムチンという三層構造をしている涙は、そのどれかが問題を起こすと涙液層全体が不安定となり、角結膜が露出され、瞬きで表面に傷が付くため、涙液層の安定が肝要である。涙液層破壊時間(Tear film break−up time/BUT)という涙液層の安定度を計る定量的な指標では、ドライアイ患者はこのBUTが短い。しかし、本発明に係る噴霧装置では、上記した各実験で示すように、眼前領域の湿度が上がり、BUTが長くなり、ドライアイの自覚症状の軽減が確認された。
【0102】
さらに、本発明に係る噴霧装置は、眼球の渇きを軽減するだけではなく、同じ設定下で眼の周囲の皮膚に潤いや張りを与え、目元・目尻を気にする使用者にはエステ効果を与えることができる。加えて、同じ水を飛ばすにしても、その量や勢いを増すことで、洗眼の代わりとすることもできる。水以外のもの、例えば溶液状の薬剤を飛ばせば、これは新しいタイプのドラッグデリバリーにもなる。