(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外周に孔を有する中心管と、膜部材が前記中心管に巻回された膜巻回体と、その膜巻回体の両端に配置された端部部材と、少なくとも前記膜巻回体の外周に設けられた外装材と、を備えた膜エレメントにおいて、
前記外装材は、前記膜巻回体の外周に巻き付けられた補強繊維を有する繊維補強樹脂を含み、
前記端部部材は、液体が流動可能な開口を有する本体と、前記本体から前記膜巻回体の側に延びる複数の可撓部と、を備え、
前記可撓部が前記膜巻回体の外周面側に変形して前記可撓部の先端が前記膜巻回体の外周に当接した状態で、前記可撓部の外周にも前記補強繊維が巻き付けられていることを特徴とする膜エレメント。
【背景技術】
【0002】
膜エレメントにより原液を濾過して透過液を生成する膜濾過装置の一例として、膜部材が巻回されることにより形成された膜巻回体を有する膜エレメントと、当該膜エレメントを収容する耐圧容器とを備えた膜濾過装置が知られている。
【0003】
この種の膜濾過装置における膜巻回体は、膜部材が巻回されることにより形成されているため、耐圧容器内を流れる原液などから受ける軸線方向の圧力により膜部材が軸線方向にずれて、膜巻回体がテレスコープ状に変形する場合がある。このような問題に対して、膜巻回体の端面に対向するように端部部材(いわゆるテレスコープ防止部材)を取り付けることにより、膜部材が軸線方向にずれるのを防止するといった技術が知られている(例えば、下記特許文献1)。
【0004】
また、膜エレメントの外周には、外装材が設けられており、当該外装材は、膜巻回体の外周及びテレスコープ防止部材の一部に跨るように取り付けられている。このとき、特許文献2に記載されているように、接着剤を塗布したガラス繊維(ガラス繊維ロービング)を膜巻回体の外周に巻き付けることで、外装材を形成することが一般的であった。
【0005】
また、特許文献1にも記載されていように、従来、テレスコープ防止部材としては、膜巻回体の突き合わせ部に、膜巻回体を嵌め込むための円筒部(スカート)を有するタイプと、当該円筒部を有していないタイプとが存在した。
【0006】
しかし、前者のタイプでは、円筒部の内径に合わせて、高い精度で膜巻回体の外径を制御する必要があり、また、膜巻回体の外径が制限され、膜面積を増加させるために限界があるので、円筒部を有していない後者のタイプが主流になりつつある。但し、後者のタイプでは、ガラス繊維ロービングを巻き付ける際に、膜巻回体と端部部材との境界部において、ガラス繊維ロービングの落ち込みが生じるという問題があった。
【0007】
このため、特許文献3には、端部部材の突き合わせ部に、複数の突起を環状に設けて、ガラス繊維ロービングの落ち込みを防止したテレスコープ防止部材が、提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3に記載されたテレスコープ防止部材では、膜巻回体の外径が環状に形成された突起の位置より大きい場合には、ガラス繊維ロービングの落ち込みを十分に防止することができず、また、テレスコープ防止部材と膜巻回体との段差によって、巻き付け不良が生じる場合がある。
【0010】
逆に、膜巻回体の外径が環状に形成された突起の位置より小さい場合には、特に、突起の先端付近で、ガラス繊維ロービングの巻き付けが不均一(大きな隙間が部分的に生じる)となり、その位置で外装材の接着強度が低下するという問題があった。そして、前記の何れの場合であっても、環状に形成された複数の突起によって、外装材の接着強度を高める効果は少なかった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、膜巻回体の外径が多少変化しても、補強繊維の落ち込みや巻き付け不良を防止しつつ、外装材の接着力を補強することができる膜エレメント用端部部材及びこれを備えた膜エレメントを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、以下の如き作用効果を奏する本発明によって達成される。
即ち、本発明の膜エレメントは、外周に孔を有する中心管と、膜部材が前記中心管に巻回された膜巻回体と、その膜巻回体の両端に配置された端部部材と、少なくとも前記膜巻回体の外周に設けられた外装材と、を備えた膜エレメントにおいて、前記外装材は、前記膜巻回体の外周に巻き付けられた補強繊維を有する繊維補強樹脂を含み、前記端部部材は、液体が流動可能な開口を有する本体と、前記本体から前記膜巻回体の側に延びる複数の可撓部と、を備え、前記可撓部が前記膜巻回体の外周面側に変形した状態で、前記可撓部の外周にも前記補強繊維が巻き付けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の膜エレメントによると、端部部材が前記本体から膜巻回体の側に延びる複数の可撓部を備え備えるため、外装材を形成する際に、膜巻回体の端面と本体の間に、補強繊維が落ち込むのを効果的に防止することができる。また、可撓部が膜巻回体の外周面側に変形した状態で、可撓部の外周にも補強繊維が巻き付けられているため、膜巻回体の外径が多少変化しても、膜巻回体の外周面との段差による巻き付け不良を防止できる。また、このとき、可撓部が外装材と接着して一体化するため、接着力を補強することができる。その結果、膜巻回体の外径が多少変化しても、補強繊維の落ち込みや巻き付け不良を防止しつつ、外装材の接着力を補強することができる膜エレメント用端部部材を提供できる。
【0014】
上記において、前記端部部材の本体は、前記膜巻回体の端部を覆い、前記膜巻回体の外径より内径が大きいカバー部を有すると共に、前記可撓部は、前記カバー部から延びていることが好ましい。このようなカバー部を有することで、膜巻回体の端面と本体の間に、補強繊維が落ち込むのをより確実に防止することができ、外装材によって端部部材をより強固に膜巻回体と接着一体化することができる。
【0015】
また、前記可撓部は、外周側の表面に凹凸を有することが好ましい。外周側の表面に凹凸を有することにより、補強繊維を巻き付ける際に、ズレを生じにくくしてより均一な巻き付けを行うことができる。特に、前記凹凸が、周方向に延びる溝である場合、十分な接着強度を確保しながら、補強繊維のより均一な巻き付けが可能となる。
【0016】
また、前記可撓部同士の間隙は、前記可撓部の周方向の幅より小さいことが好ましい。このような構成とすることで、膜巻回体の外周の多くの部分を可撓部で覆うことができ、補強繊維をより均一に巻き付けることができ、外装材の接着力の補強効果も大きくなる。
【0017】
更に、前記可撓部は、ほぼ等間隔で10箇所以上に設けられていることが好ましい。このような構成とすることで、可撓部の周方向の幅が相対的に小さくなり、径方向の可撓性を確保し易くなる。また、ほぼ等間隔で10箇所以上に設けることで、補強繊維をより均一に巻き付けることができ、外装材の接着力の補強効果も大きくなる。
【0018】
一方、本発明の膜エレメント用端部部材は、上記いずれかに記載の膜エレメントに用いられる膜エレメント用端部部材であって、液体が流動可能な開口を有する本体と、前記本体から前記膜巻回体の側に延びる複数の可撓部と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の膜エレメント用端部部材は、前記本体から前記膜巻回体の側に延びる複数の可撓部を備えるため、前述のように、膜巻回体の外径が多少変化しても、補強繊維の落ち込みや巻き付け不良を防止しつつ、外装材の接着力を補強することができる。
【0020】
また、本発明の別の膜エレメント用端部部材は、スパイラル型膜エレメントの端部に配置される膜エレメント用端部部材において、前記膜エレメントの膜巻回体の側に延びる複数の可撓部を備えることを特徴とする。
【0021】
この膜エレメント用端部部材は、膜エレメントの膜巻回体の側に延びる複数の可撓部を備えるため、前述のように、膜巻回体の外径が多少変化しても、補強繊維の落ち込みや巻き付け不良を防止しつつ、外装材の接着力を補強することができる。
【0022】
上記において、前記端部部材の本体は、前記膜巻回体の端部を覆い、前記膜巻回体の外径より内径が大きいカバー部を有すると共に、前記可撓部は、前記カバー部から延びていることが好ましい。
【0023】
このようなカバー部を有することで、膜巻回体の端面と本体の間に、補強繊維が落ち込むのをより確実に防止することができ、外装材によって端部部材をより強固に膜巻回体と接着一体化することができる。
【0024】
また、前記可撓部は、外周側の表面に凹凸を有することが好ましい。外周側の表面に凹凸を有することにより、補強繊維を巻き付ける際に、ズレを生じにくくしてより均一な巻き付けを行うことができる。特に、前記凹凸が、周方向に延びる溝である場合、十分な接着強度を確保しながら、補強繊維のより均一な巻き付けが可能となる。
【0025】
また、前記可撓部同士の間隙は、前記可撓部の周方向の幅より小さいことが好ましい。このような構成とすることで、膜巻回体の外周の多くの部分を可撓部が覆うことができるため、補強繊維の落ち込みや巻き付け不良をより効果的に防止しつつ、外装材の接着力の補効果をより高めることができる。
【0026】
更に、前記可撓部は、ほぼ等間隔で10箇所以上に設けられていることが好ましい。このような構成とすることで、可撓部の周方向の幅が相対的に小さくなり、径方向の可撓性を確保し易くなる。また、ほぼ等間隔で10箇所以上に設けることで、補強繊維をより均一に巻き付けることができ、外装材の接着力の補強効果も大きくなる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る膜エレメント10を備えた膜濾過装置50の一例を示した概略断面図である。また、
図2(a)〜(b)は、それぞれ膜エレメント10の分解斜視図、及びその端部部材13を示す斜視図である。図示した例では、膜濾過装置50は、膜エレメント10を耐圧容器40内に一直線上に複数配置することにより構成されている。
【0029】
耐圧容器40は、樹脂製等の円筒体からなり、例えばFRP(Fiberglass Reinforced Plastics)により形成される。この耐圧容器40内に軸線方向に沿って複数の膜エレメント10が並べて配置されている。耐圧容器40の一端部には、排水や海水などの原水(原液)が流入する原水流入口48が形成されており、当該原水流入口48から所定の圧力で流入する原水が複数の膜エレメント10で濾過されることにより、浄化された透過水(透過液)と、濾過後の原水である濃縮水(濃縮液)とが得られる。耐圧容器40の他端部には、透過水が流出する透過水流出口46と、濃縮水が流出する濃縮水流出口44とが形成されている。
【0030】
図2(a)に示すように、膜エレメント10は、外周に孔を有する中心管20と、膜部材16が中心管20に巻回された膜巻回体11と、その膜巻回体11の両端に配置された端部部材13と、を備えている。更に、膜エレメント10は、少なくとも膜巻回体11の外周に設けられた外装材15を備えている(
図3参照)。
【0031】
膜部材16は、例えば、分離膜12と供給側流路材18と透過側流路材14を含むものである。本実施形態では、分離膜12がRO(Reverse Osmosis:逆浸透膜)膜であるRO膜エレメントの例について説明する。
【0032】
より具体的には、樹脂製の網状部材からなる矩形形状の透過側流路材14の両面に、同一の矩形形状からなる2枚の分離膜12が重ね合わせられるとともに、その3辺が接着されることにより、1辺に開口部を有する袋状膜部材17が形成される。また、2枚の分離膜12を用いる代わりに、1枚の分離膜12を中央で折り曲げて、透過側流路材14の両面に重ね合わせて、2辺を接着した袋状膜部材17としてもよい。そして、この袋状膜部材17の開口部が中心管20の外周面に取り付けられ、樹脂製の網状部材からなる供給側流路材18とともに中心管20の周囲に巻回されることにより、前記膜エレメント10が形成される。前記分離膜12は、例えば不織布層上に多孔性支持体及びスキン層(緻密層)が順次に積層されることにより形成される。
【0033】
前記のようにして形成された膜エレメント10の一端側から原水を供給すると、原水スペーサとして機能する供給側流路材18により形成された原水流路を介して、膜エレメント10内を原水が通過する。その際、原水が分離膜12により濾過され、原水から濾過された透過水が、透過水スペーサとして機能する透過側流路材14により形成された透過水流路内に浸透する。
【0034】
その後、透過水流路内に浸透した透過水が、当該透過水流路を通って中心管20側に流れ、中心管20の外周に形成された複数の通水孔から中心管20内に導かれる。これにより、膜エレメント10の他端側から、中心管20を介して透過水が流出するとともに、供給側流路材18により形成された原水流路を介して濃縮水が流出することとなる。
【0035】
図1に示すように、耐圧容器40内に収容されている複数の膜エレメント10は、隣接する膜エレメント10の中心管20同士が管状のインターコネクタ42で連結されている。このインターコネクタ42は、膜エレメント10の中心管20に対して着脱可能な取付部材を構成している。したがって、原水流入口48から流入した原水は、当該原水流入口48側の膜エレメント10から順に原水流路内に流れ込み、各膜エレメント10で原水から濾過された透過水が、インターコネクタ42により接続された1本の中心管20を介して透過水流出口46から流出する。一方、各膜エレメント10の原水流路を通過することにより透過水が濾過されて濃縮された濃縮水は、濃縮水流出口44から流出する。
【0036】
ただし、膜濾過装置50は、耐圧容器40内に複数の膜エレメント10が収容されているような構成に限らず、耐圧容器40内に膜エレメント10が1つだけ収容されているような構成であってもよい。また、膜エレメント10としては、RO膜を用いたRO膜エレメントに限らず、MF(Membrane Filter:精密濾過膜)膜エレメントやUF(Ultra Filter:限外濾過膜)膜エレメントなど、他の各種膜エレメントを採用することができる。
【0037】
図3は、膜エレメント10の内部構成を示した概略断面図である。上述のようにしてスパイラル状に巻回された膜部材16は、円筒形状の膜巻回体11を構成しており、当該膜巻回体11に端部部材13及び外装材15が取り付けられることにより、膜エレメント10が形成されている。
【0038】
端部部材13は、膜巻回体11の軸線方向Aの端部に配置され、膜部材16(
図2(a)参照)が軸線方向Aにずれるのを防止するための膜エレメント用端部部材である。この例では、膜巻回体11の軸線方向Aの両端部に、本発明における端部部材13が配置されているが、このような構成に限らず、一方の端部にのみに、当該端部部材13が配置された構成であってもよい。端部部材13は、テレスコープ防止部材又はシールキャリアともよばれ、テレスコープを防止する機能や、シールを保持する機能を有することも可能である。
【0039】
端部部材13は、
図2(b)〜
図3に示すように、液体が流動可能な開口131aを有し、膜巻回体11の端面に対向する本体131を備えている。また、本体131は、中心管20を挿入する環状部131bと、これを連結するための連結部131cを有している。更に、端部部材13は、本体131における膜巻回体11より外周側の位置から膜巻回体11側に延び、少なくとも径方向RDに可撓性を有する複数の可撓部135を備える。本実施形態では、可撓部135がカバー部132を介して、本体131に設けられているが、可撓部135がカバー部132を介さずに、本体131に設けられていてもよい(
図5(a)参照)。カバー部132は、本体131から膜巻回体11の軸線方向A(
図3参照)に沿って膜巻回体11側に延びている。本体131、可撓部135、及びカバー部132は、一体的に形成されることにより構成されているのが好ましい。端部部材13の材質としては、ABS、ノリル(登録商標、変性PPE樹脂)、PVCなどの樹脂を例示することができる。このように、本発明では、端部部材13の本体131は、膜巻回体11の端部を覆い、膜巻回体11の外径より内径が大きいカバー部132を有することが好ましい。
【0040】
端部部材13の本体131は、例えば膜巻回体11の端面よりも外径が大きい円板状に形成されている。本体131の外周面には、パッキン(図示せず)を収容して保持するための環状凹部133が形成されている。この環状凹部133内にパッキンが取り付けられた状態で、膜エレメント10が耐圧容器40内に配置されることにより、パッキンの表面が耐圧容器40の内周面に当接するようになっている。このように、端部部材13は、パッキン(シール)を保持するシール保持部材(シールキャリア)としても機能するようになっている。
【0041】
図4は、膜エレメント10の要部の一例を示しており、(a)は、取付前における端部部材13の要部の縦断面、(b)は、取付前における端部部材13の全体の右側面図、(c)は、取付後における端部部材13の周辺の縦断面である。
図2(b)及び
図4(a)〜(b)に示すように、端部部材13のカバー部132は、本体131から膜巻回体11側に向かって円環状に突出しており、その内径が膜巻回体11の外径より大きいかほぼ一致している。また、取付前における可撓部135は、本体131のカバー部132の先端から、膜巻回体11側に向かって舌片状に突出しており、その内径が膜巻回体11の外径より大きい。
【0042】
図4(c)に示すように、取付後においては、可撓部135が径方向RDに可撓性を有することにより、径方向RDの内周側に変形して倒れ込み、好ましくは、可撓部135の先端が膜巻回体11の外周に当接した状態で、外装材15が設けられている。このとき、本体131が膜巻回体11の端面に当接するように端部部材13が配置される。この状態で、カバー部132の外周、可撓部135及び膜巻回体11の外周に跨るように、外装材15が設けられることにより、膜巻回体11が外装材15により覆われた構成となる。つまり、本発明では、可撓部135が膜巻回体11の外周面側に変形した状態で、可撓部135の外周にも補強繊維が巻き付けられている。
【0043】
外装材15は、膜巻回体11の外周に巻き付けられた補強繊維を有する繊維補強樹脂を含み、例えばガラス繊維と接着剤からなるFRP外装材である。外装材15は、一方の端部部材13から、他方の端部部材13まで、膜巻回体11の外周面に沿ってほぼ周方向PDに連続して巻回されることにより、膜巻回体11の外周全体が覆われるようになっている。FRP外装材では、接着剤を含む補強繊維(例えばガラス繊維ロービング)が巻き付けられ、固化した接着剤中に補強繊維が埋設した状態となる。
【0044】
本実施形態では、端部部材13が、本体131における膜巻回体11より外周側の位置から膜巻回体11側に延びる複数の可撓部135を備えるため、外装材15を形成する際に、補強繊維の落ち込みを効果的に防止することができる。また、可撓部135が少なくとも径方向RDに可撓性を有するため、膜巻回体11の外径が小さい場合でも、膜巻回体11の外径に追従して可撓部135が変形し、段差による補強繊維の巻き付け不良を防止できる。また、補強繊維を巻き付けた状態で、可撓部135が外装材15と接着して一体化するため、接着力を補強することができる。このとき、
図4(c)に示すように、可撓部135の内周側にも接着剤が浸透することによって、外装材15に対する補強効果をより高めることができる。
【0045】
本実施形態では、平面視が矩形の可撓部135をほぼ等間隔で、40箇所に設けているが、可撓部135の数としては、6〜100が好ましく、12〜80がより好ましく、18〜50が更に好ましい。特に、可撓部135は、ほぼ等間隔で10箇所以上に設けられていることが好ましい。複数の可撓部135は、金型等を用いた樹脂成形により、形成することができる。
【0046】
本実施形態では、可撓部135が、外周側の表面に、周方向PDに溝が延びる凹凸を有する場合の例を示している。凹凸を有する場合、その凹部の深さとしては、0.01〜
1.5mmが好ましい。
【0047】
このような凹凸は、端部部材13の成形品に対する後加工によって起伏部を形成することも可能であるが、加工コストがかかるため、金型に起伏を設ける方法を採用することが好ましい。金型に起伏を設ける方法としては、NC旋盤などを用いた切削加工やシボ加工による方法の他、放電加工、レーザ加工、ブラスト加工による方法などを例示することができる。
【0048】
端部部材13の可撓部135は、周方向PDの幅Wが一定であり、その幅Wが径方向RDの厚みtより大きいか、又は、周方向PDの幅Wが軸線方向Aで変化し、最も周方向PDの幅Wが大きい位置においてその幅Wが径方向の厚みtより大きいことが好ましい。
【0049】
つまり、可撓部135は、径方向RDの厚みtが最も薄い部分の厚みtが0.01〜1.5mmであることが好ましく、0.5〜1.2mmであることがより好ましい。本実施形態では、可撓部135が、外周側の表面に凹凸を有する場合を例に示しているが、その場合、凹凸の最も薄い部分の厚みtが上記範囲であることが好ましい。厚みがこの範囲内であると、強度をある程度維持しつつ径方向の可撓性を得ることができる観点から好ましい。
【0050】
また、可撓部135は、例えば4インチエレメントの場合、最も周方向PDの幅Wが大きい位置においてその幅Wが3〜15mmであることが好ましく、6〜10mmであることがより好ましい。例えば8インチエレメントの場合、最も周方向PDの幅Wが大きい位置において6〜30mmであることが好ましく、12〜20mmであることがより好ましい。例えば16インチエレメントの場合、最も周方向PDの幅Wが大きい位置において12〜60mmであることが好ましく、24〜40mmであることがより好ましい。
なお、幅Wは、周方向PDに沿った長さにより測定する値である。
【0051】
また、端部部材13の可撓部135は、周方向PDの幅Wが一定であり、その幅Wが可撓部135同士の間隔Iより広いか、又は、周方向PDの幅Wが軸線方向Aで変化し、最も周方向PDの幅Wが広い位置においてその幅Wが可撓部135同士の間隔Iより広いものであることが好ましい。具体的には、最も周方向PDの幅Wが広い位置において、可撓部135同士の間隔Iは、例えば4インチエレメントの場合、0.2〜12mmであることが好ましく、0.5〜5mmであることがより好ましい。例えば8インチエレメントの場合、0.2〜25mmであることが好ましく、0.5〜10mmであることがより好ましい。例えば16インチエレメントの場合、0.2〜70mmであることが好ましく、0.5〜30mmであることがより好ましい。なお、間隔Iは、直線距離により測定する値である。
【0052】
また、可撓部135の長さL1は、5〜50mmであることが好ましく、20〜35mmであることがより好ましい。
【0053】
カバー部132を設ける場合、その長さL2は、1〜20mmであることが好ましく、5〜10mmであることがより好ましい。また、カバー部132の厚みは、0.2〜2mmであることが好ましく、0.5〜1.5mmであることがより好ましい。
(他の実施形態)
(1)本発明では、
図4に示すような断面形状の端部部材に限らず、
図5(a)〜(e)に示すように、種々の断面形状の端部部材が可能である。
【0054】
図5(a)に示す例では、端部部材13には、外周側の表面に凹凸を有さない可撓部135を設けている。また、この例では、可撓部135がカバー部132を介さずに、本体131に設けられている。
【0055】
図5(b)に示す例では、内周側の表面に周方向PDに延びる凹条を有することで、可撓部135の軸線方向Aの中央部より基端部側に、径方向RDの厚みtが部分的に薄い肉薄部136を有している。このような肉薄部136を設けることで、径方向RDの可撓性をより高めることができ、しかも肉薄部136を設ける位置により、変形状態における形状を調節することができる。
【0056】
図5(c)に示す例では、外周側の表面に周方向PDに延びる凹条を有することで、可撓部135の軸線方向Aの中央部より基端部側に、径方向RDの厚みtが部分的に薄い肉薄部136を有している。
【0057】
図5(d)に示す例では、端部部材13には、先端側が径方向RDの外周側に広がった可撓部135を設けている。この例では、可撓部135の全体が外周側に広がっているが、可撓部135の一部が外周側に広がっていてもよい。また、先端側が径方向RDの外周側に広がっていない可撓部135の先端部に対して、切欠きを設けることで、その部分が外周側に広がるようにしてもよい。
【0058】
図5(e)に示す例では、端部部材13には、先端側ほど厚みが薄くなる可撓部135を設けている。その場合において、この例では、可撓部135の内周側の表面が外周側に広がっているが、可撓部135の内周側の表面が外周側に広がっていなくてもよい。
【0059】
(2)本発明では、
図4に示すような形状の可撓部に限らず、
図6(a)〜(f)、及び
図7(a)〜(f)に示すように、種々の形状の可撓部が可能である。
【0060】
図6(a)に示す例では、矩形の可撓部135が、その幅が可撓部135同士の間隔より広い状態で設けられている。
【0061】
図6(b)に示す例では、先端が最も幅が広くなるように、矩形の幅広部を有する可撓部135を設けている。このように、本発明において、先端に位置する辺は、周方向PDと平行であることが好ましい。
【0062】
図6(c)に示す例では、先端が最も幅が広くなるように、台形の幅広部を有する可撓部135を設けている。このように、本発明において、先端に位置する部分の形状は、何れの形状であってもよい。
【0063】
図6(d)に示す例では、先端が最も幅が狭くなるように、六角形の可撓部135を設けている。このように、本発明において、可撓部135の全体の形状は、何れの形状であってもよい。
【0064】
図6(e)に示す例では、矩形の幹部から両側に広がる枝部を有する可撓部135を設けている。この例では、幹部の先端に、六角形の先端部を有している。枝部は、先端側に傾斜しているが、何れの方向に傾斜していてもよい。このように、両側に広がる枝部を有することで、外装材を形成する際に均一な形成を行うことができる。
【0065】
図6(f)に示す例では、矩形の幹部から両側に広がる枝部を有する可撓部135を設けている。この例では、幹部の先端に、五角形の先端部を有している。
【0066】
図7(a)に示す例では、可撓部135の先端が最も幅が狭く、軸線方向Aの中央部より基端部側に周方向PDの幅が部分的に狭い幅狭部を設けている。
【0067】
図7(b)に示す例では、先端が最も幅が狭くなるように、角が取れたほぼ三角形の可撓部135を設けている。この例では、可撓部135の基端部同士が繋がっているが、この様な形態も、本発明においては複数の可撓部135を有していると定義される。
【0068】
図7(c)に示す例では、先端が最も幅が狭くなるように、角が取れたほぼ三角形の可撓部135を設けており、
図7(b)に示す例よりも可撓部135の数が多くなっている。
【0069】
図7(d)に示す例では、先端が最も幅が狭くなるように、台形の可撓部135を設けている。このような形状の可撓部135によっても、外装材を形成する際に均一な形成を行うことができる。
【0070】
図7(e)に示す例では、矩形の可撓部135と五角形の可撓部135とを、交互に設けている。この例では、2種の可撓部135の長さが異なっている。
【0071】
図7(f)に示す例では、本体131の側を幅の狭い台形とし、先端側を幅の広い五角形として、両者が連続した可撓部135を設けている。このように、本発明では、可撓部135が、軸線方向Aの中央部より基端部側に、周方向PDの幅Wが部分的に狭い幅狭部を有することが好ましい。このような幅狭部を設けることで、径方向RDの可撓性をより高めることができる。
【0072】
(3)前述の実施形態では、環状部131bを連結するための連結部131cが、多数の円孔を設けた板状体にリブを形成した連結部131cにより、本体131の開口131aを形成する例を示したが、本発明において、本体131の開口131aは、何れの形状であってもよい。例えば、スポーク状の連結部131cを有することで、液体が流動可能な開口131aを本体131に形成してもよい。
【0073】
(4)前述の実施形態では、本体131、可撓部135、及びカバー部132は、一体的に同一材料で形成されている例を示したが、これらは、別材料で形成されていてもよい。例えば、可撓部135を可撓性の高い(より柔軟な)樹脂で構成し、他の部分と一体的に成形したり、両者を成形後に固着してもよい。また、可撓部135を金属製のバネ材で構成し、その基端部を本体131又はカバー部132に埋設させて、可撓部135を形成することも可能である。
【0074】
(5)前述の実施形態では、周方向PDに溝が延びる凹凸を有する場合の例を示したが、凹凸の形状、大きさ、間隔などは、何れでもよい。例えば、平面視形状が円形、楕円形、三角形、四角形などの複数の凸部を設けてもよい。
【0075】
(6)前述の実施形態では、環状に連続したカバー部132を設けた例を示したが、複数に分割されたカバー部132を設けることも可能である。
【0076】
(7)前述の実施形態では、接着剤を有するガラス繊維(ガラス繊維ロービング)を用いてFRP外装材を形成する例を示したが、その他の外装材を使用することも可能であるた。但し、ガラス繊維、セラミック繊維や高弾性率の樹脂繊維などの補強繊維により補強された繊維補強樹脂が好ましい。
【0077】
補強繊維の形態としては、マルチフィラメント、モノフィラメントの繊維の他、それらにより構成される織布、不織布、編布、ネットなどの布帛が挙げられる。これらの布帛によるFRP外装材では、補強繊維が周方向又は周方向から傾斜した方向に連続し、固化した接着剤中に埋設した状態となる。