(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一若しくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0013】
図1と
図2に示す組電池は、複数の電池セル1を積層している電池積層体2と、この電池積層体2の両端に配置された一対のエンドプレート3と、一対のエンドプレート3に両端が連結されて、電池積層体2を締結する一対の連結部材4とを備えている。さらに、組電池は、連結部材4が、電池積層体2の側面に沿って配置される本体部40と、この本体部40の両端で折曲されて、エンドプレート3の外側面に固定される固定部41とを備えており、この連結部材4の両端部の上部に、組電池を持ち上げる工具50を挿入または係止可能な係止部5を設けている。
【0014】
(電池セル1)
電池セル1は、
図2に示すように、厚さに比べて幅が広い、言い換えると幅よりも薄い角形電池で、厚さ方向に積層されて電池積層体2としている。電池セル1はリチウムイオン二次電池である。ただし、電池セルは、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等、充電できる全ての二次電池とすることもできる。電池セル1は、密閉構造の外装缶に正負の電極板を電解液と共に収容している。外装缶は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属板を角形にプレス成形され、開口部を封口板で気密に密閉している。封口板は、外装缶と同じアルミニウムやアルミニウム合金で、両端部に正負の電極端子11を固定している。さらに、封口板は、正負の電極端子11の間に、ガス排出弁15を設けている。
【0015】
複数の電池セル1は、各電池セル1の厚み方向が積層方向となるように積層されて電池積層体2を構成している。電池セル1は、正負の電極端子11を設けている端子面10を同一平面に配置して、複数の電池セル1を積層して電池積層体2としている。
【0016】
(電池積層体2)
電池積層体2は、
図2に示すように、積層している電池セル1の間に絶縁スペーサ12を挟着している。図の絶縁スペーサ12は、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状またはシート状に製作されている。図に示す絶縁スペーサ12は、電池セル1の対向面とほぼ等しい大きさのプレート状としており、この絶縁スペーサ12を互いに隣接する電池セル1の間に積層して、隣接する電池セル1同士を絶縁している。なお、隣接する電池セル1間に配置されるスペーサとしては、電池セル1とスペーサの間に冷却気体の流路が形成される形状のスペーサを用いることもできる。また、電池セル1の表面を絶縁材で被覆することもできる。例えばPET樹脂等のシュリンクチューブで電池セルの電極部分を除く外装缶の表面を熱溶着させてもよい。この場合は、絶縁スペーサを省略してもよい。
【0017】
電池積層体2は、隣接する電池セル1の正負の電極端子11に金属製のバスバー(図示せず)が接続されて、バスバーでもって複数の電池セル1を直列又は並列に、あるいは直列と並列に接続される。図に示す電池積層体2は、12個の電池セル1を直列に接続している。ただ、本発明は、電池積層体を構成する電池セル1の個数とその接続状態を特定しない。
【0018】
(端面スペーサ13)
電池積層体2は、両端面に端面スペーサ13を挟んでエンドプレート3を配置している。端面スペーサ13は、
図2に示すように、電池積層体2とエンドプレート3との間に配置されてエンドプレート3を電池積層体2から絶縁する。端面スペーサ13は、樹脂等の絶縁材で、薄いプレート状またはシート状に製作されている。図に示す端面スペーサ13は、電池セル1の対向面全体をカバーできる大きさのプレート部13Xを備えており、このプレート部13Xを電池積層体2の両端に配置された電池セル1とエンドプレート3との間に積層している。
【0019】
さらに、
図2の端面スペーサ13は、電池セル1の端子面10をカバーする端子面カバー部13Aを、プレート部13Xの上端縁に連結して設けている。
図2の端面スペーサ13は、プレート部13Xの上端縁の全体にわたって、電池セル1側に突出する端子面カバー部13Aを設けている。このように、プレート部13Xの上端縁の全体にわたって端子面カバー部13Aを設ける構造は、エンドプレート3と電池積層体2との絶縁距離を確保しながら、電池セル1の上面である端子面10を確実にカバーして絶縁特性を向上できる。また、
図1に示すように、組電池を持ち上げる際に、専用の工具50を組電池の両端部に挿入する際に、金属製の工具が直接に電池セル1に接触するのを防止できる特徴もある。
【0020】
(エンドプレート3)
エンドプレート3は、
図1と
図2に示すように、電池積層体2の両端に配置されると共に、電池積層体2の両側面に沿って配置される連結部材4を介して締結される。エンドプレート3は、電池積層体2の電池セル1の積層方向における両端であって、端面スペーサ13の外側に配置されて電池積層体2を両端から挟着している。エンドプレート3は、金属製とし、あるいは樹脂製とすることができる。さらに、エンドプレートは、金属と樹脂を組み合わせて製造することもできる。金属製のエンドプレートは、異なる金属材料からなる2部材を組み合わせる構造とすることもできる。
図2に示すエンドプレートは、全体を金属ブロックとしている。金属ブロックであるエンドプレート3は、全体をアルミニウムまたはアルミニウム合金で製造している。アルミニウムやアルミニウム合金からなるエンドプレート3は、ダイキャストとして、あるいは押し出し成形されて所定の形状に製造される。
【0021】
エンドプレート3は、外形を四角形としており、電池積層体2の端面に対向して配置されている。
図1と
図2に示すエンドプレート3は、電池セル1の外形とほぼ等しい外形としている。ずなわち、図に示すエンドプレート3は、左右方向の幅を電池セル1の幅と等しくすると共に、上下方向の高さを電池セル1の高さと等しくしている。なお、本明細書において、上下方向とは図における上下方向とし、左右方向は、図における左右方向であって、電池の積層方向と直交する水平方向を意味するものとする。
【0022】
さらに、
図2に示すエンドプレート3は、連結部材4の固定部41を固定するために、留め具19を挿入するための固定孔33を有している。図に示すエンドプレート3は、固定孔33として、複数の貫通孔を開口している。図のエンドプレート3は、両側部であって固定部41と対向する位置に、上下に離して複数の固定孔33を設けている。
図2のエンドプレート3は、両側に沿って3個ずつ、全体で6個の固定孔33を設けている。このエンドプレート3は、外周面に配置される固定部41を貫通する留め具19が固定孔33に挿入される。固定孔33に挿入された留め具19は、固定孔33に固定されて固定部41を定位置に固定する。
【0023】
(留め具19)
留め具19は、固定孔33に抜けないように固定される。このような留め具19として、止ネジやボルト、リベット等が使用できる。止ネジやボルトである留め具は、固定孔に挿入する際に、固定孔に螺合して固定される。したがって、止ネジやボルトである留め具が固定される固定孔は、内面に止ネジやボルトの雄ネジと噛み合う雌ネジを設けることができる。また、リベットである留め具は、固定部を貫通する状態でエンドプレートの固定孔に挿入されると共に、固定孔の内部において一端がかしめられてエンドプレートと固定部とを固定する。リベットである留め具は、エンドプレートの固定孔の内部で形成されるカシメ部によって、エンドプレートの固定孔と固定部の貫通孔の開口縁部とを挟着して、固定部をエンドプレートに固定する。リベットが挿入される固定孔は、外側面の開口面積を小さくしてリベットの頭部を通過できない内形とすると共に、反対側である対向面側の開口面積を大きくして、リベットを変形させて形成されるカシメ部を内部に配置できる構造とすることができる。
【0024】
(連結部材4)
連結部材4は、
図1と
図2に示すように、電池積層体2の積層方向に延長されており、両端が電池積層体2の両端面に配置されたエンドプレート3に固定されて、このエンドプレート3を介して電池積層体2を積層方向に締結している。連結部材4は、電池積層体2の側面に沿う所定の幅と所定の厚さを有する金属板で、電池積層体2の両側面に対向して配置されている。この連結部材4には、鉄などの金属板、好ましくは、鋼板が使用できる。金属板からなる連結部材4は、プレス成形等により折曲加工されて所定の形状に形成される。
【0025】
連結部材4は、電池積層体2の側面に沿って配置される本体部40と、この本体部40の両端で折曲されて、エンドプレート3の外側面に固定される固定部41とを備えている。本体部40は、電池積層体2と、その両端に配置されるエンドプレート3のほぼ全体を被覆する大きさの矩形状としている。
図1に示す本体部40は、電池積層体2の側面のほぼ全面を隙間なく被覆している。ただ、本体部40は、1以上の開口部を設けて、電池積層体の側面の一部を表出させることもできる。連結部材4は、両端を一対のエンドプレート3に固定するために、その両端部をエンドプレート3の外側面に沿うように折曲加工して固定部41を設けている。図に示す固定部41は、本体部40及びエンドプレート3の上下方向の高さとほぼ等しくして、エンドプレート3の左右の両側部を被覆している。この連結部材4は、固定部41の先端に設けた貫通孔42に挿入される留め具19を介してエンドプレート3に固定される。さらに、図に示す連結部材4は、本体部40の両端部を除く中間部分の上端部に沿って、電池積層体2の上面を保持する上側折曲部44を備えている。上側折曲部44は、電池積層体2を構成する電池セル1の上面を保持して、各電池セル1の端子面10の位置が上下にずれるのを抑制している。
【0026】
なお、連結部材4は、図示しないが、本体部40と上側折曲部44の内面に絶縁シートを配置して、この絶縁シートにより、電池積層体2の電池セル1と連結部材4とを絶縁することができる。さらに、連結部材4は、図示しないが、本体部40の両端部の内面に緩衝材を配置して、エンドプレート3の両側面を振動等の衝撃から保護することもできる。
【0027】
(係止部5)
以上の組電池は、車両や基台等のベースプレートに固定し、あるいは下面に配置される冷却プレートに固定する際に、吊上装置を使って持ち上げられる。このため、組電池は、組電池を持ち上げる工具50を挿入または係止するための係止部5を備えている。
図1に示す組電池は、連結部材4の両端部の上部に係止部5を備えている。
図1に示す連結部材4は、本体部40の両端部の上端から上方に突出する突出部40Aを設けており、この突出部40Aに係止部5を設けている。図に示す連結部材4は、この突出部40Aに貫通孔40aを開口しており、この貫通孔40aを係止部5としている。
図1に示す貫通孔40aは、円形状としている。ただ、貫通孔は、矩形状や多角形状、楕円形状、長円形状とすることもできる。
【0028】
図1に示す連結部材4は、この突出部40Aをエンドプレート3の上面よりも高く配置して、この突出部40Aに係止部5となる貫通孔40aを開口している。図のエンドプレート3は、上面を係止部5よりも低く配置して、この上面を係止部5よりも低く配置された段差面30としている。なお、本明細書において、エンドプレート3の段差面30を係止部5よりも低く配置するとは、エンドプレート3の段差面30(
図1においては上面)が係止部5における係止位置よりも低い位置にあることを意味するものとする。すなわち、
図1に示すように、係止部5を貫通孔40aとする構造においては、貫通孔40aの実質的な係止位置である開口縁の上端部よりも低い位置に段差面30が配置される状態を意味する。したがって、貫通孔40aの開口縁の下端の位置は、エンドプレート3の段差面30と同じ高さとし、あるいはエンドプレート3の段差面30より低くしてもよい。このように、エンドプレート3の上面を係止部5よりも低い段差面30とする構造は、この段差面30の上方を、係止部5に工具50を挿入するための挿入空間14とする。したがって、
図1に示す組電池は、エンドプレート3の上方に形成された挿入隙間14と対向する位置に貫通孔40aを開口して係止部5とする。
【0029】
また、組電池は、電池積層体2の上面には、正負の電極端子11を接続するバスバー(図示せず)やこのバスバーをカバーして保護するための被覆部材(図示せず)が配置され、あるいは、電池セル1の上面に設けたガス排出弁15から排出される排出物を電源装置の外部に排出するための配管等である排出部(図示せず)が配置される。
図1の鎖線で示すように、これ等の周辺部材16は、電池積層体2の上面よりも高く形成される。このため、
図1に示すように、連結部材4の両端部において、電池積層体2やエンドプレート3の上面よりも上方に突出する突出部40Aを形成する構造においても、この突出部40Aが電源装置の外形を著しく大きくすることはなく、省スペースに突出部40Aを配置して係止部5を形成することができる。ここで、連結部材4の突出部40Aは、電池積層体2の上面に配置される周辺部材16よりも突出しない高さとすることが好ましい。ただ、突出部40Aは、電池積層体2の上面に配置される周辺部材16よりも高くしてもよい。
【0030】
貫通孔40aである係止部5は、組電池の平面視において、組電池の四隅であって、互いに対向する位置に形成されている。この組電池は、
図1に示すように、四隅に設けた係止部5に工具50の先端部が係止される状態で持ち上げられる。
図1に示す工具50は、先端部にフック部を備えており、このフック部を挿入空間14に挿入すると共に、組電池の両側に開口された貫通孔40aにフック部が挿入されて、工具50が係止部5に係止される。組電池は、工具50の先端が貫通孔40aである係止部5に挿入されて連結部材4の両端部が吊り上げられる状態で持ち上げられる。先端が係止部5に係止された工具50は、後端がクレーンやウインチ等の牽引装置(図示せず)に連結されており、牽引装置がワイヤーを巻き上げることで組電池が吊り上げられる。組電池は、四隅に連結される工具50を介して持ち上げられて所定の設置スペースに移動された後、降下されて設置位置に配置される。なお、組電池を設置位置に配置した後に、貫通孔40aに固定用のボルトを挿通して、車両のフレームなどに組電池を固定することもできる。
【0031】
この組電池を持ち上げる工程では、工具50の先端は、エンドプレート3の上方に設けた挿入空間14から連結部材4に開口された貫通孔40aに挿入される。このため、この工具50は、平面視において組電池の外側の領域に配置されることなく組電池を持ち上げることができる。したがって、組電池を設置スペースに配置する際に、所望の位置に直接に配置可能で有り、面積効率を向上できる。
【0032】
(実施形態2)
さらに、
図3に示す連結部材4は、本体部40の両端部をエンドプレート3の上面と同じ高さとして、固定部41の上端部をエンドプレート3の上面よりも突出させている。図に示す連結部材4は、固定部41の上下の長さを、本体部40の上下の長さよりも長くしている。この固定部41は、エンドプレート3から突出する部分に貫通孔41aを開口して、この貫通孔41aを係止部5としている。図のエンドプレート3は、上面を係止部5よりも低く配置して、この上面を係止部5よりも低く配置された段差面30としている。この組電池も、段差面30の上方の空間を、係止部5に工具50を挿入するための挿入空間14としており、この挿入隙間14と対向する位置に貫通孔40aを開口して係止部5としている。ここで、固定片41の上端は、電池積層体2の上面に配置される周辺部材16よりも突出しない高さとすることが好ましい。ただ、固定片の上端は、電池積層体2の上面に配置される周辺部材16よりも高くしてもよい。
【0033】
貫通孔41aである係止部5は、組電池の平面視において、組電池の四隅であって、互いに対向する位置に形成されている。この組電池も、
図3に示すように、四隅に設けた係止部5に工具50の先端部が係止される状態で持ち上げられる。
図3に示す工具50は、先端部にフック部を備えており、このフック部を挿入空間14に挿入すると共に、組電池の両端に開口された貫通孔41aにフック部が挿入されて、工具50が係止部5に係止される。組電池は、工具50の先端が貫通孔41aである係止部5に挿入されて固定部41の上端部が吊り上げられる状態で持ち上げられる。
【0034】
この組電池を持ち上げる工程では、工具50の先端は、エンドプレート3の上方に設けた挿入空間14から固定部41に開口された貫通孔41aに挿入される。このため、この工具50は、平面視において組電池の外側の領域に配置されることなく組電池を持ち上げることができる。したがって、組電池を設置スペースに配置する際に、所望の位置に直接に配置可能で有り、面積効率を向上できる。
【0035】
(実施形態3)
さらに、
図4に示す連結部材4は、本体部40から突出する突出部40Aの上端から内側に折曲された折曲片43を挿入空間14の上に備えている。さらに、この折曲片43は、電池積層体2の端面から延長された面であって、電池積層体2の上面に配置される周辺部材16との間に、工具50を挿入可能な開口部46を備えている。この連結部材4は、本体部40の上端から内側に折曲された折曲片43を係止部として、開口部46から挿入空間14に挿入される工具50を係止するようにしている。折曲片43の幅は、ここに係止される工具によって吊り上げできる強度を実現できるように決定される。折曲片43の突出長さは、ここに係止される工具を外れることなく係止できる十分な長さとすることができる。さらに、折曲片の横に開口される開口部46の開口幅は、工具50の先端を挿通できる大きさとなるように決定される。
【0036】
さらに、図に示す折曲片43は、先端部を下方に折曲してロック部43bを設けている。この折曲片43は、先端のロック部43bで工具50の先端を外れないように係止することができるので、安全性を向上できる。なお、図に示す係止部5は、本体部40から突出する突出部40A及びその先端に設けた折曲片43で構成しているが、連結部材4の端部から上方に突出して形成される係止部5は、突出部分の上端部を湾曲させて、例えば、逆U字状や逆J字状に湾曲された湾曲部を設けて係止部5とすることもできる。
【0037】
折曲片43で構成される係止部5は、組電池の平面視において、組電池の四隅であって、互いに対向する位置に形成されている。この組電池も、四隅に設けた係止部5に工具50の先端部が係止される状態で持ち上げられる。
図4に示す工具50は先端部にフック部を備えており、このフック部を開口部46から挿入空間14に挿入すると共に、組電池の両端に形成された折曲片43にフック部が係止されて、工具50が係止部5に係止される。組電池は、工具50の先端が折曲片43である係止部5に係止されて本体部40の上端が吊り上げられる状態で持ち上げられる。
【0038】
これらの組電池を持ち上げる工程では、工具50の先端は、折曲片43に隣接して設けた開口部46から挿入空間14に挿入されて折曲片43に係止される。このため、この工具50は、平面視において組電池の外側の領域に配置されることなく組電池を持ち上げることができる。したがって、組電池を設置スペースに配置する際に、所望の位置に直接に配置可能で有り、面積効率を向上できる。
【0039】
(実施形態4)
さらに、組電池は、
図5と
図6に示すように、エンドプレート3の上面を電池積層体2の上面よりも低くして段差面30とし、この段差面30を係止部5よりも低く配置することもできる。
図5と
図6に示すエンドプレート3は、左右方向の幅を電池セル1の幅と等しくすると共に、上下方向の高さを電池セル1の高さよりも低くして、電池積層体2の上面よりも低く形成された段差面30を形成している。この組電池は、この段差面30の上方であって、電池積層体2の端面に配置された端面スペーサ13と、一対の連結部材4とで囲まれた空間を、組電池を持ち上げる工具50を挿入するための挿入空間14としている。この組電池は、この挿入空間14に挿入される工具50を連結部材4に設けた係止部5に挿入または係止させることで、工具50を組電池の外側に大きく突出させることなく持ち上げできるようにしている。
【0040】
このように、上下方向の高さを電池積層体2よりも低くしてなるエンドプレート3は、対向する電池セル1の全面を押圧することなく、電池セル1の上端を除く部分を押圧する。ただ、このエンドプレート3は、電池セル1の中央部分を含む下側の広い領域を押圧することができるので、電池積層体2の両端面に発生する電池膨張反力をエンドプレート3で受けることができる。それは、電池セル1の充放電時における膨張は、主に中央部分で発生するからである。また、以上のエンドプレート3は、電池セル1の上端部を積層方向に押圧しないので、電極端子11やガス排出弁等を備える封口板が配置された端子面10側が強く押圧されるのを阻止して、この部分が変形したり損傷するのを有効に防止できる。
【0041】
さらに、
図5と
図6に示す組電池は、連結部材4の両端部の上部に係止部5を備えている。
図5に示す連結部材4は、本体部40の高さを、電池積層体2の高さとほぼ等しくすると共に、本体部40の両端の上端部であって、エンドプレート3の上方に形成された挿入隙間14と対向する位置に貫通孔40aを開口しており、この貫通孔40aを係止部5としている。
図5に示す貫通孔40aは、円形状としている。ただ、貫通孔は、矩形状や多角形状、楕円形状、長円形状とすることもできる。
【0042】
貫通孔40aである係止部5は、組電池の平面視において、組電池の四隅であって、互いに対向する位置に形成されている。この組電池は、
図5に示すように、四隅に設けた係止部5に工具50の先端部が係止される状態で持ち上げられる。この組電池を持ち上げる工程では、工具50の先端は、エンドプレート3の上方に設けた挿入隙間14から本体部40に開口された貫通孔40aに挿入される。このため、この工具50は、平面視において組電池の外側の領域に配置されることなく組電池を持ち上げることができる。したがって、組電池を設置スペースに配置する際に、所望の位置に直接に配置可能で有り、面積効率を向上できる。
【0043】
(実施形態5)
さらに、
図7に示す連結部材4は、固定部41の上端部であって、エンドプレート3の上方に形成された挿入空間14と対向する位置に貫通孔41aを開口しており、この貫通孔41aを係止部5としている。図に示す連結部材4は、固定部41の上下長さを、
図5に示す固定部41よりも長くしており、固定部41の上下の長さを本体部40の上下の長さとほぼ等しくしている。この固定部41は、上端部をエンドプレート3の段差面30から上方に突出させており、この突出部に貫通孔41aを開口して係止部5としている。
図7に示す貫通孔41aは、円形状としている。ただ、貫通孔は、矩形状や多角形状、楕円形状、長円形状とすることもできる。
【0044】
貫通孔41aである係止部5は、組電池の平面視において、組電池の四隅であって、互いに対向する位置に形成されている。この組電池も、
図7に示すように、四隅に設けた係止部5に工具50の先端部が係止される状態で持ち上げられる。この組電池を持ち上げる工程では、工具50の先端は、エンドプレート3の上方に設けた挿入空間14から固定部41に開口された貫通孔41aに挿入される。このため、この工具50は、平面視において組電池の外側の領域に配置されることなく組電池を持ち上げることができる。したがって、組電池を設置スペースに配置する際に、所望の位置に直接に配置可能で有り、面積効率を向上できる。
【0045】
(実施形態6)
さらに、
図8に示す連結部材4は、本体部40が、両端の上端から内側に折曲された折曲片43を挿入空間14の上に備えると共に、この折曲片43と電池積層体2の端面との間に、工具50を挿入可能な開口部46を備えている。この連結部材4は、本体部40の上端から内側に折曲された折曲片43を係止部として、開口部46から挿入空間14に挿入される工具50を係止するようにしている。折曲片43の幅は、ここに係止される工具によって吊り上げできる強度を実現できるように決定される。折曲片43の突出長さは、ここに係止される工具を外れることなく係止できる十分な長さとすることができる。さらに、折曲片の横に開口される開口部46の開口幅は、工具50の先端を挿通できる大きさとなるように決定される。
【0046】
さらに、折曲片43は、
図9に示すように、先端部を下方に折曲してロック部43bを設けることもできる。この折曲片43は、先端のロック部43bで工具50の先端を外れないように係止することができるので、安全性を向上できる。
【0047】
折曲片43で構成される係止部5は、組電池の平面視において、組電池の四隅であって、互いに対向する位置に形成されている。この組電池も、四隅に設けた係止部5に工具50の先端部が係止される状態で持ち上げられる。これらの組電池を持ち上げる工程では、工具50の先端は、折曲片43に隣接して設けた開口部46から挿入空間14に挿入されて折曲片43に係止される。このため、この工具50は、平面視において組電池の外側の領域に配置されることなく組電池を持ち上げることができる。したがって、組電池を設置スペースに配置する際に、所望の位置に直接に配置可能で有り、面積効率を向上できる。
【0048】
(実施形態7)
さらに、
図10に示す連結部材4は、本体部40の上端から内側に折曲された折曲片43を挿入空間14の上に設けると共に、この折曲片43に貫通孔43aを開口して係止部5としている。
図10に示す貫通孔43aは矩形状としている。ただ、貫通孔は、円形状や多角形状、楕円形状、長円形状とすることもできる。
図10に示す折曲片43は、開口される貫通孔43aによって、枠形状に形成されている。貫通孔43aの大きさは、枠形状の折曲片43に係止される工具50によって組電池を吊り上げできる強度となるように決定される。
【0049】
折曲片43に開口された貫通孔43aで構成される係止部5は、組電池の平面視において、組電池の四隅であって、互いに対向する位置に形成されている。この組電池も、四隅に設けた係止部5に工具50の先端部が係止される状態で持ち上げられる。この組電池を持ち上げる工程では、工具50の先端は、エンドプレート3の上方に設けた挿入空間14から折曲片43の貫通孔に挿入され、あるいは折曲片43の貫通孔から挿入空間14に挿入される。このため、この工具50は、平面視において組電池の外側の領域に配置されることなく組電池を持ち上げることができる。したがって、組電池を設置スペースに配置する際に、所望の位置に直接に配置可能で有り、面積効率を向上できる。
【0050】
(実施形態8)
さらに、
図11に示す連結部材4は、本体部40の上端から内側に折曲された折曲片43を約180度折り曲げて本体部40の内面に重ねる状態とし、この折曲片43と本体部40の対向する位置に貫通孔43a、40aを開口して係止部5としている。
図11に示す貫通孔43a、40aは矩形状としている。ただ、貫通孔は、円形状や多角形状、楕円形状、長円形状とすることもできる。この構造は、本体部40に折曲片43を重ね合わせることで係止部5を補強して、耐荷重強度を高めることができる。
【0051】
本体部40に折曲片43を重ねてこれ等に開口した貫通孔40a、43aで構成される係止部5は、組電池の平面視において、組電池の四隅であって、互いに対向する位置に形成されている。この組電池も、四隅に設けた係止部5に工具50の先端部が係止される状態で持ち上げられる。この組電池を持ち上げる工程では、工具50の先端は、エンドプレート3の上方に設けた挿入空間14から折曲片43と本体部40に開口された貫通孔43a、40aに挿入される。このため、この工具50は、平面視において組電池の外側の領域に配置されることなく組電池を持ち上げることができる。したがって、組電池を設置スペースに配置する際に、所望の位置に直接に配置可能で有り、面積効率を向上できる。
【0052】
(実施形態9)
以上の実施例では、エンドプレート3の上下方向の高さを電池セル1の高さよりも低くして、電池積層体2の上面よりも一段低く形成された段差面30の上方に挿入空間14を設けているが、エンドプレート3は、必ずしも上面の高さを電池セル1よりも低くする必要はない。
図12に示す組電池は、エンドプレート3の中央部31の高さを電池セル1の高さとほぼ等しくしている。さらに、エンドプレート3は、中央部31の両側に、中央部31の上面よりも一段低い段差面30を設けており、段差面30の上方であって、電池積層体2の端面に配置された端面スペーサ13と、中央部31と、連結部材4とで囲まれた空間を、工具50の挿入空間14としている。この組電池は、エンドプレート3の中央部31の両側に形成された挿入空間14に工具50が挿入される共に、工具50の先端部が係止部5に係止されて、本体部40が吊り上げられる状態で持ち上げられる。
【0053】
図12に示す組電池は、
図5及び
図6に示す組電池と同様に、本体部40の両端の上端部であって、エンドプレート3の両側に形成された挿入空間14と対向する位置に貫通孔40aを開口して係止部5としている。さらに、エンドプレート3の両側に挿入空間14を備える組電池は、連結部材4に設ける係止部5を、
図7〜
図11に示す構造とすることもできる。
【0054】
(実施形態10)
さらに、
図13と
図14は、異なる構造の係止部5を有する組電池を示している。
図13と
図14に示す組電池は、電池積層体2の両端に配置される一対のエンドプレート3の上下方向の高さを電池セル1の高さと等しくしている。電池積層体2の両側に配置される一対の連結部材4は、本体部40の両端の上端部であって、対向する位置に貫通孔40aを開口している。さらに、エンドプレート3は、本体部40の貫通孔40aと対向する位置を連通させる挿通孔32を開口している。図に示すエンドプレート3は、上端部を左右方向に貫通する貫通孔を開口して挿通孔32としている。エンドプレート3の挿通孔32と連結部材4の貫通孔40aは、同じ形状であって、直線状に開口されている。この組電池は、連結部材4の貫通孔40aとエンドプレート3の挿通孔32とで係止部5を構成している。
【0055】
連結部材4の貫通孔40aとエンドプレート3の挿通孔32とで構成される係止部5は、組電池の両端の対向する位置に形成されている。この組電池は、両端に設けた係止部5に工具50を挿通する状態で持ち上げられる。このような工具として、エンドプレート3と連結部材4とを貫通して挿通されるロッド部材と、このロッド部材の両端を吊り上げる吊上部材とを備えることができる。この構造は、強度に優れた金属ロッド等を使用して、連結部材4とエンドプレート3の両方を吊り上げることができるので、組電池を安定して持ち上げできる特徴がある。また、この組電池を持ち上げる工具として、ワイヤー等の線材を使用することもできる。ワイヤーである工具50は、
図13に示すように、貫通孔40aと挿通孔32に挿通されて、組電池を両側から吊り上げることができる。このように、工具50としてワイヤー等の線材を使用する場合には、組電池を設置スペースに配置した後、簡単に引き抜いて除去できるので、所望の位置に直接に配置可能で有り、面積効率を向上できる。
【0056】
さらに、
図13と
図14に示す組電池は、連結部材4を、電池積層体2の側面において、上下に分割している。この連結部材4は、電池積層体2の側面の上部をカバーする上部連結部材4Xと、電池積層体2の側面の下部をカバーする下部連結部材4Yとを備えている。上部連結部材4Xは、電池積層体2に対して上方から装着されて、電池積層体2及びエンドプレート3の定位置に配置される。また、下部連結部材4Yは、電池積層体2に対して下方から装着されて、電池積層体2及びエンドプレート3の定位置に配置される。このように、電池積層体2に対して上下方向から連結部材4を装着する構造は、連結部材4を電池セル1に接触させることなく装着できる特徴がある。したがって、連結部材4の装着時における電池セル1の損傷を確実に阻止できる。
【0057】
上部連結部材4Xは、
図14に示すように、電池積層体2の側面に沿って配置される本体部40と、本体部40の両端でエンドプレート3に沿って折曲されて、エンドプレート3の外側面に固定される固定部41と、本体部40の上端に沿って折曲されて、電池積層体2の上面を保持する上側折曲部44とを備えている。この上部連結部材4Xは、本体部40の両端の上端部に係止部を形成する貫通孔40aを開口している。
【0058】
下部連結部材4Yは、
図14に示すように、電池積層体2の側面に沿って配置される本体部40と、本体部40の両端でエンドプレート3に沿って折曲されて、エンドプレート3の外側面に固定される固定部41と、本体部40の下端に沿って折曲されて、電池積層体2の底面を保持する下側折曲部45とを備えている。下部連結部材4Yは、固定部41がエンドプレート3に固定されて、本体部40が電池積層体2の側面の定位置に配置されて、下側折曲部45が電池積層体2の底面に配置される。このように、下側折曲部45を備える連結部材4は、電池積層体2を底面側から支持できるので、連結部材4に設けた係止部5を介して持ち上げられる組電池を安定して持ち上げできる。とくに、積層された複数の電池セル1の上下位置をずらすことなく持ち上げできる。
【0059】
(実施形態11)
さらに、
図15に示す組電池は、電池積層体2の両端に配置される一対のエンドプレート3が、電池積層体2の端子面10から一段下がった段差面30を中央部に設けている。このエンドプレート3は、両端部の高さを電池セル1とほぼ等しい高さとして、段差面30の両外側には上方に突出する凸部34を設けている。この組電池は、段差面30の上方であって、電池積層体2の端面に配置された端面スペーサ13と、両側の凸部34とで囲まれた空間を、工具50の挿入空間14としている。この組電池は、エンドプレート3の段差面30の両外側に形成された一対の凸部34を、組電池を持ち上げるための係止部5に利用している。
図15に示すエンドプレート3は、両側の凸部34を左右に貫通する貫通孔を開口して挿通孔32としており、この凸部34の外側に配置される本体部40には、この挿通孔32と対向する位置に貫通孔40aを開口している。この組電池は、エンドプレート3の凸部34に開口された挿通孔32と連結部材4に開口された貫通孔40aとを一直線状に開口しており、この挿通孔32と貫通孔40aとで係止部5を構成している。
【0060】
連結部材4の貫通孔40aと凸部34の挿通孔32とで構成される係止部5は、組電池の平面視において、組電池の四隅であって、互いに対向する位置に形成されている。この組電池も、四隅に設けた係止部5に工具50の先端部が挿入される状態で持ち上げられる。このような工具として、先端部に凸部34と連結部材4とに挿通されるロッド状部材を有する工具が使用できる。この工具は先端部に設けたロッド状部材を挿入空間14に挿入すると共に、凸部34の挿通孔32から本体部40の貫通孔40aに挿入されて係止部5に係止される。この構造は、ロッド状部材をエンドプレート3と連結部材4の両方に挿通することで、組電池を安定して持ち上げできる特徴がある。また、組電池を持ち上げる工程では、平面視において組電池の外側の領域に工具50を配置することなく組電池を持ち上げできる。したがって、組電池を設置スペースに配置する際に、所望の位置に直接に配置可能で有り、面積効率を向上できる。
【0061】
なお、
図15に示す組電池では、凸部34の外側に配置される連結部材4に係止部5を構成する貫通孔40aを開口しているが、エンドプレート3の凸部34に挿入空間14側から挿入されるロッド部材は、必ずしも連結部材を貫通することなく、組電池をつり上げることができる。したがって、エンドプレート3の両側に設けた凸部34に設けた挿通孔32を係止部5とする組電池は、連結部材4に開口する貫通孔を省略することもできる。
【0062】
以上の通り、本発明のある態様の組電池として、実施形態1〜11を例示したが、以上の組電池において、組電池を設置位置に配置した後は、挿入空間14に他の部材を配置してもよい。挿入空間14は、上述の通り、運搬用の工具のための空間として設けられており、組電池を配置した後は、必ずしも空間を空けておく必要はない。そのため、配置した後に、挿入空間14にハーネス、コネクタなどの部材を配置してもよい。
【0063】
以上の組電池は、ハイブリッドカーや電気自動車などの電動車両に搭載されて走行モータに電力を供給する電源、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの発電電力を蓄電する電源、あるいは深夜電力を蓄電する電源など、種々の用途に使用され、とくに大電力、大電流の用途に好適な電源として使用される。組電池を搭載する車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車などの電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、以下に示す車両においては、複数の組電池を備える電源装置として搭載する例を示している。
【0064】
(ハイブリッド自動車)
図16は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に組電池を搭載する例を示す。この図に示す組電池を搭載した車両HVは、車両HVを走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94と、エンジン96、モータ93、電源装置100、及び発電機94を搭載してなる車両本体91と、エンジン96又はモータ93で駆動されて車両本体91を走行させる車輪97とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両HVを走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
【0065】
(電気自動車)
また、
図17は、モータのみで走行する電気自動車に組電池を搭載する例を示す。この図に示す組電池を搭載した車両EVは、車両EVを走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94と、モータ93、電源装置100、及び発電機94を搭載してなる車両本体91と、モータ93で駆動されて車両本体91を走行させる車輪97とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。