(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガラス転移温度が−15℃以上かつ0℃未満であるアクリル系樹脂エマルション[I]、ガラス転移温度が0℃以上かつ60℃以下であるアクリル系樹脂エマルション[II]、および無機粒子を含有することを特徴とする整髪剤用アクリル系樹脂エマルション。
前記アクリル系樹脂エマルション[I]と前記アクリル系樹脂エマルション[II]の平均ガラス転移温度が20℃以下であることを特徴とする請求項1記載の整髪剤用アクリル系樹脂エマルション。
前記アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度と前記アクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度の差が5℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の整髪剤用アクリル系樹脂エマルション。
前記アクリル系樹脂エマルション[I]と前記アクリル系樹脂エマルション[II]の含有割合(不揮発分質量比)が、[I]/[II]=10/90〜90/10であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の整髪剤用アクリル系樹脂エマルション。
前記無機粒子の含有量が、前記アクリル系樹脂エマルション[I]の不揮発分と前記アクリル系樹脂エマルション[II]の不揮発分との合計100質量部に対して10〜150質量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の整髪剤用アクリル系樹脂エマルション。
ガラス転移温度が−15℃以上かつ0℃未満であるアクリル系樹脂エマルション[I]、ガラス転移温度が0℃以上かつ60℃以下であるアクリル系樹脂エマルション[II]、および無機粒子を含有することを特徴とする整髪剤。
ガラス転移温度が−15℃以上かつ0℃未満であるアクリル系樹脂エマルション[I]、ガラス転移温度が0℃以上かつ60℃以下であるアクリル系樹脂エマルション[II]、および無機粒子を混合することを特徴とする整髪剤用アクリル系樹脂エマルションの製造方法。
ガラス転移温度が−15℃以上かつ0℃未満であるアクリル系樹脂エマルション[I]、ガラス転移温度が0℃以上かつ60℃以下であるアクリル系樹脂エマルション[II]、および無機粒子を混合することを特徴とする整髪剤の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
なお、本明細書において、アクリル系樹脂とは(メタ)アクリル系モノマーを少なくとも1種含有するモノマー成分を重合して得られる樹脂であり、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートを、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸あるいはメタクリル酸をそれぞれ意味する。
【0013】
本発明の整髪剤用アクリル系樹脂エマルションは、ガラス転移温度が−15℃以上かつ0℃未満であるアクリル系樹脂エマルション[I]、ガラス転移温度が0℃以上かつ60℃以下であるアクリル系樹脂エマルション[II]、および無機粒子を含有する。
基材樹脂として2種の異なるアクリル系樹脂エマルション[I]および[II]を用いることで無機粒子の分散性が良好となるため整髪性能が向上されるとともにベタツキを押さえることができ、かつ無機粒子を含有することで基材樹脂であるアクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]中の樹脂粒子の周りが無機粒子で覆われたような状態となり、該アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]中の樹脂粒子が毛髪上で膜化することを抑制するため、フレーキングを有効に低減できるものと推測される。
【0014】
以下、各成分について具体的に説明する。
【0015】
<アクリル系樹脂エマルション[I]>
本発明で使用されるアクリル系樹脂エマルション[I]は、水性媒体中にアクリル系樹脂粒子(a)が分散してなるものであり、該アクリル系樹脂粒子(a)のガラス転移温度(Tg)が−15℃以上かつ0℃未満であるアクリル系樹脂エマルションである。
【0016】
アクリル系樹脂エマルション[I]中のアクリル系樹脂粒子(a)を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル系モノマー(a−1)、官能基含有モノマー(a−2)等を挙げることができる。
【0017】
上記(メタ)アクリル系モノマー(a−1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族系(メタ)アクリレート系モノマーや、フェノキシ(メタ)アクリレート等の芳香族系(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル等が挙げられる。
これらの中でも、乳化重合しやすく、かつ共重合が容易となる点から、アルキル基の炭素数が1〜18の脂肪族系(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、より好ましくはアルキル基の炭素数1〜12の脂肪族系(メタ)アクリレート系モノマーであり、更に好ましくはアルキル基の炭素数4〜12の脂肪族系(メタ)アクリレート系モノマーであり、特に好ましくはn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートである。また、2−エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートの併用や、n−ブチルアクリレートとメチルメタクリレートの併用も好適に用いることができる。
【0018】
官能基含有モノマー(a−2)としては、例えば、分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマー、グリシジル基含有モノマー、アリル基含有モノマー、加水分解性シリル基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー等が挙げられる。
【0019】
上記分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、アクリル系樹脂エマルション[I]中におけるアクリル系樹脂粒子同士の融着強度を低減するとともに、毛髪上の皮膜の硬さ(触感)の調整を容易に行うことができる点から、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0020】
上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
上記アリル基含有モノマーとしては、例えば、トリアリルオキシエチレン、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリルオキシエタン等のアリル基を2個以上有するモノマー、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル等が挙げられる。
【0022】
上記加水分解性シリル基含有モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のビニル系シリル基含有モノマー;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ系シリル基含有モノマーが挙げられる。
加水分解性シリル基含有モノマーの中でも、アクリル系樹脂エマルション[I]中におけるアクリル系樹脂粒子同士の融着強度を低減するとともに、毛髪上の皮膜の硬さ(触感)の調整を容易に行うことができる点から、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いることが好ましい。
また、(メタ)アクリレート系モノマーとの共重合性に優れる点では、(メタ)アクリロキシ系シリル基含有モノマーを用いることが好ましい。
【0023】
上記アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、アセト酢酸ビニルエステル、アセト酢酸アリルエステル、ジアセト酢酸アリルエステル、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチルクロトナート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピルクロトナート、2−シアノアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
上記ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミド−N−グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられる。
これらの中でも、乳化重合時における乳化安定性が付与され、かつ、無機粒子の高い分散性を得ることができる点から、(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。
【0026】
これらのモノマーは1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記(メタ)アクリル系モノマー(a−1)および/または官能基含有モノマー(a−2)の含有量は、アクリル系樹脂粒子(a)を構成するモノマー全体に対し、70〜100質量%とするのが好ましく、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%である。かかる含有量が少なすぎると、整髪剤用アクリル系樹脂エマルションの製造安定性が低下する傾向がある。
【0028】
アクリル系樹脂エマルション[I]中のアクリル系樹脂粒子(a)を構成するモノマー成分において、上記(メタ)アクリル系モノマー(a−1)の含有割合としては、アクリル系樹脂粒子(a)を構成するモノマー成分全体に対して、80〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは85〜99.99質量%、更に好ましくは90〜99.9質量%である。
かかる(メタ)アクリル系モノマー(a−1)の含有割合が少なすぎると整髪用アクリル系樹脂エマルションの製造安定性が低下する傾向がある。
【0029】
アクリル系樹脂エマルション[I]中のアクリル系樹脂粒子(a)を構成するモノマー成分において、上記官能基含有モノマー(a−2)の含有割合としては、アクリル系樹脂粒子(a)を構成するモノマー成分全体に対して、0〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜15質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
かかる含有割合が多すぎると、整髪用アクリル系樹脂エマルションの製造安定性が低下する傾向があり、少なすぎるとフレーキングが起こりやすくなる傾向がある。
【0030】
また、官能基含有モノマー(a−2)が、分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマーである場合は、分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマーの含有量は、アクリル系樹脂粒子(a)を構成するモノマー成分全体に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜15質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0031】
また、官能基含有モノマー(a−2)が、加水分解シリル基含有モノマーである場合は、加水分解シリル基含有モノマーの含有量は、アクリル系樹脂粒子(a)を構成するモノマー成分全体に対して、0.01〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02〜12質量%、更に好ましくは0.05〜10質量%である。
【0032】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、アクリル系樹脂粒子(a)の構成成分として、少量のスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマーや;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー等を使用してもよい。
【0033】
アクリル系樹脂エマルション[I]は、例えば、乳化重合により得ることができる。乳化重合の際には、乳化剤および重合成分以外に、公知の成分、例えば、重合開始剤、重合調整剤、可塑剤等のモノマー以外のその他成分を用いることができる。
これらモノマー以外のその他成分の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて適宜選択することができる。
【0034】
乳化剤としては、界面活性剤、保護コロイド能を有する水溶性高分子、水溶性オリゴマー等が挙げられる。
【0035】
上記界面活性剤としては、好ましいものとして例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアニオン性界面活性剤、プルロニック型構造を有するものやポリオキシエチレン型構造を有するもの等のノニオン性界面活性剤、アミン塩型や第4級アンモニウム塩型等のカチオン性界面活性剤等が挙げられる。また、界面活性剤として、構造中にラジカル重合性不飽和結合を有する反応性界面活性剤を使用することもできる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
【0036】
上記保護コロイド能を有する水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いられる。これらは、エマルションの増粘やエマルションの粒子径を変えて粘性を変化させる点で効果がある。
【0037】
上記水溶性オリゴマーとしては、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、アルキレングリコール基等の親水性基を有する重合体又は共重合体が好ましく、平均重合度としては10〜500程度の重合体又は共重合体が好ましい。水溶性オリゴマーの具体例としては、例えば、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体等のアミド系共重合体、メタクリル酸ナトリウム−4−スチレンスルホネート共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリ(メタ)アクリル酸塩等が挙げられる。更に、具体例としては、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、アルキレングリコール基等を有するモノマーやラジカル重合性の反応性乳化剤を予め単独又は他のモノマーと共重合してなる水溶性オリゴマー等も挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いられる。
【0038】
本発明においては、上記乳化剤の中でも、重合安定性が良好な点からラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いることが好ましい。
【0039】
乳化剤の使用量は、アクリル系樹脂粒子(a)を構成するモノマー100質量部に対して、0.01〜15質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.5〜8質量部である。
かかる乳化剤の使用量が少なすぎると、モノマー成分の分散安定性が低下し、重合安定性が低下する傾向があり、使用量が多すぎると、アクリル系樹脂エマルションの粘度が高くなり製造安定性が低下する傾向がある。
【0040】
上記重合開始剤としては、通常の乳化重合に使用できるものが使用でき、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;有機過酸化物、アゾ系開始剤、過酸化水素、ブチルパーオキサイド等の過酸化物;および、これらと酸性亜硫酸ナトリウムやL−アスコルビン酸等の還元剤とを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
これらの中でも、過硫酸塩などの無機過酸化物、有機過酸化物、アゾ系開始剤および還元剤の組合せが好ましく、レドックス重合が容易な点で過硫酸塩を使用するのが好ましい。
【0041】
かかる重合開始剤の使用量は、用いるモノマー成分の種類や重合条件などによって異なるが、通常、モノマー成分100質量部に対して0.01〜0.5質量部、特に0.05〜1質量部であることが好ましい。
【0042】
上記重合調整剤としては、公知のものの中から適宜選択することができる。このような重合調整剤としては、例えば、連鎖移動剤、バッファー等が挙げられる。
【0043】
上記連鎖移動剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;および、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ノルマルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のメルカプタン類等が挙げられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。連鎖移動剤の使用は、重合を安定に行わせるという点で有効であり、アクリル系樹脂粒子(a)の重合度を調整するために使用することが望ましい。
【0044】
上記バッファーとしては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
【0045】
上記可塑剤としては、エチレングリコール系可塑剤、エチレングリコールアルキルエーテル系可塑剤、ベンゾエート系可塑剤、アジペート系可塑剤、フタル酸系可塑剤、リン酸系可塑剤等が使用できる。
【0046】
乳化重合は、水性媒体中で、乳化剤の存在下、アクリル系樹脂粒子(a)を構成するモノマーを必要に応じて上記のモノマー以外のその他成分を用いて重合を行うのであるが、その方法としては、
(1)反応缶に、モノマー、乳化剤、重合開始剤、必要に応じてその他の成分の全量を仕込み、昇温し重合させる方法、
(2)まず、反応缶に水性媒体、モノマーおよび乳化剤の一部を仕込み、昇温した後、重合開始剤の一部を添加し、重合させた後、引き続き、残りのモノマー、乳化剤および重合開始剤を滴下又は分割添加して重合させる方法、
(3)反応缶に水性媒体、乳化剤、重合開始剤等を仕込んでおき昇温した後、モノマーおよび重合開始剤を、全量滴下又は分割添加して重合させる方法、
等が挙げられる。中でも、重合温度の制御が容易である点で、(2)、(3)の方法が好ましい。
【0047】
ここで水性媒体とは、水、または水を主体とするアルコール性溶媒をいい、好ましくは水である。
【0048】
上記重合方法における重合条件としては、特に限定されないが、例えば、以下の重合条件が挙げられる。
上記(1)の方法では、通常40〜100℃程度の温度範囲が適当であり、昇温開始後1〜8時間程度重合反応を行うことが好ましい。
上記(2)の方法では、まず、モノマーの1〜50質量%、および重合開始剤の1〜50質量%を40〜90℃で0.1〜4時間重合させた後、引き続き、残りのモノマー、および残りの重合開始剤を1〜5時間程度かけて滴下又は分割添加しながら重合反応を行ない、その後同温度で1〜3時間程度熟成することが好ましい。
上記(3)の方法では、重合缶に水、および重合開始剤の0〜100質量%を仕込み、40〜90℃に昇温し、モノマー、および残りの重合開始剤(初期に全量仕込む場合を除く)を2〜5時間程度かけて滴下又は分割添加し、その後同温度で1〜3時間程度熟成することが好ましい。
【0049】
上記重合方法において、重合安定性の観点から、乳化剤(又は乳化剤の一部)をアクリル系樹脂粒子(a)を構成するモノマーに溶解しておくか、又は、予め乳化剤と水性媒体とで乳化分散させO/W型の乳化液の状態としておくことが好ましい。
乳化液の調製方法としては、特に限定されないが、水に乳化剤を溶解した後、アクリル系樹脂粒子(a)を構成するモノマーを仕込み、この混合液を撹拌乳化する方法、或いは水に乳化剤を溶解した後撹拌しながらモノマーを仕込む方法等が挙げられる。
【0050】
上記乳化液の乳化の際の撹拌は、ホモディスパーや、タービン翼、プロペラ翼等の撹拌翼を取り付けた撹拌装置を用いて行うことができる。
乳化時の温度は、乳化中に混合物が反応しない程度の温度であれば問題なく、通常5〜60℃程度が適当である。
【0051】
アクリル系樹脂エマルション[I]の不揮発分濃度は、アクリル系樹脂エマルション[I]の製造コスト低減やアクリル系樹脂エマルション[I]の製造安定性の観点から、1〜65質量%であることが好ましく、さらに好ましくは20〜60質量%、特に好ましくは30〜50質量%である。
なお、不揮発分とは、エマルションを加熱乾燥して残った残分を意味し、通常、加熱乾燥前後の重量をJIS K 6828−1に記載の算出方法にしたがって求めることができる。
【0052】
上記のようにして製造されたアクリル系樹脂エマルション[I]中のアクリル系樹脂粒子(a)の平均粒子径は、50〜1000nmであることが好ましく、更に好ましくは60〜800nm、特に好ましくは70〜600nmである。平均粒子径が50nm未満であると、アクリル系樹脂エマルション[I]の不揮発分濃度が低くなり過ぎる傾向がある。平均粒子径が1000nmより大きいと、粒子径分布がブロード化する傾向があり、無機粒子との粒径比バランスが崩れ、フレーキングの抑制効果が低下したり、整髪剤用アクリル系樹脂エマルションの保存安定性が低下する傾向がある。
【0053】
なお、アクリル系樹脂粒子(a)の平均粒子径は、粒子径が500nm未満の場合は、動的光散乱方式の粒子径分布測定器、例えば、Particle Sizing Systems社製、「NICOMP 380」(商品名)により測定することができ、また、粒子径が500nm以上の場合は、レーザー解析/散乱式粒度分布測定装置、例えば、株式会社堀場製作所製「LA−950」(商品名)により測定することができる。上記粒子径の測定はいずれも公知慣用の技術である。
【0054】
本発明において、アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度(Tg)は、−15℃以上かつ0℃未満であることが必要である。アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度が高すぎると毛髪上に形成された皮膜が脆く触感が悪くなり、かつフレーキングが多くなる傾向があり、ガラス転移温度が低すぎるとアクリル系樹脂エマルション[I]同士の融着強度が大きくなり、櫛通しの際の皮膜剥がれによるフレーキングが悪化する傾向がある。
アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度は、−14℃以上かつ−2℃以下であることが好ましく、−13℃以上かつ−3℃以下であることがより好ましい。
【0055】
なお、本発明において、アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度(Tg)とは、アクリル系樹脂エマルション[I]中のアクリル系樹脂粒子(a)のガラス転移温度であり、下記のFoxの式により算出されるものである。
【0057】
(式中、Tg:モノマーA、モノマーB、・・・、及びモノマーNから形成されるポリマーのガラス転移温度(K)、
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K)、
Wa:モノマーAの質量分率、
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K)、
Wb:モノマーBの質量分率、
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K)、
Wn:モノマーNの質量分率、
ただし、Wa+Wb+・・・+Wn=1
である。)
【0058】
本発明において、アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度を調整する方法としては、特に限定はなく、適宜、使用する重合モノマー成分の各ホモポリマーとしたときのガラス転移温度を上記Foxの式に当てはめ、重合モノマー成分の組成比を確定すればよい。
【0059】
<アクリル系樹脂粒子[II]>
本発明で使用されるアクリル系樹脂エマルション[II]は、水性媒体中にアクリル系樹脂粒子(b)が分散してなるものであり、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上かつ60℃以下であるアクリル系樹脂エマルションである。
【0060】
アクリル系樹脂エマルション[II]中のアクリル系樹脂粒子(b)を構成するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系モノマー(b−1)、官能基含有モノマー(b−2)等を挙げることができる。
(メタ)アクリル系モノマー(b−1)としては、上記の(メタ)アクリル系モノマー(a−1)と同様のものを、官能基含有モノマー(b−2)としては、上記の(メタ)アクリル系モノマー(a−2)と同様のものを用いることができる。
【0061】
(メタ)アクリル系モノマー(b−1)および/または官能基含有モノマー(b−2)の含有量は、アクリル系樹脂粒子(b)を構成するモノマー全体に対し、70〜100質量%とするのが好ましく、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%である。かかる含有量が少なすぎると、整髪剤用アクリル系樹脂エマルションの製造安定性が低下する傾向がある。
【0062】
アクリル系樹脂エマルション[II]中のアクリル系樹脂粒子(b)を構成するモノマー成分において、上記(メタ)アクリル系モノマー(b−1)の含有割合としては、アクリル系樹脂粒子(b)を構成するモノマー成分全体に対して、80〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは85〜99.99質量%、更に好ましくは90〜99.9質量%である。
かかる(メタ)アクリル系モノマー(b−1)の含有割合が少なすぎると整髪用アクリル系樹脂エマルションの製造安定性が低下する傾向がある。
【0063】
アクリル系樹脂エマルション[II]中のアクリル系樹脂粒子(b)を構成するモノマー成分において、上記官能基含有モノマー(b−2)の含有割合としては、アクリル系樹脂粒子(b)を構成するモノマー成分全体に対して、0〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜15質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
かかる含有割合が多すぎると、整髪用アクリル系樹脂エマルションの製造安定性が低下する傾向があり、少なすぎるとフレーキングが悪化する傾向がある。
【0064】
また、官能基含有モノマー(b−2)が、分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマーである場合は、分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマーの含有量は、アクリル系樹脂粒子(b)を構成するモノマー成分全体に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜15質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0065】
また、官能基含有モノマー(b−2)が、加水分解シリル基含有モノマーである場合は、加水分解シリル基含有モノマーの含有量は、アクリル系樹脂粒子(b)を構成するモノマー成分全体に対して、0.01〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02〜12質量%、更に好ましくは0.05〜10質量%である。
【0066】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、アクリル系樹脂粒子(b)の構成成分として、少量のスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマーや;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル等のビニルエステル系モノマーを使用してもよい。
【0067】
アクリル系樹脂エマルション[II]は、例えば、乳化重合により得ることができ、乳化重合の際に用いる成分、その含有量、乳化重合の条件等は、上記のアクリル系樹脂エマルション[I]の場合と同様である。
【0068】
アクリル系樹脂エマルション[II]中のアクリル系樹脂粒子(b)の平均粒子径は、50〜1000nmであることが好ましく、更に好ましくは60〜800nm、特に好ましくは70〜600nmである。平均粒子径が50nm未満であると、アクリル系樹脂エマルション[I]の不揮発分濃度が低くなり過ぎる傾向がある。平均粒子径が1000nmより大きいと、粒子径分布がブロード化する傾向があり、無機粒子との粒径比バランスが崩れ、フレーキングの抑制効果が低下する傾向がある。また整髪剤用アクリル系樹脂エマルションの保存安定性が低下する傾向がある。
なお、アクリル系樹脂粒子(b)の平均粒子径については、上記のアクリル系樹脂粒子(a)の平均粒子径と同様の方法により測定することができる。
【0069】
本発明において、アクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度(Tg)は、0℃以上かつ60℃以下であることが必要である。アクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度が高すぎると毛髪上に形成された皮膜が硬く脆すぎて触感が悪くなり、かつフレーキングが悪化する傾向があり、ガラス転移温度が低すぎるとアクリル系樹脂エマルション[II]が皮膜化しやすくなったり、アクリル系樹脂エマルション[I]との皮膜化が生じやすくなり、フレーキングが悪化する傾向がある。
アクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度(Tg)は、0℃以上かつ55℃以下であることが好ましく、0℃以上50℃以下であることがより好ましい。
【0070】
なお、本発明において、アクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度(Tg)とは、アクリル系樹脂エマルション[II]中のアクリル系樹脂粒子(b)のガラス転移温度であり、上記のFoxの式により算出されるものである。
【0071】
本発明において、アクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度を調整する方法としては、特に限定はなく、適宜、使用する重合モノマー成分の各ホモポリマーとしたときのガラス転移温度を上記Foxの式に当てはめ、重合モノマー成分の組成比を確定すればよい。
【0072】
<無機粒子>
本発明で使用される無機粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、ケイ酸、シリカ、タルク、クレー等が挙げられる。中でも整髪性能、高分散性の観点からシリカが好ましい。
【0073】
シリカは、主にクロロシラン類やケイ酸ナトリウム等から生産される二酸化ケイ素(SiO
2)である。シリカは、石英、クリストバライト等の結晶性シリカと珪藻土等の非晶質シリカに大別され、非晶質シリカとして、例えば、コロイダルシリカ、フュームドシリカ等が挙げられる。本発明においては、分散性が良好であるという点でコロイダルシリカ、フュームドシリカ等の非晶質シリカを用いることがより好ましい。
【0074】
無機粒子の平均粒子径は、5〜500nmであることが好ましく、より好ましくは7〜300nmであり、更に好ましくは10〜200nmである。無機粒子の平均粒子径が小さすぎるときしみやごわつき等が生じやすくなる傾向があり、大きすぎるとフレーキングが起きやすくなったり、髪の毛が白化する傾向がある。
【0075】
なお、本発明において、無機粒子の平均粒子径は、フレーキングの防止の観点からは、アクリル系樹脂エマルション[I]中のアクリル系樹脂粒子(a)およびアクリル系樹脂エマルション[II]中のアクリル系樹脂粒子(b)の平均粒子径よりも小さい方が好ましい。これは、アクリル系樹脂粒子同士の隙間に無機粒子が分散し、アクリル系樹脂粒子の周りが無機粒子で覆われたような状態となることで、アクリル系樹脂粒子が皮膜化し難い構造を形成するため、櫛通しの際の皮膜剥がれが起因となるフレーキングが防止されると推察される。よって、無機粒子の平均粒子径がアクリル系樹脂粒子(a)およびアクリル系樹脂粒子(b)の平均粒子径よりも小さい場合は、フレーキングが起きず、摩擦係数が高く、べたつきがなく、かつ整髪性能(立ち上げ力や再整髪性能)に優れるものとなる。
一方、無機粒子の平均粒子径が、アクリル系樹脂粒子(a)およびアクリル系樹脂粒子(b)の平均粒子径よりも大きくなると、無機粒子によるクリル系樹脂粒子の被覆様状態のバランスが崩れ、皮膜の連続層ができやすくなり、フレーキングを起こす場合があり、また、無機粒子自体の大きさに起因した散乱光による毛髪全体の白化現象が起こりやすい傾向にある。
【0076】
なお、無機粒子の平均粒子径は、動的光散乱方式の粒子径分布測定器、例えば、Particle Sizing Systems「NICOMP 380」(商品名)を使用することにより測定することができる。
【0077】
本発明で用いることのできる無機粒子としては、具体的には、日産化学工業株式会社製の「スノーテックス40」、「スノーテックスXL」、「スノーテックスYL」、「スノーテックスZL」、「スノーテックスMP−1040」、「スノーテックスMP−2040」、「スノーテックスMP−3040」および「スノーテックスMP−4540M」(いずれも商品名)、扶桑化学工業株式会社製の「クォートロンPL−1」、「クォートロンPL−3」、「クォートロンPL−7」および「クォートロンPL−10H」(いずれも商品名)、並びに、日本アエロジル株式会社製の「AEROSIL200」および「AEROSIL300」(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0078】
<整髪剤用アクリル系樹脂エマルション>
本発明の整髪剤用アクリル系樹脂エマルションは、上記したアクリル系樹脂エマルション[I]、アクリル系樹脂エマルション[II]および無機粒子を含有することを特徴とする。
【0079】
本発明の整髪剤用アクリル系樹脂エマルションにおいて、アクリル系樹脂エマルション[I]の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。また、アクリル系樹脂エマルション[II]の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。アクリル樹脂エマルション[I]およびアクリル系樹脂エマルション[II]の含量が少なすぎると無機粒子の分散安定性が低下し、充分な整髪性能が得られ難くなり、かつ、フレーキングが悪化しやすくなる傾向があり、また、多すぎると相対的に無機粒子の含有量が少なくなるためフレーキング抑制効果が低下する傾向がある。
【0080】
また、アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の含有量の合計が、0.2〜30質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。
基材樹脂であるアクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の含有量の合計が少なすぎると無機粒子の分散安定性が低下し、充分な整髪性能が得られ難くなり、かつ、フレーキングが悪化しやすくなる傾向があり、多すぎると粘度が高く取扱い性が低下したり、保存安定性が低下する傾向がある。また、相対的に無機粒子の含有量が少なくなるためフレーキング抑制効果が低下する傾向がある。
【0081】
アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の含有割合(不揮発分質量比)は、[I]/[II]=10/90〜90/10であることが好ましく、15/85〜85/15がより好ましく、20/80〜80/20が更に好ましい。アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の含有割合(不揮発分質量比)が小さすぎると毛髪上でポリマーが硬く脆くなりフレーキングが起こりやすくなる傾向があり、大きすぎると毛髪上でポリマーが皮膜化しやすくなり、フレーキングが起こりやすくなる傾向がある。
【0082】
本発明において、アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度とアクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度の平均ガラス転移温度が20℃以下であることが、フレーキングを抑制することができる点で好ましく、15℃以下であることがより好ましく、8℃以下であることが更に好ましい。
また、アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度とアクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度の平均ガラス転移温度の下限は特に限定されないが、−15℃以上であることが好ましく、−14℃以上がより好ましい。
【0083】
なお、平均ガラス転移温度は、ガラス転移温度の平均値であり、各アクリル系樹脂粒子のガラス転移温度とその配合割合から平均値として算出できる。
【0084】
また、フレーキングを防止するという観点から、アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度の差(Tg
[II]−Tg
[I])が5℃以上であることが好ましく、7〜70℃であることが更に好ましく、10〜65℃がより好ましい。Tg
[II]−Tg
[I]が5℃以上であると、アクリル系樹脂の膜化抑制効果がより得られるようになるため、フレーキングの発生を防止できる。ガラス転移温度の差(Tg
[II]−Tg
[I])が5℃未満であると、フレーキングが発生しやすくなる傾向がある。
【0085】
本発明の整髪剤用アクリル系樹脂エマルションにおいて、無機粒子の含有量は、アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の不揮発分の合計100質量部に対して10〜150質量部であることが好ましく、12〜140質量部がより好ましく、15〜130質量部が更に好ましい。アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の不揮発分の合計量に対する無機粒子の含有量が少なすぎると、フレーキングや整髪性能が悪くなる傾向にあり、また多すぎてもフレーキングが悪化する傾向にある。
【0086】
本発明の整髪剤用アクリル系樹脂エマルションには、その効果を妨げない限りにおいて、その他の添加物を含有してもよい。その他の添加物としては、例えば、有機顔料、無機顔料、水溶性添加剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0087】
有機顔料としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色213号、赤色214号、赤色215号、赤色218号、赤色223号、赤色226号、赤色227号、赤色230号、赤色231号、赤色232号、赤色401号、赤色404号、赤色405号、赤色501号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色505号、赤色506号、黄色4号、黄色5号、黄色201号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色402号、黄色403号、黄色404号、黄色405号、黄色406号、黄色407号、緑色3号、緑色201号、緑色202号、緑色204号、緑色205号、緑色402号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、青色205号、青色403号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、橙色206号、橙色207号、橙色401号、橙色402号、橙色403号、紫色201号、紫色401号、黒色401号等が挙げられる。尚、有機顔料としては、上記した酸性染料、塩基性染料などの染料の他、染料のアルミニウムなどのレーキ顔料などであってもよい。
【0088】
無機顔料としては、例えば、酸化鉄、群青、酸化クロム、カーボンブラックなどの有色顔料;酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの白色顔料;タルク、マイカ、カオリンなどの体質顔料等が挙げられる。
【0089】
水溶性添加剤としては、例えば、水、エタノール;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール;ビニルピロリドン系ポリマー、ポリビニルアルコールなどの皮膜形成ポリマー;カルボキシビニルポリマー、セルロースエーテルなどの増粘性高分子;ヒアルロン酸、コラーゲン、パントテニルアルコールなどの保湿剤等が挙げられる。
【0090】
pH調整剤としては、例えば、例えば、クエン酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、リン酸、塩酸、トリエタノールアミン、イソプロパノ−ルアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アルギニン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。
【0091】
防腐剤としては、例えば、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類、イソプロピルメチルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン液、トリクロロカルバニリド、フェノキシエタノール、石炭酸、ヘキサクロロフェンなどのフェノール類、安息香酸およびその塩、ウンデシレン酸、サリチル酸、ソルビン酸およびその塩、デヒドロ酢酸およびその塩、感光素101号、感光素201号、感光素401号、ヒノキチオール、トリクロサン等が挙げられる。
【0092】
酸化防止剤としては、例えば、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸塩等が挙げられる。
【0093】
整髪剤用アクリル系樹脂エマルションは、アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]と無機粒子、並びに所望の添加剤を溶媒に配合して均一に混合することにより得られる。
【0094】
溶媒としては、水を用いることが好ましく、水としては、例えば、イオン交換水、精製水、蒸留水等が挙げられる。
【0095】
混合の条件としては、配合する各成分が均一に混合されればよく、ウルトラディスパーサーやTKホモミクサー等を使用して撹拌混合することも可能である。また、混合時の液温は、常温(約25℃)〜80℃で行えばよい。
【0096】
<整髪剤>
本発明の整髪剤は、ガラス転移温度が−15℃以上かつ0℃未満であるアクリル系樹脂エマルション[I]、ガラス転移温度が0℃以上かつ60℃以下であるアクリル系樹脂エマルション[II]および無機粒子を含有する。
ガラス転移温度が−15℃以上かつ0℃未満であるアクリル系樹脂エマルション[I]、ガラス転移温度が0℃以上かつ60℃以下であるアクリル系樹脂エマルション[II]および無機粒子の詳細については、上記同様である。
【0097】
本発明の整髪剤においては、アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度とアクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度の平均ガラス転移温度が20℃以下であることが、フレーキングを抑制することができる点で好ましく、15℃以下であることがより好ましく、8℃以下であることが更に好ましい。
また、アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度とアクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度の平均ガラス転移温度の下限は特に限定されないが、−15℃以上であることが好ましく、−14℃以上がより好ましい。
【0098】
また、フレーキングを防止するという観点から、アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度の差(Tg
[II]−Tg
[I])が5℃以上であることが好ましく、更には7〜70℃であることがより好ましく、10〜65℃が更に好ましい。Tg
[II]−Tg
[I]が5℃以上であると、アクリル系樹脂の膜化抑制効果がより得られようになる。ガラス転移温度の差(Tg
[II]−Tg
[I])が5℃未満であると、フレーキングが発生しやすくなる傾向がある。
【0099】
本発明の整髪剤においては、ガラス転移温度が−15℃以上かつ0℃未満であるアクリル系樹脂エマルション[I]とガラス転移温度が0℃以上かつ60℃以下であるアクリル系樹脂エマルション[II]の合計の含有量(不揮発分)が、整髪剤中0.05質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上である。なお、上限としては、通常、20質量%、好ましくは10質量%、更に好ましくは5質量%である。
整髪剤中の、ガラス転移温度が−15℃以上かつ0℃未満であるアクリル系樹脂エマルション[I]とガラス転移温度が0℃以上かつ60℃以下であるアクリル系樹脂エマルション[II]の合計の含有量(不揮発分)が少なすぎると無機粒子の分散が十分でなく整髪力が低下する傾向があり、また、多くなりすぎるとフレーキングが発生したり、洗浄性が低下しやすくなる傾向がある。
【0100】
本発明の整髪剤においては、アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の含有割合(不揮発分質量比)は、[I]/[II]=10/90〜90/10であることが好ましく、15/85〜85/15がより好ましく、20/80〜80/20が更に好ましい。アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の含有割合(不揮発分質量比)が小さすぎると毛髪上でポリマーが硬く脆くなり、フレーキングが起こりやすくなる傾向があり、大きすぎると毛髪上でポリマーが皮膜しやすくなりフレーキングが起こりやすくとなる傾向がある。
【0101】
本発明の整髪剤において、無機粒子の含有量は、アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の不揮発分の合計100質量部に対して10〜150質量部であることが好ましく、12〜140質量部がより好ましく、15〜130質量部が更に好ましい。アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の不揮発分の合計量に対する無機粒子の含有量が少なすぎると、フレーキングや整髪性能が悪くなる傾向にあり、また多すぎてもフレーキングが悪化する傾向にある。
【0102】
なお、本発明の整髪剤は、アクリル系樹脂エマルション[I]と、アクリル系樹脂エマルション[II]と、無機粒子を含有する、本発明の整髪剤用アクリル系樹脂エマルジョンを含有する整髪剤も含むものである。
【0103】
<整髪剤の製造方法>
本発明の整髪剤は、本発明の整髪剤は、ガラス転移温度が−15℃以上かつ0℃未満であるアクリル系樹脂エマルション[I]、ガラス転移温度が0℃以上かつ60℃以下であるアクリル系樹脂エマルション[II]および無機粒子に、公知一般の整髪剤で用いられる種々の配合成分、例えば、油剤、多価アルコール、低級アルコール、界面活性剤、紫外線吸収剤、香料、酸化防止剤、保湿剤、清涼剤、ビタミン類、植物抽出物、有機顔料、無機顔料、水溶性添加剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤などを目的に応じて適宜配合して、製造することができる。
【0104】
上記油剤としては、例えば、ヒマワリ油、綿実油、大豆油、オリーブ油、ヤシ油、ヒマシ油、ホホバ油、椿油、ミンク油等の油脂;ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、セラックロウ、鯨ロウ、ラノリン等のロウ類;セレシン、パラフィンワックス、流動パラフィン、流動イソパラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン末、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ワセリン、スクワラン等の炭化水素油;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、2−エチルブタン酸、イソペンタン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール;オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル等の脂肪酸エステル油;メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン等のシリコーン油などを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0105】
かかる油剤の含有量は、通常、乳化の観点から、整髪剤全量中に、0.5〜50質量%であることが好ましく、特に好ましくは1〜40質量%である。また、整髪料の油っぽさやべたつき感低減の観点からは、できるだけ少ない含有量とすることが好ましいが、本発明の整髪剤用無機粒子含有アクリル系樹脂エマルションを用いることで、油剤の使用量は低減又は不使用とすることができる。
【0106】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオールなどを例示することができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0107】
かかる多価アルコールの含有量は、使用感の観点から、整髪剤全量中に、0.1〜20質量%であることが好ましく、特に好ましくは0.5〜15質量%である。
【0108】
本発明の整髪剤は、ガラス転移温度が−15℃以上かつ0℃未満であるアクリル系樹脂エマルション[I]と、ガラス転移温度が0℃以上かつ60℃以下であるアクリル系樹脂エマルション[II]と、無機粒子とを混合することにより製造することができるが、その混合方法としては、
(1)アクリル系樹脂エマルション[I]と、アクリル系樹脂エマルション[II]と、無機粒子をそれぞれ配合して混合する方法、
(2)予めアクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]を混合したアクリル系樹脂エマルションを調製し、これと無機粒子とを配合し混合する方法、
(3)予めアクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]と無機粒子とを混合した無機粒子含有アクリル系樹脂エマルションを調製し、これを用いる方法、
等が挙げられるが、無機粒子の分散が良好になり、整髪性能が良化し、かつフレーキングが低減される点から、(3)の方法が好ましい。
【0109】
混合の条件としては、各成分が均一に混合されればよく、ウルトラディスパーサーやTKホモミクサー等を使用して撹拌混合することも可能である。また、混合時の液温は、常温(約25℃)〜40℃で行えばよい。
【0110】
本発明の整髪剤用アクリル系樹脂エマルションは、特にヘアスプレー、ヘアミスト、ヘアセットローション、ヘアジェル等の水性ヘアスタイリング剤等に好適であり、これら整髪剤は公知の方法により調製することができる。
【0111】
本発明の整髪剤を用いて、例えば、以下のように整髪することができる。
即ち、本発明の整髪剤を、有効整髪量分毛髪に塗布し、その塗布中又はその前後に、毛髪を所望の形状に整える。このように整髪することにより、容易に所望の髪形を形成することができる。そして、本発明の整髪剤は、整髪性能(立ち上げ力、毛束感)に優れ、ベタツキが少なく、かつ、フレーキングも非常に少ないものである。
【実施例】
【0112】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、質量基準を意味する。
【0113】
まず、下記のようにして各種アクリル系樹脂エマルションを調製した。なお、アクリル系樹脂エマルションの不揮発分、粘度については下記の方法により、ガラス転移温度の測定に関しては、上記の方法にしたがって測定した。
【0114】
<不揮発分>
JIS R 3503(1994)に規定する平形はかり瓶50mm×30mmと同底面積に成形したアルミニウム箔の皿の容器に、試料1gを塗り広げ、正確に量る。容器を恒温槽の中心に置き、105℃±2℃で60±5分間乾燥した後、デシケーター中で放冷し、その質量を量る。
そして、次の式によって不揮発分(N)を算出した。
N(%)=(Wd/Ws)×100
(式中、Nは不揮発分(%)、Wdは乾燥後の試料の質量(g)、Wsは乾燥前の試料の質量(g)である。)
【0115】
<アクリル系樹脂粒子の平均粒子径>
動的光散乱法(DLS)を用いて温度23℃、散乱角90°で測定された自己相関関数をcumulant fittingしたときに得られる体積平均粒子径であり、Particle Sizing Systems社製、「NICOMP 380」により測定した。
【0116】
<ガラス転移温度>
下記のFoxの式により算出した。
【0117】
【数2】
【0118】
(式中、Tg:モノマーA、モノマーB、・・・、及びモノマーNから形成されるポリマーのガラス転移温度(K)、
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K)、
Wa:モノマーAの質量分率、
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K)、
Wb:モノマーBの質量分率、
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K)、
Wn:モノマーNの質量分率、
ただし、Wa+Wb+・・・+Wn=1
である。)
【0119】
<製造例1:アクリル系樹脂エマルション[I−1]の調製>
冷却管と撹拌翼を備えたSUS製反応缶に、イオン交換水(53.0部)と、クエン酸ナトリウム(0.2部)とを投入し完全に溶解し、80℃に昇温した。
あらかじめイオン交換水(51.3部)、ラウリル硫酸ナトリウム(2.4部)、(メタ)アクリル系モノマー(a−1)成分として、n−ブチルアクリレート(62.0部)およびメチルメタクリレート(32.0部)、官能基含有モノマー(a−2)成分として、メタクリル酸(3.0部)およびエチレングリコールジメタクリレート(3.0部)を乳化したもの(i)と、3%KPS(過硫酸カリウム)水溶液(10.3部)(ii)とを準備した。反応缶に、まず(ii)の37%を添加し、10分後に(i)の全量と(ii)の55%を3.5時間かけて滴下し、78〜82℃で重合させた。
滴下終了後、88〜90℃に昇温し、滴下終了して10分後に(ii)の4%を添加し、35分間その温度を保持し、さらに(ii)の4%を添加して、45分間その温度を保持した。
その後、55〜60℃まで冷却し、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド(日本油脂社製、「パーブチルH−69」)の10%水溶液1.7部と5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液2.8部をそれぞれ添加し、60分間反応させた。その後、約30℃まで冷却し、10%アンモニア水でpHが約7〜9となるように中和し、150目のナイロンメッシュでろ過し、アクリル系樹脂エマルション[I−1](不揮発分45.7%、平均粒子径230nm、ガラス転移温度−13℃)を得た。
【0120】
<製造例2:アクリル系樹脂エマルション[I−2]の調製>
(メタ)アクリル系モノマー(a−1)成分として、n−ブチルアクリレート(57.0部)およびメチルメタクリレート(37.0部)を用いた以外は製造例1と同様にして、アクリル系樹脂エマルション[I―2](不揮発分45.6%、平均粒子径180nm、ガラス転移温度−7℃)を得た。
【0121】
<製造例3:アクリル系樹脂エマルション[II−1]の調製>
(メタ)アクリル系モノマー(a−1)成分として、n−ブチルアクリレート(37.0部)およびメチルメタクリレート(57.0部)を用いた以外は製造例1と同様にして、アクリル系樹脂エマルション[II―1](不揮発分45.7%、平均粒子径310nm、ガラス転移温度25℃)を得た。
【0122】
<製造例4:アクリル系樹脂エマルション[II−2]の調製>
(メタ)アクリル系モノマー(a−1)成分として、n−ブチルアクリレート(24.0部)およびメチルメタクリレート(70.0部)を用いた以外は製造例1と同様にして、アクリル系樹脂エマルション[II―2](不揮発分45.5%、平均粒子径310nm、ガラス転移温度50℃)を得た。
【0123】
<製造例5:アクリル系樹脂エマルション[II−3]の調製>
(メタ)アクリル系モノマー(a−1)成分として、n−ブチルアクリレート(52.5部)およびメチルメタクリレート(41.5部)を用いた以外は製造例1と同様にして、アクリル系樹脂エマルション[II―3](不揮発分45.4%、平均粒子径280nm、ガラス転移温度0℃)を得た。
【0124】
<製造例6:アクリル系樹脂エマルション[I’−1]の調製>
冷却管と撹拌翼を備えたSUS製反応缶に、イオン交換水(53.0部)と、クエン酸ナトリウム(0.2部)とラウリル硫酸ナトリウム(0.8部)を投入し完全に溶解し、80℃に昇温した。
あらかじめイオン交換水(51.3部)、ラウリル硫酸ナトリウム(1.5部)、(メタ)アクリル系モノマー(a−1)成分として、n−ブチルアクリレート(65.0部)およびメチルメタクリレート(26.0部)、官能基含有モノマー(a−2)成分として、メタクリル酸(3.0部)およびエチレングリコールジメタクリレート(6.0部)を乳化したもの(i)と、3%KPS(過硫酸カリウム)水溶液(8.0部)(ii)とを準備した。反応缶に、まず(i)の5%と(ii)の23%を添加し、20分間重合し、さらに残りの(i)の95%と(ii)の67%を3時間かけて滴下し、78〜82℃で重合させた。
滴下終了後、88〜90℃に昇温し、滴下終了して10分後に(ii)の5%を添加し、35分間その温度を保持し、さらに(ii)の5%を添加して、45分間その温度を保持した。
その後、55〜60℃まで冷却し、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド(日本油脂社製、「パーブチルH−69」)の10%水溶液1.6部と5%アスコルビン酸水溶液2.6部をそれぞれ添加し、60分間反応させた。その後、約30℃まで冷却し、10%アンモニア水でpHが約7〜9となるように中和し、150目のナイロンメッシュでろ過し、アクリル系樹脂エマルション[I’−1](不揮発分46.2%、平均粒子径110nm、ガラス転移温度−20℃)を得た。
【0125】
(実施例1)
ポリエチレン製カップ(100ml)に、アクリル系樹脂エマルション[I]としてアクリル系樹脂エマルション[I−1]0.81部(不揮発分;0.37部)と、アクリル系樹脂エマルション[II]としてアクリル系樹脂エマルション[II−1]0.81部(不揮発分;0.37部)と、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスMP−1040」(不揮発分濃度40%、平均粒子径120nm)0.38部(不揮発分;0.15部)とを、アクリル系樹脂粒子と無機粒子の合計が4.5%となるようにイオン交換水(18.0部)で希釈し、マグネチックスターラーにて30分間撹拌混合し、アクリル系樹脂エマルションを得た。なお、アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の含有割合(不揮発分質量比)は[I]/[II]=50/50、アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度とアクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度の平均ガラス転移温度は4.7℃であった。得られたアクリル系樹脂エマルションは均一状態であった。
【0126】
(実施例2)
アクリル系樹脂エマルション[I]としてアクリル系樹脂エマルション[I−1]1.22部(不揮発分;0.56部)、アクリル系樹脂エマルション[II]としてアクリル系樹脂エマルション[II−2]0.42部(不揮発分;0.19部)を用いた以外は実施例1と同様にしてアクリル系樹脂エマルションを調製した。なお、アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の含有割合(不揮発分質量比)は[I]/[II]=75/25、アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度とアクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度の平均ガラス転移温度は0.3℃であった。得られた樹脂エマルションは均一状態であった。
【0127】
(実施例3)
アクリル系樹脂エマルション[I]としてアクリル系樹脂エマルション[I−1]0.41部(不揮発分;0.19部)、アクリル系樹脂エマルション[II]としてアクリル系樹脂エマルション[II−3]1.23部(不揮発分;0.56部)を用いた以外は実施例1と同様にしてアクリル系樹脂エマルションを調製した。なお、アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の含有割合(不揮発分質量比)は[I]/[II]=25/75、アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度とアクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度の平均ガラス転移温度は−3.4℃であった。得られた樹脂エマルションは均一状態であった。
【0128】
(実施例4)
コロイダルシリカの配合量を2.60部(不揮発分;1.04部)とした以外は実施例1と同様にしてアクリル系樹脂エマルションを調製した。なお、アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の含有割合(不揮発分質量比)は[I]/[II]=50/50、アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度とアクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度の平均ガラス転移温度は4.7℃であった。得られた樹脂エマルションは均一状態であった。
【0129】
(実施例5)
平均粒子径10nmのコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックス40」(不揮発分;40%))を用いた以外は実施例1と同様にしてアクリル系樹脂エマルションを調製した。なお、アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の含有割合(不揮発分質量比)は[I]/[II]=50/50、アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度とアクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度の平均ガラス転移温度は4.7℃であった。得られた樹脂エマルションは均一状態であった。
【0130】
(実施例6)
アクリル系樹脂エマルション[I]としてアクリル系樹脂エマルション[I−1]0.81部(不揮発分;0.37部)と、アクリル系樹脂エマルション[II]としてアクリル系樹脂エマルション[II−2]0.81部(不揮発分;0.37部)を用いた以外は実施例1と同様にしてアクリル系樹脂エマルションを調製した。なお、アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の含有割合(不揮発分質量比)は[I]/[II]=50/50、アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度とアクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度の平均ガラス転移温度は15.1℃であった。得られた樹脂エマルションは均一状態であった。
【0131】
(実施例7)
アクリル系樹脂エマルション[I]としてアクリル系樹脂エマルション[I−2]0.81部(不揮発分;0.37部)と、アクリル系樹脂エマルション[II]としてアクリル系樹脂[II−1]0.81部(不揮発分;0.37部)を用いた以外は実施例1と同様にしてアクリル系樹脂エマルションを調製した。なお、アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の含有割合(不揮発分質量比)は[I]/[II]=50/50、アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度とアクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度の平均ガラス転移温度は8.1℃であった。得られた樹脂エマルションは均一状態であった。
【0132】
(比較例1)
アクリル系樹脂エマルション[I]としてアクリル系樹脂エマルション[I’−1]0.80部(不揮発分;0.37部)と、アクリル系樹脂エマルション[II]としてアクリル系樹脂エマルション[II−1]0.81部(不揮発分;0.37部)を用いた以外は実施例1と同様にしてアクリル系樹脂エマルションを調製した。なお、アクリル系樹脂エマルション[I]とアクリル系樹脂エマルション[II]の含有割合(不揮発分質量比)は[I]/[II]=50/50、アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度とアクリル系樹脂エマルション[II]のガラス転移温度の平均ガラス転移温度は0.7℃であった。得られた樹脂エマルションは均一状態であった。
【0133】
実施例1〜7、比較例1のアクリル系樹脂エマルションについて、以下の評価方法により整髪性能、フレーキングについて評価した。結果を表1に示す。
【0134】
<整髪性能>
上記で得られたアクリル系樹脂エマルションを、天秤にて2.0gを秤量して手のひら全体に薄く広げ、カットモデル用ウィッグを用い、頭の片側にもみ込むように均一に塗布し、整髪性能を以下の評価基準により評価した。
〔評価基準〕
○:整髪力が充分であった
△:整髪力が弱かった
×:整髪力がなかった
【0135】
<フレーキング>
上記で得られたアクリル系樹脂エマルションを天秤にて2.0gを秤量して手のひら全体に薄く広げ、カットモデル用ウィッグを用い、頭の片側の側面を中心になでつけるように塗布した後、室温(23〜28℃)で12時間以上静置した。静置後、プラスチック製の櫛を用いて塗布されたウィッグの毛髪に櫛通しを5回行った。櫛通し後のウィッグの状態を目視で観察し、以下の評価基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:全くフレーキングが発生しなかった
○:極小さなフレーキングが極少量発生するのみであった
△:極小さなフレーキングが少し発生、又はやや大きなフレーキングが極少量発生した
×:極小さなフレーキングが多く発生、又はやや大きなフレーキングが目立つ程度に多く発生した
××:毛髪全体にフレーキングが目立つ、又は毛髪全体が白化した
【0136】
【表1】
【0137】
表1の結果より、ガラス転移温度が−15℃以上かつ0℃未満であるアクリル系樹脂エマルション[I]とガラス転移温度が0℃以上かつ60℃以下であるアクリル系樹脂エマルション[II]と無機粒子を含有する実施例1〜7はいずれも、整髪性能に優れ、ベタツキが少なく、かつ、フレーキングが発生しない、または非常に少ないものであることがわかった。
一方、アクリル系樹脂エマルション[I]のガラス転移温度が本発明規定の範囲を満たさない比較例1は、フレーキングが多く、実施例1より劣っていることがわかった。
【0138】
さらに、下記のとおり整髪剤を調製し、以下の評価方法により整髪性能、フレーキングについて評価した。
【0139】
(実施例8)
下記の配合処方に従い、常法により整髪剤(ヘアローション)を調製した。
<ヘアローションの配合処方>
アクリル系樹脂エマルション[I−1] 2.2質量%
アクリル系樹脂エマルション[II−1] 2.2質量%
シリカ 0.4質量%
ポリオキシプロピレンソルビット 10.0質量%
フェノキシエタノール 0.3質量%
エタノール 10.0質量%
アクリル樹脂アルカノールアミン液 3.0質量%
キサンタンガム 0.3質量%
精製水 残部
合計 100質量%
【0140】
(実施例9)
下記の配合処方に従い、常法により整髪剤(ヘアジェル)を調製した。
<ヘアジェルの配合処方>
アクリル系樹脂エマルション[I−1] 1.5質量%
アクリル系樹脂エマルション[II−1] 1.5質量%
シリカ 2.0質量%
ケイ酸ナトリウム・マグネシウム 2.5質量%
グリセリン 6.0質量%
キサンタンガム 0.2質量%
クエン酸 0.08質量%
エタノール 15.0質量%
精製水 残部
合計 100質量%
【0141】
(実施例10)
下記の配合処方に従い、常法により整髪剤(ヘアワックス)を調製した。
<ヘアワックスの配合処方>
アクリル系樹脂エマルション[I−1] 5.5質量%
アクリル系樹脂エマルション[II−2] 5.5質量%
シリカ 1.0質量%
キャンデリラロウ 3.0質量%
ワセリン 7.0質量%
流動パラフィン 6.5質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル 6.0質量%
ステアリン酸ソルビタン 7.0質量%
フェノキシエタノール 0.8質量%
パラオキシ安息香酸エステル 0.3質量%
グリセリン 3.0質量%
トリエタノールアミン 0.1質量%
カルボキシビニルポリマー 0.3質量%
香料 0.09質量%
精製水 残部
合計 100質量%
【0142】
実施例8〜10で得られた整髪剤について、以下の評価方法により整髪性能、フレーキングについて評価した。
【0143】
<整髪性能>
実施例8〜10で得られた整髪剤2.0g(天秤にて秤量)を、ショートヘアウィッグ(頭頂部の髪が20cm程度の長さで一般的な髪型にカットしたもの)の全体に均一に塗布した。次いで、上記ウィッグの側頭部から毛髪を頭頂部方向へかき上げ、真上に毛髪を立ち上げるように整髪した。
整髪直後に毛髪の立ち上がりを観察した。ウィッグの側頭部と頭頂部の中間位置辺りの毛髪からなる毛束の角度を、毛髪が真下に向いているときを角度0°とし、毛髪が真上を向いているときを角度180°として測定し、以下の基準で整髪性能を評価した。
〔評価基準〕
○(整髪性能が良好):角度が130°以上
△(整髪性能が不十分):角度が80°以上130°未満
×(整髪性能が不良):角度が80°未満
【0144】
実施例8〜10で得られた整髪剤の整髪性能の評価結果は全て「○」(整髪性能が良好)であった。
【0145】
<フレーキング>
実施例8〜10で得られた整髪剤を天秤にて2.0gを秤量して手のひら全体に薄く広げ、カットモデル用ウィッグを用い、頭の片側の側面を中心になでつけるように塗布した後、室温(23℃)で12時間以上静置した。静置後、プラスチック製の櫛を用いて塗布されたウィッグの毛髪に櫛通しを5回行った。櫛通し後のウィッグの状態を目視で観察し、以下の評価基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:全くフレーキングが発生しなかった
○:極小さなフレーキングが極少量発生するのみであった
△:極小さなフレーキングが少し発生、又はやや大きなフレーキングが極少量発生した
×:極小さなフレーキングが多く発生、又はやや大きなフレーキングが目立つ程度に多く発生した
××:毛髪全体にフレーキングが目立つ、又は毛髪全体が白化した
【0146】
実施例8、9で得られた整髪剤のフレーキングの評価結果は「○」であり、実施例10で得られた整髪剤のフレーキングの評価結果は「◎」であった。