特許第6723786号(P6723786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6723786二重構造ケーシング及びそれを利用したグラウンドアンカーの施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6723786
(24)【登録日】2020年6月26日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】二重構造ケーシング及びそれを利用したグラウンドアンカーの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/80 20060101AFI20200706BHJP
   E21D 20/00 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   E02D5/80 Z
   E21D20/00 L
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-68367(P2016-68367)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-179864(P2017-179864A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230788
【氏名又は名称】日本基礎技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小高 康
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3192516(JP,U)
【文献】 特開平07−133696(JP,A)
【文献】 特開平08−128039(JP,A)
【文献】 米国特許第04915544(US,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1565767(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/80
E21D 20/00
E02D 5/30
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤へ貫入するためのケーシングであって、
外側ケーシングと、
該外側ケーシングの内径よりも小さい外径を有し、該外側ケーシングの内部に設置される内管と、
該内管の長手方向両端部において、前記外側ケーシングと前記内管との間の隙間に密閉処理を施す一対のシール部材と、を含み、
グラウンドアンカーの施工に用いられ、
前記外側ケーシングが、前記グラウンドアンカーの設計有効径に対応した外径を有することを特徴とする二重構造ケーシング。
【請求項2】
前記内管は、前記外側ケーシングよりも短い長さを有し、長手方向一端部の位置が、前記外側ケーシングの長手方向一端部の位置に合わせられて配置され、
前記外側ケーシングの前記長手方向一端部の外周部に、雄ねじ構造が設けられると共に、前記外側ケーシングの長手方向他端部の内周部に、前記雄ねじ構造と螺嵌可能な雌ねじ構造が設けられていることを特徴とする請求項1記載の二重構造ケーシング。
【請求項3】
地盤へ貫入するためのケーシングであって、
外側ケーシングと、
該外側ケーシングの内径よりも小さい外径を有し、該外側ケーシングの内部に設置される内管と、
該内管の長手方向両端部において、前記外側ケーシングと前記内管との間の隙間に密閉処理を施す一対のシール部材と、を含み、
前記内管は、前記外側ケーシングよりも短い長さを有し、長手方向一端部の位置が、前記外側ケーシングの長手方向一端部の位置に合わせられて配置され、
前記外側ケーシングの前記長手方向一端部の外周部に、雄ねじ構造が設けられると共に、前記外側ケーシングの長手方向他端部の内周部に、前記雄ねじ構造と螺嵌可能な雌ねじ構造が設けられていることを特徴とする二重構造ケーシング。
【請求項4】
前記外側ケーシングと前記内管との間の隙間に、ウレタンが注入されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の二重構造ケーシング。
【請求項5】
削孔ビットの後端にケーシングを継ぎ足しながら削孔した孔に、グラウトを充填すると共に引張り材を挿入して、地盤にグラウンドアンカーを施工する方法であって、
前記グラウンドアンカーの設計有効径に対応した外径を有する外側ケーシングの内部に、該外側ケーシングの内径よりも小さい外径を有する内管を挿通し、該内管の長手方向両端部において、前記外側ケーシングと前記内管との間の隙間に密閉処理を施した二重構造ケーシングを、前記ケーシングとして利用することを特徴とするグラウンドアンカーの施工方法。
【請求項6】
削孔ビットの後端に前記二重構造ケーシングを継ぎ足しながら地盤に孔を削孔する削孔工程と、
前記二重構造ケーシングの内部にグラウトを注入するグラウト注入工程と、
前記二重構造ケーシングの内管の内径に対応した大きさのケーシングパッカーを、前記引張り材の後端側に取り付けた状態で、前記内管の内部に前記引張り材を挿入する引張り材挿入工程と、
前記内管の内部において前記ケーシングパッカーを膨張させた状態で、該ケーシングパッカーよりも削孔方向後方から前記内管の内部にグラウトを圧送しながら、前記二重構造ケーシングを引き抜いて回収するケーシング回収工程と、を含むことを特徴とする請求項5記載のグラウンドアンカーの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤へ貫入するための二重構造ケーシング、及び、それを利用したグラウンドアンカーの施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラウンドアンカーの施工において、支持層が比較的固結度の低い地盤である場合、地盤とアンカー体との摩擦応力度が設計上小さくなることから、支持地盤に貫入する長さ(アンカー体長)を長くする必要がある。しかしながら、アンカー体長には最大10mという規定があると共に、敷地境界を越境しないようにするために、アンカー体長を抑制しつつ、削孔用ケーシングの径を大きくすることで、所要の耐力或いは更に大きな耐力を確保することが行われる。すなわち、アンカーの極限耐力を「Pmax(kN)」、アンカー有効径(削孔径)を「Da(m)」、アンカー体長を「La(m)」、地盤とアンカー体との極限周面摩擦抵抗を「τu(kN/m)」としたとき、「Pmax=Da×π×La×τu」という関係にあることから、アンカー体との摩擦抵抗(τu)が小さい地盤において、アンカー体長(La)を短くしながら所要の耐力(Pmax)を確保するためには、削孔径を大きくしてアンカー有効径(Da)を大きくする必要がある。
【0003】
一方、グラウンドアンカーの施工を高水圧環境下で行う場合、施工中にケーシングの中から地下水や背面土砂が噴出することを防止するために、端部にケーシングパッカーを取り付けた引張り材(テンドン)をケーシングに挿入して、ケーシング内にケーシングパッカーを設置することが行われる(例えば、特許文献1参照)。この際、一般的には、施工に用いられるケーシングの径に対応したサイズのケーシングパッカーが使用される。すなわち、例えば、φ135mmのケーシングを用いてグラウンドアンカーを施工する場合は、φ135mm用のケーシングパッカーを使用し、φ165mmのケーシングを用いてグラウンドアンカーを施工する場合は、φ165mm用のケーシングパッカーを使用する。
【0004】
又、ケーシングからの地下水等の噴出を防止するべく、ケーシング内に設置されるケーシングパッカーには、ケーシング内の面積に比例した出水力が作用する。例えば、φ135mmのケーシング(内径106mm)とφ165mmのケーシング(内径135mm)とを比較すると、φ135mmのケーシング内の面積は「106×π/4=8820mm」となり、φ165mmのケーシング内の面積は「135×π/4=14307mm」となる。このため、φ165mm用のケーシングパッカーには、φ135mm用のケーシングパッカーの、「14307mm/8820mm≒1.62」倍の出水力が作用することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3789992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述したように、アンカー体長を抑制しながら所要の耐力を確保するために、削孔用ケーシングの径を大きくした場合、それに合わせて、ケーシング内に設置するケーシングパッカー等のサイズも大きくする必要がある。すなわち、ケーシングの径が大きくなることで、径が大きくなる前のケーシングの内部で使用していた、ケーシングパッカー等の機器が使用できなくなるという弊害が生じる。又、ケーシングのサイズに合わせてケーシングパッカーのサイズを大きくすると、ケーシングパッカーの重量も重くなるため、引張り材へのケーシングパッカーの取り付け作業、ケーシング内への引張り材の挿入作業、及び、ケーシング回収後の撤去作業時等の、作業負荷が増大し、作業効率が低下してしまう。又、ケーシングパッカーの大型化に伴い、ケーシングパッカー自体の価格が増大する。更に、ケーシングパッカーにはケーシング内の面積に比例した出水力が作用することから、より大きな径のケーシング内に設置されるケーシングパッカーは、より大きな負担がかかることとなるため、高額なラバーの損耗が激しくなり、修理費用やメンテナンス費用が増大する。又、仮に、万が一、ケーシングパッカーが破損した場合を想定すると、通常よりも大きな出水力に対抗して水や土砂の噴出を食い止めることとなり、山留背面の沈下等に対するリスクが大きくなる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ケーシングの内部で使用する機器を、外径が異なる複数のケーシングにおいて効率よく利用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0009】
(1)地盤へ貫入するためのケーシングであって、外側ケーシングと、該外側ケーシングの内径よりも小さい外径を有し、該外側ケーシングの内部に設置される内管と、該内管の長手方向両端部において、前記外側ケーシングと前記内管との間の隙間に密閉処理を施す一対のシール部材と、を含む二重構造ケーシング。
本項に記載の二重構造ケーシングは、地盤に対する様々な工事の際に、地盤に貫入して利用されるものであり、外側ケーシング、内管及び一対のシール部材を含んでいる。内管は、外側ケーシングの内径よりも小さい外径を有しており、外側ケーシングの内部に挿通されて設置される。又、一対のシール部材は、外側ケーシングと、外側ケーシングの内部に配置された内管との間に生じる隙間を、内管の長手方向両端部において密閉するものである。
【0010】
上記のような構造であるため、例えば、外側ケーシングの外径を、一般的なφ165mmケーシングの外径に合わせると共に、内管の内径を、一般的なφ135mmケーシングの内径に合わせることとすれば、φ135mmケーシングの内部で使用していた機器が、φ165mmケーシングに対応した外径を有する二重構造ケーシングの内部においても利用される。すなわち、外側ケーシングの内部に内管を設置することによって、二重構造ケーシングの内径を、外側ケーシングの内径から内管の内径までサイズダウンしているため、内管の内径と同程度の内径を有するケーシングでの利用を想定した機器が、そのケーシングの外径よりも大きい外径を有する二重構造ケーシングの内部においても利用される。これにより、ケーシングの内部で使用する機器が、外径が異なる複数のケーシングにおいて効率よく利用されることとなる。更に、外側ケーシングと内管との間の隙間は、内管の長手方向両端部において一対のシール部材により密閉されているため、二重構造ケーシングが地盤に貫入された状態であっても、土砂等の流入が防止される。又、二重構造ケーシングを構成する外側ケーシングとして、一般的に流通しているケーシングを利用することとすれば、二重構造ケーシングの作製コストが抑制されるものとなる。
【0011】
(2)上記(1)項において、グラウンドアンカーの施工に用いられ、前記外側ケーシングが、前記グラウンドアンカーの設計有効径に対応した外径を有する二重構造ケーシング(請求項)。
本項に記載の二重構造ケーシングは、グラウンドアンカーの施工に用いられるものであり、外側ケーシングが、造成するグラウンドアンカーの設計有効径に対応した外径を有している。これにより、本二重構造ケーシングを貫入して地盤に削孔された孔は、グラウンドアンカーの設計有効径を満たすこととなる。更に、グラウンドアンカーの施工中に二重構造ケーシングの内部で使用するケーシングパッカー等の機器として、二重構造ケーシングの内管の内径と同程度の内径を有するケーシングにおいて使用していた機器が使用される。すなわち、外側ケーシングのサイズに合わせた比較的大きなケーシングパッカー等を用意する必要はなく、内管のサイズに合わせた比較的小さなケーシングパッカー等を使用すればよい。このため、ケーシングパッカー等の価格が抑制されると共に、重量も抑制される。これにより、例えば、引張り材へのケーシングパッカーの取り付け作業、ケーシング内への引張り材の挿入作業、及び、ケーシング回収後の撤去作業時等に、作業負荷が低減されるため、作業効率が向上する。
【0012】
又、ケーシングパッカーには、ケーシング内を逆流する地下水や土砂等による、ケーシング内の面積に比例した出水力が作用するが、本項に記載の二重構造ケーシングは、外側ケーシングよりも内径がサイズダウンされた内管の内部においてケーシングパッカーが使用されるため、ケーシングパッカーに対する負荷が低減される。これにより、ケーシングパッカーの高額なラバーの損耗が抑制されるため、ケーシングパッカーの修理費用やメンテナンス費用が抑制される。更に、万が一、ケーシングパッカーが破損した場合であっても、内管の面積に比例した出水力に対抗して水や土砂の噴出を食い止めればよいため、山留背面の沈下等のリスクが低減される。
【0013】
(3)上記(1)(2)項において、前記内管は、前記外側ケーシングよりも短い長さを有し、長手方向一端部の位置が、前記外側ケーシングの長手方向一端部の位置に合わせられて配置され、前記外側ケーシングの前記長手方向一端部の外周部に、雄ねじ構造が設けられると共に、前記外側ケーシングの長手方向他端部の内周部に、前記雄ねじ構造と螺嵌可能な雌ねじ構造が設けられている二重構造ケーシング(請求項2、3)。
【0014】
本項に記載の二重構造ケーシングは、内管の長さが外側ケーシングの長さよりも短く、又、外側ケーシングの内部において、内管は、その長手方向一端部の位置が、外側ケーシングの長手方向一端部の位置に合わせられて配置されている。更に、本二重構造ケーシングには、雄ねじ構造と、この雄ねじ構造と螺嵌可能な雌ねじ構造とが設けられており、雄ねじ構造が外側ケーシングの長手方向一端部の外周部に設けられ、雌ねじ構造が外側ケーシングの長手方向他端部の内周部に設けられている。すなわち、外側ケーシングよりも短い内管が、外側ケーシングの内部に長手方向一端側に詰めて配置されているため、外側ケーシングの長手方向他端側には、内部に内管が配置されていない範囲が存在する。外側ケーシングのこのような範囲の内周部に、雌ねじ構造が設けられているものである。このような構造であるため、外側ケーシングの内部に配置された内管によって阻害されることなく、本項に記載の二重構造ケーシング同士が、雄ねじ構造と雌ねじ構造とを介したねじ嵌合によって強固に接続される。
【0015】
(4)上記(2)(3)項において、前記外側ケーシングと前記内管との間の隙間に、ウレタンが注入されている二重構造ケーシング(請求項4)。
本項に記載の二重構造ケーシングは、外側ケーシングと内管との間の隙間に、ウレタンが注入されていることで、仮に、この隙間の端部を密閉しているシール部材が破損した場合であっても、隙間に対する地下水、土砂、グラウト等の浸入が防止されるものである。更に、ウレタンは軽量であるため、外側ケーシングと内管との間の隙間に注入されていても、二重構造ケーシングの重量にほとんど影響を与えないものである。
【0016】
(5)削孔ビットの後端にケーシングを継ぎ足しながら削孔した孔に、グラウトを充填すると共に引張り材を挿入して、地盤にグラウンドアンカーを施工する方法であって、前記グラウンドアンカーの設計有効径に対応した外径を有する外側ケーシングの内部に、該外側ケーシングの内径よりも小さい外径を有する内管を挿通し、該内管の長手方向両端部において、前記外側ケーシングと前記内管との間の隙間に密閉処理を施した二重構造ケーシングを、前記ケーシングとして利用するグラウンドアンカーの施工方法(請求項5)。
【0017】
本項に記載のグラウンドアンカーの施工方法は、二重構造ケーシングを利用して、地盤にグラウンドアンカーを造成するものである。すなわち、二重構造ケーシングは、造成するグラウンドアンカーの設計有効径に対応した外径を有する外側ケーシングと、外側ケーシングの内部に挿通された内管とを有しており、内管の長手方向両端部において、外側ケーシングと内管との間の隙間に密閉処理が施されたものである。このため、この二重構造ケーシングを利用して地盤に削孔する孔は、外側ケーシングの外径以上の径で削孔されることになるため、造成するグラウンドアンカーの設計有効径を満たすものとなる。
【0018】
又、二重構造ケーシングは、実質的な内径として、外側ケーシングの内径からサイズダウンされた内管の内径を有することとなる。このため、削孔した孔へのグラウトの充填や引張り材の挿入に伴い、二重構造ケーシングの内部で使用する様々な機器は、内管の内径と同程度の内径を有する一般的なケーシングでの使用を想定した機器を使用すればよい。これにより、ケーシングの内部で使用する機器が、外側ケーシング及び内管を有する二重構造ケーシングと、二重構造ケーシングの内管の内径と同程度の内径を有する一般的なケーシングとの双方で、共通のものが使用されることとなる。更に、本施工方法で用いる二重構造ケーシングは、外側ケーシングと内管との間の隙間を、内管の長手方向両端部において密閉しているため、その隙間に地盤の削孔中等に土砂等が流入することはない。又、二重構造ケーシングの作製にあたり、グラウンドアンカーの設計有効径に対応した外径を有する、一般的に流通しているケーシングを利用することで、作製コストが抑制されるものとなる。
【0019】
(6)上記(5)項において、削孔ビットの後端に前記二重構造ケーシングを継ぎ足しながら地盤に孔を削孔する削孔工程と、前記二重構造ケーシングの内部にグラウトを注入するグラウト注入工程と、前記二重構造ケーシングの内管の内径に対応した大きさのケーシングパッカーを、前記引張り材の後端側に取り付けた状態で、前記内管の内部に前記引張り材を挿入する引張り材挿入工程と、前記内管の内部において前記ケーシングパッカーを膨張させた状態で、該ケーシングパッカーよりも削孔方向後方から前記内管の内部にグラウトを圧送しながら、前記二重構造ケーシングを引き抜いて回収するケーシング回収工程と、を含むグラウンドアンカーの施工方法(請求項6)。
【0020】
本項に記載のグラウンドアンカーの施工方法は、削孔工程、グラウト注入工程、引張り材挿入工程、及び、ケーシング回収工程を含むものである。削孔工程では、削孔ビットの後端に二重構造ケーシングを継ぎ足しつつ、例えば、削孔方向最後端の二重構造ケーシングの後端から内管の内部に削孔水を圧送しながら、地盤に孔を削孔する。このため、上記(5)項に記載したように、二重構造ケーシングの外側ケーシングと内管との間の隙間に、水や土砂等が浸入することなく、グラウンドアンカーの設計有効径を満たす孔が削孔される。又、グラウト注入工程では、例えば、二重構造ケーシングの内管の内部に注入ホースを挿入してグラウトを注入することで、削孔工程において内管の内部を満たしていた削孔水を、削孔方向先端側からグラウトに置き換える。
【0021】
又、引張り材挿入工程では、挿入方向後端にケーシングパッカーを取り付けた引張り材を、二重構造ケーシングの内管の内部に挿入する。この際に用いるケーシングパッカーは、二重構造ケーシングの内管の内径に対応した大きさのものであり、内管の内径と同程度の内径を有する一般的なケーシング用のケーシングパッカーが使用される。このため、二重構造ケーシングの外側ケーシングの外径と同程度の外径を有する一般的なケーシングを用いて施工する場合と比較して、小さなケーシングパッカーが利用されることから、ケーシングパッカー自体の価格や重量が抑制される。これにより、引張り材に対するケーシングパッカーの取り付け及び撤去作業や、ケーシングパッカーを取り付けた引張り材の挿入作業時の、作業負荷が低減され、作業効率が向上することとなる。
【0022】
又、ケーシング回収工程では、内管の内部においてケーシングパッカーを空気で膨張させると共に、ケーシングパッカーの配置位置よりも削孔方向後端側から、内管の内部にグラウトを圧送した状態で、削孔工程で地盤に貫入した二重構造ケーシングを引き抜いて回収するものである。この際、ケーシングパッカーを膨張させる空気圧は、二重ケーシング内を逆流して噴出しようとする水や土砂等の圧力よりも大きくし、又、グラウトを圧送する圧力は、ケーシングパッカーを膨張させている空気圧よりも大きい圧力にする。これにより、グラウトの圧送を停止している間は、ケーシングパッカーが膨張して内管の内周部に密着することで、水や土砂等の噴出が防止され、グラウトの圧送中は、グラウトの圧力により形成されるケーシングパッカーと内管との間の隙間を通って、グラウトが二重構造ケーシングの削孔方向先端側に供給される。更に、ケーシングパッカーと内管との間に隙間が形成されることで、ケーシングパッカーと内管との間に摩擦力がなくなるため、引き抜きにより移動する二重構造ケーシングにケーシングパッカーが追従することなく、二重構造ケーシングが引き抜かれる。
【0023】
更に、本項に記載のグラウンドアンカーの施工方法は、二重構造ケーシングの内管に配置されるケーシングパッカーに対して、内管の内部を逆流しようとする出水力(すなわち、外側ケーシングの外径と同程度の外径を有する、一般的なケーシングの内部を逆流しようとする出水力よりも小さい、内管の内径と同程度の内径を有する、一般的なケーシングの内部を逆流しようとする出水力と同等の出水力)のみが加わることになる。これにより、ケーシングパッカーに対する負荷が低減されるため、ケーシングパッカーの修理費用やメンテナンス費用が抑制される。又、万が一、ケーシングパッカーが破損した場合の、地下水や土砂等の噴出に起因する、山留背面の沈下等のリスクが低減される。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上記のような構成であるため、ケーシングの内部で使用する機器を、外径が異なる複数のケーシングにおいて効率よく利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係る二重構造ケーシングの構造を示す断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法で用いるケーシングパッカーの一例を示す構造図である。
図3】本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法の手順の一例を示すフロー図である。
図4】本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法におけるソイル削孔工程を説明するためのイメージ図である。
図5】本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法におけるガイド管打込工程を説明するためのイメージ図である。
図6】本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法における止水ボックス及び削孔ビットの取付工程を説明するためのイメージ図である。
図7】本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法における削孔工程を説明するためのイメージ図である。
図8】削孔時及び削孔完了時の削孔ビットの状態を説明するためのイメージ図である。
図9】本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法におけるグラウト一次注入工程を説明するためのイメージ図である。
図10】本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法における引張り材挿入工程を説明するためのイメージ図である。
図11】本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法におけるケーシングパッカー作動工程を説明するためのイメージ図である。
図12】本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法におけるケーシング回収工程を説明するためのイメージ図である。
図13】本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法におけるフリーパッカー作動工程を説明するためのイメージ図である。
図14】本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法における口元パッカー作動工程を説明するためのイメージ図である。
図15】本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法におけるフリーパッカー背面注入工程を説明するためのイメージ図である。
図16】本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法における先端補充注入工程を説明するためのイメージ図である。
図17】本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法における緊張及び定着工程を説明するためのイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。ここで、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は同一符号で示している。
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態に係る二重構造ケーシングについて説明する。図1(a)に示すように、二重構造ケーシング10は、円筒状の外側ケーシング12と、外側ケーシング12の内部に設置され、同じく円筒状の内管14とで大略構成されている。内管14は、外側ケーシング12よりも長さが短く、その図中左側端部の位置が、外側ケーシング12の図中左側端部の位置に合わせて設置されている。又、外側ケーシング12と内管14との間の隙間Cの、図中左右方向両端部には、円環状の一対のシール部材16A、16Bが設置されており、これによって隙間Cが密閉されている。又、隙間C内は、シール部材16A、16Bにより密閉される前に、ウレタンが注入されている。なお、隙間Cは、ウレタン以外の材料が注入されていてもよく、中空であってもよい。
【0027】
更に、二重構造ケーシング10は、外側ケーシング12の図中左側端部の外周部に、雄ねじ構造18が形成されている。又、外側ケーシング12よりも長さが短い内管14が、図中左詰めで外側ケーシング12の内部に設置されることで、内管14が配置されない範囲となる、外側ケーシング12の図中右側端部の内周部に、雄ねじ構造18と螺嵌可能な雌ねじ構造20が形成されている。これにより、図1(b)示すように、一方の二重構造ケーシング10の雄ねじ構造18と、もう一方の二重構造ケーシング10の雌ねじ構造20とがねじ嵌合されることで、二重構造ケーシング10同士が接続される。
【0028】
このような構造の二重構造ケーシング10は、例えば、1本の長さが標準のケーシングと同様の1.5m程度であり、又、外側ケーシング12の外径及び内径が、一般的なφ165mmケーシングと同程度の165mm及び135mmである。又、内管14の外径は114mm、内管14の内径は、一般的なφ135mmケーシングの内径と同程度の105mmである。なお、以下の説明において、二重構造ケーシング10の外径及び内径とは、夫々、外側ケーシング12の外径及び内管14の内径を示すものとし、又、二重構造ケーシング10の内部とは、内管14の内部を示すものとする。
【0029】
次に、図2には、本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法で用いるケーシングパッカーの一例を示している。ケーシングパッカー30は、円筒部32と、円筒部32の周囲に装着されたゴム等の弾性部材34と、円筒部32に接続されたエアーバルブ42とを含んでおり、エアーバルブ42を介して空気が送り込まれることにより、円筒部32の周囲で弾性部材34が膨張する構造を有している。又、ケーシングパッカー30は、円筒部32の長手方向両端に設けられたホースニップル36A、36Bと、円筒部32を貫通してホースニップル36A、36Bを接続する接続管36Cとを含んでおり、ホースニップル36A、36Bには、グラウトを注入するための注入ホースが接続される。すなわち、後述するように、注入ホースから供給されるグラウトが、ホースニップル36A、36B及び接続管36Cを介して、ケーシングパッカー30の内部を通過するようになっている。
【0030】
更に、ケーシングパッカー30は、円筒部32を貫通する引張り材挿通管38A、38Bと、これら引張り材挿通管38A、38Bの夫々と接続され、円筒部32の長手方向一端に設けられた引張り材固定部40A、40Bとを有している。そして、後述するように、引張り材挿通管38A、38Bに引張り材(テンドン)の一部(PC鋼線)を挿通すると共に、挿通した引張り材の一部を、くさび構造等を利用した引張り材固定部40A、40Bにより固定することで、引張り材に対してケーシングパッカー30が固定されることとなる。
なお、このケーシングパッカー30は、図1に示した二重構造ケーシング10に対応した大きさのものであり、例えば、二重構造ケーシング10が、一般的なφ165mmケーシングの外径(165mm程度)と、一般的なφ135mmケーシングの内径(105mm程度)とを有する場合、ケーシングパッカー30の円筒部32は、96mm程度の外径を有している。
【0031】
続いて、図3に示すフロー図に沿って、図4図17を参照しながら、本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法の手順の一例を説明する。なお、本実施例では、図1に示した二重構造ケーシング10を利用して、アンカー有効径が165mmのグラウンドアンカーを造成する場合について説明する。又、二重構造ケーシング10の詳細な構造については図1を、ケーシングパッカー30の詳細な構造については図2を、夫々参照されたい。又、図4図17では、削孔機等の図示を省略している。
S10(ソイル削孔):図4に示すように、二重構造ケーシング10の削孔方向先端に、φ165mmのソイル削孔用ビット50を取り付け、二重構造ケーシング10の削孔方向後端側をセットした削孔機により、施工対象の地盤Gの表面を覆うソイルSを、300mm程度の深さに削孔する。なお、本実施例において、ソイルSは、SMW(Soil Mixing Wall)を示している。
【0032】
S20(ガイド管打込):図5に示すように、上記S10で削孔した孔に対し、図示しない削孔機により、φ165mm用のガイド管52を打ち込む。
S30(止水ボックス・削孔ビット取付):図6に示すように、ガイド管52の端部に止水ボックス56を取り付けると共に、削孔方向先端に削孔ビット54(例えば逆支弁付き特殊ビット)を取り付けた二重構造ケーシング10を、止水ボックス56及びガイド管52に挿入する。この際、例えば、止水ボックス56の内周部と二重構造ケーシング10の外周部との間には、プリペンダーを設置し、ガイド管52と止水ボックス56との接続は、ビクトリックバンドを使用する。
【0033】
S40(削孔):図7に示すように、上記S30で削孔方向先端に削孔ビット54を取り付けた二重構造ケーシング10の、削孔方向後端側をセットした削孔機により、地盤Gに孔Hを削孔する。この際、削孔方向後端側に二重構造ケーシング10を継ぎ足しながら、造成するグラウンドンカーの設計上のアンカー体長を満たす深度まで削孔する。すなわち、削孔方向最後端の二重構造ケーシング10の削孔方向後端側に、図1(b)に示したように、雄ねじ構造18と雌ねじ構造20とをねじ嵌合させることで別の二重構造ケーシング10を接続し、削孔ビット54で削孔しながら、複数の二重構造ケーシング10を地盤Gに貫入していく。更に、削孔方向最後端の二重構造ケーシング10の削孔方向後端側から、二重構造ケーシング10の内部(すなわち内管14の内部)に削孔水Wを供給しながら削孔する。図示のように、削孔時の削孔水Wは、二重構造ケーシング10の内部を通って削孔ビット54まで達し、削孔ビット54から孔H内に放出され、孔Hの内周部と二重構造ケーシング10の外周部との間を通って止水ボックス56まで達した後、止水ボックス56に設けられた排水管から排水される。
【0034】
なお、図8に示すように、逆支弁付き特殊ビットである削孔ビット54の内部には、ボール58と、二重構造ケーシング10に対する削孔ビット54の開口部54aへボール58を付勢するスプリング60とが設けられている。そして、図8(a)に示すように、二重構造ケーシング10の内部に削孔水Wが供給されている削孔時には、削孔水Wの水圧によりスプリング60の付勢力に反してボール58が押されることで、開口部54aが開放される。又、図8(b)に示すように、削孔水Wの供給が停止する削孔完了時には、ボール58に対して、スプリング60による付勢力と、孔H内の地下水等の圧力とが加わるため、開口部54aがボール58により密閉される。
【0035】
S50(グラウト一次注入):図9に示すように、二重構造ケーシング10の内部(内管14の内部)に、削孔方向最後端の二重構造ケーシング10の削孔方向後端から、注入ホース62を挿入し、削孔方向最先端の二重構造ケーシング10の削孔方向先端近傍まで挿通する。そして、注入ホース62を介して、プラントから二重構造ケーシング10の内部にグラウトGMを圧送する。これにより、上記S40で二重構造ケーシング10の内部を満たしていた削孔水Wを、削孔方向先端側からグラウトGMに置き換える。なお、グラウトGMに置き換えられた削孔水Wは、削孔方向最後端の二重構造ケーシング10の削孔方向後端から排水される。又、二重構造ケーシング10の内部がグラウトGMにより満たされたら、グラウトGMの圧送を停止し、二重構造ケーシング10から注入ホース62を引き抜く。
【0036】
S60(引張り材挿入):図10(a)に示すように、グラウトGMで満たされた二重構造ケーシング10の内部(内管14の内部)に、削孔方向最後端の二重構造ケーシング10の削孔方向後端から、引張り材(テンドン)64を挿入する。この際、引張り材64には、予め、削孔方向後端側にケーシングパッカー30を、削孔方向先端にパイロットキャップ66を、パイロットキャップ66が二重構造ケーシング10の削孔方向先端に達した状態で、ソイルSと地盤Gとの境界近傍に位置する部位にフリーパッカー68を、夫々取り付けておく。又、ケーシングパッカー30のホースニップル36A(図2参照)とフリーパッカー68とを、注入ホースにより接続しておく。そして、本工程では、引張り材64の削孔方向先端に取り付けたパイロットキャップ66が、二重構造ケーシング10の削孔方向先端に取り付けられた削孔ビット54の近傍に達する位置まで、引張り材64を二重構造ケーシング10の内部に挿入する。なお、パイロットキャップ66は、引張り材64を二重構造ケーシング10内に挿入し易くするために、先端が尖った形状を有している。
【0037】
ここで、引張り材64は、例えば、複数(7本程度)の素線を撚り合わせたPC鋼線を、1〜12本束ねて構成したものであり、グラウンドアンカーの芯材として利用される。又、図2を参照して説明したように、引張り材64へのケーシングパッカー30の取り付けは、引張り材64を構成するPC鋼線の一部(本実施例では2本とする)を、ケーシングパッカー30の引張り材挿通管38A、38Bの夫々に挿通すると共に、挿通した2本のPC鋼線の各々を引張り材固定部40A、40Bにより固定することで行う。
なお、二重構造ケーシング10と、二重構造ケーシング10の内部に配置されるケーシングパッカー30とは、図10(b)(c)に示すような位置関係になる。すなわち、二重構造ケーシング10の、外径d1を有する外側ケーシング12の内部に、外側ケーシング12の内径d2よりも小さい外径d3を有する内管14が配置され、更に、内管14の内部に、内管14の内径d4よりも小さい外径d5を有するケーシングパッカー30が配置される態様となる。
【0038】
S70(ケーシングパッカー作動):図11(a)に示すように、二重構造ケーシング10の内部においてケーシングパッカー30を作動させる。すなわち、ケーシングパッカー30のエアーバルブ42(図2参照)にエアホース70を接続し、ポンプ72からエアホース70を介してケーシングパッカー30に空気を圧送する。そして、図11(b)に示すように、二重構造ケーシング10の内部で、ケーシングパッカー30の円筒部32の周囲に装着した弾性部材34を膨張させる。これにより、膨張した弾性部材34が、二重構造ケーシング10の内管14の内周部に密着する。なお、二重構造ケーシング10の内部を逆流する地下水等の噴出を防止するという、ケーシングパッカー30の役割を果たすために、ケーシングパッカー30に圧送する空気圧は、地下水等の圧力よりも大きい圧力にする。例えば、地下水等の圧力が0.2MPa程度である場合、ケーシングパッカー30に圧送する空気圧は、0.3MPa程度に設定する。
【0039】
S80(ケーシング回収):図12(a)に示すように、削孔方向最後端の二重構造ケーシング10の削孔方向後端から、二重構造ケーシング10の内部にグラウトGMを圧送しながら、二重構造ケーシング10を引き抜き、削孔方向後端側に継ぎ足していた二重構造ケーシング10を回収する。この際、二重構造ケーシング10の内部へ圧送するグラウトGMの圧力は、ケーシングパッカー30に圧送している空気圧よりも大きい圧力にする。例えば、ケーシングパッカー30に圧送している空気圧が0.3MPa程度である場合、二重構造ケーシング10の内部へ圧送するグラウトGMの圧力は、0.4MPa程度に設定する。これにより、図12(b)に示すように、上記S70では密着していたケーシングパッカー30の弾性部材34と、内管14の内周部との間に隙間が形成され、この隙間を通過して、グラウトGMが二重構造ケーシング10の削孔方向先端側へ圧送される。
【0040】
更に、ケーシングパッカー30の弾性部材34と、内管14の内周部との間に隙間が形成されることで、弾性部材34と内管14との間に摩擦力がなくなるため、ケーシングパッカー30及びそれが固定された引張り材64は、引き抜かれる二重構造ケーシング10の移動に追従することなく、孔Hに対する相対位置を維持することとなる。そして、孔Hに対する相対位置を維持する引張り材64に対して、二重構造ケーシング10が削孔方向後端側に相対移動するため、図12(a)に示すように、削孔方向最先端の二重構造ケーシング10の削孔方向先端に取り付けられていた削孔ビット54が、引張り材64の削孔方向先端に取り付けたパイロットキャップ66によって押し出される態様で、二重構造ケーシング10の削孔方向先端から取り外される。これにより、二重構造ケーシング10の内部に圧送されているグラウトGMが、削孔ビット54が取り外されることで開放された二重構造ケーシング10の削孔方向先端から、孔H内に供給される。なお、二重構造ケーシング10の内部に圧送されるグラウトGMは、削孔ビット54が二重構造ケーシング10から取り外される前の時点では、グラウトGMの圧送によって開放される削孔ビット54の開口部54a(図8参照)を介して、削孔ビット54の先端から少量が孔H内に供給される。
【0041】
又、グラウトGMを圧送しながらの二重構造ケーシング10の回収は、削孔方向最後端に位置する二重構造ケーシング10を1本回収する毎に、グラウトGMの圧送を中断しながら行う。すなわち、削孔方向最後端に位置する二重構造ケーシング10が、ケーシングパッカー30の設置位置を通り過ぎた時点で、グラウトGMの圧送を中断すると、図11(b)に示したように、ケーシングパッカー30の弾性部材34と、内管14の内周部とが再度密着し、二重構造ケーシング10の内部を逆流する地下水等の噴出が防止される。この状態で、削孔方向最後端に位置する二重構造ケーシング10を回収し、回収した二重構造ケーシング10の削孔方向先端側に接続されていた二重構造ケーシング10の削孔方向後端から、グラウトGMの圧送を再開する。このような工程を繰り返すことで、削孔方向最先端に位置する二重構造ケーシング10以外の、全ての二重構造ケーシング10を回収する。なお、二重構造ケーシング10から取り外した削孔ビット54は、回収することなく孔H内に残置する。
【0042】
S90(フリーパッカー作動):図13に示すように、削孔方向最先端に位置する二重構造ケーシング10を、その削孔方向先端が引張り材64に取り付けられたフリーパッカー68の位置を過ぎるまで引き抜いた時点で、フリーパッカー68を作動させる。すなわち、ケーシングパッカー30のホースニップル36B(図2参照)に接続した注入ホース74、ケーシングパッカー30の接続管36C(図2参照)、及び、ケーシングパッカー30のホースニップル36A(図2参照)とフリーパッカー68との間に予め接続した注入ホースを介して、フリーパッカー68にグラウトGMを圧送することで、フリーパッカー68をグラウトGMによって膨張させる。そして、フリーパッカー68の作動が完了したら、ケーシングパッカー30への空気の圧送を停止すると共にケーシングパッカー30から空気を排出して、ケーシングパッカー30を収縮させた後、削孔方向最先端に位置していた最後の二重構造ケーシング10、引張り材64に取り付けていたケーシングパッカー30、及び、ガイド管52の端部に取り付けていた止水ボックス56を回収する。
【0043】
S100(口元パッカー作動):図14に示すように、ガイド管52の内部に口元パッカー76を設置し、注入ホース78を介して口元パッカー76にグラウトGMを圧送することで、口元パッカー76をグラウトGMにより膨張させて作動させる。
S110(フリーパッカー背面注入):図15に示すように、引張り材64に予め装着していた注入ホースを介して、フリーパッカー68の背面に、水ガラスとセメントとで構成されるケミカルグラウト材LWを注入する。
【0044】
S120(先端補充注入):図16に示すように、引張り材64に予め装着していた、先端が引張り材64の削孔方向先端近傍に達する位置にある注入ホースを介して、グラウトGWを注入することで、孔Hの削孔方向先端側から孔Hの全体にわたって、グラウトGWを補充注入する。
S130(緊張・定着):孔HにおいてグラウトGWの定着が完了したら、図17に示すように、ガイド管52を介して加水反応型注入材IM等を注入して、地盤Gに造成したアンカー体の口元を止水する。その後、不要な機材を撤去し、本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法が終了となる。
【0045】
なお、本発明の実施の形態に係る二重構造ケーシング10は、グラウンドアンカーの施工方法での利用に限定されるものではなく、必要に応じて、薬液注入工事等の他の施工で利用してもよいものである。又、本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法において、施工対象の地盤Gは、表面がSMWに覆われたものに限定されることなく、他の種類の壁体に覆われた地盤や、壁体に覆われていない地盤であってもよい。
【0046】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る二重構造ケーシング10は、地盤に対する様々な工事の際に、地盤に貫入して利用されるものであり、図1に示すように、外側ケーシング12、内管14及び一対のシール部材16A、16Bを含んでいる。内管14は、外側ケーシング12の内径d2よりも小さい外径d3(図10(c)参照)を有しており、外側ケーシング12の内部に挿通されて設置される。又、一対のシール部材16A、16Bは、外側ケーシング12と、外側ケーシング12の内部に配置された内管14との間に生じる隙間Cを、内管14の長手方向(図1中左右方向)両端部において密閉するものである。
【0047】
上記のような構造であるため、例えば、外側ケーシング12の外径d1(図10(c)参照)を、一般的なφ165mmケーシングの外径に合わせると共に、内管14の内径d4(図10(c)参照)を、一般的なφ135mmケーシングの内径に合わせることとすれば、φ135mmケーシングの内部で使用していた機器を、φ165mmケーシングに対応した外径を有する二重構造ケーシング10の内部においても利用することができる。すなわち、外側ケーシング12の内部に内管14を設置することによって、二重構造ケーシング10の内径を、外側ケーシング12の内径d2から内管14の内径d4までサイズダウンしているため、内管14の内径d4と同程度の内径を有するケーシングでの利用を想定した機器を、そのケーシングの外径よりも大きい外径を有する二重構造ケーシング10の内部においても利用することができる。
【0048】
これにより、ケーシングの内部で使用する機器を、外径が異なる複数のケーシングにおいて効率よく利用することが可能となる。更に、外側ケーシング12と内管14との間の隙間Cは、内管14の長手方向両端部において一対のシール部材16A、16Bにより密閉されているため、二重構造ケーシング10が地盤に貫入された状態であっても、隙間Cに対する土砂等の流入を防止することができる。又、二重構造ケーシング10を構成する外側ケーシング12として、一般的に流通しているケーシングを利用することとすれば、二重構造ケーシング10の作製コストを抑制することができる。
【0049】
又、本発明の実施の形態に係る二重構造ケーシング10は、図3図17に示すように、グラウンドアンカーの施工に用いてもよく、この場合には、外側ケーシング12が、造成するグラウンドアンカーの設計有効径に対応した外径d1を有している。これにより、本二重構造ケーシング10を貫入して地盤Gに削孔された孔Hは、グラウンドアンカーの設計有効径を満たすことができる。更に、グラウンドアンカーの施工中に二重構造ケーシング10の内部で使用するケーシングパッカー30(図2参照)等の機器として、二重構造ケーシング10の内管14の内径d4と同程度の内径を有するケーシングにおいて、使用していた機器を使用することができる。すなわち、外側ケーシング12のサイズに合わせた比較的大きなケーシングパッカー等を用意する必要はなく、内管14のサイズに合わせた比較的小さなケーシングパッカー30等を使用すればよい。このため、ケーシングパッカー30等の価格を抑制することができると共に、重量も抑制することができる。これにより、例えば、引張り材64へのケーシングパッカー30の取り付け作業、二重構造ケーシング10内への引張り材64の挿入作業(図10参照)、及び、引張り材64からのケーシングパッカー30の撤去作業時等に、作業負荷が低減されるため、作業効率を向上することができる。
【0050】
又、ケーシングパッカー30には、ケーシング内を逆流する地下水や土砂等による、ケーシング内の面積に比例した出水力が作用するが、本発明の実施の形態に係る二重構造ケーシング10は、外側ケーシング12よりも内径がサイズダウンされた内管14の内部においてケーシングパッカー30が使用されるため、ケーシングパッカー30に対する負荷が低減される。これにより、ケーシングパッカー30の高額なラバーの損耗を抑制することができるため、ケーシングパッカー30の修理費用やメンテナンス費用を抑制することが可能となる。更に、万が一、ケーシングパッカー30が破損した場合であっても、内管14の面積に比例した出水力に対抗して水や土砂の噴出を食い止めればよいため、山留背面の沈下等のリスクを低減することができる。
【0051】
更に、本発明の実施の形態に係る二重構造ケーシング10は、図1(a)で確認できるように、内管14の長さが外側ケーシング12の長さよりも短く、又、外側ケーシング12の内部において、内管14は、その長手方向一端部(図1(a)中左側端部)の位置が、外側ケーシング12の長手方向一端部(図1(a)中左側端部)の位置に合わせられて配置されている。更に、本二重構造ケーシング10には、雄ねじ構造18と、この雄ねじ構造18と螺嵌可能な雌ねじ構造20とが設けられており、雄ねじ構造18が外側ケーシング12の長手方向一端部の外周部に設けられ、雌ねじ構造20が外側ケーシング12の長手方向他端部(図1(a)中右側端部)の内周部に設けられている。
【0052】
すなわち、外側ケーシング12よりも短い内管14が、外側ケーシング12の内部に長手方向一端側に詰めて配置されているため、外側ケーシング12の長手方向他端側には、内部に内管14が配置されていない範囲が存在する。外側ケーシング12のそのような範囲の内周部に、雌ねじ構造20が設けられているものである。このような構造であるため、図1(b)に示すように、外側ケーシング12の内部に配置された内管14によって阻害されることなく、本発明の実施の形態に係る二重構造ケーシング10同士を、雄ねじ構造18と雌ねじ構造20とを介したねじ嵌合によって、強固に接続することができる。
【0053】
又、本発明の実施の形態に係る二重構造ケーシング10は、外側ケーシング12と内管14との間の隙間Cに、ウレタンが注入されていてもよく、この場合には、仮に、この隙間Cの端部を密閉しているシール部材16A、16Bが破損したとしても、隙間Cに対する地下水、土砂、グラウト等の浸入を防止することができる。更に、ウレタンは軽量であるため、外側ケーシング12と内管14との間の隙間Cに注入されていても、二重構造ケーシング10の重量にほとんど影響を与えないものである。
【0054】
一方、本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法は、図1に示すような二重構造ケーシング10を利用して、図3図17に示すように、地盤Gにグラウンドアンカーを造成するものである。より具体的には、削孔工程S40、グラウト一次注入工程S50、引張り材挿入工程S60、及び、ケーシング回収工程S80を含んでいる(図3参照)。削孔工程S40では、図7に示すように、削孔ビット54の後端に二重構造ケーシング10を継ぎ足しつつ、削孔方向最後端の二重構造ケーシング10の後端から内管14の内部に削孔水Wを圧送しながら、地盤Gに孔Hを削孔する。このため、二重構造ケーシング10の外側ケーシング12と内管14との間の隙間Cに、水や土砂等が浸入することなく、グラウンドアンカーの設計有効径を満たす孔Hを削孔することができる。又、グラウト一次注入工程S50では、図9に示すように、二重構造ケーシング10の内管14の内部に注入ホース62を挿入してグラウトGMを注入することで、削孔工程S40において内管14の内部を満たしていた削孔水Wを、削孔方向先端側からグラウトGMに置き換える。
【0055】
又、引張り材挿入工程S60では、図10に示すように、挿入方向後端にケーシングパッカー30を取り付けた引張り材64を、二重構造ケーシング10の内管14の内部に挿入する。この際に用いるケーシングパッカー30は、二重構造ケーシング10の内管14の内径d4に対応した大きさのものであり、内管14の内径と同程度の内径を有する一般的なケーシング用のケーシングパッカー30を使用することができる。すなわち、二重構造ケーシング10の外側ケーシング12の外径d1と同程度の外径を有する、一般的なケーシングを用いて施工する場合と比較して、小さなケーシングパッカー30を利用することができるため、ケーシングパッカー30自体の価格や重量を抑制することができる。これにより、引張り材64に対するケーシングパッカー30の取り付け及び撤去作業や、ケーシングパッカー30を取り付けた引張り材64の挿入作業時の、作業負荷を低減することができ、作業効率を向上することが可能となる。
【0056】
又、ケーシング回収工程S80では、図11に示すように、内管14の内部においてケーシングパッカー30を空気で膨張させると共に、図12に示すように、ケーシングパッカー30の配置位置よりも削孔方向後端側から、内管14の内部にグラウトGMを圧送した状態で、削孔工程S40で地盤Gに貫入した二重構造ケーシング10を引き抜いて回収するものである。この際、ケーシングパッカー30を膨張させる空気圧は、二重ケーシング10内を逆流して噴出しようとする水や土砂等の圧力よりも大きくし、又、グラウトGMを圧送する圧力は、ケーシングパッカー30を膨張させている空気圧よりも大きい圧力にする。これにより、グラウトGMの圧送を停止している間は、図11(b)に示すように、ケーシングパッカー30が膨張して内管14の内周部に密着することで、水や土砂等の噴出を防止することができる。又、グラウトGMの圧送中は、図12(b)に示すように、グラウトGMの圧力により形成されるケーシングパッカー30と内管14との間の隙間を通して、グラウトGMを二重構造ケーシング10の削孔方向先端側に供給することができる。更に、ケーシングパッカー30と内管14との間に隙間が形成されることで、ケーシングパッカー30と内管14との間に摩擦力がなくなるため、引き抜きにより移動する二重構造ケーシング10にケーシングパッカー30が追従することなく、二重構造ケーシング10を引き抜くことができる。
【0057】
更に、本発明の実施の形態に係るグラウンドアンカーの施工方法は、二重構造ケーシング10の内管14に配置されるケーシングパッカー30に対して、内管14の内部を逆流しようとする出水力(すなわち、外側ケーシング12の外径d1と同程度の外径を有する、一般的なケーシングの内部を逆流しようとする出水力よりも小さい、内管14の内径d4と同程度の内径を有する、一般的なケーシングの内部を逆流しようとする出水力と同等の出水力)のみが加わることになる。これにより、ケーシングパッカー30に対する負荷が低減されるため、ケーシングパッカー30の修理費用やメンテナンス費用を抑制することができる。又、万が一、ケーシングパッカー30が破損した場合の、地下水や土砂等の噴出に起因する、山留背面の沈下等のリスクを低減することができる。
【0058】
なお、本発明の説明において、外側ケーシングがグラウンドアンカーの設計有効径に対応した外径を有する、という表現は、外側ケーシングの外径がグラウンドアンカーの設計有効径と必ずしも一致していることを示すものではなく、この外側ケーシングを含む二重構造ケーシングを利用して削孔した孔に形成したグラウンドアンカーが、設計有効径を満たし得る範囲で、外側ケーシングの外径がグラウンドアンカーの設計有効径と異なっていてもよいことは、理解されるであろう。
【符号の説明】
【0059】
10:二重構造ケーシング、12:外側ケーシング、14:内管、16A、16B:シール部材、18:雄ねじ構造、20:雌ねじ構造、30:ケーシングパッカー、54:削孔ビット、64:引張り材、C:外側ケーシングと内管との間の隙間、G:地盤、H:孔、GM:グラウト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17