特許第6723894号(P6723894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6723894-ナースコールシステムおよび制御機 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6723894
(24)【登録日】2020年6月26日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】ナースコールシステムおよび制御機
(51)【国際特許分類】
   H04M 9/00 20060101AFI20200706BHJP
【FI】
   H04M9/00 G
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-205723(P2016-205723)
(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公開番号】特開2018-67823(P2018-67823A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】清水 紀明
(72)【発明者】
【氏名】坂詰 康孝
【審査官】 石田 紀之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−117439(JP,A)
【文献】 特開2016−059705(JP,A)
【文献】 特開2016−063464(JP,A)
【文献】 特開2006−074140(JP,A)
【文献】 特開2001−069101(JP,A)
【文献】 特開2015−188492(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0116377(US,A1)
【文献】 特開2006−095039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M9/00−9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナースコール親機、制御機、廊下灯、壁埋込形子機およびナースコール子機を備えたナースコールシステムにおいて、
上記制御機は、
上記ナースコール子機からの呼び出しを上記ナースコール親機に伝送するための通信を制御する主制御回路部と、
上記ナースコール子機からの呼び出しを上記廊下灯に伝送するための通信を制御する副制御回路部と、
上記主制御回路部の動作状態を監視し、上記主制御回路部が動作不能状態であることを検知した場合に、上記主制御回路部から上記副制御回路部に切り替えて動作させるように制御する切替制御部とを備えたことを特徴とするナースコールシステム。
【請求項2】
上記副制御回路部は、上記ナースコール子機からの呼び出しを受けた場合、上記廊下灯から呼出音を出力させるように制御することを特徴とする請求項1に記載のナースコールシステム。
【請求項3】
上記副制御回路部は、上記制御機に対して縦続接続された同一幹線上の複数の廊下灯のうち、上記呼び出しが行われたナースコール子機に対応する廊下灯を特定するための同期信号と共に、上記呼出音の音声信号を送信することを特徴とする請求項2に記載のナースコールシステム。
【請求項4】
上記切替制御部は、上記主制御回路部の動作状態を監視し、当該主制御回路部の動作状態を通じて上記ナースコール親機が動作不能状態であることを検知した場合に、上記主制御回路部から上記副制御回路部に切り替えて動作させるように制御することを特徴とする請求項1に記載のナースコールシステム。
【請求項5】
ナースコール親機、廊下灯、壁埋込形子機およびナースコール子機と共にナースコールシステムに用いられる制御機であって、
上記ナースコール子機からの呼び出しを上記ナースコール親機に伝送するための通信を制御する主制御回路部と、
上記ナースコール子機からの呼び出しを上記廊下灯に伝送するための通信を制御する副制御回路部と、
上記主制御回路部の動作状態を監視し、上記主制御回路部が動作不能状態であることを検知した場合に、上記主制御回路部から上記副制御回路部に切り替えて動作させるように制御する切替制御部とを備えたことを特徴とする制御機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナースコールシステムおよび制御機に関し、特に、冗長化構成の採用によって、障害の発生時やメンテナンス時などでもナースコールの機能が停止しないようになされたナースコールシステムに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、病院や介護施設などでは、ナースコールシステムが用いられている。ナースコールシステムは、病院の患者が医師や看護師のサポートを必要とする際、または介護施設の被介護者が介護師のサポートを必要とする際に、患者や被介護者(以下、単に「患者」と言う)が呼出ボタン等を押下することによって医師や看護師、介護師(以下、単に「看護師」と言う)を呼び出すことができるように成されたシステムである。
【0003】
この種のナースコールシステムは、高い信頼性が要求され、障害の発生や設備のメンテナンスなどによって、ナースコールの機能が長時間にわたって停止することは許されない。そのため、設備を二重化(冗長化)させることによって、主装置が動作不能となったときに副装置に切り替えてナースコールを継続可能にしたナースコールシステムが考案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1に記載のナースコールシステムでは、制御装置および廊下灯制御装置を複数備えることによって、制御装置、廊下灯制御装置が動作不可能となっても、システムとして機能することができるようにしている。具体的には、特許文献1に記載のナースコールシステムは、病室内の複数のナースコール子機と、ナースコール親機と、複数の廊下灯と、ナースコール動作を制御する主制御装置および主廊下灯制御装置と、主制御装置による動作が不能となったときに動作する副制御装置および副廊下灯制御装置とにより構成されている。
【0005】
特許文献2に記載のナースコールシステムでは、ナースコール制御機が正常に動作しているときは、ナースコール子機との通信をナースコール制御機が受け持つ。一方、ナースコール制御機が故障した場合には、ナースコール処理装置をナースコール制御機の代行として使用し、ナースコール処理装置がナースコール子機との通信を受け持つようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−200066号公報
【特許文献2】特開2006−180991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のナースコールシステムでは、制御装置および廊下灯制御装置をそれぞれ二重化させ、ナースコール親機から廊下灯までの通信線も二重化させる必要がある。そのため、設備が複雑になり、設置コストも高くなるという問題があった。
【0008】
これに対し、特許文献2に記載のナースコールシステムでは、病棟の患者情報の管理やベッド管理、病棟日誌などの管理帳票の印刷など、病棟管理のために用いられるナースコール処理装置を利用して、冗長化を実現している。このため、容易で安価にナースコールシステムの信頼性を向上させることが可能である。
【0009】
しかしながら、ナースコール処理装置を採用していない病院には、特許文献2に記載の冗長化は適用することができない。また、ナースコール処理装置に対して、ナースコール制御機とナースコール子機との間の通信方式と同一の通信手段を設けることによってナースコール機能を持たせる必要があり、通常のナースコール処理装置のままでは適用することができないという問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、制御機などの設備を二重化させたり、制御機以外の既存設備を改変したりすることなく、障害の発生時やメンテナンス時などでもナースコールの機能が停止しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明では、ナースコール子機からの呼び出しをナースコール親機に伝送するための通信を制御する主制御回路部と、ナースコール子機からの呼び出しを廊下灯に伝送するための通信を制御する副制御回路部とを制御機に設け、主制御回路部が動作不能状態であることを検知した場合に、主制御回路部から副制御回路部に切り替えて動作させるようにしている。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した本発明によれば、ナースコール親機、制御機、廊下灯、壁埋込形子機およびナースコール子機を備えたナースコールシステムの構成自体は既存のシステムと変わらず、制御機の内部回路が、主制御回路部と副制御回路部とにより冗長化されているので、制御機などの設備を二重化させたり、制御機以外の既存設備を改変したりすることなく、障害の発生時やメンテナンス時などでもナースコールの機能が停止しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態によるナースコールシステムの全体構成例を示す図である。
図2】本実施形態による制御機の回路構成例を示す図である。
図3】本実施形態の副制御回路部が廊下灯に送信する呼出信号の1フレームのフォーマットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態によるナースコールシステムの全体構成例を示す図である。なお、ここでは病院に設置されるナースコールシステムを例にとって説明するが、本実施形態のナースコールシステムは、病院に設置されるものに限定されない。例えば、介護施設等に設置される場合にも適用可能である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のナースコールシステムは、ナースコール親機1、制御機2、廊下灯3、壁埋込形子機4およびナースコール子機5を備えて構成されている。制御機2から配線される同一幹線上に、複数の廊下灯3が縦続接続され、各々の廊下灯3に対して壁埋込形子機4が接続されている。
【0016】
ナースコール親機1は、患者(ナースコール子機5)からの呼び出しを看護師に報知し、看護師がその呼び出しに対する応答の操作を行うためのものであり、例えばナースセンタに設置される。すなわち、ナースコール親機1は、ナースコール子機5から送られてくる呼出信号を受信すると、所定の呼出動作を実行する。呼出動作は、呼び出しを行った患者の患者情報をディスプレイに表示するとともに、呼出音をスピーカから出力することによって行う。
【0017】
制御機2は、ナースコール親機1と廊下灯3との間に配置され、通話やデータの送受信に関する制御を行う。図2を用いて詳細を後述するように、本実施形態の制御機2は、その内部に冗長化の回路構成を有している。すなわち、制御機2は、冗長化の回路構成として、図2に示す主制御回路部21および副制御回路部22を備えている。
【0018】
主制御回路部21の正常動作時、制御機2は、ナースコール子機5から送られてくる呼出信号をナースコール親機1に転送することにより、ナースコール親機1に呼出動作を実行させる。一方、主制御回路部21の異常発生時またはメンテナンス時、制御機2は、ナースコール子機5から送られてくる呼出信号を受けると、呼出音の音声信号を含んだ呼出信号を廊下灯3に送信することにより、廊下灯3に呼出動作を実行させる。
【0019】
廊下灯3は、病院の各病室の入口付近外部に設置される。この廊下灯3は、液晶表示装置3a、LED等の呼出灯3bおよびスピーカ3cを備えている。液晶表示装置3aには、病室内の患者名などの患者情報が表示される。なお、液晶表示装置3aは、患者(ナースコール子機5)からの呼び出しが行われていないときは非表示状態あるいは待機画面の表示状態であり、患者からの呼び出しが行われると、その患者の患者情報が表示されるようになっている。
【0020】
また、病室内の患者がナースコール子機5を用いて呼び出しを行うと、呼び出しが行われたことが呼出灯3bの点灯または点滅(以下、単に点灯という)によって報知されるようになっている。なお、制御機2の主制御回路部21の正常動作時は、ナースコール親機1において正常に呼出動作が行われているため、廊下灯3のスピーカ3cから呼出音の出力は行われない。
【0021】
一方、主制御回路部21の異常発生時またはメンテナンス時は、病室内の患者がナースコール子機5を用いて呼び出しを行うと、呼び出しが行われたことが呼出灯3bの点灯およびスピーカ3cからの呼出音の出力によって報知されるようになっている。ここで、呼出灯3bの点灯は、主制御回路部21の正常動作時と同様、ナースコール子機5から送られてくる呼出信号を廊下灯3が受信したことに応じて実行される。呼出音の出力は、制御機2から送られてくる呼出信号(呼出音の音声信号をむ)に基づいて実行される。このとき、制御機2の内部では、副制御回路部22が動作している。
【0022】
壁埋込形子機4は、病室の各ベッドサイドの壁に埋め込み設置される。この壁埋込形子機4は、ナースコール子機5の接続端子を有している。ナースコール子機5は、壁埋込形子機4の接続端子に接続される。ナースコール子機5は、患者が看護師を呼び出すための呼出ボタン、患者が看護師と会話を行う際に使用するマイクおよびスピーカを備えている。
【0023】
図2は、本実施形態による制御機2の回路構成例を示す図である。なお、図2では、本発明に係る回路構成のみを図示しており、本発明に係らない部分の回路構成は図示を省略している。図2に示すように、制御機2は、主制御回路部21と、副制御回路部22と、切替制御部23とを備えている。
【0024】
主制御回路部21は、ナースコール子機5からの呼び出しをナースコール親機1に伝送するための通信を制御する。すなわち、主制御回路部21は、ナースコール子機5から壁埋込形子機4および廊下灯3を介して送られてくる呼出信号をナースコール親機1に転送する。これにより、ナースコール親機1において、患者情報の表示および呼出音の出力による呼出動作が実行される。
【0025】
副制御回路部22は、ナースコール子機5からの呼び出しを廊下灯3に伝送するための通信を制御する。具体的には、副制御回路部22は、ナースコール子機5から送られてくる呼出信号を受けると、呼出音の音声信号を含んだ呼出信号を廊下灯3に対して送信する。これにより、廊下灯3において、呼出音の出力による呼出動作が実行される。
【0026】
切替制御部23は、主制御回路部21の動作状態を監視し、主制御回路部21が動作不能状態であることを検知した場合に、主制御回路部21から副制御回路部22に切り替えて動作させるように制御する。主制御回路部21が動作不能状態である場合とは、主制御回路部21に異常が発生している場合、または、メンテナンスのために主制御回路部21が制御機2から取り外されている場合などである。
【0027】
図3は、副制御回路部22が廊下灯3に送信する呼出信号の1フレームのフォーマットを示す図である。図3に示すように、副制御回路部22が廊下灯3に出力する呼出信号は、CH0の同期信号、CH1のデータ、CH2のトーン信号、およびCH3〜CH7の音声信号を含んでいる。廊下灯3に呼出動作をさせるための指令情報は、CH1に含まれている。また、廊下灯3のスピーカ3cから出力させる呼出音の音声信号は、CH3〜CH7に含まれている。なお、CH2のトーン信号を呼出音として用いるようにしてもよい。
【0028】
CH0の同期信号は、制御機2に対して縦続接続された同一幹線上の複数の廊下灯3,3,・・・のうち、呼び出しが行われたナースコール子機5に対応する廊下灯3を特定するための信号であり、例えば、0〜255のカウンタ値により構成されている。この同期信号によって、同一幹線上に接続された複数の廊下灯3,3,・・・のうちどれが呼出信号を受信するかを決めている。また、廊下灯3は、この同期信号のカウント値をもとに、廊下灯3内での動作タイミングを決めたり、ナースコール子機5との通信を行ったりしている。このため、制御機2から廊下灯3に対して呼出信号を送信するときは、この同期信号を含ませることが必要である。
【0029】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、ナースコール子機5からの呼び出しをナースコール親機1に伝送するための通信を制御する主制御回路部21と、ナースコール子機5からの呼び出しを廊下灯3に伝送するための通信を制御する副制御回路部22とを制御機2に設け、主制御回路部21が動作不能状態であることを切替制御部23にて検知した場合に、主制御回路部21から副制御回路部22に切り替えて動作させるようにしている。
【0030】
このように構成した本実施形態によれば、ナースコール親機1、制御機2、廊下灯3、壁埋込形子機4およびナースコール子機5を備えたナースコールシステムの構成自体は既存のシステムと変わらず、制御機2の内部回路が、主制御回路部21と副制御回路部22とにより冗長化されているので、制御機2などの設備自体を二重化させたり、制御機2以外の既存設備(特許文献2に記載されたナースコール処理装置など)を改変したりすることなく、障害の発生時やメンテナンス時などでもナースコールの機能が停止しないようにすることができる。
【0031】
なお、上記実施形態では、制御機2内の主制御回路部21における障害の発生時やメンテナンス時に対する冗長化構成の例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ナースコール親機1の異常発生またはメンテナンスによる動作不能状態を制御機2にて監視し、ナースコール親機1の制動動作時は主制御回路部21を動作させる一方、ナースコール親機1の動作不能時は副制御回路部22を動作させるようにしてもよい。
【0032】
すなわち、ナースコール親機1が動作不能状態になると、主制御回路部21がナースコール親機1と通信を行うことができない動作不能状態となる。よって、切替制御部23が主制御回路部21の動作状態を監視することによって、ナースコール親機1の動作不能状態を検知することが可能である。そして、切替制御部23が、ナースコール親機1(ひいては主制御回路部21)が動作不能状態であることを検知した場合に、主制御回路部21から副制御回路部22に切り替えて動作させるように制御する。
【0033】
また、上記実施形態では、ナースコール子機5から廊下灯3に送られてくる呼出信号に応じて呼出灯3bの点灯を行い、制御機2から廊下灯3に送られてくる呼出信号に応じてスピーカ3cからの呼出音の出力を行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、呼出灯3bの点灯に関しても、制御機2から廊下灯3に送られてくる呼出信号に応じて実行するようにしてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、図3に示すフォーマットにて制御機2から廊下灯3に対して呼出信号を送信する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、同期信号と共に呼出音の音声信号を送信するようにすればよく、通信データのフォーマットは図3の例に限定されない。また、廊下灯3に呼出音の音声データをあらかじめ記憶しておくことにより、呼出音の音声信号は送信しないようにしてもよい。
【0035】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 ナースコール親機
2 制御機
3 廊下灯
3a ディスプレイ
3b 呼出灯
3c スピーカ
4 壁埋込形子機
5 ナースコール子機
21 主制御回路部
22 副制御回路部
23 切替制御部
図1
図2
図3