【実施例】
【0193】
実施例1
本発明のデバイスは生きた/死滅した細胞ベースのアッセイで用いることができる。1つの例において、アッセイは2つのフルオロフォアを用い;1つは細胞膜を横切って透過でき、第二の染料はDNAに結合し、もし膜が危うくなった場合のみ細胞に進入することができる。同様な生きた/死滅アッセイが細菌および酵母について存在する。タグされた化学ライブラリーおよび光切断可能リンカーをそのようなアッセイで用いることができる。分裂−ビーズ合成を通じて得られたコンビナトリアル1−ビーズ−1−化合物ライブラリーは、化合物を信頼性良く同定するためにそれらの合成履歴を記載するタグを必要とする。ビーズ、ロッドおよびクラウンのようなマイクロ担体についてのいくつかのコーディング技術が過去10年間にわたって開発され、この要求に取り組んできた。単純かつ効果的な方法は、注目する利用される直交化学の化学的存在と並行して生じる分光学的化学タグに依拠する。代替物はDNAのような核酸の使用、続いての、コードされたビーズを解読するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用を含む。
【0194】
本明細書中で開示された細胞ベースのアッセイにおいて、アッセイされた化合物は、細胞膜に浸透するために溶液中にあることが望まれる。さらに、単一化合物の細胞での区画を保証するために、固体支持体からの化合物の切断は、ビーズがカプセル化された後にのみ行うことができる。光切断可能リンカーを使用して、滴をUV−放出モジュール(すなわち、適当な波長のレーザー)を通すことによって滴形成後にビーズの化合物を切断することができる。
【0195】
分子ライブラリーに含有された個々の成分の効果を評価するために、[Invitrogen(Carlsbad, CA)またはCell Technologyから入手可能な]標準細胞毒性アッセイのための2色蛍光検出を用いることができる。いずれの細胞を用いることもできるが、説明目的で、動物細胞についてのInvitrogen LIVE/DEAD生存性/細胞傷害性キット#L3224をここでは用いる。このキットは、細胞生存性の2つの認められたパラメータ:細胞内エステラーゼ活性および原形質膜一体性を測定する2つのプローブを含有する。生きた細胞は、ほとんど非蛍光の細胞−浸透カルセインAMの、極めて蛍光性のカルセインへの酵素変換によって検出される、細胞内エステラーゼ活性の存在によって同定される。カルセインは生きた細胞内に保持され、強い均一な緑色蛍光を生じる。EthD−1は損傷した膜を持つ細胞に進入し、核酸への結合に際して蛍光の40倍増強を受け、それにより、死滅した細胞において明るい赤色蛍光を生じる。EthD−1は生きた細胞の無傷原形質膜によって排除される。細胞生存性の決定は、細胞のこれらの物理的および生化学的特性に依存する。バックグラウンド蛍光レベルはこのアッセイ技術では固有に低い。なぜならば、染料は細胞との相互作用の前には実質的には非蛍光性だからである。
【0196】
カルセインおよびEthD−1双方についてのスペクトル吸収および発光特徴は
図3に示され、他方、
図2は、生きたおよび死滅した細胞の50/50ミックスがフローサイトメーターを通す場合に、分子プローブによって示される結果をプロットする。双方の染料の吸収特徴は、存在する488nm励起源を用いて蛍光を励起するのを可能とする。
図2の左側パネルは、Molecular Probes Live/Dead細胞生存性/細胞傷害性アッセイキット(L3224)における試薬で染色された、生きたおよびエタノールで殺傷したウシ肺動脈上皮細胞の混合物を示す。生きた細胞は明るい緑色の蛍光を発し、他方、危うくされた膜を持つ死滅した細胞は赤色からオレンジ色の蛍光を発する(Molecular Probes)。中央のパネルはフローサイトメーターにてMolecular ProbesのLive/Dead生存性/細胞傷害性キットを用いる生存性アッセイを示す。生きたおよびエタノールで固定したヒトB細胞の1:1混合物をカルセインAMおよびエチジウムホモダイマー−1で染色し、フローサイトメトリー分析を488nmにおける励起で行った。右側パネルは、www.molecular probes.comから入手可能なLive/Dead BacLight細菌生存性および計数キットを用いる細菌培養の分析を示す。
図3の左側パネルに示したように、本発明は、さらに、同時に高速ビデオ顕微鏡を介する視覚でのモニタリングを可能としつつ、マイクロ流体チャネル内の緑色フルオロフォアを測定することができる蛍光検出スタンドを含む蛍光検出系を提供する。このシステムの光学的成分は市販されている。この系のモジュールレイアウトは、励起および検出波長の直接的な修飾を行う。この様式は系を多−波長励起、多−波長検出および直交偏光状態の検出に対して品質を上げることを可能とする。現在、マルチラインアルゴン−イオンレーザーの488nm転移をフルオレセインについての励起源として用いる(FITC)。レーザーは3および20ミリワットの間の出力を供し、直径がほぼ17ミクロン(全幅半最大、FWHM)のスポットに焦点を合わせる。スタンドが光電子増倍管を用いるように構成されている場合、それは10kHZ小滴率において10,000FITC分子を検出することができる。この系の感度は、マイクロ流体デバイス自体によって生じた蛍光干渉によって制限される。
図3の右側パネルは、カルセインAMおよびEthD−1染料についての励起および発光スペクトルを示す。正常なサイトメトリープロトコルは488nmにおいて双方を励起する。
図3は、単一のフルオロフォアステーションを2色蛍光ステーションに変換するのに必要な変化を示す。カルセイン蛍光はフルオレセイン検出のために設計されたフィルターを用いて収集することができ、他方、EthD−1はヨウ化プロピジウムまたはテキサスレッドについて設計されたフィルターを用いてモニターすることができる。
【0197】
1×10
−3M〜1×10
−8Mの濃度の範囲にわたってフルオレセインおよびヨウ化プロピジウムでドープされた水小滴を用い、双方の染料はカルセインおよびEthD−1と同様な吸収および蛍光を有する。17ミクロンの小滴において、これは測定容量内の1.5×10
9〜1.5×10
4分子の範囲に対応する。一旦ベースライン性能が確認されたならば、生きた細胞、死滅した細胞、および2つの混合物を含有する小滴についてテストを開始することができる。これは細胞の2つの型についての感度および検出限界を確立する。
【0198】
選択された染料はフローサイトメトリーにおいて広く用いられており、ほとんどの細胞−ベースのアッセイで共通して用いられている。それらは相互に対して有意に重複しないように設計され、独立してかつ一緒に双方を見積もって、クロス−トークを評価することができる。(潜在的に)1つの滴内の多くの細胞の状態はかくして決定することができる。我々の機器での安価なオプティックスの使用は、ナノリアクターにおける染料分子の理論的増加による補償を超えるであろう。より高い効率のオプティックスを用いることができる。
【0199】
カプセル化されたビーズからの化合物を、UV光を用いてUV−放出モジュールにおいて切断することができる。光不安定性リンカーは、単一のビーズがカプセル化された後に要求に応じて分解することができ、かくして、単一化合物の多数のコピーが溶液に放出される。
【0200】
合成化学は、結合の分解および形成プロセスを制御するために化学基の異なる活性に依拠する。光不安定性保護基は、他のタイプの保護基を切断することができる反応条件を生き残らせる機能の第四番目の直交型を形成する。これらの光不安定性保護基のいくつかは、有機分子を固体支持体に連結するのに用いられてきており、リンカーとしてのそれらの使用はレビューされている。これは、適当な波長での照射による最終産物の放出を任意として固体支持分子の合成を可能とする。光切断可能保護基がそれに対して工夫されている化学基のレパートリーは広く存在し、これは多様なコンビナトリアルのライブラリーの合成を可能とする。
【0201】
高い試料率の代わりに、355 nm 3w Nd−YAGレーザーでの照射によって切断されるトリアジン−系光不安定性リンカーを用いることができる。このリンカーは、固体支持分裂−ビーズ合成に適している強酸は例外として、広い範囲の反応条件下で安定である。
【0202】
もしUVレーザー内部のビーズの滞留時間が、基質ビーズから全ての化合物を切断するのに不十分であれば、滞留時間は、チャネルを広くすることによりビーズを含有する滴の流動を遅くすることによって増加させることができる。別法として、レーザービームの強度を増加させ、完全な切断を確保することができる。
【0203】
先に議論したように、長いインキュベーション時間が細胞傷害性実験において望ましいが、公知のマイクロ流体チャネルレイアウトで容易に達成することができない。従って、本明細書中に開示された、生きた/死滅した細胞−ベースのアッセイで用いられるデバイスの1つの実施形態は、ソーティングモジュールの直前に位置する遅延ラインモジュールにおいて1時間を超える均一な小滴滞留時間を達成するのに受動的手段を用いる。小滴生成を停止することなく、小滴生成および検出の間に1時間の遅延時間を達成することが可能である。
【0204】
1つの例において、「浮遊アワーグラス」遅延ラインを用いることができ、ここで、重力に依存するアワーグラス中の砂と同様に、小滴は、担体油とのその密度ミスマッチのため大きな貯蔵庫から廃棄ポートへ生起する。遅延モジュール前で利用されるマイクロ流体モジュール(例えば、入口モジュール、UV−放出モジュール、凝集モジュール、および混合モジュール)はスタックの底でパターン化することができ、遅延モジュール(例えば検出モジュールおよびソーティングモジュール)後に利用されるマイクロ流体モジュールはスタックの頂部においてパターン化できる。立ち上げに際して、アワーグラスは停止されて、所望の遅延時間に到達するまで小滴を満たし、次いで、小滴はそれが進入するのと同一速度でデバイスから除去され、それにより、全ての小滴についての同一滞留時間を実質的に確保する。アワーグラスにおける自然小滴凝集は、1以上界面活性剤を用いて小滴を安定化させることによって妨げることができる。
【0205】
コンピューターモデリングの使用を介しての電場勾配の形状およびタイミングは、電極および流体チャネルの幾何学、および小滴に印加された電圧の同調を仕立てることによって最適化することができる。
【0206】
FEMLAB(COMSOL, Inc.)部分的差分方程式解法ソフトウェアを用いて、流体力学および静電学の組合せをモデル化することができる。該モデルは分岐を通っての小滴の軌跡の「スティル−フレーム捕獲」を含むことができ、電極の幾何学、流体チャネルの幾何学、および小滴軌跡増分の関数としての印加電圧の分布を最適化することができる。さらに、高速デジタルカメラおよび駆動エレクトロニクスを用いて、現実の小滴軌跡の「スティル−フレーム捕獲」を獲得し、それらの捕獲を該モデルによって作成されたものと比較することができる。該モデルおよび電極および流体チャネル幾何学は、安価な迅速プロトタイピング能力を用いて反復して最適化することができる(テスト結果に対する設計から24時間)。最後に、電場勾配は、小滴を破壊することなく、かつ与えられた印加についての許容できる低い誤差率でもって、1000小滴/秒以上の率にて二方向ソーティングを行った場合に満足して最適化することができる。もし電気機械的リレーネットワークが最適化されたタイミングパラメータと協働するのに十分速くなければ、(例えば、Behlke電子リレーを用いる)固相状態リレーネットワークを用いて、駆動エレクトロニクスのスピードを増加させることができる。
【0207】
ビーズを含有する小滴は、1000小滴/s以上の率で蛍光プローブに基づく誘導泳動および電歪力を用いてソートすることができる。蛍光検出系および電気的制御系を用いて、最適「パルス」(すなわち、時間の関数としての印加された電圧の分布)をトリガーして、蛍光プローブに基づいて中性小滴をソートすることができる。蛍光染料を含有する小滴の誘電泳動/電歪ソーティングを行うことができ、ここで、ソーティングは小滴数によってトリガーされる(例えば、各n番目小滴は1つの方向にソートされ、または各n番目またはm番目小滴は1つの方向にソートされる、等)。蛍光染料を用いて小滴の誘電泳動ソーティングを行うことができる。なぜならば、それは便宜かつ安価だからであり;誘電泳動/電歪ソーティングのためのトリガーシグナルは、電気泳動ソーティングで用いられたものと正確に同一とすることができる。このプロセスは、電場勾配を最適化する直接的理論的結果である。
【0208】
加えて、蛍光ビーズを含有する小滴の誘電泳動/電歪ソーティングを行うことができる。この工程は蛍光染料を含有する小滴および化学ライブラリーが負荷された細胞およびビーズを含有する小滴の間の中間である。最後に、蛍光細胞を含有する小滴の誘電泳動/電歪ソーティングを行うことができる。この工程は、蛍光染料を含有する小滴、および化学ライブラリーを負荷した細胞およびビーズを含有する小滴の間の中間にある。
【0209】
ビーズまたは細胞を含有する溶液が誘電特性を有し、従って、誘電場勾配が最適でない蛍光染料を含有する溶液とは異なる場合、誘電場勾配は各溶液について別々に最適化することができる。蛍光染料溶液を修飾して、ビーズまたは細胞溶液と非常に似させ、ソーティングパラメータの開発のために蛍光色素の便利さを継続的に利用することができる。
【0210】
特定の表現型(例えば、死滅した細胞)に基づいてソートされた小滴は、(解読スキームを用いることによって)解読して、その小滴に加えられた化合物を同定する。
【0211】
いくつかの実施形態において、アッセイは、核酸ベースのコードされたビーズ系に基づくことができる。例えば、2つのタイプのビーズを用いることができ−1つは細胞傷害性化合物およびオリゴヌクレオチドタグを含有し、第二のビーズは異なるオリゴヌクレオチドタグのみを含有する。2つのタイプのビーズは(所望により)、ビーズを、ソーティング効率を決定するためのソーティング後に蛍光顕微鏡下で調べることができるように、異なる蛍光タグによってコードすることもできる(すなわち、細胞−ベースのアッセイで用いられているもの以外、例えば、2つの異なるQ−ドット)。
【0212】
ついで、ナノリアクターを含有する死滅した細胞からソートされたビーズを採取することができ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用い、ビーズ上のタグを、PCRプライマーを用いて増幅することができる。これらのタグは、それをプラスミドベクターにクローン化し、それをE.coliに形質転換することによって「ハード−コピー」することができ、100の異なるE.coli形質転換体のタグ配列はDNA配列決定によって決定される。
【0213】
加えて、ビーズ上のT−バッグ合成を用いるより複雑なライブラリーを構築することができ、ここで、オリゴヌクレオチドタグはモノマーについての各ラウンドの合成に特異的である。2つの異なるラウンドで用いる同一モノマーは2つの別々のタグを有することができる。非限定的例として、もしビーズ−ベースのT−バッグ合成における30モノマーを5ラウンドで用いれば、5×30または150の異なるタグが必要とされる。5ラウンド後の30のモノマーのライブラリーの複雑性は30
5であり、またはほぼ2500万の化合物である。モノマー合成の各ラウンド後における特異的T−バッグにおけるビーズは、T4 DNAリガーゼを用いて、ビーズに連結された特異的オリゴヌクレオチドタグを有することができる。ソートされたビーズからのこれらのタグを増幅し、クローン化し、配列決定することができる。いずれのタグがいずれのラウンドの合成で用いられたかを知ることによって、その小滴において陽性であったビーズの確証の内部チェックが達成される。配列決定反応は、150タグを含有するハイブリダイゼーションチップを用いることによって排除されることができる。
【0214】
実施例2
本発明は、記載された本発明のナノリアクターにおいてポリメラーゼ連鎖反応を行うための方法を提供する。PCRは、本発明によるマイクロ流体デバイスにおいて滴×滴ベースで行うことができる。モノリシックチップを設けることができ、ここで、加熱および冷却ラインがチップに形成され、ソーティング手段が提供される。そのようなチップ上の小滴においてPCRを行う利点は、チップが使い捨て可能であって、反応の間にデバイスを清浄化することなく反復できることである。さらに、チップは、正しい濃度において小滴にてPCRを行うための全ての成分を得る便宜な方法を提供する。加えて、PCRはより有効である。なぜならば、熱移動は小さな容量のためより有効である。これはより短いインキュベーション−滞留時間を提供する。核酸、すべてのPCRプライマーおよび、もし存在すれば、ビーズを含有する小滴は秒当たり100および20,000小滴の間の率にて一度に1つ生成される。次いで、小滴を、加熱および冷却ラインの間のセルペンチン経路を通って送って、小滴内部の遺伝物質を増幅することができる。デバイスから出るに際して、小滴をさらなるオン−チップまたはオフ−チップ処理のために送り、もう1つのチップに向けることができ、あるいはエマルジョンを分解して、PCR産物を放出させることができる。もし存在すれば、ビーズは、濾過デバイス、沈積、または遠心にエマルジョンを通すことによって収穫することができる。
【0215】
チャネルの幅および深さは、秒未満、および数分の間のどこかに制御することができる各温度にて滞留時間を設定するのに調整することができる。秒当たり1000滴の典型的な速度にて、DNAの100万ストランドを1つのデバイスでほぼ20分以内に増幅することができる。250μL/時間の典型的な流動速度は、各秒に生ずる直径が50ミクロンの1000滴に対応する。流動速度および小滴サイズは、ノズル幾何学を制御することによって必要に応じて調整することができる。
【0216】
例としてのビーズベースの適用において、目的は単一のマイクロ−ビーズ(直径が1〜100ミクロン)を含有する小滴中の多くても1つのDNA断片を増幅し、次いで、DNAで被覆されたビーズのみを分離し、収集することである。これは、適当なPCRプライマーを含有する溶液中のDNA断片およびビーズの希釈混合物で出発することによって達成される。次いで、小滴は、小滴のほとんどが空である限定された希釈レジメにて作成されるが、いくつかの小滴はそれらにおいてDNAストランドを有し、いくつかの小滴はその中にビーズを有する。標的小滴は単一のDNA断片および単一のビーズを共に有する。ビーズの表面のDNAのPCR増幅の後に、蛍光活性化ソーティングモジュール(NanoFACS)をデバイスの末端に加えて、小滴を、1つは増幅されたDNAを含有し、1つは増幅されたDNAがない2つの集団へ分離することができる。次いで、小滴は、小滴が全てDNAを含有して、ビーズの収集を達成するエマルジョンから取り出し、ここで、実質的に全てのビーズは唯1つのタイプのDNA断片で被覆される。
【0217】
各断片が唯1つのビーズの存在下で増幅されるビーズの収集の質は、各小滴が多くても1つのビーズを含有することを確保することによって高めることができる。1を超えるビーズを含有する小滴は、蛍光−ベースのソーティング工程を用いて取り出すことができる。
【0218】
PCRに伴い、適当な酵素反応、2以上の検出基、または他の増幅手段、例えば、ローリングサークル増幅、リガーゼ鎖反応、およびNASBAで飾られたオリゴヌクレオチドを用いるチラミドアッセイのような核酸ベースのシグナル方法を用いて、小滴内でのシグナルを増加させることができる。
【0219】
実施例3
本発明のデバイスを用いて、樹立された細胞系に対する少なくとも10
6分子からなる化学ライブラリーをスクリーニングすることができる。このようにして、陽性および陰性ナノリアクターを追跡し、核酸ベースの、または多色ビーズ−ベースのコーディングスキームいずれかを用いてソートすることができる。例えば、公知のヒットを持つ対照ライブラリーはヒト癌細胞系に対してスクリーニングすることができる。
【0220】
1つの実施形態において、本明細書中において詳細に記載したように、ナノリアクターを用いて化学ライブリーをスクリーニングすることができる。本発明のパワーは、分析およびソーティングを含めた多工程化学処理が、便利なタイミングおよび計量精度での封じ込めにおいて開始されるのを可能とする区画化および電気的操作の組合せに由来する。単離された成分のこの多工程処理は、細胞、核酸、酵素、コードされたマイクロビーズ、および他の生体物質との稀な相互作用について分子ライブラリーを介してサーチするのに必須である。例えば、コーディング核酸(すなわち、DNAタグ)の組を、DNAタグおよび化学物質が一緒に乳化されるように、ユニークな化合物の溶液に組み合わせることができる。1つの実施形態において、DNAタグは同族アイデンティファイヤーとして作用して、本明細書中に記載されたナノリアクターによってソートされた小滴中の会合した化合物を追跡する。ソーティングの後、エマルジョンを破壊することができ、核酸は解読することができる(
図4)。
図4(左側パネル)において示すように、(A)化合物のライブラリーからの個々の化合物は、各々、(B)Q−ドットのユニークな識別可能な組と組み合わせる。組み合わせた混合物は、各々(C)、流動−フォーカシングマイクロ流体乳化剤を用いて別々にオフ−ラインで乳化して、特異的化合物およびQ−ドットのユニークな組の双方を含有する個々の小滴を合成する。
図4(右側パネル)において示されるように、個々に乳化されたコードされた化合物の組は(D)細胞または酵素いずれかと共に、一緒にプールされ、RDT機器に注入され、(E)2つの小滴は合わされて、個々のナノリアクターを形成する。モニターしている反応に依存して、これらのナノリアクターとアッセイ成分を含有する小滴との別々の組合せ(図示せず)が必要であろう。加えて、遅延ループをこれらの組合せおよび検出器(F)の間において、十分な時間が小滴中で生じて、いずれかの潜在的化学的/細胞/酵素反応が起こるのを可能とすることができる。次に、ナノリアクターを、検出器を通して送って、反応をモニターし、かつその中に含まれたQ−ドットを解読する。もし必要であれば、ナノリアクターをさらにソートすることができる(G)。機器上に置くべきデバイスを設計するにおいて、個々のモジュールは小滴操作の配列において一緒に束ねる。操作を用いて、細胞または酵素をカプセル化し、標識された予め形成された化合物ライブラリーのエマルジョンを注入し、小滴の対を凝集させ、小滴の内容物を混合し、経時的に反応をインキュベートし、蛍光を検出し、液体標識を解読し(もし必要であれば)検出されたシグナルに基づいてソートし、次いで、小滴を収集および廃棄流に輸送する。個々のモジュールは、独立して、電気回路中のレジスターおよびキャパシターとかなり同様に、操作されて、複雑な流体処理操作を集合的に行う。いくつかの方法は記載された本発明の種々の化学ライブラリースクリーニング実施形態を含む。1つの例において、キナーゼ酵素アッセイをコースモデルとして用い、3つの異なる量子ドット(Q−ドット)を液体標識のために用い、および96の異なる化合物(ここで、1〜2が好ましいキナーゼ基質であろう)の組をライブラリーとして用いる。蛍光偏光が好ましい。というのは、それは多くの異なるタイプのアッセイに適合させることができるという議論を成すことができるからである。1つの例において、620nm、650nmおよび680nmにおいて発光する水溶性Q−ドットが用いられる。これらの発光バンドは、標的酵素アッセイが発光する(580nm未満)スペクトル領域の十分に外側にあり、従ってこれらのQ−ドットは優れた選択である。もう1つの例において、近赤外q−ドットを用いて、標的アッセイの重複しないスペクトル領域を広げる目的でそれらの水溶解度を高める。q−ドットの読み出しをこの「使用されていない」波長バンドに移動させると、注目する実質的にいずれの蛍光アッセイも、修飾なくして本発明のナノリアクターに適合させることができ、直ちに利用できる空間をかなり拡大する。
【0221】
核酸は線状分子とすることができ、ここで、末端はPCRのための基点部位として用いることができ、中央の配列は各化合物に対してユニークであり;コーディングとして用いられるのはこの中央の配列である。核酸および化合物は、核酸および化学物質を一緒に予め乳化し、次いで、それらを本明細書中に記載されたマイクロ流体デバイスに予め作製された化合物小滴として加えることによって、1つの小滴に一緒に合わされる。化合物の小滴は機器にてもう1つの小滴と合わせることができる。この他の小滴は、化合物小滴と合わせた場合に「アッセイ」小滴を形成する(例えば、限定されるものではないが、細胞または酵素を含めた)調査中のアイテムを含有することができる。次いで、所望の検出された特性(例えば、化合物マイクロ滴に加えられた蛍光基質の使用を介する酵素活性の阻害)を有するアッセイ小滴をソートすることができる。ソートされたアッセイ小滴を収集することができ、エマルジョンが破壊され、核酸配列を解読することができる。解読は、(米国出願公開番号2005−0227264に記載された)エマルジョンPCR、および配列決定機器での配列決定によって行うことができる。別法として、解読は、PCR産物を適当な宿主(例えば、E.coli)にクローニングし、得られたクローンをDNA配列決定に付すことによって行うことができる。
【0222】
核酸はユニーク性の領域を有する線状分子であり得、解読は、クローニング、および引き続いて、ソートされたアッセイ小滴から得られたDNAを適当な宿主(例えば、E.coli)に形質転換することによって行うことができる。次いで、得られたクローンを、ユニークなアイデンティファイヤーを含有するPCR産物を、固体支持体(例えば、チップ、ウェハー、またはビーズ)に固定された核酸の相補的ストランドにハイブリダイズすることによる解読に付すことができる。
【0223】
核酸はユニーク性の領域を持つプラスミドであり得、解読は、ソートされたアッセイ小滴から得られたDNAを適当な宿主(例えば、E.coli)に形質転換することによって行うことができる。次いで、得られたクローンをDNA配列決定に付して、コードされた配列を同定することができる。
【0224】
核酸はユニーク性の領域を有するプラスミドであり得、解読は、ソートされたアッセイ小滴から得られたDNAを適当な宿主(例えば、E.coli)に形質転換することによって行うことができる。次いで、得られたクローンを、ユニークなアイデンティファイヤーを含有する標識−PCR産物を、固体支持体(例えば、チップ、ウェハーまたはビーズ)に固定された核酸の相補的ストランドにハイブリダイズさせることによる解読に付すことができる。
【0225】
核酸はユニーク性の領域を有するプラスミドまたは線状断片いずれかであり得、解読は、ソートされたアッセイ小滴から得られたDNAを適当な宿主(例えば、E.coli)に形質転換することによって行うことができる。次いで、得られたクローンを、ユニークなアイデンティファイヤーを含有する標識−PCR産物を、固体支持体(例えば、チップ、ウェハー、またはビーズ)に固定された核酸の相補的ストランドにハイブリダイズすることによる解読に付すことができる。好ましくは、ビーズは染料またはQdotでコードすることができ、解読は、本発明によるマイクロ流体デバイスで、あるいはQdotまたはLuminex機器で行うことができる。
【0226】
ユニークな核酸の組をユニークな化学的存在の組に加えることができ、ここで、各合わされた組は別々に乳化される。別々に乳化された合わされた組をさらに合わせて、小滴の乳化された混合溶液を得ることができ、ここで、各小滴は核酸およびユニークな化学的存在を共に含有することができる。この合わされた混合用液は、当業者によって考えられる種々のアッセイで用いられる本発明によるマイクロ流体デバイスに注入することができる。
【0227】
ユニークなアイデンティファイヤーを含有する核酸は、各々が、相互に共通する5’ヌクレオチド配列を含有する順方向および逆方向PCRプライマー、各々、順方向および下流プライマー、コモン配列に対して3’側にあるユニークな配列、および抗生物質または他の選択可能な遺伝子の領域の組を用いる抗生物質耐性または他の選択可能な遺伝子のPCRによって生じさせることができる。該プライマーをPCR反応で用いて、今度は、順方向または逆方向コンセンサス配列のいずれかを添えることができるユニークなアイデンティファイヤーによって添えられた抗生物質耐性または選択可能な遺伝子を生じさせることができる。次いで、PCR産物を、第二の抗生物質耐性または他の選択可能な遺伝子を有するベクターにクローン化し、ベクターを適当な宿主(例えば、E.coli)にクローン化することができ、それにより、抗生物質耐性およびもう1つの選択可能な遺伝子について同時に選択する。
【0228】
標識は、有機染料(例えば、cy3、cy5、フルオレセイン)、または量子ドットのような無機標識のような染料を含有する溶液でもあり得る。ドットは、疎水性残基によってさらに覆われし、またはカプセル化することができる。1を超える染料を乳化に先立って溶液に加えることができ、1以上の染料の比率を用いて、小滴を解読することができる。
【0229】
加えて、多くのビーズでコードされたアッセイは、本明細書中で開示されたデバイスおよび系に直接的に移植すべきマイクロスフィアのために既に開発されている。そのようなアッセイは、例えば;アレルギーテスト、病気マーカー(自己免疫、癌および心臓を含む)、サイトカイン、ゲノタイピング、遺伝子発現、感染症、キナーゼ/リン酸化タンパク質、代謝マーカー、組織タイピング、転写因子/核受容体その他を含む。
【0230】
本発明は、コンビナトリアル化学/生物学用の滴−ウォッシャーを用いる方法も提供する。本発明のデバイスは、第一の非混和性流体中に非混和性である小滴内の構成要素が第二の非混和性流体に可溶性であるように、第一の非混和性流体中にある場合に、第二の非混和性流体にマイクロ滴が暴露されるように、流体流動の使用を介して滴内の構成要素を交換することができる。
【0231】
例えば、化学反応を含む水性小滴は、脂質溶媒に可溶性である副産物を生じる。化学反応は、シリコン−ベースの溶媒中の水−環境で行われる。化学反応が起こった後に、小滴を有機−油ベースの溶媒に暴露し、そこでは、化学副産物は小滴から拡散して出る。次いで、小滴を生きた細胞と合わせることによって得られた小滴を細胞−殺傷活性についてアッセイする。
【0232】
これまでの例と同様であるが、非水性流体流動の変化を用いて、第二の非混和性流体からの特定の構成要素を加えて、小滴が100%第一非混和性流体流動に戻される前に水性滴に拡散させる。
【0233】
実施例4
本発明は、蛍光偏光(FP)を用いてナノリアクター中で生物学的アッセイを行う方法も提供する。蛍光偏光技術は何十年の間、基本的な研究および商業的診断アッセイで用いられてきたが、薬物発見に広く用いられ始めたのは、過去6年の間だけである。元来、薬物発見のためのFPアッセイは単一−チューブ分析機器のために開発されたが、同等な感度を持つ商業的プレートリーダーが利用可能となると、高スループットスクリーニングアッセイに迅速に変換された。これらのアッセイはキナーゼ、ホスファターゼ、プロテアーゼ、G−プロテイン結合受容体、および核受容体のようなよく知られた医薬標的を含む。
【0234】
核受容体;FPは核受容体−リガンド変位のために高スループットスクリーニング(HTS)アッセイを開発するのに用いられてきた(Parker GJら,Development of high throughput screening assays
using fluorescence polarization: nuclear receptor−ligand−binding and kinase/phosphatase assays)。FP−ベースのエストロゲン受容体(ER)アッセイは、ERへの結合についてのフルオレセイン−標識エストラジオールおよびエストロゲン−様化合物の競合に基づく。転写活性化スクリーニングからの50のリード化合物のスクリーニングにおいて、21の化合物は10マイクロM未満のIC50値を有し、1つはERalphaよりもERbetaに対する大まか100倍高い親和性を呈する。FP−ベースの競合結合アッセイを用いて、ERに対する広い範囲の結合親和性を持つ多様な化合物をスクリーニングすることができる。
【0235】
ホスファターゼおよびキナーゼ;非放射性の単純な感受性蛍光偏光アッセイが、タンパク質チロシンキナーゼの活性をアッセイするのに開発されている(Seethala R.;Menzel R.A Homogeneous,Fluorescence Polarization Assay for Src−Family Tyrosine
Kinases.Analytical Biochemistry,November 1997,vol.253,no.2,pp.210−218(9))。このアッセイは、蛍光化ペプチド基質とキナーゼ、ATP、および抗−ホスホチロシン抗体とのインキュベーションを含む。リン酸化ペプチド産物は抗−ホスホチロシン抗体で免疫複合体化され、その結果、蛍光偏光アナライザーで測定して偏光シグナルが増加する。これらの結果は、蛍光偏光アッセイが阻害剤を検出でき、
32PO
4で導入アッセイと匹敵することを示す。蛍光偏光方法は
32PO
4導入アッセイあるいはELISAまたはDELFIAと比較して有利である。なぜならば、それはいくつかの洗浄、液体導入、および試料調製工程を含まない1−工程アッセイだからである。それは非同位体基質を用いる追加の利点を有する。かくして、蛍光偏光アッセイは環境に安全であり、取り扱いの問題を最小化する。
【0236】
G−プロテイン結合受容体;高スループット蛍光偏光(FP)アッセイは、細胞表面受容体(Gプロテイン−結合受容体およびリガンド−ゲーテッドイオンチャネル)についての放射性リガンド結合アッセイの代わりの非放射性の均一かつ低コストの代替物を供する(Allen M,Reeves J,Mellor G.High throughput fluorescence polarization:a homogeneous alternative to radioligand binding for cell surface receptors.J Biomol Screen.2000 Apr;5(2):63−9)。FPアッセイは、ペプチド(バソプレッシンV1aおよびデルタ−オピオイド)および非ペプチド(ベータ1−アドレノセプター、5−ヒドロキシトリプタミン3)受容体双方の一定範囲を横切って働くことが示された。アッセイは、96−ウェルプレートアッセイと比較してシグナルウィンドウまたは感度がほとんど喪失することなく384−ウェルプレートで行うことができた。FP測定における新しい進歩は、従って、FPが、細胞表面受容体についての放射性リガンド結合に対する高スループット代替物を供することを可能とした。
【0237】
GTPase;フィルター結合[FB(
33P)]およびFP検出系を用いて30,000のメンバーの化合物ライブラリーをスクリーニングし、いずれかのアッセイにおいて活性であった化合物を5−点曲線確認アッセイで再度テストした(C.L.Hubertら Data Concordance from a Comparison between Filter Binding and Fluorescence Polarization Assay Formats for Identification of ROCK−II Inhibitors)。これらのデータの分析は、双方のアッセイフォーマットで活性と同定された化合物のほぼ95%一致を示した。また、FBおよびFPからの化合物能力決定は高度な相関を有し、同等と考えられた。これらのデータは、アッセイ方法がスクリーニングの質および再現性に対してほとんどインパクトを有しないことを示唆し、但しアッセイは動的条件を標準化するために開発されたものとする。
【0238】
抗体を用いる診断薬;ウマのウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)感染の制御は、過去20年間に渡り、主として、専ら、集中参照研究所における標準化された寒天ゲル免疫拡散(AGID)アッセイによる血清陽性ウマの同定および排除に基づいてきた。EIAVコアおよびエンベロープタンパク質の抗原性領域に由来するペプチドを、まず、最良のペプチド抗原候補を選択するFPアッセイにおけるプローブとしてのそれらの利用性についてスクリーニングした(S.B. Tenczaら Development of a
Fluorescence Polarization−Based Diagnostic Assay for Equine Infectious Anemia Virus.Journal of Clinical Microbiology,May 2000,P.1854−1859,Vol.38,No.5)。FPアッセイを最適化して、フルオレセイン−標識免疫反応性ペプチド診断抗原のFPの変換によってEIAV−特異的抗体の存在を検出した。最も感受性かつ特異的なペプチドプローブは、EIAV膜貫通タンパク質gp45の免疫優勢領域に対応するペプチドであった。このプローブを、151のAGID−陽性ウマ血清および106のAGID−陰性血清試料での最適化されたFPアッセイにおけるその反応性についてテストした。これらの研究の結果は、FPアッセイ反応性が、106の陰性血清試料のうち106(100%特異性)、および151の陽性血清試料のうち135(89.4%感度)における報告されたAGID結果と相関したことを示す。FPアッセイは、非常に低いバックグラウンド反応性を有し、感染において早く(<3週間後感染)生じた抗体を容易に検出することも判明した。
【0239】
FPは非常に迅速な反応での均一系技術であり;平衡に達するのに数秒〜数分で十分である。試薬は安定しているので、大きなかなり再現性があるバッチを調製することができる。それらの特性のため、FPは、高度に自動化可能であり、しばしば、単一の予め混合されたトレーサー−受容体試薬との一回のインキュベーションで行われることが判明した。洗浄工程がないという事実は、不均一系技術よりも精度およびスピードを増加させ、廃棄物を劇的に低下させる。
【0240】
蛍光強度に基づく他の均一系技術が開発されている。これらはエネルギー移動、消光および増強アッセイを含む。FPはこれらよりも優れたいくつかの利点を供する。該アッセイは構築するのが通常より容易である。というのは、トレーサーは強度変化による結合に応答する必要がないからである。加えて、唯1つのトレーサーが必要とされ、粗製受容体調製物を利用することができる。さらに、FPは強度から独立しているので、それは着色溶液および濁った懸濁液に対して比較的免疫性である。FPは機器測定の領域においていくつかの利点を供する。FPは分子の基本的な特性であり、かつ試薬は安定であるゆえに、ほとんどまたは全く標準化は必要とされない。FPは、検出器利得設定およびレーザーパワーにおけるドリフトに対して比較的非感受性である。
【0241】
分子の運動および回転の概念は蛍光偏光の基礎である。蛍光染料を用いて小さな分子を標識することによって、同等またはより大きなサイズのもう1つの分子へのその結合は、その回転のスピードを介してモニターすることができる。
図5に示すように、(垂直ページ軸に沿った)直線偏光の電気ベクトルに対して平行に整列したその吸収転移ベクトル(矢印)を持つ染料分子は選択的に励起される。小さな迅速に回転する分子に付着した染料については、最初に光選択された向きの分布は発光に先立ってランダム化されるようになり、その結果、低い蛍光偏光がもたらされる。逆に、低分子量のトレーサーの大きなゆっくりと回転する分子への結合の結果、高い蛍光偏光がもたらされる。蛍光偏光は、従って、トレーサーのタンパク質、核酸および他の生体ポリマーへの結合の程度の直接的な読み出しを供する。
【0242】
Perrinによって1926年に最初に記載された蛍光偏光は長い歴史を有する。FPの理論および測定のための最初の機器はWeberによって開発された。この研究はDandlikerによって抗原−抗体反応およびホルモン−受容体相互作用のような生物学的系まで拡大された。体液中の薬物をモニターすることを目的とした最初の商業的システムはJolleyおよび共同研究者から来るものである。
【0243】
蛍光偏光は以下の方程式:P=(V−H)/(V+H)によって定義され、ここで、Pは偏光単位であり、Vは発せられた光の垂直成分の強度であり、Hは垂直面偏光された光によって励起されたフルオロフォアの発せられた光の水平成分の強度である。「偏光単位」Pは無次元の存在であって、発せられた光の強度、またはフルオロフォアの濃度に依存しない。これはFPの基本的パワーである。用語「mP」は、今日一般に用いられており、ここで、1mPはPの1/1000と等しい。
【0244】
励起二極は、分子が光を吸収するのを優先する方向である。発光二極は、分子が光を発するのを優先する方向である。これは(簡素化のため)、これらの方向は平行であると仮定している。1つの実験において、もし全ての励起二極が垂直面内で整列するように蛍光分子が固定され、発光二極に沿った偏光を持つ蛍光のみがあると仮定すれば、1000 mPの最大偏光単位が観察される。しかしながら、もし励起二極がランダムな向きであれば、この最大偏光単位は500mPまで低下する。もう1つの実験において、もし二極が固定されるという要件がはずされ、かつそれらが励起される時間およびそれらが蛍光を発する時間の間に再度配向されれば、偏光単位は500mP未満に入る。
【0245】
もう1つの実験において、ランダムな向きの転移モーメントの収集は自由に回転できる。この場合、偏光単位は0および500mPの間であって、励起状態の蛍光の寿命の間にどれくらい大いに分子が回転したかに依存する。分子がより小さければ、それはより速く回転し、従って、FPはより低くなる。
【0246】
分子の回転速度はストークスの方程式:ρ=(3ηV)/(RT)によって記載され、ここで、ρは回転緩和時間であり(そのコサインが1/eである角度、またはほぼ68.5°を通って回転するのに必要な時間)、ηは媒体の粘度であり、Vは分子の分子用量であり、Rは気体定数であって、Tはケルビン度で表した温度である。先の方程式から、我々は、分子の分子量がより高いと、回転緩和時間がより高くなることを見出すことができ;V=vMであり、ここで、M(Perrin方程式)はダルトンで表した分子の分子量であって、vはその部分的比容量(cm
3g
−1)である。Perrin方程式は1926年に最初に記載され、観察されたFP、制限的偏光、フルオロフォアの蛍光寿命(τ)、および回転緩和時間の間の関係を記載する。((1/P)−(1/3))=((1/P
0)−(1/3))×((1+(3τ/P))。
【0247】
蛍光寿命が短ければFPはより高いであろう。逆に、回転緩和時間が短ければ、FPはより小さいであろう。ストークスの方程式およびPerrin方程式を組合せ、かつVに代えてMで置換し、再編集すれば、分子の分子量およびそのFPの間の関係が得られる(1/Pは1/Mに比例する);(1/P)=(1/P
0)+((1/P
0)−(1/3))×(RT/vM)×(τ/η)。この方程式より、Pは高い分子量、高い粘度および短い寿命の制限的場合においてはP
0と等しいことが分かる。事実、種々の粘度においてFPを測定し、Pを1/ηに対してプロットし、次いで、座標上の切片を決定することによってP
0を決定することができる。
【0248】
有機フルオロフォアは狭い励起バンドおよび広い赤色−テイリング発光バンドのような特徴を有する。
図6(左側中央パネル)は、各々、q−ドット535ナノ結晶およびフルオレセインの吸収および発光スペクトルを示す。
図6(右側パネル)は、いくつかのサイズのCdSe−ZnS量子ドットの発光スペクトルを示し、全ての場合においてnmで表して、290nmにおけるZnSe、および365nmにおける全てのその他の励起が伴う。これらのバンドはそれらの有効性をしばしば制限する。これは、スペクトル重複により問題となる多数の光−発光プローブを同時に解像する。また、多くの有機染料は光分解に対して低い抵抗性を呈する。
【0249】
量子ドットまたはq−ドット(QD)と呼ばれるルミネセントコロイド状半導体ナノ結晶は、有機染料が遭遇する機能的制限のいくつかを回避する能力を有する無機フルオロフォアである。特に、CdSe−ZnSコア−シェルQDは、可視スペクトルおよび広い吸収バンドに渡る狭い発光バンド幅(FWHM約30〜45nm)と共にサイズ−依存性チューニング可能光ルミネセンス(PL)を呈する。これらは、共通の波長におけるいくつかの粒子サイズ(色)の同時励起を可能とする。これは、今度は、標準機器測定を用いるいくつかの色の同時解像を可能とする(
図6、右側パネル)。CdSe−ZnS QDもまた高い量子収率を有し、光分解に対して抵抗性であって、有機染料に匹敵する濃度において光学的に検出することができる。
【0250】
量子ドットは、典型的には、結晶性セレン化カドミウムのような物質よりなるナノ−スケールの半導体である。用語「q−ドット」はこれらの物質の量子封じ込め効果を強調し、典型的には、量子封じ込めサイズの範囲において蛍光ナノ結晶をいう。量子封じ込めとは、半導体を電気的に、あるいはその上で光を輝かせることによって励起して、再結合した場合に光を発する電子−ホール対を生じることに由来するLEDのようなバルク(巨視的)半導体からの光発光をいう。エネルギーおよび、従って、発せられた光の波長は半導体材料の組成によって支配される。しかしながら、半導体の物理的サイズが、電子−ホール対の天然の半径(ボーア半径)よりもかなり小さくなるまでかなり低下した場合、ナノ分光半導体構造内にこの励起を「封じ込める」のに必要なさらなるエネルギーが必要とされ、より短い波長への発光のシフトに導かれる。
【0251】
蛍光偏光アッセイはマイクロ流体デバイスで用いて、キナーゼ酵素、ホスファターゼ、プロテアーゼ、リガンド−リガンド結合、およびその他の活性をモニターすることができる。蛍光偏光測定を行うための現行の蛍光検出システムの拡大は、直線偏光レーザーおよび偏光オプティックスの設計への取り組みを必要とする。
図7に示したように、直線偏光レーザーおよび偏光オプティックスが設計に取り込まれている。488nmで操作される直線偏光周波数二重ダイオードレーザーは、1/2ウェーブプレートおよび線形ポラライザーを通過する(Meadowlark Optics,>2000:1コントラスト比。これは、FPで必要とされる励起レーザー偏光を方向付け、それをロックするのを可能とする。レーザーは反射され、二色ビームスプリッターおよび反射防止被覆レンズを用いて試料に焦点が結ばれる。試料からの蛍光はレンズおよび二色ビームスプリッターを通じて元に伝播され、発光フィルターを用いて単離される。次いで、この蛍光シグナルを偏光ビームスプリッターを用いて直交偏光に分裂させる(Meadowlark Optics、偏光キューブ型ビームスプリッター、コントラスト比>500:1伝播、>20:1反射)。コントラストは線形ポラライザーでさらに高められる(Meadowlark Optics,>2000:1コントラスト比)。最後に、各偏光シグナルは、光電子増倍管の対を用いて測定され(Hamamastsu H5789)、デジタル化され、コンピュータによって解析される。Picarroからの488nmにおいて操作される直線偏光(>200:1)周波数ニ重ダイオードレーザーがこの目的で用いられる。図面で分かるように、レーザーは1/2ウェルプレートおよび線形ポラライザーを通過する(Meadowlark Optics,>2000:1コントラスト比)。これは、FPで要求とされる励起レーザー偏光を方向付け、それをロックすることを可能とする。標準ステーションに関しては、レーザーは反射され、二色ビームスプリッターおよび抗−反射被覆レンズを用いて試料に焦点が結ばれる。試料からの蛍光はレンズおよび二色ビームスプリッターを通って逆に伝播され、発光フィルターを用いて単離される。次いで、偏光ビームスプリッター(Meadowlark Opticsで偏光キューブ型ビームスプリッター,コントラスト比率<500:1伝播,<20:1反射)を用いてこの蛍光シグナルを直交偏光に分裂させ、コントラストは線形ポラライザーでさらに高められる(Meadowlark Optics,>2000:1コントラスト比)。最後に、各変更シグナルは光電子増倍管の対を用いて測定され(Hamamastsu H5789)デジタル化され、コンピュータで解析される。これらのオプティックスはmP感度よりも良好とすると期待される。
【0252】
これらの蛍光偏光システムは、モデル酵素系;Src−ファミリーチロシンキナーゼを用いてテストした。非放射性の単純な感受性蛍光偏光アッセイは、タンパク質チロシンキナーゼ活性をアッセイするために開発されている(Seethala R.;Menzel R.A Homogeneous,Fluorescence Polarization Assay for Src−Family Tyrosine Kinases.Analytical Biochemistry,November 1997,vol.253,no.2,pp.210−218(9))。このアッセイは、フルオレセニル化ペプチド基質のキナーゼ、ATP、および抗−ホスホチロシン抗体とのインキュベーションを含む。
図8に示すように、リン酸化ペプチド産物は抗−ホスホチロシン抗体で免疫複合体化され、その結果、蛍光偏光アナライザーで測定して偏光シグナルの増加をもたらす。
図8左側パネルは操作のIMAP原理を示す。蛍光基質がキナーゼによってリン酸化された場合、それは、その分子量が基質に対して大きなIMAP結合試薬に結合することができる。これは、蛍光の偏光の大きな増加を与える。
図8中央パネルはMAPKAP−K2、セリン/スレオニンキナーゼのIMAPアッセイを示す。UpstateからのMAPKAP−K2は、示された量の酵素を用いて20μLの容量でアッセイした。ATPおよび基質の濃度は、各々、5.0および0.5μMであった。インキュベーションは室温における60分であり、続いて、60μLのIMAP結合試薬を加えた。FPは30分後にAnalystシステムで読んだ。
図8の右側パネルはキナーゼ阻害のIMAP定量を示す。MAPKAP−K2(0.25単位/mL)は15分間示された酵素の量を用いてインキュベートした。次いで、酵素の活性を前記したように評価した。これらの結果は、蛍光偏光アッセイが阻害剤を検出でき、
32PO
4移動アッセイと匹敵することを示す。蛍光偏光方法は
32PO
4移動アッセイあるいはELISAまたはDELFIAと比較して有利である。なぜならば、それはいくつかの洗浄、液体移動、および試料調製工程を含まない1−工程アッセイだからである。それは非同位体基質を用いるさらなる利点を有する。かくして、蛍光偏光アッセイは環境的に安全であり、取り扱いの問題を最小化する。
【0253】
選択される染料はフローサイトメトリーにおいて広く用いられており、我々の機器においては、1つの滴内の(潜在的に)多くの染料の状態を決定するであろう。我々の機器での安価なオプティックスの使用は、ナノリアクターにおける染料分子の理論的増加によって補償されるものを超えるであろう。
【0254】
FPアッセイは、感度またはシグナルウィンドウの喪失なくして5% DMSOまで許容されることが示された。1,280の化合物のランダムな組から、Allenらは、1.9%がFP測定に有意に干渉することを見出した(J Biomol Screen.2000 Apr;5(2):63−9.High throughput fluorescence polarization:a homogeneous alternative to radioligand binding for cell surface receptors.Allen M,Reeves J,Mellor
G.Receptor & Enzyme Screening Technologies, Glaxo Wellcome Medicines Research Centre,Stevenage,Herts,UK)。もし蛍光または消光化合物が排除されたならば(全ての化合物の3%)、0.4%未満の化合物はFP測定に干渉することが見出された。化合物は先験的にアッセイされ、これらの望ましくない特徴を有するものは排除される。
【0255】
いくつかの酵素アッセイにおいて遅延モジュール(すなわち、遅延ライン)が利用されるであろう。これは、小さな容量の酵素反応メカニズムについてはあまり真実ではない。そして、多くの細胞ベースのアッセイでさえ5分以内に測定することができる。より長いアッセイ時間は、小滴を集め、それらを適当な時間の間インキュベートし、次いで、それらをデバイスに再度注入することによって達成することができる。
【0256】
いくつかの濃度における3つの異なるq−ドットは、各々、マイクロ小滴内に入れることができ、次いで、本発明のデバイスで用いて、滴内にあるものを解読することができる。1つの実験において、最初の標識スキームは620 nm(CdSe/ZnS)、650 nm(InGaP/ZnS)、および680 nm(InGaP/ZnS)の発光波長を有するq−ドットの3色を用いた(488nmにおける励起は全てについて適切である)。1つの特別な例において、1つのq−ドットは一定の濃度に維持され、第二および第三のq−ドットは少なくとも10の異なる濃度で変化させ、100の異なるコーディングを与える(1×10×10)。解読は、第一のq−ドットに対する第二および第三のq−ドットの強度を参照することによって計算されるであろう。他の標識スキームはこれらの実験の過程において用いることができる。
【0257】
蛍光ステーションへのQ−ドットリードアウト拡大は本明細書中に記載されており、開発されたモジュールレイアウトのため容易に設計に取り込まれる。見られるように、一連の二色ビームスプリッター、発光フィルター、および検出器はシステムに積まれ、必要な5つの発光チャネル(2つの蛍光偏光シグナルおよび3つのq−ドットバンド)の測定を可能とする。q−ドット波長バンドを相互から分離することができる二色ビームスプリッターおよび発光フィルターは容易に入手でき、従って、それはステーションを適切に構成するための直接的プロセスである。
【0258】
滞留時間は、チャネルを広くすることにより滴の流動を遅らせることによって増加させることができる。別法として、レーザービームの強度を増加させて、小滴内のq−ドットの濃度を補償し、または増加させることができる。
【0259】
本明細書中に記載したように、FPのために選択された染料はほとんどの細胞−および酵素−ベースのアッセイで共通して用いられており、q−ドットと有意に重複しないように設計される。染料は独立してかつq−ドットと一緒に評価され(最初は、機器なし)、クロス−トークを評価する。好ましくは、液体q−ドット標識は、現在FACS分析およびソーティングで用いられるスペクトル波長バンドの外側で読まれる(すなわち、染料フルオレセイン、Cy3、Cy5など)。これは(これらの染料に依存した)現在利用可能なアッセイの使用を可能とする。特異的なq−ドットを用い、クロストークを最小化する。いくつかの民間企業は、設計すべきオプティックスによって読むことができるq−ドットを販売している。現在使用されるq−ドットの3色は、620 nm(CdSe/ZnS)、650 nm(InGaP/ZnS)、および680 nm(InGaP/ZnS)の発光波長を有する非機能化T2 EviTagsである(488nmにおける励起は全てについて適当である)。
【0260】
96のタイプの小滴を生成するのは可能であり、1つの小滴はq−ドット標識のユニークな組および化合物を共に含有し、小滴が本発明のデバイスを通って流動するにつれ、キナーゼ酵素活性はFPを用いて分析することができ、q−ドット標識は解読することができる。この方法はより複雑かつ興味深いライブラリーに対するスケーリングを可能とする。
【0261】
FPアッセイは、感度またはシグナルウィンドウにおける喪失なくして5% DMSOまで許容されることが示された。1,280化合物のランダムな組から、Allenらは1.9%がFP測定に有意に干渉することを見出した(J Biomol Screen.2000 Apr;5(2):63−9.High−throughput fluorescence polarization:a homogeneous alternative to radioligand binding for cell surface receptors. Allen Mら Receptor & Enzyme Screening Technologies,Glaxo Wellcome Medicines Research Centre Stevenage,Herts,UK)。もし蛍光または消光化合物が排除されるならば(全ての化合物の3%)、0.4%未満の化合物がFP測定に干渉することが見出される。化合物は先験的にアッセイされ、FPを消光するものは排除される。
【0262】
我々が用いるq−ドットの3色は、620nm、650nm、および680nmの発光波長を有する非機能化T2 EviTagsであり;488nmにおける励起は全てについて適切である。>620nm液体標識発光バンドが、488および620nmの間に見出されるFPアッセイバンドと干渉しないように選択された。これらのq−ドットは市販されており、いくつかの緩衝液中で安定であって、水性溶液に懸濁したままである。
【0263】
2つのタイプの小滴の混合液、緩衝液−のみ、およびフルオレセイン含有は、有機染料の緩衝液−のみ小滴へのいずれの検出可能な拡散もなくして、少なくとも最初の1ヵ月の間安定である。他の界面活性剤は異なる種類の化合物に代えて置換可能である。他の化合物のテストについては、i)化合物−含有および緩衝液−のみ小滴の同様な混合物を作製することができ、ii)それらはそれらのq−ドット標識に基づいてソートすることができ、およびiii)質量分析を緩衝液−のみ小滴で用いて、他の化合物の存在を定量的に検出することができる。
【0264】
いくつかの実施形態において、遅延モジュール(すなわち遅延ライン)を利用することができる。これは、小容量の酵素反応メカニズムについて当てはまるであろう。しかしながら、多くの細胞−ベースのアッセイでさえ5分以内に測定することができる。小滴はオフ−ラインで採ることもでき、小滴の明らかな変化なくして、本発明のデバイスへの再度の注入前の少なくとも1ヵ月間貯蔵することができる。より長い遅延時間は、混合された小滴をオフ−ラインで採ることによって達成することができ、次いで、それを再度注入することができる。
【0265】
実施例5
本発明は、前記した本発明のナノリアクター中で縮合化学を行って、高度に収束した方法で薬物−様分子のライブラリーを合成する方法を提供する。
【0266】
全ての生命現象を水性媒体中で起こる化学反応に減らすことができる。よって、水は普遍的な究極の溶媒であると考えられ、不可避的に生物学的な実験は水性媒体中で行われる。さらに、全てのタイプの有機溶媒は生化学的反応に対して有害であり、それらの使用をジメチルスルホキシドおよびエチレングリコールのような水混和性溶媒の小さなパーセンテージに限定する。我々の系における1チップ合成は従って、全ての化学反応を生物学的に適合する水性媒体中で行うことを必要とする。対照的に、従来の有機化学の合成は、結合形成プロセスを行うに高度に活性化された基質および高度に反応性の試薬に依拠する。典型的には、これらの基質および/または試薬は、それらを無益なものとする水の存在下、または水との反応において不安定である。コストを低下させるための絶え間ない努力は安全性を高め、環境の関心事に取り組むために、w.r.t.溶媒の選択は、水を主用な、または多くの場合には、唯一の溶媒(Li)として利用する合成方法の開発を促進した。水が唯一の溶媒でない場合には、水混和性有機溶媒を用いて、基質の溶解を助ける。
【0267】
物質はそれを制御された方法で分解することによってナノリアクターから除去できるが、そのようにしなければならないことを回避するのは好ましい。小滴から物質を除去する要件を排除するために、我々は5つの反応のタイプをつきとめ、これは、水性媒体中で行うことができ、これを用いて、サブ−構造成分のかなり多様なライブラリーから一緒に薬物−様分子を「スティッチ」することができる。これらの反応は薬物−様分子における通常に生じる官能基を作り出し、i)N−アシル化、ii)N−スルホニル化、iii)シクロ付加、iv)アミンの還元的アルキル化、およびv)SNAr反応(Morgan)を含む。サブ−構造のランダムな組合せは、全ての可能な組合せのライブラリーを生じるであろう。反応は多工程反応を行うのに十分に直交的である。さらに、単純な保護および脱保護スキームを用いて、縮合の数を増加させることができる。十分な過剰な数の構成要素ナノリアクターは生化学アッセイにおけるテストのための各組み合わせの多数のコピーとの全ての可能な組合せのライブラリーを生じるであろう。この冗長性は、偽陽性ソーティング事象のインパクトを低下させるのに必要である。
【0268】
この技術は、多様なサブ−構造構成要素からの2以上の工程の収束合成による薬物−様化学的存在の組み立てに基づく。2工程プロセスは、4つのサブ構造から最終的な化学的種を組立てる。そのような合成の例は、比較的単純な形成ブロックからのキナーゼ阻害剤Gleevecの構築である。Gleevecは、キメラチロシンキナーゼbcr−ablを標的とするキナーゼ阻害剤のクラスの最初のものである。bcr−ablは、構成的に活性であり、慢性骨髄性白血病(CML)と呼ばれる癌の稀な生命を脅かす形態を引き起こす。Gleevecは、2001年の5月に3ヶ月を中断する記録においてFDA認可を受けた。球に類似して、三次元構造は適当な切断によって半球および1/4球に破壊することができる。
図9は、1/4球AおよびBが還元的アルキル化を利用して組み合わされることを示す。1/4球CおよびDは1,3二極シクロ付加を利用して合わされる。半球ABおよびCDはN−アシル化を利用して合わされる。
【0269】
化学的多様性は、サブ−構造単位(1/4球)を変化させ、ランダムに組合せて、全ての可能な組合せを達成することによって達成される。表1は各1/4球の数に対する理論的多様性を示す(例えば、4つの異なる1/4球A、4つの異なる1/4球B、4つの異なる1/4球および4つの異なる1/4球Dは、前記した2つの工程の後に256のユニークな産物を生じる)。
【0270】
【表1】
水性媒体中の十分に多様な縮合化学は、高度に収束した方法で薬物−様分子の多様なライブラリーを合成するために存在する。
【0271】
複雑な薬物−様分子の合成でルーチン的に用いる合成反応の大部分は、水の存在下で加水分解に対して感受性であって、よって、反応容器からの水の厳格な排除を必要とする試薬および基質に依拠する。さらに、縮合反応は、しばしば、同等な脱水が進行することを必要とし、縮合基質の一方または双方は水による分解に対して感受性である。水のような良性で環境にフレンドリーな溶媒を用いる「より緑色の」化学の追求の結果、水の存在下で起こるいくつかの縮合反応の開発をもたらした。水性有機化学は主な文献および書籍においてかなりレビューされている。
【0272】
本発明のカプセル化技術は、反応仕上げ処理(すなわち、生成物の生成)のオプションなくしてナノリアクターへの試薬および/または基質の付加に依拠する。これは、引き続いての工程または最終産物で行うことを意図した生物学的アッセイに、潜在的に干渉し得る副産物を有する反応の使用を排除する。さらに、マルチ工程反応においては、2つの工程はこのカップリング化学に関して直交しなければならず、すなわち、連続反応のための官能基は相互に干渉できないであろう。5つの反応タイプが同定されており、これは、水性媒体中で行うことができ、次の合成工程または生物学的アッセイにおけるテストに先立って生成物の精製を必要としない。これらの反応はi)N−アシル化、ii)N−スルホニル化、iii)シクロ付加、iv)アミンの還元的アルキル化、およびv)SNAr反応を含む。
【0273】
本発明は、高度に収束された「ワンポット」合成においてこれらの縮合反応を行って、少なくとも2〜16のサブ構造からの複雑な薬物−様分子を一緒に縫い合わせる方法を提供する。
【0274】
水性媒体中への有機化合物の溶解度は、その構造に強く依存する。水性媒体中へのライブラリー化合物の溶解度を高めるためには、DMSOにライブラリー化合物を溶解させ、引き続いて、DMSO溶液を水で希釈するのは生体分子スクリーニング分野において共通している。DMSOは本明細書中に記載されたナノリアクターに適合する。
【0275】
2つの適当な断片の縮合に由来する蛍光産物は、反応しなくて蛍光生成物を形成せず、かくして、光学的読み出しが2つの場合の間を区別するのを可能とし、それに従って小滴をソートする、成分を有する小滴から区別できる。成分は、蛍光生成物を形成することができる成分からの異なるタグを含有するであろう蛍光生成物を形成することができる。よって、この系を用いて、最終生成物の組成を同定するように選択されたタギング戦略をテストすることができる。
【0276】
伝統的なコンビナトリアル化学は、一旦いずれかの特定の生体分子アッセイにおいて活性であると決定されれば、最終生成物の構造的同一性を決定するのに複雑なデコンボリューション方法に依拠する。平行な合成アプローチは、コーディング技術を用いて、典型的にはその特定の化合物の反応履歴を同定するそれに会合したタグからのいずれかの特定の生成物の構造を推定する。1つの例において、試薬小滴は、反応体の組成および、よって、構造を推定できる最終生成物についてのユニークなPCRシグニチュアを提供する、核酸タグでコードする。
【0277】
1つの特定の成分の、共通の反応パートナーとの生成物である蛍光分子の合成を用いて、タギング技術をテストする。
図10は、A、BおよびCと命名される3つのタグが、以下のユニークな成分の各々の1つを標識することを示す:Aは、もしCと組み合わせれば、蛍光分子を生じる断片である。Bは、もしCと組み合わせれば非蛍光分子を生じる断片である。蛍光検出器は、A、B、Cまたは混合物BCを含有する滴の間を、および(もし反応が起こり、蛍光生成物が形成されたならば)混合物ACを含有する滴の間を区別することができる。蛍光ベースのソーティングは、Bを完全に欠如するACタグの集団を生じる。滴の第二の(廃棄)集団は、タグAを含有するあらゆる滴がCを含有する滴に融合したのでなければ、B、CおよびAタグを含有することができる。
【0278】
薬物−様化合物の多工程収束合成は、小滴の選択的融合によってナノリアクター中で行うことができる。次いで、これらの化合物を、チップ上で合成した直後に生体分子スクリーニングでテストすることができる。
【0279】
bcr−ablキナーゼ阻害剤Gleevecの合成は本明細書中に記載されている。4つのサブ−構造単位からのこの阻害剤の合成、続いての、蛍光偏光ベースのアッセイにおいてbcr−ablキナーゼを阻害するその能力を決定するアッセイは、この技術に対する原理の証拠として働くであろう。
【0280】
2つの異なるサブ−構造は、その1つがGleevecである少なくとも16の可能な生成物が形成できるように各1/4球で用いられるであろう。他の生成物のいくつかはGleevecのサブ−構造エレメントを有するが、「別の」1/4球はかなり異なっていて、完全に非活性な生成物が可能な組合せの中にあることを確実とするであろう。各ユニークな1/4球は適当な核酸オリゴマーをタグとして付されるであろう。
【0281】
Gleevecがbcr−ablの活性を強く阻害することを除いて、生成物を蛍光偏光ベースのキナーゼアッセイでテストする。アッセイ読出に基づき、Gleevecを含有する滴をソートし、別々に収集する。それらの滴の核酸タグの分析は、ヒット化合物の組成を明らかとすることができる。
【0282】
本発明は、化学反応の化学的コーディングおよび解読タギングのために核酸を用いる方法も提供する。現在の技術は、いずれかの特定のビーズの合成履歴を「記録」し、それにより、活性な小分子の構造のデコンボリューションを可能とする化学的タグでのビーズのタギングのために存在する。ライブラリーメンバーを組立てるのに用いられている試薬のカプセル化は、いずれかの特定の第四級反応の組合せの構造を決定するための、均一核酸ベースのタグの使用を可能とする。生体分子スクリーニングからの陽性ヒットをE.coliにクローン化し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて解読して、生体−活性分子を組立てるのに用いられる1/4球の組成を決定する。
図11(左側パネル)はDNAタグの4つの群を示す。16の二本鎖オリゴデオキシヌクレオチドの「同族」タグのうちの1つを化学合成で用いられる16の異なる化学物質の4つの「群」の各々に加える(詳細については明細書参照)。タグの各群は、群の各メンバーについて同一であるが、隣接する基の間で相補的であるユニークな重複する5’および3’端部を有するであろう。群内のタグは、それらが隣接する基のメンバーと一旦連結できるように、非対称5’突出を持つように設計される。第1および第4の群は、加えて、全ての4つの基を含有する最終産物までPCRに対する起点部位として用いることができる(各々)5’および3’配列を含有するであろう。群2、3および4における頂部−ストランドはDNA連結で必要な5’ホスフェートを含有するであろう。
図11(右側パネル)は、各反応におけるタグが酵素アッセイに基づいてソートされることを示す。示された例において、化学合成が起こり(詳細については明細書参照)、タグ2、7、11および14を含有する(本実施例における)小滴は、その中に、酵素/細胞−ベースのアッセイにおいて正に反応する合成された化合物を有する。次いで、群1および4の端部に相補的なプライマーを用い、陽性小滴をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に付す。得られたPCR産物は、次に、適当なDNAベクターにクローン化されるであろう。最後に、連鎖結合したタグを含有する形質転換E.coliのコロニーをDNA−配列決定して、陽性にソートされた小滴に会合した化合物の合成履歴を解読する。
【0283】
別法として、可溶性量子「ドット染料」を用いて、ソーティングの必要性を排除する多色量子ドットの相対的蛍光シグナルを測定することによって、陽性ヒットの化学的組成を同定することができる入力エマルジョンをコードすることができる。アッセイは蛍光マーカーからの適切なシグナルで示す(本明細書中で提案されるキナーゼアッセイの場合には、我々は蛍光偏光の変化を測定するであろう)。このシグナルの原因となる分子の合成履歴は、染料の相対的レベルを決定することによって読み出されるであろう。このタギング技術は、適当な信頼性でもって認識できるユニークな組合せの数によって制限され、よって、初期リードを囲う化学的空間のサブ−セットを探求するのに典型的に用いられる、より小さなより集中されたライブラリーに適用されるであろう。
【0284】
実施例6
本発明は、自己−抗原を単離する方法を提供する。次いで、各々、第一の小滴組内に別々にまたは多数で含有される単細胞を作り出すように処理された、多細胞生物から得られた腫瘍よりなる該第一の試料小滴組を、生物から単離された1以上のt−細胞よりなる小滴の第二の組と組合せ、得られた組み合わされた小滴を、検出手段を用いて組み合わされた小滴内に含有された腫瘍細胞のt−細胞殺傷について分析する。検出手段は、細胞の溶解に際して小滴環境に放出されるであろう細胞質酵素についての分析を含むことができる。小滴はソートすることができるか、またはソートすることができず、次いで、さらに、t−細胞によって認識される腫瘍細胞エピトープの同定のために分析される。
【0285】
実施例7
本発明は、相化的アプローチまたはその誘導体を用いるマトリックススクリーニングの方法を提供する。試料ウェル内に各々別々に含有された多数の試料から構成されるデバイスは、各試料が流体−流動内の小滴内にカプセル化でき、かつ別々の、順次の小滴の組合せの相を変化させることによって、他の試料の各々と順次にかつ別々に組み合わせることができるように操作できるように、1以上の入口チャネルに結合した。
【0286】
例えば、滴の組合せの相を変化させることによって、例えば、5つの別々の試料各々を他の試料と、本実施例においては対として、組合せて、化合物1+2、2+3、3+4、4+5、5+1、...1+4の全ての可能な対の混合物を含有する滴を生じさせることが可能である。相化は、チャネルの長さ、バルブ、圧力などを含めたいくつかの手段のうちの1つによることができる。
【0287】
もう1つの実施例において、100の化合物のマトリックスを100の別々のウェルに負荷し、各々を、別々の対にて組合せて、100
2の異なる対様式組合せを得る。これらの103の組合せは、各々、細胞−ベースのアッセイで別々に用いて、細胞生存に対するそれらの組み合わされた効果を決定する。
【0288】
本明細書中に開示されたデバイスおよびシステムは、試料を分析するための現行のデバイスおよび方法よりも優れたいくつかの区別される利点を有する。これらの利点は、例えば、アッセイの信頼性および再現性、フレキシビリティ(「交換」する能力)、かなり低下したコスト、スピードおよび取扱、分析を行うのに必要な技量−レベルの低下、1〜多くのナノリアクターからのアッセイのスケーラビリティ、現行の液体−取扱ロボットでの自動化、多数分類能力、およびナノリアクター封じ込めおよび操作によって可能とされた従前には達成できなかったアッセイ構造を含む。
【0289】
静電荷がマイクロ流体デバイス中の小滴に運ぶ増大した機能は、マイクロ流体適用の広範なリストを可能とする潜在能力を有する。本明細書中に記載された小滴を操作するための技術のこのツールキットは、少数の分子を輸送し、反応させるための系のモジュール一体化を可能とすることができる。高スループットスクリーニング、コンビナトリアル化学、および生体分子のライブラリーにおける稀な生物学的機能についてのサーチは、全て、マイクロチャネル中の小滴の静電操作から利益を受ける。小滴−ベースのマイクロ流体技術を用いて、小滴形成およびソーティング工程の間に多数試薬−ベースのアッセイを含めるために、蛍光を超える増強された活性化機能を持つチップ−スケール蛍光活性化細胞ソーター(FACS)を開発することもできる。さらに、直径が数ミクロンであるフェムトリットル小滴を用いることによって、単一の生体分子さえ、有効な化学的反応性および単一−分子アッセイに十分な≫1nMの濃度を表す。
【0290】
小滴−ベースのマイクロ流体デバイスの潜在的使用の多くは、分子、細胞または粒子の種々の集団またはライブラリーをマイクロリアクターにカプセル化し、恐らくは、試薬の添加を通じて内容物についてのアッセイを行い、次いで、最後に、稀な事象についてのサーチにおける収集から特異的マイクロリアクターを選択的に除去するという要求によって駆動される。これは、合理的な時間内に最小のライブラリーを通じてソートするのに秒当たり10
3の処理速度を必要とし、他方、秒当たり約10
5の速度がより大きなライブラリーについて望ましい。これらの速度は荷電小滴パラダイムを用いて使用可能である。さらに、マイクロ流体デバイスは打ち抜かれるので、平行した流動ストリームを製造することができ、さらに、合計スループットを高める。合わせた、小滴の利点および高スループット操作は、適用の広い普及のための重要な機会を提供する。本明細書中において示され、かつ記載された発明は、小滴−ベースのマイクロ流体技術の適用を容易とするであろう。
【0291】
実施例8
本発明は、本発明によるマイクロ流体デバイスでの使用のための公知のアッセイの適合も提供する。例えば、蛍光偏光、分子ビーコン、およびタックマン(taqman)アッセイをSNP、DGE、および核酸同定での使用のために適合させることができる。高スループット様式において、個々の小滴を有機または無機染料のいずれか、または着色ビーズで標識することができる。区別される利点は、ビーズは必要とされず、全アッセイは溶液中で実行できることである。いくつかの例示的アッセイを記載する。
【0292】
本発明を用いて、予め規定されたCDRライブラリーにおいてCDRを同定することができる。1つの例において、scFvにおける6つのCDRの各々について100の予め規定されたCDRがあり得る(すなわち、VHにおいて3、およびVLにおいて3)。600の分子ビーコンを作り出すことができ、各ビーコンは異なる(例えば、q−ドット)液体標識(LiquidLabel)で乳化される。600の別々のエマルジョンをプールして、1つのエマルジョンライブラリー混合物(600の異なるタイプの小滴から構成され、述べたごとく、各小滴は特異的なCDRに特異的な分子ビーコン、およびその分子ビーコンを含有する小滴に特異的な液体標識を共に含有する)を作り出すことができる。ファージディスプレイまたは酵母2−ハイブリッドいずれかによって単離された抗原−相互作用抗体からのscFv Ab遺伝子は、5’および3’フランキングプライマーを用いるPCRによって増幅することができる。Ab遺伝子のPCR産物は、ライブラリー混合物との組合せに先立ってRDT機器で乳化することができ、あるいは別の例においては、それ自身のユニークな液体標識とオフ−ラインで合わせ、いくつかの(他の)増幅されたAb断片と混合し、それにより、数個のPCR断片が同時に分析されることを可能とすることができる。次いで、増幅された断片をライブラリー混合物と合わせ、検出器を通って流す。検出器は、液体標識を用いて小滴内の分子ビーコンを同定し、さらに、ハイブリダイゼーションが起こったか否かを、プローブ−含有クエンチャーに対するフルオロフォアの状態を調べることによって検出する。
【0293】
オリゴヌクレオチドアッセイを用いて、蛍光偏光(FP)有機−染料タイプのタグ、分子ビーコンまたはタックマンオリゴヌクレオチドを前記したアッセイでそれに対して用いることができる産物を生じさせることができる。他のアッセイも可能である。
【0294】
本発明は異なる遺伝子発現で利用することもできる。タックマンまたは分子ビーコンを本明細書中に記載された方法の修飾で用いることができる。
【0295】
TaqManシステムは、TaqDNAポリメラーゼのような5’→3’ヌクレアーゼ活性を持つポリメラーゼ、およびレポーター染料、およびプライマーの1つから下流の標的にアニールするクエンチャー染料で標識された短いオリゴヌクレオチドプローブの使用を必要とする(
図12左側パネル参照)。もしプローブが標的にハイブリダイズすれば、ポリメラーゼはハイブリダイズしたプローブを切断し、レポーターをクエンチャーから分離し、その結果、より高い蛍光シグナルがもたらされる。蛍光シグナルは、増幅の対数線形相の間に生じたアンプリコンの数に比例して増加する。プローブはプライマーの前にハイブリダイズし、従って、プライマーが伸長するにつれ、ポリメラーゼはプローブを切断し、レポーター染料を放出できることは重要である。そうでなければ、増幅は起こるが、モニターされず、なぜならばプローブは切断されないからである。
【0296】
分子ビーコンプローブは、5’および3’末端に結合したフルオロフォアおよび非蛍光クエンチャー染料を有するヘアピン−形状のオリゴヌクレオチド分子である(
図12、右側パネル参照)。一般に、DABCYLは非蛍光ユニバーサルクエンチャーであって、他の染料はFAM、TET、TAMRAまたはROXのようなレポーターフルオロフォアである。分子ビーコンは、それが標的部位にハイブリダイズしない場合には、ヘアピン立体配置である。それは、非常に安定なハイブリッドまたはステムを形成する相補的な配列を持つ2つの「アーム」を有するように設計される。クエンチャーおよびレポーターの密接な近接は、ビーコンがヘアピン立体配置にある場合、レポーターの蛍光を抑制する。アニーリング工程の間にビーコンが標的にハイブリダイズすれば、レポーター染料はクエンチャーから分離され、これはレポーターが蛍光を発するのを可能とする。ビーコンが標的配列にアニールするためには、それは、ヘアピンよりも安定でさえあるハイブリッドを形成して、ハイブリダイズした立体配置のままでいなければならない。従って、もしミスマッチした塩基対があれば、プローブは標的とハイブリッドを形成しにくいようである。
【0297】
分子ビーコンおよびタックマンに加えて、本発明のデバイスを用いて、本明細書中に記載されたように蛍光偏光を行うことができる。ほとんどのSNPアッセイは、ミニ−配列決定および遺伝子発現分析双方に適合させることができる。一連の蛍光偏光測定は、フルオレセイン、ビオチンに結合したフルオレセイン、およびビオチン+ストレプトアビジンに結合したフルオレセインを含有する小滴を見つつ、本発明によるマイクロ流体デバイス内部で行われてきた。蛍光シグナルを2つの直交偏光に分裂させ:1つのレーザーの励起偏光に対して平行であり、1つは偏光に対して垂直である。これらのシグナルを収集し、分析して、これらの結合状態の各々についての蛍光の偏光の変化を決定した。
【0298】
偏光は:
【0299】
【数5】
から計算され、ここで、V=レーザー励起偏光に対して平行に偏光した蛍光シグナルであり、H=垂直に偏光した蛍光シグナルである。mP(「ミリ−P」)は1000*Pである。蛍光が完全に偏光解消されると、偏光はゼロに等しく、蛍光分子が「凍結」すると(すなわち、励起および発光の間を回転しない大きな分子に結合すると)、500mPの最大を有する。
【0300】
蛍光ステーションを修飾して、レーザーのためのクリーンアップポラライザー、および収集のためのクリーンアップポラライザーを備えた偏光ビームスプリッターを含ませた。2つの得られた蛍光チャネルは直交偏光を持つ光を収集する(「垂直」はレーザー偏光に対して平行であり、「水平」はレーザー偏光に対して垂直である)。交互小滴を生成させるのに用いるデバイスはRDT Master #257から形成される(50um深チャネル)。表2はこれらのテストで用いる流体をリストする。
【0301】
【表2】
これらの実験の間、流体流動の速度はFC、BTFC、およびBTFC+SAについては200ul/hrであり、油(FC3283+10%「アボカド」)については600ul/hrであった。小滴は、いずれの水溶液を用いたかに応じて、直径が65〜75umの範囲であった。小滴の間の時間は、同様に、いずれの流体を用いるかに応じて、1300us〜2200usで変化した。蛍光偏光測定は、1つのノズルにBDTFCを注入し、他のノズルにBTFC+SAを注入することによって行った。一旦これらの測定が完了すれば、BTFC+SAをFCで置き換え、第二のシリーズのデータを収集した。
図13は、これらの実行双方から収集した典型的な蛍光データ、ならびに示された小滴の各々についての計算された偏光をプロットする。
図13(頂部パネル)は、BTFCおよびBTFC+SA、次いで、BTFCおよびFCを測定した場合の、テストステーションで収集された生の偏光蛍光シグナルを示す(データは正規化し、従って、P(フルオレセイン)=0.0である)。
図13(底部パネル)は、頂部プロットにおける各小滴から計算された偏光を示す。t=1.5秒における転移は数学的人工物であり、ここで、2つの条件で収集されたデータはソフトウェアにおいて連結させた(t=1.5後のデータは、t=1.5前に収集されたデータからほぼ30分後に収集した)。このデータにおいて、Vertical(垂直)はレーザー偏光に対して平行な蛍光であり、Horizontal(水平)は垂直な偏光である。このデータにおいて、「水平」偏光は、偏光がフルオレセインに対してゼロと等しくなるように正規化されている。偏光は、各偏光について小滴を横切る蛍光シグナルを積分し、次いで、方程式1に結果を当てはめることによって計算した。
図14は、このデータから作られたヒストグラムと共に、より多数の小滴について測定された偏光をプロットする。
図14(頂部パネル)は、
図3におけるよりも長い時間の間の各小滴から計算された偏光を示す。
図14(底部パネル)は、頂部図におけるデータから作成されたヒストグラムを示す。t=1.5後のデータは、t=1.5前に収集されたデータからほぼ30分後に収集した。
【0302】
偏光のヒストグラムに見られるように、偏光は3つの異なる平均値のすぐ回りに集中する。ゼロ−中心平均(σ=1.7)はフルオレセインに対応し、他方、18.4mP(σ=1.6)グルーピングはビオチナール化フルオレセインに対応し、96mP(σ=3.46)グルーピングは、ステプトアビジンに結合したビオチナール化フルオレセインに対応する。
【0303】
実施例9
フルオロ界面活性剤は、揮発性フッ素化溶媒中にてKrytox 157 FSL、FSM、またはFSHを水酸化アンモニウム水溶液と反応させることによって合成される。溶媒および残存する水およびアンモニアはロータリーエバポレーターで除去する。次いで、界面活性剤をフッ素化油(例えば、3MからのFC−3283)に溶解させることができ、これは、次いで、エマルジョンの連続相として用いることができる。典型的な濃度は油に溶解させた界面活性剤の2.5wt%である。
【0304】
マイクロ流体デバイスのチャネルもまたフッ素化表面生成物で被覆される。例えば、コーティングはCT−Solv180中のCytop CTL−809Mの0.1〜0.5 wt%溶液から適用される。この溶液を、プラスチックシリンジを介して、マイクロ流体デバイスのチャネルに注入する。次いで、デバイスを2時間で90℃まで加熱し、続いて、さらに2時間で200℃まで加熱する。フッ素化油中のこれらの界面活性剤は水性小滴を自然発生凝集から安定化させる。チャネル表面をフッ素化することによって、油相はチャネルを優先的に湿らせ、安定な生成およびデバイスを通っての小滴の移動を可能とする。チャネル壁の低い表面張力はチャネル閉塞粒状物の蓄積を最小化する。
【0305】
実施例10
乳化された化合物のライブラリーの質を制御して、小滴間を交差する化合物をライブラリーから排除することもできる。q−ドットでコードされた緩衝液−のみの小滴を乳化し、それを1〜1000の別々に乳化された化合物と共にインキュベートすることによって、ライブラリーの質制御を達成することができる。インキュベーションの後、ユニークにコードされたq−ドット小滴は化合物−含有小滴からソートされ、小滴の他の1〜1000タイプに乳化された化合物のいずれかの存在について(例えば、質量分析によって)分析される。小滴の間を交差する化合物を同定し、ライブラリーから排除する。
【0306】
実施例11
本発明により、ユーザーは、シグナル増幅用の手段に付着されたアフィニティ−試薬の結合に基づいて細胞をソートすることを可能とする。非限定的例として、酵素(例えば、alk/phos、β−gal、ホースラディッシュペルオキシダーゼ等)に融合した抗体を細胞のミックスに加え、インキュベートする。抗体は、例えば、癌マーカーのような特定の細胞表面マーカーに対するものとすることができる。細胞懸濁液を洗浄することができ、または洗浄しなくても良い(もし抗体が低濃度であれば、すなわち、小滴当たり1抗体未満であれば、抗体は良好な結合特性を有する)。
【0307】
それらの付着した抗体を有する細胞を、次いで、小滴に乳化し、適当な酵素−基質を加える。発蛍光性基質産物の存在は、基質を回転させる酵素によって1コピー〜多数のコピーへ増幅される。多数の酵素および多数の基質を用いて、多数のフルオロフォアでの多数の試料の同時または順次の分析を可能とすることができる。アフィニティ−試薬はタンパク質、核酸、または酵素(一緒になって活性となる場合のその部分)が結合することができる他の分子を共有結合により、または合理的に強い相互作用を通じて付着させることができる。
【0308】
実施例12
本発明のデバイスを用いて、個々の染色体または腫瘍細胞から個々のエクソンを配列決定することもできる。この方法を実行するための模式的ダイアグラムを
図19に掲げる。プライマー−結合ビーズ(例えば、Dynalストレプアビジンビーズ)と共に異なるエクソンに対する個々の特異的プライマー−対(例えば、表皮成長因子受容体(EGFR)エクソン−特異的プライマー対)を、各々、乳化し、次いで、プールして、ライブラリーエマルジョンを作成する(
図19においては、96エクソンプライマー対の組を説明目的で示す)。別途、染色体DNA溶液を、本明細書中に記載されたマイクロ流体デバイスでの乳化に際して、30〜50ミクロン小滴が、平均して、DNAのわずかに半分未満のゲノム濃度を含有するように水性緩衝液に希釈する。エクソン−特異的プライマーのプールされたエマルジョンライブラリーからの小滴を、本明細書中に記載されたマイクロ流体デバイスにて染色体DNAの希釈された溶液を含有する小滴と凝集させ、ビーズ−ベースのDNA増幅反応(例えば、PCR)で用いる。本明細書中に記載されたマイクロ流体デバイスは24時間以内に1×10
9のこれらの小滴を収集し、その結果、小滴のエマルジョンが得られ、そのいくつかは増幅されたエクソン−DNAが付着されたビーズを含有する。PCRの後、エマルジョンを遠心によって破壊し、ビーズを単離し、洗浄し、次いで、本明細書中に記載されたマイクロ流体デバイスにてDNA−含有ビーズを豊富化する。エクソン−および染色体−特異的DNA−含有ビーズをランダムにピコタイタープレート(454 Corp.)に入れ、(454 Corp.によって供され、およびその各々をここに引用してその全体を援用する、2001年3月21日に出願された米国出願第09/814,338号;2002年3月21日に出願された米国出願第10/104,280号;2004年1月28日に出願された米国出願第10/767,899号;2005年1月28日に出願された米国出願第11/045,678号;または2005年8月1日に出願された米国出願第11/195,254号のいずれかに記載された)Life Sciences DNA配列決定機器を用いて配列決定される。このプロセスのまとめは
図20によって供される。エマルジョンPCR増幅反応は、鋳型としての対照染色体DNA、およびエクソン−特異的プライマーの単一組を用いてオフ−チップにて、あるいはオン−チップにて(すなわち、本明細書中に記載された本発明のマイクロ流体デバイスにて)行うことができる。
【0309】
より具体的な例において、本発明のマイクロ流体デバイスおよび方法は、鋳型としての染色体DNA、およびエクソン−特異的プライマーの単一組を用いるオフ−ラインエマルジョンPCRでの個々のエクソン−、染色体−特異的配列決定方法を開発するのに用いられてきた。
【0310】
2つの小滴を一緒に合わせる(すなわち、凝集させる)能力を用いて、個々の染色体からのエクソンを増幅することができる。
【0311】
a.小滴内でのDNAのPCR増幅。454 Life Sciencesは、従前に示した、本発明によるマイクロ流体デバイスについて予測されるサイズ範囲の小滴におけるエマルジョン固相PCRを示している。本発明のマイクロ流体デバイスで小滴を作り出し、それを操作するのに用いられるペルフルオロカーボン油および界面活性剤でのPCRのエマルジョンを用いる成功したDNA増幅も示されている。いくつかのポリメラーゼ(注目すべきは、古細菌からのもの、例えば、Thermal Ace DNA Pol;Pfu Turbo Pol;Advantage 2−CG Taq Pol;およびAdvantage Taq Pol)は、本明細書中に記載されたデバイスで用いる緩衝液および油でよく働く。
【0312】
b.エクソン−特異的PCR反応の設定。実験の最初の組において、小滴−ベースのエクソン増幅のための頑強なバルク条件を開発する。EGFR遺伝子におけるエクソン内のプライマーを用いることができる。非小細胞肺癌(NSCLC)に罹った患者のほぼ10%は、標的化チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)化学療法養生法に対する応答性を示す。患者における応答は、EGFR遺伝子のATP裂け目における体細胞へテロ接合性突然変異に強く関連付けられている。
【0313】
このATP裂け目をコードするEGFRエクソンにおいて18塩基対(BP)欠失を含有する野生型および突然変異体染色体DNAを用いる。初期実験は、本明細書中に記載されたようにペルフルオロカーボン油および界面活性剤を用いてバルク(すなわち、オフ−機器)溶液中で行うことができる。一旦条件が限定される染色体DNAで確立されたならば、オン−機器にて処方された単分散小滴でのこれらの増幅実験を反復する。これらの小滴を集め、内に含有されたDNAを増幅する。増幅された小滴を含有するエマルジョンを破壊し、ゲル電気泳動によって水性相を分析する。
【0314】
c.固相増幅の測定。一旦エクソンPCR反応が機器で形成された小滴からの溶液中で働いているならば、これらの実験を、プライマーおよびビーズを共に含有する小滴で反復する。ビーズをエプソンプライマー対で乳化する。プライマーの1つを、標準オリゴヌクレオチドカップリング化学を用いてビーズに結合させる。双方のプライマーもまた溶液中にある(当業者であれば、固相増幅の目標は、そのいくつかがビーズに付着したオリゴヌクレオチドプライマーに駆動されるように、溶液中で十分な増幅された産物を生成することであることを認識するであろう)。
【0315】
様々なトライアルにおける染色体DNAの連続希釈を、次にプライマー−ビーズ溶液に加える。小滴当たり1ビーズの濃度で、小滴を調製する。DNA/プライマー/ビーズ溶液を穏やかに振とうして、本明細書のマイクロ流体デバイスで小滴が形成されるように、ビーズを懸濁液に保持する。小滴を機器から収集し、その中のDNAをPCRオフーラインで増幅する。
【0316】
d.単一−染色体PCR測定。2つの別々に標識されたcy3−およびcy5−含有オリゴヌクレオチドプローブのオン−ビーズハイブリダイゼーションを用いて、増幅された−DNA付着の有効性を測定する。cy3−標識プローブは18bp欠失領域内の配列に相補的に合成され、および第二のcy5−標識オリゴヌクレオチドプローブは(5’および3’両側に対する相補性を持つ)この欠失にわたるように合成される。プローブは、30℃において、それが交差ハイブリダイズしないように設計される。ビーズ上のcy3:cy5染料の定量および比率は、ビーズに存在するDNAの各特異的対立遺伝子の量の尺度である。
【0317】
対照として、ビーズに付着したオリゴヌクレオチドに相補的なフルオレセイン−標識オリゴヌクレオチドを用いる。この対照オリゴヌクレオチドを用いて、ビーズに付着することができるcy3−またはcy5−標識プローブの最大量を見積もる。ハイブリダイズしたビーズを洗浄して、未−ハイブリダイズプローブを除去し、個々のビーズに依然として付着しているフルオレセインの量をフルオレセイン−標準濃度と比較する。(蛍光偏光のような)付着したDNAを見積もるための他の方法および対照を、本発明によるマイクロ流体デバイスと組合せて用いることができる。
図21。染色体DNAを希釈し、バルクエマルジョンで確立された条件下で、本発明のマイクロ流体デバイス上のエクソン−プライマー含有小滴に加える。PCR増幅後に、ビーズを単離し、洗浄し、溶液中でcy3−、cy5−標識プローブにハイブリダイズさせる。ハイブリダイズしたビーズを洗浄して、未−ハイブリダイズドおよび非特異的に結合した標識ヌクレオチドを除去し、個々のビーズに依然として付着した染料の量を、蛍光顕微鏡を用いて決定する。%合成は、合成され得ると見積もられた最大から見積もる。454機器は、正確な読みのためにはビーズ当たりDNAの1×10
7コピーを必要とする。本明細書中に記載された方法を用い、ビーズ当たり1x10
7DNAを超える分子を付着させることができる。PCRは3つの異なる温度(融解、アニーリングおよび伸長温度)の周期的な反復よりなる典型的な温度−制御および酵素触媒生化学反応である。別法として、アニーリングおよび伸長温度を合わせ、かくして、さらに、温度サイクリングプロフィールの複雑性を低下させ、次いで、PCR反応のスピードおよび有効性を増大させることによって、2つの温度を適用することができる。PCRシステムの温度−感受性のため、些細な温度の差は、特に、エマルジョンPCRマイクロ流体システムにおいてDNA増幅の有効性に有意に影響し得る。
【0318】
従って、エマルジョンPCRマイクロ流体における酵素キネティックス、加熱および温度−測定方法に対する温度の効果は、マイクロ流体におけるPCRキネティックスの良好な理解を獲得するのに臨界的である。
【0319】
マイクロ流体デバイスで用いる油でよく働くいくつかの熱安定性ポリメラーゼが本明細書中で同定されている。適当なセンサーおよび加熱エレメント(後に記載)を備えた本発明のマイクロ流体デバイスに付着されたシリンジポンプを用いて、PCR産物をオフ−機器にて生じさせるポリメラーゼの能力をモデル化することができる。
【0320】
PCRマイクロ流体についての加熱方法の選択は、より早い温度ランピング速度を達成するのに重要である。1つの実施形態において、接触−加熱方法(例えば、熱い空気の使用)を用いることができる。接触−加熱方法は電気熱変換を利用して、PCR溶液を加熱し、そこでは、加熱エレメントを埋め込んだ熱構成要素をPCR増幅の成分と直接的に接触させる。今日までに、薄層ヒーターと共に、金属加熱ブロックおよびペルチエ効果ベースの熱−電気セラミック加熱ブロックがPCRの温度制御で広く適用されている。
【0321】
1つの実施形態において、Mincoからの2 Kaptan Thermofoilヒーターおよび2−工程PCRサイクリング方法を用いることができる。Thermofoilヒーターは、フレキシブルな絶縁層の間にラミネートされた、エッチングされたホイル抵抗性エレメントよりなる薄いフレキシブルな加熱エレメントである。Thermofoilヒーターは、加熱すべき部分の表面に適用される。それらの薄いプロフィールはヒーターおよびヒートシンクの間に密接な加熱カップリングを与える。Thermofoilヒーターの平坦なホイルエレメントは、丸いワイヤよりも効果的にかつ長い表面領域にわたって熱を移動させる。従って、Thermofoilヒーターは、抵抗性エレメントおよびヒートシンクの間により小さな熱勾配を生じさせる。
【0322】
PCRマイクロ流体のための温度測定の方法。エマルジョンPCRマイクロ流体においては、温度測定のための方法を選択して、PCRサイクリングの間に温度を正確に制御するのが臨界的である。温度測定方法は、通常、2つのカテゴリー、接触および非接触温度測定に分けられる。前者は薄層タイプの温度検知および非薄層タイプ温度検知を含む。
【0323】
1つの実施形態において、温度測定は、Minco Non−Invasive Sensors Design Kit(非侵入性センサーデザインキット)を用いることによって行うことができる。このキットは、我々がチップにドリルで穴を開け、またはタップをたてる必要性なくして正確に温度を検知するのを可能とする熱−リボン、熱−タブ、およびボルト−オン抵抗温度検出器を備えている。検出器は+/−0.25℃の精度である。もう1つの実施形態において、温度依存性蛍光染料(例えば、ローダミンBまたはローダミン3Bのような薄いフルオロフォア)を用いる温度測定は、マイクロ流体構造において温度を測定するための第二の技術を構成することができる。
【0324】
先に議論した方法は、96の異なるエクソンよりなる第二のプライマー組で反復することができる。プライマーを設計し、MJ Research PCR機器にて先見的にテストして、オン−チップで用いるべき2−工程PCR条件に対する適当性を確立することができる。
【0325】
増幅すべき全てのエクソンは、まず、伝統的なサンガー方法によって配列決定して、塩基−ライン読みを確立する。可能であれば、配列決定すべきDNA内の既知の多形を持つエクソン(すなわち、個体はエクソン内の部位において多形であろう)を選択する。我々は各多形について50:50を予測し、この分析により我々は、オン−チップ増幅反応の間における配列決定での偏りについての情報を集めることが可能となるであろう。付着のための対照は前記したのと同一である。
【0326】
プライマー組のプールを希釈されたゲノムDNA溶液でテストし、それにより、ゲノムDNAはいくつかの濃度におけるものである。
【0327】
一旦ビーズに付着されたDNAの理想的な量および質が達成されたならば、454機器を用いて、ビーズを配列決定する。DNA染色剤(例えば、Syberグリーン)を用い、あるいは蛍光オリゴヌクレオチドプローブへのハイブリダイゼーションによって、DNA−含有ビーズを本発明によるマイクロ流体デバイスについて豊富化する。適当な対照を用いて、ビーズ当たりのエクソンのコピーの数を見積もる。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
ナノリアクターの作成方法であって、
a)相互に流体連絡するように基材上に一体的に配置されたマイクロ流体モジュールを担持する複数の電気的にアドレス可能なチャネルを含む微細加工基材を供し、それにより、少なくとも1つの連続相流体を運ぶように適合された少なくとも1つの主要チャネルを形成し;
b)該主要チャネル内を流動する該連続相流体中に1以上の小滴が形成されるように、第一の分散相流体を第一の入口チャネルを通って該主要チャネルに流動させ;
c)該主要チャネル内を流動する該連続相流体中に1以上の小滴が形成されるように、第二の分散相流体を第二の入口チャネルを通って該主要チャネルに流動させ;次いで、
d)該小滴が該微細加工基材の凝集モジュールを通過するときに、工程(b)で形成された少なくとも1つの小滴を、工程(c)で形成された少なくとも1つの小滴と凝集させ、それにより、ナノリアクターを得る;
ことを含む、方法。
(項目2)
上記凝集工程が電場によって達成される、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記凝集工程が受動的である、項目1に記載の方法。
(項目4)
上記第一および第二の分散相流体が生物学的物質または化学的物質を含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
上記生物学的物質または化学的物質が、組織、細胞、粒子、タンパク質、抗体、アミノ酸、ヌクレオチド、小分子、および医薬よりなる群から選択されるメンバーである、項目4に記載の方法。
(項目6)
さらに、e)遅延モジュール内でナノリアクターをインキュベートし、次いで、f)検出モジュール内で所定の特徴について上記ナノリアクターに問い合わせることを含む、項目4に記載の方法。
(項目7)
上記生物学的物質または化学的物質が標識される、項目4に記載の方法。
(項目8)
上記標識がタンパク質、DNAタグ、染料、または量子ドットである、項目7に記載の方法。
(項目9)
上記第一および第二の分散相流体が2つの水性ストリーム、1つの水性ストリームと1つのエマルジョンストリーム、および2つのエマルジョンストリームよりなる群から選択されるメンバーである、項目1に記載の方法。
(項目10)
2以上の反応性サブ構造から化合物を合成する方法であって、
a)反応性サブ構造を、該サブ構造に対してユニークな標識で標識し;
b)マイクロ流体デバイス上で該標識された反応性サブ構造の水性溶液を乳化して、小滴を形成し;次いで、
c)該マイクロ流体デバイス上で該小滴をランダムに合わせて、化合物を形成する;
ことを含む、方法。
(項目11)
工程(a)および(b)が、予め形成された標識エマルジョンを導入することによって交互に行われる、項目10に記載の方法。
(項目12)
さらに:
d)該化合物によって呈される望ましい化学的特性または生物学的特性に基づいて工程(c)で形成された化合物をスクリーニングし;次いで、
e)標識を解読することによって該化合物の構造を同定する;
ことを含む、項目10に記載の方法。
(項目13)
マイクロ流体デバイス上でライブラリーからの単一化合物を同定する方法であって、
a)化合物の水性溶液およびユニークな液体標識の水性溶液を乳化することによって化合物のライブラリーを標識し、それにより、各化合物はユニークな液体標識で標識され;
b)工程(a)から得られた標識されたエマルジョンをプールし;
c)特定の細胞または酵素を含有するエマルジョンと、該標識されたエマルジョンを凝集させ、それにより、ナノリアクターを形成し;
d)該ナノリアクターの内容物の間の望ましい反応について該ナノリアクターをスクリーニングし;次いで、
e)該液体標識を解読し、それにより、化合物のライブラリーから単一の化合物を同定する;
ことを含む、方法。
(項目14)
さらに、上記スクリーニング工程を行うに先立って、上記ナノリアクターの内容物をインキュベートすることを含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
上記液体標識が量子ドットまたは染料である、項目13に記載の方法。
(項目16)
上記液体標識が有機物または無機物である、項目13に記載の方法。
(項目17)
上記ライブラリーが組織、細胞、粒子、タンパク質、抗体、アミノ酸、ヌクレオチド、小分子、および医薬よりなる群のメンバーから選択された生物学的物質または化学的物質を含む、項目13に記載の方法。
(項目18)
工程(d)が蛍光偏光によって行われる、項目13に記載の方法。
(項目19)
乳化された化合物のライブラリーの質を制御する方法であって、
a)乳化された化合物のライブラリーを供し;
b)不活性なフルオロカーボン媒体中にq−ドットでコードされた水性緩衝液を乳化させ、それにより小滴を形成し;
c)該乳化された化合物のライブラリーと共に該q−ドットでコードされた小滴をインキュベートし;
d)該ライブラリーから該q−ドットでコードされた小滴をソートし;
e)該ライブラリーで乳化された化合物のいずれかの存在について該q−ドットでコードされた小滴を分析し;次いで、
f)該乳化された化合物のライブラリーから工程(e)で同定された化合物を排除することを含み、
ここで、工程(a)〜(f)の1以上がマイクロ流体デバイス上で行われる、方法。
(項目20)
上記分析工程が質量分析によって行われる、項目19に記載の方法。
(項目21)
細胞をソートする方法であって、
a)アフィニティ−試薬を酵素に融合させ;
b)工程(a)の融合産物を細胞集団と混合し;
c)該融合産物に付着した細胞を単離し;
d)工程(c)の細胞を不活性なフルオロカーボン媒体中に乳化し;
e)工程(a)の酵素に対応する基質を含むエマルジョンと工程(d)の細胞エマルジョンを凝集させ、それにより、ナノリアクターを形成し;次いで、
f)該ナノリアクターの内容物の間で望ましい反応につき該ナノリアクターをスクリーニングすることを含み、
ここで、(a)〜(f)の1以上の工程がマイクロ流体デバイス上で行われる、方法。(項目22)
上記アフィニティ−試薬はタンパク質、核酸、抗体、または酵素が結合することができる他の分子である、項目21に記載の方法。
(項目23)
上記抗体が細胞表面のマーカーへの結合に対して特異的である、項目22に記載の方法。(項目24)
上記細胞表面マーカーが癌マーカーである、項目23に記載の方法。
(項目25)
上記酵素がalk/phos、β−ガラクトシダーゼ、またはホースラディッシュペルオキシダーゼである、項目21に記載の方法。
(項目26)
上記抗体が多数の酵素に融合される、項目21に記載の方法。
(項目27)
複数の基質が乳化され、工程(d)で形成された細胞エマルジョンと凝集される、項目21に記載の方法。
(項目28)
個々の染色体から個々のエクソンを配列決定する方法であって、
a)エクソンに対する特異的プライマー−対を、該プライマー−対に結合することができるビーズで乳化させ;
b)工程(a)のエマルジョンをプールして、ライブラリーエマルジョンを作成し;
c)別の染色体DNAエマルジョンを供し;
d)工程(b)のライブラリーエマルジョンを、工程(c)の染色体エマルジョンと凝集させ、それにより、ナノリアクターを形成し;
e)該ナノリアクター中でDNAを増幅し;
f)該ビーズを単離し;
g)DNAを含有するビーズについてスクリーニングし;次いで、
h)DNAを含有するビーズを配列決定することを含み、
ここで、(a)〜(h)の1以上の工程がマイクロ流体デバイス上で行われる、方法。(項目29)
項目28に記載の方法を行うためのキットであって、
a)エクソンに対して特異的なプライマー−対、および該プライマー−対に結合することができるビーズのエマルジョンライブラリー;ならびに
b)染色体DNAエマルジョン;
を含む、キット。