特許第6723982号(P6723982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6723982インターロイキン−2/インターロイキン−2受容体アルファ融合タンパク質および使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6723982
(24)【登録日】2020年6月26日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】インターロイキン−2/インターロイキン−2受容体アルファ融合タンパク質および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20200706BHJP
   C07K 14/715 20060101ALI20200706BHJP
   C07K 14/55 20060101ALI20200706BHJP
   C12N 15/26 20060101ALI20200706BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20200706BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20200706BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20200706BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20200706BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20200706BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20200706BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20200706BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20200706BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20200706BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20200706BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20200706BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   C07K19/00
   C07K14/715
   C07K14/55
   C12N15/26ZNA
   C12N5/10
   C12N15/63 Z
   C12P21/02 K
   C12P21/02 C
   A61K38/20
   A61K47/65
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   A61P1/04
   A61P37/02
   A61P17/06
   A61P17/14
   A61P9/00
【請求項の数】26
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2017-506395(P2017-506395)
(86)(22)【出願日】2015年8月5日
(65)【公表番号】特表2017-523789(P2017-523789A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】US2015043792
(87)【国際公開番号】WO2016022671
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2018年8月3日
(31)【優先権主張番号】62/033,726
(32)【優先日】2014年8月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510250892
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ マイアミ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF MIAMI
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マレック
【審査官】 田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/020766(WO,A1)
【文献】 国際公開第2003/029475(WO,A1)
【文献】 特表平10−511846(JP,A)
【文献】 特表2008−545397(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0089516(US,A1)
【文献】 Nature Med., 2007年,Vol.13, No.9,p.1108-1113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
A61K 38/20
A61K 47/65
A61P 1/04
A61P 9/00
A61P 17/06
A61P 17/14
A61P 19/02
A61P 29/00
A61P 37/02
C12N 5/10
C12N 15/00−15/90
C12P 21/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)融合タンパク質のN末端で第一のポリペプチド、ここで前記第一のポリペプチドがインターロイキン−2(IL−2)を含む;および
(b)融合タンパク質のC末端で第二のポリペプチド、ここでリンカーにより第一のポリペプチドにインフレームで融合された第二のポリペプチドを含む、
融合タンパク質であって、
リンカーが配列番号13に記載の配列であり、かつ第二のポリペプチドが、IL−2に結合できるインターロイキン−2受容体アルファ(IL−2Rα)の細胞外ドメインを含み、
ここで、融合タンパク質がIL−2活性を有する、融合タンパク質。
【請求項2】
融合タンパク質が、天然型IL−2と比較した場合、増加したIL−2の効能を有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
天然型IL−2と比較した場合、融合タンパク質がインビボでIL−2Rベアリングリンパ球(bearing lymphocyte)の増加した持続性のIL−2刺激を有する、請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
(a)IL−2を含む第一のポリペプチドが、配列番号2と少なくとも0%の配列同一性を有し;かつ/または、
(b)IL−2Rαの細胞外ドメインを含む第二のポリペプチドが、配列番号7と少なくとも0%の配列同一性を有する、
請求項1−3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
(a)IL−2を含む第一のポリペプチドが、配列番号2と少なくとも9%の配列同一性を有し;かつ/または、
(b)IL−2Rαの細胞外ドメインを含む第二のポリペプチドが、配列番号7と少なくとも9%の配列同一性を有する、
請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
融合タンパク質が、
(a)配列番号26、27、36、37、57、または59のいずれか1つに記載のアミノ酸配列;または、
(b)配列番号26、27、36、37、57、または59のいずれか1つと少なくとも90%、または95%を有する配列を含む、
請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
配列番号26、27、36、37、57、または59のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
配列番号26のアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
融合タンパク質が、
(a)配列番号62に記載のアミノ酸配列;または
(b)配列番号62と少なくとも90%、または95%の配列同一性を有する配列を含む、
請求項1−8のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
配列番号62のアミノ酸配列を含む、請求項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
請求項1−10のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11に記載のポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
【請求項13】
宿主細胞が、CHO細胞またはCOS細胞を含む、請求項12に記載の宿主細胞。
【請求項14】
宿主細胞に、請求項1−10のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを導入し、かつ宿主細胞中で融合タンパク質を発現することを含む、請求項1−10のいずれか一項に記載の融合タンパク質を作製するための方法。
【請求項15】
融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、宿主細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
免疫応答を減少させることにおける、それを必要とする対象における、使用のための請求項1−10のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
対象が、自己免疫性疾患を有する、請求項16に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
自己免疫性疾患が、1型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、セリアック病、全身性エリテマトーデス、若年性特発性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎または全身性硬化症、移植片対宿主病、乾癬、円形脱毛症、またはHCV誘発性血管炎を含む、請求項17に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
治療有効量の融合タンパク質が、対象当たり10から10IUのIL−2活性または対象当たり10±100倍のIL−2活性を含む、請求項1618のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
ワクチンの免疫原性を増強することにおける、それを必要とする対象における、使用のための請求項1−10のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
ワクチンに対する抑制された免疫応答を克服することにおける、それを必要とする対象における、使用のための請求項1−10のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項22】
融合タンパク質およびワクチンが同時に投与される、請求項20または21に記載の融合タンパク質。
【請求項23】
融合タンパク質およびワクチンが任意の順序で連続的に投与される、請求項20または21に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
ワクチンが癌ワクチンである、請求項2023のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項25】
治療有効量の融合タンパク質が、対象当たり少なくとも10から10IUのIL−2活性または対象当たり少なくとも10±100のIL−2活性を含む、請求項2024のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項26】
対象が、ヒトである、請求項16−25のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される主題は、一般に、インターロイキン−2/インターロイキン−2受容体アルファ融合タンパク質を利用する免疫応答を調節するための方法および組成物に関する。
【0002】
EFS−WEBを介してテキストファイルとして提出された配列表の参照
配列表の正式なコピーは、米国標準コード情報交換(ASCII)に準拠して、ファイル名464173seqlist.txt、作成日2015年7月30日、およびサイズ139KBで、EFS−Webを介してテキストファイルとして明細書と同時提出された。EFS−Webを介して提出された配列表は、明細書の一部であり、これによって出典明示により本明細書中にその全体が組み込まれる。
【0003】
連邦政府補助金の声明
本発明は、国立衛生研究所(NIH)、国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)により授与された認可番号R01 DK093866による政府の支援によりなされた。政府は本発明における一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
インターロイキン−2(IL−2)は、癌およびHIV/AID患者における免疫応答を高めるための試みにおいて使用されてきた生物製剤である。より最近では、より低用量のIL−2は、自己組織の自己免疫様攻撃に関連する望ましくない免疫応答を抑制するために選択的に耐性を高めるために使用されている。重要なことに、これらの低用量のIL−2は、自己反応性T細胞の増強または再活性化のいかなる兆候も示さなかった。それにもかかわらず、IL−2は、その有効性を限定するインビボでの非常に短い半減期、および高用量での毒性を含み、治療剤として重要な欠点を有する。これらの理由に関して、改善された薬物動態および使用のための応答の持続性を有する、新規のIL−2生物製剤が必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
免疫系を調節するために利用され得る、多様な方法および組成物が提供される。組成物は、(a)インターロイキン−2(IL−2)もしくは機能的なバリアントまたはその断片を含む、第一のポリペプチド;および(b)第一のポリペプチドにインフレームで融合された第二のポリペプチドを含む、融合タンパク質を含み、ここで、第二のポリペプチドは、インターロイキン−2受容体アルファ(IL−2Rα)の細胞外ドメインもしくは機能的なバリアントまたはその断片を含み、融合タンパク質は、IL−2活性を有する。
【0006】
免疫応答の減少を必要とする対象に、本明細書中に開示される治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質を投与することを含む、対象における免疫応答を減少させるための多様な方法が提供される。
【0007】
免疫応答の増加を必要とする対象に、本明細書中に開示される治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質を投与することを含む、対象における免疫応答を増加させるための方法がさらに提供される。T制御細胞活性を増加させるための方法がさらに提供される。
【0008】
対象におけるワクチンの免疫原性を増強することまたはワクチンに対する抑制された免疫応答を克服することを含む、さらなる方法は、以下:(a)対象に、本明細書中に開示される治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質を投与すること;および、(b)対象にワクチンを投与すること、を含み、ここで、融合タンパク質は、ワクチンの免疫原性を増強する、またはワクチンに対する抑制された免疫応答を克服する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質の模式図を提供し、ここで、L=リーダーペプチド、LK=リンカー領域、G=グリシン、H=ヒスチジン、およびT=終止コドンである。
図2図2Aおよび図2Bは、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質の非限定例の推定されるタンパク質配列を提供する。図2Aは、マウスIL−2/IL−2Rα融合タンパク質の非限定例の推定されるタンパク質配列を提供する。マウスIL−2およびIL−2Rαの配列は、それぞれ、融合タンパク質の上および下に示される。IL−2として表される配列は、配列番号3に記載される;IL−2−(G4S)4−IL−2Rαとして表される配列は、配列番号54に記載される;IL−2−(G4S)5−IL−2Rαとして表される配列は、配列番号55に記載される;IL−2−(G3S)4−IL−2Rαとして表される配列は、配列番号56に記載される;IL−2−(G3S)3−IL−2Rαとして表される配列は、配列番号57に記載される;およびIL−2Rαの細胞外ドメインは、配列番号10に記載される。図2Bは、ヒトIL−2/IL−2Rα融合タンパク質の非限定例の推定されるタンパク質配列を提供する。ヒトIL−2およびIL−2Rαの配列は、それぞれ、融合タンパク質の上および下に示される。IL−2として表される配列は、配列番号1に記載される;IL−2−(G3S)2−IL−2Rαとして表される配列は、配列番号58に記載される;IL−2−(G3S)3−IL−2Rαとして表される配列は、配列番号59に記載される;IL−2−(G3S)4−IL−2Rαとして表される配列は、配列番号60に記載される;IL−2−(G4S)4−IL−2Rαとして表される配列は、配列番号61に記載される;およびIL−2Rαの細胞外ドメインは、配列番号7に記載される。
図3図3は、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質の生物活性を示す。COS−7細胞は、示されたリンカーを有するIL−2/IL−2Rα融合cDNAを遺伝子導入されている。これらの細胞からの上清は、IL−2活性を評価するために、抗CD3活性化T細胞ブラスト(blast)と共に培養された。(A)示された融合タンパク質の希釈後のTブラストによる増殖応答。(B)示された融合タンパク質を含有する1:2希釈の培養上清により刺激された増殖に対する抗IL−2の影響。
図4図4は、精製されたIL−2/IL−2Rα融合タンパク質の活性を示す。遺伝子導入されたCHO細胞の上清を使用して6x−Hisタグに対するニッケル−ベースのアフィニティークロマトグラフィーによりIL−2/(GS)/IL−2RαおよびIL−2/(GlySer)/IL−2Rαを精製した。(A)示された精製された融合タンパク質への抗CD3 T細胞ブラストの増殖により測定されたIL−2生物活性。(B)PC61と7D4の非リガンド結合部位、抗CD3活性化T細胞ブラストに向けられる抗IL−2Rαモノクローナル抗体の結合を阻害する、それぞれの精製された融合タンパク質の効果。
図5図5は、IL−2RαのIL−2結合部位に向けられたモノクローナル抗IL−2Rα抗体は、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質に結合するできないことを示す。示されたように、可変リンカーを有する精製された融合タンパク質を、IL−2Rαのリガンド結合部位に向けられた3C7抗IL−2Rαモノクローナル抗体またはIL−2Rαの非リガンド結合部位に向けられた7D4モノクローナル抗体と最初にインキュベートした。次いで、細胞表面IL−2Rαに結合する3C7または7D4の能力をIL−2Rα遺伝子導入EL4細胞を使用して評価した。
図6図6は、精製されたIL−2/IL−2Rαの生化学的な特性を示す。(A)精製されたIL−2/IL−2Rαを、還元および非還元条件下でSDS−PAGEに供した;IL−2/IL−2Rαを融合タンパク質の6x−Hisタグに対する抗体を用いて探索することによるウェスタンブロット解析により可視化した。(B)示された量の精製されたIL−2/(GlySer)/IL−2Rαを、還元条件下でSDS−PAGE、続いてクマシーブルー染色に供した。
図7図7は、インビボのIL−2依存性シグナル伝達に対するIL−2/IL−2Rα融合タンパク質の効果を示す。C57BL/6マウスがIL−2/(GS)/IL−2Rαの単回腹腔内投与(4000ユニットのIL−2活性)を受け、示された脾臓細胞集団におけるpSTAT5レベルを即時に評価した。pSTAT5レベルをIL−2/IL−2Rα融合タンパク質の注射の0.5時間後に決定した。CD4T細胞に関して、細胞はFoxp3Treg細胞を除外するためゲートされた。
図8図8は、インビボでのTreg細胞に対するIL−2/IL−2Rα融合タンパク質の効果を示す。NODマウスに、IL−2/(GS)/IL−2Rαに関連する示された量のIL−2活性で、3回(1、3、5日)腹腔内注射した。Tregに対する効果を、最後の注射24時間後の脾臓、膵臓リンパ節(PLN)および膵臓に関して評価した。CD4T細胞におけるTregの割合;コントロール治療マウスからのTregによるCD25発現への標準化後のTregによるCD25発現に関する平均蛍光強度(MFI);増殖マーカーKi67の発現により評価されるTregの増殖状態;およびIL−2依存性の最終分化した亜集団を示す、Klrg1を発現するTregの%が評価される。
図9図9は、インビボでTreg細胞中の変化を誘導する、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質と組換え型IL−2の比較を示す。C57BL/6マウスに、IL−2/(GS)/IL−2Rα(2000ユニット)、組換えヒトIL−2(25,000ユニット)または抗IL−2(Jes−6.1;5μg)とマウスIL−2(10,000ユニット)の予め形成された複合体(IL2/IC)を3回(1、3、5日)腹腔内注射した。最後の注射の24、72時間および1週間後に、Tregに対する効果を脾臓に関して評価した。Tregを図8に記載されるように評価した。
図10図10は、低用量のIL−2の制限された適用が、NODマウスにおける糖尿病を遅延させることを示す。NODマウス(8マウス/集団)に、(A)のスケジュールに従ってIL−2/IL−2Rα、可溶性IL−2Rα、またはPBSを投与した。尿および血中のグルコースレベルを、マウスが40週齢に達するまでモニターした。マウスは、グルコースレベル>250mg/dlの2連続の読み取り後に糖尿病と考えられた。
図11図11は、高用量のIL−2/IL−2RαがCD8T細胞メモリーの発生を増強することを示す。C57BL/6マウスに類遺伝子性のクラスI制限オボアルブミン(OVA)−特異的OT−I T細胞受容体遺伝子導入T細胞を投与した。これらのマウスをIL−2/(GS)/IL−2Rα融合タンパク質、15,000ユニットのIL−2を含有するIL2/IC、または組換え型IL−2(25,000ユニット)の単回投与で免疫し、治療した。示された時間に、末梢血における総CD8T細胞区画内のOT−I T細胞の相対的な割合を評価した。
図12図12は、高用量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質により支持される持続性のOT−I免疫メモリー細胞のタイプ:(A)エフェクターメモリー(EM)およびセントラルメモリー(CM)細胞を同定するゲーティング戦略。(B)IL−2/IL−2Rα(12,000ユニット)も投与されたマウスの免疫化後28および202日のOT−I免疫メモリー細胞の分布を示す。
図13図13は、示される可変長のグリシン/セリンリンカーを含有するヒトIL−2/IL−2Rα融合タンパク質の特徴を示す。(A)CTLL生物検定を使用する精製されたヒトIL−2//IL−2RαのIL−2−生物活性。(B)還元条件下でのSDS−PAGE後のヒトIL−2/IL−2Rα融合タンパク質のウェスタンブロット解析。
図14図14は、ヒトIL−2/IL−2Rα融合タンパク質がモノクローナル抗IL−2Rα抗体に結合することを示す。示されたリンカーを有する精製された融合タンパク質は、ヒトIL−2Rαのリガンド結合領域に向けられるBC96抗IL−2Rαモノクローナル抗体またはヒトIL−2Rαの非リガンド結合領域に向けられるM−A257モノクローナル抗体と最初にインキュベートされる。次いで、細胞表面IL−2Rαに結合するBC96またはM−A257の能力をIL−2Rα−遺伝子導入CHO細胞を使用して評価した。
図15図15は、IL−2が、ヒトIL−2/IL−2Rα融合タンパク質との関連でIL−2RαのIL−2結合部位と相互作用することを示す。可変グリシン/セリンリンカーを有する示された融合タンパク質のIL−2−生物活性を、CTLL細胞を使用して評価した。Mutは、IL−2RαがArg35→Thr、Arg36→Ser変異を含有する融合タンパク質を指す。ウェスタンブロット解析により、全ての融合タンパク質が同量であることを確認した(未掲載)。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、発明の実施形態の全てが示されるわけではないいくつかの添付の図面を参照して、より詳細に以下に記載されるだろう。実際に、これらの発明は多くの様々な形態で具体化されてもよく、本明細書中に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない;むしろ、これらの実施形態は、適用される法的要件を満たすよう提供される。同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0011】
本明細書中に記載された発明の多くの改変および他の実施形態が、これらの発明が関係する分野の当業者に思い浮かび、前述の記載および関連する図に示された教示の利益を有するだろう。従って、本発明は開示された特定の実施形態に限定されず、かつ改変および他の実施形態は添付の請求の範囲内に含まれていることを意図すると理解される。特定の用語が本明細書中で利用されるが、それらは包括的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定の目的ではない。
【0012】
I.概要
現在の技術は、弱い薬理学的な特性、特にその有用性を制限する短い半減期を有する組換えインターロイキン−2(IL−2)の使用に依存している。インターロイキン−2/インターロイキン−2受容体アルファ(IL−2/IL−2Rα)融合タンパク質は、組換え型IL−2と他のIL−2融合タンパク質からそれらを分離する固有の特性を有することが、本明細書中で提供される。第一に、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質のサイズはインビボでその半減期を増加させるだろう。第二に、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質の関連における、IL−2とIL−2Rα(IL−2Rの1つのサブユニット)との間の弱い相互作用は、IL−2の有効性を延長するもう一つの機構を提供する。作用の特定の機構に限定されないが、IL−2活性の延長された有効性が、IL−2部分と、IL−2/IL−2Rα融合物のIL−2RαおよびIL−2Rを発現する細胞の間の競合的な相互作用を介して生じてもよい。
【0013】
II.インターロイキン−2/インターロイキン−2受容体アルファ融合タンパク質および同一のものをコードするポリヌクレオチド
インターロイキン−2受容体アルファ(IL−2Rα)ポリペプチドもしくは機能的なバリアントまたはその断片の細胞外ドメインを含む、または、インターロイキン−2受容体アルファ(IL−2Rα)ポリペプチドもしくは機能的なバリアントまたはその断片の細胞外ドメインからなる第二のポリペプチドにインフレームで融合された、インターロイキン−2(IL−2)もしくは機能的なバリアントまたはその断片を含む第一のポリペプチドを含む、融合タンパク質が提供される。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「融合タンパク質」は、少なくとも2つの異種のポリペプチドのインフレームの遺伝子の連結を指す。転写/翻訳に際して、単一のタンパク質が作製される。このように、複数のタンパク質またはその断片は、単一のポリペプチドに組み込まれ得る。「作動可能に連結された」は、2以上の要素間の機能的な連結を意味することを意図する。例えば、2つのポリペプチド間の作動可能な連結は、両方のポリペプチドをインフレームで共に融合させて単一のポリペプチド融合タンパク質を生産する。特定の態様では、融合タンパク質は、下記にさらに詳細に記載されるように、リンカー配列を含むことができる第三のポリペプチドをさらに含む。
【0015】
IL−2/IL−2Rα融合タンパク質もしくは活性バリアントまたはそれらの断片は、1つ以上の以下の特性/活性を有することができる:(1)低用量のIL−2−ベースの治療において制御性T細胞(Treg)の活性を増加させ、および/または免疫寛容を増加させること;(2)より高用量の治療における免疫応答およびメモリーを増加させること;(3)組換え型IL−2と比較した場合、IL−2の有効性を増加させること;および/または(4)インビボでのIL−2Rベアリングリンパ球(bearing lymphocyte)の持続性IL−2刺激を増加させること。かかる活性およびアッセイの方法が、本明細書の他の所でさらに詳細に開示される。例えば、本明細書中で提供される実施例1を参照されたい。
【0016】
1つの非限定的な実施形態では、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質もしくは活性バリアントまたはそれらの断片に起因するTregの増加した活性は、例えば、(1)CD4 T細胞区画におけるTregの提示および数の増加;(2)IL−2依存性CD25の増加;(3)増殖マーカーKi67の発現により評価される増殖の増加;ならびに(4)IL−2依存性の最終分化したKIrg1Tregサブセットの分画の増加を含む種々の方法でアッセイされ得る。Tregに対するかかる効果は、例えば、脾臓および炎症膵臓において見ることができる。
【0017】
1つの非限定的な実施形態では、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質もしくは活性バリアントまたはそれらの断片は、免疫寛容原性および免疫抑制性TregおよびTエフェクター/メモリー応答の増加を介する免疫を増加させ、かつ、さらなる実施形態では、それは(1)天然型または組換え型IL−2と比較して、より低い有効レベルのIL−2活性でかかる応答を送達することにより、改善された薬物動態を示し;(2)天然型または組換え型IL−2よりも持続的な生物学的反応を呈し;かつ/または(3)Tエフェクター/免疫メモリー細胞よりも低レベルの用量で応答するTregの階層を保持する。
【0018】
具体的な実施形態では、融合タンパク質は、天然型または組換え型IL−2よりも改善された活性を有する。例えば、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質の効果は、天然型もしくは組換え型IL−2と比較して約2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍以上の低レベルのIL−2活性で、免疫寛容原性Tregを増加させることができる。他の実施形態では、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、Tregの持続的な増大および関連する特性を誘導する際に天然型または組換え型IL−2よりも有効である。
【0019】
種々の生物由来の多様なIL−2およびIL−2Rα断片ならびにバリアントが、本明細書中で提供されるIL−2/IL−2Rα細胞外ドメイン融合タンパク質を生成するために使用され得る。かかる成分は、本明細書の他の所でさらに詳細に説明される。非限定的な未処理のIL−2/IL−2Rα細胞外ドメイン融合タンパク質の例は、配列番号17、19、21、23、25、27、36、38、44、46、54、55、56、57、58、59、60、および1に記載され、IL−2/IL−Rα細胞外ドメイン融合タンパク質の成熟型の非限定例は、配列番号16、18、20、22、24、26、37、39、43、45、62、および64に記載される。かかる融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの非限定例は、配列番号29、30、31、32、33、34、42、47、48、49、63、および65に記載される。
【0020】
「分泌シグナル配列」という用語は、より大きいポリペプチドの構成要素としてのポリペプチド(「分泌ペプチド」)をコードするポリヌクレオチド配列を示し、ここで、当該ポリヌクレオチド配列は、それが合成された細胞の分泌経路を介して、そのより大きいポリペプチドを方向付ける。より大きいポリペプチドは、一般的に、分泌経路を介する移行の間に分泌ペプチドを除去するために切断される。本明細書中で使用される場合、融合タンパク質またはポリペプチドの「成熟した」形態は、除去された分泌ペプチドを有するポリペプチドの処理された形態を含む。本明細書中で使用される場合、融合タンパク質の「未処理の」形態は、分泌ペプチド配列を保持する。
【0021】
IL−2/IL−Rα細胞外ドメイン融合タンパク質の、成熟した形態および未処理の形態の生物学的に活性な断片およびバリアント、ならびに同一のものをコードするポリヌクレオチドも提供される。かかる機能的なポリペプチド断片は、配列番号16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、36、37、38、39、43、44、45、46、54、55、56、57、58、59、60、61、62、または64のいずれかに記載の、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500以上の連続アミノ酸を含むことができる。あるいは、機能的なポリペプチドバリアントは、配列番号16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、36、37、38、39、43、44、45、46、54、55、56、57、58、59、60、61、62、または64に記載される配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を含むことができる。
【0022】
IL−2/IL−Rα細胞外ドメイン融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの活性バリアントおよび断片がさらに提供される。かかるポリヌクレオチドは、配列番号29、30、31、32、33、34、42、47、48、49、63または65の少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、1000、1100、1200、1300、1500、1800、2000連続ヌクレオチドまたは配列番号16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、36、37、38、39、43、44、45、46、54、55、56、57、58、59、60、61、62、または64に記載されるポリペプチドをコードし、機能的なIL−2/IL−Rα細胞外ドメイン融合タンパク質のコードを続けるポリヌクレオチドを含むことができる。あるいは、機能的なポリヌクレオチドは、配列番号29、30、31、32、33、34、42、47、48、49、63または65に記載される配列または配列番号16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、36、37、38、39、43、44、45、46、54、55、56、57、58、59、60、61、62、または64に記載されるポリペプチドをコードし、機能的なIL−2/IL−Rα細胞外ドメイン融合タンパク質のコードを続けるポリヌクレオチドと少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を含むことができる。
【0023】
IL−2/IL−2Rα融合タンパク質の構成要素は任意の順序で見出され得ることがさらに認識される。一実施形態では、IL−2ポリペプチドはN末端であり、IL−2Rαの細胞外ドメインは融合タンパク質のC末端である。
【0024】
i.インターロイキン−2
本明細書中で使用される場合、「インターロイキン−2」または「IL−2」は、特に示さない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)、ならびに家畜哺乳動物もしくは農業哺乳動物などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然型または組換え型IL−2を指す。当該用語は、未処理のIL−2、並びに、細胞でのプロセシングに起因するIL−2の任意の形態(つまり、IL−2の成熟型)を包含する。当該用語は、例えば、スプライスバリアントまたは対立形質バリアント、ならびに非天然型などの、IL−2の天然に存在するバリアントおよび断片も包含する。ヒトIL−2(20アミノ酸シグナル配列を有する)の典型的な成熟型のアミノ酸配列は、配列番号2に示される。未処理のヒトIL−2は、成熟したIL−2分子に存在しないN末端20アミノ酸シグナルペプチド(配列番号1)をさらに含む。マウスIL−2(20アミノ酸シグナル配列を有する)の典型的な成熟型のアミノ酸配列は、配列番号4に示される。未処理のマウスIL−2は、成熟したIL−2分子に存在しないN末端20アミノ酸シグナルペプチド(配列番号3)をさらに含む。図2Aおよび図2Bも参照されたい。「野生型IL−2」とも称される「天然のIL−2」は、天然に存在するIL−2または組換え型IL−2を意図する。
【0025】
IL−2に関する、さらなる核酸およびアミノ酸配列が知られている。例えば、GenBank寄託番号:Q7JFM2(オータス・レムリヌス(Aotus lemurinus)(グレイ・ベリード・ナイト・モンキー(Gray−bellied night monkey)));Q7JFM5(オータス・ナンシマエ(Aotus nancymaae)(マズ・ナイト・モンキー(Ma’s night monkey)));P05016(ボス・タウルス(Bos taurus)(ウシ));Q29416(カニス・ファミリアリス(Canis familiaris)(イヌ)(カニス・ルプス・ファミリアリス(Canis lupus familiaris)));P36835(カプラ.ヒルクス(Capra hircus)(ヤギ));および、P37997(エクウス・カバルス(Equus caballus)(ウマ))を参照されたい。
【0026】
IL−2の生物学的に活性な断片およびバリアントも提供される。かかるIL−2活性バリアントまたは断片はIL−2活性を保持するだろう。「IL−2の生物学的活性」という表現は、IL−2受容体ベアリングリンパ球を刺激する能力を含むがこれらに限定されないIL−2の1つ以上の生物学的活性を指す。かかる活性はインビトロおよびインビボの両方で測定され得る。IL−2は、免疫活性の網羅的な制御因子であり、ここで見られる効果はかかる活性の合計である。例えば、それは生存活性(Bcl−2)を制御し、Tエフェクター活性(IFN−ガンマ、グランザイムB、およびパーフォリン)を誘導し、かつT制御活性(FoxP3)を促進する。例えば、その全体が出典明示により本明細書中に組み込まれるMalek et al.(2010)Immunity 33(2):153−65を参照されたい。
【0027】
IL−2の生物学的活性バリアントが知られている。例えば、それぞれが出典明示により本明細書中に組み込まれる、米国出願公開第20060269515および20060160187号およびWO99/60128を参照されたい。
【0028】
IL−2の生物学的に活性な断片およびバリアントは、本明細書中に開示される融合タンパク質において利用され得る。かかる機能的な断片は、配列番号1、2、3、または4の少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、75、100、125、150またはそれ以上の連続アミノ酸を含むことができる。あるいは、機能的なバリアントは配列番号1、2、3、または4に記載される配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を含むことができる。
【0029】
IL−2タンパク質をコードするポリヌクレオチドの活性バリアントおよび断片がさらに提供される。かかるポリヌクレオチドは、配列番号1、2、3、または4をコードするポリペプチドの少なくとも100、200、300、400、500、600、700連続ヌクレオチドを含み、IL−2活性を有するタンパク質のコードを続けることができる。あるいは、機能的なポリヌクレオチドは、配列番号1、2、3、または4に記載されるアミノ配列をコードするポリペプチドと少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を含み、機能的なIL−2ポリペプチドのコードを続けることができる。
【0030】
ii.インターロイキン−2受容体アルファ
「CD25」または「IL−2受容体α」もしくは「IL−2Rα」という用語は、本明細書中で使用される場合、特に示さない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)、ならびに家畜哺乳動物もしくは農業哺乳動物などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然型または組換え型IL−2Rαを指す。当該用語は、例えば、スプライスバリアントまたは対立形質バリアント、または非天然型などの、IL−2Rαの天然に存在するバリアントも包含する。ヒトIL−2は、その受容体系、IL−2Rを介したシグナル伝達を介するその生物学的効果を発揮する。IL−2およびその受容体(IL−2R)は、免疫応答に重大なT細胞増殖および他の基本的な機能に必要とされる。IL−2Rは、アルファ(p55)、ベータ(p75)、およびガンマ(p65)鎖である3つの非共有結合的に連結されたI型膜貫通タンパク質からなる。ヒトIL−2Rアルファ鎖は、219アミノ酸の細胞外ドメイン、19アミノ酸の膜貫通ドメイン、および13アミノ酸の細胞内ドメインを含有する。IL−2Rアルファ(IL−2Rα)の分泌された細胞外ドメインが、本明細書中に記載される融合タンパク質において利用され得る。
【0031】
ヒトIL−2Rαの典型的な成熟型のアミノ酸配列は、配列番号6に示される。未処理のヒトIL−2Rαは配列番号5に示される。配列番号6の細胞外ドメインは、配列番号7に記載される。マウスIL−2Rαの典型的な成熟型のアミノ酸配列は配列番号9に示される。未処理のマウスIL−2Rαは配列番号8に示される。配列番号9の細胞外ドメインは、配列番号10に記載される。「野生型IL−2Rα」とも称される「天然のIL−2Rα」は、天然に存在するIL−2Rαまたは組換え型IL−2Rαを意図する。天然のヒトIL−2Rα分子の配列は、配列番号5および6に示される。
【0032】
IL−2Rαに関する核酸およびアミノ酸配列が知られている。例えば、それぞれが出典明示により本明細書中に組み込まれる、GenBank寄託番号:NP_001030597.1(P.troglodytes);NP_001028089.1(M.mulatta);NM_001003211.1(C.lupus);NP_776783.1(B.taurus);NP_032393.3(M.musculus);および、NP_037295.1(R.norvegicus)を参照されたい。
【0033】
IL−2Rαの細胞外ドメインの生物学的に活性な断片およびバリアントも提供される。かかるIL−2Rα細胞外ドメイン活性バリアントまたは断片は、IL−2Rα細胞外ドメイン活性を保持するだろう。「IL−2Rα細胞外ドメインの生物学的活性」という用語は、IL−2受容体応答性細胞において細胞内シグナル伝達を増強する能力を含むが、これらに限定されないIL−2Rαの細胞外ドメインの1つ以上の生物学的活性を指す。IL−2Raの生物学的に活性な断片およびバリアントの非限定例は、例えば、出典明示により本明細書中に組み込まれるRobb et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:5654−5658,1988中に開示される。
【0034】
IL−2Rαの細胞外ドメインの生物学的に活性な断片およびバリアントは、本明細書中に開示される融合タンパク質において利用され得る。かかる機能的な断片は、配列番号6、9、7、10、5、または8のいずれかに記載の細胞外ドメインの少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、75、100、125、150、175、200、215またはそれ以上の連続アミノ酸を含むことができる。あるいは、機能的なバリアントは、配列番号6、9、7、10、5、または8に記載される配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を含むことができる。
【0035】
一実施形態では、本明細書中で提供される融合タンパク質は、IL−2Rαの細胞外ドメイン内で少なくとも1つの変異を含むことができる。具体的な実施形態では、IL−2Rαの35位のアルギニンは、IL−2Rαの36位のスレオニンおよび/またはアルギニンをセリンに変異させることができる。かかる融合タンパク質は、IL−2Rαの細胞外ドメイン中のこれらの変異を含まない融合タンパク質と比較しておよび/または天然型または組換え型IL−2と比較してIL−2活性の増加を有することができる。IL−2Rαの細胞外ドメイン内で変異を有するIL−2Rαを含む典型的な融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号62および64に記載される。一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号62もしくは64のいずれかに記載のアミノ酸配列;または配列番号62もしくは64のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、または95%を有する配列を含む。
【0036】
IL−2Rαの細胞外ドメインをコードするポリヌクレオチドの活性バリアントおよび断片がさらに提供される。かかるポリヌクレオチドは、配列番号6、9、7、10、5、または8をコードするポリペプチドの少なくとも100、200、300、400、500、600以上の連続ヌクレオチドを含み、IL−2Rαの細胞外ドメイン活性を有するタンパク質のコードを続けることができる。あるいは、機能的なポリヌクレオチドは、配列番号6、9、7、10、5、または8に記載されるアミノ配列をコードするポリペプチドと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を含み、IL−2Rαの細胞外ドメイン活性を有するタンパク質のコードを続けることができる。
【0037】
iii.さらなる構成要素
IL−2/IL−2Rα融合タンパク質はさらなるエレメントをさらに含むことができる。かかるエレメントは、融合タンパク質の発現を助け、融合タンパク質の分泌を助け、融合タンパク質の安定性を改善し、タンパク質のより効率的な精製を可能にし、かつ/または活性融合タンパク質を調節することができる。
【0038】
ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関して「異種」は、異なるタンパク質またはポリヌクレオチドに由来するポリペプチドまたはポリヌクレオチドである。融合タンパク質のさらなる構成要素は融合タンパク質の他のポリペプチド構成要素と同一の生物に由来でき、またはさらなる構成要素は融合タンパク質の他のポリペプチド構成要素とは異なる生物に由来し得る。一実施形態では、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、IL−2ポリペプチドとIL−2Rαポリペプチドの間に位置するリンカー配列を含む。
【0039】
リンカーは任意の長さであり得、かつ少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、50または60以上のアミノ酸を含むことができる。一実施形態では、リンカー配列は、グリシンアミノ酸残基を含む。他の実施例では、リンカー配列は、グリシンおよびセリンアミノ酸残基の組み合わせを含む。かかるグリシン/セリンリンカーは、ペプチドGGGSまたはGGGGSまたはこれらの所与のペプチド類の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の反復を含む、同一のものの反復を含むが、これらに限定されないアミノ酸残基の任意の組み合わせを含むことができる。例えば、リンカー配列は、GGGSGGGSGGGS(配列番号13)((GlySer)として有名);GGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号11)((GlySer)として有名);または(GlySer);(GlySer);(GlySer)等を含むことができる。リンカー配列は、配列番号50に記載される(GlySer);GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号40)((GlySer)として有名);GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号41)((GlySer)として有名);(GlySer)、(GlySer)、(GlySer);(GlySer);(GlySer)等をさらに含むことができる。さらに、任意のリンカーの活性バリアントおよび断片は、本明細書中に開示される融合タンパク質においてさらに利用され得る。
【0040】
IL−2/IL−2Rα融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、融合タンパク質の翻訳を助けるさらなるエレメントを含むことができることがさらに認識される。かかる配列は、例えば、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’末端に結合したコザック配列を含む。コザックコンセンサス配列は、翻訳工程の開始に役割を果たす真核生物のmRNA上に生じる配列であり、かつコンセンサス(gcc)gccRccAUGG(配列番号35)を有し;ここで、(1)小文字は、塩基が変わり得るが、その位置でのもっとも一般的な塩基を表示する;(2)大文字は、高度に保存された塩基を指し示し、すなわち、「AUGG」配列は一定であり、またはプリン(アデニンまたはグアニン)がこの位置で通常観察されることを示す、IUPAC多義性コード(ambiguity code)「R」を除く変化は、たとえあったとしてもまれであり;かつ(3)括弧中の配列((gcc))は不確かな意義のもの(uncertain significance)である。一実施形態では、コザック配列は、配列番号53に記載される配列を含む。
【0041】
1つの非限定的な実施形態では、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、配列番号28に記載されるIL−2リーダー最適化コザック配列もしくは機能的なバリアントまたはその断片を含む。コザック配列の機能的なバリアントまたは断片は、当該リーダーを欠く配列からの翻訳のレベルと比較した場合、タンパク質の翻訳を増加させる能力を保持するだろう。かかる機能的な断片は、コザック配列または配列番号28もしくは53に記載される配列の少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40連続ヌクレオチドを含むことができる。あるいは、機能的なバリアントは、コザック配列または配列番号28もしくは53に記載される配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を含むことができる。
【0042】
さらに別の実施形態では、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、ポリペプチドの精製を助けるためにC末端に1つ以上のタグを含む。かかるタグは知られており、例えば、ヒスチジンタグを含む。特定の実施形態では、6XHisタグが利用される。さらなるリンカー配列が融合タンパク質とHisタグの間に利用され得ることがさらに認識される。
【0043】
IL−2/IL−2Rα融合タンパク質の非限定的な実施形態は、図1図2A、および図2Bに記載される。かかる融合タンパク質は、リーダーペプチド、IL−2もしくは機能的なバリアントまたはその断片、可変リンカー、IL−2Rα、グリシンリンカー、6xHisタグ、ならびに2つの終止コドンを含む。
【0044】
iv.バリアントおよび断片
a.ポリヌクレオチド
IL−2/IL−2Rα細胞外ドメイン融合タンパク質またはその中に含有される多様な構成要素(すなわち、IL−2Rα細胞外ドメイン、IL−2Rαポリペプチド、リンカー配列および/またはコザック配列)をコードするポリヌクレオチドの断片およびバリアントが、本発明の多様な方法および組成物において利用され得る。「断片」という用語は、ポリヌクレオチドの部分、および、それによってコードされたタンパク質またはポリペプチドの部分を意図する。ポリヌクレオチドの断片は、天然タンパク質の生物学的活性を保持し、それ故にIL−2活性、IL−2Rα細胞外ドメイン活性、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質活性を有するタンパク質断片をコードすることができ、またはもしリンカー配列をコードする場合、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質の所望の活性を提供できる。
【0045】
IL−2Rα細胞外ドメイン、IL−2ポリペプチド、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質、コザック配列、またはリンカー配列の生物学的に活性な部分は、IL−2Rα細胞外ドメインまたはIL−2ポリペプチドの部分をコードするポリヌクレオチドの1つの一部を単離し、ポリペプチドのコードされた部分を発現し(例えば、インビトロでの組換え発現による)、かつIL−2Rα細胞外ドメインまたは/およびIL−2ポリペプチドの部分の活性またはIL−2/ILRα融合タンパク質の活性を評価することにより調製され得る。
【0046】
「バリアント」配列は、高度な配列類似性を有する。ポリヌクレオチドに関して、保存されたバリアントは、遺伝暗号の縮重のために、IL−2Rα細胞外ドメインポリペプチド、IL−2ポリペプチド、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質、またはリンカー配列のうちの1つのアミノ酸配列をコードする配列を含む。これらなどのバリアントは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびハイブリダイゼーション技術などの周知の分子生物学技術の使用により同定され得る。バリアントポリヌクレオチドは、例えば、部位特異的突然変異誘発を使用することにより生成された配列などの合成的に得られたヌクレオチド配列も含むが、依然としてIL−2Rα細胞外ドメイン、IL−2ポリペプチド、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質、コザック配列、またはリンカー配列をコードする。
【0047】
b.ポリペプチド
「バリアント」タンパク質という用語は、天然タンパク質のN末端および/またはC末端への1つ以上のアミノ酸の欠失(いわゆるトランケーション(trncation))または付加;天然タンパク質中の1つ以上の部位での1つ以上のアミノ酸の欠失または付加;または天然タンパク質中の1つ以上の部位での1つ以上のアミノ酸の置換による、天然タンパク質由来のタンパク質を意図する。バリアントタンパク質は生物学的に活性である、つまり、それらは所望の生物学的活性、すなわち、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質活性、IL−2活性またはIL−2Rα細胞外ドメイン活性を有し続ける。かかるバリアントは例えば、遺伝子多型または人間の操作に起因してもよい。IL−2/IL−2Rα融合タンパク質またはその構成成分(すなわち、IL−2Rα細胞外ドメインポリペプチド、IL−2ポリペプチド、またはリンカー配列)のいずれかの生物学的活性バリアントは、本明細書中の他の所で記載される配列アライメントプログラムおよびパラメータにより決定される天然タンパク質に関するアミノ酸配列と、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するだろう。タンパク質の生物学的活性バリアントは、わずか1−15アミノ酸残基、6−10などのわずか1−10、わずか5、わずか4、3、2、または、たった1アミノ酸残基により、そのタンパク質と異なっていてもよい。
【0048】
タンパク質は、アミノ酸置換、欠失、トランケーション(trancation)、および挿入を含む多様な方法で改変され得る。かかる操作のための方法は、当技術分野で一般的に知られている。例えば、IL−2Rα細胞外ドメイン、IL−2ポリペプチド、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質、またはリンカー配列のアミノ酸配列バリアントは、DNA中の変異により調製され得る。変異原性およびヌクレオチド配列の改変のための方法は、当技術分野で周知である。例えば、Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−492;Kunkel et al.(1987)Methods in Enzymol.154:367−382;米国特許番号第4,873,192号;Walker and Gaastra,eds.(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York)およびその中に引用された引用文献を参照されたい。目的のタンパク質の生物学的活性に影響しない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、出典明示により本明細書中に組み込まれるDayhoff et al.(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルにおいて見出されてもよい。同様の特性を有する別のアミノ酸とアミノ酸を交換するなどの保存的置換が好ましくてもよい。
【0049】
従って、本明細書中に開示されるポリヌクレオチドは、天然に存在する配列、「天然の」配列、並びに変異体形態を含むことができる。同様に、本発明の方法において使用されるタンパク質は、天然に存在するタンパク質並びにそれらの変形および改変された形態を包含する。かかるバリアントは、組換え現象を実行する能力を有し続けるだろう。一般に、バリアントポリペプチドをコードするポリヌクレオチド中に生じた変異は、リーディングフレーム外の配列にあるべきではなく、かつ/または二次mRNA構造を作り出すことができる相補性領域を作るべきではない。欧州特許出願公開番号第75,444号を参照されたい。
【0050】
バリアントポリヌクレオチドおよびタンパク質は、変異原性法およびDNAシャフリングなどの組換え方法により得られた配列およびタンパク質も包含する。かかる方法では、1つ以上の様々なIL−2Rα細胞外ドメインまたはIL−2コード配列は、所望の特性を有する新規のIL−2Rα細胞外ドメインまたはIL−2ポリペプチドを作製するために操作され得る。このようにして、組換えポリヌクレオチドのライブラリーは実質的な配列同一性を有する配列領域を含む関連配列ポリヌクレオチドのから生成され、かつインビトロまたはインビボで相同的に組み換えられ得る。かかるDNAシャフリングに関する戦略は、当技術分野で知られている。例えば、Stemmer(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10747−10751;Stemmer(1994)Nature 370:389−391;Crameri et al.(1997)Nature Biotech.15:436−438;Moore et al.(1997)J.Mol.Biol.272:336−347;Zhang et al.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:4504−4509;Crameri et al.(1998)Nature 391:288−291;および米国特許番号第5,605,793号および5,837,458号を参照されたい。
【0051】
III.IL−2/IL−2Rα融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドおよび作製方法
組成物は、本明細書で上述した多様な融合タンパク質ならびにそれらのバリアントおよび断片をコードする単離されたポリヌクレオチドをさらに含む。本明細書中に記載されるポリヌクレオチドを含むベクターおよび発現カセットはさらに開示される。一般的には、発現カセットは、ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターならびに転写のおよび翻訳の終結領域を含むだろう。
【0052】
「ポリヌクレオチド」という用語の使用は、本発明を、DNAを含むポリヌクレオチドに限定することを意図しない。当業者はポリヌクレオチドがリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの組み合わせを含むことができるを認識するだろう。かかるデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドは、天然に存在する分子と合成類似体の両方を含む。
【0053】
「単離された」または「精製された」ポリヌクレオチドもしくはタンパク質またはそれらの生物学的に活性な部分は、その天然に存在する環境において見出されるポリヌクレオチドまたはタンパク質を、通常伴うまたは相互作用する構成要素から、実質的にまたは本質的に遊離している。従って、単離されたまたは精製されたポリヌクレオチドまたはタンパク質は、組換え技術により生産される場合、他の細胞材料または培養培地を実質的に含んでおらず、または化学的に合成される場合、化学前駆物質または他の化学物質を実質的に含んでいない。好ましくは、「単離された」ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが由来する生物のゲノムDNA中のポリヌクレオチドに自然に隣接する配列(すなわち、ポリヌクレオチドの5’および3’末端に位置する配列)(好ましくはタンパク質をコードする配列)を含まない。例えば、多様な実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが由来する細胞のゲノムDNA中のポリヌクレオチドに自然に隣接するヌクレオチド配列の約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kb、または0.1kb未満を含有できる。細胞材料を実質的に含まないタンパク質は、約30%、20%、10%、5%、または1%(乾燥重量で)未満の夾雑タンパク質を有するタンパク質の調製を含む。本発明のタンパク質またはその生物学的に活性な部分が組換え生産される場合、好ましくは、培養培地は化学前駆物質または目的の非タンパク質の化学物質の約30%、20%、10%、5%、または1%(乾燥重量で)未満を表す。
【0054】
当技術分野内の通常の分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術が本明細書中で利用されてもよい。かかる技術は文献中に十分に説明される。例えば、Sambrook et al.,「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」Volumes I−III[Ausubel,R.M.,ed.(1994)];「Cell Biology:A Laboratory Handbook」Volumes I−III[J.E.Celis,ed.(1994))];「Current Protocols in Immunology」Volumes I−III[Coligan,J.E.,ed.(1994)];「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait ed.1984);「Nucleic Acid Hybridization」[B.D.Hames&S.J.Higgins eds.(1985)];「Transcription And Translation」[B.D.Hames&S.J.Higgins,eds.(1984)];「Animal Cell Culture」[R.I.Freshney,ed.(1986)];「Immobilized Cells And Enzymes」[IRL Press,(1986)];B.Perbal,「A Practical Guide To Molecular Cloning」(1984)を参照されたい。
【0055】
プロモーターに作動可能に連結された上記記載のポリヌクレオチドを含むベクターも本明細書中で提供される。発現制御配列が、その配列の転写および翻訳を制御し(control)かつ制御する(regulate)場合に、ヌクレオチド配列は発現制御配列(例えば、プロモーター)に「作動可能に連結」されている。ヌクレオチド配列に言及する場合、「作動可能に連結された」という用語は、発現するヌクレオチド配列の前の適切な開始シグナル(例えば、ATG)を有すること、および発現制御配列の制御下の配列の発現および配列によりコードされる所望の産物の産生を可能にするために正しいリーディングフレームを維持することを含む。組換え核酸分子に挿入したい遺伝子が適切な開始シグナルを含有しない場合、かかる開始シグナルは遺伝子の前に挿入され得る。「ベクター」は、付属したセグメントの複製をもたらすために別の核酸セグメントが付属していてもよいプラスミド、ファージまたはコスミドなどのレプリコンである。プロモーターは細菌、酵母、昆虫または哺乳動物のプロモーターと同一であってもよいし、または同一である。さらに、ベクターは、プラスミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、バクテリオファージまたは真核生物ウイルスDNAであってもよい。
【0056】
タンパク質発現に有用な、当技術分野で知られている他の多数のベクター骨格が利用されてもよい。かかるベクターは、アデノウイルス、サルウイルス40(SV40)、サイトメガロウイルス(CMV)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、モロニーマウス白血病ウイルス、DNAデリバリーシステム、すなわちリポソーム、および発現プラスミドデリバリーシステムを含むが、これらに限定されない。さらに、ベクターの1つのクラスは、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルスまたはセムリキ森林ウイルスなどのウイルス由来のDNAエレメントを含む。かかるベクターは商業的に得られてもよいし、または当技術分野で周知の方法により記載される配列から構築されてもよい。
【0057】
適した宿主細胞のベクターを含む、ポリペプチドの産生に関する宿主ベクター系が本明細書中で提供される。適した宿主細胞は、原核生物または真核細胞、例えば、バクテリア細胞(グラム陽性細胞を含む)、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、および動物細胞を含むがこれらに限定されない。多数の哺乳動物細胞は、マウス線維芽細胞NIH 3T3、CHO細胞、HeLa細胞、Ltk細胞等を含むがこれらに限定されない宿主として使用されてもよい。Rl.l、B−WおよびL−M細胞、アフリカミドリザル腎細胞(例えば、COS1、COS7、BSC1、BSC40、およびBMT10)、昆虫細胞(例えば、Sf9)などのさらなる動物細胞、ならびに組織培養物中のヒト細胞および植物細胞も使用され得る。
【0058】
多種多様な宿主/発現ベクターの組み合わせが、本明細書中に示されるポリヌクレオチド配列を発現することにおいて利用されてもよい。例えば、有用な発現ベクターは、染色体DNA配列、非染色体DNA配列および合成DNA配列のセグメントからなってもよい。適したベクターは、SV40の誘導体ならびに既知の細菌性プラスミド、例えば、E.coliプラスミドcol E1、pCR1、pBR322、pMB9およびそれらの誘導体、RP4などのプラスミド;ファージDNAS、例えば、λファージの多数の誘導体、例えばNM989、および他のファージDNA、例えばM13および繊維状一本鎖ファージDNA;2μプラスミドまたはその誘導体などの酵母プラスミド;昆虫または哺乳動物細胞において有用なベクターなどの、真核細胞において有用なベクター;プラスミドとファージDNAの組み合わせ由来のベクター、例えばファージDNAまたは他の発現制御配列を利用して改変されたプラスミド;等を含む。
【0059】
多種多様な発現制御配列(それに作動可能に連結されたヌクレオチド配列の発現を制御する配列)のいずれかが、本明細書中で提供されるポリヌクレオチド配列を発現するために、これらのベクターにおいて使用されてもよい。かかる有用な発現制御配列は、例えば、SV40、CMV、ワクシニア、ポリオーマもしくはアデノウイルスの初期もしくは後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、LTR系、λファージの主要なオペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼもしくは他の解糖系酵素のためのプロモーター、酸性ホスファターゼ(例えば、Pho5)のプロモーター、酵母α−接合因子のプロモーター、および原核生物もしくは真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御すると知られている他の配列、ならびにそれらの多様な組み合わせを含む。
【0060】
全てのベクター、発現制御配列および宿主が、本明細書中で提供されるポリヌクレオチド配列を発現するよう同等に良好に機能する訳ではないことが理解されるだろう。全ての宿主が、同一の発現系で同等に良好に機能する訳ではないだろう。しかしながら、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、所望の発現を達成するために過度の実験なしで、適切なベクター、発現制御配列、および宿主を選択することができるだろう。例えば、ベクターを選択する際に、ベクターが宿主中で機能しなければならないので、宿主を考慮しなければならない。ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、および抗生物質マーカーなどのベクターによりコードされる他のタンパク質の発現もまた考慮されるだろう。
【0061】
発現制御配列を選択する際に、種々の因子が通常考慮されるだろう。これらは、例えば、系の相対強度、その可制御性、ならびに特に潜在的な二次構造に関して、発現された特定のヌクレオチド配列もしくは遺伝子とのその適合性を含む。適した単細胞宿主は、例えば、選択されたベクターとそれらの適合性、それらの分泌特性、正確にタンパク質を折りたたむそれらの能力、およびそれらの発酵要件、並びに発現されるヌクレオチド配列によりコードされる産物の宿主に対する毒性、ならびに発現産物の精製の容易さを考慮して適合されるだろう。
【0062】
発現カセットを調製する際、多様なポリヌクレオチドが、適切な向き、かつ必要に応じて、適切なリーディングフレームのポリヌクレオチド配列を提供するために操作されてもよい。この目的のために、アダプターまたはリンカーは、ポリヌクレオチドを結合させるために利用されてもよく、または他の操作が、簡便な制限部位、過剰なDNAの除去、制限部位の除去等を提供するために関与してもよい。例えば、2つのグリシンなどのリンカーがポリペプチド間に加えられてもよい。atgヌクレオチド配列によりコードされるメチオニン残基は、遺伝子転写の開始を可能にするために加えられてもよい。この目的のために、インビトロ突然変異、プライマー修復、制限、アニーリング、再置換、例えば、転移およびトランスバージョンが関与してもよい。
【0063】
ポリペプチドの産生を可能にし、かつそのように産生されたポリペプチドを回収するのに適した条件下で、宿主細胞中で本明細書中に開示される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現することを含む、ポリペプチドを産生する方法がさらに提供される。
【0064】
IV.使用方法
免疫応答を調節するための多様な方法が提供される。
本明細書中で使用される場合、「調節する」という用語は、所与の活性または応答を誘導、阻害、増強、上昇、増加、または減少させることを含む。
【0065】
「対象」という用語は、哺乳動物、例えば、霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ等であるが、これらに限定されない農業動物および家畜動物を意図する。一実施形態では、本明細書中で提供される医薬製剤による治療を受ける対象は、ヒトである。
【0066】
「治療有効量」のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、所望の生物学的反応を誘発するのに十分な量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質を指す。当業者に認識されるように、有効である特定のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質の絶対量は、所望の生物学的なエンドポイント、送達されるIL−2/IL−2Rα融合タンパク質、標的細胞または組織等の因子に依存して変化し得る。当業者は、有効な量は、単回用量で投与され得る、または複数の用量(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の用量)の投与により達成され得ることをさらに理解するだろう。
【0067】
i.免疫応答を増加させるための方法
対象における免疫応答を増加させるための多様な方法が提供される。かかる方法は、免疫応答の増加を必要とする対象に治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質を投与することを含む。このように、具体的な実施形態では、より高用量のIL−2の一過性の適用は、免疫エフェクターおよび記憶応答を高めるために利用される。
【0068】
多様なIL−2/IL−2Rα融合タンパク質が、抗原に対する免疫応答を増強する抗原と組み合わせて使用され得ることがさらに認識される。従って、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、特に細胞性免疫メモリーを高めるワクチンアジュバントとしても使用され得る。
【0069】
例えば、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、ワクチン製剤を増強するために使用され得る。従って、多様なIL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、抗癌ワクチンまたは不十分な免疫原性であるワクチンの有効性を増加させるために有用である。対象における有効性もしくはワクチンの免疫原性、または対象におけるワクチンに対する抑制された免疫応答を克服することを増強するための方法であって、(i)対象に、治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質を投与すること、および(ii)対象に、ワクチンを投与することを含む、方法がさらに提供される。
【0070】
「ワクチン」という用語は、対象における特異的免疫応答(または免疫原性応答)を刺激するために有用な組成物を意図する。いくつかの実施形態では、免疫原性応答は保護的であるか、または防御免疫を提供する。例えば、疾患を引き起こす生物の場合、ワクチンは、ワクチンが標的とする生物による感染またはワクチンが標的とする生物からの疾患の進行に、対象がよりよく抵抗できるようにする。あるいは癌の場合、ワクチンは、既に発生した癌に対する対象の自然防御を強化する。ワクチンのこれらのタイプはまた、現存している癌のさらなる増殖を予防し、治療された癌の再発を予防し、かつ/または以前の治療により死んでいない癌細胞を除去してもよい。
【0071】
代表的なワクチンは、ジフテリア、テタヌス、百日咳、ポリオ、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、B型肝炎、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)B型、水痘、髄膜炎、ヒト免疫不全ウイルス、結核、エプスタイン・バール・ウイルス(Epstein Barr virus)、マラリア、E型肝炎、デング熱、ロタウイルス、疱疹、ヒトパピローマウイルス、および癌に対するワクチンを含むが、これらに限定されない。目的のワクチンは、米国食品医薬品局によりライセンスされている、癌をもたらし得るウイルス感染を予防する2つのワクチン:肝癌に関連する感染性の病原体、B型肝炎ウイルスによる感染を予防するB型肝炎ワクチン(MMWR Morb.Mortal.Wkly.Rep.46:107−09,1997);および世界中で子宮頸癌の症例の70パーセント共に引き起こす2種類のヒトパピローマウイルスによる感染を予防するGardasilTM(Speck and Tyring,Skin Therapy Lett.11:1−3,2006)を含む。目的の他の治療ワクチンは、癌、子宮頸癌、濾胞性B細胞非ホジキンリンパ腫、腎癌、皮膚黒色腫、眼内黒色腫、前立腺癌、および多発性骨髄腫の治療のための治療用ワクチンを含む。
【0072】
ワクチンに関して「有効性を増強する」または「免疫原性を増強する」という用語は、例えば、防御免疫に関連するワクチンの活性の特定のパラメータにおける増加または減少などの特異的な値の変化により測定される結果を改善することを意図する。一実施形態では、増強は、特定のパラメータにおける少なくとも5%、10%、25%、50%、100%または100%超の増加を指す。別の実施形態では、増強は、特定のパラメータにおける少なくとも5%、10%、25%、50%、100%または100%超の減少を指す。一実施例では、有効性/ワクチンの免疫原性の増強は、疾患進行を阻害し、または治療するワクチンの能力における増加、例えば、当該目的のためのワクチンの有効性における少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、または100%超の増加を指す。さらなる例では、有効性/ワクチンの免疫原性の増強は、既に発生した癌に対する、対象の自然防御を補充するワクチンの能力における増加、例えば、当該目的のためのワクチンの有効性における少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、または100%超の増加を指す。
【0073】
同様に、ワクチンに関して「抑制された免疫応答を克服する」という用語は、防御免疫に関連するワクチンの活性の特定のパラメータにおける、以前の陽性の値への復帰などの特異的な値の変化により測定される結果を改善することを意図する。一実施形態では、克服することは、特定のパラメータにおける少なくとも5%、10%、25%、50%、100%または100%超の増加を指す。一実施例では、ワクチンに対する抑制された免疫応答を克服することは、疾患進行を阻害し、または治療するワクチンの復活した能力、例えば、当該目的のためのワクチンの有効性における少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、または100%超の復活を指す。さらなる例では、ワクチンに対する抑制された免疫応答を克服することは、既に発生した癌に対する、対象の自然防御を補充するワクチンの復活した能力、例えば、当該目的のためのワクチンの有効性における少なくとも25%、50%、100%、または100%超の復活を指す。
【0074】
「治療有効量」という用語は、疾患または状態の治療、予防または診断における有用な量を意図する。本明細書中で使用される場合、治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、対象に投与される場合、対象における実質的な細胞毒性効果を引き起こさずに、対象における免疫応答を調節することなどの所望の効果を達成するのに十分な量である。上記で概説したように、治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、免疫応答を増加させ、抗原に対する免疫応答を増強し、対象における有効性もしくはワクチンの免疫原性を増強し、またはワクチンに対する抑制された免疫応答を克服するために対象に投与され得る。かかる機能を調節するために有用な有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、治療される対象、苦痛の重篤度、およびIL−2/IL−2Rα融合タンパク質の投与様式に依存するだろう。典型的な用量は、成人一人当たり約10から約10IUのIL−2活性、成人一人当たり約10から10IUのIL−2活性、成人一人当たり約10から約10IUのIL−2活性、成人一人当たり約10から約10IUのIL−2活性を含む。他の実施例では、治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、約10IU±100倍のIL−2活性であり、約10IU±10倍のIL−2活性、約10IU±2倍のIL−2活性、約10IU±20倍のIL−2活性、約10IU±30倍のIL−2活性、約10IUのIL−2活性±40倍、約10IU±50倍のIL−2活性、約10IU±60倍のIL−2活性、約10IU±70倍のIL−2活性、約10IU±80倍のIL−2活性、または約10IU±90倍のIL−2活性である。具体的な非限定的な実施形態では、ヒトIL−2融合タンパク質はこの用量で投与される。
【0075】
一実施形態では、マウスIL−2融合タンパク質に関する参照標準はeBioscience製のマウスIL−2(カタログ番号:14−8021)である。簡潔に述べると、eBioscience製のマウスIL−2の生物活性は以下の通りである:CTLL−2細胞増殖アッセイにより測定されるこのタンパク質のED50は、175pg/mL以下である。これは、5.7x10ユニット/mg以上の比活性に相当する。
【0076】
別の実施形態では、ヒトIL−2融合タンパク質に関する参照標準は、ヒトIL−2薬剤アルデスロイキン(プロロイキン)である。従って、本明細書中に開示されるIL−2融合タンパク質は、低用量または高用量のIL−2治療において使用されるIL−2薬剤との融合タンパク質と直接比較される。マウスおよびヒトIL−2に関するIL−2活性は、同一のアッセイを使用し、かつユニット/mgにおけるそれらの活性は同様である。ヒトIL−2薬剤、すなわちアルデスロイキン(プロロイキン)に関して、IL−2の量の標準的な尺度は技術的に一定の量ではないが、生物学的活性の特異的なアッセイ、すなわちCTLL増殖アッセイにおいて一定の効果を生じる量である国際単位(IU)である。実際には、IL−2の製造は標準化され、かつ薬剤重量と国際単位間に変換が存在する。それは1.1mgのIL−2=18百万IU(18MIUと省略される)。
【0077】
適切な用量の機能的な薬剤は、調節される活性に関する活性剤の効能に依存するとさらに理解される。かかる適切な用量は、本明細書中に記載されるアッセイを使用して決定されてもよい。さらに、それは、任意の特定の動物対象に関する特定の用量レベルは、利用される特定の化合物の活性、対象の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、および食事、投与時間、投与経路、排泄速度、および/または任意の薬剤の組み合わせを含む種々の因子に依存するだろうと理解される。
【0078】
投与が治療目的である場合、投与は、予防的なまたは治療目的のいずれかであり得る。予防的に提供される場合、当該物質は任意の症状より前に提供される。物質の予防的投与は、任意のその後の症状を予防する、または軽減するのに役立つ。治療的に提供される場合、物質は症状の開始(または直後)に提供される。物質の治療的投与は、任意の実際の症状を軽減するのに役立つ。
【0079】
当業者は、対象の疾患または障害の重症度、以前の治療、全般的な健康状態および/もしくは年齢、ならびに存在する他の疾患を含むがこれらに限定されない特定の因子が、対象を効率的に治療するために必要とされる用量に影響し得ることを認識するだろう。さらに、治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質による対象の治療は、単回の治療を含むことができ、または、好ましくは、一連の治療を含むことができる。特定の治療の経過にわたって、増加または減少してもよいことも認識されるだろう。用量の変化は、本明細書中に記載される診断検査の結果から生じ、明らかになり得る。
【0080】
治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、動物研究により決定され得る。動物アッセイが使用される場合、用量は、動物アッセイにおいて有効であることが示されているものと同様の標的インビボ濃度を提供するために投与される。
【0081】
ii.免疫応答を減少させるための方法
対象における免疫応答を減少させるための多様な方法が、提供される。かかる方法は、免疫応答の減少を必要とする対象に治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質を投与することを含む。
【0082】
望ましくない免疫応答を阻害するためにTregの抑制力を利用することには、多くの関心がある。マウスおよびヒトのデータは、低用量のIL−2でIL−2Rシグナル伝達を増強することは、選択的にTregを高め、かつ免疫寛容原性機構を増強することを示す。本明細書中で提供されるIL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、より潜在的にTregを増強するIL−2の新規かつ改善された形態を表す。従って、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、自己免疫性疾患、慢性移植片対宿主病、移植拒絶反応、および目的が自己反応性を抑制することである他の状態を有する患者に投与され得る。
【0083】
例えば、免疫寛容を促進する治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、例えば、移植片拒絶およびアレルギーを含むがこれらに限定されない自己免疫性または炎症性障害を有する対象を治療する際に使用され得る。従って、一実施形態では、自己免疫性または炎症性障害を有する対象を治療する方法が提供される。かかる方法は、対象に、治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質を投与することを含む。
【0084】
治療し、または予防することができる自己免疫異常の非限定例は、1型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、セリアック病、全身性エリテマトーデス、若年性特発性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎または全身性硬化症、移植片対宿主病、HCV誘発性血管炎、円形脱毛症または乾癬を含む。
【0085】
さらなる自己免疫性疾患は、Tregが障害を受けている可能性があり、かつIL−2依存性のTregを高めることの恩恵を受けるであろうという兆候が既にあるものを含む。この点について、IL−2、IL−2Rα、またはIL−2R13中の一塩基多型(SNP)は、1型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、セリアック病、全身性エリテマトーデス、若年性特発性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、および全身性硬化症に関する遺伝的リスクとして関連付けられている。研究は、遺伝的リスクは、障害性のTregの数および/または活性に関連していることを示唆している。さらに、低用量のIL−2治療は、慢性のGvHDおよびHCV誘発性血管炎を有する患者に恩恵をもたらすことを示した。従って、かかる患者集団には、治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質が投与され得る。
【0086】
他の実施形態では、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質は治療剤と組み合わせて使用され得、当該治療剤(すなわち、タンパク質)に対する免疫応答を減少させ得る。例えば、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、慢性的に対象に投与されなければならない治療剤タンパク質と組み合わせて使用され得る。従って、具体的な実施形態では、当該方法は、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質と組み合わせて少なくとも1つのさらなる治療剤を、対象に投与することを含む。かかる治療剤は、サイトカイン、グルココルチコイド、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシンまたはエピルビシン)、フルオロキノロン(例えば、シプロフロキサシン)、葉酸代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート)、代謝拮抗薬(例えば、フルオロウラシル)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、カンプトテシン、イリノテカンまたはエトポシド)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、ミトラクトール、またはメルファラン)、抗アンドロゲン(例えば、フルタミド)、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン)、白金化合物(例えば、シスプラチン)、ビンカアルカロイド(例えば、ビノレルビン、ビンブラスチンまたはビンデシン)、または有糸分裂阻害剤(例えば、パクリタキセルまたはドセタキセル)を含むが、これらに限定されない。
【0087】
さらに、治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、Tregおよび耐性を増加させる併用療法においてさらに投与され得る。かかる併用療法は、抗TNFαまたは炎症反応を阻害する他の薬剤と組み合わせた治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質を含むことができる。
【0088】
免疫応答を減少させるために有用な治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、治療される対象、苦痛の重篤度、およびIL−2/IL−2Rα融合タンパク質の投与様式に依存するだろう。典型的な用量は、成人一人当たり約10IUから約10IUのIL−2活性または成人一人当たり約10IUから約10IUのIL−2活性を含む。典型的な用量は、成人一人当たり約10から約10IUのIL−2活性、成人一人当たり約10から約10IUのIL−2活性、成人一人当たり約10から約10IUのIL−2活性、成人一人当たり約10から10IUのIL−2活性、または成人一人当たり約10から約10IUのIL−2活性を含む。他の実施例では、治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、約10IU±100倍のIL−2活性であり、約10IU±10倍のIL−2活性、約10IU±2倍のIL−2活性、約10IU±20倍のIL−2活性、約10IU±30倍のIL−2活性、約10IU±40倍のIL−2活性、約10IU±50倍のIL−2活性、約10IU±60倍のIL−2活性、約10IU±70倍のIL−2活性、約10IU±80倍のIL−2活性、または約10IU±90倍のIL−2活性である。具体的な非限定的な実施形態では、ヒトIL−2融合タンパク質は、この用量で投与される。
【0089】
一実施形態では、マウスIL−2融合タンパク質に関する参照標準は、eBioscience製のマウスIL−2(カタログ番号:14−8021)である。簡潔に述べると、eBioscience製のマウスIL−2の生物活性は以下の通りである:CTLL−2細胞増殖アッセイにより測定されるこのタンパク質のED50は、175pg/mL以下である。これは、5.7x10ユニット/mg以上の比活性に相当する。
【0090】
別の実施形態では、ヒトIL−2融合タンパク質に関する参照標準は、ヒトIL−2薬剤アルデスロイキン(プロロイキン)である。従って、本明細書中に開示されるIL−2融合タンパク質は、低用量または高用量のIL−2治療において使用されるIL−2薬剤との融合タンパク質と直接比較される。マウスおよびヒトIL−2に関するIL−2活性は、同一のアッセイを使用し、かつユニット/mgにおけるそれらの活性は同様である。ヒトIL−2薬剤、すなわちアルデスロイキン(プロロイキン)に関して、IL−2の量の標準的な尺度は技術的に一定の量ではないが、生物学的活性の特異的なアッセイ、すなわちCTLL増殖アッセイにおいて一定の効果を生じる量である国際単位(IU)である。実際には、IL−2の製造は標準化され、かつ薬剤重量と国際単位間に変換が存在する。それは1.1mgのIL−2=18百万IU(18MIUと省略される)。
【0091】
適切な用量の機能的な薬剤は、調節される発現または活性に関する活性剤の効能に依存するとさらに理解される。かかる適切な用量は、本明細書中に記載されるアッセイを使用して決定されてもよい。さらに、それは、任意の特定の動物対象に関する特定の用量レベルは、利用される特定の化合物の活性、対象の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、および食事、投与時間、投与経路、排泄速度、および/または任意の薬剤の組み合わせを含む種々の因子に依存するだろうと理解される。
【0092】
投与が治療目的である場合、投与は、予防的なまたは治療目的のいずれかであり得る。予防的に提供される場合、当該物質は任意の症状より前に提供される。物質の予防的投与は、任意のその後の症状を予防する、または軽減するのに役立つ。治療的に提供される場合、物質は症状の開始(または直後)に提供される。物質の治療的投与は、任意の実際の症状を軽減するのに役立つ。
【0093】
当業者は、対象の疾患または障害の重症度、以前の治療、全般的な健康状態および/もしくは年齢、ならびに存在する他の疾患を含むがこれらに限定されない特定の因子が、対象を効率的に治療するために必要とされる用量に影響し得ることを認識するだろう。さらに、治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質による対象の治療は、単回の治療を含むことができ、または、好ましくは、一連の治療を含むことができる。特定の治療の経過にわたって、増加または減少してもよいことも認識されるだろう。用量の変化は、本明細書中に記載される診断検査の結果から生じ、明らかになり得る。
【0094】
治療有効量のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、動物研究により決定され得る。動物アッセイが使用される場合、用量は、動物アッセイにおいて有効であることが示されているものと同様の標的組織濃度を提供するために投与される。
【0095】
iii.医薬組成物
本明細書中に開示される多様なIL−2/IL−2Rα融合タンパク質(本明細書中で「活性化合物」としても称される)は、投与に適した医薬組成物に組み込まれ得る。かかる組成物は、典型的には、融合タンパク質および薬学的に許容可能な担体を含む。本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」という語は、薬学的投与に適合する、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌性および抗真菌性の薬剤、等張剤および吸収遅延薬剤等を含むことを意図する。薬剤的に活性な物質に関する、かかる培地および薬剤の使用は、当技術分野でよく知られている。任意の従来の培地または薬剤が活性化合物と不適合である場合を除き、組成物におけるその使用が考慮される。補助活性化合物も組成物に組み込まれ得る。
【0096】
本発明の医薬組成物は、その意図された投与経路に適合するように処方される。投与経路の例は、非経口的、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所的)、および経粘膜を含む。さらに、治療有効量の医薬組成物を局所的に治療を必要とする領域に投与することが望ましいことがある。これは、例えば、局所(local)または領域(regional)注入または手術中の灌流、局所投与、注射、カテーテル、坐薬、または移植(例えば、シラスティックな(sialastic)膜などの膜または線維を含む、多孔性の、非多孔性の、またはゼラチン質の材料から形成される移植)等により達成され得る。別の実施形態では、治療有効量の医薬組成物は、リポソームなどの小胞中に送達される(例えば、Langer,Science 249:1527−33,1990 and Treat et al.,in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez Berestein and Fidler(eds.),Liss,N.Y.,pp.353−65,1989を参照されたい)。
【0097】
さらに別の実施形態では、治療有効量の医薬組成物は、放出制御システムで送達され得る。一実施例では、ポンプが使用され得る(例えば、Langer,Science 249:1527−33,1990;Sefton,Crit.Rev.Biomed.Eng.14:201−40,1987;Buchwald et al.,Surgery 88:507−16,1980;Saudek et al.,N.Engl.J.Med.321:574−79,1989を参照されたい)。Langerにより説明されたものなどの他の放出制御システム(Science 249:1527−33,1990)も使用され得る。
【0098】
非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含むことができる:注射、生理食塩水の水などの無菌希釈液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸、クエン酸またはリン酸塩などの緩衝液ならびに塩化ナトリウムもしくはブドウ糖などの浸透圧の調整に関する薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなど酸または塩基と調節ことができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨てシリンジ、または複数用量のガラスまたはプラスチック製のバイアルに封入され得る。
【0099】
注射使用に適した医薬組成物は、無菌注射溶液または分散液の即時調製のための無菌水溶液(水溶性の場合)または分散液および無菌粉末を含む。静脈内投与のために、適した担体は、生理食塩水、静菌水、クレモフォールELJ(BASF;Parsippany、NJ)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。全ての場合では、組成物は無菌でなければならず、かつ容易な注射可能性が存在する程度に流動的であるべきである。製造および保存の条件下で安定でなければならなず、かつ細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)を含有する溶媒もしくは分散培地ならびにそれらの適した混合物であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には必要とされる粒径の維持により、および界面活性物質の使用により維持され得る。微生物の作用の予防は、多様な抗菌性および抗真菌性の薬剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等により達成され得る。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、塩化ナトリウムを含むことが好ましいだろう。注射組成物の延長された吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、ステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中にを含むことによりもたらされ得る。
【0100】
無菌注射溶液は、必要に応じて、適切な溶媒中に活性化合物を上記に列挙された成分の1つまたは組み合わせ必要量で組み込み、次いで濾過滅菌により調製され得る。一般的に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散培地および上記に列挙されたものからの必要とされる他の成分を含有する無菌のビヒクルに組み込むことにより調製される。無菌注射可能な溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、その予め滅菌濾過した溶液からの有効成分プラス任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる真空乾燥および凍結乾燥である。
【0101】
吸入による投与に関して、化合物は、適した噴霧剤、例えば二酸化炭素等のガスを含有する加圧容器またはディスペンサー(dispenser)または噴霧器からエアロゾル噴霧の形態で送達される。
【0102】
全身投与は、経粘膜的または経皮的な手段によってもあり得る。経粘膜または経皮投与に関して、障壁を透過するのに適切な浸透剤は、製剤中に使用される。かかる浸透剤は当技術分野で一般的に知られており、かつ経粘膜投与に関して、例えば、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、点鼻薬または坐薬の使用を介して達成され得る。経皮投与に関して、活性化合物は、当技術分野で一般的に知られている軟膏、軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに配合される。化合物はまた、坐薬(例えば、カカオバターおよび他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を用いて)または直腸送達のための保持浣腸の形態で調製され得る。
【0103】
一実施形態では、活性化合物は、移植およびマイクロカプセル化されたデリバリーシステムを含む放出制御製剤など、身体からの急速な除去から化合物を保護するだろう担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生分解性、生体適合性ポリマーは、使用され得る。かかる製剤の調製のための方法は当業者に明らかであろう。材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.からも商業的に得られ得る。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いる感染細胞に標的化されたリポソームを含む)は、薬学的に許容可能な担体として使用され得る。これらは、当業者に知られている方法、例えば、米国特許番号第4,522,811号に記載される方法によって調製され得る。
【0104】
投与の容易さおよび用量の均一性のために、用量単位形態で経口または非経口組成物を処方することが特に有利である。本明細書中で使用される用量単位形態は、必要な薬学的担体に関連して所望の治療効果を生産するよう計算された所定の量の活性化合物を含有する、それぞれの単位で治療される対象のための単位用量として適した物理的に別個の単位を指す。本発明の用量単位形態に関する仕様は、活性化合物の独自の特徴および達成すべき特定の治療効果、ならびに個々の治療のためのかかる機能的な化合物を調合する技術分野で固有の制限により決定され、かつ直接的に依存する。
【0105】
医薬組成物は、投与のための説明書と共に容器、パック、またはディスペンサー(dispenser)に入れることができる。
【0106】
iv.キット
本明細書中で使用される場合、「キット」は、本明細書中の他の所で記載されるように、免疫応答を調節することにおける使用のためのIL−2/IL−2Rα融合タンパク質を含む。本明細書中で使用される場合、「キット」および「系」という用語は、具体的な実施形態では、1つ以上の他の種類の要素または構成要素(例えば、他の種類の生化学試薬、容器、商業販売を目的とする包装などのパッケージ、使用説明書等)と組み合わせた少なくとも1つ以上のIL−2/IL−2Rα融合タンパク質を指すことを意図する。
【0107】
V.配列同一性
上述したように、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質の多様な構成要素を含む、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質の活性バリアントおよび断片、または同一のものをコードするポリヌクレオチドが提供される。かかる構成要素は、IL−2、IL−2Rαの細胞外ドメイン、リンカー配列またはコザック配列を含む。融合タンパク質の活性バリアントもしくは断片または融合タンパク質の所与の構成要素により保持される活性は、本明細書の他の所でさらに詳細に説明される。
【0108】
かかるバリアントは、所与の参照ポリペプチドまたはポリヌクレオチドと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有することができる。断片は、少なくとも10、20、30、50、75、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000の連続ヌクレオチドの所与の参照ヌクレオチド配列または所与のヌクレオチド参照配列の全長までを含むことができる;または断片は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、75、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200の連続アミノ酸または所与の参照ポリペプチド配列の全長までを含むことができる。
【0109】
本明細書中で使用される場合、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の関連における「配列同一性」または「同一性」は、指定の比較ウィンドウに最大限の一致について整列された場合に同一である、2つの配列中の残基を参照する。配列同一性の割合がタンパク質に関して使用される場合、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換により異なることが多いと認識されており、ここで、アミノ酸残基は、同様の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基と置換されおり、従って分子の機能的特性を変化させない。配列が保存的置換で異なる場合、パーセント配列同一性は、置換の保存的性質を補正するために上方に調整されてもよい。かかる保存的置換により異なる配列は、「配列類似性」または「類似性」を有する。この調整をするための手段は、当業者によく知られている。典型的には、これは、完全なミスマッチよりむしろ部分的なものとして保存的置換をスコアリングすることに関係し、それによって配列同一性の割合を増加させる。従って、例えば、同一のアミノ酸は1のスコアが与えられ、非保存的置換は0のスコアが与えられている場合、保存的置換は0と1の間のスコアが与えられる。保存的置換のスコアリングは、例えば、プログラムPC/GENE(Intelligenetics,Mountain View,California)に実装されているように計算される。
【0110】
本明細書中で使用される場合、「配列同一性の割合」は、比較ウィンドウの2つの最適に整列された配列の比較により決定される値を意味し、ここで、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアライメントに関する参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して付加または欠失(すなわち、ギャップ(gap))を含んでもよい。割合は、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列中に存在し、一致した位置の数を生じる位置の数を決定し、一致した位置の数を、比較ウィンドウ内の位置の全数で割り、かつ配列同一性の割合を得るためにその結果に100を掛けることにより計算される。
【0111】
特に明記しない限り、本明細書中で提供される配列同一性/類似性の値は、以下のパラメータを使用するGAPバージョン10を使用して得られた値を指す:50のGAPウェイトおよび3の長さウェイト(Length Weight)、ならびにnwsgapdna.cmpスコア化マトリックス;8のGAPウェイトおよび2の長さウェイト(Length Weight)を使用するヌクレオチド配列に関する%同一性および%類似性、ならびにBLOSUM62スコア化マトリックスを使用するアミノ酸配列に関する%同一性および%類似性;またはそれらと同等の任意のプログラム。「同等のプログラム」という用語は、問題となる任意の2つの配列に関して、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の一致を有するアライメントおよびGAPバージョン10により生成された対応しているアライメントと比較した場合、同一のパーセント配列同一性を生成する、任意の配列比較プログラムを意図する。
【0112】
本明細書中で使用される場合、単数の用語「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に示さない限り、複数の参照対象を含む。同様に、「または(or)」という用語は、文脈が明確に示さない限り、「および(and)」を含むことを意図する。核酸またはポリペプチドについて、全ての塩基サイズもしくはアミノ酸サイズ、ならびに全ての分子量または分子量値は近似が与えられ、かつ説明のために提供されるとさらに理解される。
【0113】
本開示の主題は、以下の非限定例によりさらに説明される。
【実施例1】
【0114】
実験
IL−2は、癌およびHIV/AID患者における免疫応答を高めるための試みにおいて使用されてきた生物製剤である。より最近では、はるかに低用量のIL−2を、自己組織の自己免疫様攻撃に関連する望ましくない免疫応答を抑制するために選択的に耐性を高めるために使用されてきた。重要なことに、これらの低用量のIL−2は、自己反応性T細胞の増強または再活性化の兆候を示さなかった。それにもかかわらず、IL−2は、その有効性を限定するインビボでの非常に短い半減期、および高用量での毒性を含み、治療剤として重大な欠点を有する。これらの理由から、新規のIL−2生物製剤を、その薬物動態ならびに1)制御性T細胞(Treg)および免疫寛容を高めるための低用量のIL−2−ベースの治療および2)免疫応答および免疫メモリーを高めるためのより高用量での補助療法、における使用のための応答の持続性を改善する目的で生産した。これらの目的を達成するために、インビボでIL−2R−ベアリングリンパ球の持続性のIL−2刺激の増加によりIL−2の有効性を増加させるようにこれらの融合を設計し、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質を開発した。これらの融合は、以下の通り操作されたタンパク質からなる(図1):1)効率的な翻訳のための最適化されたコザック配列を含有する、IL−2のリーダー配列;2)IL−2の全長配列;3)可変長のリシンまたはグリシン/セリンリンカー配列;4)発現するIL−2Rαの細胞外ドメインのコード配列;5)2アミノ酸グリシンスペーサー;6)精製のための6アミノ酸ポリヒスチジン領域;および7)2つの終止コドン。これらのマウスおよびヒトcDNA由来の予測されたタンパク質配列は、それぞれ図2Aおよび図2Bにおいて、IL−2/(GlySer)/IL−2Rα融合タンパク質に関して示される。これらのcDNAをpClneo発現ベクターにクローン化し、かつCOS7細胞におけるこれらの融合タンパク質の発現に使用した。培養上清の解析は、それぞれのマウス融合タンパク質が、インビトロでIL−2生物活性を示し、IL−2/(GlySer)/IL−2Rα融合タンパク質に関連するものが最適な活性であることを示した(図3A)。従って、この生物検定における抗IL−2の包含は、増殖を完全に阻害した(図3B)。より多い量のIL−2/(GlySer)/IL−2RαおよびIL−2/(GlySer)/IL−2RαをCHO細胞における発現後に調製し、かつ固定化されたニッケルへの融合タンパク質の6xHisタグの結合を介するアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。両方の融合タンパク質が同様に、IL−2Rαを発現する細胞への、2つの抗IL2Rα抗体(PC61および7D4)の結合を阻害したが(図4B)、マウスIL−2/(GlySer)/IL−2Rα融合タンパク質は、IL−2/(GlySer)/IL−2Rαより大きいIL−2生物活性を示し(図4A)、より大きいIL−2活性は前者の融合タンパク質に関連することを確認した。PC61および7D4の結合の阻害は、融合タンパク質のIL−2Rα部分が、これらの抗体に結合するのに十分な三次構造を保持したことも示す。しかしながら、これらの融合タンパク質は、IL−2Rαを発現する細胞への、IL−2RαのIL−2結合部位に対するモノクローナル抗体(3C7)の結合を阻害しなかった。この結果は、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質内のIL−2が、IL−2Rαの結合部位に空間的に近いことを意味する(図5)。これらの融合タンパク質のウェスタンブロット解析は、IL−2/IL−2Rαが55−65kDaであり、非還元条件下で幾分か速い移動度であり、かつそれは可溶性のIL−2Rαについて観察されたものより約15kDa大きいことを示した(図6A)。これ対応して、SDS−PAGEにより精製されたマウスIL−2/(GlySer)/IL−2Rαの直接解析は、異種の55−65kDa単量体タンパク質と一致し(図6B)、これはIL−2(15kDa)とIL−2Rα(40−50kDa)融合分子について予測されたサイズであり(図6)、ここで、IL−2Rαは、広範な可変グリコシル化によるサイズ異質性を示す(Malek and Korty,J Immunol.136:4092−4098,1986)。IL−2依存性シグナル伝達の直接の結果は、STAT5のチロシンリン酸化(pSTAT5)である。マウスIL−2/(GlySer)/IL−2Rαによるマウスの治療は、治療30分後に、TregにおけるpSTAT5の広範かつ選択的な活性化をもたらした(図7)。用量反応研究は、マウスIL−2/(GlySer)/IL−2Rαは、インビボでTregの多くの主要な活性に影響したことを示した(図8)。Tregに対するこれらの効果は、以下を含んだ:CD4T細胞区画におけるTregの増加した提示(図8A)および数(未掲載);IL−2依存性CD25の増加(図8B);増殖マーカーKi67の発現により評価される増加した増殖(図8C);およびIL−2依存性の最終分化したKlrg1Tregサブセットの分画の増加(図8D)。これらの効果は、非肥満糖尿病(NOD)マウスの脾臓および炎症性膵臓におけるTregについて最も顕著であった。標準CTLL IL−2生物検定において測定されるように、IL−2/(GlySer)/IL−2Rαに関連する1000ユニットのIL−2活性は、より低いが、Tregに対して容易に測定可能な効果を示した(図8)。IL−2/(GlySer)/IL−2Rα(2000ユニットのIL−2活性)で治療されたC57/BL6マウスに、組換え型IL−2(25,000ユニット)またはIL−2/抗IL−2のアゴニスト複合体(IL2/IC)(10,000ユニットのIL−2活性)を投与したマウスと比較した(図9)。IL−2/(GlySer)/IL−2Rαは、Tregの持続的な増大および関連する特性を誘導することにおいて、組換え型IL−2よりもはるかに有効であり、IL2/ICよりもわずかに有効である(図9)。免疫寛容原性Tregにおけるこれらの増加は、IL2/ICおよび組換え型IL−2と比較して、それぞれ、5および12.5倍低いレベルのIL−2活性だった。直接的に生体外でのTregにおけるpSTAT5のIL−2依存性活性化を考慮すると(図9)、これらのデータは、IL−2/IL−2Rαに関して約72時間の生物学的半減期を示唆する。糖尿病前のNODマウスは低量のIL−2/IL−2Rαで短期の治療を受けた(図10)。IL−2/IL−2Rαに関連する800UのIL−2活性で治療されたそれらのマウスにおいて、糖尿病の発症の遅延が観察された。免疫に関して、単回高用量のIL−2/(GlySer)/IL−2Rα(12,000UのIL−2活性)の適用もまた、CD8T細胞応答、特に長寿命の免疫メモリー細胞を実質的に高めた(図11)。免疫化後の初期(28日)に、CD44hiCD62LloCD127hiエフェクターメモリー(EM)細胞はメモリープールを支配した;しかしながら、時間の増加とともにCD44hi CD62Lhi CD127hiセントラルメモリー(CM)細胞が増加し、CM細胞は免疫化後202日でメモリープールを支配した(図12)。従って、IL−2/(GlySer)/IL−2Rαは組換え型IL−2と類似の様式で機能して、免疫寛容原性および免疫抑制性TregおよびTエフェクター/メモリー応答の増加を介する免疫を高めるが、それは、1)より低い有効レベルのIL−2活性で;2)より持続的な生物学的反応で;および3)Tエフェクター/免疫メモリー細胞より低用量で応答するTregで階層を保持して、かかる応答を提供することにより改善された薬物動態を示す。これらの知見は、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質が、適切な用量およびレジメンで投与される場合に免疫寛容または免疫メモリーを選択的に高める、IL−2活性を送達する薬剤の、改善されかつ新規のクラスを示すという考えを支持する。
【0115】
ヒトIL−2およびヒトIL−2Rαを含むIL−2/IL−2Rα融合タンパク質もまた生産された(図1図2B)。これらのcDNAをCHO細胞において発現させ、かつ分泌された融合タンパク質を、6x−Hisタグに基づくニッケルアフィニティークロマトグラフィーで精製した。融合タンパク質は、マウスIL−2/IL−2Rαに使用されるものと類似の様式でグリシン/セリンリンカーの長さが変化した。得られたヒトIL−2/IL−2Rα融合タンパク質の4つ全てが、マウスCTLLアッセイを使用してIL−2生物活性を示した(図13A)。ウェスタンブロット解析は、ヒトIL−2/IL−2Rαがまた、55から60kDaの間に異種のバンドを示し(図13B)、IL−2Rαに結合したIL−2について予測された高度にグリコシル化された分子と一致したことを確認した。
【0116】
(GS)および特に(GS)リンカーを有するIL−2/IL−2Rα融合タンパク質は、等量のIL−2活性をそれぞれのレーンにロードしたにもかかわらず、より少ない融合タンパク質が見られたため、より高い活性を有してもよい(図13B)。抗IL−2Rαモノクローナル抗体、M−A257およびBC96のヒトIL−2Rα関連細胞への、融合タンパク質の結合を阻害する能力は、融合タンパク質のIL−2Rαが、これらの抗体に結合するのに十分な三次構造を保持したことを示す(図14)。しかしながら、これらの融合タンパク質IL−2RαのIL−2結合部位に対するモノクローナル抗体(BC96)の結合を部分的にのみ阻害し、IL−2/IL−2Rα融合タンパク質内のIL−2は、IL−2Rαの結合部位に空間的に近いことを意味する。さらに、我々は、(GS)リンカーを含有するマウスおよびヒトIL−2/IL−2Rα融合タンパク質の比活性が、1ユニット/mlのIL−2生物活性活性についてそれぞれ80および2000pMであると推定した。これらの値は、1ユニット/mlで10pMである組換え型IL−2の活性よりはるかに高い。ヒトとマウスIL−2/IL−2Rα間の異なる活性は、ヒト融合タンパク質の相対的な非有効性により少なくとも部分的に説明され、マウス融合タンパク質またはマウスとヒト組換え型IL−2と比較して、生物検定におけるマウスCTLL細胞の増殖を支持する(未掲載)。これらの相対的に低い比活性および抗体ブロッキングの結果(図5および図12)は、IL−2Rを有する細胞を刺激するために融合タンパク質中のIL−2の量を制限する融合タンパク質との関連において、IL−2とIL−2Rαの間の特異的な分子内相互作用が存在する可能性を高めた。この考えを直接的に試験するために、ヒトIL−2Rα(Robb et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:5654−5658,1988を参照されたい)のIL−2結合部位内の2つのアルギニン残基をスレオニンおよびセリンに変異させた。我々はこれらの変異体IL−2R融合タンパク質に関連するはるかに大きい生物活性を検出した(図15);変異したIL−2/IL−2Rα融合タンパク質の比活性は、1ユニット/mlのIL−2活性について約5pMであると推定され、値は組換え型IL−2と非常に類似していた。従って、これらのデータは、ヒトIL−2/IL−2Rαが生物学的に活性であり、かつこれらの融合タンパク質における延長されたIL−2活性を説明する1つの特異的な作用機構が、IL−2Rα融合タンパク質のIL−2結合領域を有するIL−2部分とIL−2Rを発現する細胞を有するIL−2部分の間の競合的な相互作用を介することを示す。
【0117】
表1.配列のまとめ
【表1-1】

【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【0118】
本明細書で言及された全ての刊行物および特許出願は、本発明が関係する当業者のレベルを示す。全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が出典明示により組み込まれるように具体的にかつ個別に示されたのと同程度に、出典明示により本明細書中に組み込まれる。
【0119】
前述の発明は、理解を明確にするために図および例によって幾分か詳細に記載されているが、添付の特許請求の範囲の範囲内で特定の変更および改変が実施されてもよいことは明らかであろう。
図1
図2-A】
図2-B】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]