【課題を解決するための手段】
【0009】
発明による高圧ガス容器の固定構造は、筒状の胴部を有する複数の高圧ガス容器を固定する構造であって、対向する平行な2辺間の距離が上記胴部の直径以上である正六角形状の外形を有する拘束部材が各高圧ガス容器に嵌め付けられ、その拘束部材が、他の同様の拘束部材または固定用フレームと結合されていることを特徴とする。
外形が正六角形状(正六角形または略正六角形)である上記の拘束部材は、たとえば
図1・
図2に示す拘束部材10のようなもので、筒状の胴部を有する高圧ガス容器1に嵌め付けて、
図3のように他の拘束部材10と結合したり
図4に示す固定用フレーム30に結合したりして使用される。
上記のような拘束部材を各高圧ガス容器(のいずれかの部分。たとえば円筒状の胴部またはその両端部にある小径のネック部)の外側に嵌め付けると、
図3のように複数の高圧ガス容器を互いに接触しないように配置するとき、容器中心線の高さ方向の間隔(1段あたりの高さ方向寸法)を各容器の直径未満に抑えることができる。すなわち
図9(a)に示すとおり、発明に基づく拘束部材10を使用するとき、容器1の中心線間の高さ方向の間隔Dを容器1(の胴部1a)の直径以下にすることができる。従来(
図9(b))のように1つの容器1の真上に他の容器1を配置するなら、容器1の高さ方向の間隔D’は必ず容器1の直径以上になるため、拘束部材10の使用によって容器1のコンパクトな配置が可能になる。なお、六角形の向きを
図9(a)や
図3等の例から90°変更して拘束部材10を使用する場合には、左右に隣り合う列の容器中心線の間隔を各容器の直径未満に抑えることができる。
上下方向または左右方向の間隔を上記のように狭めることができると、限られたスペース内に多数の高圧ガス容器を効果的に設置することができる。水素トレーラのような走行車両に多数の高圧ガス容器を搭載する場合は、車両を小型化することや、容器を含む全体を低重心化して走行安全性を増すことにもつながる。水素トレーラ上でなく他の物または区域に高圧ガス容器を設置する場合においても、発明の固定構造によって多数の容器のコンパクトな配置が可能になる。
【0010】
上記の固定構造において、とくに、上記各高圧ガス容器が、筒状の胴部の端部に当該胴部よりも小径のネック部を有するものであり、上記拘束部材が当該ネック部に嵌め付けられるものであると好ましい。
胴部よりも小径であるネック部の方が、上記拘束部材を嵌め付けて当該高圧ガス容器を拘束することが容易である。特許文献2(
図10)に例示されたようにU字形のボルト等を拘束用に使用するとしても、胴部を拘束する場合よりもボルトのサイズを小さくすることができ、取扱いが容易になる。また、ネック部には、拘束されるとき傷が付くことを避けるための補強構造も付設しやすい
【0011】
また、上記拘束部材の外形(正六角形状)をなす6辺の各周縁部に、上記他の拘束部材または上記固定用フレームとの結合を可能にする結合部品または結合孔が設けられていると好ましい。たとえば、
図1(a)に示すように、六角形の各辺にボルト用の結合孔11aを設けておくとよい。
拘束部材の六角形の各辺に、上記のように結合部品や結合孔が設けられていると、その拘束部材を、他の拘束部材や固定用フレームと結合することが容易になる。たとえば、
図1(a)の結合孔11aを利用し、
図3のように隣接する拘束部材10との間にボルト11bを通すなどすると、複数本の高圧ガス容器を左右・上下に配置して連結することができる。また、他の拘束部材10と隣接していない部分の結合孔11aを利用して、
図6のように高圧ガス容器を固定用フレーム30に連結することもできる。
【0012】
上記各高圧ガス容器が、筒状の胴部の端部に当該胴部よりも小径のネック部を有するものであるとき、上記拘束部材が、六角形断面を有する短筒状の外周枠と、その外周枠の内側に固定されたパネルと、上記パネルに取り付けられるとともに各高圧ガス容器の上記ネック部に装着されるブラケットとを有するものであると好ましい。
図1等に示す拘束部材10はその一例であり、六角形断面を有する短筒状の外周枠11と、その内側に固定されたパネル12と、パネル12に取り付けられるとともに各高圧ガス容器1のネック部1bに装着されるブラケット13とを有している。
そのような拘束部材は、鋼板など市販の金属材を利用した軽量な部材として安価に構成することができる。また、パネルに対し溶接や締結具によって取り付けられたブラケットに、特許文献2にも記載されたU字形ボルト等を通し、または他の締め付け用具を取り付ければ、たとえば
図2の状態で高圧ガス容器のネック部を適切に拘束することができる。
【0013】
高圧ガス容器に嵌め付けられた上記拘束部材が、他の高圧ガス容器に嵌め付けられた他の拘束部材に対し、外形をなす上記6辺の周縁部のうちいずれかの辺同士を重ねた状態で結合されているとともに、1つまたは複数の固定用フレームに対し、他の拘束部材とは結合されていないいずれかの辺を重ねた状態で結合されているとよい。つまり、拘束部材同士が、また拘束部材といずれかの固定用フレームとが、たとえば
図5・
図6のように結合されるのが好ましい。
そのような状態に拘束部材が結合されると、複数の高圧ガス容器が、互いに強く連結されて安定的に固定される。拘束部材同士が結合された状態では、各高圧ガス容器に取り付けられた六角形の周縁部が、ハニカム状に、向きの異なる複数の斜面を介して互いに接触しているため、たとえば同じ高さに並んだ各段の高圧ガス容器が水平方向にずれ動いてしまう事態が発生しがたいからである。
【0014】
高圧ガス容器に嵌め付けられた上記各拘束部材が、軸心を水平にして他の拘束部材および固定用フレームと結合されていて、最上部の拘束部材の上部に結合されている上部固定用フレームが吊上げ用部材を兼ねる、という構造とするのも好ましい。つまり、
図5の例のように、拘束部材10(および高圧ガス容器1)の軸心を水平にして拘束部材10同士および拘束部材10と固定用フレーム30とを結合するとともに、最上部の拘束部材10の上部に、吊上げ用部材を兼ねる上部固定用フレーム40を結合するのである。
上記のようにすると、水平方向に並べて結合した各段の高圧ガス容器(
図5の例では4本または5本の組)、または水平方向および上下方向に結合した全体の高圧ガス容器(
図5の例では23本の組)を、上部に結合する上部固定用フレームを用いて吊り上げることが容易に行える。そのようにして高圧ガス容器を容易に吊り上げられるなら、複数の容器を連結して固定したり、その連結状態を解いたりすること作業を短時間に容易に行えることとなる。なお、吊り上げ用部材を兼ねる上部の固定用フレームには、各拘束部材の上部の各斜辺と結合される下向きの斜辺を有する結合片(
図5中の符号44)を一体に設けておくのがよい。
【0015】
水素が充填された高圧ガス容器を複数搭載して移送する水素トレーラとしては、当該容器が、上記いずれかの固定構造を用いて複数本結合されて台車上に搭載されているものが好ましい。
そのような水素トレーラでは、複数の高圧ガス容器が、コンパクトなスペースに収められるとともに互いに強く安定的に連結されるからである。高圧ガス容器の搭載高さを抑制できるため、低重心にしてトレーラの走行を安定化させるという利点もある。