【文献】
J. Am. Soc. Nephrol., 2005, Vol.16, No.4, pp.846-851
【文献】
Clin. J. Am. Soc. Nephrol., 2008, Vol.3, No.4, pp.1212-1218
【文献】
Curr. Opin. Nephrol. Hypertens., 2009 Vol.18, No.2, pp.99-106,(Author Manuscript)
【文献】
Nephron Clin. Pract., 2012, Vol.120, No.1, pp.c25-c35,ePub 2011.12.23
【文献】
J. Am. Soc. Nephrol., 2010, Vol.21, No.6, pp.1052-1061
【文献】
Int. J. Nephrol. Renovasc. Dis., 2011, Vol.4, pp.57-71
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療効果が顕著に優れた組合せ医薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療効果を顕著に増大させることができる組合せ医薬について鋭意研究を行った。その結果、トルバプタンとソマトスタチン誘導体であるオクトレオチドとを併用した場合に、それぞれの単独投与の場合に比べて顕著な多発性嚢胞腎の治療効果(例えば、腎臓重量の低下)が確認された。また、トルバプタン及び/又はソマトスタチン誘導体の投与量がそれぞれ単独投与では有効ではない低い投与量であっても、それらを組合せて用いることにより顕著な多発性嚢胞腎の治療効果が確認された。かかる知見に基づきさらに研究を重ねた結果、本発明
を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の組合せ医薬を提供する。
【0011】
項1 トルバプタン又はそのプロドラッグとソマトスタチン誘導体とを組合せたことを特徴とする多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療薬。
【0012】
項2 トルバプタン又はそのプロドラッグを含む医薬組成物(製剤)とソマトスタチン誘導体を含む医薬組成物(製剤)の組合せである項1に記載の多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療薬。
【0013】
項3 トルバプタン又はそのプロドラッグの投与量が単独投与では有効ではない低い投与量である項1又は2に記載の多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療薬。
【0014】
項4 ソマトスタチン誘導体がオクトレオチド、パシレオチド、ランレオチド、バプレオチド又はそれらの塩である項1〜3のいずれかに記載の多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療薬。
【0015】
項5 トルバプタン又はそのプロドラッグを含む経口投与剤、及びソマトスタチン誘導体を含む注射剤の組合せである項1〜4のいずれかに記載の多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療薬。
【0016】
項6 ソマトスタチン誘導体を含む注射剤が皮下投与剤である項5に記載の多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療薬。
【0017】
項7 ソマトスタチン誘導体を含む注射剤が筋肉内投与剤である項5に記載の多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療薬。
【0018】
項8 多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療薬を製造するための、トルバプタン又はそのプロドラッグとソマトスタチン誘導体との組合せの使用。
【0019】
項9 多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療するために使用するトルバプタン又はそのプロドラッグとソマトスタチン誘導体との組合せ医薬。
【0020】
項10 多発性嚢胞腎の患者に対して、トルバプタン又はそのプロドラッグとソマトスタチン誘導体とを組み合わせて投与することを特徴とする多発性嚢胞腎の治療方法。
【0021】
項11 多発性嚢胞腎の患者に対して、トルバプタン又はそのプロドラッグを経口投与し及びソマトスタチン誘導体を皮下投与又は筋肉内投与することを特徴とする項10に記載の多発性嚢胞腎の治療方法。
【0022】
項12 トルバプタン又はそのプロドラッグを含む経口投与剤、及びソマトスタチン誘導体を含む注射剤(特に、皮下投与剤又は筋肉内投与剤)からなる多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療用キット。
【0023】
項13 トルバプタン又はそのプロドラッグがトルバプタンであり、ソマトスタチン誘導体がオクトレオチドである項1〜7のいずれかに記載の多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療薬。
【0024】
項14 トルバプタン又はそのプロドラッグがトルバプタンであり、ソマトスタチン誘
導体がオクトレオチドである項8の使用。
【0025】
項15 トルバプタン又はそのプロドラッグがトルバプタンであり、ソマトスタチン誘導体がオクトレオチドである項9の組合せ医薬。
【0026】
項16 トルバプタン又はそのプロドラッグがトルバプタンであり、ソマトスタチン誘導体がオクトレオチドである項10又は11の治療方法。
【0027】
項17 トルバプタン又はそのプロドラッグがトルバプタンであり、ソマトスタチン誘導体がオクトレオチドである項12のキット。
【発明の効果】
【0028】
本発明のトルバプタン又はそのプロドラッグとソマトスタチン誘導体とを組合せた医薬は、それぞれの単独投与の場合に比べて顕著な多発性嚢胞腎の治療効果(例えば、腎臓重量の増大の抑制効果、腎機能の改善効果等)を発揮する。また、トルバプタン若しくはそのプロドラッグ及び/又はソマトスタチン誘導体の投与量がそれぞれ単独投与では有効ではない低い投与量であっても、それらを組合せて用いることにより顕著な多発性嚢胞腎の治療効果を発揮する。
【0029】
これらより、本発明の組合せ医薬は副作用を低減し薬効を保持することができるため、多発性嚢胞腎の患者の生活の質(QOL)を維持しつつ高い治療効果が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療薬は、トルバプタン又はそのプロドラッグとソマトスタチン誘導体とを組合せたことを特徴とする。
【0031】
1.トルバプタン及びそのプロドラッグ
トルバプタンとは、式(1)で表される7−クロロ−5−ヒドロキシ−1−[2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾアゼピンの一般名称である。
【0033】
トルバプタンは、式(1)で表されるように、水酸基が結合する炭素が不斉炭素となるため、当該不斉炭素に基づく一対の鏡像異性体(R体及びS体)を有している。トルバプタンとは、R体、S体及び両者を任意の割合で含む混合物のいずれをも包含する意味に用
いられる。好ましくは、R体、S体又はラセミ体(R体及びS体の等量混合物)であり、より好ましくはラセミ体である。
【0034】
トルバプタンは、結晶、非晶質及び両者の混合物のいずれであってもよい。結晶が2以上の多形を有する場合にはそれらの全てを包含する。
【0035】
トルバプタンは、トルバプタン分子中の1つ又は複数の原子を1つ又は複数の同位体原子で置換したものであってもよい。同位体原子の例としては重水素(
2H)、三重水素(
3H)、
13C、
14N、
18O等が挙げられる。
【0036】
トルバプタンは、トルバプタンの無水物、溶媒和物(例えば、水和物、アルコール和物等)、塩、共結晶等のいずれの形態であってもよい。
【0037】
トルバプタンは、プロドラッグであってもよい。プロドラッグとは、水に対する溶解性、安定化、バイオアベイラビリティーの改善等を考慮して活性化合物(トルバプタン)を修飾した化合物である。
【0038】
プロドラッグの例としては、トルバプタンの水酸基をリン酸エステル化した化合物が挙げられる。具体的には、特表2009−521397号公報に記載の、下記式(1a)で表されるベンゾアゼピン化合物又はその塩が挙げられる。
【0040】
(式中、Rは、水素原子、保護基を有することのあるヒドロキシ基、保護基を有することのあるメルカプト基、又は保護基を1個若しくは2個有することのあるアミノ基を示す。R
aは、水素原子又はヒドロキシ保護基を示す。Xは酸素原子または硫黄原子を示す。)
式(1a)における、Rで示される保護基を有することのあるヒドロキシ基、保護基を有することのあるメルカプト基、又は保護基を1個若しくは2個有することのあるアミノ基における「保護基」としては特に限定はなく、典型例として、低級アルキル基(例えば、メチル、エチル等のC1−6アルキル基等)、フェニル低級アルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル等のフェニルC1−6アルキル基等)、低級アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル基等のC1−6アルコキシカルボニル基等)等が挙げられる。
【0041】
式(1a)における、R
aで示されるヒドロキシ保護基としては、上記Rに含まれる「保護基」で例示されたものを採用することができる。
【0042】
プロドラッグの他の例としては、トルバプタンの水酸基をアシル化した化合物が挙げられる。具体的には、WO 2009/001968(特表2010−531293号公報
)に記載の、下記式(1b)で表されるベンゾアゼピン化合物又はその塩が挙げられる。
【0044】
[式中、R
1は、下記(1-1)〜(1-7)で示されるいずれかの基を示す。
(1-1) 基−CO−(CH
2)
n−COR
2
(ここで、nは1〜4の整数を示す。R
2は、(2-1)水酸基;(2-2)置換基として水酸基、低級アルカノイル基、低級アルカノイルオキシ基、低級アルコキシカルボニルオキシ基、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基もしくは5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル基を有することのある低級アルコキシ基;または(2-3)置換基とし
てヒドロキシ低級アルキル基を有することのあるアミノ基を示す。)
(1-2) 基−CO−(CH
2)
m−NR
3R
4
(ここで、mは0〜4の整数を示す。R
3は、水素原子または低級アルキル基を示す。R
4は、(4-1)水素原子;(4-2)置換基としてハロゲン原子、低級アルキルアミノ基、低級アルコキシカルボニル基もしくは5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル基を有することのある低級アルキル基;または(4-3)置換基としてハロゲン原子、低級
アルカノイルオキシ基もしくは5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル基を有することのある低級アルコキシカルボニル基を示す。また、R
3及びR
4は、これらが結合する窒素原子と共に他の窒素原子もしくは酸素原子を介しまたは介することなく互いに結合して5〜6員の飽和複素環を形成してもよい。該複素環上には、(4-4)低級
アルキル基(低級アルキル基上に置換基としてヒドロキシ低級アルコキシ基を有していてもよい);(4-5)低級アルコキシカルボニル基;(4-6)アルキルカルボニル基(アルキル基上に置換基としてカルボキシル基もしくは低級アルコキシカルボニル基を有していてもよい);(4-7)アリールカルボニル基;または(4-8)フリルカルボニル基が置換していてもよい。)
(1-3) 基−CO−(CH
2)
p−O−CO−NR
5R
6
(ここで、pは1〜4の整数を示す。R
5は低級アルキル基を示す。R
6は低級アルコキシカルボニル低級アルキル基を示す。)
(1-4) 基−CO−(CH
2)
q−X−R
7
(ここで、qは1〜4の整数を示す。Xは、酸素原子、硫黄原子またはスルホニル基を示す。R
7は、カルボキシ低級アルキル基または低級アルコキシカルボニル低級アルキル基を示す。)
(1-5) 基−CO−R
8
(ここで、R
8は、(8-1)アルキル基上にハロゲン原子、低級アルカノイルオキシ基もし
くはフェニル基(該フェニル基は、ヒドロキシ基がベンジル基で置換されていてもよいジヒドロキシホスホリルオキシ基および低級アルキル基で置換されている)が置換していてもよいアルキル基、(8-2)ハロゲン原子、低級アルカノイルオキシ基もしくはジヒドロキ
シホスホリルオキシ基を置換基として有する低級アルコキシ基、(8-3)ピリジル基、また
は(8-4)低級アルコキシフェニル基を示す。)
(1-6) 低級アルキルチオ基、ジヒドロキシホスホリルオキシ基および低級アルカノイルオキシ基からなる群より選ばれた基が置換した低級アルキル基、または
(1-7) 1個以上の保護基を有することのあるアミノ酸残基もしくはペプチド残基]
式(1b)において、「低級」とは、特に指示がなければ炭素原子1〜6個を意味するものとする。
【0045】
低級アルカノイル基としては、例えば、アセチル、n−プロピオニル、n−ブチリル、イソブチリル、n−ペンタノイル、tert−ブチルカルボニル、n−ヘキサノイル基等の直鎖または分枝鎖状のC2−6アルカノイル基が挙げられる。
【0046】
低級アルカノイルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ、n−プロピオニルオキシ、n−ブチリルオキシ、イソブチリルオキシ、n−ペンタノイルオキシ、tert−ブチルカルボニルオキシ、n−ヘキサノイルオキシ基等の直鎖または分枝鎖状のC2−6アルカノイルオキシ基が挙げられる。
【0047】
低級アルコキシカルボニルオキシ基としては、アルコキシ部分が直鎖または分枝鎖状のC1−6アルコキシ基であるアルコキシカルボニルオキシ基であって、例えば、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、n−プロポキシカルボニルオキシ、イソプロポキシカルボニルオキシ、n−ブトキシカルボニルオキシ、イソブトキシカルボニルオキシ、tert−ブトキシカルボニルオキシ、sec−ブトキシカルボニルオキシ、n−ペンチルオキシカルボニルオキシ、ネオペンチルオキシカルボニルオキシ、n−ヘキシルオキシカルボニルオキシ、イソヘキシルオキシカルボニルオキシ、3−メチルペンチルオキシカルボニルオキシ基等を挙げることができる。
【0048】
シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基としては、例えば、シクロプロピルオキシカルボニルオキシ、シクロブチルオキシカルボニルオキシ、シクロペンチルオキシカルボニルオキシ、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ、シクロヘプチルオキシカルボニルオキシ、シクロオクチルオキシカルボニルオキシ基等のシクロアルキル部分がC3−8シクロアルキル基であるシクロアルキルオキシカルボニルオキシ基を挙げることができる。
【0049】
シクロアルキルカルボニル基としては、例えばシクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘプチルカルボニル、シクロオクチルカルボニル基等のシクロアルキル部分がC3−8シクロアルキル基であるシクロアルキルカルボニル基を挙げることができる。
【0050】
低級アルコキシ基としては、直鎖または分枝鎖状のC1−6アルコキシ基であって、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ、3−メチルペンチルオキシ基等を挙げることができる。
【0051】
ヒドロキシ低級アルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3,4−ジヒドロキシブチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、5−ヒドロキシペンチル、6−ヒドロキシヘキシル、3,3−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル、2−メチル−3−ヒドロキシプロピル、2,3,4−トリヒドロキシブチル基等の水酸基を1〜3個有する直鎖または分枝鎖状のC1−6アルキル基を挙げることができる。
【0052】
アルキル基としては、直鎖または分枝鎖状のC1−10アルキル基であって、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル基等を挙げることができる。
【0053】
低級アルキル基としては、直鎖または分枝鎖状のC1−6アルキル基であって、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル基等を挙げることができる。
【0054】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を示す。
【0055】
低級アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n−ブチルアミノ、tert−ブチルアミノ、n−ペンチルアミノ、n−ヘキシルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−n−プロピルアミノ、ジ−n−ブチルアミノ、ジ−n−ペンチルアミノ、ジ−n−ヘキシルアミノ、N−メチル−N−エチルアミノ、N−エチル−N−n−プロピルアミノ、N−メチル−N−n−ブチルアミノ、N−メチル−N−n−ヘキシルアミノ基等の置換基として直鎖または分枝鎖状のC1−6アルキル基を1〜2個有するアミノ基を例示できる。
【0056】
低級アルコキシカルボニル基としては、アルコキシ部分が直鎖または分枝鎖状のC1−6アルコキシ基であるアルコキシカルボニル基であって、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、ネオペンチルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、イソヘキシルオキシカルボニル、3−メチルペンチルオキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0057】
R
3及びR
4が、これらが結合する窒素原子と共に他の窒素原子もしくは酸素原子を介しまたは介することなく互いに結合して形成される5〜6員の飽和複素環としては、例えば、ピロリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン等が挙げられる。
【0058】
ヒドロキシ低級アルコキシ基としては、例えば、ヒドロキシメトキシ、2−ヒドロキシエトキシ、1−ヒドロキシエトキシ、3−ヒドロキシプロポキシ、4−ヒドロキシブトキシ、5−ヒドロキシペンチルオキシ、6−ヒドロキシヘキシルオキシ、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエトキシ、2−メチル−3−ヒドロキシプロポキシ基等の1〜2個のヒドロキシ基を有し、アルコキシ部分が直鎖または分枝鎖状のC1−6アルコキシ基であるヒドロキシアルコキシ基を例示できる。
【0059】
アルキルカルボニル基としては、アルキル部分が直鎖または分枝鎖状のC1−20アル
キル基であるアルキルカルボニル基であって、例えば、メチルカルボニル、エチルカルボニル、n−プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、n−ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニル、sec−ブチルカルボニル、n−ペンチルカルボニル、イソペンチルカルボニル、ネオペンチルカルボニル、n−ヘキシルカルボニル、イソヘキシルカルボニル、3−メチルペンチルカルボニル、n−ヘプチルカルボニル、n−オクチルカルボニル、n−ノニルカルボニル、n−デシルカルボニル、n−ウンデシルカルボニル、n−ドデシルカルボニル、n−トリデシルカルボニル、n−テトラデシルカルボニル、n−ペンタデシルカルボニル、n−ヘキサデシルカルボニル、n−ヘプタデシルカルボニル、n−オクタデシルカルボニル、n−ノナデシルカルボニル、n−イコシルカルボニル基等を挙げることができる。
【0060】
アリールカルボニル基としては、例えば、フェニルカルボニル、(1−または2−)ナフチルカルボニル基等を挙げることができる。
【0061】
フリルカルボニル基としては、例えば、(2−または3−)フリルカルボニル基を例示できる。
【0062】
低級アルコキシカルボニル低級アルキル基としては、例えば、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、2−メトキシカルボニルエチル、2−エトキシカルボニルエチル、1−エトキシカルボニルエチル、3−メトキシカルボニルプロピル、3−エトキシカルボニルプロピル、4−エトキシカルボニルブチル、5−イソプロポキシカルボニルペンチル、6−n−プロポキシカルボニルヘキシル、1,1−ジメチル−2−n−ブトキシカルボニルエチル、2−メチル−3−tert−ブトキシカルボニルプロピル、2−n−ペンチルオキシカルボニルエチル、n−ヘキシルオキシカルボニルメチル基等のアルコキシ部分が直鎖または分枝鎖状のC1−6アルコキシ基であり、アルキル部分が直鎖または分枝鎖状のC1−6アルキル基であるアルコキシカルボニルアルキル基を例示できる。
【0063】
カルボキシ低級アルキル基としては、例えば、カルボキシメチル、2−カルボキシエチル、1−カルボキシエチル、3−カルボキシプロピル、4−カルボキシブチル、5−カルボキシペンチル、6−カルボキシヘキシル、1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル、2−メチル−3−カルボキシプロピル基等のアルキル部分が直鎖または分枝鎖状のC1−6アルキル基であるカルボキシアルキル基を例示できる。
【0064】
低級アルコキシフェニル基としては、例えば、メトキシフェニル、エトキシフェニル、n−プロポキシフェニル、イソプロポキシフェニル、n−ブトキシフェニル、イソブトキシフェニル、tert−ブトキシフェニル、sec−ブトキシフェニル、n−ペンチルオキシフェニル、イソペンチルオキシフェニル、ネオペンチルオキシフェニル、n−ヘキシルオキシフェニル、イソヘキシルオキシフェニル、3−メチルペンチルオキシフェニル基等のアルコキシ部分が直鎖または分枝鎖状のC1−6アルコキシ基であるアルコキシフェニル基を挙げることができる。
【0065】
低級アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、n−ペンチルチオ、n−ヘキシルチオ基等の直鎖または分枝鎖状のC1−6アルキルチオ基を挙げることができる。
【0066】
アミノ酸残基もしくはペプチド残基としては、例えば、アラニル、フェニルアラニル、サルコシル、バリル、ロイシル、イソロイシル、プロリル、N−エチルグリシル、N−プロピルグリシル、N−イソプロピルグリシル、N−ブチルグリシル、N−tert-ブチ
ルグリシル、N−ペンチルグリシル、N−ヘキシルグリシル、N,N−ジエチルグリシル
、N,N−ジプロピルグリシル、N,N−ジブチルグリシル、N,N−ジペンチルグリシル、N,N−ジヘキシルグリシル、N−メチル−N−エチルグリシル、N−メチル−N−プロピルグリシル、N−メチル−N−ブチルグリシル、N−メチル−N−ペンチルグリシル、N−メチル−N−ヘキシルグリシル基等のアミノ酸残基;サルコシル−グリシル、グリシル−グリシル、グリシル−サルコシル、サルコシル−サルコシル、アラニル−グリシル、フェニルアラニル−グリシル、フェニルアラニル−フェニルアラニル、グリシル−グリシル−グリシル、N−エチルグリシル−グリシル、N−プロピルグリシル−グリシル、N,N−ジメチルグリシル−グリシル、N,N−ジエチルグリシル−グリシル、N−メチル−N−エチルグリシル−グリシル、サルコシル−グリシル−グリシル、N−エチルグリシル−グリシル−グリシル、N,N−ジメチルグリシル−グリシル−グリシル基等のペプチド残基等が挙げられる。
【0067】
アミノ酸もしくはペプチドの保護基としては、例えば、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、アセチル基等のアミノ酸もしくはペプチドを構成するアミノ基を保護する通常の保護基が挙げられる。
【0068】
本明細書において、トルバプタンのプロドラッグ(特に、式(1a)で表される化合物及び/または式(1b)で表される化合物)は、トルバプタンと共に又は置き換えて用いることができる。本発明において、好ましくはトルバプタンである。
【0069】
2.ソマトスタチン誘導体
ソマトスタチン誘導体とは、ソマトスタチン、及びソマトスタチンの生理活性に必須のアミノ酸配列(Phe-Trp-Lys-Thr)を含むソマトスタチン様の作用を有する化合物又はそ
の塩を意味する。当該化合物として具体的には、ソマトスタチン、オクトレオチド、パシレオチド、ランレオチド、バプレオチド等が挙げられる。これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、オクトレオチドである。
【0070】
オクトレオチドとは、式(2)で表される環状ポリペプチド、即ち、(−)−D−フェニルアラニル−L−システイニル−L−フェニルアラニル−D−トリプトフィル−L−リシル−L−スレオニル−N−[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]−L−システインアミド サイクリック(2→7)ジスルフィドの一般名称である。
【0072】
ソマトスタチン誘導体は、薬学的に許容可能な酸と共に塩を形成していてもよい。酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸及び他の無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、乳酸及び他の有機酸等が挙げられる。ソマトスタチン誘導体の塩として、好ましくは塩酸塩又は酢酸塩であり、より好ましくはオクトレオチドの二酢酸塩である。これは、サン
ドスタチン(ノバルティスファーマ(株)製)として市販されている。
【0073】
3.製剤
本発明の多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療薬は、トルバプタン又はそのプロドラッグとソマトスタチン誘導体とを組合せたことを特徴とする。好ましくはトルバプタンとソマトスタチン誘導体との組合せであり、より好ましくはトルバプタンとオクトレオチドとの組合せ、トルバプタンとパシレオチドとの組合せ、トルバプタンとランレオチドとの組合せ、トルバプタンとパプレオチドとの組合せであり、さらに好ましくはトルバプタンとオクトレオチドとの組み合わせである。これらの組合せは本発明の全てに適用される。
【0074】
本発明の医薬の形態としては、例えば、トルバプタン又はそのプロドラッグとソマトスタチン誘導体とを混ぜ合わせた1つの製剤である態様(合剤)、両者を別々に含む製剤を併用する態様(併用剤)のいずれをも包含する。好ましくは併用剤である。
【0075】
併用剤としては、トルバプタン又はそのプロドラッグを含む医薬組成物(製剤)とソマトスタチン誘導体を含む医薬組成物(製剤)の組合せが挙げられる。
【0076】
トルバプタン又はそのプロドラッグとソマトスタチン誘導体を組合せてなる製剤は、合剤又は併用剤のいずれであってもよく、その製剤の形態は以下の医薬製剤から選択することができる。
【0077】
医薬製剤は、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の通常用いられる希釈剤及び/または賦形剤を用いて、慣用の方法によりトルバプタン若しくはそのプロドラッグ及び/又はソマトスタチン誘導体を配合することにより調製される。
【0078】
医薬製剤の形態は治療の目的に従って様々な形態から選択することができる。典型的な例として、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、軟膏剤、注射剤(液剤、懸濁剤、乳剤等)等が挙げられる。
【0079】
錠剤を調製する場合には、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース及び他の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、グルコース溶液、デンプン溶液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン及び他の結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、寒天末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、ラクトース及び他の崩壊剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油及び他の崩壊抑制剤;第四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム及び他の吸収促進剤;グリセリン、デンプン及び他の湿潤剤;デンプン、ラクトース、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸及び他の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール及び他の滑剤等を含む様々な既知の担体のいずれかを使用することができる。
【0080】
かかる錠剤は、必要に応じて一般的なコーティング材料でコーティングし、例えば糖衣錠、ゼラチンコーティング錠剤、腸溶性(enteric-coated)錠剤、フィルムコーティング錠剤、二層又は多層錠剤等を調製してもよい。
【0081】
丸剤を調製する場合には、例えば、グルコース、ラクトース、デンプン、カカオバター、硬化植物油、カオリン、タルク及び他の賦形剤;アラビアゴム末、トラガカント末、ゼラチン、エタノール及び他の結合剤;ラミナラン、寒天及び他の崩壊剤等を含む様々な既
知の担体のいずれかを使用することができる。
【0082】
坐剤を調製する場合には、例えば、ポリエチレングリコール、カカオバター、高級アルコール、高級アルコールのエステル、ゼラチン、半合成グリセリド等を含む様々な既知の担体のいずれかを使用することができる。
【0083】
注射剤を調製する場合には、殺菌されかつ血液と等張である液剤、乳剤又は懸濁剤に製剤することが好ましい。トルバプタン若しくはそのプロドラッグ及び/又はソマトスタチン誘導体を用いて、これら液剤、乳剤及び懸濁剤の形態に製剤するに際しては、希釈剤としてこの分野において慣用されているものをすべて使用できる。そのような希釈剤としては、例えば水、乳酸水溶液、エタノール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を挙げることができる。なお、この場合、等張性の溶液を調製するに充分な量の食塩、グルコース、マンニトールまたはグリセリン等の等張化剤を医薬製剤中に配合してもよい。また通常のpH調整剤、溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤等、及びさらには必要に応じて、着色剤、保存剤、香料、甘味剤等、及び/又は他の薬剤を添加してもよい。
【0084】
本発明の医薬製剤におけるトルバプタン若しくはそのプロドラッグ及び/又はソマトスタチン誘導体の含有量は、組合せ医薬として治療上の有効量であれば特に限定されず、広範囲から好適に選択することができる。トルバプタン若しくはそのプロドラッグ及び/又はソマトスタチン誘導体は、医薬製剤中、通常0.01〜70重量%の割合で含有することが好ましい。例えば、併用剤の場合、トルバプタン又はそのプロドラッグを含む医薬製剤中、トルバプタン又はそのプロドラッグは、通常0.01〜70重量%の割合で含有し、ソマトスタチン誘導体を含む医薬製剤中、ソマトスタチン誘導体は、通常0.01〜70重量%の割合で含有する。
【0085】
4.投与方法及び投与量
本発明による医薬製剤の投与方法(投与経路)は限定されず、この製剤は、製剤の形態、患者の年齢及び性別、疾患の状態並びにその他の条件に応じた方法で投与することができる。例えば、錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤の場合は、経口投与される。注射剤の場合は、単独で、又はグルコース溶液若しくはアミノ酸溶液等の一般的な注射輸液と混合して静脈内に投与するか、又は必要に応じて単独で筋肉内、皮内、皮下若しくは腹腔内に投与することができる。坐剤は直腸内に投与される。
【0086】
本発明の組合せ医薬の典型例としては併用剤が挙げられる。併用剤としては、トルバプタン又はそのプロドラッグを含む医薬組成物(製剤)とソマトスタチン誘導体を含む医薬組成物(製剤)の組合せが挙げられる。この場合、トルバプタン又はそのプロドラッグを含む製剤としては、経口投与剤(経口剤)、筋肉内投与剤(徐放性製剤)、静脈内投与剤(徐放性製剤)等が挙げられ、好ましくは経口剤である。ソマトスタチン誘導体を含む製剤としては、皮下投与剤(皮下注射剤)、筋肉内投与剤(徐放性製剤)、経口投与剤(経口剤)等が挙げられ、好ましくは皮下投与剤である。
【0087】
併用剤の組合せとしては、例えば、トルバプタン又はそのプロドラッグが経口投与剤であり且つソマトスタチン誘導体が皮下投与剤の場合、トルバプタン若しくはそのプロドラッグ及びソマトスタチン誘導体がともに皮下投与剤(皮下注射剤)の場合等が挙げられるが、この組み合わせには限定されない。
【0088】
本発明の組合せ医薬の製剤の投与量は、使用方法、患者の年齢及び性別、疾患の重症度、並びに他の条件に応じて好適に選択される。
【0089】
トルバプタン又はそのプロドラッグを含む製剤の投与形態としては、例えば、トルバプタン又はそのプロドラッグに換算して、通常、約0.001〜約300mg/kg(体重)/日、好ましくは0.001〜100mg/kg(体重)/日を1回〜数回に分けて投与する。
【0090】
さらに、単独投与では有効量未満の低いトルバプタン又はそのプロドラッグの投与量であっても、ソマトスタチン誘導体と併用することにより優れた多発性嚢胞腎の治療効果を発揮することができる。当該投与形態としては、例えば、トルバプタン又はそのプロドラッグに換算して、約0.001〜約50mg/kg(体重)/日、好ましくは0.001〜30mg/kg(体重)/日を1回〜数回に分けて投与する。
【0091】
ソマトスタチン誘導体を含む製剤の投与形態としては、例えば、ソマトスタチン誘導体に換算して、通常、約0.001〜約10mg/kg(体重)/日、好ましくは0.001〜1mg/kg(体重)/日を1回〜数回に分けて投与する。
【0092】
トルバプタン又はそのプロドラッグを含む製剤とソマトスタチン誘導体を含む製剤は、同時に又は投与間隔をあけてヒト(特に患者)に投与することができる。
【0093】
本発明は、多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療薬を製造するための、トルバプタン又はそのプロドラッグとソマトスタチン誘導体との組合せの使用を包含する。
【0094】
本発明は、多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療するために使用するトルバプタン又はそのプロドラッグとソマトスタチン誘導体との組合せ医薬を包含する。
【0095】
本発明は、多発性嚢胞腎の患者に対して、トルバプタン又はそのプロドラッグとソマトスタチン誘導体とを組み合わせて投与することを特徴とする多発性嚢胞腎の治療方法を包含する。投与形態として、トルバプタン又はそのプロドラッグを経口投与し、及びソマトスタチン誘導体を皮下投与又は筋肉内投与することが好ましい。
【0096】
本発明は、トルバプタン又はそのプロドラッグを含む経口投与剤、及びソマトスタチン誘導体を含む注射剤(特に、皮下投与剤又は筋肉内投与剤)からなる多発性嚢胞腎の予防及び/又は治療用キットを包含する。当該キットは、トルバプタン又はそのプロドラッグを含む経口投与剤を収容した容器、及びソマトスタチン誘導体を含む皮下投与剤又は筋肉内投与剤を収容する容器を含むキットが挙げられる。
【0097】
本明細書に記載された文献は、参考として援用される。
【実施例】
【0098】
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0099】
実施例1
多発性嚢胞腎における、バソプレシン受容体拮抗薬であるトルバプタン及びソマトスタチンアナログであるオクトレオチドのそれぞれの単独効果ならびに併用効果について、PKDモデル動物であるpcyマウスを用いて評価した。
【0100】
なお、pcyマウスは、成人型多発性嚢胞腎モデルマウスであり、遺伝様式は常染色体劣
勢変異体である。このpcy遺伝子をDBA/2マウスに導入したDBA/2FG-pcyマウスは、4週より肉眼的に嚢胞を認め30週まで経時的に腎容積が増加する。pcyマウスでは野生型よりも腎
臓のcAMPが高く、また腎臓におけるアクアポリン-2とバソプレッシンV2受容体(V2R)のmRNAは上昇していることが報告されている。詳細は非特許文献1を参照。
【0101】
pcyマウス(雄)を4週齢時の体重ならびにMRIで測定した腎臓の容積で、(1) control群
、(2) トルバプタン 0.03%混餌投与群、(3) オクトレオチド投与群(300μg/kg x 2 /day
sc)、及び(4) トルバプタン0.03%混餌+オクトレオチド(300μg/kg x 2 /day sc)併用
投与群に、群分けを行なった(各群N=9)。正常マウスコントロールとしてDBA/2JJclを用いた(N=5)。トルバプタン投与群は0.03%トルバプタン含有MF飼料を、その他のコントロール及びオクトレオチド単独投与群はトルバプタンを含有しないMF飼料を与えた。また、オクトレオチド投与群は、サンドスタチン皮下注用(100μg/ml)を300μg/kg/10mlになるように生理食塩水で希釈し、朝夕2回皮下投与した。
【0102】
薬物処置は各群5週齢より開始し15週齢まで実施した。14週齢で代謝ケージを用いて各
個体19時間の採尿を行い、尿量ならびに尿中アルブミン排泄量を測定した。
【0103】
DBAコントロールマウスとpcyマウスは15週齢でイソフルラン麻酔下にて剖検を行い、採血ならびに左右の腎臓を採取した。得られた血液より血漿パラメータの測定を行ない、腎臓は左右の重量を測定した。
【0104】
表1に剖検時の腎臓重量(% 体重)を示す。15週齢時のpcy コントロールマウスはnormal
DBAマウスに比較して、著明な腎臓の肥大と嚢胞が認められ、腎臓重量は5.2倍に増大し
ていた。pcy コントロール群に対して、トルバプタン0.03%混餌投与群及びオクトレオチ
ド皮下投与群は、それぞれ単独では有意な腎臓重量の抑制作用を示さなかったが、両剤を併用した群では、pcyコントロール群に比して有意な腎臓重量の抑制が認められた (p<0.01)。また、トルバプタンとオクトレオチドの併用群では、それぞれの単独投与群に比しても有意な腎臓重量の抑制が認められた。(p<0.05)
【0105】
【表1】
【0106】
値は平均値±標準誤差を示す
コントロール群との比較はDunnett 検定(両側)を用いた
併用群と単独群の比較は閉検定手順を用いた。
「NS」は非有意を意味する。
【0107】
以上の結果より、トルバプタンとオクトレオチドの併用により、嚢胞腎の増大を相乗的に抑制できること、そして腎機能を改善できることが示された。