特許第6724098号(P6724098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6724098
(24)【登録日】2020年6月26日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】改質された異相ポリオレフィン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20200706BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20200706BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20200706BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20200706BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20200706BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20200706BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20200706BHJP
   C08K 5/32 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   C08J3/24 ZCES
   C08L23/26
   C08L23/10
   C08K5/3435
   C08K5/14
   C08F8/00
   C08L23/04
   C08K5/32
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2018-186607(P2018-186607)
(22)【出願日】2018年10月1日
(62)【分割の表示】特願2016-557245(P2016-557245)の分割
【原出願日】2015年3月9日
(65)【公開番号】特開2019-31680(P2019-31680A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2018年10月26日
(31)【優先権主張番号】61/953,261
(32)【優先日】2014年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599060788
【氏名又は名称】ミリケン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ジェイ.・ピーターソン
(72)【発明者】
【氏名】スコット・アール.・トレノール
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・ディー.・スプリンクル
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−510858(JP,A)
【文献】 特表2010−521557(JP,A)
【文献】 特開平02−281009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/20− 3/26
C08L 23/00−23/36
C08F 8/00− 8/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含む方法によって得られる異相ポリオレフィンポリマー組成物を作製する方法であって、
(a)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下のエチレンおよび/またはC4〜C10α−オレフィンとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相、ならびにエチレンホモポリマーおよびエチレンとC3〜C10α−オレフィンとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含む、ゴム、ポリオレフィンエラストマー、オレフィンブロックコポリマー、およびエチレン/オクテンエラストマーからなる群より選択されるエチレンポリマー相を用意する工程であって、ただし前記エチレンポリマー相のエチレン含有量は少なくとも8重量%である工程と、
(b)相溶化剤であって、(i)少なくとも1のニトロキシドラジカル、またはポリオレフィンポリマー組成物と溶融コンパウンドされている間に少なくとも1のニトロキシドラジカルを生成可能な部分2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン−1−オキシル基(TEMPO基)と、(ii)ラジカル付加反応を受けることができる少なくとも1の脂肪族アルケニル基を有する化合物からなる群から選択される相溶化剤を用意する工程と、
(c)有機過酸化物を用意する工程と、
(d)前記プロピレンポリマー相、前記エチレンポリマー相、前記相溶化剤、および前記有機過酸化物を混合し、得られた混合物を180℃ないし290℃の温度に加熱し、それによって前記相溶化剤がプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーと反応してプロピレンポリマーをエチレンポリマーに結合させ、およびそれによって前記プロピレンポリマー相および前記エチレンポリマー相が異相組成物を形成する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記プロピレンポリマー相、前記エチレンポリマー相および前記相溶化剤は遊離炭素ラジカルの存在下で溶融コンパウンディングによって混合され、前記組成物は25℃で異相である、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記プロピレンポリマー相は連続相であり、前記プロピレンポリマー相のプロピレン含有量は80重量%以上であり、前記エチレンポリマー相は不連続相であり、前記エチレンポリマーは、8〜80重量%のエチレン含有量を有する、エチレンとC3〜C10α−オレフィンとのコポリマーである、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、前記ポリプロピレン相はポリプロピレンホモポリマーであり、前記エチレン相はエチレン−プロピレンゴムであり、前記ポリプロピレンホモポリマーを最初に重合し、前記エチレン−プロピレンゴムを第二段階で重合することによって得られた異相インパクトコポリマーとして混合物に供給される、方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、前記相溶化剤の前記ニトロキシドラジカルはプロピレンポリマーと反応して結合し、前記不飽和結合はエチレンポリマーと反応して結合している、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記相溶化剤は、異相ポリオレフィンポリマー組成物中に、前記組成物の総重量に基づいて10ppmから5重量%の濃度で存在し、前記相溶化剤の前記不飽和結合と前記エチレンポリマーとの反応は、1以上のO−O結合を組み込んだ有機過酸化物からなる群から選択されるフリーラジカル発生剤の存在下で行われ、前記相溶化剤は前記O−O結合に対して1:10〜10:1のモル比で存在する、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、増大したメルトフローレート、ならびに高い衝撃強さおよび改善された透明性を有する異相ポリオレフィン組成物を対象とする。特に興味深いのは、改質されたポリプロピレンインパクトコポリマーである。
【0002】
発明の背景
ポリマー樹脂のメルトフローレート(MFR)はその分子量の関数である。一般に、メルトフローレートを増大させると、樹脂をより低温で処理することおよび樹脂を複雑な部品形状に充填させることを可能にする。メルトフローレートを増大させる種々の先行技術の方法は、樹脂を、押出機中でフリーラジカルを生成可能な化合物、たとえば過酸化物と溶融ブレンディングすることを含む。これを行うと、ポリマーの重量平均分子量が減少し、MFRが増大する。しかし、ポリオレフィンポリマーの分子量を減少させることによってメルトフローレートを増大させることは、多くの場合、改質されたポリマーの強度に悪影響を及ぼすことがわかっている。
【0003】
Mestanzaら−米国特許第6,020,437号は、ポリプロピレンを、(a)少なくとも2のアクリレート基を有する官能性化合物、(b)チウラムスルフィド化合物、および(c)フリーラジカルを生成可能な化合物と溶融ブレンディングすることによって、ポリプロピレンポリマーのレオロジー的な性質を改善する方法を開示している。
【0004】
Bertinら−米国特許第6,620,892号は、樹脂、少なくとも1の=N−O・基を含むニトロキシルラジカルから選択される安定なフリーラジカル、および過酸化物化合物(トリガー)を、官能性モノマーの不在下で溶融ブレンディングすることによって、ポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマー樹脂を改質して、ポリマー樹脂の強度を維持しながらメルトフローを増大させる方法を開示している。
【0005】
すべて横浜ゴム株式会社に譲渡された、Onoiら−米国特許第7,019,086号、Ashiuraら−米国特許第7,196,144号、およびAshiuraら−米国特許第7,772,325号は、エラストマーを、安定なフリーラジカルを形成できる化合物と、フリーラジカル開始剤たとえば過酸化物の存在下で反応させることによって、エラストマーを改質してその結合性を改善する方法を開示している。このような安定なフリーラジカル化合物の例は、ニトロキシドラジカル、ヒドラジルラジカル、アリールオキシラジカルおよびトリチルラジカルを含む。
【0006】
Caroniaら−米国特許公開第2007/0145625号は、製品に成形した後にポリマーを架橋するための方法を開示している。フリーラジカル架橋性ポリマーは炭化水素系である。フリーラジカル架橋剤は、(i)ヒンダードアミン由来の安定な有機フリーラジカル、(ii)イニファータ、(iii)有機金属化合物、(iv)アリールアゾオキシラジカル、および(v)ニトロソ化合物、好ましくはビス−TEMPOまたは4−ヒドロキシ−TEMPOから選択されるであろう。
【0007】
Horstら−米国特許第8,618,224 B2号は、ポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマーおよびポリプロピレンブレンドのためのビスコシチーブレーキング法を開示している。ポリマーのビスブレーキングは、たとえば、押出機中で、開始剤(たとえば過酸化物)および「連鎖移動剤」の存在下で行われる。好適な連鎖移動剤は、チオール、二硫化物、亜リン酸エステル、ホスフィン、有機ヨウ化物、有機塩化物、プロピオン酸エステル、アルデヒドおよび第三級アミンである。
【0008】
Phamら−欧州特許第1 391 482 B1号は、異相コポリマーを、有機過酸化物および二官能性不飽和モノマーたとえばブタジエンと溶融コンパウンディングすることによって得られた、反応により改質された異相コポリマーを含むポリオレフィン組成物を開示している。
【0009】
発明の概要
異相ポリオレフィン組成物たとえばポリプロピレンインパクトコポリマーは、特に周囲温度未満で、高い衝撃強さを備える。異相ポリオレフィン組成物は、自動車部品、電気製品、キャップおよびふたおよび容器を含む広範囲の工業用品および家庭用品に有用である。しかし、一般に異相ポリオレフィン組成物、特にポリプロピレンインパクトコポリマーのひとつの欠点は、それらの相対的に低いメルトフローレートであった。ポリマーのMFRを増大させる従来の方法、たとえば過酸化物で開始するビスコシチーブレーキング技術はそれらの衝撃性能を劇的に低下させる。
【0010】
ある異相ポリオレフィン系では、(i)少なくとも1のニトロキシドラジカル、または異相ポリオレフィンポリマー組成物と溶融混合されている間に少なくとも1のニトロキシドラジカルを生成可能な部分;および(ii)ラジカル付加反応を受けることができる少なくとも1の不飽和結合によって特徴付けられる相溶化剤を組込むことが、このようなポリマーをビスコシチーブレーキング技術にかけた場合に、衝撃強さへの悪影響を回復でき、場合によっては異相ポリオレフィンポリマーの衝撃強さを改善できることもあることがわかった。
【0011】
目的のポリマー組成物は通常200g/10分より低いMFRを有する。本発明により、(i)通常はMFRの増大を伴うであろうポリマー組成物の衝撃強さの低下を最小限に抑えながらMFRを増大させる、および/または(ii)MFRを維持または増大させながら衝撃強さを改善することができる。本発明のある実施形態では、ポリマー組成物のMFRの増大と衝撃強さの改善の両方が可能である。加えて、本発明の相溶化剤は、異相ポリオレフィン組成物の透明性を劇的に高めることがわかっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、相溶化剤の種々の添加レベルにおける、有機過酸化物500ppmを含むプロピレンインパクトコポリマーのMFRの変化を示す棒グラフである。
図2図2は、相溶化剤の種々の添加レベルにおける、有機過酸化物1,000ppmを含むプロピレンインパクトコポリマーのMFRの変化を示す棒グラフである。
図3図3は、相溶化剤の種々の添加レベルにおける、有機過酸化物500ppmを含むプロピレンインパクトコポリマーのアイゾッド衝撃強さ(23℃)の変化を示す棒グラフである。
図4図4は、相溶化剤の種々の添加レベルにおける、有機過酸化物1,000ppmを含むプロピレンインパクトコポリマーのアイゾッド衝撃強さ(23℃)の変化を示す棒グラフである。
図5図5は、プロピレンインパクトコポリマーのアイゾッド衝撃強さ(23℃)対MFRのグラフであり、例1〜6と比較例C1〜C6の両方をプロットしている。
図6図6は、改質されていない異相ポリオレフィン樹脂、過酸化物のみで処理された樹脂、ならびに例1および2の改質された樹脂に関する、分子量分布を示すゲル透過クロマトグラフィー曲線のグラフ(分子量が低下するにつれて保持時間が増加する)である。
図7図7は、改質されていない異相ポリオレフィン樹脂、過酸化物のみで処理された樹脂、ならびに比較例C1およびC2の樹脂に関する、分子量分布を示すゲル透過クロマトグラフィー曲線のグラフ(分子量が低下するにつれて保持時間が増加する)である。
図8図8は、例2の改質された異相樹脂および比較例2の樹脂に関する、分子量分布を示すゲル透過クロマトグラフィー曲線のグラフ(分子量が低下するにつれて保持時間が増加する)である。
図9図9は、改質されていないポリプロピレン(非異相)ポリオレフィン樹脂、過酸化物のみで処理された樹脂、ならびに比較例C7およびC8の樹脂に関する、分子量分布を示すゲル透過クロマトグラフィー曲線のグラフ(分子量が低下するにつれて保持時間が増加する)である。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明の範囲を限定することなしに、好ましい実施形態および特徴を以下に記載する。明細書中に引用されているすべての米国特許は参照により本明細書に組み込まれる。特に指示がない限り、条件は25℃、1気圧および50%相対湿度であり、濃度は重量によるものであり、分子量は重量平均分子量に基づいており、脂肪族炭化水素およびそのラジカルは長さで1〜12炭素原子である。本出願で使用する限り、用語「ポリマー」は重量平均分子量(Mw)が少なくとも5,000である材料を示す。用語「コポリマー」はその広い意味で使用し、2以上の異なるモノマー単位を含有するポリマー、たとえばターポリマーを含み、特に指示がない限り、ランダム、ブロック、および統計コポリマーを含む。特定の相または異相組成物中のエチレンまたはプロピレンの濃度は、それぞれ、相または異相組成物中のポリオレフィンポリマーの総重量に対する反応したエチレン単位またはプロピレン単位の重量に基づき、あらゆる充填剤または他の非ポリオレフィン添加剤を除く。全体の不均一ポリマー組成物中の各相の濃度は、異相組成物中のポリオレフィンポリマーの総重量に基づき、あらゆる充填剤または他の非ポリオレフィン添加剤またはポリマーを除く。
【0014】
ポリマー
本発明による、有利には改質されているであろう、主題の異相ポリオレフィンポリマーは少なくとも2の別個の相によって特徴付けられる。ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下のエチレンおよび/またはC4〜C10α−オレフィンとのコポリマーから選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相と、エチレンホモポリマーおよびエチレンとC3〜C10α−オレフィンとのコポリマーから選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相とである。エチレンポリマー相のエチレン含有量は少なくとも8重量%である。エチレン相がエチレンとC3〜C10α−オレフィンとのコポリマーである場合、エチレン相のエチレン含有量は8〜90重量%の範囲であってもよい。本発明の一実施形態では、エチレン相のエチレン含有量は少なくとも50重量%である。プロピレンポリマー相またはエチレンポリマー相のいずれかは連続相を形成していてもよく、もう一方は離散または分散相を形成する。たとえば、エチレンポリマー相が不連続相であってもよく、ポリプロピレンポリマー相が連続相であってもよい。本発明の一実施形態では、プロピレンポリマー相のプロピレン含有量はエチレンポリマー相のプロピレン含有量よりも多い。
【0015】
プロピレンポリマー相とエチレンポリマー相との相対濃度は広範囲にわたって変化してもよい。例として、エチレンポリマー相が組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの総量の5〜80重量%を構成してもよく、プロピレンポリマー相が組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの総量の20〜95重量%を構成してもよい。
【0016】
本発明の種々の実施形態では、(i)エチレン含有量が、異相組成物中の全プロピレンポリマーおよびエチレンポリマー含有量に基づいて、5〜75重量%、またはさらには5〜60重量%の範囲であってもよく、(ii)エチレンポリマー相がエチレン−プロピレンまたはエチレン−オクテンエラストマーであってもよく、および/または(iii)プロピレンポリマー相のプロピレン含有量が80重量%以上であってもよい。
【0017】
本発明は、ポリプロピレンインパクトコポリマーを改質するのに特に有用である。インパクトコポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下のエチレンおよび/またはC4〜C10α−オレフィンとのコポリマーから選択されるポリプロピレンポリマーを含む連続相、ならびにエチレン/C3〜C10α−オレフィンモノマーから選択されるエラストマーエチレンポリマーを含む不連続相によって特徴付けられてもよく、エチレンポリマーは8〜90重量%のエチレン含有量を有する。
【0018】
プロピレンインパクトコポリマーを対象とする本発明の種々の実施形態においては、(i)不連続相のエチレン含有量が8〜80重量%であってもよく、(ii)異相組成物のエチレン含有量が、組成物中の全プロピレンポリマーおよびエチレンポリマーに基づいて、5〜30重量%であってもよく;(iii)連続相のプロピレン含有量が80重量%以上であってもよく、および/または(iv)不連続相が組成物中の全プロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの5〜35重量%であってもよい。
【0019】
改質されていてもよい異相ポリオレフィンポリマーの例は、比較的硬質の、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(連続相)および微細に分散したエチレン−プロピレンゴム(EPR)粒子の相によって特徴付けられるインパクトコポリマーである。ポリプロピレンインパクトコポリマーは二段階プロセスで作製してもよく、その場合、ポリプロピレンホモポリマーを最初に重合し、エチレン−プロピレンゴムを第二段階で重合する。あるいは、当技術分野で知られているように、インパクトコポリマーは三段以上で作製してもよい。好適なプロセスは、以下の参考文献において見つかるであろう:米国特許第5,639,822号および米国特許第7,649,052 B2号。ポリプロピレンインパクトコポリマーを作製するための好適なプロセスの例は、Spheripol(登録商標)、Unipol(登録商標)、Mitsui法、Novolen法、Spherizone(登録商標)、Catalloy(登録商標)、Chisso法、Innovene(登録商標)、Borstar(登録商標)、およびSinopec法である。これらのプロセスは不均一または均一チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒を使用して重合を達成できるであろう。
【0020】
異相ポリオレフィンポリマー組成物を2以上のポリマー組成物を溶融混合することによって形成してもよく、これは固体状態にある少なくとも2の別個の相を形成する。例として、異相ポリオレフィン組成物が3種の異なる相を含んでいてもよい。異相ポリオレフィンポリマー組成物は、2種以上のリサイクルポリオレフィン組成物の溶融混合から生じることもある。したがって、本明細書において使用する限り、「異相ポリオレフィンポリマー組成物を用意する」という言い回しは、既に異相であるポリオレフィンポリマー組成物をプロセスで使用すること、ならびにプロセス中に2以上のポリオレフィンポリマー組成物を溶融混合し、その中で2以上のポリオレフィンポリマー組成物が異相系を形成することを含む。たとえば、異相ポリオレフィンポリマーを、ポリプロピレンホモポリマーとエチレン/α−オレフィンコポリマー、たとえばエチレン/ブテンエラストマーを溶融混合することによって作製してもよい。好適なコポリマーの例は、Engage(商標)、Exact(登録商標)、Vistamaxx(登録商標)、Versify(商標)、INFUSE(商標)、Nordel(商標)、Vistalon(登録商標)、Exxelor(商標)、およびAffinity(商標)であろう。さらに、異相系を形成するポリオレフィンポリマー成分の混和性は、組成物を系中の連続相の融点以上に加熱すると変わることがあるが、それでも冷却および固化すると系は2以上の相を形成することが理解されたい。異相ポリオレフィンポリマー組成物の例は、米国特許第8,207,272 B2号および欧州特許第1 391 482 B1号において見つかるであろう。
【0021】
本発明の一実施形態において、改質すべき異相ポリオレフィンポリマーは不飽和結合を有するいかなるポリオレフィン成分も有しておらず、特に、プロピレン相中のプロピレンポリマーおよびエチレン相中のエチレンポリマーの両方とも不飽和結合を含んでいない。
【0022】
本発明の別の実施形態においては、プロピレンポリマーおよびエチレンポリマー成分に加えて、異相系がエラストマー、たとえばエラストマーエチレンコポリマー、エラストマープロピレンコポリマー、スチレンブロックコポリマー、たとえばスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)およびスチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、プラストマー、エチレン−プロピレン−ジエン ターポリマー、LLDPE、LDPE、VLDPE、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、および非晶質ポリオレフィンを含んでいてもよい。ゴムはバージンまたはリサイクル品でもよい。
【0023】
改質された組成物を形成するための処理の方法
異相ポリオレフィンポリマー組成物を、ポリマー組成物を相溶化剤と、組成物中に生成したフリーラジカルの存在下で、混合することによって改質する。
【0024】
本発明の一実施形態においては、異相ポリオレフィンポリマー組成物を、ポリマー組成物を相溶化剤と、組成物中に生成したフリーラジカルの存在下で溶融混合することによって改質する。溶融混合工程を、組成物を組成物の主要なポリオレフィン成分の溶融温度以上に加熱して溶融状態にある間に混合する条件下で行う。好適な溶融混合プロセスの例は、溶融コンパウンディング、たとえば押出機中、射出成形、およびバンバリーミキサーまたはニーダー中での混合を含む。例として、混合物を160℃〜300℃の温度で溶融混合してもよい。特に、プロピレンインパクトコポリマーを180℃〜290℃の温度で溶融混合してもよい。ポリマー組成物(プロピレンポリマー相およびエチレンポリマー相)、相溶化剤および有機過酸化物を押出機中において、組成物中のすべてのポリオレフィンポリマーの溶融温度以上の温度で溶融コンパウンドしてもよい。
【0025】
本発明の別の実施形態においては、ポリマーを溶媒に溶解して相溶化剤をポリマー溶液に加え、ラジカルを溶液中で生成させてもよい。本発明の別の実施形態においては、相溶化剤を固体状態のポリマーと合わせて、フリーラジカルを固相剪断粉砕中に生成させることもできる。たとえばMacromolecules、「Ester Functionalization of Polypropylene via Controlled Decomposition of Benzoyl Perioxide during Solid−State Shear Pulverization」−vol.46、pp.7834〜7844(2013)に記載されている。
【0026】
従来の処理装置を使用して、プロピレンポリマー、エチレンポリマーおよび相溶化剤をともに単一工程で、有機過酸化物のように混合物に加えられる、またはたとえば剪断力、紫外線などによってその場で生成される、いずれかのフリーラジカルの存在下で混合してもよい。それでも、本明細書に記載しているように、種々の組合せの成分を複数の工程および種々の順序で混合し、続いて混合物を相溶化剤がポリオレフィンポリマーと反応する条件にさらすこともできる。
【0027】
たとえば、相溶化剤および/またはフリーラジカル発生剤(化合物を使用する場合)を、一組成物またはマスターバッチ組成物の形態でポリマーに加えることができる。適当なマスターバッチ組成物は、キャリア樹脂中に相溶化剤および/またはフリーラジカル発生剤を含むことができる。相溶化剤および/またはフリーラジカル発生剤は、マスターバッチ組成物中に、組成物の総重量に基づいて約1wt.%〜約80wt.%の量で存在しうる。任意の好適なキャリア樹脂、たとえば任意の好適な熱可塑性ポリマーを、マスターバッチ組成物において使用することができる。たとえば、マスターバッチ組成物のためのキャリア樹脂は、ポリオレフィンポリマー、たとえばポリプロピレンインパクトコポリマー、ポリエチレンホモポリマー、直鎖状低密度ポリエチレンポリマー、ポリオレフィンワックス、またはこのようなポリマーの混合物でありうる。キャリア樹脂は、異相ポリオレフィンポリマー組成物中に存在するプロピレンポリマーもしくはエチレンポリマーと同じまたは類似のプロピレンポリマーまたはエチレンポリマーでもよい。このようなマスターバッチ組成物は、最終消費者が異相ポリオレフィンポリマー組成物中に存在するプロピレンポリマー(複数可)対エチレンポリマー(複数可)の比を操作することを可能にするであろう。これは、所望の一組の特性(たとえば、耐衝撃性と剛性のバランス)を達成するために、最終消費者が商用の樹脂グレードのプロピレン対エチレン比を変更する必要がある場合に好ましいであろう。
【0028】
相溶化剤
相溶化剤は、(i)少なくとも1のニトロキシドラジカル、または異相ポリオレフィンポリマー組成物と溶融混合されている間に少なくとも1のニトロキシドラジカルを生成可能な部分;および(ii)ラジカル付加反応を受けることができる少なくとも1の不飽和結合によって特徴付けられる有機化合物である。特に有用なのは、不飽和炭素−炭素結合、たとえば二重結合を有する相溶化剤である。
【0029】
フリーラジカルの存在下で、相溶化剤のニトロキシドラジカル官能基と不飽和結合官能基は、組成物中に存在するプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーと反応して結合すると考えられる。したがって、本発明の方法によれば、相溶化剤によってエチレンポリマーに結合したプロピレンポリマーを含む改質された組成物を提供することができる。特に、ニトロキシドラジカル官能基は組成物中のプロピレンポリマーと優先的に反応して結合し、不飽和結合官能基は組成物中のエチレンポリマーと優先的に反応して結合すると考えられる。改質は、より高分子量、すなわち改質されていないまたは過酸化物のみで改質された異相ポリオレフィン組成物より高分子量の成分(これは主題の相溶化剤を混合物中に備えた場合に観察される)を説明する。得られた構造は、MFRを変更したときに、ポリマー鎖の切断によって起こる平均分子量の下方シフトを補う。加えて、相溶化剤によってともに結合しているポリプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーを含む、組成物中のより高分子量の種の存在は、異相組成物中の相の間の界面に影響を与え、それによって透明性により測定される光学的性質を劇的に改善すると考えられる。
【0030】
本発明に使用していてもよいニトロキシド化合物の例(ただし、化合物はラジカル付加反応を受けることができる少なくとも1の不飽和結合を含有するように合成または改質されている)は、Synthetic Chemistry of Stable Nitroxides、L.B.Volodarskyら CRC Press、Inc.(1994)において見つかるであろう。ニトロキシド化合物は5または6員の複素環化合物であってもよく、これは環構造中にニトロキシドの窒素を組み込んでいてもよい。たとえば、相溶化剤は2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)をベースとしていてもよく、たとえば以下のとおりである。
【0031】
【化1】
【0032】
式中、Rはフリーラジカル付加を受けることができる不飽和基、たとえば脂肪族アルケニル基またはアルケニル置換芳香族基、たとえばフェニルから選択される。特に、アルケニル基はC1〜C10、より好ましくはC1〜C8、C1〜C6、またはC1〜C4であろう。本発明に有用な特定の化合物は、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン−1−オキシル、(「TEMPO−メタクリレート」)、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン−1−オキシル(「TEMPO−アクリレート」)、4−((4−ビニルベンジル)オキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン−1−オキシル(「TEMPO−スチレン」)、4,4‘−((ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジイルビス(オキシ))ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)(「ノルボルネン」)、およびN−tert−ブチル−α−フェニルニトロン(「ニトロン」)である。
【0033】
【化2】
【0034】
組成物中の相溶化剤の濃度は最終消費者の目的を満たすように変えることができる。たとえば、濃度は、ポリマー組成物のMFRの所望の増大とともにポリマーの強度、特に衝撃強さの最小限の低下(または潜在的にはさらに増大)を達成するために変えることができる。好ましい実施形態において、相溶化剤は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、約10ppm以上、約50ppm以上、約100ppm以上、約150ppm以上、または約200ppm以上の量で存在しうる。別の好ましい実施形態では、相溶化剤は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、約5wt.%(50,000ppm)以下、約4wt.%(40,000ppm)以下、約3wt.%(30,000ppm)以下、約2wt.%(20,000ppm)以下、約1wt.%(10,000ppm)以下、または約0.5wt.%(5,000ppm)以下の量で存在しうる。したがって、いくつかの好ましい実施形態では、相溶化剤は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、約10〜約50,000ppm、約100〜約10,000ppm、または約200〜約5,000ppmの量で存在しうる。
【0035】
化学的フリーラジカル発生剤を使用した場合(以下に説明するように)、ポリマー組成物中の相溶化剤の濃度は、追加でまたは代わりに、相溶化剤の量と化学的フリーラジカル発生剤の量との比によって表すことができる。この比を、相溶化剤の分子量および化学的フリーラジカル発生剤中の過酸化物結合の数の違いについて規格化するために、この比は通常、組成物中に存在する相溶化剤のモル数対化学的フリーラジカル発生剤の添加から存在する過酸化物結合(O−O結合)のモル当量の比として表される。好ましくは、この比(すなわち、相溶化剤のモル対過酸化物結合のモル当量の比)は、約1:10以上、約1:5以上、約3:10以上、約2:5以上、約1:2以上、約3:5以上、約7:10以上、約4:5以上、約9:10以上、または約1:1以上である。別の好ましい実施形態では、この比は、約10:1以下、約5:1以下、約10:3以下、約5:2以下、約2:1以下、約5:3以下、約10:7以下、約5:4以下、約10:9以下、または約1:1以下である。したがって、一連の好ましい実施形態では、相溶化剤は組成物中に相溶化剤のモル対過酸化物結合のモル当量との比で、約1:10〜約10:1、約1:5〜約5:1、約1:4〜約4:1、約3:10〜約10:3、約2:5〜約5:2、または約1:2〜約2:1で存在しうる。
【0036】
フリーラジカル発生剤
本発明において、フリーラジカル発生剤は、ポリマー鎖の切断を引き起こし、それによって異相ポリオレフィンポリマー組成物のMFRに正の影響を与え、一方で十分なフリーラジカルを発生させて相溶化剤の組成物中ポリオレフィンポリマーとの反応を促進するために使用される。フリーラジカル発生剤は有機過酸化物またはビス−アゾ化合物のような化合物でもよく、またはフリーラジカルは反応系に超音波、剪断力、電子線(たとえばβ線)、光(たとえば紫外線)、熱および放射線(たとえばγ線およびX線)、または前記のものの組合せを適用することによって発生させてもよい。
【0037】
1以上のO−O官能基を有する有機過酸化物は本発明において特に有用である。このような有機過酸化物の例は以下のものを含む:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3,3,6,6,9,9−ペンタメチル−3−(エチルアセテート)−1,2,4,5−テトラオキシシクロノナン、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、ジクミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルジペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド;t−ブチルヒドロキシエチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシドおよび2,5−ジメチルへキセン−2,5−ジペルイソノナノエート、アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、tert−アミルパーネオデカノエート、tert−ブチル−パーネオデカノエート、tert−ブチルパーピバレート、tert−アミルパーピバレート、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジイソノナノイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ビス(2−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジスクシノイルペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチルペルマレエート、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロ−ヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルペルイソノナノエート、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジベンゾエート、tert−ブチルペルアセテート、tert−アミルペルベンゾエート、tert−ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)プロパン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジ−tert−ブチルペルオキシド、3−tert−ブチルペルオキシ−3−フェニルフタリド、ジ−tert−アミルペルオキシド、α,α’−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,5−ジメチル−1,2−ジオキソラン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジ−tert−ブチルペルオキシド、3,3,6,6,9,9−ヘキサメチル−1,2,4,5−テトラオキサシクロノナン、p−メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンモノ−α−ヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドまたはtert−ブチルヒドロペルオキシド。
【0038】
有機過酸化物は任意の好適な量でポリマー組成物中に存在しうる。有機過酸化物の好適な量は、いくつかの要因、たとえば組成物において使用されている特定のポリマー、ポリマーの出発MFR、およびポリマーのMFRの所望の変化に依存する。好ましい実施形態では、有機過酸化物はポリマー組成物中に、ポリマー組成物の総重量に基づいて、約10ppm以上、約50ppm以上、または約100ppm以上の量で存在しうる。別の好ましい実施形態では、有機過酸化物はポリマー組成物中に、ポリマー組成物の総重量に基づいて、約2wt.%(20,000ppm)以下、約1wt.%(10,000ppm)以下、約0.5wt.%(5,000ppm)以下、約0.4wt.%(4,000ppm)以下、約0.3wt.%(3,000ppm)以下、約0.2wt.%(2,000ppm)以下、または約0.1wt.%(1,000ppm)以下の量で存在しうる。したがって、一連の好ましい実施形態では、有機過酸化物はポリマー組成物中に、ポリマー組成物の総重量に基づいて、約10〜約20,000ppm、約50〜約5,000ppm、約100〜約2,000ppm、または約100〜約1,000ppmの量で存在しうる。上述したように、有機過酸化物の量は相溶化剤と過酸化物結合のモル比に関して表すこともできる。
【0039】
好適なビスアゾ化合物をフリーラジカルの供給源として使用してもよい。このようなアゾ化合物はたとえば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)ジハイドレート、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、ジメチル 2,2’−アゾビスイソブチレート、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、遊離塩基または塩酸塩としての2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、遊離塩基または塩酸塩としての2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}または2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}である。
【0040】
フリーラジカル開始剤として有用な他の化合物は2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンおよび立体障害ヒドロキシルアミンエステルを含む。
【0041】
種々のラジカル発生剤は単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0042】
添加剤
本発明の異相ポリオレフィン組成物は熱可塑性組成物に従来使用されている各種添加剤と相溶性があり、これらは安定剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、酸化防止剤、難燃剤、酸中和剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、スクラッチ防止剤、加工助剤、発泡剤、着色剤、乳白剤、透明剤、および/または成核剤を含む。別の例として、組成物は充填剤、たとえば炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、ガラス球、無機ウィスカーたとえばMilliken Chemical、USAから入手できるHyperform(登録商標)HPR−803i、マグネシウムオキシサルフェートウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、雲母、珪灰石、粘土、たとえばモンモリロナイト、およびバイオ起源のまたは天然の充填剤を含んでいてもよい。添加剤は改質された異相ポリオレフィン組成物中の全成分の最大75重量%までを構成してもよい。
【0043】
実施例
以下の例は上述した主題をさらに例示しているが、もちろん、なんらその範囲を限定するものと解釈すべきではない。以下の方法は、言及しない限り、以下の例において記載した特性を決定するために使用した。
【0044】
各々の組成物を、成分を密閉容器中で約1分間ブレンドすることによってコンパウンドした。次いで組成物を、スクリュー径16mmおよび長さ/直径比25:1のPrism TSE−16−TC同方向回転、完全かみあい型、パラレル、二軸押出機によって溶融コンパウンドした。押出機のバレル温度を約195℃から約215℃に上昇させ、スクリュー速度を約500rpmに設定した。各々のポリプロピレンコポリマー組成物の押出物(ストランドの形態)を水浴で冷却し、続いてペレット化した。
【0045】
次いでペレット化した組成物を使用して、直径14mmのスクリューを有するNissei HM7 7トン射出成形機により組成物を射出成形することによってバーを形成した。射出成形機のバレル温度は約215〜230℃、金型温度は約25℃であった。得られたバーは約80mm長さ、約10mm幅、および約4.0mm厚さの寸法であった。
【0046】
メルトフローレート(MFR)を、(ASTM D1238)に従ってポリプロピレンの場合230℃において2.16kgの荷重でペレット化した組成物について決定した。
【0047】
バーについてノッチ付アイゾッド衝撃強さをISO法180/Aに従って測定した。ノッチ付アイゾッド衝撃強さを+23℃または−30°のいずれかで調整したバーに関して+23℃で測定した。
【0048】
分子量分布(MWD)ならびに前記分布の重量平均、Mwを、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)とも呼ばれる、を用いて決定した。すべての測定を、Agilent PL−GPC 220 GPC/SECシステムを用い、これは(3)300×7.5mm PLgel 10μmMixed−B LSカラム、屈折率検出器、粘度計ならびに15°および90℃光散乱検出器(160℃で)を含み、移動相として125ppmブチルヒドロキシトルエンで阻害されたトリクロロベンゼン、160℃のカラム温度および約1mg/mlの試料濃度で行った。以下に列挙した例では、15°光散乱検出器を、濃度を測定するために選択した。ゲル透過クロマトグラフィーは、分子を流体力学的な分子体積またはサイズに基づいて分離する分離技術である。適切なカラム較正によりまたは分子量感受性検出器たとえば光散乱もしくはビスコメトリーの使用によって、分子量分布および統計的分子量平均を得ることができる。ゲル透過クロマトグラフィーでは、分子は、カラム中で、ビーズ中へのおよびビーズを通しての輸送とともにビーズ間に沿った輸送の組合せを介してカラムを通過する。カラムを通しての分子の通過に要する時間は、分子量の増加とともに減少する。任意の所与の時間でカラムから出るポリマーの量を種々の検出器で測定する。機器装備および検出器のより詳細な説明は、Ron Clavier(2008)によるCharacterization and Analysis of Polymersの「Composition、Molar Mass and Molar Mass Distribution」と題された章において見つけることができる。
【0049】
キシレン可溶分は、修正ASTM D5492−10によって決定され、異相ポリプロピレンコポリマー中に存在するゴムの量の尺度である。約0.6gのポリマーを秤量し、撹拌子とともに丸底フラスコに入れた。50mLのキシレンをフラスコ中のポリマーに加えた。ポリマーキシレン混合物を激しく撹拌しながら還流温度まで加熱した。還流温度に達したら、溶液をさらに30分撹拌した後に室温まで冷却した。得られたポリマー/キシレン混合物を穏やかに撹拌してあらゆる沈殿ポリマーゲルをばらばらにした後、4号ろ紙に注いで、可溶画分を含有するろ液および不溶画分の両方を収集した。10mLアリコットのろ液をクラスAピペットで取り出して秤量皿に移した。次いでろ液を含む皿を、155℃の温度を維持した温度制御ホットプレート上に置いてキシレンを蒸発させた。大部分のキシレンを蒸発させたら、皿を80±10℃の温度に設定した真空乾燥器に移した。圧力を13.3kPa未満に下げ、試料を約2時間または恒量に達するまで乾燥させた。次いで皿の質量を差し引いて、残留可溶ポリマーの質量を得た。当初試料中の可溶ポリマーのパーセンテージを以下のように計算した:Ss=((Vbo/νb1×(W2−W1))/W0)×100;ここで、Ss=試料の可溶画分、%;Vbo=溶媒の当初体積、mL;Vb1=可溶分決定に使用したアリコットの体積、mL;W2=皿と可溶分の質量、g;W1=皿の質量、g;およびW0=当初試料の質量、gである。
【0050】
例1〜6
以下の例は、本発明の方法に従った、異相ポリオレフィン組成物の改質および達成された性能向上を示す。
【0051】
相溶化剤は、表1に記載した一般的な配合に従って溶融コンパウンドして異相ポリプロピレンコポリマーのバッチにした。
【0052】
【表1】
【0053】
表2に記載した各々の組成物を、上記の手順に従って混合し、押出し、射出成形した。次いでバーを上述したメルトフローレートおよびアイゾッド衝撃試験にかけ、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による試験中に15°光散乱検出器シグナルを用いて評価した。
【0054】
【表2】
【0055】
図1を参照すると、改質されていない樹脂、500ppmの有機過酸化物のみを含む樹脂および3添加レベルの相溶化剤(例1〜3)についての表2に基づくMFRデータを棒グラフ形式で表示している。図2を参照すると、改質されていない樹脂、1,000ppmの有機過酸化物のみ含む樹脂および3添加レベルの相溶化剤(例4〜6)についての表2に基づくMFRデータを棒グラフ形式で表示している。
【0056】
図3を参照すると、改質されていない樹脂、500ppmの有機過酸化物のみを含む樹脂および3添加レベルの相溶化剤(例1〜3)についての表2に基づくアイゾッド衝撃強さ(23℃)データを棒グラフ形式で表示している。図4を参照すると、改質されていない樹脂、1,000ppmの有機過酸化物のみを含む樹脂および3添加レベルの相溶化剤(例4〜6)についての表2に基づくアイゾッド衝撃強さ(23℃)データを棒グラフ形式で表示している。
【0057】
比較例C1〜C6
以下の比較例はラジカル付加反応を受けることができる不飽和結合を有していないニトロキシド化合物を使用した異相ポリオレフィン組成物の改質を示す。
【0058】
モル当量の4−ヒドロキシ−TEMPOを相溶化剤すなわちTEMPO−メタクリレートの代わりに使用したことを除き、表1に記載した一般的な配合に従ってニトロキシドを溶融コンパウンドして異相ポリプロピレンコポリマーのバッチにした。表3に列挙した各々の組成物を、上記の手順に従って混合し、押出し、射出成形した。次いでバーを上述したメルトフローレートおよびアイゾッド衝撃試験にかけ、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による試験中に15°光散乱検出器シグナルを用いて評価した。
【0059】
【表3】
【0060】
例1〜6および比較例C1〜C6で得られた結果を図5にともにグラフで表しており、各々の組成物、ならびに改質されていない樹脂および500ppmおよび1,000ppm過酸化物のみを含有している樹脂についてのアイゾッド衝撃強さ(23℃)対MFRの変化を示している。4−ヒドロキシ−TEMPOを含有する比較例およびTEMPO−メタクリレートを含有する本発明の例は、等モル添加量で添加された場合に類似のメルトフローレートを有する。(例1対比較例C1;例2対比較例C2;例3対比較例C3;例4対比較例C4;例5対比較例C5;および例6対比較例C6を参照のこと)。しかし、アイゾッド衝撃強さについて同様の比較をした場合、同じ添加量で添加した場合に本発明の例は驚くほどより高い衝撃強さを有している。
【0061】
図5でわかるように、MFRおよびアイゾッド衝撃強さの複合特性を考慮すると、本発明の相溶化剤は、ラジカル付加反応を受けることができる不飽和結合を含まないニトロキシド化合物とグラフ上で別個の領域を占める改質された異相ポリオレフィン樹脂の製造を可能にする。事実、図3〜5に示したように、本発明の方法は、改質されていない樹脂と比べて、改善されたMFRおよび改善されたアイゾッド衝撃強さの両方を有する改質された異相ポリオレフィン樹脂をもたらすことを可能にする。
【0062】
改質されていない樹脂、500ppmの有機過酸化物のみを混合した樹脂と例1および2についてのGPCデータに基づいて、ポリマー分子量に生じた変化を図6に示す。過酸化物をポリプロピレンに添加した場合、分子量はより長い保持時間へのピークシフトによって示されるように減少し、約16分未満の保持時間でシグナルの相対的な減少がある。本発明の組成物は、改質されていないまたは過酸化物で改質された異相樹脂では観察されていない、より短い保持時間(より高い分子量)へのシフトバックおよび約15分の保持時間でのはっきりした肩を示す。この肩は、改質されていないまたは過酸化物で改質された異相樹脂のいずれかのものよりもより高い分子量を有する改質されたポリマーの形成を示している。図7を参照すると、比較例C1およびC2のGPCデータを、改質されていない樹脂および500ppmの有機過酸化物のみを含む樹脂のデータとともに示している。過酸化物を異相インパクトポリプロピレンコポリマーに添加した場合、分子量はより長い保持時間へのシフトによって示されるように減少する。4−ヒドロキシ−TEMPOを含有する比較組成物は、それらが過酸化物に対抗するように、より短い保持時間(より高い分子量)へのシフトバックを示すが、例1および2で見られるような肩を示さない。
【0063】
図8は、同じ添加量の過酸化物および等モル添加量のTEMPO誘導体を含有する、本発明の例2(TEMPO−メタクリレート)と比較例C2(4−ヒドロキシ−TEMPO)の直接比較を示す。本発明および比較組成物について得られたポリマー構造の違いは明白である。この例は、改質されていないまたは過酸化物のみ改質された異相ポリプロピレンコポリマーに対する分子量増加を得るために、本発明のニトロキシド系相溶化剤におけるラジカル付加反応を受けることができる不飽和結合の必要性を示している。
【0064】
比較例C7〜C8
以下の例は、本発明の仕様を満たす相溶化剤(TEMPO−メタクリレート)と、非異相ポリオレフィン組成物であるポリプロピレンホモポリマー組成物との組合せを示しており、したがって本発明の範囲外である。
【0065】
比較化合物を、表4に記載した一般的な配合に従って配合してポリプロピレンホモポリマー組成物のバッチにした。
【0066】
【表4】
【0067】
表5に示した各々のポリプロピレンホモポリマー組成物を、上記の手順に従って混合し、押出し、ペレット化した。次いでペレットをメルトフローレートにかけ、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による試験中に15°光散乱検出器シグナルを用いて評価した。
【0068】
【表5】
【0069】
比較例C7〜C8、ならびに改質されていない非異相ポリプロピレンホモポリマー樹脂および500ppm有機過酸化物のみを含む樹脂について、ポリマー分子量に生じた変化を図9に示す。過酸化物をポリプロピレンホモポリマーに添加した場合、分子量はより長い保持時間へのシフトによって示されるように減少する。TEMPO−メタクリレートを含有する比較組成物は、TEMPO−メタクリレートが過酸化物に対抗するように、より短い保持時間(より高い分子量)へのシフトバックを示すが、例1および2で見られるような肩を示さず、したがって本発明の目的を達成するためにポリプロピレンの異相の性質の必要性を示している。
【0070】
例7〜16および比較例C9〜C12
以下の例は、組成物の製造と、不飽和結合を有していないニトロキシド化合物と対比して、ラジカル付加反応を受けることができる不飽和結合を有するニトロキシド化合物の組込みにより達成された性能向上を示す。本発明および比較例の化合物を、表6に記載した一般的な配合に従って溶融混合して異相ポリプロピレンコポリマー組成物のバッチにし、その結果を表7に示す。
【0071】
【表6】
【0072】
各々の異相ポリプロピレンコポリマー組成物を、上記の手順に従って混合し、押出し、射出成形した。次いでバーを上述したメルトフローレートおよびアイゾッド衝撃試験にかけた。本発明の例および比較例についてのデータを表7に記載している。
【0073】
【表7-1】
【0074】
【表7-2】
【0075】
【表7-3】
【0076】
比較例C13〜C24
以下の比較例は、(a)ラジカル付加反応を受けることができる不飽和結合を有するニトロキシド化合物(本発明の相溶化剤);または(b)不飽和結合を有していないニトロキシド化合物による非異相エチレン/プロピレンコポリマー樹脂の改質を示す。
【0077】
約4.0%のエチレン含有量を有しLyondellBasell IndustriesによってPro−Fax SA849Sという名称で販売されている、11dg/分のメルトフローレートのエチレン/プロピレンランダムコポリマーポリプロピレンを、以下の表8に記載したように配合物中のベース樹脂として使用した。ポリオレフィン組成物は異相ではない。
【0078】
【表8】
【0079】
各々のポリプロピレンコポリマー組成物を上記の手順に従って混合し、押出し、射出成形した。次いでバーを上記のメルトフローレートおよびアイゾッド衝撃試験にかけた。メルトフローレートおよび23℃アイゾッド衝撃に生じた変化を表9に列挙するが、異相ポリプロピレン系がないと、樹脂のエチレン含有量にかかわらず、この非異相樹脂タイプにおいては不飽和結合を有していない他のニトロキシド化合物(比較例C19〜C24)に対する本発明の相溶化剤の利点がない(比較例C13〜C18)ことを明らかに示している。
【0080】
【表9】
【0081】
例17
以下の例はポリプロピレンホモポリマー、ポリオレフィンエラストマー、有機過酸化物および本発明の相溶化剤を溶融混合することによって作った、改質された異相ポリオレフィン組成物の製造を示す。特に、2dg/分のポリプロピレンホモポリマー(Total Petrochemicals 3276)、20w/w%のポリオレフィンエラストマー(Dow Chemical Company製のEngage(商標)7467)、有機過酸化物(R.T.Vanderbilt Companyから入手可能なVarox DBPH)およびTEMPO−メタクリレート(Sigma−Aldrich)を溶融混合して試験した。結果を、過酸化物のみが存在する場合ならびに過酸化物および相溶化剤のどちらも存在しない場合に作った異相ポリオレフィン組成物と比較した。
【0082】
開始剤およびTEMPOメタクリレートの添加量を表10に列挙する。各々のポリマーブレンド組成物を上記の手順に従って混合し、押出し、射出成形した。次いでバーを上述したメルトフローレートおよびアイゾッド衝撃試験にかけた。
【0083】
【表10】
【0084】
過酸化物または相溶化剤のいずれも含まないポリプロピレンホモポリマーとポリオレフィンエラストマーとのブレンドは、23℃で破壊しないアイゾッド衝撃挙動を示すが、望ましくないほど低いメルトフローレートを有している。過酸化物をブレンドに添加する場合、メルトフローレートは実質的に増大するが、23℃アイゾッド衝撃強さは破壊せずから83J/mへ望ましくないほど減少する。驚くべきことに、例17に示したように、TEMPO−メタクリレートを828ppm添加量で添加した場合、メルトフローレートは高いままであり、23℃アイゾッド衝撃強さは破壊しない挙動を示し、−30℃アイゾッド衝撃は有意に増大する。本発明の例17は、高メルトフローレートおよび高アイゾッド衝撃強さ性能の所望のバランスを達成する。
【0085】
例18
以下の例は、本発明に従った組成物の製造と、特定のポリマーブレンドへのTEMPO−メタクリレート(Sigma−Aldrich)の組込みにより達成された性能向上を示す。ポリマーブレンドは、12dg/分のポリプロピレンホモポリマー(LyondellBasell Pro−Fax 6301)、20w/w%のオレフィンブロックコポリマー(Dow Chemical Company製のINFUSE(商標)9817)、および任意に過酸化物(Varox DBPH)および/またはTEMPO−メタクリレートからなる。過酸化物およびTEMPO−メタクリレートの添加量を表11に列挙し、ブレンドの残部は12dg/分のポリプロピレンホモポリマーである。
【0086】
【表11】
【0087】
各々のポリマーブレンド組成物を上記の手順に従って混合し、押出し、射出成形した。次いでバーを上述したメルトフローレートおよびアイゾッド衝撃試験にかけた。結果を下記表12に記録した。
【0088】
【表12】
【0089】
添加剤を含まない、ポリプロピレンホモポリマーとオレフィンブロックコポリマーとの改質されていないブレンドは、23℃で高いアイゾッド耐衝撃性能を有しているが、望ましくないほど低いメルトフローレートを有している。ポリマーブレンドへの過酸化物の添加は望ましいレベルまでメルトフローレートを増大させるが、23℃および−30℃におけるアイゾッド衝撃は有意に減少する。本発明の例18は、828ppmのTEMPO−メタクリレートを1000ppm過酸化物とともに組成物に添加した場合、メルトフローレートは高レベルのままであり、23℃および−30℃におけるアイゾッド衝撃は実質的に増大することを示している。
【0090】
例19〜24
以下の例は、本発明に従った、組成物の製造と、高インパクト異相ポリプロピレンコポリマーへのTEMPO−メタクリレートの組込みにより達成された性能向上を示す。これらの試料に使用した樹脂は、約25%キシレン可溶分を含んだ、18MFRの高インパクト、異相ポリプロピレンコポリマー、Prob−Fax SG702(LyondellBasell Industries)であった。組成物は表13に列挙した原料からなっていた。
【0091】
【表13】
【0092】
各々の組成物を、成分を密閉容器中で約1分間ブレンドすることによって配合した。次いで組成物を、スクリュー直径16mmおよび長さ/直径比25:1のPrism TSE−16−TC同方向回転、完全かみあい型、パラレル、二軸押出機によって溶融コンパウンドした。押出機のバレル温度を約195℃から約215℃に上昇させ、スクリュー速度を約500rpmに設定した。各々のポリプロピレンコポリマー組成物の押出物(ストランドの形態)を水浴で冷却し、続いてペレット化した。
【0093】
次いでペレット化した組成物を使用して、直径25.4mmのスクリューを有するARBURG 40トン射出成形機により組成物を射出成形することによってバーを形成した。射出成形機のバレル温度は約200〜220℃、金型温度は約25℃であった。得られたバーは約127mm長さ、約12.7mm幅、および約3.2mm厚さの寸法であった。次いでバーを後述の衝撃試験にかけた。
【0094】
バーについてノッチ付シャルピー衝撃強さをASTM法D6110−10に従って測定した。ノッチ付シャルピー衝撃強さを+23℃または−30°のいずれかに調整したバーに関して+23℃で測定した。メルトフローレート(MFR)を、(ASTM D1238)に従って230℃において2.16kgの荷重でポリプロピレンについて決定した。メルトフローレートならびに23℃および−30℃におけるシャルピー衝撃で得られた変化を表14に列挙している。
【0095】
【表14】
【0096】
500および1,000ppmの有機過酸化物のみ(相溶化剤なし)の添加により得られた組成物は、過酸化物を高インパクトポリプロピレンコポリマーに添加しているので、メルトフローレートが有意に増大するが、23℃および−30℃におけるシャルピー衝撃が望ましくないほど低減することを示している。本発明の例19〜21において示したTEMPO−メタクリレートと500ppm過酸化物との添加は、23℃におけるシャルピー耐衝撃性能の最小限の低下および−30℃における改良されたシャルピー耐衝撃性能とともにどの程度メルトフローレートを増大させるかを示している。本発明の例22〜24に示したTEMPO−メタクリレートと1000ppm過酸化物との使用は、メルトフローレートのさらなる増大を示す一方で23℃および−30℃におけるシャルピー耐衝撃性能も増加させる。
【0097】
例25〜26
以下の例は、本発明に従った、組成物の製造と、ポリプロピレンホモポリマーが少数成分、すなわち異相組成物中の離散相であるポリマーブレンドへのTEMPO−メタクリレートの組込みにより達成された性能向上を示す。本発明のポリマーブレンドは、75w/w%のポリオレフィンエラストマー(Dow Chemical Company製のEngage(商標)8842)、2dg/分のポリプロピレンホモポリマー(Total Petrochemicals 3276)、1,000ppmの有機過酸化物(R.T.Vanderbilt Companyから入手可能なVarox DBPH)およびTEMPO−メタクリレートからなっていた。過酸化物およびTEMPOメタクリレートの添加量を表15に列挙し、ブレンドの残部はポリオレフィンエラストマーおよびポリプロピレンホモポリマーである。その結果を、過酸化物のみが存在した場合ならびに過酸化物および相溶化剤のどちらも存在しない場合に作った異相ポリオレフィン組成物と比較した。
【0098】
各々の組成物を、成分を密閉容器中で約1分間ブレンドすることによって配合した。次いで組成物を、スクリュー直径16mmおよび長さ/直径比が25:1のPrism TSE−16−TC同方向回転、完全かみあい型、パラレル、二軸押出機によって溶融コンパウンドした。押出機のバレル温度を約195℃から約215℃に上昇させ、スクリュー速度を約500rpmに設定した。各々のポリオレフィンブレンド組成物の押出物(ストランドの形態)を水浴で冷却し、続いてペレット化した。次いでペレット化した組成物を、12トンCarver Pressにより、プラテン温度230℃および保持圧力約6トンで約4分間圧縮成形し、約6インチ幅、6インチ長さ、および0.047インチ厚さのシートにした。次いでASTM Type IVドッグボーン試料を、これらの圧縮成型シートから打抜いた。ASTM Type IVドッグボーンについての引張特性を、ASTM法D638に従って、MTS Q−Test−5を用いてクロスヘッド速度20.0in/分で測定した。
【0099】
【表15】
【0100】
過酸化物のみを含む(相溶化剤なし)組成物は、過酸化物を75w/w%ポリオレフィンエラストマーおよび残部ポリプロピレンホモポリマーを含有するポリオレフィンブレンドに添加する場合、引張降伏強さが変化しないままであり、引張弾性率が増加することを示す。TEMPO−メタクリレートをこのブレンドに添加する場合、本発明の例25および26に示すように、引張降伏強さは有意に増大する。例25に示すように、75%ポリオレフィンエラストマーを含有するブレンドにおいて552ppmのTEMPO−メタクリレートを1000ppm過酸化物と合わせると、引張弾性率も有意に増加しうる。
【0101】
例27〜30および比較例C25〜C28
以下の例は、本発明の相溶化剤の組込みによる、達成された異相インパクトコポリマーの光学的性質の予期しない改善を示す。本発明のおよび比較例の化合物を、表16に記載した一般的な配合に基づいて配合してポリプロピレンコポリマー組成物のバッチにした。
【0102】
【表16】
【0103】
各々の異相ポリプロピレンコポリマー組成物を上記の手順に従って混合し、押出した。次いでペレット化した組成物を使用し、直径14mmのスクリューを有するNissei HM7 7トン射出成形機により組成物を射出成形することによってディスクを形成した。射出成形機のバレル温度は約215〜230℃、金型温度は約25℃であった。得られたディスクは約37mm径、1.3mm厚さ(50ミル)の寸法であった。本明細書で分析した試料についての透明性測定はASTM D1003に従って射出成形したディスクに関してヘイズメーターたとえばBYK−Gardner Haze−Gard Plusを用いて行った。
【0104】
【表17】
【0105】
前述の例は、不飽和結合のないニトロキシド化合物と対比して、ラジカル付加反応を受けることができる不飽和結合を有する本発明のニトロキシド化合物で改質された異相インパクトコポリマーの光学的性質の変化を示す。改質されていないインパクトコポリマーの透明性は11.4であり、過酸化物による改質は透明性の低下を起こしただけであった。比較例C25〜C28は、不飽和官能基を有していないニトロキシドによる異相ポリプロピレンコポリマーの改質が透明性をさらに低下させることを示している。例27〜30は、不飽和官能基をもつニトロキシドが透明性を有意に増加させることを示している。
【0106】
特定の理論に拘束されるものではないが、ニトロキシド官能基およびラジカル付加反応を受けることができる不飽和結合の両方を有する相溶化剤は、異相ポリオレフィンの両方の相中の分子との反応が可能であり、それによって別個の相の間の界面を改質させると考えられる。この改質は、異相ポリオレフィン組成物の透明性の劇的で予期しない増加をもたらす。
【0107】
例31
以下の例は、本発明の方法に従った、マスターバッチの改質と、このマスターバッチを含有する異相ポリオレフィン組成物において達成された性能向上を示す。
【0108】
3種の改質されたマスターバッチ組成物を製造した。比較試料31−MB(C.S.31−MB)は、ビスブレーキング剤として過酸化物を用いてポリプロピレンコポリマーを溶融コンパウンディングすることによって作製した。試料31A−MBおよび31−B MBは、ビスブレーキング剤として過酸化物、および相溶化剤として4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン−1−オキシル(TEMPO−メタクリレート)を用いて、同一のポリプロピレンコポリマーを溶融コンパウンディングすることによって作製した。これらの試料の一般的な配合を表18および19に記載している。
【0109】
【表18】
【0110】
表18に列挙した各々の組成物を上記の手順に従って混合し、押出した。
【0111】
【表19】
【0112】
3種の異相ポリマー組成物を、上記の改質されたマスターバッチ組成物をポリプロピレンコポリマーに添加することによって製造した。比較試料31A(C.S.31A)は、改質されていないポリプロピレンコポリマーであった。比較試料31B(C.S.31B)を、改質されていないポリプロピレンコポリマーを比較試料31−MB(C.S.31−MB)と配合することによって作製した。試料31Aを、同一の改質されていないポリプロピレンコポリマーを試料31A−MBと配合することによって作製し、試料31Bを、同一の改質されていないポリプロピレンコポリマーを試料31B−MBと配合することによって作製した。これらの試料についての一般的な配合を表20および21に記載する。
【0113】
【表20】
【0114】
表20に列挙した各々の組成物を上記の手順に従って混合し、押出し、射出成形した。次いでバーを上述したようにメルトフローレートおよびアイゾッド衝撃試験にかけた。
【0115】
【表21】
【0116】
表21に記載したデータは、本発明による改質されたマスターバッチ(たとえば、異相ポリマーをビスブレーキング剤および相溶化剤と溶融コンパウンディングすることによって作製した改質されたマスターバッチ)を改質されていない異相ポリマーに溶融コンパウンドし、それによって異相ポリマーの衝撃強さを有意に改善させることを示している。たとえば、C.S.31Bについてのデータは、ビスブレークされたマスターバッチC.S.31−MBを改質されていない異相ポリマーに溶融コンパウンディングすることが、ポリマーの衝撃強さにそれほど影響を与えないことを示している。対照的に、試料31Aおよび31Bについてのデータは、改質されていない異相ポリマーを改質されたマスターバッチ組成物試料31A−MBおよび試料31B−MBと溶融コンパウンディングすることが、ポリマーの衝撃強さを12%ほど増大させることを示している。このことは、改良された異相ポリマー組成物がビスブレーキング剤および/または相溶化剤を標的の異相ポリマーに直接添加することなく製造できることを示しているので、特に価値がある。このような添加剤の直接添加は、たとえば配合設備および射出成形設備の特定の設定では困難な可能性がある。しかし、このような設備はマスターバッチ組成物を日常的に利用する。したがって、このような設備は、上述したように改質されたマスターバッチ組成物の使用により、本明細書に記載している物理的性質の改善を容易に達成できるであろう。
【0117】
例32
以下の例は、本発明の方法に従った、マスターバッチの改質と、このマスターバッチを含有する異相ポリオレフィン組成物において達成された性能向上を示す。
【0118】
3種の改質されたマスターバッチ組成物を製造した。比較試料32−MB(C.S.32−MB)は、ポリプロピレンホモポリマー、エチレン/オクテンエラストマー、およびビスブレーキング剤として過酸化物を溶融コンパウンディングすることによって作製した。試料32A−MBおよび32B−MBは、同一のポリプロピレンホモポリマーおよびエチレン/オクテンエラストマーを、ビスブレーキング剤として過酸化物および相溶化剤として4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン−1−オキシル(TEMPO−メタクリレート)を用いて溶融コンパウンディングすることによって作製した。これらの試料の一般的な配合を表22に記載している。
【0119】
【表22】
【0120】
表22に記載した各々の組成物を上述した上記の手順に従って混合し、押出した。
【0121】
【表23】
【0122】
3種の異相ポリマー組成物を、上述した改質されたマスターバッチ組成物をポリプロピレンコポリマーに添加することによって製造した。比較試料32A(C.S.32A)は改質されていないポリプロピレンコポリマーであった。比較試料32B(C.S.32B)を、改質されていないポリプロピレンコポリマーを比較試料32−MB(C.S.32−MB)と配合することによって作製した。試料32Aを、同一の改質されていないポリプロピレンコポリマーを試料32A−MBと配合することによって作製し、試料32Bを、同一の改質されていないポリプロピレンコポリマーを試料32B−MBを配合することによって作製した。これらの試料の一般的な配合を表24および25に記載している。
【0123】
【表24】
【0124】
表24に記載した各々の組成物を上述した手順に従って混合し、押出し、射出成形した。次いでバーを上述したようにメルトフローレートおよびアイゾッド衝撃試験にかけた。
【0125】
【表25】
【0126】
表25に記載したデータは、本発明による改質されたマスターバッチ(たとえば、異相ポリマーをビスブレーキング剤および相溶化剤と溶融コンパウンディングすることによって作製した改質されたマスターバッチ)を、改質されていない異相ポリマーに溶融コンパウンドでき、それによって異相ポリマーの衝撃強さを有意に改善させることを示している。たとえば、C.S.32Bについてのデータは、ビスブレークされたマスターバッチC.S.32−MBを改質されていない異相ポリマーに溶融コンパウンディングすることがポリマーの衝撃強さにそれほど影響を与えないことを示している。対照的に、試料32Aおよび32Bについてのデータは、改質されていない異相ポリマーを改質されたマスターバッチ組成物試料32A−MBおよび試料32B−MBと溶融コンパウンディングすることがポリマーの衝撃強さを有意に増大させることを示している。実際、ポリマーの衝撃強さは、アイゾッド衝撃試験中に部品が完全に破壊されない点まで増大され、したがって、衝撃強さの値を測定することができなかった。このような結果は、それが、改良された異相ポリマー組成物を、ビスブレーキング剤および/または相溶化剤を標的の異相ポリマーに直接添加することなく製造できることを示しているので特に価値がある。このような添加剤の直接添加は、たとえば配合設備および射出成形設備の特定の設定では難しい可能性がある。しかし、このような設備はマスターバッチ組成物を日常的に利用する。したがって、このような設備は、上述したように改質されたマスターバッチ組成物の使用により、本明細書に記載した物理的性質の改善を容易に達成することができるであろう。
【0127】
用途
本発明の異相ポリオレフィン組成物は従来のポリマー加工用途に使用してもよく、これらは射出成形、薄肉射出成形、一軸配合、二軸配合、バンバリー混合、共ニーダー混合、二本ロール練り、シート押出、繊維押出、フィルム押出、パイプ押出、異形押出、押出コーティング、押出ブロー成形、射出ブロー成形、射出延伸ブロー成形、圧縮成形、押出圧縮成形、圧縮ブロー成形、圧縮延伸ブロー成形、熱成形、および回転成形を含むがこれらに限定されない。本発明の熱可塑性ポリマー組成物を使用して作製した熱可塑性ポリマー製品は、本発明の熱可塑性ポリマー組成物を含有する1または任意の好適な数の複数の層を含む複数の層からなっていてもよい。例として、典型的な最終用途製品は、容器、包装、自動車部品、ボトル、膨張または発泡製品、電気製品部品、ふた、カップ、家具、家庭用品、バッテリーケース、枠箱、パレット、フィルム、シート、繊維、パイプ、および回転成形部品を含む。
【0128】
本明細書において引用した、刊行物、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、各々の参考文献が個々におよび具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体が本明細書に記載されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれている。
【0129】
本出願の主題を説明する文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)用語「a」および「an」および「the」および同様の指示語の使用は、本明細書において特に指示がない限りまたは明らかに文脈と矛盾しない限り、単数と複数の両方を包含するように解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」は、特に指摘がない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むが、限定されない」の意味)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に特に指示がない限り、単に範囲内にあるそれぞれ別の値を個々に参照する簡単な方法として機能するように意図されており、それぞれ別の値は、本明細書に個々に記載されたかのように明細書に組み込まれている。本明細書に記載したすべての方法は、本明細書に特に指示がないかまたは明らかに文脈と矛盾しない限り、任意の好適な順番で行うことができる。本明細書において示した任意およびすべての例、または例示的な言い回し(たとえば、「たとえば(such as)」)の使用は、単に本出願の主題をより良好に明らかにするように意図されており、特にクレームしない限り主題の範囲を限定するものではない。明細書のいかなる言い回しも、任意のクレームしていない要素が本明細書に記載されている主題の実施に不可欠なものとして示しているように解釈されるべきでない。
【0130】
クレームした主題を実施するために発明者らに知られている最良のモードを含め、本出願の主題の好ましい実施形態は本明細書に記載されている。それらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読むことにより、当業者に明らかになるであろう。発明者らは当業者がこのような変形を適宜使用することを予想し、また発明者らは本明細書に具体的に記載されている以外の方法で本明細書に記載されている主題が実施されることを意図している。したがって、この開示は、適用法令によって許される限り、これに添付された特許請求の範囲に記載された主題のすべての変更および均等物を含む。さらに、そのすべての可能な変形における上述した要素の任意の組合せは、本明細書に特に指示がないまたは明らかに文脈と矛盾しない限り、本開示によって包含される。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
異相ポリマー組成物であって、(a)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下のエチレンおよび/またはC4〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相、ならびに(b)エチレンホモポリマーおよびエチレンとC3〜C10α−オレフィンモノマーとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相を含み、ただし前記エチレンポリマー相のエチレン含有量は少なくとも8重量%であり、さらに前記プロピレンポリマー相のプロピレン含有量は前記エチレンポリマー相のプロピレン含有量よりも高く、前記組成物は相溶化剤によってエチレンポリマーと結合しているプロピレンポリマーをさらに含み、前記相溶化剤は、(i)少なくとも1のニトロキシドラジカル、または前記プロピレンポリマーおよびエチレンポリマーと溶融コンパウンドされている間に少なくとも1のニトロキシドラジカルを生成可能な部分と、(ii)ラジカル付加反応を受けることができる少なくとも1の不飽和結合とを有する有機化合物からなる群から選択される、異相ポリマー組成物。
[2]
[1]に記載の組成物であって、前記エチレンポリマーは、エチレン−プロピレンエラストマー、エチレン−ブテンエラストマー、エチレン−ヘキセンエラストマー、エチレン−オクテンエラストマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される、組成物。[3]
[1]に記載の組成物であって、前記エチレンポリマーは、前記組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの総重量に基づいて、異相ポリオレフィンポリマー組成物の5〜80重量%を構成する、組成物。
[4]
[1]に記載の組成物であって、異相ポリオレフィンポリマー組成物のエチレン含有量は、前記組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーの総重量に基づいて、5〜60重量%である、組成物。
[5]
[4]に記載の組成物であって、前記プロピレンポリマー相の前記プロピレン含有量は80重量%以上である、組成物。
[6]
[5]に記載の組成物であって、前記エチレンポリマー相は異相ポリオレフィンポリマー組成物中の不連続相である、組成物。
[7]
[1]に記載の組成物であって、前記相溶化剤の前記不飽和結合は二重結合である、組成物。
[8]
[1]に記載の組成物であって、前記相溶化剤は、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン−1−オキシル、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン−1−オキシル、4−((4−ビニルベンジル)オキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン−1−オキシル、4,4’−((ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジイルビス(オキシ))ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)、およびN−tert−ブチル−α−フェニルニトロンからなる群から選択される、組成物。
[9]
[1]に記載の組成物であって、前記相溶化剤は、異相ポリオレフィンポリマー組成物中に、前記組成物の総重量に基づいて、10ppmから5重量%の濃度で存在する、組成物。
[10]
[1]に記載の組成物であって、前記相溶化剤の前記ニトロキシドラジカルはプロピレンポリマーと反応して結合し、前記相溶化剤の前記不飽和結合はエチレンポリマーと反応して結合し、前記相溶化剤の前記不飽和結合と前記エチレンポリマーとの反応はフリーラジカル発生剤の存在下で行われる、組成物。
[11]
[10]に記載の組成物であって、前記フリーラジカル発生剤は有機過酸化物である、組成物。
[12]
異相ポリマー組成物であって、ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと80重量%以下のエチレンおよび/またはC4〜C10α−オレフィンとのコポリマーからなる群から選択されるポリプロピレンポリマーを含む連続相、ならびに8〜90重量%のエチレン含有量を有するエチレン/C3〜C10α−オレフィンコポリマーからなる群から選択されるエラストマーエチレンコポリマーを含む不連続相を含み、ただし前記プロピレンポリマー相のプロピレン含有量は前記エチレンポリマー相のプロピレン含有量よりも高く、前記組成物は相溶化剤によってエチレンコポリマーと結合しているプロピレンポリマーをさらに含み、前記相溶化剤は、(i)少なくとも1のニトロキシドラジカル、またはプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーと溶融コンパウンドされている間に少なくとも1のニトロキシドラジカルを生成可能な部分と、(ii)ラジカル付加反応を受けることができる少なくとも1の不飽和結合とを有する有機化合物からなる群から選択される、異相ポリマー組成物。
[13]
[12]に記載の組成物であって、前記不連続相は、前記組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンコポリマーの重量に基づいて、異相ポリオレフィンポリマー組成物の5〜35重量%を構成する、組成物。
[14]
[12]に記載の組成物であって、前記不連続相を構成する前記エチレンコポリマーは8〜80重量%のエチレン含有量を有する、組成物。
[15]
[12]に記載の組成物であって、異相ポリオレフィンポリマー組成物は、前記組成物中のプロピレンポリマーおよびエチレンコポリマーの総重量に基づいて、5〜30重量%のエチレンを含む、組成物。
[16]
[12]に記載の組成物であって、異相ポリオレフィンポリマー組成物は、少なくとも2の重合段階において操作することによって得られる、[12]に記載の組成物。
[17]
[12]に記載の組成物であって、前記プロピレンポリマー相の前記プロピレン含有量は80重量%以上である、組成物。
[18]
[12]に記載の組成物であって、前記相溶化剤の前記不飽和結合は二重結合である、組成物。
[19]
[12]に記載の組成物であって、前記相溶化剤は、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン−1−オキシル、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン−1−オキシル、4−((4−ビニルベンジル)オキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン−1−オキシル、4,4’−((ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジイルビス(オキシ))ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)、およびN−tert−ブチル−α−フェニルニトロンからなる群から選択される、記載の組成物。
[20]
[12]に記載の組成物であって、前記相溶化剤は、異相ポリオレフィンポリマー組成物中に、前記組成物の総重量に基づいて、10ppmから5重量%の濃度で存在する、組成物。
[21]
[20]に記載の組成物であって、前記相溶化剤の前記ニトロキシドラジカルはプロピレンポリマーと反応して結合し、前記相溶化剤の前記不飽和結合はエチレンポリマーと反応して結合し、前記相溶化剤の前記不飽和結合と前記エチレンコポリマーとの反応は、1以上のO−O結合を組み込んだ有機過酸化物からなる群から選択されるフリーラジカル発生剤の存在下で行われ、前記相溶化剤は前記O−O結合に対して1:10〜10:1のモル比で存在する、組成物。
[22]
下記の工程を含む方法によって得られる異相ポリオレフィンポリマー組成物であって、 (a)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下のエチレンおよび/またはC4〜C10α−オレフィンとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相、ならびにエチレンホモポリマーおよびエチレンとC3〜C10α−オレフィンとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相を用意する工程であって、ただし前記エチレンポリマー相のエチレン含有量は少なくとも8重量%である工程と、
(b)相溶化剤であって、(i)少なくとも1のニトロキシドラジカル、またはポリオレフィンポリマー組成物と溶融コンパウンドされている間に少なくとも1のニトロキシドラジカルを生成可能な部分と、(ii)ラジカル付加反応を受けることができる少なくとも1の不飽和結合を有する化合物からなる群から選択される相溶化剤を用意する工程と、 (c)前記プロピレンポリマー相、前記エチレンポリマー相および前記相溶化剤を遊離炭素ラジカルの存在下で混合し、それによってプロピレンポリマーが前記相溶化剤によってエチレンポリマーに結合され、およびそれによって前記プロピレンポリマー相および前記エチレンポリマー相が異相組成物を形成する工程と
を含む、異相ポリオレフィンポリマー組成物。
[23]
[22]に記載の組成物であって、前記プロピレンポリマー相、前記エチレンポリマー相および前記相溶化剤は遊離炭素ラジカルの存在下で溶融コンパウンディングによって混合され、前記組成物は25℃で異相である、組成物。
[24]
[23]に記載の組成物であって、前記プロピレンポリマー相は連続相であり、前記プロピレンポリマー相のプロピレン含有量は80重量%以上であり、前記エチレンポリマー相は不連続相であり、前記エチレンポリマーは、8〜80重量%のエチレン含有量を有する、エチレンとC3〜C10α−オレフィンとのコポリマーである、組成物。
[25]
[22]に記載の組成物であって、前記相溶化剤の前記ニトロキシドラジカルはプロピレンポリマーと反応して結合し、前記不飽和結合はエチレンポリマーと反応して結合している、組成物。
[26]
下記の工程を含む方法によって得られる異相ポリオレフィンポリマー組成物を作製する方法であって、
(a)ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレンと50重量%以下のエチレンおよび/またはC4〜C10α−オレフィンとのコポリマーからなる群から選択されるプロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー相、ならびにエチレンホモポリマーおよびエチレンとC3〜C10α−オレフィンとのコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーを含むエチレンポリマー相を用意する工程であって、ただし前記エチレンポリマー相のエチレン含有量は少なくとも8重量%である工程と、
(b)相溶化剤であって、(i)少なくとも1のニトロキシドラジカル、またはポリオレフィンポリマー組成物と溶融コンパウンドされている間に少なくとも1のニトロキシドラジカルを生成可能な部分と、(ii)ラジカル付加反応を受けることができる少なくとも1の不飽和結合を有する化合物からなる群から選択される相溶化剤を用意する工程と、 (c)前記プロピレンポリマー相、前記エチレンポリマー相および前記相溶化剤を遊離炭素ラジカルの存在下で混合し、それによって前記相溶化剤がプロピレンポリマーおよびエチレンポリマーと反応してプロピレンポリマーをエチレンポリマーに結合させ、およびそれによって前記プロピレンポリマー相および前記エチレンポリマー相が異相組成物を形成する工程と
を含む、方法。
[27]
[26]に記載の方法であって、前記プロピレンポリマー相、前記エチレンポリマー相および前記相溶化剤は遊離炭素ラジカルの存在下で溶融コンパウンディングによって混合され、前記組成物は25℃で異相である、方法。
[28]
[27]に記載の方法であって、前記プロピレンポリマー相は連続相であり、前記プロピレンポリマー相のプロピレン含有量は80重量%以上であり、前記エチレンポリマー相は不連続相であり、前記エチレンポリマーは、8〜80重量%のエチレン含有量を有する、エチレンとC3〜C10α−オレフィンとのコポリマーである、方法。
[29]
[27]に記載の方法であって、前記ポリプロピレン相および前記エチレン相は、少なくとも2の重合段階で操作することによって得られた異相インパクトコポリマーとして混合物に供給される、方法。
[30]
[27]に記載の方法であって、前記相溶化剤の前記ニトロキシドラジカルはプロピレンポリマーと反応して結合し、前記不飽和結合はエチレンポリマーと反応して結合している、方法。
[31]
[30]に記載の方法であって、前記相溶化剤は、異相ポリオレフィンポリマー組成物中に、前記組成物の総重量に基づいて10ppmから5重量%の濃度で存在し、前記相溶化剤の前記不飽和結合と前記エチレンポリマーとの反応は、1以上のO−O結合を組み込んだ有機過酸化物からなる群から選択されるフリーラジカル発生剤の存在下で行われ、前記相溶化剤は前記O−O結合に対して1:10〜10:1のモル比で存在する、方法。
図1
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図9