特許第6724119号(P6724119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6724119
(24)【登録日】2020年6月26日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】赤方偏移ルシフェリン及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/66 20060101AFI20200706BHJP
   C07D 277/84 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   C12Q1/66
   C07D277/84
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】72
(21)【出願番号】特願2018-228957(P2018-228957)
(22)【出願日】2018年12月6日
(62)【分割の表示】特願2016-500805(P2016-500805)の分割
【原出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2019-68817(P2019-68817A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2018年12月27日
(31)【優先権主張番号】61/777,208
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593089149
【氏名又は名称】プロメガ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ヒトコ ウッドルーフ カロリン
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−508339(JP,A)
【文献】 特表2008−545746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/66
G01N 21/76
C07D 277/00−277/84
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/
BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ヒトトランスジェニック動物中の発光を検出する方法であって、
式(Ia)、(Ib)及び/又は(Ic):


(式中、Xは、CNまたは
各Yは、互いに独立してハロ基、SO3H、C1-4アルキル基、置換C1-4アルキル基、OR1またはNR12
各R1は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;
各R2は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は、一緒に4〜8員環を形成し;
nは1〜6;
2つのY置換基は、互いに結合して、5〜7個の環原子を含む環を形成してもよく;及び
少なくとも1つのYは、OHまたはNR12の何れかである)
で表される化合物を、非ヒトトランスジェニック動物に投与する工程、及び
発光を検出する工程
を含み、該非ヒトトランスジェニック動物が、ルシフェラーゼを発現していることを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも1つのYが、OHである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのYが、NR12である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
芳香環が、1個のOHまたはNR12及び5個以下のハロ基により置換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ハロ基が、フルオロ基である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ハロ基が、クロロ基である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのYが、SO3Hである、請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
非ヒトトランスジェニック動物中の発光を検出する方法であって、
式(II):

(式中、Xは、CNまたは
Yは、OR1またはNR12
1は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は、一緒に環を形成する)
で表される化合物を、非ヒトトランスジェニック動物に投与する工程、及び
発光を検出する工程
を含み、該非ヒトトランスジェニック動物が、ルシフェラーゼを発現していることを特徴とする方法。
【請求項9】
非ヒトトランスジェニック動物中の発光を検出する方法であって、
式(III):

(式中、Xは、CNまたは
Yは、OR1またはNR12
1は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は、一緒に環を形成する)
で表される化合物を、非ヒトトランスジェニック動物に投与する工程、及び
発光を検出する工程
を含み、該非ヒトトランスジェニック動物が、ルシフェラーゼを発現していることを特徴とする方法。
【請求項10】
非ヒトトランスジェニック動物中の発光を検出する方法であって、
式(V):

(式中、Xは、CNまたは
Yは、OR1またはNR12
1は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は、一緒に環を形成する)
で表される化合物を、非ヒトトランスジェニック動物に投与する工程、及び
発光を検出する工程
を含み、該非ヒトトランスジェニック動物が、ルシフェラーゼを発現していることを特徴とする方法。
【請求項11】
非ヒトトランスジェニック動物中の発光を検出する方法であって、
式(VI):

(式中、Xは、CNまたは
Yは、OR1またはNR12
1は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は、一緒に環を形成する)
で表される化合物を、非ヒトトランスジェニック動物に投与する工程、及び
発光を検出する工程
を含み、該非ヒトトランスジェニック動物が、ルシフェラーゼを発現していることを特徴とする方法。
【請求項12】
非ヒトトランスジェニック動物中の発光を検出する方法であって、
式(VII):

(式中、Xは、CNまたは
各Yは、互いに独立してOR1またはNR12
各R1は、互いに独立してH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
各R2は、互いに独立してH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は、互いに結合して環を形成する)
で表される化合物を、非ヒトトランスジェニック動物に投与する工程、及び
発光を検出する工程
を含み、該非ヒトトランスジェニック動物が、ルシフェラーゼを発現していることを特徴とする方法。
【請求項13】
Xが、CNである、請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
Xが、
である、請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
Yが、NR12である、請求項8〜14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
Yが、OHである、請求項8〜14の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
Yが、NH2である、請求項1〜15の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年3月12日に出願された米国仮出願第61/777,208号に対する優先権の利益を主張するものであり、参照することにより本明細書に組み入れられるものとする。
【背景技術】
【0002】
長波長で低エネルギー放出型の生物発光は、多数の発光色を用いた多重分析への応用及び短波長が強く吸収されやすい深層組織イメージングの両方において大変注目されている。光学イメージングの基本的手法の多くは、生物サンプル中の光透過率が低いため動物の全身を対象とした利用は限られている。血液中の特定の成分の吸収係数により光浸透性は抑制される。ヘモグロビン(Hb)及び酸素結合型ヘモグロビン(HbO2)の強い吸収により、血液及び動物組織中の光伝達(並びに浸透深さ)が低下する。遠赤色及び近赤外域(680〜900nm)において光を放出する発光システムは、Hb及びHbO2の吸収スペクトルが最小であるため、最適なイメージングを可能とする。光浸透性が最大となるこの領域は全身動物の「光学窓」として知られている。実験動物において生物発光レポーターシステムは広く利用されてきたが、組織透過性の低下による限界に未だ苦慮している。典型的な生物発光の発光波長(460〜620nm)は浸透深さの短い領域で起こる。680〜900nmの領域において明瞭な発光が得られれば、理想的な全身動物用の生物発光レポーターシステムにとって大変有益である。多くの生物発光システムが赤色側に可視発光を偏移させる改善を行ってきたが、血液透過に重要な「光学窓」と大幅に重なる十分に赤色な強い発光は得られていない。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施例で本発明は式(Ia)、(Ib)及び(Ic):
(式中、XはCNまたは
各Yは互いに独立してハロ基、SO3H、C1-4アルキル基、置換C1-4アルキル基、OR1またはNR12
各R1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;
各R2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し4から8員環を形成し;
nは1から6;
2つのY置換基は互いに結合し5から7個の環原子を含む環を形成してもよく;及び
少なくとも1つのYはOHまたはNR12の何れかである)で表される化合物を提供する。
【0004】
別の実施例で本発明は式(II):
(式中、XはCNまたは
YはOR1またはNR12
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し環を形成する)で表される化合物を提供する。
【0005】
また、別の実施例で本発明は式(III):
(式中、XはCNまたは
YはOR1またはNR12
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し環を形成する)で表される化合物を提供する。
【0006】
別の実施例で本発明は式(V):
(式中、XはCNまたは
YはOR1またはNR12
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し環を形成する)で表される化合物を提供する。
【0007】
また、別の実施例で本発明は式(VI):
(式中、XはCNまたは
YはOR1またはNR12
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し環を形成する)で表される化合物を提供する。
【0008】
また、別の実施例で本発明は式(VII):
(式中、XはCNまたは
各Yは互いに独立してOR1またはNR12
各R1は互いに独立してH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
各R2は互いに独立してH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合して環を形成する)で表される化合物を提供する。
【0009】
また、別の実施例で本発明は式(IX):
(式中、XはCNまたは
YはOR;
Rは
WはS、NRNまたはO;
ZはS、NRN、OまたはCH;及び
NはH、C1-4アルキル基または置換C1-4アルキル基である)で表される化合物を提供する。
【0010】
別の実施例で本発明は式(X):
(式中、XはCNまたは
YはOR1またはNR12;及び
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し4から8員環を形成する)で表される化合物を提供する。
【0011】
別の実施例で本発明は式(XI):
(式中、XはCNまたは
YはOR;及び
Rは
である)で表される化合物を提供する。
【0012】
別の実施例で本発明は式(XII):
(式中、XはCNまたは
YはOR;
Rは
AはORまたはNHAc;
各R5は互いに独立してH、単糖または40ユニットまでのポリエチレングリコール部分である)で表される化合物を提供する。
【0013】
また、別の実施例で本発明は式(XIII):
(式中、XはCNまたは
YはNHR;
Rは
7はアミノ酸側鎖;
6はH、窒素保護基または35アミノ酸までの鎖である)で表される化合物を提供する。
【0014】
また、別の実施例で本発明は式(XIV):
(式中、Xは−CH(OR102
10はC1-4アルキル基、置換C1-4アルキル基、ベンジル基または置換ベンジル基;
YはOR1またはNR12;及び
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し4から8員環を形成する)で表される化合物を提供する。
【0015】
別の実施例で本発明は式(XV):
(式中、XはCNまたは
YはHまたはOR;及び
RはC1-10アルキル基、置換C1-10アルキルアリール基、置換アリール基、アラルキル基または置換アラルキル基である)で表される化合物を提供する。
【0016】
別の実施例で本発明は式(XVI):
(式中、Xは−CH(OR102
10はC1-4アルキル基、置換C1-4アルキル基、ベンジル基または置換ベンジル基;
YはOR1またはNR12;及び
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し4から8員環を形成する)で表される化合物を提供する。
【0017】
別の実施例で本発明は式(XVII):
(式中、R8はCH2OH、C(O)R10または−C(O)ZR9
ZはOまたはNH;
9はC1-7アルキル基または置換C1-7アルキル基;
10はペプチド;
YはOR1またはNR12;及び
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1はR2と互いに結合し4から8員環を形成する)で表される化合物を提供する。
【0018】
また、別の実施例で本発明は式(XVIII):
(式中、XはCNまたは
YはOR;
Rは
各R11は互いに独立してH、C1-6アルキル基、置換C1-6アルキル基、CF3、ハロゲン、NO2、CO212または少なくとも1つのR11がNO2の時、隣り合う何れか2個のR11は縮合環を形成してもよく;及び
12はH、C1-6アルキル基または置換C1-6アルキル基である)で表される化合物を提供する。
【0019】
別の実施例で本発明は式(XIX):
(式中、XはCNまたは
YはO、NH、N(C1-7アルキル基)またはN(置換C1-7アルキル基);
Zは存在しないかまたはO;
AはC1-4アルキレン基または置換C1-4アルキレン基;及び
14はH、フェナセチル基またはセファロスポリン側鎖である)で表される化合物を提供する。
【0020】
別の実施例で本発明は式(XX):
(式中、XはCNまたは
YはL−R;
Lはリンカー;及び
Rはボロン酸またはホウ酸エステルである)で表される化合物を提供する。
【0021】
別の実施例で本発明は、サンプルを本発明記載の化合物と接触させる;サンプルとルシフェラーゼを接触させる(サンプル中に存在していない場合);及び発光を検出する;からなるサンプル中の発光検出方法を提供する。
【0022】
また、別の実施例で本発明は、本発明記載の化合物をトランスジェニック動物に投与する;発光を検出する(ただし、トランスジェニック動物はルシフェラーゼを発現している);からなるトランスジェニック動物中の発光検出方法を提供する。
【0023】
別の実施例で本発明は、本発明記載の化合物と酵素を含む可能性のあるサンプルを接触させる;サンプルにルシフェラーゼ反応混合を添加する;及びサンプル中の発光を検出する;からなる非ルシフェラーゼ酵素の存在または量を検出する方法を提供する。
【0024】
別の実施例で本発明は、本発明記載の化合物をトランスジェニック動物に投与する、及び発光を検出する(ただし、トランスジェニック動物はルシフェラーゼを発現している)、からなる非ルシフェラーゼ酵素の存在をin vivoで検出する方法を提供する。
【0025】
また、別の実施例で本発明は、本発明記載の化合物を動物に投与する;動物からサンプルを採取する;ルシフェラーゼ反応混合液をサンプルに添加する;及びサンプルの発光を検出する;からなる非ルシフェラーゼ酵素の存在を検出する方法を提供する。
【0026】
別の実施例で本発明は、被験化合物と細胞を接触させる;請求項22ないし33の何れか1項記載の化合物を添加し混合液を作製する;ルシフェラーゼ反応混合液を混合液に添加する;及び発光を検出する;からなる非ルシフェラーゼ酵素の調節因子のin vitroスクリーニング方法を提供する。
【0027】
別の実施例では本発明は、本発明記載の化合物からなるキットを提供する。
【0028】
本発明の他の態様は明細書及び付随する図面を鑑みて明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1はアミノルシフェリンコントロールのロイシン付加体(ロイシン−ルシフェリン;黒丸)またはアミノイソナフトルシフェリンのロイシン付加体(PBI−5044;灰色の正方形)の生物発光反応を添加アミノペプチダーゼの関数として示す。
図2図2はアミノペプチターゼに対するロイシニルアミノイソナフトルシフェリンのKmを示す。
図3図3はルシフェリン基質(緑光を発する)及び本発明の基質が多重分析可能である、すなわち同一サンプルに添加し、他方からの干渉をほとんど受けずにそれぞれの発光を検出できることを示す。
図4図4はエステラーゼ活性の測定に本発明の発光エステル基質前駆体PBI−5045を使用した結果を示す。図4Aは発光(RLUs)を表し、図4Bはバックグラウンドに対する発光の倍数を示す。
図5図5はPBI−4813及び4739の細胞毒性プロファイルを示す。
図6図6は雌のCD−1マウスにPBI−4739またはPBI−4813を単回投与後の臨床徴候及び動物行動のデータを示す。
図7図7は雌のCD−1マウスにPBI−4739またはPBI−4813を単回投与後の生存率を示す。
図8図8は雌のCD−1マウスにPBI−4739またはPBI−4813を単回投与後の体重をグラム単位で示す。
図9図9は雌のCD−1マウスにPBI−4739またはPBI−4813を単回投与後の体重をパーセント表示で示す。
図10図10は雌のCD−1マウスにPBI−4739またはPBI−4813を単回投与後の解剖結果を示す。
図11図11はPBI−4379の化学発光シグナルを示す。
図12図12はPBI−4379の蛍光データを示す。
図13図13はPBI−4813の蛍光データを示す。
図14図14は近赤外におけるPBI−4739及びPBI−4813の特性を表すスペクトルデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の何れの実施形態が詳細に説明される前に、本発明は、以下の記述で説明される、または以下の図面に図示される詳細な構成及び項目の順序は用途を限定するものではないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であるとともに、様々な方法で実践または実行することができる。
【0031】
定義
本明細書で使用するとき、以下の用語及び表現は記載の意味で用いる。本発明の化合物は不斉置換された炭素原子を含むため、光学活性またはラセミ体として単離され得ることを理解されたい。ラセミ体分割または光学活性開始材料からの合成などによっての光学活性体を調製する方法は当該技術分野において周知である。全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミ体及び構造の全ての幾何異性体は本発明の一部である。
【0032】
遊離基、置換基及び範囲を示す以下の特定の数値は説明のためであり、遊離基及び置換基のその他の定義値または記載範囲内のその他の値を除外するものではない。
【0033】
本明細書で使用するとき、「置換」という用語は、「置換」という表記を使用して記載されている基の中の1つまたは複数の(例えば1、2、3、4または5;一部の実施例では1、2または3;他の実施例では1または2)水素が記載された基から選択したもの、または当業者に周知の適切な基により差し換えられていることを意味する。ただし、記載原子の通常の原子価を超えず、置換により安定な化合物が得られる場合に限られる。記載される適切な基として、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロ基、ハロアルキル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロ環、シクロアルキル基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、トリフルオロメチルチオ基、ジフルオロメチル基、アシルアミノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、カルボキシ基、カルボキシアルキル基、ケト基、チオキソ基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルフィニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルフィニル基、ヘテロアリールスルホニル基、ヘテロシクロスルフィニル基、ヘテロシクロスルホニル基、リン酸基、硫酸基、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシル(アルキル)アミン及びシアノ基が含まれる。さらに、記載される適切な基として、例えば−X、−R、−O-、−OR、−SR、−S-、−NR2、−NR3、=NR、−CX3、−CN、−OCN、−SCN、−N=C=O、−NCS、−NO、−NO2、=N2、−N3、NC(=O)R、−C(=O)R、−C(=O)NRR、−S(=O)2-、−S(=O)2OH、−S(=O)2R、−OS(=O)2OR、−S(=O)2NR、−S(=O)R、−OP(=O)O2RR、−P(=O)O2RR、−P(=O)(O)2、−P(=O)(OH)2、−C(=O)R、−C(=O)X、−C(S)R、−C(O)OR、−C(O)O、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NRR、−C(S)NRR、−C(NR)NRRが含まれるが、ここで各Xは互いに独立してハロゲン(「ハロ」):F、Cl、BrまたはI;及び各Rは互いに独立してH、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロシクロ基、保護基またはプロドラッグ部分である。当業者は容易に理解できるが、置換基がオキソ(=O)またはチオキソ(=S)または同種のものならば、置換原子上の2つの水素原子を差し換える。
【0034】
本明細書で使用するとき、「アルキル」という用語は例えば1から30個の炭素原子、多くの場合1から12個、または1から約6個の炭素原子からなる分岐、非分岐または環状炭化水素を表す。例としてメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−メチル−1−プロピル基、2−ブチル基、2−メチル−2−プロピル(t−ブチル)基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−メチル−2−ブチル基、3−メチル−2−ブチル基、3−メチル−1−ブチル基、2−メチル−1−ブチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−メチル−2−ペンチル基、3−メチル−2−ペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、3−メチル−3−ペンチル基、2−メチル−3−ペンチル基、2、3−ジメチル−2−ブチル基、3、3−ジメチル−2−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等を含むがこれらに限定されない。アルキル基は非置換または置換でもよい。アルキル基はさらに、任意で一部または全てが不飽和でもよい。よって、アルキル基の記載はアルケニル基及びアルキニル基の両方を含む。アルキル基は既に記載及び例示されているように1価の炭化水素ラジカルまたは2価の炭化水素ラジカル(すなわちアルキレン基)となり得る。
【0035】
「アルケニル基」という用語は、一部不飽和な分岐または非分岐の1価ラジカル炭化水素鎖(すなわち炭素−炭素、sp2二重結合)を示す。一部の実施例では、アルケニル基は2から10個または2から6個の炭素原子を有してもよい。別の実施例では、アルケニル基は2から4個の炭素原子を有している。例としてエチレン基またはビニル基、アリル基、シクロペンテニル基、5−ヘキセニル基等が含まれる。アルケニル基は非置換または置換でもよい。
【0036】
「アルキニル基」という用語は、完全に不飽和状態の部分を有する分岐または非分岐の1価ラジカル炭化水素鎖(すなわち炭素−炭素、sp三重結合)を示す。一部の実施例では、アルキニル基は2から10個の炭素原子または2から6個の炭素原子を有してもよい。別の実施例では、アルキニル基は2から4個の炭素原子を有してもよい。この用語の例として、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、3−ヘキシニル基、1−オクチニル基等の基が挙げられる。アルキニル基は非置換または置換でもよい。
【0037】
「シクロアルキル基」という用語は単環または複数の縮合環を有する3から10個の炭素原子からなる環状アルキル基を示す。そのようなシクロアルキル基として例えば、単環構造であるシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基等、または多環構造であるアダマンタニル基等が含まれる。シクロアルキル基は非置換または置換でもよい。シクロアルキル基は1価または2価でもよく、上記のアルキル基と同様、任意に置換してもよい。シクロアルキル基は任意で1つ以上の不飽和部位を含んでもよく、例えばシクロアルキル基は1つ以上の炭素−炭素二重結合を含んでもよく、例えばシクロヘキセン、1、3−シクロヘキサジエン、1、4−シクロヘキサジエン等を含んでもよい。
【0038】
「アルコキシ基」という用語はアルキル−O−を表すが、ここでアルキル基は本明細書中で定義したものである。一部の実施例では、アルコキシ基として例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1、2−ジメチルブトキシ等を含む。アルコキシ基は非置換または置換でもよい。
【0039】
本明細書で使用する「アリール」または「アル」はもとの芳香族化合物の炭素原子1つから水素原子1つを取り除いた芳香族炭化水素を示す。もとの環状系の飽和または不飽和の炭素原子はラジカルになり得る。アリール基は6から30個の炭素原子を有してもよい。アリール基は単環(例えばフェニル基)または多縮合(融合)環で、その場合少なくとも1つの環が芳香性(例えばナフチル基、ジヒドロフェナンスレニル基、フルオレニル基またはアンスリル基)である。典型的なアリール基として、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル等から発生したラジカルが含まれるが、これらに限定されない。上記のアルキル基と同様、アリール基は非置換または任意に置換してもよい。
【0040】
「ハロ」という用語はフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを表す。同様に、「ハロゲン」という用語はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を表す。
【0041】
「ハロアルキル」という用語は本明細書定義の1つまたは複数のハロ基(互いに同じでも異なっていてもよい)で置換した本明細書定義のアルキル基を表す。一部の実施例では、ハロアルキル基は1、2、3、4または5個のハロ基で置換されていてもよい。別の実施例では、ハロアルキル基は1、2または3個のハロ基で置換されていてもよい。ハロアルキル基という用語にはパーフルオロ−アルキル基も含まれる。代表的なハロアルキル基として例えば、トリフルオロメチル基、3−フルオロドデシル基、12、12、12−トリフルオロドデシル基、2−ブロモオクチル基、3−ブロモ−6−クロロヘプチル基、1H、1H−パーフルオロオクチル基等が含まれる。上記のアルキル基と同様に、ハロアルキル基は任意に置換してもよい。
【0042】
本明細書中で「ヘテロアリール基」という用語は1、2または3個の芳香環を含み、1つ以上の窒素、酸素または硫黄原子を1個の芳香環に含み、それらは非置換または例えば「置換」の定義中に記載されている1個または複数(具体的には1〜3個)の置換基で置換されていてもよく、単環、二環または三環の環状系を示す。典型的なヘテロアリール基は2〜20個の炭素原子に加えて1個または複数のヘテロ原子を含む。ヘテロアリール基の例として、2H−ピロリル基、3H−インドリル基、4H−キノリジニル基、アクリジニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ベンゾチアゾリル基、β−カルボリニル基、カルバゾリル基、クロメニル基、シンノリニル基、ジベンゾ[b、d]フラニル基、フラザニル基、フリル基、イミダゾリル基、イミジゾリル基、インダゾリル基、インドリシニル基、インドリル基、イソベンゾフラニル基、イソインドリル基、イソキノリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ナフチリジニル基、オキサゾリル基、ペリミジニル基、フェナントリジニル基、フェナントロリニル基、フェナルサジニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサチイニル基、フェノキサジニル基、フタラジニル基、プテリジニル基、プリニル基、ピラニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピリダジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、キナゾリニル基、キノリル基、キノキサリニル基、チアジアゾリル基、チアントレニル基、チアゾリル基、チエニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基及びキサンテニル基が含まれるがこれらに限定されない。一部の実施例では、「ヘテロアリール基」という用語は5または6個の環原子を含む単環芳香環で、炭素及び1、2、3または4個のヘテロ原子を含み、ヘテロ原子は独立して、非過酸化酸素、硫黄及びN(Z)(式中、Zは存在しないかまたはH、O、アルキル基、アリール基または(C1−C6)アルキルアリール基から選択される。)別の実施例では、ヘテロアリール基は約8から10個の環原子を含有するオルト縮合している二環式ヘテロ環、特にベンゾ誘導体またはプロピレン、トリメチレン、若しくはテトラメチレンジラジカルを前記複素環基に縮合させることによって誘導される基を示す。
【0043】
「ヘテロ環」という用語は酸素、窒素及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む飽和または一部不飽和な環系を指し、「置換基」という用語の中に定義されている1個または複数の基で任意に置換されている。ヘテロ環は単環式、二環式または三環式でもよく、1個または複数のヘテロ原子を含む。また、ヘテロ環基は環に結合したオキソ基(=O)またはチオキソ基(=S)を含んでもよい。ヘテロ環基の非限定的な例として、1、3−ジヒドロベンゾフラン基、1、3−ジオキソラン基、1、4−ジオキサン基、1、4−ジチアン基、2H−ピラン基、2−ピラゾリン基、4H−ピラン基、クロマニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、インドリニル基、イソクロマニル基、イソインドリニル基、モルフォリン基、ピペラジニル基、ピペリジン基、ピペリジル基、ピラゾリジン基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピロリジン基、ピロリン基、キヌクリジン基及びチオモルホリン基が含まれる。
【0044】
「ヘテロ環」という用語の例として、限定するものではないが、Paquette, Leo A.; Principles of Modern Heterocyclic Chemistry (W.A.Benjamin, New York, 1968)の特に第1、3、4、6、7及び9章並びにThe Chemistry of Heterocyclic Compounds, A Series of Monographs” (John Wiley & Sons, New York, 1950 to present)の特に第13、14、16、19及び28巻並びにj. Am. Chem. Soc. 1960, 82, 5566に記載のヘテロ環の1価ラジカルを含んでもよい。一部の実施例では、「ヘテロ環」には1個または複数(例えば1、2、3または4個)の炭素原子がヘテロ原子(例えばO、NまたはS)と入れ替わった本明細書中に記載の「炭素環」を含む。
【0045】
ヘテロ環の例として、ジヒドロピリジル基、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)基、チアゾリル基、テトラヒドロチオフェニル基、酸化硫黄テトラヒドロチオフェニル基、ピリミジニル基、フラニル基、チエニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、ピペリジニル基、4−ピペリドニル基、ピロリジニル基、2−ピロリドニル基、ピロリニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロキノリニル基、テトラヒドロイソキノリニル基、デカヒドロキノリニル基、オクタヒドロイソキノリニル基、アゾシニル基、トリアジニル基、6H−1、2、5−チアジアジニル基、2H、6H−1、5、2−ジチアジニル基、チエニル基、チアントレニル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H−ピロリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ピリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、オキサゾリジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、オキンドリル基、ベンゾオキサゾリニル基、イサチノイル基及びビス−テトラヒドロフラニル基を含むが、限定はされない。
【0046】
例であり、限定するものではないが、炭素結合型のヘテロ環はピリジンの2、3、4、5若しくは6位、ピリダジンの3、4、5若しくは6位、ピリミジンの2、4、5若しくは6位、ピラジンの2、3、5若しくは6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール若しくはテトラヒドロピロールの2、3、4若しくは5位、オキサゾール、イミダゾール若しくはチアゾールの2、4若しくは5位、イソオキサゾール、ピラゾール若しくはイソチアゾールの3、4若しくは5位、アジリジンの2若しくは3位、アゼチジンの2、3若しくは4位、キノリンの2、3、4、5、6、7若しくは8位またはイソキノリンの1、3、4、5、6、7若しくは8位に結合している。炭素結合型ヘテロ環には2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、5−ピリジル基、6−ピリジル基、3−ピリダジニル基、4−ピリダジニル基、5−ピリダジニル基、6−ピリダジニル基、2−ピリミジニル基、4−ピリミジニル基、5−ピリミジニル基、6−ピリミジニル基、2−ピラジニル基、3−ピラジニル基、5−ピラジニル基、6−ピラジニル基、2−チアゾリル基、4−チアゾリル基、5−チアゾリル基等が含まれる。
【0047】
例であり、限定するものではないが、窒素結合型ヘテロ環はアジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2−ピロリン、3−ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリル、1H−インダゾールの1位、イソインドールまたはイソインドリンの2位、モルフォリンの4位及びカルバゾールまたはβ−カルボリンの9位に結合できる。一部の実施例で、窒素結合型ヘテロ環には1−アジリジル基、1−アゼチジル基、1−ピロリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基及び1−ピペリジニル基が含まれる。
【0048】
「炭素環」という用語は3から8個の炭素原子を単環として、7から12個の炭素原子を二環として、約30個までの炭素原子を多環として有する飽和、不飽和または芳香環を指す。単環式炭素環は通常3から6個の環原子を、さらに典型的には5または6個の環原子を有する。二環式炭素環は、7から12個の環原子を有し、例えば二環を形成する[4、5]、[5、5]、[5、6]若しくは[6、6]系、または9若しくは10個の環原子が形成する二環[5、6]若しくは[6、6]系となる。炭素環の例として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、1−シクロペント−1−エニル基、1−シクロペント−2−エニル基、1−シクロペント−3−エニル基、シクロヘキシル基、1−シクロヘキサ−1−エニル基、1−シクロヘキサ−2−エニル基、1−シクロヘキサ−3−エニル基、フェニル基、スピリル基及びナフチル基が含まれる。上記のアルキル基と同様、炭素環は任意に置換してもよい。
【0049】
「アルカノイル基」または「アルキルカルボニル基」という用語は−C(=O)Rを指し、ここでRは定義済みのアルキル基である。
【0050】
「アシルオキシ基」または「アルキルカルボキシ基」という用語は−O−C(=O)Rを指し、ここでRは定義済みのアルキル基である。アシルオキシ基の例として、アセトオキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基及びペンタノイルオキシ基が含まれるが、これらに限定されない。定義済みの何れのアルキル基もアシルオキシ基の形成に用いてよい。
【0051】
「アルコキシカルボニル基」という用語は−C(=O)OR(または「COOR」)を指し、ここでRは定義済みのアルキル基である。
【0052】
「アミノ基」という用語は−NH2を指す。アミノ基は、本明細書中で定義した「置換」という用語に従い、任意で置換してもよい。
【0053】
「アルキルアミノ基」という用語は−NR2を指し、ここで少なくとも1つのRはアルキル基で、二番目のRはアルキル基または水素である。
【0054】
「アシルアミノ基」という用語はN(R)C(=O)Rを指し、ここで各Rは互いに独立して水素、アルキル基またはアリール基である。
【0055】
「ヒドロキシアルキル基」という用語は−OHで置換されたアルキル基を指す。
【0056】
「アルキルカルボン酸」という用語は−COOHで置換されたアルキル基である。
【0057】
「アミノ酸」という用語には、DまたはL体の天然のアミノ酸残基と同様に非天然アミノ酸(例えば、ベータ−アラニン、ホスホセリン、ホスホスレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、ガンマ−カルボキシグルタミン酸、馬尿酸、オクタヒドロインドール−2−カルボン酸、スタチン、1、2、3、4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、ペニシラミン、オルニチン、シトルリン、アルファ−メチルアラニン、パラ−ベンゾリルフェニルアラミン、フェニルグリシン、プロパルギルグリシン、サルコシン及びtert−ブチルグリシン)も含む。この用語には通常のアミノ保護基(例えば、アセチルまたはベンゾイルカルボイル)を有する天然及び非天然アミノ酸に加えて、カルボキシ末端(例えば、(C1-6アルキル基、フェニル基またはベンジルエステルまたはアミド基)で保護されている天然及び非天然アミノ酸も含む。その他の適切なアミノ及びカルボキシ保護基は当業者に周知である。(参照、例えばGreene, T.W.; Wutz, P.G.M. Protecting Groups in Organic Synthesis, 2nd edition, John Wiley & Sons, Inc., New York (1991)及び本明細書中の引用文献)。アミノ酸側鎖には、アセチル化、モノ−、ジ−、トリ−フルオロアセチル化または1−3xメチル化リジン、メチル化arg(モノ、対称的bis、非対称的bis)、リン酸化セリン、スレオニンまたはチロシン、脂肪酸アシル化、例えば、ミリストイル化、グリコシル化等、既知の修飾を受けた側鎖を含んでもよい。
【0058】
「アミノ酸側鎖」という用語は天然または合成に関わらず、定義済みの「アミノ酸」中に存在する全てのアミノ酸側鎖を指す。これは、標準的な20種の側鎖を含むがこれらに限定されない。
【0059】
「ペプチド」という用語は2から35アミノ酸またはペプチジル残基の配列を指す。配列は直鎖状でも環状でもよい。例えば、環状ペプチドは適切なアミド若しくはエステル結合または配列中の2個のシステイン残基間のジスルフィド形成の結果得られることもある。好ましくは、ペプチドは3から20個または5から15個のアミノ酸から構成される。ペプチド配列を本明細書中で具体的に記述する場合、アミノ末端を左、カルボキシ末端を右に記載する。
【0060】
「中断」という用語は他の基が「中断」という用語の表現中に記載のある特定の炭素鎖の2個の隣り合う炭素原子間(及びそれらが結合している水素原子(例えば、メチル(CH3)、メチレン(CH2)またはメチン(CH)))に挿入されたことを示すが、この時、指定された各原子の通常の原子価を超えず、中断により安定な化合物が得られなければならない。炭素鎖の中断に用いるのに好ましい基には、例えば1個または複数の非過酸化オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、イミノ基(−N(H)−)、メチレンジオキシ基(−OCH2O−)、カルボニル基(−C(=O)−)、カルボキシ基(−C(=O)O−)、カルボニルジオキシ基(−OC(=O)O−)、カルボキシラト基(−OC(=O)−)、イミン基(C=NH)、スルフィニル基(SO)及びスルフホニル基(SO2)が含まれる。アルキル基は1個または複数(例えば1、2、3、4、5または約6)の前述の適切な基により中断されてもよい。中断部位はアルキル基の炭素原子とアルキル基が結合している炭素原子間でもよい。
【0061】
特に明記しない限り、「ルシフェラーゼ」という用語は天然由来、組換え型または変異型ルシフェラーゼを指す。ルシフェラーゼが天然由来であった場合、当業者は生体から容易に取得可能である。ルシフェラーゼが天然由来または組換え型若しくは変異型ルシフェラーゼであった場合、すなわち天然のルシフェラーゼのルシフェラーゼ−ルシフェリン反応の活性を保持したタンパク質はルシフェラーゼをコードする核酸を発現するよう形質転換された細菌、酵母、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞等の培養液から容易に取得可能である。さらに、組換え型または変異型ルシフェラーゼはルシフェラーゼをコードする核酸を使ったin vitroの無細胞系からも取得可能である。ルシフェラーゼはPromega Corporation, Madison, Wisより入手可能である。
【0062】
本明細書中で用いる「生物発光」または「発光」とは光を放出する酵素と基質間の反応の結果、発生する光のことである。このような酵素(生物発光酵素)の例には、ホタルルシフェラーゼ(例えばPhotinus pyralisまたはPhotinus pennslyvanica)、コメツキムシルシフェラーゼ、ウミホタルルシフェラーゼ等が含まれる。
【0063】
「ルシフェラーゼ反応混合液」はルシフェラーゼ酵素及びルシフェラーゼ酵素の光シグナル発生を誘導する物質を含む。発光シグナルを発生させるのに必要な物質の具体的な濃度及び/または量は使用するルシフェラーゼ酵素のみならず、採用するルシフェラーゼ系アッセイの種類によっても変化する。一般的にホタルルシフェラーゼでは、これらの物質はATP、マグネシウム(Mg2+)塩(例えば硫酸マグネシウム)、ホタルルシフェラーゼ酵素(例えば熱安定化ホタルルシフェラーゼ)及びルシフェリンを含んでいる。ルシフェリンはホタルルシフェラーゼの基質として使用すると光を発生できる。多くの場合、反応溶液には適切なpHに反応溶液を保つ緩衝剤、ルシフェラーゼ活性を保つための添加物例えばPRIONEXまたはウシ血清アルブミン(BSA)、還元剤、浄化剤、エステラーゼ、塩、アミノ酸(例えばD−システイン)等別の物質を添加してもよい。ルシフェラーゼ反応混合液の例には、熱安定化ホタルルシフェラーゼ、MgSO4、ATP、Tergitol NP―9及びトリシンが含まれる。別のルシフェラーゼ反応混合液の例には、ヒオドシエビ由来のルシフェラーゼ(例えばNanoLucルシフェラーゼ、)緩衝液(例えばTris−ClまたはTris塩基)、及び任意でバックグラウンド低下剤(例えばTCEP)を含む。
【0064】
化合物
本発明は式(Ia)、(Ib)、(Ic):
(式中、XはCNまたは
各Yは互いに独立してハロ基、SO3H、C1-4アルキル基、置換C1-4アルキル基、OR1またはNR12
各R1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;
各R2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2が互いに結合し4から8員環を形成し;
nは1から6;
2つのY置換基は互いに結合し5から7個の環原子を含む環を形成してもよく;及び
少なくとも1つのYはOHまたはNR12の何れかである)で表される化合物を提供する。
【0065】
本発明の化合物は:
を含むが、これらに限定されない。
【0066】
別の実施例で本発明は式(II):
(式中、XはCNまたは
YはOR1またはNR12
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し環を形成する)で表される化合物を提供する。
【0067】
また、別の実施例で本発明は式(III):
(式中、XはCNまたは
YはOR1またはNR12
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し環を形成する)で表される化合物を提供する。
【0068】
また、別の実施例で本発明は式(IV):
(式中、XはCNまたは
YはOR1またはNR12
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し環を形成する)で表される化合物を提供する。
【0069】
別の実施例で本発明は式(V):
(式中、XはCNまたは
YはOR1またはNR12
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し環を形成する)で表される化合物を提供する。
【0070】
別の実施例で本発明は式(VI):
(式中、XはCNまたは
YはOR1またはNR12
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し環を形成する)で表される化合物を提供する。
【0071】
追加の実施例で本発明は式(VII):
(式中、XはCNまたは
各Yは互いに独立してOR1またはNR12
各R1は互いに独立してH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
各R2は互いに独立してH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合して環を形成する)で表される化合物を提供する。
【0072】
特定の実施例では、本発明の化合物の発光極大は少なくとも約650nm(約655nm、約680nmまたは約760nm。nm)である。
【0073】
基質前駆体
本発明は種々の非ルシフェラーゼ酵素の基質及びルシフェラーゼ酵素の基質前駆体となる化合物も提供する。非ルシフェラーゼ酵素として、リダクターゼ、グリコシダーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、オキシダーゼ、エステラーゼ、シトクロームP450、ベータ−ラクタマーゼ、グリコシラーゼ及びグルタチオントランスフェラーゼを含むがこれらに限定されない。
【0074】
一部の実施例では、これらの基質前駆体は置換基を有している。置換基は非ルシフェラーゼ位の基質で、1または複数箇所のY位で切断され、
(式中、XはCNまたは
各YはOHまたはNH2;及び
nは1から3である)で表される化合物を形成する。
【0075】
リダクターゼ基質
一部の実施例で、当該化合物はリダクターゼの基質となる。一部の実施例で、リダクターゼの基質は式:
(式中、XはCNまたは
YはOR;
Rは
WはS、NRNまたはO;
ZはS、NRN、OまたはCH;及び
NはH、C1-4アルキル基または置換C1-4アルキル基である)で表される。
【0076】
一部の実施例で、リダクターゼの基質は式:
(式中、XはCNまたは
YはOR1またはNR12;及び
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し4から8員環を形成する)で表される。
【0077】
一部の実施例で、リダクターゼの基質は式:
(式中、XはCNまたは
YはOR;及び
Rは
で表される。
【0078】
リダクターゼの基質には以下の化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
グリコシダーゼ基質
一部の実施例で、当該化合物はグリコシダーゼの基質となる。一部の実施例で、グリコシダーゼの基質は式:
(式中、XはCNまたは
YはOR;
Rは
AはORまたはNHAc;
各R5は互いに独立してH、単糖または40ユニットまでのポリエチレングリコール部分である)で表される化合物である。
【0080】
グリコシダーゼの基質には以下の化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
プロテアーゼ及びプロテアーゼ依存性タンパク質修飾の基質
一部の実施例で、当該化合物はプロテアーゼまたはプロテアーゼ依存性タンパク質修飾の基質となる。一部の実施例で、基質は式:
(式中、XはCNまたは
YはNHR;
Rは
7はアミノ酸側鎖;
6はH、窒素保護基または20アミノ酸までの鎖である)で表される化合物である。
【0082】
適切な窒素保護基には、当業者に従来周知のBoc、Cbz、Ac及びFmoc等が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
これらの基質には以下の化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
オキシダーゼ基質
一部の実施例で、当該化合物はオキシダーゼの基質となる。一部の実施例で、オキシダーゼの基質は式:
(式中、Xは−CH(OR102
10はC1-4アルキル基、置換C1-4アルキル基、ベンジル基または置換ベンジル基;
YはOR1またはNR12;及び
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し4から8員環を形成する)で表される化合物である。
【0085】
一部の実施例で、オキシダーゼの基質は式:
(式中、XはCNまたは
YはHまたはOR;及び
RはC1-10アルキル基、置換C1-10アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基または置換アラルキル基である)で表される化合物である。
【0086】
一部の実施例で、オキシダーゼの基質は式:
(式中、Xは−CH(OR102
10はC1-4アルキル基、置換C1-4アルキル基、ベンジル基または置換ベンジル基;
YはOR1またはNR12;及び
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し4から8員環を形成する)で表される化合物である。
【0087】
オキシダーゼの基質には以下の化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
カルボキシル系の基質前駆体
一部の実施例で、当該化合物はカルボキシル系の基質前駆体である。一部の実施例で、カルボキシル系基質前駆体は式:
(式中、R8はCH2OH、C(O)R10または−C(O)ZR9
ZはOまたはNH;
9はC1-7アルキル基または置換C1-7アルキル基;
10はペプチド;
YはOR1またはNR12;及び
1はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;
2はH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は互いに結合し4から8員環を形成する)で表される化合物である。
【0089】
カルボキシル系基質前駆体には以下の化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
グルタチオントランスフェラーゼ基質
一部の実施例で、当該化合物はグルタチオントランスフェラーゼの基質でもよい。一部の実施例で、グルタチオントランスフェラーゼの基質は式(:
(式中、XはCNまたは
YはOR;
Rは
各R11は互いに独立してH、C1-6アルキル基、置換C1-6アルキル基、CF3、ハロゲン、NO2、CO212または少なくとも1つのR11がNO2ならば、隣り合う何れか2個のR11は縮合環を形成してもよく;及び
12はH、C1-6アルキル基または置換C1-6アルキル基である)で表される化合物である。
【0091】
グルタチオントランスフェラーゼの基質には以下の化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
ベータ−ラクタマーゼ基質
一部の実施例で、当該化合物はベータ−ラクタマーゼの基質となる。一部の実施例で、ベータ−ラクタマーゼの基質は式:
(式中、XはCNまたは
YはO、NH、N(C1-7アルキル基)またはN(置換C1-7アルキル基);
Zは存在しないかまたはO;
AはC1-4アルキレン基または置換C1-4アルキレン基;及び
14はH、フェナセチル基またはセファロスポリン側鎖である)で表される化合物である。
【0093】
好ましいセファロスポリン側鎖は当業者に周知のものを含む。
【0094】
ベータ−ラクタマーゼの基質には以下の化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
その他の基質前駆体
本発明は、生物学的に重要な過酸化水素などの様々な小分子と反応し、ルシフェラーゼ酵素の基質前駆体にもなる化合物も提供する。一部の実施例で、これらの化合物は過酸化水素反応性である。一部の実施例では、これらの化合物は式:
(式中、XはCNまたは
YはL−R;
Lはリンカー;及び
Rはボロン酸またはホウ酸エステルである)で表される。
【0096】
一部の実施例で、Rは−B(OR152;式中、各R15は互いに独立してH及びC1-4アルキル基から選択される。一部の実施例で、Rは
式中、各R16及びR17は互いに独立してH、C1-4アルキル基、置換C1-4アルキル基、CF3、フェニル基若しくは置換フェニル基;またはR16及びR17は互いに結合して3〜7個の炭素を有するアルキル環を形成若しくは縮合6員芳香環と置き換えてもよい。
【0097】
一部の実施例で、リンカーは直接結合している。別の実施例では、リンカーは
(式中、Aは−C6(204−、−O−C6(R204−または−(CR21=CR21)n−または−S−C6(R204−または−NR’−C6(R204または直接結合;R’はH、C1-4アルキル基または置換C1-4アルキル基;
各R23は互いに独立してハロ基、H、C1-4アルキル基、置換C1-4アルキル基、C1-4ヒドロキシアルキル基、置換C1-4ヒドロキシアルキル基、C1-4アルキルカルボン酸または置換C1-4アルキルカルボン酸;
各R20は互いに独立してH、ハロ基、CH3、OCH3またはNO2
各R21は互いに独立してHまたはCH3
nは1または2;及び
Xは−O−、
から選択される)である。
【0098】
これらの化合物には以下の化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0099】
異性体、塩及び保護形態
ある化合物は1つまたは複数の特定の幾何異性形態、光学異性形態、鏡像異性形態、ジアステレオ形態、エピ体、立体異性形態、互変異性形態、配座異性形態またはアノマー形態で存在し得る。これらの形態にはシス−及びトランス−型;E−及びZ−型;c−、t−及びr−型;エンド及びエクソ−型;R−、S−及びメソ−型;D−及びL−型、d−及びl−型;(+)及び(−)型;ケト−、エノール−及びエノラート−型;シン−及びアンチ−型;シンクリナル−及びアンチクリナル−型、α−及びβ−型;アキシアル及びエクアトリアル型;ふね−、いす−、ツイスト−、封筒−、半いす型;及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されず、以下「異性体」(または「異性体型」)と総称する。
【0100】
ここで留意すべきは、互変異性形態についての以下の記載を除き、構造(または構造)異性体(すなわち、空間中の原子の位置のみが異なるのではなく、原子間の結合が異なる異性体)は、本明細書で使用する「異性体」という用語から明確に除外される。例えば、メトキシ基(−OCH3)への言及は、その構造異性体であるヒドロキシメチル基(−CH2OH)への言及とは解釈されない。同様に、オルト−クロロフェニル基への言及は、その構造異性体であるメタ−クロロフェニル基への言及とは解釈されない。しかし、ある分類の構造への言及は同分類の構造異性体を含む(例えば、C1-7アルキル基にはn−プロピル基及びイソ−プロピル基が含まれ;ブチル基にはn−、iso−、sec−及びtert−ブチル基が含まれ;メトキシフェニル基にはオルト−、メタ−及びパラメトキシフェニル基が含まれる)。
【0101】
ここで留意すべきは、「異性体」という用語は1つまたは複数の同位体で置換された化合物を明確に含むということである。例えば、Hは1H、2H(D)及び3H(T)を含む何れの同位体でもよく;Cは12C、13C及び14Cを含む何れの同位体でもよく;Oは16O及び18Oを含む何れの同位体でもよく;他も同様である。
【0102】
特筆しない限り、特定の化合物への言及はこのような全ての異性体を含み、(完全なまたは部分的な)それらのラセミ及び他の混合物も含む。このような異性体の調製方法(例えば非対称合成)及び分離方法(例えば、断片的結晶化及びクロマトグラフィー手法)は当業界で周知であるか、または本明細書に記載の方法若しくは既知の方法を既知の様式を用いて容易に実施できる。
【0103】
特筆しない限り、特定の化合物への言及は以下に説明のあるように、例えばそれらのイオン、塩、溶媒または保護基も含む。当該活性化合物に対応する塩、例えば薬剤的に許容できる塩は調製、精製及び/または処理を行うのに簡便または好ましいことがある。薬剤的に許容できる塩の例はBerge et al,j.Pharm.Sci.,66:1―19(1977)に記載されている。
【0104】
例えば、化合物が陰イオン性、または陰イオン性になり得る官能基(例えば、−COOHは−COO−になり得る)を持っている場合、適切な陽イオンと共に塩を形成できる。適切な無機陽イオンの例として、アルカリ金属イオン(Na+若しくはK+など)、アルカリ土類陽イオン(Ca2+若しくはMg2+など)及びAl3+等のその他の陽イオンが含まれるが、これらに限定されない。適切な有機陽イオンの例として、アンモニウムイオン(すなわちNH4+)及び置換アンモニウムイオン(例えばNH3+、NH22+、NHR3+、NR4+)が含まれるが、これらに限定されない。一部の適切な置換アンモニウムイオンの例はエチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン及びトロメタミンのみならず、リジン及びアルギニン等のアミノ酸から誘導されるものである。第四級のアンモニウムイオンの一般例はN(CH34+である。
【0105】
化合物が陽イオン性、または陽イオン性になり得る官能基(例えば、−NH2は−NH3+になり得る)を持っている場合、適切な陰イオンと共に塩を形成できる。適切な無機陰イオンの例として、以下の無機酸からの誘導されるものが含まれるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸及び亜リン酸。適切な有機陰イオンの例として、以下の有機酸から誘導されるものが含まれるが、これらに限定されない:酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、乳酸、リンゴ酸、パモ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、フェニルスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、パントテン酸、イセチオン酸、吉草酸、ラクトビオン酸及びグルコン酸。適切な高分子陰イオンの例として、以下の高分子酸から誘導されるものが含まれるが、これらに限定されない:タンニン酸、コルボキシメチルセルロース。
【0106】
当該活性化合物に対応する溶媒和化合物は調製、精製及び/または処理を行うのに簡便または好ましいことがある。本明細書中で「溶媒和化合物」という用語は、慣習的な意味で使用され、溶質(例えば、活性化合物、活性化合物の塩)及び溶媒の錯体を意味する。溶媒が水の場合、溶媒和化合物は通常、水和物、例えば一水和物、二水和物、三水和物等を意味する。
【0107】
当該活性化合物は化学的保護形態で調製、精製及び/または処理を行うと簡便または好ましいことがある。本明細書中で使用する「化学的保護形態」という用語は1つまたは複数の反応性官能基が保護されている基または保護基(マスクされている基若しくはマスク基、またはブロックされている基若しくはブロック基とも称される)の形態で意図しない化学反応から保護されている化合物に関連している。反応性官能基を保護することで、その保護された基に影響を及ぼすことなく、他の保護されていない反応性官能基が関与する反応を行うことができる;保護基は通常、当該分子の残りの部分に実質的な影響を及ぼすことなく、その後のステップで除去することができる。例えばProtective Groups in Organic Synthesis(T.Green and P.Wuts,Wiley,1999)を参照されたし。
【0108】
例えば、ヒドロキシ基はエーテル(−OR)またはエステル(−OC(=O)R)として保護できる。例えば、t−ブチルエーテル;ベンジル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)若しくはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリル若しくはt−ブチルジメチルシリルエーテル;またはアセチルエステル(−OC(=O)CH3、−OAc)として保護できる。例えばアルデヒドまたはケトン基は、例えば、第一級アルコールと反応させることにより、カルボニル基(>C=O)をジエーテル(>C(OR)2)に変換させ、それぞれ、アセタールまたはケタールとして保護することができる。酸の存在下で大過剰量の水を用いて加水分解させることにより、アルデヒドまたはケトン基を容易に再生させることができる。例えば、アミン基は、例えばアミドまたはウレタンとして保護できる。例えば、メチルアミド(−NHCO−CH3);ベンジルオキシアミド(−NHCO−OCH265、−NHCbz);t−ブトキシアミド(−NHCO−OC(CH33、−NH−Boc)として;2−ビフェニル−2−プロポキシアミド(−NHCO−OC(CH326465、−NH−Bpoc)、9−フルオレニルメトキシアミド(−NH−Fmoc)として、6−ニトロベラトリルオキシアミド(−NH−Nvoc)として、2−トリメチルシリルエチルオキシアミド(−NH−Teoc)として、2、2、2−トリクロロエチルオキシアミド(−NH−Troc)として、アリルオキシアミド(−NH−Alloc)として、2(−フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(−NH−Psec)として;または適切な場合には窒素酸化物として保護できる。
【0109】
例えば、カルボン酸基は、エステルとして保護できる。例えば、C1-7アルキルエステル(例えば、メチルエステル;t−ブチルエステル);C1-7ハロアルキルエステル(例えば、C1-7トリハロアルキルエステル);トリC1-7アルキルシリル−C1-7アルキルエステル;若しくはC5-20アリール−C1-7アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル、ニトロベンジルエステル);またはアミドとして(例えば、メチルアミドとして)保護できる。
【0110】
例えば、チオール基は、チオエーテル(−SR)として保護できる。例えば、ベンジルチオエーテル;またはアセトアミドメチルエーテル(−S−CH2NHC(=O)CH3)として保護できる。
合成
【0111】
一般的な合成方法をスキーム1に示す。適宜置換された2−ナフトエ酸はアシルアジドへの変換とそれに続く2−ナフチルアミンへのクルシウス転位により、2−ナフチルアミンに変換することができる。芳香族求電子ハロゲン化反応はハロゲン置換基を優先的に1位の位置に導入する。アッペル塩処理に続くヨウ化銅による結晶化により2、1−ナフトチアゾール骨格が得られ、当該化合物は続いて、穏和な水性条件下でD−システインと反応し、ルシフェリン基質となる。
【0112】
当業者には理解可能であるが、本明細書記載の化学式で表される化合物を合成する代替方法は当業者に明白である。さらに、様々な合成ステップは所望の化合物を得るため、順序や順番を変えて行ってもよい。本明細書記載の化合物を合成するのに有用な合成化学変換及び保護基方法論(保護及び脱保護)は当業界で周知であり、例えばR. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); T. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 2d. Ed., John Wiley and Sons (1991);L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994);及びL. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)並びにこれらの続版に記載されているものを含む。
【0113】
化合物の利用
本発明の化合物はルシフェラーゼ基質(例えばルシフェリン)が用いられる全ての方法に利用可能である。例えば、サンプル中の1個または複数の分子(例えば、酵素、酵素反応のコファクター、酵素基質、酵素阻害剤、酵素活性化剤若しくはOHラジカル)または1つ若しくは複数の条件(例えば、酸化還元条件)を検出するルシフェリンアナログを用いた生物発光法に利用可能である。サンプルには動物(例えば、脊椎動物)、植物、真菌類、生理液(例えば、血液、血漿、尿、粘膜分泌等)、細胞、細胞溶解物、細胞の培養上清、細胞の精製分画(例えば、細胞内分画)が含まれる。当該分子の存在、量、スペクトル分布、発光速度論または比活性を検出または定量可能である。当該分子は多相性溶液を含む溶液中(例えば、乳濁液若しくは懸濁液)または固相担体上(例えば、粒子、毛細管若しくはアッセイ容器)で検出または定量化できる。一部の実施例で、ルシフェリン誘導体は光学系アッセイにおいて目的の酵素(例えば、CYP450酵素、MAO AまたはB酵素、カスパーゼ等)を検出するために用いることができる。
【0114】
一部の実施例で、ルシフェリンの誘導体は特定の生化学的な活動(例えば、アポトーシス及び薬剤代謝)のプローブとして用いることができる。一部の実施例で、目的の特定の酵素によって作用を受けることができる「ルシフェリン前駆体」または「基質前駆体」を用いることによって、ルシフェリン濃度は特定の酵素活性と対応する。一部の実施例で、ルシフェリン前駆体はルシフェラーゼと混合しても直接発光を促すことはできない分子だが、目的の特定の酵素の触媒作用を受けることにより、ルシフェリンへ変換される。一部の実施例で、当該手法は薬剤代謝に関与する酵素(例えば、シトクロームP450酵素、モノアミンオキシダーゼ及びグルタチオンS−トランスフェラーゼ)及びアポトーシス(例えば、カスパーゼ)等で利用できる。例えば、本発明のルシフェリン誘導体は6’−O−メチル基等の切断可能な基を導入し、改変することができる。一部の実施例で、ルシフェリン前駆体は特定のシトクロームP450酵素とインキュベートすると、6’O−メチル基が切断され、ルシフェラーゼにより検出可能なルシフェリンへと変換される。一部の実施例で、ルシフェリン前駆体は発光を促すために必要な他の成分と混合され、単一試薬の均一なアッセイとして提供される。例えば、サンプルに試薬を添加した際に、ルシフェリン前駆体がルシフェリンへ変換され発光が起こる。様々な実施例で、他の酵素、小分子または他の細胞プロセスについて同様のアッセイがルシフェリン前駆体からルシフェリンへの変換と結び付けて開発されている。
【0115】
本発明のルシフェリン誘導体は、シトクロームP450酵素、プロテアーゼまたはグリコシダーゼ等の非発光酵素の存在または活性を検出するためのアッセイ試薬として使用できる。発光酵素を用いたアッセイ及びそれらの基質は当業者に周知である。例えば、発光酵素、発光反応混合液及び非発光酵素の基質であるルシフェリン誘導体を非発光酵素が含まれることが疑われるサンプルに添加することができる。サンプル中に当該非発光酵素が存在する場合、ルシフェリン誘導体は当該非発光酵素による作用を受け、光学シグナルを発生させる光学酵素によって認識可能な基質へと変換される。反対に、非発光酵素により発光原ルシフェリン誘導体を非発光形態へと変換させることもできる(すなわち、シグナル消失アッセイ)。
【0116】
ルシフェリン誘導体は発光酵素より前または同時にサンプルへ添加できる。特定の実施例で、サンプルは細胞でもよい。細胞は、真核細胞(例えば、酵母、鳥、植物、昆虫若しくはヒト、サル、マウス、イヌ、ウシ、馬、ネコ、羊、ヤギ若しくは豚細胞を含むがこれらに限定されない哺乳類細胞等)若しくは原核細胞、若しくは2種類以上の異なる生物由来の細胞またはそれらの細胞溶解液若しくは培養上清でもよい。細胞は組換技術により遺伝子組み換えされていてもよい。ある特定の態様では、細胞は動物(例えばトランスジェニック動物)または生理学的流体(例えば、血液、血漿、尿、粘液分泌等)の中に存在していてもよい。
【0117】
サンプルは検出対象となる非発光酵素を複数含んでいてもよい。一部の実施例で、複数の光学酵素を用いてもよい。さらに、複数の基質を用いてもよい。複数の基質及び/または発光酵素は複数の非発光酵素またはその他の目的の分子(例えば、試験化合物)を同時に(例えば、複数反応系において)検出するために利用できる。
【0118】
ルシフェリン誘導体はin situ細胞分析法としても利用できる。ルシフェラーゼを用いた細胞のin situ分析を行う方法は当業界で周知であり、例えばU.S. Patent No.5,998,204を参照されたい。ルシフェリン誘導体は非発光酵素に暴露されるまでは発光酵素の基質ではない。しかし、当該非発光酵素に暴露されると、誘導体は発光酵素存在下の発光反応において速やかに検出される化合物へと変換される。従って、in situイメージングにより非発光酵素の細胞内存在部位を特定できる。これは、発光酵素を発現している細胞とルシフェリン誘導体を接触させることで行える。
【0119】
反対に、発光酵素遺伝子を発現しているトランスジェニック動物には、目的の特定の非発光酵素の基質であるルシフェリン誘導体を投与できる。さらに、イメージング技術(例えば、in vivo生体光イメージング)を用いれば、生きたままの無傷の動物の体内で発光酵素が発現している部位における発光測定にも使用できる。従って、発光酵素を発現しているトランスジェニック動物にルシフェリン誘導体を投与し、目的の適切な非発光酵素が発現している組織中で発光酵素の基質に変換させることも可能である。発光酵素が当該組織においても発現している場合、発光シグナルが生成され、何れかの適切な方法により検出できる。よって、例えば薬剤のような試験化合物を動物を用いたアッセイで評価できる。試験化合物はルシフェリン誘導体の前に投与しておかなくてはならない。反対に、トランスジェニック動物由来の組織は組織学的アッセイで使用できる。
【0120】
一部の実施例で、非トランスジェニック動物に、目的の特定の非発光酵素の基質であるルシフェリン誘導体を投与してもよい。当該誘導体は適切な非発光酵素が発現している組織中で、発光酵素の基質に変換される。生物学的サンプル(例えば、血液、血清、胆汁、尿、糞便または組織)を当該動物から採取し、発光酵素と接触させる。得られるシグナルは何れかの適切な方法により検出できる。よって、例えば薬剤のような試験化合物を動物を用いたアッセイで評価できる。試験化合物はルシフェリン誘導体の前に投与しておかなくてはならない。
【0121】
一部の実施例で、候補薬等の試験化合物をスクリーニングに供し、例えば、(1)非ルシフェラーゼ酵素の基質、(2)非ルシフェラーゼ酵素の制御因子(例えば、阻害剤、誘導剤若しくは活性化剤)または(3)細胞状態の調整剤(例えば、生存率、反応性酸素類の増加若しくは還元ポテンシャルの増加)としての活性を評価できる。ルシフェリン誘導体は非ルシフェラーゼ酵素の基質と阻害剤を見分けるためにも使用できる。当該スクリーニングはin vitroまたはin vivoの何れかで行うことができる。
【0122】
さらに、本明細書記載の全ての生物発光原アッセイは、他の試薬を反応混合液に添加してもよく、当該試薬には、ルシフェラーゼの不活性化を阻害若しくは防止するもの、または発光シグナルを延長若しくは増強させるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
キット
本発明はキットも提供する。キットは以下のものを1種または複数含んでもよい:少なくとも1つは本発明由来であるルシフェリン誘導体、非ルシフェラーゼ酵素、ルシフェリン依存的発光酵素及び反応緩衝液。反応緩衝液は非ルシフェラーゼ酵素反応及び発光酵素反応に対してそれぞれ別の配合でもよく、または単一ステップのアッセイにおいては単一の配合でもよい。本発明のキットは非ルシフェラーゼ酵素の阻害剤、活性化剤及び/または増強剤も含んでもよい。本発明のキットはアッセイの陽性及び/または陰性対照も含んでもよい。
【0124】
本発明は以下の非限定的な実施例でさらに説明される。
【実施例】
【0125】
全ての化学物質はSigma AldrichまたはTCI Americaから購入し、それ以上の精製は行わずに使用した。アッペル塩及び6−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−ナフトエ酸は既報に従い合成した。(参照、Ciiadro, A. M,; Aivarez―Builla, j, 4,5−Dichloro―1,2,3−dithiazolhim Chloride(アッペル塩):Reactions with IN―nucleophiles. Tetrahedron 1994, 50(33), 10037―10046及びCho, S. j.; Abn, Y.−H.; Maiti, K. K.; Dinish, U. S.; Fu, C. Y.; Tboniyot, P.; Oiivo, M,; Chang, Y.−T. Chem Coram 2010, 46, 722―724.何れも参照することで本明細書に組み込まれる)。6−メトキシ−2−ナフチルアミンの調製は既に報告されているが、6−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−2−ナフチルアミンと同様の方法でも作製可能である。シリカゲルクロマトグラフィーはTeledyne Isco Combiflashシステムを用いて行った。NMRスペクトルはVarian Mercury 300 MHzシステムを用い、溶媒のピークを内部標準として測定した。反応はEZChromeソフトウェアにより制御したAgilent 1100シリーズの分析用HPLCで分析し、分取用HPLCはWaters HPLCシステムを用いて、流速20ml/分、記載の線形勾配により、254nm及び360nmの2波長で検出した(1”C18シリカカラム)。
【0126】
実施例1。2−(7−ヒドロキシナフト[2、1−d]チアゾール−2−イル)−4、5−ジヒドロチアゾール−4−カルボン酸の合成
1−ブロモ−6−メトキシ−2−ナフチルアミン。6−メトキシ−2−ナフチルアミン(400mg、1.6mmol)を20mLのMeCNに12mgのNH4OAc(0.16mmol)と共に懸濁し、氷浴内で撹拌した。N−ブロモスクシンイミド(299mg、1.68mmol)を6mLの乾燥MeCNに溶解させたが、1時間かけてゆっくりと添加した。反応溶液をさらに1時間0℃で撹拌し、その後セライトに吸着させ、減圧下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーに供し、ヘプタン中0−>60%EtOAcで溶出して300mgの橙色の固体を得た。7.94 (d, 1 H); 7.55 (d, 1 H); 7.18 (dd, 1 H); 7.09 (d), 1 H); 7.02 (d, 1 H); 4.29 (br s, 2 H); 3.89 (s, 3 H)。
【0127】
7−メトキシナフト[2、1−d]チアゾール−2−カルボニトリル。1−ブロモ−6−メトキシ−2−ナフチルアミン(290mg、1.15mmol)を10mLの乾燥DCM中で撹拌し、アッペル塩(252mg、1.21mmol)を添加した。室温で24時間撹拌後、反応溶液をEtOAcで希釈し、水で洗浄後、Na2S04で乾燥しセライト上に吸着させた。シリカゲルクロマトグラフィーでヘプタン中0−>40%EtOAcで溶出し得られた228mgの所望の付加体は、ピリジン5mL中に溶解し、168mg(0.882mmol)のCuIで処理した。反応溶液を1.5時間加熱還流し、セライト上に吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィーにおいてヘプタン中0−>40%EtOAcで溶出し、所望の生成物63mgを得た。1H NMR (CD2Cl2) d 8.12 (d, 1) H); 8.01 (d, 1 H); 7.94 (d, 1 H); 7.39 (d, 1 H); 7.35 (dd, 1 H); 3.99 (s, 3 H)。
【0128】
7−ヒドロキシナフト[2、1−d]チアゾール−2−カルボニトリル。7−メトキシナフト[2、1−d]チアゾール−2−カルボニトリル(88mg、0.366mmol)を3gのピリジン塩酸塩に懸濁し、撹拌子の入った5−mLマイクロ波バイアル内に密封した。混合物を220℃で25分間照射し、1N塩酸に溶解後、DCM及びEtOAcの混合物で3回抽出した。濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。lH NMR (CD2Cl2) d 8.10 (d, 1 H); 8.03 (d, 1 H); 7.88 (d, 1 H); 7.39 (d, 1 H); 7.31 (dd, 1 H);
【0129】
2−(7−ヒドロキシナフト[2、1−d]チアゾール−2−イル)−4、5−ジヒドロチアゾール−4−カルボン酸。7−ヘトキシナフト[2、1−d]チアゾール−2−カルボニトリル(35mg、0.155mmol)のアセトニトリル溶液をD−システイン(54mg、0.309mmol)及びK2C03(54mg、0.391mmol)を含む水溶液で処理した。室温で20分間撹拌後、反応溶液にAcOHを加えて中和し、得られた生成物を分取用HPLCに供し、10mM水溶性NH4OAc中5−>95%MeCNの濃度勾配で溶出し、単離した。適切な分画を減圧化で濃縮した後、凍結乾燥した。1H NMR (DMSO−d6/MeCN−d3) d 8.53 (d, 1 H); 8.48 (d, 1) H); 8.31 (d, 1 H); 7.82−7.86 (m, 2 H); 5.77 (dd,) 1 H); 4.33 (dd, 1 H); 4.19 (dd, 1 H)。
【0130】
実施例2。2−(7−アミノナフト[2、1−d]チアゾール−2−イル)−4、5−ジヒドロチアゾール−4−カルボン酸。
tert−ブチル(6−(アジドカルボニル)ナフタレン−2−イル)カルバマート。20mLのDCM中の2−(t−ブチルカルバモイル)アミノ−6−ナフトエ酸(1.35g、4.7mmol)を氷浴中で撹拌した。DMF(0.2mL)を添加後、塩化オキサリル(420uL、630mg、4.9mmol)をゆっくり添加した。45分後、反応溶液を減圧下で濃縮し、残渣をアセトンに溶解した。アジ化ナトリウム(916mg、14.1mmol)をH2O中の溶液として添加し、得られた反応溶液を15分間撹拌した。さらにH2Oを加えて所望の生成物を析出させ、濾過により分離してややピンク色の固体1.26を得た。1H NMR (DMSO−d6) 9.81 (s, 1 H); 8.51 (s, 1 H); 8.19 (d), 1 H); 8.04 (d, 1 H); 7.84―7.91 (m, 2 H); 7.59 (dd), 1 H); 1.50 (s, 9 H)
【0131】
tert−ブチル(6−アミノアフタレン−2−イル)カルバミン酸。トルエン75mL中のtert−ブチル(6−(アジドカルボニル)ナフタレン−2−イル)カルバミン酸(2.7g、8.64mmol)を2時間加熱還流した。水溶性NaOHの6M溶液(10mL、60mmol)を添加し、反応溶液を72時間加熱還流した。室温まで冷却した反応溶液を濾過した。濾液を3xEtOAcで抽出し、有機層を混合し、Na2S04で乾燥及び蒸発させ、ややピンク色の固体1.62gを得た。生成物は、シリカゲルクロマトグラフィーにおいて、ヘプタン中0−>60%EtOAcの濃度勾配で溶出させることによって、さらに精製することができた。1H NMR (CD2C12) d 7.80 (br s, 1) H); 7.58 (d, 1 H); 7.52 (d, 1 H); 7.27 (dd, 1 H); 6.92―6.98 (m, 2 H); 6.59 (br s, 2H); 1.53 (s, 9 H)。
【0132】
tert−ブチル(6−アミノ−5−ブロモナフタレン−2−イル)カルバミン酸。tert−ブチル(6−アミノナフタレン−2−イル)カルバミン酸(1.31g、5.07mmol)を酢酸アンモニウム(39mg、0.5mmol)と共にMeCN中、氷浴中で撹拌した。N−ブロモスクシンイミド(948mg、5.32mmol)を追加のMeCN中で溶解させ、1時間かけてゆっくりと添加した。0℃で1時間撹拌を継続し、その後セライトを加えた。減圧下で溶媒を除去後、シリカゲルクロマトグラフィーによりヘプタン中0−>50%EtOAcの濃度勾配で溶出させ、生成物(1.33g、78%)を単離した。1NMR (CD2Cl2) d 7.94 (d, 1H); 7.89 (br d, 1 H); 7.58 (d, 1 H); 7.38 (dd, 1 H); 7.02 (d, 1 H); 6.66 (b)r s, 1 H); 4.35 (br s, 2 H); 1.54 (s, 9) H)。
【0133】
tert−ブチル(2−シアノナフト[2、1−d]チアゾール−7−イル)カルバミン酸。tert−ブチル(6−アミノ−5−ブロモナフタレン−2−イル)カルバミン酸(540mg、1.6mmol)溶液を乾燥DCM中で撹拌し、アッペル塩351mg(1.68mmol)を添加した。反応終了後、反応溶液はEtOAcで希釈し、水で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥後、蒸発させた。このようにして得られた租精製品をピリジン10mLに溶解し、529mg(2.78mmol)のCuIで処理した。反応溶液を110℃の油浴中で40分間加熱後、減圧下で溶媒を除去した。得られた固体をEtOAcに溶解し、濾過した。濾液を1N塩酸で洗浄し、水層は2xEtOAcで抽出して、混合した有機層はNa2SO4で乾燥させた。減圧下で溶媒を除去後、シリカゲルクロマトグラフィーに供し、ヘプタン中15−>35%EtOAcで溶出させ、148mgの黄色の固体を得た。1H NMR (CD2C12) d 8.21 (d), 1 H); 8.12 (d, 1 H); 8.03 (d), 1 H); 7.96 (d, 1 H); 7.64 (dd, 1 H); 6.90 (br s), 1 H); 1.55 (s, 9) H)。
【0134】
7−アミノナフト[2、1−d]チアゾール−2−カルボニトリル。2mLのDCM中、tert−ブチル(2−シアノナフト[2、1−d]チアゾール−7−イル)カルバミン酸(72mg、0.22mmol)及びチオアニソール(0.5mL)を氷浴中で撹拌した溶液に、トリフルオロ酢酸2mLを添加した。1時間後、反応溶液は減圧下で濃縮し、得られた生成物(47mg、94%)をシリカゲルクロマトグラフィーによりヘプタン中0−>75%EtOAcで溶出させ、単離した。1H NMR (CD2C12) d 8.01 (d, 1 H); 7.90 (dt, 1 H); 7.76 (d, 1 H); 7.09―7.16 (m, 2) H)。
【0135】
2−(7−アミノナフト[2、1−d]チアゾール−2−イル)−4、5−ジヒドロチアゾール−4−カルボン酸。7−アミノナフト[2、1−d]チアゾール−2−カルボニトリル(24mg、0.106mmol)のアセトニトリル溶液をD−システイン(41mg、0.233mmol)及びK2CO3(45mg、0.326mmol)を含む水溶液で処理した。室温で20分間撹拌後、生成物は分子用HPLCにてより10mM水溶性NH4OAc中5−>100%MeCNの濃度勾配で溶出させ、生成物を単離した。適切な分画を減圧下で濃縮した後、凍結乾燥し、12mgの黄色の固体を得た。1H NMR (DMSO−d6) d 7.77―7.87 (m, 2 H); 7.59 (d, 1 H); 7.01 (dd, 1 H); 6.94 (d, 1 H); 5.69 (br s, 2) H); 5.18 (t, 1 H); 3.57―3.68 (m, 2) H)。
【0136】
実施例3。2−(7−ヒドロキシナフト[2、1−d]チアゾール−2−イル)−4、5−ジヒドロチアゾール−4−カルボン酸メチルエステルの合成。
2−(7−ヒドロキシナフト[2、1−d]チアゾール−2−イル)−4、5−ジヒドロチアゾール−4−カルボン酸メチルエステル。2−(7−ヒドロキシナフト[2、1−d]チアゾール−2−イル)−4、5−ジヒドロチアゾール−4−カルボン酸(8mg、24umol)をMeCNとMeOHの混合物に懸濁し、TFAを添加してpH<3まで酸性化した。得られた溶液を、黄色が消えなくなるまで、ジアゾメタンのエーテル溶液で処理した。過剰量のジアゾメタンをAcOHの添加により中和して、エーテルを減圧下で除去し、分取用HPLCにおいて、NH4OAc中5−>100%MeCNで溶出させ、凍結乾燥を行い、所望の生成物(3.3mg)を黄色の固体として得た。C1613232(M+H)の計算値;:345.0、実測値:345。
【0137】
実施例4。2−(7−(ロイシル)アミノナフト[2、1−d]チアゾール−2−イル)−4、5−ジヒドロチアゾール−4−カルボン酸の合成。
7−(Boc−ロイシル)アミノナフト[2、1−d]チアゾール−2−カルボニトリル。ドライアイス−エチレングリコール浴中でBoc−保護ロイシン(108mg、0.47mmol)をTHF5mLに溶解し、まずN−メチルモルホリン(100uL、0.93mmol)で処理した後、イソブチルクロロ炭酸塩(50uL、0.51mmol)で処理した。反応溶液を15分間間撹拌し、5mLのTHFに入った7−アミノナフト[2、1−d]チアゾール−2−カルボニトリル(70mg、0.31mmol)を添加した。反応溶液を氷浴に移し、72時間撹拌を続け、その間室温まで上昇した。反応溶液をDCMで希釈して1N塩酸で洗浄し、水層を2xDCMで抽出した後、有機層をまとめてNa2SO4で乾燥させ、セライトに吸着させた。ヘプタン中、0−>60%EtOAcで溶出させ、シリカゲルにより精製し、117mgの所望の生成物を得た。1NMR (CD2C12) d 8.75 (br s, 1 H); 8.40 (s, 1 H); 8.09 (d, 1 H); 8.01 (d, 1 H); 7.93 (d, 1 H); 7.70 (d), 1 H); 5.00 (br s, 1 H); 4.29 (br s, 1 H); 1.72−1.87 (m, 2 H); 1.56―1.66 (m, 1 H); 1.48 (s, 9 H); 1.01 (pseudo tr, 6) H)。
【0138】
2−(7−(ロイシル)アミノナフト[2、1−d]チアゾール−2−イル)−4、5−ジヒドロチアゾール−4−カルボン酸。7−(Boc−ロイシル)アミノナフト[2、1−d]チアゾール−2−カルボニトリル(69mg、0.16mmol)を0.5mlのチオアニソール及び1.5mLのDCMと混合し、氷浴中で撹拌した。トリフルオロ酢酸(1.5mL)を添加し、HPLCで反応をモニターした。1時間後、減圧下で溶媒を除去後、残った残渣をエーテルですりつぶした。得られた固体をMeCN/H2Oに溶解し、D−システイン塩酸塩水和物(55mg、0.31mmol)及び炭酸カリウム(55mg、0.40mmol)で処理した。20分間後、反応溶液を濾過し、分取用HPLCにおいて0.1%ギ酸中2−>50%MeCNで溶出させ、生成物を分離した。C2123432(M+H)の計算値:443.1、実測値:443。
【0139】
実施例5:PBI−5044のアミノペプチダーゼ滴定
ルシフェリン検出試薬(Promega;V859A)の凍結乾燥バイアルに10mlの100mMHEPES pH 7.5/10mM MgSO4を添加し、30分間、室温で平衡化させた。
【0140】
ロイシン−ルシフェリンの20uM溶液及びPBI−5044の20uM溶液をl00mM HEPES/0.1%Prionex溶液で調製した。さらに、PBI−5044の20uM溶液を2uM及び0.2uM溶液にHEPES/Prionex溶液を用いて段階希釈した。
【0141】
1U/mlロイシン−アミノペプチダーゼ(Sigma)を各ルシフェリン希釈液(20uM ロイシン−ルシフェリン、20uM PBI−5044、2uM PBI−5044または0.2uM PBI−5044)で段階希釈(図1)した。例えば、50ulの1U/mlロイシン−アミノペプチダーゼを450ulのルシフェリン希釈液に添加した(ロイシン−アミノペプチダーゼの終濃度は0.1U/ml)。さらに、150ulのロイシン−アミノペプチダーゼ溶液を350ulの各ルシフェリン誘導体の調製液に添加し、ロイシン−アミノペプチダーゼを段階希釈した。
【0142】
3連で、各段階希釈ロイシン−アミノペプチダーゼ/ルシフェリンサンプル50ulを白色96穴プレート(Costar 3355)のウェルに添加し、平衡化されたルシフェリン検出試薬50uLを各サンプルに添加した。発光はGloMax(登録商標)Multi luminometer(Promega)により5分毎、90分間、室温で検出した。
【0143】
図1はアミノルシフェリンコントロールのロイシン付加体(ロイシン−ルシフェリン;黒丸)またはアミノイソナフトルシフェリンのロイシン付加体(PBI−5044;灰色の正方形)の生物発光応答を添加アミノペプチダーゼの関数として示す。図2はアミノペプチターゼに対するロイシニルアミノイソナフトルシフェリンのKmを示す。これらの結果、発光ペプチジル基質前駆体の実施形態及びプロテアーゼ活性の測定においてその有益な利用が示された。
【0144】
実施例6:ロイシン−ルシフェリン及びPBI−5044の多重分析
ルシフェリン検出試薬の凍結乾燥バイアル(Promega;V859A)に10mlの100mM HEPES pH7.5/10mM MgSO4溶液を添加(LDR)し、30分間、室温で平衡化させた。
【0145】
100mM HEPES pH7.5及び0.1%Prionexを含む溶液で、アミノペプチダーゼを0.01u/mlまで希釈した。アミノペプチダーゼ希釈液で以下の溶液を調製した:
1.20uMロイシン−ルシフェリン、
2.20uM PBI−5044、
3.20uMロイシン−ルシフェリン/20uM PBI−5044
【0146】
3連で、50ulの上記の各混合物(1−3)を50ulのLDRに添加し、15分間インキュベートした。発光はGloMax(商標登録) 96 luminometerに630 long pass filter(Edmond Optics 253253)及び525 short pass filter(Edmond Optics 84694)を装着し、測定した。
【0147】
図3はルシフェリンとアミノイソナフトルシフェリン(PBI−5044)の生物発光の分離にフィルターが与える影響を示している。これらの結果から、ルシフェリン基質(緑光を放出する)及び本発明の基質は多重分析可能であることが示された。すなわち、同一サンプルに添加しても、お互いからの阻害をほとんど受けずにそれぞれの発光を検出可能であった。
【0148】
実施例7:PBI−5045の生物発光へのエステラーゼの影響
エステラーゼを含む再構築用緩衝液(10ml;Promega Cat. No. V144A)及びルシフェリン検出試薬(Promega;V859A)を混合し、室温で30分間インキュベートした(「ルシフェリン検出試薬」)。UltraGlo(商標登録)ルシフェラーゼ(5.7mg/mlを210ul;Promega)を3mlsのルシフェリン検出試薬にさらに添加した。
【0149】
100mM HEPES/10mM MgSO4溶液で、PBI−5045(イソナフトルシフェリンメチルエステル)の段階希釈水溶液を作製した。50ulの各PBI−5045段階希釈液を白色の96穴アッセイプレートのウェルに添加した(n=6)。そして、50ulのルシフェリン検出試薬またはUltraGlo(商標登録)ルシフェラーゼ含有ルシフェリン検出試薬の何れかを当該ウェルに添加した。発光はGloMax(商標登録)Multi+luminometer(Promega)により検出した。
【0150】
図4A及び4BはエステラーゼがPBI−5045に与える影響を示す。図4Aは発光(RLUs)を表し、図4Bはバックグラウンドに対する発光比を示す。これらの結果、発光性のエステル基質前駆体の実施様態及びプロテアーゼ活性の測定においてその有益な利用が示された。
【0151】
実施例8:細胞毒性評価
本実施例では、PBI−4739またはPBI−4813の細胞毒性をHeLa細胞にて評価した。
【0152】
PBI−4739またはPBI−4813を5mMの濃度で、10%血清を含むDMEMで調製した後、培養液で2倍段階希釈した。滴定シリーズをHeLa単層に添加し、37℃でインキュベートした。24時間で、基質を含む培地を無血清DMEMと交換し、製造業者の指示に従い、CellTiter―Glo(商標登録)Luminescent Cell Viability Assay(Promega Corporation)にて毒性(ATP)を測定した。
【0153】
これらの結果、PBI−4813及び4739はD−ルシフェリンと同等の細胞毒性プロファイルを示した(図5)。D−ルシフェリンは生きた動物のイメージング実験に一般的に用いられる試薬で、本条件では無毒性であると一般的には考えられている。このデータより、生きた動物のイメージングに使用された場合、PBI−4813及びPBI−4739も動物で良好な耐容性を示すことが示唆された。
【0154】
実施例9:雌のCD−1マウスにおけるPBI−4739及びPBI−4813の単回投与の耐容性
本実施例では、雌のCD−1マウスにおけるPBI−4739またはPBI−4813の耐容性を異なる投与量で評価し、D−ルシフェリンと比較した。
【0155】
PBI−4739またはPBI−4813を3種類の用量で単回腹腔内投与し、D−ルシフェリンの3種類の用量と比較した。当該動物は臨床症状、行動変化及び生存について5日間モニターした。体重は毎日モニターした。死体解剖はPBI−4739、PBI−4813、D−ルシフェリンの最も用量の高かったグループ及び溶媒のみのグループ(DPBS;Sigma Aldrich)で行った。動物は平均体重27.4+1.6[SD]である6週齢の雌のCD−1マウス40匹を用いた。
【0156】
表1は投与量グループを示す。各グループは4匹の動物が含まれる。
【0157】
実験条件下、何れの動物においても試験化合物に関連する有害事象は観察されなかった。図6−10は臨床徴候及び動物行動のデータ(図6)、生存率(図7)、体重(グラム;図8)、体重(%;図9)及び解剖結果(図10)を示す。
【0158】
実施例10:PBI−4739及びPBI−4813のスペクトル解析
PBI−4739及びPBI−4813のスペクトル解析のために、ATPを1mMの濃度でBright−Glo(商標)Luciferase Assay Buffer(Promega Corporation Cat. No. E264A)に添加した。PBI−4739及びPBI−4813(100mM DMSO保存)をBright−Glo(商標)Luciferase Assay bufferで1:100に希釈した(終濃度1mM)。50ulの各基質を50ulのClick Beetle Red精製酵素(0.5mg/ml;Promega Corporation)に3連で添加した後、サンプルをTecan M―1000のスペクトルスキャンモードを用いて4739は2nm間隔、4813は5nm間隔で測定した。
【0159】
図14は2つの基質のスペクトルデータを表し、それらの近IR特性を示している。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕式(Ia)、(Ib)及び(Ic):


(式中、Xは、CNまたは
各Yは、互いに独立してハロ基、SO3H、C1-4アルキル基、置換C1-4アルキル基、OR1またはNR12
各R1は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;
各R2は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は、一緒に4〜8員環を形成し;
nは1〜6;
2つのY置換基は、互いに結合して、5〜7個の環原子を含む環を形成してもよく;及び
少なくとも1つのYは、OHまたはNR12の何れかである)
で表される化合物。
〔2〕少なくとも1つのYが、OHである、前記〔1〕に記載の化合物。
〔3〕少なくとも1つのYが、NR12である、前記〔1〕または〔2〕に記載の化合物。
〔4〕芳香環が、1個のOHまたはNR12及び5個以下のハロ基により置換されている、前記〔1〕に記載の化合物。
〔5〕ハロ基が、フルオロ基である、前記〔4〕に記載の化合物。
〔6〕ハロ基が、クロロ基である、前記〔4〕に記載の化合物。
〔7〕少なくとも1つのYが、SO3Hである、前記〔1〕〜〔3〕の何れか1項に記載の化合物。
〔8〕式(II):
(式中、Xは、CNまたは
Yは、OR1またはNR12
1は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は、一緒に環を形成する)
で表される化合物。
〔9〕式(III):
(式中、Xは、CNまたは
Yは、OR1またはNR12
1は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は、一緒に環を形成する)
で表される化合物。
〔10〕式(V):
(式中、Xは、CNまたは
Yは、OR1またはNR12
1は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は、一緒に環を形成する)
で表される化合物。
〔11〕式(VI):
(式中、Xは、CNまたは
Yは、OR1またはNR12
1は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
2は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は、一緒に環を形成する)
で表される化合物。
〔12〕式(VII):
(式中、Xは、CNまたは
各Yは、互いに独立してOR1またはNR12
各R1は、互いに独立してH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;及び
各R2は、互いに独立してH、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は、互いに結合して環を形成する)
で表される化合物。
〔13〕Xが、CNである、前記〔1〕〜〔12〕の何れか1項に記載の化合物。
〔14〕Xが、
である、前記〔1〕〜〔12〕の何れか1項に記載の化合物。
〔15〕Yが、NR12である、前記〔8〕〜〔14〕の何れか1項に記載の化合物。
〔16〕Yが、OHである、前記〔8〕〜〔14〕の何れか1項に記載の化合物。
〔17〕Yが、NH2である、前記〔1〕〜〔15〕の何れか1項に記載の化合物。
〔18〕サンプル中の発光を検出する方法であって、
サンプルを、前記〔1〕〜〔17〕の何れか1項に記載の化合物と接触させる工程、
該サンプルを、ルシフェラーゼと接触させる工程(それが該サンプル中に存在していない場合)、及び、
発光を検出する工程
を含むことを特徴とする方法。
〔19〕前記サンプルが、生細胞を含む、前記〔18〕に記載の方法。
〔20〕前記サンプルが、ルシフェラーゼを含む、前記〔18〕及び〔19〕の何れか1項に記載の方法。
〔21〕トランスジェニック動物中の発光を検出する方法であって、
前記〔1〕〜〔17〕の何れか1項に記載の化合物を、トランスジェニック動物に投与する工程、及び、
発光を検出する工程
を含み、該トランスジェニック動物が、ルシフェラーゼを発現していることを特徴とする方法。
〔22〕
式(IX):
(式中、Xは、CNまたは
Yは、OR;
Rは、
Wは、S、NRNまたはO;
Zは、S、NRN、OまたはCH;及び
Nは、H、C1-4アルキル基または置換C1-4アルキル基である)
で表される化合物。
〔23〕式(X):
(式中、Xは、CNまたは
Yは、OR1またはNR12;及び
1は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;
2は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は、一緒に4〜8員環を形成する)
で表される化合物。
〔24〕式(XI):
(式中、Xは、CNまたは
Yは、OR;及び
Rは、
である)
で表される化合物。
〔25〕式(XII):
(式中、Xは、CNまたは
Yは、OR;
Rは、
Aは、ORまたはNHAc;
各R5は、互いに独立してH、単糖または40ユニットまでのポリエチレングリコール部分である)
で表される化合物。
〔26〕式(XIII):
(式中、Xは、CNまたは
Yは、NHR;
Rは、
7は、アミノ酸側鎖;
6は、H、窒素保護基または35アミノ酸までの鎖である)
で表される化合物。
〔27〕式(XIV):
(式中、Xは、−CH(OR102
10は、C1-4アルキル基、置換C1-4アルキル基、ベンジル基または置換ベンジル基;
Yは、OR1またはNR12;及び
1は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;
2は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は、一緒に4〜8員環を形成する)
で表される化合物。
〔28〕式(XV):
(XV)
(式中、Xは、CNまたは
Yは、HまたはOR;及び
Rは、C1-10アルキル基、置換C1-10アルキルアリール基、置換アリール基、アラルキル基または置換アラルキル基である)
で表される化合物。
〔29〕式(XVI):
(式中、Xは、−CH(OR102
10は、C1-4アルキル基、置換C1-4アルキル基、ベンジル基または置換ベンジル基;
Yは、OR1またはNR12;及び
1は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;
2は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は、一緒に4〜8員環を形成する)
で表される化合物。
〔30〕式(XVII):
(式中、R8は、CH2OH、C(O)R10または−C(O)ZR9
Zは、OまたはNH;
9は、C1-7アルキル基または置換C1-7アルキル基;
10は、ペプチド;
Yは、OR1またはNR12;及び
1は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;
2は、H、C1-10アルキル基または置換C1-10アルキル基;または
1及びR2は、一緒に4〜8員環を形成する)
で表される化合物。
〔31〕式(XVIII):
(式中、Xは、CNまたは
Yは、OR;
Rは、
各R11は、互いに独立してH、C1-6アルキル基、置換C1-6アルキル基、CF3、ハロゲン、NO2、CO212、または、少なくとも1つのR11がNO2の場合は隣り合う何れか2個のR11は縮合環を形成してもよく;及び
12は、H、C1-6アルキル基または置換C1-6アルキル基である)
で表される化合物。
〔32〕式(XIX):
(式中、Xは、CNまたは
Yは、O、NH、N(C1-7アルキル基)またはN(置換C1-7アルキル基);
Zは、存在しないかまたはO;
Aは、C1-4アルキレン基または置換C1-4アルキレン基;及び
14は、H、フェナセチル基またはセファロスポリン側鎖である)
で表される化合物。
〔33〕式(XX):
(式中、Xは、CNまたは
Yは、L−R;
Lは、リンカー;及び
Rは、ボロン酸またはホウ酸エステルである)
で表される化合物。
〔34〕非ルシフェラーゼ酵素の存在または量を検出する方法であって、
該酵素を含む可能性のあるサンプルを、前記〔22〕〜〔33〕の何れか1項に記載の化合物と接触させる工程、
該サンプルに、ルシフェラーゼ反応混合液を添加する工程、及び、
該サンプル中の発光を検出する工程
を含むことを特徴とする方法。
〔35〕前記発光が定量化される、前記〔34〕に記載の方法。
〔36〕非ルシフェラーゼ酵素の存在をin vivoで検出する方法であって、
前記〔22〕〜〔33〕の何れか1項に記載の化合物を、トランスジェニック動物に投与する工程、及び、
発光を検出する工程
を含み、該トランスジェニック動物が、ルシフェラーゼを発現していることを特徴とする方法。
〔37〕非ルシフェラーゼ酵素の存在を検出する方法であって、
前記〔22〕〜〔33〕の何れか1項に記載の化合物を、動物に投与する工程、
該動物からサンプルを採取する工程、
該サンプルに、ルシフェラーゼ反応混合液を添加する工程、及び、
該サンプルの発光を検出する工程
を含むことを特徴とする方法。
〔38〕前記酵素が、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)、グルタチオントランスフェラーゼ(GST)、シトクロームP450(CYP450)、フラビンモノアミンオキシダーゼ(FMO)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、ベータ−ラクタマーゼまたはプロテアーゼから選択される、前記〔34〕〜〔37〕の何れか1項に記載の方法。
〔39〕前記サンプルが、前記化合物よりも前または同時に試験化合物と接触する、前記〔34〕〜〔38〕の何れか1項に記載の方法。
〔40〕前記試験化合物が、前記非ルシフェラーゼ酵素の阻害剤、前記非ルシフェラーゼ酵素の誘導因子、前記非ルシフェラーゼ酵素の基質および前記非ルシフェラーゼ酵素の活性化剤からなる群から選択される、前記〔39〕に記載の方法。
〔41〕非ルシフェラーゼ酵素の調節因子をスクリーニングするin vitroでの方法であって、
(a)細胞を試験化合物と接触させる工程、
(b)前記〔22〕〜〔33〕の何れか1項に記載の化合物を添加し、混合物を形成する工程、(c)該混合物に、ルシフェラーゼ反応混合液を添加する工程、および、
(d)発光を検出する工程
を含むことを特徴とする方法。
〔42〕前記〔1〕〜〔17〕または〔22〕〜〔33〕の何れか1項に記載の化合物を含む、キット。
〔43〕ルシフェラーゼをさらに含む、前記〔42〕に記載のキット。
〔44〕緩衝試薬をさらに含む、前記〔42〕または前記〔43〕に記載のキット。
〔45〕


からなる群から選択される化合物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14