(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
3Dデューロプラストを生産するための選択的レーザー焼結プロセスにおける熱硬化性ポリマー粉末組成物の使用であって、前記組成物が少なくとも1つの硬化性ポリマー結合剤材料を含み、前記選択的レーザー焼結プロセスの各パスの間に、前記ポリマー結合剤材料は、形成された層内で少なくとも部分的に硬化され、そしてまた先行する層と少なくとも部分的に架橋される、熱硬化性ポリマー粉末組成物の使用。
前記組成物が、少なくとも1つの硬化性ポリマー結合剤材料を、硬化剤、触媒、開始剤およびそれらの混合物からなる群のうちの少なくとも1つの構成要素と共に含み、前記構成要素が前記ポリマー結合剤材料を硬化させる能力を有することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
前記硬化性ポリマー結合剤材料が、少なくとも2つのエポキシ官能基を有する化合物、少なくとも2つのカルボン酸官能基を有する化合物、少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有する化合物、アクリル酸もしくはメタクリル酸から誘導された化合物、および/またはそれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の使用。
前記硬化性ポリマー結合剤材料が、前記熱硬化性ポリマー粉末組成物中に、好ましくは全組成の99wt%未満、より好ましくは10〜70wt%、特に好ましくは20〜60wt%の割合で含まれていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の使用。
前記熱硬化性ポリマー粉末組成物が1〜250μm、好ましくは20〜100μm、特に好ましくは40〜80μmの粒子径を有することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の使用。
前記熱硬化性ポリマー粉末組成物中に存在する全てのポリマー材料のガラス転移温度が少なくとも40℃であり、好ましくはそれを上回ることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の使用。
前記ポリマー結合剤材料の数平均分子量が1,000〜15,000ダルトンの範囲内、より好ましくは1,500〜7,500ダルトンの範囲内にあることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の使用。
【背景技術】
【0002】
ほぼ全ての機械工学分野において、プロトタイプを高速生産することに対するニーズが既に存在している。すでに技術的現状において公知であるレーザー焼結は、従来のポリマー粉末を含めたさまざまな粉末状物質から高い解像度および寸法精度の三次元物品を直接製造することを可能にする広く受け入れられたラピッドプロトタイピング技術である。プロトタイプさらには生産用パーツをこのプロセスによって効率良くしかも経済的に生産することができ、このプロセスは多くの場合に、選択的レーザー焼結(Selective Laser Sintering、SLS(登録商標)、DTM Corporation,Austin,Texas)と呼ばれている。
【0003】
SLSは、1980年の中葉にテキサス大学の機械工学部においてCarl DeckardおよびJoseph Beamanにより、開発された。SLSは、3Dモデルを生成するためにポリマー粉末を焼結するため例えばCO
2またはNd:YAGなどの高出力レーザーを用いる粉末ベースの3Dモデル製造方法である。SLSプロセスにおいては、第1の粉末層がローラーによってステージ上に均等に被着され、次に、この粉末の融点直下の温度まで加熱される。その後、単一の粉末粒子を合わせて融合させるために粉末の融点まで局所的温度を上昇させるように、粉末全体にわたりレーザービームが選択的に走査される。こうして第1の層が完成した後、所望の部域内で第2の粉末層が追加され、水平化され、再度焼結される。これらのステップが反復されて、3Dモデルが創出される。
【0004】
SLS技術の詳細な説明は、米国特許第4,863,538A号(US4,863,538A)、第5,017,753A号(US5,017,753A)および第4,994,817A号(US4,994,817A)の中に見出すことができる。さらに、米国特許第5,296,062A号(US5,296,062A)は、複数の焼結層を含むパーツを生産する目的で粉末層を選択的に焼結するための方法および装置について記載している。
【0005】
その一方で、この技術において使用するためにさまざまな粉末が開発されてきた。この点に関しては、例えば独国特許出願公開第10122492A1号(DE10122492A1)、欧州特許出願公開第0968080A1号(EP0968080A1)、国際公開第03/106146A1号(WO03/106146A1)、または独国特許出願公開第19747309A1号(DE19747309A1)に対する参照が指示される。
【0006】
米国特許第6,136,948A号(US6,136,948A)および国際公開第96/06881A号(WO96/06881A)は、粉末状ポリマーから成型品を生産するためのレーザー焼結プロセスの詳細な説明を提供している。これらの文書中には、例えばポリアセテート、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリアミドなどの多様な熱可塑性ポリマーおよびコポリマーが開示されている。
【0007】
SLSで成型品を生産するため、特にエンジニアリングコンポーネントを生産するためには、業界において、ポリアミド−12(PA12)粉末が極めて好結果であることが証明されている。PA12粉末で製造されたパーツは、機械的負荷に関して求められている高い要件を満たす。欧州特許出願公開第0911142A1号(EP0911142A1)は、SLSにより成型品を生産するためのPA12粉末の使用について記載している。米国特許第8,124,686B号(US8,124,686B)は、SLSに好適なP12粉末を調製するプロセスについて記載している。
【0008】
米国特許出願公開第2007/0126159A1号(US2007/0126159A1)は、整形プロセスにおける熱可塑性ポリエステル粉末の使用およびこのポリエステル粉末から生産された成型品に関する。
【0009】
米国特許第8,247,492B2号(US8,247,492B2)および、米国特許第8,592,519B2号(US8,592,519B2)は、レーザー焼結において有用である繊維強化型熱可塑性ポリエステル粉末組成物を提供している。これらの文書は同様に、このような粉末組成物から物品を製造する方法にも関する。
【0010】
例えばPA12などの半結晶性熱可塑性プラスチックの使用が有する特別なデメリットは、それが収縮の問題を導き、したがって精確なパーツを生産するのが困難であるという点にある。別の態様においては、半結晶性熱可塑性物質の使用は同様に、高密度パーツを提供し、これは、パーツ強度を維持しながら軽量パーツに高い多孔性が選好されるいくつかの利用分野にとって、利点となり得ない。このような利用分野においては、非晶質熱可塑性物質が、PA12のような半結晶性熱可塑性物質よりも選好される。しかしながら非晶質熱可塑性物質のデメリットは、粘度が高いために、使用される熱可塑性物質の融点より高いかまたはその遷移温度よりも高い温度でしか合体できないことにある。
【0011】
熱可塑性物質粉末材料の使用の別のデメリットは、それから生産されたパーツが高温作業条件下で低い寸法安定性しか有していないという点にある。
【0012】
一方で、化学的に架橋された(硬化された)ポリマー、いわゆる熱硬化性物質は、傑出した熱的および化学的特性を有し、航空機および自動車業界が必要とする構造パーツなどの要求の厳しい利用分野において掛け替えのないものである。
【0013】
熱硬化性材料は、これまで液体形状だけで、しかも液体フォトポリマー浴中で3D物体を製造するプロセスであるレーザーステレオリソグラフィにおいてのみ利用されてきた。しかしながら、このプロセスは、液体浴中でのプリンティングステップ毎に生産される中間材料を保持するために、複雑な支持構造を必要とする。この技術に求められる熱硬化性材料が液体形態であることから、材料の種類の選択肢は限定的である。
【0014】
米国特許出願公開第2007/0241482A1号(US2007/0241482A1)は、電磁放射線を使用することによる3次元物体の生産に関する。この文書中で開示され、3Dプリンティングのために使用される材料系は、熱硬化性材料および熱可塑性材料からなる群から選択される第1の粒子状接着剤を含む粒状材料と;この粒状材料を結合させるために充分な程度に電磁エネルギーに曝露された時点で加熱される能力を有する吸収体(流体)と、を含む。この文書中に記載の吸収体プロセスは、3Dプリンタ内のプリント済み層に熱を送出する方法を提供する。このようなプロセスにおいては、乾燥した粒子状の構築材料が、構築すべき物品の断面において被着した液体で処理され、ここでこの液体は使用された吸収体を用いて粒子状構築材料中に固化を生じさせる。
【0015】
ケンブリッジハーバード大学の研究グループは「軽量セル状複合材の3Dプリンティング」について報告した(Adv.Mater.2014、V26、Issue34、5930〜5935)。この文書中に記載の繊維強化型複合材3Dパーツは、エポキシ系インクで作られ、3D押出しプリンティングによって製造された。
【0016】
米国特許出願公開第2014/0121327A1号(US2014/0121327A1)は、ディールス・アルダー反応を用いて架橋粉末を生産するためのプロセスについて記載している。ディールス・アルダーシステムのデメリットは、ディールス・アルダー反応用の材料に特異的な化学的要件に起因して、材料の種類が限定されるということにある。別のデメリットは、ディールス・アルダー反応が熱可逆的であり、高い熱安定性が必要とされる利用分野を許容しない場合があるという点にある。
【0017】
SLSプロセスにおいては、3Dモデルを生成する目的でポリマー粉末を焼結させるために、高出力レーザー、例えばCO
2およびNd:YAGが使用される。CO
2レーザーはすでに、熱硬化性粉末を完全に硬化させるために使用され好結果をもたらしている(Lala Abhinandan26/SPIE Vo.2374 & J.Laser Appl.11,248,1999;Giuseppina Simane,Progress in Organic Coatings 68,340〜346,2010)。これらの文書中の実験および結果は、3Dプリンティングの利用分野についてではなく、2D利用分野を基準にしている。
【0018】
国際公開第2008/057844A1D1号(WO2008/057844A1D1)は、強化用粒子と共に、好ましくはレーザー焼結可能である少なくとも1つのポリマー粉末を含む粉末組成物に向けられている。この文書によると、レーザービームは、設計の画定済み境界の内部で粉末層を選択的に刺激して、その結果、レーザービームが上に照射され粉末の溶融がもたらされる。制御メカニズムは、レーザーを操作して、逐次粉末層を選択的に焼結させて、最終的に、共に焼結された複数の層を含む完全な物品を生産する。この文書中において使用されている「レーザー焼結可能なポリマー粉末」なる用語は、LS(レーザー焼結)機のレーザービームによって溶融させることのできる粉末を意味するように定義されている。
【0019】
XP−002754724(日本特許第20080107369号(JP20080107369))は、選択的レーザー焼結による成形製品の製造に使用可能な複合材料粉末について記載している。複合粉末は、球状凝集体および樹脂粉末を含み、前記球状凝集体は球状熱硬化性樹脂硬化材料および球状炭素を含む。一例として、フェノール樹脂材料およびポリアミド12の使用が開示されている。
【0020】
米国特許出願公開第2004/0081573A1号(US2004/0081573A1)は、未加工品を形成するための金属粒子および金属水素化物と共に熱可塑性物質および熱硬化性ポリマーを含むポリマー結合剤材料において、未加工品から未融合材料が除去された後、結合剤を分解させ駆出させ、金属基板粒子を焼結させるためにオーブンまたは炉内に入れられてポリマー結合剤材料を開示する。プリンティング中、粉末は、物品の断面に対応する粉末の部分に向けられたレーザーエネルギーの適用によって融合されるかまたは焼結する。各層内の粉末の融合解除後、次に追加の粉末層が送出され、プロセスは反復され、物品が完成するまで、後の層の融合した部分は先の層の融合した部分に対し融合する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
プリンティングプロセスの溶融/焼結ステップの間に、レーザーエネルギーの一部が頂部層を通って侵入し、頂部層内の遊離官能基と先にプリントされた層の表面上に残された遊離官能基との架橋反応をひき起こし、最終的には先にプリントされた層内部の相互架橋も完成させて、これによりプリントされたパーツの硬化度と同様、物理的特性も改善させる。レーザーエネルギー密度は、ポリマーの分解を回避するため過度に高くてはならないものの、それでも、プリントされる層間の架橋を提供し先にプリントされた層の硬化度を改善するのに充分なものでなければならない。1つの層からの粉末の走査対象区分は、次の粉末層が既存の層の上に展延される間、部分的に溶融した(部分的に架橋された)状態にとどまることができる。レーザーがこの次の層を走査し熱の影響を受けるゾーンがその全厚みに達した場合、溶融粉末と溶融粉末とが化学的に反応する(
図1)。
【0026】
例えば各層内に非化学量論量の硬化剤を提供することによって、または触媒が利用される場合には触媒の量または活性によって、粒子径分布によって(溶融のための吸熱は粒子径に依存し、このことはすなわち粒子が大きくなればなるほど同じレーザー走査内で硬化のために残される熱の量は少量にすぎない)そして同様に各々のプリントされた層の個別の厚みによって、本発明に係るポリマー粉末の組成物を介して各々のプリントされた層内に遊離官能基を提供することも、同様に可能である。
【0027】
各プリント層の粉末組成物は、各照射ステップのレーザー曝露中に、なおも完全に硬化されない場合がある。
【0028】
本発明の好ましい一実施形態によると、使用される組成物は、少なくとも1つの硬化性ポリマー結合剤材料に加えて、硬化剤、触媒、開始剤およびそれらの混合物からなる群のうちの少なくとも1つの構成要素をも含み、この構成要素は前記ポリマー結合剤材料を硬化させる能力を有する。本発明に係るプロセス中での化学的架橋の使用は同様に、選択的レーザー焼結における技術的現状に係る非晶質熱可塑性系を用いた場合には限定的である高密度成型品の生産をも可能にする。利用分野の要件に合わせて、本発明にしたがって使用される硬化性ポリマー結合剤材料の調合物は、高密度成型品を達成するため正しい硬化剤と充填剤を用いて作製可能である。
【0029】
したがって、本発明にしたがって使用される粉末組成物は、硬化性ポリマー結合剤材料(a)および少なくとも1つの硬化剤(b)を含んでいてよく、ここで(a)と(b)は、互いに反応し硬化した網状組織を形成することができる。触媒および/または開始剤(UV系用)を硬化剤の代りに、または硬化剤と共に添加して、硬化反応を開始させるか、または反応の特定の化学的性質に応じて、ひとたび開始された反応を促進することができる。
【0030】
ポリマー結合剤材料は、重付加および/または重縮合および/またはラジカル重合によって硬化可能である。このような硬化メカニズムは同様により特異的な重合を含むこともできる。
【0031】
さらに、本発明の別の好ましい実施形態は、硬化性ポリマー結合剤材料が、少なくとも2つのエポキシ官能基を有する化合物、少なくとも2つのカルボン酸官能基を有する化合物、少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有する化合物、アクリル酸またはメタクリル酸から誘導された化合物および/またはそれらの混合物を含む群から選択されることを規定している。硬化性ポリマー結合剤材料および硬化剤はこうして、例えばアミン、アミド、アミノ、ポリフェノール、酸無水物、多官能性酸を伴うエポキシ;フェノール樹脂を伴うエポキシ、カルボキシル化ポリエステルを伴うエポキシ(すなわちハイブリッド系);ヒドロキシアルキルアミド(HAA)、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)、グリシジルエステル−エポキシ樹脂(ハイブリッド)を伴うカルボキシル化ポリエステル;ポリイソシアネート(ブロック化されたイソシアネートまたはウレトジオン)を伴うヒドロキシル終端ポリエステル;GMA−アクリレート系(ジカルボン酸で硬化されたエポキシ官能性アクリル樹脂)、カルボキシ−アクリレート(エポキシで硬化されたカルボキシル化アクリル樹脂)、ヒドロキシル−アクリレート(ブロック化されたイソシアネートで硬化されたヒドロキシル官能性アクリル樹脂);不飽和ポリエステル;ポリウレタン/尿素;イソシアネート/アルコール;反応性官能性ポリアミド、エポキシを伴うカルボキシル化ポリアミド、熱および/またはUVラジカル開始剤、IRまたはUV硬化性ポリマーおよび/または前記化合物および/または系の2つ以上の混合物からなる群から選択され得る。
【0032】
概して、本発明にしたがって使用される熱硬化性ポリマー粉末組成物は、同様に、以下で記載される硬化メカニズムを伴う公知の粉末コーティング化学またはそれらの組合せに基づくものであり得る:
− エポキシ系(
図2)、例えばアミンで硬化されたエポキシ、酸無水物で硬化されたエポキシ、ポリイソシアネートで硬化されたエポキシおよびフェノール樹脂で硬化されたエポキシ。これら全ての系において、硬化プロセスは、付加反応により起こる。添付の
図3において、粉末コーティング調合において使用されることが多く、同様に選択的レーザー焼結プロセスのための粉末組成物中の硬化性ポリマー結合剤材料として本発明にしたがって使用されることもできるビスフェノールAエポキシ樹脂の化学構造。
図3aおよび3bは、アミンおよび酸無水物などの典型的な硬化剤とエポキシの硬化反応を示す。
− カルボキシル化ポリエステル系(
図4)、例えばトリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)(
図4a)、ヒドロキシアルキルアミド(HAA)(
図4b)、グリシジルエステル(
図4c)で硬化されたカルボキシル化ポリエステル;エポキシ樹脂で硬化されたカルボキシル化ポリエステル、ハイブリッド系(
図4d);ポリウレタン網状組織を形成するためポリイソシアネート(ブロック化されたイソシアネートまたはウレトジオン)で硬化されたヒドロキシル終端ポリエステル(
図4eおよび
図4f)。
− ポリカルボン酸(例えばドデカン二酸またはアセライン酸)(
図5a)で硬化されたグリシジルメタクリレート(GMA−acrylic、
図5)などのアクリル系。
− 架橋が過酸化物触媒または他の熱開始剤を使用して遊離ラジカル重合を介して発生する不飽和ポリエステル系。同様に、単独のまたは熱開始剤と組合せた形でのUVまたは電子ビームのような電磁放射線を介した硬化も可能である。
− ビニルエーテル、ビスマレイミド、ポリウレタン/尿素;イソシアネート/アルコール;反応性官能性ポリアミド、エポキシを伴うカルボキシル化ポリアミド、IR架橋性ポリマーなどの他の架橋性材料。
【0033】
3次元硬化ポリマー網状組織を形成するためには、本発明にしたがって使用される硬化性ポリマー結合剤材料の平均官能性は、2超でなければならない。官能性が2未満である場合には、いかなる硬化も発生し得ない。
【0034】
本発明によると、硬化性ポリマー結合剤材料は、好ましくは前記全組成の99wt%未満、より好ましくは10〜70wt%、特に好ましくは20〜60wt%の割合で熱硬化性ポリマー粉末組成物中に含まれている。
【0035】
[触媒]本発明によると、触媒も同様に使用可能である。概して、触媒は、反応において消費されることなく化学反応の速度を増大させる化合物である。好適な触媒を添加するとゲル化時間が短縮され、本発明にしたがって使用される粉末組成物の許容可能な硬化を達成するのに必要とされる焼成温度が低下する可能性がある。触媒は化学反応に極めて特異的であり、ルイス塩基(例えばイミダゾール)、アンモニウム塩、環式アミジン、ルイス酸錯体、アミノフェノール類、酸化亜鉛、アミンタイプ、オニウム、ジメチルステアリルアミン、第一錫オクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシド、スルホン酸/アミン、ペルオキシドなどを含む群から選択可能である。触媒は、典型的にそれがいかに有効であるかに応じて、0.1〜2wt%の比較的低いレベルで取り込まれる。しかしながら、より高い濃度も同様に可能であり得る。
【0036】
[開始剤]本発明によると、開始剤も同様に使用可能である。触媒とは対照的に、開始剤は反応において消費される。好適な開始剤の選択は、本発明にしたがって使用される粉末組成物に左右され、当業者の知識範囲内に入る。
【0037】
一部のケースでは、ここでもまた本発明にしたがって使用される粉末組成物に応じて、硬化剤、触媒および/または開始剤の混合物を使用してよい。
【0038】
[吸収体]SLSプロセスでの使用のためには、現行のレーザー波長(例えばCO
2レーザーについては10.6μm)でエネルギーを吸収する硬化性ポリマー結合剤材料の充分な能力が必要である。このことは、脂肪族化合物(C−H)で構成されているため、大部分のポリマーについて明白である。これらのポリマーは、大部分のケースにおいて、10.6μmの放射線の関連する部分を吸収するのに充分な「指紋」赤外線領域内の幾分かのグループ振動を有する。吸収能力が低い場合、レーザーエネルギー出力の増加が効果を補償できる。しかしながら、高いレーザー出力は同様に、ポリマー分解をひき起こす可能性があり、したがって、この効果を補償するためには、本発明にしたがって使用される粉末組成物に対し吸収体を添加することができる。
【0039】
粉末組成物は同様に、レーザー硬化にとって最適な波長で所望される吸収を生み出す吸収体を含むこともできる。例えば、CO
2レーザーに特異的な10.6μmの波長で吸収するように吸収体を適応させてよい。吸収体は、本発明にしたがって使用されるポリマー粉末組成物とブレンドされ得る。吸収体の一例は、具体的にはIR範囲内の電磁放射線を用いるSLSプロセスの場合、カーボンブラックである。カーボンブラックが好ましいIR吸収体であるものの、酸化鉄またはキノイドリレンジカルボキシミドなどの他の顔料も使用可能である。
【0040】
[充填剤]本発明に係る粉末組成物は、同様に充填剤材料も含んでいてよい。粒子状充填剤は全組成の10〜50wt%、好ましくは20〜30wt%を占める。充填剤材料は、不活性充填剤または活性充填剤を含むかまたはこれらの充填剤で構成されていてよく、例えば、単独でまたは2つ以上の材料の混合物として使用される、カーボネート系無機充填剤、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ドロマイト、カオリン、タルク、ミクロマイカ、アルミナ白、珪灰石、モンモリロナイト、ゼオライト、パーライト、ナノ充填剤、顔料、例えば二酸化チタン、アナタース形二酸化チタン、遷移金属酸化物、黒鉛、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、ホスフェート、ボーレート、シリケート、および有機充填剤、例えばポリマー粉末、例えばコポリマー、エラストマ、および熱可塑性物質からなる群から選択可能である。同様に、粉末コーティング生産(硬化または未硬化)および本発明に係るSLSプロセスの廃粉末を、製品要件に応じて充填剤として使用できると考えられる。
【0041】
[流動剤]成型品の生産中のメルトフローを改善するために、本発明にしたがって使用される熱硬化性ポリマー粉末組成物に対し流動剤を添加することができる。好ましくは、この流動剤は、実質的に球形の形状を有する。流動剤は、例えばケイ酸、非晶質アルミナ、ガラス状シリカ、ガラス状ホスフェート、ガラス状ボーレート、ガラス状オキシド、チタニア、タルク、マイカ、ヒュームドシリカ、カオリン、アタプルガイト、ケイ酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸マグネシウムおよび/またはそれらの混合物からなる群から選択された、20ミクロン未満、好ましくは10ミクロン未満の粒子径を有する無機粉末状物質であり得る。流動剤は、SLSプロセスにおいて用いられる層毎のプロセス中に樹脂粉末を流動させ水平化させるのに充分な量でのみ存在する。本発明にしたがって使用される熱硬化性ポリマー粉末組成物が全組成の5wt%未満、より好ましくは0.05〜2wt%、特に好ましくは0.05〜1wt%を含むことが好ましい。
【0042】
本発明にしたがって使用される熱硬化性ポリマー粉末組成物は、系の溶融粘度を調整するために好ましくは他の添加剤と合わせて、1つの選択肢として好ましくは全結合剤含有量の0〜49wt%の少なくとも1つの非晶質ポリマー結合剤そして恐らくは1つ以上の(半)結晶性ポリマー粉末結合剤を含むことが好ましい。非晶質ポリマー結合剤は、粉末の粒径に応じて、非常に優れた寸法精度、特徴部解像度および表面仕上げを有するパーツを生産することができる。
【0043】
[粒子の粒径]これはSLSプロセスの精度および密度に大きく影響する。粒子径が小さいと、より高精度のSLS成型品の構築に有利に作用する。一方、ポリマー粉末組成物の粒子径が過度に小さいと、粉末の自己再結合をひき起こすという理由で粉末の展延が困難になる。粉砕のコスト、SLS成型品の精度および密度、ならびに粉末の展延のむずかしさを考慮すると、熱硬化性ポリマー粉末組成物の主粒子径は20〜100μm、より好ましくは40〜80μmであることが好ましい。
【0044】
本発明にしたがって使用される熱硬化性ポリマー粉末組成物の生産プロセス、主として粉砕プロセスは、かなり高い軟化温度を有する樹脂(ポリマー結合剤材料)成分を必要とする。本発明にしたがって使用される全てのポリマー材料のガラス転移温度は、好ましくは40℃超であるべきであり、そうでなければ材料は粉砕プロセス中に融合するかまたは低温粉砕を必要とすると考えられる。発明された粉末組成物のためのポリマー結合剤材料の選択は、好ましくはこの条件により制約を受ける。この特性は、概して比較的硬い(脆い)硬化ポリマーを結果としてもたらし、こうして、最適なレベルまでの生産された成型品の可撓性を平衡化し提供する目的で、ポリマー結合剤材料を効果的に硬化することが必要となる。
【0045】
本発明にしたがって使用される熱硬化性ポリマー粉末組成物の粒子は、凝集することが許されない。粒子が細かくなればなるほど、表面エネルギーの効果は高くなる。粒子が非常に細かい場合、一部の凝集した量がもはや流動化できなくなる。その結果、生産されたフィルム中にしみおよび水平化不良が形成される。
【0046】
本発明にしたがって使用されるポリマー結合剤材料の数平均分子量は、好ましくは1,000〜15,000ダルトンの範囲内、より好ましくは1,500〜7,500ダルトンの範囲内である。可撓性および衝撃強度などの、硬化性ポリマー結合剤材料の機械的特性は、大部分が数平均分子量(M
n)に依存し、一方粘度は、重量平均分子量(M
w)の一関数である。物理的特性を最大化し低い溶融粘度を保持するためには、多分散性(M
w/M
n)が1に近づかなければならない。本発明にしたがって使用される硬化性ポリマー結合剤材料の分子量は、結合剤材料のT
gに影響を与える。すでに言及したように、本発明にしたがって使用されるポリマー結合剤材料のT
gは、少なくとも40℃、好ましくはそれを上回っていなければならない。T
gは、焼結および粉末の(恐らくは冷却された)保管および出荷の間の凝集に耐えるのに充分高く、しかし最大限の流動および水平化を促進するのに充分なほど低いものでなければならない。
【0047】
好ましくは、本発明にしたがって使用される熱硬化性ポリマー粉末組成物の流動化を支持するために、そこには添加剤があり、かつ/または、例えば粉末組成物の粒子表面はナノ粒子でカバーされる。SLSのために使用される組成物は、低い溶融粘度を有していなければならず、したがって、本発明にしたがって使用される粉末組成物のポリマー成分は好ましくは、40℃超の比較的高いガラス転移温度を有するためだけではなく、低い平均分子質量を有するためにも選択される。比較的鮮明な溶融温度と低い溶融粘度を有することを理由として、溶融粘度を最適化する目的で組成物に対して結晶性ポリマーを添加することができる。
【0048】
本発明にしたがって使用される粉末組成物には、溶融の後、架橋が開始するまでに、合体し流動するための短い時間しかない。したがって、ポリマー結合剤材料の溶融粘度、官能性および反応速度を入念に制御しなければならない。
【0049】
SLSプロセスにおいて、パーツベッドは、パーツベッド温度(T
b)と呼ばれる温度まで加熱システムによってまず予熱される。パーツの歪みおよびレーザー出力は、可能な最高の温度でT
bを操作することによって低下させることができるが、この温度は、使用されている粉末組成物内に含まれるポリマーの軟化温度(T
s)を超えることはなく、そうでなければポリマー粉末はくっついて自由に流動できなくなる。
【0050】
硬化性ポリマー結合剤材料として本発明中で選好して使用されているように非晶質ポリマーは、それを下回るとこのポリマーが固体となるガラス転移温度(T
g)を示す。非晶質ポリマーは、その粒子径および分子量に応じて、SLSプロセス中にT
gに近い温度まで予熱され、次に温度がさらにT
gより高く上昇した場合に溶融する。T
gより高くなると、非晶質ポリマーはまず皮革様またはゴム様になり、その後液体状態になる。したがって、非晶質ポリマーのT
sはT
gである。脆化温度T
bはT
gに近く、ただしT
gを超えないものに保たれなければならず、そうでなければ、非晶質ポリマーの粒子はくっついて、粉末の分布が困難になる。したがって、T
bは、そのDSC曲線から得ることのできるT
gの直ぐ上の温度に設定される。
【0051】
SLSプロセスにおいて、熱硬化性ポリマー粉末組成物を選択的に焼結/溶融させて層を液相に変換するために、レーザー放射線、詳細には約10.6μmの波長を有するCO
2レーザー光が使用される。レーザー吸収により生成された熱の下では、選択された部域内で硬化(架橋)反応も発生し、こうして、この層の少なくとも部分的な硬化/架橋を提供し、先にプリントされた層と/に対してこの層を硬化/架橋させ、かつこの層と次のプリント層の硬化/架橋を可能にするためにこの層の中に遊離官能基を残す。局所的には、頂部粉末層中の粒子の完全な合体、ならびに先にプリントされた層との(硬化/架橋反応を介した)接着が必要である。このような局在化された硬化は、入念に選択された加工条件、試料の熱伝導率および反応物質の混合によって最適化され得る。好ましくは、レーザー出力、パルス繰返し率、走査周波数、走査速度およびレーザービームサイズの制御を含めたレーザーパラメータの好ましくは自動化された制御と共に走査システムが使用される。使用された本発明に係る粉末材料に関しては、各層の形成中の硬化(架橋)の程度は、材料中に存在する硬化剤の量、樹脂対硬化剤の比率、触媒が存在する場合にはその量、粒子径分布PSDならびに各プリント層の厚みによって制御可能である。一層をプリントする場合に部分的硬化(架橋)のみを提供することで、遊離官能基が残され、こうして、直前のプリント層ならびに次のプリント層とこの層の硬化/架橋が可能になる。
【0052】
SLSプロセスの各ステップ中に、粉末状熱硬化性ポリマー粉末組成物の混合物が、好ましくは100〜200μm、より好ましくは100μmの厚み範囲内で標的部域に適用される。平滑な表面を形成するためにひとたび粉末層が水平化された時点で、この層は好ましくは10.6μmの波長を有する典型的に50ワット(最高200ワット)のCO
2レーザー由来の放射線に曝露される。集束ビームの直径は、好ましくは、試料の加熱を適度に小さい領域に制限するため400〜700μmである。レーザーのエネルギーが例えば50ワットで恒常に保たれている場合、曝露の強度は走査速度を変動させることによって制御可能であり、この走査速度は0mm/秒から12,000mm/秒まで調整可能であり、好ましくは100〜800J/cm
3の範囲内のレーザー強度で2,000〜6,000mm/秒に設定される。
【0053】
レーザーが試料上で過度に高速で走査された場合、どのスポットも硬化を開始するのに充分なエネルギーを吸収しないため、硬化が全く達成されない可能性がある。もう一方の極端は、走査速度が過度に低い場合であり、このとき、スポットは過熱され、堆積したエネルギーは、照射部域から外向きに広がり、こうして所望されるものを上回る広い部域を硬化させると考えられる。各層の形成中、好適な硬化度を提供しかつ次の層との硬化/架橋のために層内部に遊離官能基を残すような形で上述のパラメータからの選択を行うことは、当業者の知識範囲内に入る。
【0054】
レーザーエネルギーをさほど強く吸収しない材料を用いて作業する場合、吸収深度がレーザービームの焦点深度を上回る可能性がある。この場合、焦点深度が、試料表面に垂直な方向でのレーザーエネルギーの制限を最も大きく決定する因子となる確率が高い。焦点深度を超えると、レーザーエネルギーは充分に減少するため、もはや硬化が誘発されることはない。
【0055】
レーザー間隔(ハッチ間隔)は、通常レーザービーム直径よりも短い。成型品の断面は、レーザー間隔が大きすぎる場合焼結され得ず、現在レーザー間隔は、通常200〜300μmの範囲内にあり、200μmであることが好ましい。レーザーの各パスは、熱硬化性ポリマー粉末組成物を融合させ硬化を開始させる。レーザービームの連続する各パス毎に、そのとき形成されたフィルムは同様にまず融合され、それと同時にフィルム内部で硬化が開始され、さらにフィルムは同様に先行パス中に形成されたフィルムと架橋される。このプロセスは、所望の3D物体が完成するまで層毎に反復される。
【0056】
いくつかのケースにおいては、本明細書中に記載の熱硬化性ポリマー粉末組成物を用いて、例えば航空機または自動車業界のための3D繊維強化型複合材コンポーネントおよび特にスキー用の高多孔率および軽量を必要とするあらゆる3Dスポーツツールをプリントすることができる。上述の熱硬化性ポリマー粉末組成物の使用は、熱安定性を有する3D物品を提供するが、これは、これらの物品が硬化され架橋されたデューロプラストであり、サーモプラスト製3D物品のように溶融可能ではないからである。
【実施例】
【0057】
実施例1
混合物は、飽和カルボキシル化ポリエステル樹脂である600部分のUralac(登録商標)P3490(DSM)、45部分のAraldite(登録商標)PT−910(Huntsman)、320部分の二酸化チタン(Kronos(登録商標)2160、Kronos Titan GmbH)、15部分のResiflow PV5(Worlee−Chemie GmbH)、8部分の促進剤DT−3126(Huntsman)および7部分のベンゾインで構成されていた。全ての構成成分を1分間高速ミキサー内で予め混合し、その後、80℃の後部ゾーン温度および90℃の前部ゾーン温度、400rpmのスクリュー速度の2軸hZSK−18押出機内で押出し加工した。押出機の代替的設定では、40〜100℃の温度勾配および補給部域用の冷却デバイスを使用した。その後、得られた化合物を冷却し、粒状化し、微粉砕して、80μm未満のD50を有する粉末を得た。この粉末は、SLSレーザー焼結3Dプリンティング機中で使用可能である。
【0058】
実施例2
混合物は、600部分のUralac(登録商標)P3490、45部分のAraldite(登録商標)PT−910(Huntsman)、15部分のResiflow PV5(Worlee−Chemie GmbH)、8部分の促進剤DT−3126(Huntsman)、7部分のベンゾインおよび10部分の炭素短繊維で構成されていた。使用された炭素繊維は、60μmの平均な長さを有し、Tenax(登録商標)−A HAT M100(Toho Tenax Europe Gmbh)という製品呼称で入手可能である。全ての構成成分を1分間高速ミキサー内で予め混合し、その後、90℃の後部ゾーン温度および100℃の前部ゾーン温度、400rpmのスクリュー速度の2軸ZSK−18押出機内で押出し加工した。押出機の代替的設定では、40〜100℃の温度勾配および補給部域用の冷却デバイスを使用した。その後、得られた化合物を冷却し、粒状化し、微粉砕して、100μm未満のD50を有する粉末を得た。この粉末は、SLSレーザー焼結3Dプリンティング機中で使用可能である。
【0059】
実施例3
混合物は、飽和OH−ポリエステル樹脂である500部分のUralac(登録商標)P1580(DSM)、215部分のVestagon(登録商標)B1530(Evonik)、15部分のResiflow PV5(Worlee−Chemie GmbH)および7部分のベンゾインで構成されていた。全ての構成成分を1分間高速ミキサー内で予め混合し、その後、90℃の後部ゾーン温度および100℃の前部ゾーン温度、400rpmのスクリュー速度の2軸ZSK−18押出機内で押出し加工した。押出機の代替的設定では、40〜100℃の温度勾配および補給部域用の冷却デバイスを使用した。その後、得られた化合物を冷却し、粒状化し、微粉砕して、100μm未満のD50を有する粉末を得た。この粉末は、SLSレーザー焼結3Dプリンティング機中で使用可能である。
【0060】
実施例4
混合物は、飽和カルボキシル化ポリエステル樹脂である790部分のUralac(登録商標)P6401(DSM)、60部分のTGIC(Huntsmann)、15部分のResiflow PV5(Worlee−Chemie GmbH)、5部分のベンゾインおよび350部分の二酸化チタン(Kronos(登録商標)2160、Kronos Titan GmbH)で構成されていた。全ての構成成分を1分間高速ミキサー内で予め混合し、その後、90℃の後部ゾーン温度および100℃の前部ゾーン温度、400rpmのスクリュー速度の2軸ZSK−18押出機内で押出し加工した。押出機の代替的設定では、40〜100℃の温度勾配および補給部域用の冷却デバイスを使用した。その後、得られた化合物を冷却し、粒状化し、微粉砕して、100μm未満のD50を有する粉末を得た。この粉末は、SLSレーザー焼結3Dプリンティング機中で使用可能である。
【0061】
実施例5
混合物は、飽和カルボキシル化ポリエステル樹脂である350部分のUralac(登録商標)P3450(DSM)、150部分のAraldite(登録商標)GT−7004(Huntsmann)、7部分のResiflow PV5(Worlee−Chemie GmbH)、4部分のベンゾインおよび230部分の二酸化チタン(Kronos(登録商標)2160、Kronos Titan GmbH)で構成されていた。全ての構成成分を1分間高速ミキサー内で予め混合し、その後、90℃の後部ゾーン温度および100℃の前部ゾーン温度、400rpmのスクリュー速度の2軸ZSK−18押出機内で押出し加工した。押出機の代替的設定では、40〜100℃の温度勾配および補給部域用の冷却デバイスを使用した。その後、得られた化合物を冷却し、粒状化し、微粉砕して、100μm未満のD50を有する粉末を得た。この粉末は、SLSレーザー焼結3Dプリンティング機中で使用可能である。
【0062】
実施例6
混合物は、不飽和ポリエステル樹脂である350部分のUVECOAT2100(Allnex)、13部分の光開始剤、6部分のMODAFLOW(登録商標)Powder6000、2部分のベンゾインで構成されていた。全ての構成成分を1分間高速ミキサー内で予め混合し、その後、90℃の後部ゾーン温度および100℃の前部ゾーン温度、400rpmのスクリュー速度の2軸ZSK−18押出機内で押出し加工した。押出機の代替的設定では、40/60/80/100/90℃のゾーン温度および補給部域用の冷却デバイスを使用した。その後、得られた化合物を冷却し、粒状化し、微粉砕して、80μm未満のD50を有する粉末を得た。この粉末は、SLSレーザー焼結3Dプリンティング機中で使用可能である。
【0063】
実施例7
混合物は、飽和ポリエステル樹脂である440部分のCrylcoat1506−6(Allnex)、290部分のAraldite(登録商標)GT7220(Huntsman)、25部分のReafreeC4705−10(Arkema)、10部分のEutomer B31(Eutec Chemical)、15部分のPowderadd9083(Lubrizol)、2部分のTinuvin144(BASF)、230部分のTitan Tiona RCL696(Cristal)で構成されていた。全ての構成成分を1分間高速ミキサー内で予め混合し、その後、40/60/80/100/90℃のゾーン温度および補給部域用の冷却デバイスを用いて600rpmのスクリュー速度の2軸ZSK−18押出機内で押出し加工した。その後、得られた化合物を冷却し、粒状化し、微粉砕して、100μm未満のD50を有する粉末を得た。この粉末は、SLSレーザー焼結3Dプリンティング機中で使用可能である。
【0064】
SLSプロセスについての実施例:熱硬化性3Dパーツの生産
実施例1−7の粉末を使用して、以下の通りSLSプロセスを用いて3D物品を生産した(
図6)。実施例1〜7の粉末の各々をDTM Sinterstation2000(DTM Corporation,Austin,TX,USA)内の表面構築ステージに適用した。SLSプロセスの各ステップ中、100μmの厚み範囲内で標的部域に対して実施例1〜6の粉末を適用した。平滑な表面を形成するためにひとたび粉末層が水平化された時点で、この層を、約2500〜5000mm/秒の走査速度、走査回数2〜4で、0.2〜0.3mmの走査間隔で、10〜30WのCO
2レーザー由来の波長10.6μmの放射線に曝露した。粉末は充分ないしは良好な流動性を有し、その結果として平滑かつ水平化された粉末床がもたらされたが、ここでパーツ床の温度は50℃〜80℃の範囲内にあり、この範囲内でカールは全く発生しなかった。
【0065】
パーツの生産のために必要とされるエネルギー投入量は10〜40Wであった。最高のエネルギー投入量で焼結されたパーツは、SLS加工の後、満足のいく特性を示している。すでに言及したように、エネルギー投入量を変動させることによって、硬化度を変動させることができる。
【0066】
図7は、本発明に係る粉末組成物の使用下での3つの同一の3Dパーツのプリンティングの結果を実証しており、ここでこれらのパーツは5.76mmという合計構築高さを有し、以下の3つの異なるプロセスパラメータを用いて上述のSLS DTM Sinterstation2000を用いて生産されている:
(a)パーツは、25.2kJ/m
2のエネルギー密度、16Wのレーザー出力、2回の走査回数、5000m/秒の走査速度で生産された、
(b)パーツは、31.5kJ/m
2のより高いエネルギー密度、10Wのレーザー出力、2回の走査回数、2500mm/秒の走査速度で生産された、
(c)パーツは、31.5kJ/m
2のエネルギー密度、10Wのレーザー出力、ただし4回の走査回数、5000mm/秒の走査速度で生産された。
【0067】
こうして構築されたパーツは、それでもなおサンドブラスティングを受けるのに充分な強度を有し、このため、粉末を容易に除去することができた。大部分の繊細な特徴部が存続した。パーツ(b)および(c)は、スリットと孔が開けられた状態でより良い結果を示し、これは、優れたパーツ解像度の重要な指標である。Z方向の側方成長の増大が観察された。低い走査速度2,500mm/秒で2回の走査回数×10Wで焼結させられたパーツ(b)の表面は、5000mm/秒という高い走査速度で4回の走査回数×10Wで焼結されたパーツ(c)に比べてより平滑で、より少ない誤差しか示さなかった。パーツの縁部は、鋭利ではなくむしろかなり丸味のあるものであった。(b)および(c)のプロセス条件から得られるより高いエネルギー密度で、SLSプロセスの後に生産されたパーツの硬化度はDSC実験から計算されたものの約47%に達し、一方(a)で達成されたのは、約21%の硬化度にすぎなかった。
【0068】
各層の形成中の硬化(架橋)度を制御することにより、1層をプリントする場合に部分的硬化(架橋)のみを提供することができ、こうして遊離官能基が残される、ということが分かる。このような遊離官能基は次に、直前のプリント層そして次の層がひとたびプリントされた場合にはこの次のプリント層とのこの層の硬化/架橋を可能にする。
本開示には、以下に例示する実施形態も開示される。
[実施形態1]
3Dデューロプラストを生産するための選択的レーザー焼結プロセスにおける熱硬化性ポリマー粉末組成物の使用であって、前記組成物が少なくとも1つの硬化性ポリマー結合剤材料を含み、前記選択的レーザー焼結プロセスの各パスの間に、前記ポリマー結合剤材料は、形成された層内で少なくとも部分的に硬化され、そしてまた先行する層と少なくとも部分的に架橋される、熱硬化性ポリマー粉末組成物の使用。
[実施形態2]
前記組成物が、少なくとも1つの硬化性ポリマー結合剤材料を、硬化剤、触媒、開始剤およびそれらの混合物からなる群のうちの少なくとも1つの構成要素と共に含み、前記構成要素が前記ポリマー結合剤材料を硬化させる能力を有することを特徴とする、実施形態1に記載の使用。
[実施形態3]
前記ポリマー結合剤材料が、重付加および/または重縮合および/またはラジカル重合によって硬化可能であることを特徴とする、実施形態1または2に記載の使用。
[実施形態4]
前記硬化性ポリマー結合剤材料が、少なくとも2つのエポキシ官能基を有する化合物、少なくとも2つのカルボン酸官能基を有する化合物、少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有する化合物、アクリル酸もしくはメタクリル酸から誘導された化合物、および/またはそれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、実施形態1ないし3のいずれか1項に記載の使用。
[実施形態5]
前記硬化性ポリマー結合剤材料が、前記熱硬化性ポリマー粉末組成物中に、好ましくは全組成の99wt%未満、より好ましくは10〜70wt%、特に好ましくは20〜60wt%の割合で含まれていることを特徴とする、実施形態1ないし4のいずれか1項に記載の使用。
[実施形態6]
前記硬化性ポリマー結合剤材料が主として非晶質ポリマー結合剤であることを特徴とする、実施形態1ないし5のいずれか1項に記載の使用。
[実施形態7]
前記熱硬化性ポリマー粉末組成物が1〜250μm、好ましくは20〜100μm、特に好ましくは40〜80μmの粒子径を有することを特徴とする、実施形態1ないし6のいずれか1項に記載の使用。
[実施形態8]
前記熱硬化性ポリマー粉末組成物中に存在する全てのポリマー材料のガラス転移温度が少なくとも40℃であり、好ましくはそれを上回ることを特徴とする、実施形態1ないし7のいずれか1項に記載の使用。
[実施形態9]
前記ポリマー結合剤材料の数平均分子量が1,000〜15,000ダルトンの範囲内、より好ましくは1,500〜7,500ダルトンの範囲内にあることを特徴とする、実施形態1ないし8のいずれか1項に記載の使用。
[実施形態10]
実施形態1ないし9のいずれか1項に記載の熱硬化性ポリマー粉末組成物が使用されることを特徴とする、選択的レーザー焼結プロセス。
[実施形態11]
実施形態1ないし9のいずれか1項に記載の熱硬化性ポリマー粉末組成物を用いて生産されたことを特徴とする、3Dプリンティング製品。