(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の各実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。なお、マットレスや枕の説明に関する上下、左右、および前後の各方向(互いに直交する方向)は各図に示す通りである。上下方向は
図1等に示すマットレスの厚み方向に一致するように、前後方向はマットレスの長手方向(マットレスに横たわる使用者の身長方向)に一致するように、便宜的に定めたものに過ぎない。
【0023】
1.第1実施形態
まず本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る乳幼児用寝具セットの外観斜視図である。また
図2は、
図1に示す寝具セットを左右に二分する平面で切断した場合の断面図である。これらの図に示す寝具セットは、マットレス100の上に枕150を置いたものである。マットレス100および枕150は、何れも、横たわる乳幼児の下に配される寝具の一形態である。
【0024】
なお詳しくは後述するが、マットレス100および枕150の構成は、うつ伏せとなった乳幼児の顔が埋もれてしまっても呼吸を極力妨げないよう工夫されている。当該寝具セットによれば、うつ伏せとなった乳幼児はマットレス100と枕150のどちらに顔が埋もれる状態となっても、比較的楽に呼吸をすることができる。
【0025】
但しマットレス100と枕150は、それぞれ独立した寝具として別々に使うことも可能である。例えば、枕150を使わずに乳幼児をマットレス100の上に寝かせるという使い方や、一般的なマットレスや敷布団の上に枕150を置き、枕150に頭を乗せるように乳幼児を寝かせるという使い方も可能である。
【0026】
マットレス100は、通気性を有する通気性クッション層101、通気性と撥水性を有する通気性撥水層102、および、保水性と保水時における通気性を有する通気性保水層103を有している。これらの各層は、例えば、積層配置された上で接着や縫合等を施すことにより一体化され得る。
【0027】
通気性クッション層101(後述する枕の通気性クッション層151も同様)は、熱可塑性樹脂からなるフィラメント(線条)どうしを3次元的に融着結合させて形成した、空隙率が高く通気性に優れたフィラメント3次元結合体である。なおフィラメント3次元結合体の製造装置および製造方法については、後ほど詳細に説明する。通気性クッション層101は、横たわる乳幼児の全身を下から支えるマットレスに適したサイズに形成されている。
【0028】
通気性撥水層102は、通気性クッション層101の全体(通気性クッション層101の上側の面を含む)を覆うように設けられている。通気性撥水層102(後述する枕の通気性撥水層152も同様)は、乾燥したマスクと同等またはそれ以上の通気性を有し、水分が浸透しない多孔質の疎水性材料で形成される層である。疎水性材料とは、水との親和性が高いヒドロキシル基などの極性基を有さないユニットを主成分として含む高分子材料(ここでは、高分子末端の極性基については考慮しない)のことを言い、親水性が低く(表面エネルギーが低く、撥水性が高い)、水を吸着しにくい(水を弾きやすい)特性を有する。疎水性材料として、例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。通気性撥水層102は、通気性保水層103よりも撥水性(疎水性)が高く、通気性を極力阻害しないようにしながらも、通気性クッション層101へのミルクやよだれ等の浸入をより十分に抑える役割を果たす。
【0029】
この通気性撥水層102としては、うつ伏せとなった乳幼児が楽に呼吸できる程度の通気性が得られることが好ましく、例えば、直径0.5mm〜2mmの孔が100平方センチメートルあたり1,000〜10,000個程度形成された厚さが0.5mm〜5mmの疎水性材料の繊維(疎水性繊維)で形成される多孔質の織物や編物、直径1mm〜2mmの孔が100平方センチメートルあたり300〜3000個形成された厚さが0.5mm〜2mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの疎水性樹脂で構成される多孔質シートなどが使用できる。
通気性撥水層102として、太い糸を用いた平織の布(織物)を使用することもできる。隣り合う糸どうしの隙間が狭すぎると通気性が低くなり、広過ぎると防水性が低下するので、隣り合う糸どうしの間隔(孔の直径に該当する)としては、0.1mm以上2mm以下が好ましく、0.2mm以上1mm以下がさらに好ましい。
【0030】
多孔質の織物や編物としては、ポリエステルなどの疎水性繊維で形成されるメッシュ生地やダブルラッセル生地などが使用でき、これらの生地を1枚で使用したり、複数枚を重ねて使用できる。なお、メッシュ生地としては、例えば
図13Aまたは
図13Bに示す形態のものが適用可能であり、ダブルラッセル生地としては、例えば
図13Cに示す形態のものが適用可能である。特にダブルラッセル生地は1枚の生地で十分な層厚が得られるので、通気性クッション層101と通気性保水層103との層間距離を圧縮変形時においても保つことができるので、通気性保水層103から通気性クッション層101へのミルクやよだれ等の侵入抑制効果が向上する。さらには、疎水性繊維として、フッ素系樹脂等で撥水加工を施したポリエステル繊維やフロロカーボン繊維(ポリテトラフルオロエチレン)を100%あるいは部分的に使用することにより、水を弾きやすくする(撥水性を高める)ことができるので、ミルクやよだれ等の侵入抑制効果がさらに向上する。
【0031】
通気性保水層103は、通気性撥水層102を挟んで通気性クッション層101の上面全体と対向するように、通気性クッション層101の上側に設けられている。通気性保水層103は、通気性クッション層101よりも十分に保水性が高いことが好ましく、これによりミルクやよだれ等をより良好に保持することが出来る。通気性保水層103(後述する枕の通気性保水層153も同様)は、乾燥した状態および濡れた状態において、乾燥したマスクと同等またはそれ以上の通気性を有し、吸水性および保水性に優れた多孔質の親水性材料(保水性材料)で形成される厚さが2mm〜10mm程度の層である。親水性材料とは、水との親和性が高いヒドロキシル基などの極性基を有するユニットを主成分として含む高分子材料のことを言い、親水性が高く(表面エネルギーが高く、撥水性が低い)、水を吸着しやすい(水を弾きにくい)特性を有する。親水性材料として、例えば、綿、麻、レーヨンなどのセルロース系繊維が挙げられる。
【0032】
この通気性保水層103としては、水分を吸収した状態であっても呼吸が楽にできる程度の通気性が得られることが必須であり、直径1mm〜5mmの孔が100平方センチメートルあたり100〜3,000個程度形成された厚さが0.5mm〜5mmの綿やレーヨンで形成される多孔質の織物(ガーゼ)や編物、あるいは、直径2mm〜5mmの孔が100平方センチメートルあたり100〜1,000個形成された厚さが2mm〜5mmのポリビニルアルコール(PVA)やセーム皮などの親水性材料で形成された多孔質シートなどが使用できる。多孔質の織物や編物としては、綿などの親水性繊維で形成されるメッシュ生地やダブルラッセル生地などが使用でき、これらの生地を1枚で使用したり、複数枚を重ねて使用できる。特にダブルラッセル生地は1枚の生地で十分な層厚が得られるので、保水性を高めることができるので好ましい。通気性保水層103として、太い糸を用いた平織の布(織物)を使用することもできる。隣り合う糸どうしの隙間が狭すぎると保水時の通気性が低くなり、広過ぎると保水性が低下するので、隣り合う糸どうしの間隔(孔の直径に該当する)としては、0.5mm以上3mm以下が好ましく、1mm以上2mm以下がさらに好ましい。
【0033】
通気性保水層103(および枕の通気性保水層153)の吸水性について、単位面積あたりの吸水量が少ないと、乳幼児の吐き出すミルクやよだれが水平方向に広がって吸収されることになり、吸収スピードが遅くなる。そのため当該吸水量は、出来るだけ高い方が望ましい。例えば当該単位面積あたりの給水量としては、100平方センチメートルあたり20g以上であるのが好ましく、100平方センチメートルあたり50g以上であるのがさらに好ましい。
【0034】
また、うつ伏せとなった乳幼児の呼吸を楽にする観点から、通気性保水層103(および枕の通気性保水層153)は、必要な保水性能を確保しつつも、出来るだけ高い通気性を有することが望ましい。当該通気性については、乳幼児の呼吸力(空気を吸う力や空気を吐く力)に応じて適宜調整され得る。
【0035】
通気性の具体的な数値としては、JIS L 1096−1999 8.27.1 A法(フラジール形法)に準じた適切な通気性測定方法により測定される各層(通気性撥水層と通気性保水層が該当し、第2〜第5実施形態の場合はこれらに加えて非保水性透水層も該当する)の通気性が、150cm
3/cm
2・s以上であることが好ましく、クッション層を除くカバーシート全体として100cm
3/cm
2・s以上であることが好ましい。
【0036】
通気性撥水層(もしくは、第2〜第5実施形態における非保水性透水層)の通気性測定方法の具体例としては、通気性撥水層(もしくは、第2〜第5実施形態における非保水性透水層)の試験片を採取し、フラジール形試験機(株式会社安田精機製作所製)を用いる方法が挙げられる。この方法においては、当該試験機の円筒の一端(吸気側)に試験片が取り付けられた後、加減抵抗器によって傾斜形気圧計が125Paの圧力を示すように吸込みファンが調整され、そのときの垂直形気圧計の示す圧力と、使用した空気孔の種類とから、当該試験機に付属の表によって試験片を通過する通気性(cm
3/cm
2・s)が求められる。
【0037】
また、通気性保水層の通気性測定方法の具体例としては、80gの水で濡らした20cm×20cmの通気性保水層の試験片を採取し、フラジール形試験機(株式会社安田精機製作所製)を用いる方法が挙げられる。この方法においては、当該試験機の円筒の一端(吸気側)に試験片が取り付けられた後、加減抵抗器によって傾斜形気圧計が125Paの圧力を示すように吸込みファンが調整され、そのときの垂直形気圧計の示す圧力と、使用した空気孔の種類とから、当該試験機に付属の表によって試験片を通過する通気性(cm
3/cm
2・s)が求められる。
【0038】
本実施形態に示すように、水を吸着しやすい(親水性の高い)保水性材料で構成される通気性保水層103の鉛直方向下部に、水を吸着しにくい(親水性の低い)疎水性材料で構成される通気性撥水層102が設けることにより、通気性保水層103と通気性撥水層102との界面において水の移動を妨げる障壁(表面エネルギーギャップ)が形成され、この障壁により、界面にある水は通気性撥水層102より通気性保水層103に引き寄せられることにより、水を主成分とするミルクやよだれ等の移動を抑える効果が高まる。
【0039】
通気性撥水層102の材料としては、絶対的な撥水性が求められるものではなく、通気性保水層103と通気性撥水層102を各々構成する材料において、疎水性(撥水性)のレベルが異なればよい。例えば、通気性撥水層102の接触角(前進接触角および後退接触角の両方)の値が、通気性保水層103の接触角(前進接触角および後退接触角の両方)の値よりも高くなるように、各々の材料を選択してもよい。
【0040】
特に、繊維を使用せず、撥水性の極めて高いポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の多孔質シートは、繊維の間に水や汚れが入り込むこともなく、汚れが付着しにくいことから、通気性撥水層102(および枕の通気性撥水層152)の材料として適している。
【0041】
通気性保水層103は、通気性クッション層101の上側だけでなく下側にも設けるようにしても良い。このようにすれば、マットレス100を上下逆に置いても同様の効果を発揮するリバーシブル仕様とすることが可能である。この場合は、マットレス100を置く際に上下の向きを気にする必要は無く、また、マットレス100の上側が汚れた際などに応急措置としてマットレス100を裏返して使用しても、所期の効果を得ることが可能である。上記の点は、後述する第2および第3実施形態のマットレスにおいても同様である。
【0042】
なお本実施形態では、通気性撥水層102はマットレス100の全体を覆うように設けられているため、通気性クッション層101へのあらゆる方向からの水分の浸入を抑えることが可能である。すなわち、乳幼児の吐き出すミルクやよだれ等が上側から浸入することを抑えるだけでなく、下側や横側(前後左右)から水分が浸入することをも抑えることが出来る。
【0043】
また枕150は、通気性を有する通気性クッション層151と、通気性と撥水性を有する通気性撥水層152と、保水性と保水時における通気性を有する通気性保水層153が設けられている。これらの各層は、例えば、積層配置された上で接着や縫合等を施すことにより一体化され得る。
【0044】
なお材質や厚み方向の寸法および構造等について、通気性撥水層152は先述した通気性撥水層102と同等であり、通気性保水層153は先述した通気性保水層103と同等である。保水性、吸水性、および撥水性において、通気性撥水層152は通気性撥水層102と同等の特性を有し、通気性保水層153は通気性保水層103と同等の特性を有する。
【0045】
通気性クッション層151は、通気性クッション層101と同様のフィラメント3次元結合体であり、通気性クッション層101の場合と同様の方法で製造され得る。通気性クッション層151は、横たわる乳幼児の頭を乗せる枕に適したサイズに形成されている。
【0046】
通気性撥水層152は、通気性クッション層151の全体(通気性クッション層151の上側の面を含む)を覆うように設けられている。通気性撥水層152は、通気性保水層153よりも疎水性(撥水性)が高く、通気性を極力阻害しないようにしながらも、通気性クッション層151へのミルクやよだれ等の浸入をより十分に抑える役割を果たす。
【0047】
通気性保水層153は、通気性撥水層152の全体を覆うように設けられている。なお通気性保水層153の上側部分は、通気性撥水層152を挟んで通気性クッション層151の上面全体と対向するように、通気性クッション層151の上側に設けられていると見ることも出来る。通気性保水層153は、通気性クッション層151よりも十分に保水性が高いことが好ましく、これによりミルクやよだれ等をより良好に保持することが出来る。
【0048】
なお、各層152、153は通気性クッション層151の外側全体(上側と下側を含む)を覆うように積層されているため、枕150を上下逆に置いても同様の効果を発揮するリバーシブル仕様となっている。そのため、枕150を置く際に上下の向きを気にする必要は無く、また、枕150の上側が汚れた際などに応急措置として枕150を裏返して使用しても、所期の効果を得ることが可能である。
【0049】
但し、例えば製造コストを削減する等の目的から、通気性撥水層152は、通気性クッション層151の上側だけを覆うように設けられても良く、通気性保水層153は、通気性撥水層152の上側だけを覆うように設けられても構わない。上記の点は、後述する第4および第5実施形態の枕においても同様である。
【0050】
以上に説明したとおり、本実施形態に係る各寝具(マットレス100、枕150)は、フィラメント3次元結合体を用いて形成された通気性を有するクッション層(101または151)と、前記クッション層の上側に設けられ、保水性と保水時における通気性を有する通気性保水層(103または153)とを備える。
【0051】
そのため各寝具100、150によれば、横たわる乳幼児とクッション層の間に通気性保水層を介在させることが出来る。これにより、例えば乳幼児がミルクやよだれ等を吐き出しても、通気性保水層がこれを保持することで、フィラメント3次元結合体内部の汚染を極力防ぐことが出来る。また同時に、通気性保水層はミルクやよだれ等を保持した状態でも通気性を確保することが容易であり、うつ伏せとなった乳幼児の呼吸を極力妨げないようにすることが可能である。
【0052】
このように各寝具100、150は、通気性や弾力性等に優れたフィラメント3次元結合体の特性(寝具に適した特性)を活かしながら、乳幼児がミルクやよだれ等を吐き出してしまう状況をも想定し、うつ伏せとなった乳幼児でも出来るだけ楽に呼吸できるよう工夫されている。
【0053】
なお上述した通気性保水層は、ミルクやよだれ等の水分を保水しても通気性が殆ど下がらない性質を有することが好ましいが、保水により通気性が多少下がるとしても、うつ伏せとなった乳幼児の呼吸を確保し得る程度の通気性が維持されれば支障は少ない。この点を考慮し、例えば、乳幼児が吐き出す可能性のあるミルクやよだれ等の水分量を予め推定しておき、当該推定された量の水分を保水してもこの程度の通気性を維持可能であるものを、通気性保水層として採用しても良い。
【0054】
また本実施形態の各寝具100、150では、更に、前記クッション層と前記通気性保水層との間に、通気性と撥水性を有する通気性撥水層(102または152)が備えられている。そのため、ミルクやよだれ等がフィラメント3次元結合体内部へ及ぶことを、より十分に防ぐことが可能である。例えば多量のミルクがこぼれたような場合であっても、通気性撥水層がクッション層内へのミルクの浸入を阻止し、フィラメント3次元結合体内部の汚染を極力防ぐことが出来る。
【0055】
また、各寝具100、150にこぼれたミルクやよだれ等の殆どは、通気性保水層に留まってクッション層には及ばないため、表面近傍の洗浄や拭き取り等によって除去することが比較的容易である。ミルクやよだれ等を適切に除去することにより、寝具を清潔に保つことが可能である。なお、ミルクやよだれ等を含む箇所が容易に把握可能となるように、例えば水分によって色が変わる材料を通気性保水層に設けておいても良い。
【0056】
各寝具100、150においては、クッション層以外の層部分(本実施形態の場合は、通気性撥水層と通気性保水層を合わせた部分、または、通気性保水層の部分)をクッション層から分離可能としておき、家庭用洗濯機などで丸洗いが可能としても良い。なおクッション層以外の層部分を寝具用カバーシートに設けた実施形態については、後述する第3および第5実施形態としてより詳細に説明する。
【0057】
なお本実施形態(後述する第2〜第6の各実施形態についても同様)において、通気性撥水層は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維およびアクリル繊維から選ばれる1または2以上の疎水性繊維で構成される疎水性糸を用いた編物または織物で構成することが好ましい。また通気性保水層は、綿繊維、麻繊維およびレーヨン繊維から選ばれる1または2以上の親水性繊維で構成される親水性糸と、ポリエステル繊維、ナイロン繊維およびアクリル繊維から選ばれる1または2以上の疎水性繊維で構成される疎水性糸と、の2種類の糸を用いた編物または織物で構成することが好ましい。
【0058】
本発明における疎水性繊維(疎水性糸)とは、水との親和性が高いヒドロキシル基などの極性基を有さないユニット(モノマー)を主成分として含む高分子材料で形成される繊維(糸)のことを言い、ポリエステル繊維、ナイロン繊維およびアクリル繊維、ポリエチレン繊維などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル繊維は耐久性に優れ、低コストで入手できるので特に好ましい。また、本発明における親水性繊維(親水性糸)とは、水との親和性が高いヒドロキシル基などの極性基を有するユニット(モノマー)を主成分として含む高分子材料で形成される繊維(糸)のことを言い、綿繊維、麻繊維およびレーヨン繊維などのセルロース系繊維が挙げられる。これらの中でも、綿繊維は吸水性(保水性)や耐久性に優れ、低コストで入手できるので特に好ましい。
【0059】
通気性保水層として、綿繊維、麻繊維およびレーヨンのような親水性繊維からなる親水性糸のみを用いた場合、通気性保水層が大量の水分を含んだ状態においては、水の表面張力により、糸の隙間が水によって塞がれる。それを防止するために、予め生地に大きな隙間を設けると保水性が低下するため、保水性を高めるためには生地を厚くする必要があった。
【0060】
通気性保水層として、綿繊維、麻繊維およびレーヨン繊維から選ばれる1または2以上の親水性繊維で構成される親水性糸とともに、ポリエステル繊維、ナイロン繊維およびアクリル繊維から選ばれる1または2以上の疎水性繊維で構成される疎水性糸を用いることにより、通気性保水層が大量の水分を含んだ状態であっても、疎水性糸どうしが交差する接触点近傍において、水の表面張力によって塞がれることのない隙間を残すことができ、通気性を確保できる。
【0061】
なお、疎水性糸どうしが交差する糸の隙間に一時的に水が溜まったとしても、その近傍に親水性糸が存在することによって、水は表面エネルギーの小さな疎水性糸から表面エネルギーの大きな親水性糸の方に吸い寄せられるので、疎水性糸の隙間の水分は親水性糸の方に移行する。
【0062】
次に、各通気性クッション層101、151として利用され得るフィラメント3次元結合体の製造装置および製造方法について説明する。
図3は、フィラメント3次元結合体製造装置1の概略的な構成図である。
図4は、
図3に示すフィラメント3次元結合体製造装置のA−A’断面矢視図である。
図5は、
図3に示すノズル板17近傍のより詳細な構成図である。
【0063】
フィラメント3次元結合体製造装置1は、複数の溶融フィラメントを鉛直下方へ排出する溶融フィラメント供給装置10と、前記複数の溶融フィラメントを3次元的に融着結合させるとともに、冷却固化させてフィラメント3次元結合体を形成する3次元結合体形成装置20と、フィラメント3次元結合体の厚みを制御する厚み制御装置(不図示)を備える。
【0064】
溶融フィラメント供給装置10は、加圧溶融部11(押出機)とフィラメント排出部12(ダイ)を含む。加圧溶融部11は、材料投入部13(ホッパー)、スクリュー14、スクリューモーター15、スクリューヒーター16、および図示しない複数の温度センサーを含む。
【0065】
加圧溶融部11の内部には、材料投入部13から供給された熱可塑性樹脂を加熱溶融しながら搬送するためのシリンダー11aが形成されており、スクリュー14が回転可能に収容されている。シリンダー11aの下流側端部には熱可塑性樹脂をフィラメント排出部12に向けて排出するための排出口11bが形成されている。
【0066】
フィラメント排出部12は、ノズル板17、複数のダイヒーター18(18a〜18f)、および図示しない複数の温度センサーを含む。フィラメント排出部12の内部には、加熱溶融部11の排出口11bから排出された溶融熱可塑性樹脂をノズル板17に導く導流路12aが形成されている。
【0067】
ノズル板17は、複数の開口部であるノズル17aが形成された略直方体の金属製の厚板であり、導流路12aの最下流部にあたるフィラメント排出部12の下部に設けられている。本実施形態においては、円形のノズル17aの内径を1mm、隣接するノズル17a間の距離(ピッチ)を10mmに設定しているが、フィラメント3次元結合体の反発力の仕様に基づき、ノズル形状、ノズル内径、ノズル間隔、或いはノズル配置を適宜調整することができる。
【0068】
本実施形態でのフィラメント3次元結合体の材料として用いることのできる熱可塑性樹脂として、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂およびポリスチレン樹脂等や、スチレン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー等の熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。
【0069】
材料投入部13から供給された熱可塑性樹脂は、シリンダー11a内で加熱溶融された後、溶融熱可塑性樹脂として排出口11bからフィラメント排出部12の導流路12aに供給され、ノズル板17の複数のノズル17aから複数の溶融フィラメントが3次元結合体形成装置20に向けて排出される。
【0070】
3次元結合体形成装置20は、フィラメント3次元結合体厚み規制部21と、フィラメント冷却部22とを含む。フィラメント3次元結合体厚み規制部21は、一対の受け板21a、21bを含む。受け板21a、21bは、それぞれ中央部に向けて(互いに近づく方へ)下り傾斜となる平板状の傾斜面と、鉛直方向下方に延びる平板状の鉛直面を含む屈曲部を有する金属板であり、それらは所定の間隙を開けて面対称に設置されている。なお、3次元結合体形成装置20には、フィラメント3次元結合体の厚みに対応する方向(
図5での左右方向)に、受け板21a、21bを駆動させるための機構が設けられていても良い。
【0071】
フィラメント3次元結合体厚み規制部21において、ノズル板17から排出された複数の溶融フィラメント(溶融フィラメント群)は、フィラメント3次元結合体の厚み方向に搬送経路が規制されつつ、当該厚み方向両端部の溶融フィラメントが中央部に導かれ、後述する水槽23に向けて搬送される。また3次元結合体形成装置20は、水槽23の冷却水の浮力作用を利用して、複数の溶融フィラメントを滞留させてループを形成すると同時に、隣接する溶融フィラメントどうしを融着結合させることによりフィラメント3次元結合体を形成する。なお、受け板21a、21bの上部には図示しない冷却水供給装置を設けて、受け板21a、21bの表面全体に冷却水を供給するようにしてもよい。
【0072】
フィラメント冷却部22は、冷却水を貯留する水槽23、溶融フィラメント群の引取りと搬送を行う引取り部24、複数の搬送ローラ25(25a〜25h)、および、コンベア24および複数の搬送ローラ25(25a〜25h)を図示しないギアを介して駆動する搬送モーターを含む。フィラメント冷却部22は、3次元結合を形成した後の溶融フィラメントを冷却固化させて、フィラメント3次元結合体を形成する。引取り部24は、フィラメント3次元結合体を搬送する一対のコンベア24a、24を含む。
【0073】
コンベア24aは、駆動ローラ24a1と、従動ローラ24a2と、駆動ローラ24a1と従動ローラ24a2によって張架される金属メッシュからなる無端ベルト24a3を含み、図示しない搬送モーターにより回転駆動されるようになっている。コンベア24bは、駆動ローラ24b1と、従動ローラ24b2と、駆動ローラ24b1と従動ローラ24b2によって張架される金属メッシュからなる無端ベルト24b3を含み、図示しない搬送モーターにより回転駆動されるようになっている。
【0074】
なお、本実施形態においては、無端ベルト24a3、24b3として網状の金属メッシュからならベルトコンベアを用いているが、搬送部材であれば特に制限はなく、スラットコンベアなどを用いてもよい。搬送ローラ25a〜25hは、それぞれ図示しない支持部材によって回転可能に支持されると同時に、フィラメント3次元結合体との間で所定の摩擦力が得られるように、図示しないバネによりフィラメント3次元結合体を圧縮する向きに付勢するようになっている。
【0075】
上述したフィラメント3次元結合体製造装置1によれば、3次元的に融着結合した複数の溶融フィラメントを冷却固化してフィラメント3次元結合体を連続的に形成することができ、これを適切なサイズに切断等したものが、各寝具100、150の通気性クッション層として適用可能である。
【0076】
2.第2実施形態
次に本発明の第2実施形態について説明する。
図6は、第2実施形態に係るマットレス200の断面図(マットレス200を左右に二分する平面で切断した場合の断面図)である。マットレス200は、通気性を有する通気性クッション層201、通気性と撥水性を有する通気性撥水層202、保水性と保水時における通気性を有する通気性保水層203、および非保水性透水層204を有する。
【0077】
通気性クッション層201、通気性撥水層202、および通気性保水層203の材質、構造および位置関係等は、それぞれ、第1実施形態のマットレス100における通気性クッション層101、通気性撥水層102、および通気性保水層103と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0078】
一方で、非保水性透水層204は、通気性保水層203の上面全体と対向するように、通気性保水層203の上側に設けられている。非保水性透水層204の上面は、マットレス200の上側表面となっている。
【0079】
非保水性透水層204は、保水性が低いものの、水を吸水し拡散する材料で形成される層であり、通気性および透水性(通水性、透湿性)に優れ、例えば汗、ミルク、およびよだれ等の水分を通しやすい性質を有する。非保水性透水層204は、少なくとも通気性保水層203よりも保水性が低くなっている。この非保水性透水層204としては、うつ伏せとなった乳幼児が楽に呼吸できる程度の通気性が得られることが好ましく、例えば、直径0.5mm〜3mmの孔が100平方センチメートルあたり1,000〜10,000個程度形成された厚さが0.5mm〜5mmの多孔質の織物や編物が使用できる。
【0080】
水を吸水し拡散する材料としては、例えば、毛管現象により水を吸水し拡散させることができる超極細ポリエステル繊維や異形断面のポリエステル繊維を紡績した糸などが利用できる他、ポリエステル繊維などの疎水性繊維にレーヨンなどの親水性繊維を1〜20%混ぜて紡績した糸などが使用できる。非保水性透水層204として、太い糸を用いた平織の布(ガーゼ状の織物)を使用する場合、隣り合う糸どうしの隙間が狭すぎると通気性が低くなり、広過ぎると水の吸水拡散性が低下するので、隣り合う糸どうしの間隔(孔の直径に該当する)としては、0.5mm以上3mm以下が好ましく、1mm以上2mm以下がさらに好ましい。
【0081】
非保水性透水層204は、マットレス200に横たわる乳幼児の肌に密着して、汗などの水分を速やかに通気性保水層203へ導いたり、大気中へ蒸発させたりする作用がある。これにより、乳幼児の肌が汗などの水分でべたつくのを抑える効果が得られ、快適さをより一層向上させることが可能である。
【0082】
なお、マットレス200を上下逆にしても使用できるリバーシブル仕様とするため、通気性保水層203および非保水性透水層204を、通気性クッション層201の上下両側に設けるようにしても良い。リバーシブル仕様とすることの利点は、第1実施形態の説明にて言及したとおりである。
【0083】
3.第3実施形態
次に本発明の第3実施形態について説明する。
図7は、第3実施形態に係るマットレス350の断面図である。なお本実施形態では、マットレス用カバーシート300の説明に重点を置くため、見易さを考慮してクッション体310を白抜き表示としている。
【0084】
マットレス350は、クッション体310と、クッション体310の外周部を覆うマットレス用カバーシート300(寝具用カバーシートの一形態)により形成されている。マットレス350は、不図示のファスナーにより開閉自在である袋状のマットレス用カバーシート300の中に、クッション体310が挿入された状態となっている。
【0085】
クッション体310は、第1実施形態に係るマットレス100の通気性クッション層101と同等のものであり、熱可塑性樹脂からなるフィラメント(線条)どうしを3次元的に融着結合させて形成した、空隙率が高く通気性に優れたフィラメント3次元結合体である。
【0086】
マットレス用カバーシート300は、通気性撥水層301と、通気性撥水層301の上側に設けられる通気性保水層302と、通気性保水層302の外周部(通気性保水層302の上側を含む)に設けられる非保水性透水層303とを有し、全体的に見て、クッション体310の全体を収容可能とする袋状に形成されている。
【0087】
より具体的に説明すると、通気性撥水層301は、マットレス用カバーシート300内に挿入されたクッション体310の全方向を覆うように袋状に設けられ、通気性保水層302は、通気性撥水層301の上側を覆うシート状に設けられている。また非保水性透水層303は、通気性撥水層301と通気性保水層302を外側から覆うように設けられている。なお、通気性撥水層301、通気性保水層302、および非保水性透水層303の材質や構造は、それぞれ、第2実施形態のマットレス200における通気性撥水層202、通気性保水層203、および非保水性透水層204と同様である。
【0088】
なお、通気性撥水層301は、クッション体310の上側だけを覆うように設けられても良く、非保水性透水層303は、通気性保水層302の上側だけを覆うように設けられても構わない。また、通気性保水層302は、通気性撥水層301の全方向を覆うように設けられても良い。
【0089】
ここで、通気性保水層302の詳細構成の一例を
図8に示す。
図8(a)は、通気性保水層302を所定断面(
図8(b)に示すB−B´断面)で切断した場合の断面図であり、
図8(b)は上段層351の上面図である。なお
図8(a)では各層の孔部の表示を省略している。
図8(c)は、
図8(a)の部分拡大図に相当する図であり、断面上における各層の孔部の位置関係も示している。
【0090】
図8に示す通気性保水層302は、それぞれセーム皮などの高吸水性材料により構成された上段層351、中段層352、および下段層353が、上から順に積層された構造となっている。またこれらの各層351〜353には、多数の孔部351a〜353aが設けられている。各層の孔部351a〜353aは、例えば直径3〜5mmの貫通孔であり、各層においてほぼ等間隔で満遍なく設けられている。
【0091】
各層の孔部351a〜353aは、
図8(c)に示すように、層ごとにずらして配置されている。より具体的には、各層の孔部351a〜353aは、隣合う層の孔部と連通するように一部が重なり合いながらも、通気性保水層302において上下に貫通する箇所(全ての層の孔部が重なる箇所)が生じないように配置されている。これにより通気性保水層302は、各層の孔部351a〜353aを介して上面と下面が連通することで空気の通り道(
図8(c)の実線矢印を参照)が形成され、良好な通気性が確保されている。
【0092】
更に、各層の孔部351a〜353aが通気性保水層302を上下に貫通するようには配置されていない分、上記の空気の通り道は長くなっており、上段部351の孔部351aから通気性保水層302内に浸入した水分(ミルクやよだれ等)が容易に下面へ至ることは抑えられる。これにより通気性保水層302は、上段部351の孔部351に浸入した水分も十分に吸収するようになっており、良好な保水性が確保されている。なお
図8に例示した通気性保水層の構造は本実施形態に限らず、他の実施形態における通気性保水層にも適用可能である。
【0093】
マットレス用カバーシート300には、図示しないファスナーが設けられている。当該ファスナーを開放することにより、クッション体310が脱着自在となる一方、当該ファスナーを閉鎖することにより、挿入済みのクッション体310が勝手に抜出すのを防ぐことが出来る。このファスナーを設ける位置は特に限定されないが、クッション体310の脱着を容易とし、かつ寝心地を阻害しないようにする観点から、例えば、前後左右の何れかの端部近傍に設けることが好ましい。
【0094】
本実施形態のマットレス350によれば、クッション体310の上側において、下から順に通気性撥水層301、通気性保水層302、および非保水性透水層303が積層された形態となっている。そのため、第2実施形態のマットレス200と同等或いはこれに準じた効果を得ることが可能である。
【0095】
さらに本実施形態では、マットレス用カバーシート300からクッション体310を取出して、マットレス用カバーシート300だけを洗浄することも簡単であるため、マットレス350を清潔に保つことがより一層容易である。
【0096】
なお、マットレス350を上下逆にしても使用できるリバーシブル仕様とするため、通気性保水層302および非保水性透水層303は、クッション体310の上下両側に設けられるようにしても良い。リバーシブル仕様とすることの利点は、第1実施形態の説明にて言及したとおりである。
【0097】
4.第4実施形態
次に本発明の第4実施形態について説明する。
図9は、第4実施形態に係る枕400の断面図(枕400を左右に二分する平面で切断した場合の断面図)である。枕400は、通気性を有する通気性クッション層401、通気性と撥水性を有する通気性撥水層402、保水性と保水時における通気性を有する通気性保水層403、および非保水性透水層404を有する。
【0098】
通気性クッション層401、通気性撥水層402、および通気性保水層403の材質、構造および位置関係等は、それぞれ、第1実施形態における枕150の通気性クッション層151、通気性撥水層152、および通気性保水層153と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0099】
一方で、非保水性透水層404は、通気性保水層403の全体(通気性保水層403の上側の面を含む)を覆うように設けられている。非保水性透水層404の上面は、枕400の上側表面となっている。
【0100】
非保水性透水層404は、通気性および透水性(通水性、透湿性)に優れた、水分を保持しにくい多孔質の非吸水性親水性材料で形成される層である。非保水性透水層404は、適度な親水性を有するとともに、通気性保水層403よりも透水性が高く(保水性が低く)なっている。非保水性透水層404は、例えば、水酸基を含まない疎水性モノマーと水酸基を含む親水性モノマーを共重合させたポリエステル繊維やアクリル繊維を、ガーゼ状に紡織した多孔質の布などにより構成され得る。
【0101】
非保水性透水層404は、マットレス200に横たわる乳幼児の顔や頭部などに密着して、汗を速やかに通気性保水層403へ導いたり、大気中へ蒸発させたりする作用がある。これにより、乳幼児の肌が汗などの水分でべたつくのを抑える効果が得られ、快適さをより一層向上させることが可能である。
【0102】
5.第5実施形態
次に本発明の第5実施形態について説明する。
図10は、第5実施形態に係る枕550の断面図である。なお本実施形態では、枕用カバーシート500の説明に重点を置くため、見易さを考慮してクッション体510を白抜き表示としている。
【0103】
枕550は、クッション体510と、クッション体510の外周部を覆う枕用カバーシート500(寝具用カバーシートの一形態)により形成されている。マットレス550は、不図示のファスナーにより開閉自在である袋状の枕用カバーシート500の中に、クッション体510が挿入された状態となっている。
【0104】
クッション体510は、第1実施形態に係る枕150の通気性クッション層151と同等のものであり、熱可塑性樹脂からなるフィラメント(線条)どうしを3次元的に融着結合させて形成した、空隙率が高く通気性に優れたフィラメント3次元結合体である。
【0105】
マットレス用カバーシート500は、通気性撥水層501と、通気性撥水層501の外周部に設けられる通気性保水層502と、通気性保水層502の外周部に非保水性透水層503とを有し、全体的に見て、クッション体510の全体を収容可能とする袋状に形成されている。
【0106】
より具体的に説明すると、通気性撥水層501は、枕用カバーシート500内に挿入されたクッション体510の外側全体を覆うように袋状に設けられている。また、通気性撥水層501の外側全体を覆うように通気性保水層502が、通気性保水層502の外側全体を覆うように非保水性透水層503が、それぞれ設けられている。なお、通気性撥水層501、通気性保水層502、および非保水性透水層503の材質や構造は、それぞれ、第4実施形態の枕400における通気性撥水層402、通気性保水層403、および非保水性透水層404と同様である。
【0107】
枕用カバーシート500には、図示しないファスナーが設けられている。当該ファスナーを開放することにより、クッション体510が脱着自在となる一方、当該ファスナーを閉鎖することにより、挿入済みのクッション体510が勝手に抜出すのを防ぐことが出来る。このファスナーを設ける位置は特に限定されないが、クッション体510の脱着を容易とし、かつ寝心地を阻害しないようにする観点から、例えば、左右の何れかの端部近傍に設けることが好ましい。
【0108】
本実施形態の枕550によれば、クッション体510の上側において、下から順に通気性撥水層501、通気性保水層502、および非保水性透水層503が積層された形態となっている。そのため、第4実施形態の枕400と同等或いはこれに準じた効果を得ることが可能である。
【0109】
さらに本実施形態では、枕用カバーシート500からクッション体510を取出して、枕用カバーシート500だけを洗浄することも簡単であるため、枕550を清潔に保つことがより一層容易である。
【0110】
6.第6実施形態
次に本発明の第6実施形態について説明する。
図11は、第6実施形態に係るマットレス650の外観斜視図であり、
図12はマットレス650の垂直断面図ある。
【0111】
マットレス650は、クッション体610と、クッション体610の鉛直方向上部を覆うマットレス用カバーシート600(寝具用カバーシートの一形態)により形成されている。
図11に示すように、マットレス用カバーシート600の上面の四隅の角部(
図11に白抜き矢印で示す箇所)には、固定用ゴムバンド603がそれぞれ配設されている。各角部の固定用ゴムバンド603は、クッション体610の角部に引掛けられた状態(一部がクッション体610の下面に回り込んだ状態)となっており、その張力によってクッション体610の上部にマットレス用カバーシート600が固定されている。
【0112】
クッション体610は、第1実施形態に係るマットレス100の通気性クッション層101と同等のものであり、熱可塑性樹脂からなるフィラメント(線条)どうしを3次元的に融着結合させて形成した、空隙率が高く通気性に優れたフィラメント3次元結合体である。
【0113】
マットレス用カバーシート600は、第1通気性撥水層601aと、第1通気性保水層602aと、第2通気性撥水層601bと、第2通気性保水層602bを有し、これらの層はクッション体610の鉛直方向上方に順次積層されている。なお、第1および第2通気性撥水層601a、601bの材質や構造は、第2実施形態のマットレス200における通気性撥水層202と同様である。また、第1および第2通気性保水層602a、602bの材質や構造は、第2実施形態のマットレス200における通気性保水層203と同様である。
【0114】
本実施形態においては、鉛直方向下方に向かって設けられる通気性保水層と通気性撥水層との接触界面が2つ形成されているので、通気性保水層に局所的な高い圧力がかかった際にも、水を主成分とするミルクやよだれ等の移動を抑えることができる。鉛直方向下方に向かって設けられる通気性保水層と通気性撥水層との接触界面の数として、3以上の接触界面が形成されるように、通気性保水層と通気性撥水層を交互に複数層重ねてもよい。
【0115】
7.総括
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、本発明の実施形態に係るマットレス、枕および寝具用カバーシートにおいては、乳幼児が吐き出したミルクやよだれ等を通気性保水層に吸収させ、濡れた状態であっても通気性を確保するという目的を逸脱しない範囲で、非保水性透水層や撥水性通風層を複数設けてもよい。
【0116】
また上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。