特許第6724163号(P6724163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6724163組織の自己蛍光を使用した組織アブレーションの監視のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6724163
(24)【登録日】2020年6月26日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】組織の自己蛍光を使用した組織アブレーションの監視のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20200706BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20200706BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   A61B18/12
   A61M25/00 540
   A61M25/00 530
   A61B10/00 E
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-556832(P2018-556832)
(86)(22)【出願日】2017年6月9日
(65)【公表番号】特表2019-524168(P2019-524168A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】US2017036905
(87)【国際公開番号】WO2017214599
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2018年10月29日
(31)【優先権主張番号】62/348,901
(32)【優先日】2016年6月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ラフナー、ジェイコブ アイ.
(72)【発明者】
【氏名】グトブロト、サラ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン、ジェイソン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】サルキン、マシュー エス.
(72)【発明者】
【氏名】バイロン、メアリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】アーンホルト、デボン エヌ.
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−514156(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/086160(WO,A1)
【文献】 特開平07−155285(JP,A)
【文献】 特開2016−127993(JP,A)
【文献】 特表2015−505678(JP,A)
【文献】 特開2016−085112(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/074252(WO,A2)
【文献】 国際公開第2016/073476(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0196202(US,A1)
【文献】 特表2017−537681(JP,A)
【文献】 特表2017−536891(JP,A)
【文献】 特開2015−185125(JP,A)
【文献】 特開2007−7041(JP,A)
【文献】 特開2008−61858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
A61B 10/00
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルシステムにおいて、カテーテルは、
長尺なカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位端に連結されたカテーテル先端部材と、
フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)分子を励起させるために、405〜500nmの間の波長の光を放出するよう構成された少なくとも一つの発光素子と、
励起されたFAD分子によって放出された、500〜600nmの間の波長の光を感知するように構成された少なくとも一つの光センサと
励起されたFAD分子によって放出されて前記光センサによって感知された500〜600nmの間の波長の光の強度が閾値より大きいことを示す信号の受信に応答して、生体損傷の形成が開始されたと評価するよう設計された制御回路と、
を含む、カテーテルシステム。
【請求項2】
前記少なくとも一つの発光素子は、発光ダイオードである、請求項1のカテーテルシステム。
【請求項3】
前記少なくとも一つの発光素子は、光ファイバである、請求項1のカテーテルシステム。
【請求項4】
前記光ファイバは光源に通信可能に接続された、請求項3のカテーテルシステム。
【請求項5】
前記少なくとも一つの発光素子は、その全部又は一部がカテーテル先端部材内に配置されている、請求項1から4のいずれか一項のカテーテルシステム。
【請求項6】
前記カテーテル先端部材は、前記発光素子が放出した光および前記光センサが感知する光のうちの一方または両方を透過させるように構成された、少なくとも一つの窓又は光学的に透明なバルーンを含む、請求項5のカテーテルシステム。
【請求項7】
前記少なくとも一つの光センサは、その全部又は一部が前記カテーテル先端部材内に配置されている、請求項1から6のいずれか一項のカテーテルシステム。
【請求項8】
前記閾値は、前記感知された光の強度の変化率である、請求項のカテーテルシステム。
【請求項9】
前記閾値は、前記感知された光の強度の差である、請求項のカテーテルシステム。
【請求項10】
少なくとも一つの前記光センサに連結され、励起されたFAD分子の放出波長範囲外の波長を濾波するフィルタを更に備える、請求項1〜のいずれか一項のカテーテルシステム。
【請求項11】
前記放出波長範囲は500〜600nmである、請求項10に記載のカテーテルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、身体内において、解剖学的構造を解析することに関する。より詳細には、本開示は蛍光を使用した組織アブレーションの監視及び評価のためのシステム、方法、及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アブレーション治療では、身体内の標的アブレーションサイトにおいて身体組織の様々な特性を決定することがしばしば必要である。介入的な心臓電気生理学的治療では、例えば、医師が心臓内又は近くの標的アブレーションサイトにおける心臓組織の状態を判別することがしばしば必要である。
特許文献1には、アブレーション(焼灼)エネルギーが身体に与えられて治療上の生体損傷を形成するような医学的処置が記載されており、生体損傷及び組織の画像を生成して生体損傷の深さを決定するためのシステム及び方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/196202号明細書
【発明の概要】
【0004】
実施例1において、カテーテルシステムは、長尺なカテーテル本体と、カテーテル本体の遠位端に連結されたカテーテル先端部材(catheter tip)と、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)分子を励起させるために光を放出するよう構成された少なくとも一つの発光素子と、を備えるカテーテルを含む。カテーテルシステムは、励起されたFAD分子によって放出された光を感知するように構成された少なくとも一つの光センサを更に含む。
【0005】
実施例2において、少なくとも一つの発光素子は、発光ダイオードである、実施例1のカテーテルシステム。
実施例3において、少なくとも一つの発光素子は、光ファイバである、実施例1のカテーテルシステム。
【0006】
実施例4において、光ファイバは光源に通信可能に接続された、実施例3のカテーテルシステム。
実施例5において、少なくとも一つの発光素子は、少なくとも部分的にカテーテル先端部材内に配置されている、実施例1〜4のいずれか一つのカテーテルシステム。
【0007】
実施例6において、カテーテル先端部材は少なくとも一つの窓又は光学的に透明なバルーンを含む、実施例1〜5のいずれか一つのカテーテルシステム。
実施例7において、少なくとも一つの光センサは少なくとも部分的にカテーテル先端部材内に配置されている、実施例1〜6のいずれか一つのカテーテルシステム。
【0008】
実施例8において、励起されたFAD分子によって放出されて光センサによって感知された光の強度を示す信号を受け取ることに応答して、生体損傷の形成を評価するよう構成された制御回路を更に含む、実施例1〜7のいずれか一つのカテーテルシステム。
【0009】
実施例9において、制御回路は、感知された光の強度が閾値より大きいと判定することによって、生体損傷の形成を評価する、実施例8のカテーテルシステム。
実施例10において、制御回路は、感知された光の強度の変化率が閾値より大きいと判定することによって、生体損傷の形成を評価する、実施例8のカテーテルシステム。
【0010】
実施例11において、制御回路は、感知された光の強度の差が閾値より大きいと判定することによって、生体損傷の形成を評価する、実施例8のカテーテルシステム。
実施例12において、組織損壊を評価するための方法は、組織の部位のFAD蛍光の強度の指標を受信することと、受信された強度の指標に応答して、組織の部位がアブレーションカテーテルによって損壊されているか否かを判定することと、を含む方法。
【0011】
実施例13において、受信した強度の指標に基づいて、アブレーションカテーテルが組織の部位に接触していたか否かを判定することを更に含む、実施例12の方法。
実施例14において、組織の部位が損壊しているか否かを判定することは、強度が閾値よりも大きいと判定することを更に含む、実施例12及び13のいずれか一つの方法。
【0012】
実施例15において、組織の部位が損壊しているか否かを判定することは、強度の変化率が閾値より大きいと判定することを更に含む、実施例12〜14のいずれか一つの方法。
【0013】
実施例16において、システムは、長尺なカテーテル本体と、カテーテル本体の遠位端に連結されたカテーテル先端部材と、カテーテル先端部材内に部分的に配置され、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)分子を励起させるために光を放出するように設計された少なくとも一つの光ファイバと、を含む。本システムは更に、少なくとも一つの光ファイバに通信可能に連結され、励起されたFAD分子によって放出された光を感知するように設計された少なくとも一つの光センサを含む。
【0014】
実施例17において、カテーテルがカテーテル先端部材に連結された少なくとも一つのアブレーション電極を更に含む、実施例16のシステム。
実施例18において、カテーテル先端部材が少なくとも一つの光ファイバに連結された少なくとも一つの窓を含む、実施例16〜17のいずれか一つのシステム。
【0015】
実施例19において、少なくとも一つの窓がカテーテル先端部材の遠位端に配置されている、実施例18のシステム。
実施例20において、カテーテルが複数の光ファイバを更に含む、実施例16〜19のいずれか一つのシステム。
【0016】
実施例21において、カテーテルは、カテーテル本体内及びカテーテル本体に沿って延びる内腔を更に含み、複数の光ファイバは内腔の周りに巻かれている、実施例16〜20のいずれか一つのシステム。
【0017】
実施例22において、複数の光ファイバの少なくとも一部が、カテーテル先端部材の周壁の周りに放射方向に配置されている、実施例16〜21のいずれか一つのシステム。
実施例23において、複数の光ファイバの少なくとも一つがカテーテル先端部材の遠位端で終結する、実施例16〜22のいずれか一つのシステム。
【0018】
実施例24において、複数の光ファイバの少なくとも一つがカテーテル先端部材の周壁で終結する、実施例16〜23のいずれか一つのシステム。
実施例25において、励起されたFAD分子によって放出されて、感知された光の強度を示す信号を受信することに応答して、生体損傷の形成を評価するように設計された制御回路を更に含む、実施例16〜24のいずれか一つのシステム。
【0019】
実施例26において、制御回路が、感知された光の強度が閾値より大きいと判定することによって、生体損傷の形成を評価するように設計された、実施例16〜25のいずれか一つのシステム。
【0020】
実施例27において、制御回路が、感知された光の強度の変化率が閾値より大きいと判定することによって、生体損傷の形成を評価するように設計された、実施例16〜25のいずれか一つのシステム。
【0021】
実施例28において、制御回路が、感知された光の強度の差が閾値より大きいと判定することによって、生体損傷の形成を評価するように設計された、実施例16〜25のいずれか一つのシステム。
【0022】
実施例29において、少なくとも一つの光センサが、光検出器、分光光度計、カメラ、半導体、及び光電子増倍管のうちの一つである、実施例16〜28のいずれか一つのシステム。
【0023】
実施例30において、組織損壊を評価するための方法は、組織の部位付近のフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)蛍光の強度の指標を受け取ることと、前記受信された強度の指標に応答して、前記組織の部位が損壊しているか否かを判定することとを含む方法。
【0024】
実施例31において、組織の部位付近のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)蛍光の強度の指標を受け取ることと、NADH蛍光強度の受信された指標に応答して、組織の部位が損壊しているか否かを判定することと、を含む実施例30の方法。
【0025】
実施例32において、組織の部位に光を案内することによってFAD分子を励起することと、励起されたFAD分子のFAD蛍光強度を検出することとを更に含む、実施例30〜31のいずれか一つの方法。
【0026】
実施例33において、組織の部位が損壊しているか否かを判定することは、感知された光の強度が閾値より大きいと判定することを含む、実施例30〜32のいずれか一つの方法。
【0027】
実施例34において、組織の部位が損壊しているか否かを判定することは、感知された光の強度の変化率が閾値より大きいと判定することを含む、実施例30〜33のいずれか一つの方法。
【0028】
実施例35において、組織の部位が損壊しているか否かを判定することは、感知された光の強度の差が閾値よりも大きいと判定することを含む、実施例30〜34のいずれか一つの方法。
【0029】
実施例36において、方法は、組織の部位のFAD蛍光の強度の指標を受信することを含む。受信した強度の指標に応じて、前記方法はアブレーションカテーテルが組織の部位に接触したか否かを判定することを更に含む。
【0030】
複数の実施形態が開示されているが、本発明の更に他の実施形態は、本発明の例示的実施形態を示し、かつ説明する以下の詳細な記載から当業者には明らかになるであろう。従って、図面及び詳細な記載は、本質的に例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本開示の特定の実施形態に従うカテーテルシステムを示す。
図2】本開示の特定の実施形態に従うカテーテルの一部の模式側面図を示す。
図3図2のカテーテルの切り欠き模式側面図を示す。
図4】本開示の特定の実施形態に従うカテーテルの一部の模式側面図を示す。
図5図4のカテーテルの切り欠き模式側面図を示す。
図6】本開示の特定の実施に従うカテーテルの切り欠き模式側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、様々な修正及び代替形態に変更可能であるが、特定の実施形態は、図面の例として示され、以下で詳細に説明される。しかしながら、記載される特定の実施形態に本開示を限定する意図ではない。それどころか、本開示は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に入る全ての修正、等価物、及び代替物をカバーすることが意図されている。
【0033】
心臓組織の不適切な電気的活動は様々な心臓異常に起因する可能性がある。このような不適切な電気的活動は、これらに限定されないが、効率的及び/又は有効な心臓機能をサポートしない方法で、電気信号の生成、電気信号の伝導、及び組織の圧縮を行うことの少なくとも一つを含み得る。例えば、心臓組織の領域は、心臓周期の間で早期に電気的に活性化し、又はそうでなければ同調性を失い、前記領域及び隣接領域の少なくとも一方の心臓細胞をリズムから外れて収縮させる。その結果、異常な心臓収縮となり、最適な心拍出量のためのタイミングが取れない。いくつかの場合、心臓組織の領域は、心房細動又は上室性頻拍などの不整脈を引き起こす、障害のある電気経路(例えば、短絡)を提供する可能性がある。いくつかの場合、不活性組織(例えば、瘢痕組織)は、機能不全の心臓組織より好ましい場合がある。
【0034】
心臓アブレーションは、心臓組織を処理して組織を不活性化する治療である。アブレーションの対象となる組織は、上述したように不適切な電気的活動に関連する可能性がある。心臓アブレーションは、組織に生体損傷を与え、組織が電気信号を不適切に生成又は伝導するのを防止することができる。例えば、線、円、又は他のアブレーションされた心臓組織の形成は、誤った電気信号の伝播を阻止することができる。場合によっては、心臓アブレーションは、心臓組織の壊死を引き起こし、瘢痕組織を生体損傷上に再構築させ、瘢痕組織が不適切な電気的活動に関連しないようにすることが意図される。アブレーション治療には、数ある中に、高周波アブレーション、凍結融解壊死治療、マイクロ波アブレーション、レーザーアブレーション、及び外科的アブレーションが含まれる。
【0035】
図1は、長尺なカテーテル本体104と、心臓108内に配置されるように構成されたカテーテル先端部材106とを含むカテーテル102を含むシステム100を示す。カテーテル102は、カテーテル先端部材106に連結されたアブレーション電極110を含む。操作中、アブレーション電極110は、標的心臓組織に接触してアブレーションエネルギを心臓組織に送達し、それにより組織をアブレーションして生体損傷を形成し、心臓リズム障害又は異常を治療することができる。カテーテル102はまた、光をカテーテル102へ送達及びそこから伝達する光ファイバ(例えば、発光素子)、光を検出する撮像センサ(例えば撮像素子)、及び発光ダイオードのようなカテーテルベースの光源(例えば、発光素子)の少なくとも一つのような発光又は撮像素子112を少なくとも一つの含み、これらの各々は、以下でより詳細に説明される。
【0036】
素子112が光ファイバである場合、システム100は、少なくとも一つの光ファイバに連結され、少なくとも一つの光ファイバによって伝達された光を感知するように構成された、少なくとも一つのセンサ114を含むことができる。このような構成はまた、少なくとも一つの光ファイバに連結され、少なくとも一つの光ファイバに光を供給する光源116(例えば、レーザ)を含むことができ、光ファイバは供給された光をカテーテル102を介して伝達する。
【0037】
システム100はまた、制御回路118(メモリ120、プロセッサ122、測定サブユニット124、解析サブユニット126、マッピングサブユニット128、及びディスプレイコントローラ130を含む)及びディスプレイ132を含む。以下により詳細に説明するが、システム100及びその様々な構成要素は、蛍光を利用して組織アブレーション(例えば、生体損傷形成)を評価及び監視するように構成される。
【0038】
心臓組織において、ミトコンドリアは、脈動する心臓のエネルギ需要を満たすことを補助する。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)及びフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)は、ミトコンドリア内の好気性エネルギ産生の2つの要素であり、固有の蛍光を有する。ミトコンドリアは、エネルギ需要を満たすことを補助することに加えて、細胞死のメカニズムを助ける。壊死では、細胞内小器官のアブレーション、腫脹及び破壊に関連する細胞死のメカニズムが、とりわけ細胞死のシグナル伝達を増加させ、それはミトコンドリア膜の崩壊及びNADH及びFADH2の酸化を最大にする。酸化されたFADH2(すなわち、FAD)は、光によって励起されると光を発し、放出された光の強度は、組織の代謝状態の指標となり得る。従って、放出された光の強度は、組織アブレーション(例えば、生体損傷形成)のリアルタイム評価及び監視のための、組織状態の指標となり得る。そのため、本開示の特定の実施形態は、生体損傷形成を評価及び監視し、それにゆえに組織アブレーションを補助するために、FAD及びその蛍光を利用することに関する。
【0039】
図2は、図1のシステム100で使用することができるカテーテル200の一部の側面図の概略図である。図3はカテーテル200の切り欠き模式図を示す。カテーテル200は、カテーテル先端部材206に連結された遠位端部204を有するカテーテル本体部202を含む。カテーテル先端部材206は、組織に沿って生体損傷を形成するためにアブレーションエネルギを心臓組織に送達するよう設計された、アブレーション電極208を含む。
【0040】
カテーテル200は、光ファイバ210及びカテーテルベースの光源218の少なくとも一方であることができる、光放出要素を含む。特定の実施形態では、光ファイバ210は、カテーテル先端部材206を通って(例えば、カテーテル先端部材206の近位端212から遠位端214まで)延び、カテーテル先端部材206の遠位端214に配置された窓216に連結される。図3には1本の光ファイバしか示されていないが、図5〜6に示されるように、複数の光ファイバを利用することができる。光ファイバ210は、カテーテル200に沿って他の光ファイバ及び通信/電気ワイヤの少なくとも一方と一緒に編組されることができ、及び/又はカテーテル200の他の構成要素、例えば内腔の周りに巻き付けられることができる。図2図3には示されていないが、カテーテル200は、生理的パラメータ及びカテーテル位置決め情報を収集し、そのような情報をシステム100の制御回路118に送ることを支援するために、様々なマッピング及びナビゲーションセンサの少なくとも一方を含むことができる。
【0041】
光ファイバ210は、窓216を通して光(例えば、紫外線光)を案内するように構成される。窓216は、ガラス、アクリル、シリコーン、ポリカーボネート(Lexan)、プレキシガラス、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、光学的に透明なエポキシ等を含むことができる。特定の実施形態では、光ファイバ210は、光ファイバ210に光を供給する光源(図1に示す光源116のような)に通信可能に連結される。特定の実施形態では、カテーテル200は、カテーテル先端部材206内に配置されたカテーテルベースの光源218を含む。カテーテルベースの光源218は、発光ダイオード(LED)等であってよい。
【0042】
発光素子(例えば、光ファイバ210又はカテーテルベースの光源218)は、光ファイバ210又はカテーテルベースの光源218のいずれかを異なる方向にアーティキュレイトさせることができるステアリング機構(図示せず)に連結することができ、光ファイバ210又はカテーテルベースの光源218から放出された光を特定の方向に案内することができる。例えば、光ファイバ210又はカテーテルベースの光源218を回転させて、窓216の異なるセクションを通って、異なる方向に光を案内することができる。窓216は、カテーテル先端部材206の遠位端214に配置されているように示されているが、窓216が、カテーテル先端部材206のより大きな部分を覆えば、光ファイバ210又はカテーテルベースの光源218が光を案内することができるより大きな範囲の方向を提供することができる。いくつかの実施形態では、窓216は、カテーテル先端部材206の遠位端214全体を覆わない。特定の実施形態では、カテーテル200は、カテーテル先端部材206の代わりに、又はそれに加えて、バルーン(例えば、光学的に透明なバルーン)を含む。光学的に透明なバルーンは、光ファイバ210又はカテーテルベースの光源218が光を案内することができる大きな範囲の方向を提供することができる。
【0043】
所望の波長又は波長範囲(例えば、紫外線(UV)光)で、光源(例えば、図1の光源116)は光をファイバ210に供給し、又はカテーテルベースの光源218が発光する。具体的には、光ファイバ210又はカテーテルベースの光源218は、FAD分子が励起されるような波長で、患者内に光を送るように構成される。前述のように、励起されると、FADは光を放出し、放出された光の強度は、病変の代謝状態、したがって組織状態の指標となり得る。約405〜500nmのUV光(約460nmでピーク励起を伴う)で励起されると、FADは約500〜600nm(約535nmでピーク発光)の光を放出する。このように、光ファイバ210又はカテーテルベースの光源218を405〜500nmで、及び/又は405〜500nmの間で光を案内するように設計することができる。
【0044】
特定の実施形態では、光ファイバ210は、光ファイバ210が透過光(例えば、FAD蛍光、光学データ)を感知するように設計された少なくとも一つのセンサ220に光(例えば、FAD蛍光)を送達するように、少なくとも一つのセンサ220に通信可能に連結される。例えば、センサ220は、これらに限定されないが、数ある他の撮像及び光検出装置及び/又は回路のうち、光検出器、分光光度計、カメラ(例えば、MEMSベースのカメラ)、半導体(例えばCMOS)、光電子増倍管であってよい。センサ220を、FAD及びNADHの少なくとも一方の放出範囲外の波長を濾波するように設計されたフィルタのような、一つ又はそれ以上のフィルタ222に連結することができる。
【0045】
特定の実施形態では、カテーテル200は、カテーテル先端部材206の上又は内部に配置されたセンサ224を含む。センサ224は、カテーテル先端部材206の上又は中に適合するように寸法決めされた、他の撮像及び光検出装置及び回路の少なくとも一つの中で、光検出器、分光光度計、カメラ(例えばMEMSベースのカメラ)、半導体(例えばCMOS)、光電子増倍管であってよい。カテーテルベースの光源218及びセンサ224を利用する実施形態は、光ファイバ210、光源116及びセンサ220の少なくとも一つを使用する必要がなくてよい。
【0046】
アブレーション処置の間、カテーテル200は、アブレーションされる組織に隣接して配置される。アブレーション前に光ファイバ210又はカテーテルベースの光源218が光を組織に案内する場合、アブレーションされる前にはFADH酸化から生成されるFAD分子がほとんど又は全く存在しないため、センサ220又は224はFAD蛍光の強度をほとんど又は全く感知しないであろう。しかし、一旦アブレーション電極208がエネルギを得て、組織と接触するように移動されると、FADHはFAD分子になるよう酸化され始める。光ファイバ210又はカテーテルベースの光源218からの光が組織に案内されると、FAD分子は励起されて光を放出する。より具体的には、光ファイバ210又はカテーテルベースの光源218が405〜500nmの波長の光を照射する場合、FADは約500〜600nmの光(例えば、FAD蛍光)を放出し、これは少なくとも一つのセンサ220又は224に検出される。
【0047】
放出された光の強度(例えば、FAD蛍光強度)は、組織のアブレーションを評価及び監視するために、測定、解析及び使用の少なくとも一つを行える。例えば、様々な閾値を予め決定して又は動的に変化させて使用し、カテーテルのアブレーション電極が組織に接触したとき、及び組織のアブレーションが開始したとき、発生しているとき、成功しているとき、及び/又は終了したときの少なくとも一つを決定することができる。閾値は、強度レベル、強度の増加率(例えば、傾き)、強度及び/又は他の生理学的パラメータとの組み合わせを含むイベントのタイミング、及び強度変化の程度(例えば、デルタ)などのパラメータに基づくことができる。特定の実施形態では、強度レベルの増加は、一旦アブレーションが開始されるとFAD蛍光強度が一般的に増加するため、組織アブレーションが開始したことを示すことができる。特定の実施形態では、強度レベルの一定の増加率は、組織アブレーションが開始したことを示すことができる。特定の実施形態では、強度レベルの増加及びその後のプラトーは、標的組織が完全にアブレーションされたことを示すことができる。例えば、一定時間(例えば、15、30、45、又は60秒)の強度レベルのプラトーは、標的組織が完全にアブレーションされたことを示すことができる。特定の実施形態では、FAD蛍光強度を、他の生理学的パラメータと同期することができる。例えば、FAD蛍光強度のレベルを、他の生理学的パラメータの中で、ECG信号及び局所電位図と同期してプロットすることができる。
【0048】
蛍光強度などの光学データを、励起源から反射されたより広い範囲の光を使用することによってFAD蛍光強度を正規化するために使用することができる。例えば、光ファイバ210又はカテーテルベースの光源218がピーク励起波長(例えば、460nm)で光を放出するとき、組織アブレーションに起因する測定されたFAD蛍光強度は、FAD波長帯外(例えば、500〜600nm外)で測定された蛍光強度によって区別されることができる。光学データをまた、電気解剖学的マッピングシステム内で「スマートタグ」を作成するために使用することができる。例えば、心臓の一部のマップ(例えば、電気解剖学的シェル)を作成中又は作成後に、FAD蛍光強度(又は別の蛍光関連パラメータ)が上述した様々な閾値のような閾値よりも大きいと判定される領域で、タグが自動的にマップ上に配置されることができる。特定の実施形態では、タグは、経時的な累積FAD蛍光(例えば、蛍光時間積分)上で閾値を設定することによって自動的に作成されることができる。タグは、最大FAD蛍光強度又は経時的な累積FAD蛍光で視覚的にコード化されてよい。
【0049】
上記の記載は主としてFAD蛍光強度の使用を主に議論したが、強度以外の又は強度に追加的なパラメータを使用することができる。これらの他のパラメータは、蛍光がどのように経時的に変化するかを特性化するパラメータを含むことができる。例えば、蛍光の寿命特性(例えば、蛍光がどのくらい速く変化するか、光退色後に蛍光がどのように回復するか)は、励起光(例えば、パルス励起光)のタイミング及び光収集のタイミングによって測定及び制御されることができる。
【0050】
組織アブレーションの評価及び監視は、システム100の様々な構成要素を使用して成し遂げることができる。制御回路118は、メモリ120、プロセッサ122、測定サブユニット124、解析サブユニット126、マッピングサブユニット128、及び、ディスプレイコントローラ130を含む。制御回路118及びその構成要素は、システムの様々な機能を実行するように設計される。操作中、少なくとも一つのセンサ220又は224によって検出されたFAD蛍光は、FAD蛍光の強度を決定するために測定サブユニットに伝達される。一旦FAD蛍光強度が決定されると、解析サブユニット126は、アブレーション電極208が病変に接触したか、及び組織のアブレーションが開始したか、発生しているか、成功しているか、及び/又は終了したかの少なくとも一つを評価するために、強度を特定の所定の閾値、又は動的な閾値(上述のような)と比較する。マッピングサブユニット128は、カテーテル200に連結されたマッピング及び/又はナビゲーションセンサからマッピング/位置決め信号を受信し、生理学的マッピング及びカテーテル位置情報を決定する。ディスプレイコントローラ130は、様々なサブユニットの結果をディスプレイ132に出力する。例えば、ディスプレイコントローラ130は、マッピング、位置決め、及びFAD蛍光強度情報を組み合わせて、そのような情報をディスプレイ132に出力することができ、これは、標的アブレーション部位の特定の部分が完全にアブレーションされていないことを示すことができる。このような情報は生体損傷形成の監視及び評価を補助するために、リアルタイムで収集され表示されることができる。いくつかの実施形態では、ディスプレイコントローラ130は、決定されたFAD蛍光強度に関連する信号と、他の生理学的パラメータに関連する信号とを時間的に同期させ、ディスプレイ132が同期信号を表示する。
【0051】
制御回路118は、プロセッサ実行可能命令、データ構造及び他の情報を格納するためのコンピュータ可読記録媒体、すなわち「メモリ」120を含むことができる。メモリ120は、読み出し専用メモリ(ROM)及び/又はフラッシュメモリなどの不揮発性メモリと、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)又は同期ダイナミックランダムアクセスメモリ(SDRAM)などのランダムアクセスメモリ(RAM)を含んでよい。いくつかの実施形態では、メモリ120は、プロセッサ122によって実行されると、組織アブレーションの評価及び監視に関連する機能を実行するためのルーチンを遂行するプロセッサ実行可能命令を格納してよい。
【0052】
メモリ120に加えて、制御回路118は、プログラムモジュール、データ構造、及び組織アブレーションを評価及び監視するための本明細書に記載された他のデータを格納する他のコンピュータ可読媒体を含んでよい。コンピュータ可読媒体は、情報の非一時的記憶のために制御回路118又は他のコンピュータシステムによってアクセスされ得るあらゆる利用可能な媒体であり得ることは、当業者には理解されるだろう。コンピュータ可読媒体には、これらに限定されないが、RAM、ROM、消去可能なプログラム可能なROM(EPROM)、電気的に消去可能なプログラム可能なROM(EEPROM)、フラッシュメモリ又は他の固体メモリ技術、コンパクトディスクROM(CD−ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、BLU−RAY(登録商標)又は他の光学記憶装置、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置等を含む、あらゆる方法又は技術で実施される揮発性及び不揮発性、取り外し可能及び取り外し不可能の記録媒体を含む。
【0053】
制御回路118の構造及び機能の少なくとも一方は、図1に示されたもの及びここに記載されたものとは異なっていてもよいことは理解されよう。例えば、プロセッサ122、測定サブユニット124、解析サブユニット126、マッピングサブユニット128、及びディスプレイコントローラ130、及び制御回路118の他の構成要素は、共通の集積回路パッケージ内に統合されてもよいし、複数の集積回路パッケージの中に分布されてもよい。更に、制御回路118は、図1に示される構成要素の全てを含まなくてもよく、又は図1に明示されていない他の構成要素を含んでよく、又は図1に示されるものとは異なるアーキテクチャを利用してもよいことを理解されたい。
【0054】
図4は、図1のシステム100内で使用することができるカテーテル400の一部の側面図を示す。図5は、カテーテル400の切り欠き図を示す。カテーテル400は、カテーテル先端部材406に連結された遠位端404を有するカテーテル本体部402を含む。カテーテル先端部材406は、組織に沿って生体損傷を形成するためにアブレーションエネルギを心臓組織に送達するよう設計されたアブレーション電極408を含む。
【0055】
カテーテル400は複数の光学ファイバ410、412、及び414を含む。代替的に、又は追加的に、カテーテル400は、図3に示されるようにカテーテルベースの光源218のような一つ又はそれ以上のカテーテルベースの光源を含むことができる。簡略化のために、図4及び図5は3つの光学ファイバを示すが、カテーテル400はより多くの又はより少ない光学ファイバを含むことができる。一つの光学ファイバ410はカテーテル先端部材406(例えばカテーテル先端部材406の近位端416から遠位端418に)を通って延び、カテーテル先端部材406の遠位端418に配置された窓420に連結される。他の光学ファイバ412、414は放射方向に分配され、かつ、カテーテル先端部材406の周壁422に沿って配置され、周壁422に沿ってそれぞれ配置された窓424、426に、個別に連結されている。いくつかの実施形態では、複数の光学ファイバはカテーテル先端部材406の遠位端418に配置される。他の実施形態では、全ての光学ファイバはカテーテル先端部材406の周壁422に沿って配置される。いくつかの実施形態では、一つの光学ファイバは通信可能に複数の窓に連結される。複数のファイバ及び複数の窓の少なくとも一方を有するため、カテーテル400は光を複数の方向に案内することができ、組織と一つ又はそれ以上の光学ファイバからの光との間の干渉がある場合に、信号ロスを防止することを補助することができる。
【0056】
光学ファイバは、光学ファイバに光を供給する光源(図1に示される光源116のような)に通信可能に連結される。光学ファイバは少なくとも一つのセンサ430に通信可能に連結することができ、光学ファイバは、伝達された光(例えば光学データ)を感知するように構成された少なくとも一つのセンサ430に光を伝達する。単一の光センサが使用された時、単一の光センサからの感知された光は多重化することができる。二つ以上のセンサを有する特定の実施形態では、それぞれのセンサからの信号は、解析のために多重化され、制御回路118に転送することができる。少なくとも一つのセンサ430はFAD及びNADHの少なくとも一方の放出範囲外の波長を濾波するように設計されたフィルタのような、一つ又はそれ以上のフィルタ432に連結することができる。
【0057】
図6は、図1のシステム100内で使用可能なカテーテル600の一部の切り欠き図を示す。カテーテル600は、カテーテル先端部材606に連結された遠位端604を有するカテーテル本体部602を含む。カテーテル600は、2本の光ファイバ608,610を有するものとして示されているが、より多くの又はより少ない光ファイバが使用可能である。両方の光ファイバ608、610は、カテーテル先端部材606を通って遠位端612まで延び、カテーテル先端部材606の遠位端612に配置された窓614、616に連結されるが、一方又は両方の窓はカテーテル先端部材606の周壁の周りに配置され得る。光ファイバ608、610は、光ファイバに光を供給する一つ又はそれ以上の光源(図1に示す光源116のような)に通信可能に接続されている。
【0058】
図6は、内腔618の周りに編組又は巻き付けられた光ファイバ608及び610を示す。このような構成は、カテーテル600がアーティキュレイト(例えば、曲げ)されたときに、光ファイバ608及び610の歪みを緩和することができる。特定の実施形態では、内腔618は、カテーテル本体部602及びカテーテル先端部材606の少なくとも一部に沿って、及び少なくとも一部内に延びることができる。灌注カテーテルにおいて、内腔618は、カテーテル先端部材606及び組織の少なくとも一方を冷却するために、流体(例えば、冷却剤)をカテーテル本体部602を介してカテーテル先端部材606に送る。例えば、内腔618は、流体をカテーテル先端部材606の内部空洞620に導き、その後、カテーテル先端部材606の周囲に位置する開口部622、624に導き、流体がそれを通ってカテーテル先端部材606を出る。カテーテル600は、ナビゲーションセンサ626を更に含み、これは、患者内に配置された時にカテーテル先端部材606の位置を示すことを補助する。
【0059】
特定の実施形態では、光ファイバ608のうちの一つは、詳細に上述したように、FAD分子を励起させる波長の光を放出するように設計される。他のファイバ610は、NADH分子を励起させる波長でUV光を放出するように設計される。例えば、光ファイバ610は、NADH分子を励起させる300〜400nm又はその間の波長のUV光を放出することができる。励起されると、NADH分子は435〜485nmの間で発光する。しかし、FADとは異なり、NADH蛍光の強度は、組織がアブレーションされるにつれて減少する。例えば、高いNADH蛍光強度は、非アブレーション組織に対応する。従って、NADH蛍光の減少がアブレーション(例えば、生体損傷の形成の増加)によるものか、又はカテーテルがアブレーションされることが意図された組織から遠ざけられたことによるものかを決定することは困難であり得る。しかしながら、NADHに加えてFADを励起させ、それらのそれぞれの蛍光を検出することは、言及された及び組織アブレーションの指標としてNADHを使用することに関連した、特定の欠点を相殺するための情報を提供することができる。
【0060】
光ファイバ608、610は、少なくとも一つのセンサ628に通信可能に連結され、一つ又はそれ以上の光ファイバが、光を、伝達された光(例えば、光学データ)を感知するように設定された少なくとも一つのセンサ628に伝達することができる。単一の光センサが使用される場合、単一の光センサからの検出光を多重化することができる。二つ以上のセンサを有する特定の実施形態では、それぞれのセンサからの信号は、解析のために多重化され、制御回路118に転送されることができる。少なくとも一つのセンサ628は特定の波長を濾波するように設計されたフィルタのような、一つ又はそれ以上のフィルタ630に連結されることができる。
【0061】
本開示の特定の実施形態は、アブレーション電極を特徴とするが、光ファイバ、センサ、制御回路などを介した組織アブレーションの監視及び評価は、アブレーション電極を含まないアクセサリカテーテル及び治療用カテーテルの少なくとも一方などのデバイスとともに、使用することができる。例えば、アクセサリ又は治療用カテーテルは、アブレーション中にカテーテルをアブレーションサイトの近くに配置することによって、FAD蛍光(したがって、組織アブレーション)を監視することができる。特定の実施形態では、カテーテルは、カテーテルと組織との間の光の伝達を容易にするバルーン(例えば、光学的に透明なバルーン)を含む。さらに、本開示の特徴は、アブレーション標的(例えば、心房細動、心室頻拍)及びアブレーション技術(例えば、凍結融解壊死治療、マイクロ波アブレーション)のすべての範囲に適用可能である。例えば、特定の実施形態では、FAD蛍光は、凍結融解壊死治療で使用されるようなより寒い温度で増強される。
【0062】
本発明の範囲から逸脱することなく、説明した例示的な実施形態に対して様々な変更及び追加を行うことができる。例えば、上述の実施形態は特定の特徴に言及するが、本発明の範囲は、特徴の異なる組合せの実施形態、及び記載された特徴の全てを含まない実施形態をも含む。したがって、本発明の範囲は、そのようなすべての均等物とともに、請求項の範囲内にあるそのような代替物、改変物及び変形物のすべてを包含するように意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6