特許第6724172号(P6724172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6724172
(24)【登録日】2020年6月26日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】座標入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0354 20130101AFI20200706BHJP
【FI】
   G06F3/0354 453
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-563212(P2018-563212)
(86)(22)【出願日】2017年12月11日
(86)【国際出願番号】JP2017044409
(87)【国際公開番号】WO2018135183
(87)【国際公開日】20180726
【審査請求日】2019年3月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-5865(P2017-5865)
(32)【優先日】2017年1月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】波多野 直行
(72)【発明者】
【氏名】阿部 伸也
(72)【発明者】
【氏名】高木 政史
【審査官】 菅原 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−053591(JP,A)
【文献】 特開2008−171337(JP,A)
【文献】 特開2013−088929(JP,A)
【文献】 特開2006−268663(JP,A)
【文献】 米国特許第04736191(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0212627(US,A1)
【文献】 特開2011−048525(JP,A)
【文献】 特開2002−244809(JP,A)
【文献】 特表2015−535117(JP,A)
【文献】 特開2006−268665(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0120129(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/0354
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作体による入力操作を検知する操作検知部と、入力操作の結果を演算して演算結果を算出する演算部とを備えた座標入力装置において、前記演算部は、前記操作検知部への入力操作が所定時間継続した場合、前記操作検知部の第1の時刻における第1の位置と、前記第1の時刻後の第2の時刻に検出された第2の位置の座標を取得して前記第1の位置から前記第2の位置に向かう入力ベクトルを演算し、前記第1の位置と前記第2の位置とを結ぶ線上にある前記操作検知部の端から端までの距離である移動可能距離を演算し、前記移動可能距離が短いほど、前記入力ベクトルの値を補正する補正値を大きくして、出力ベクトルを算出することを特徴とする座標入力装置。
【請求項2】
操作体による入力操作を検知する操作検知部と、入力操作の結果を演算して演算結果を算出する演算部とを備えた座標入力装置において、前記演算部は、前記操作検知部への入力操作が所定時間継続した場合、前記操作検知部の第1の時刻における第1の位置と、前記第1の時刻後の第2の時刻に検出された第2の位置の座標を取得して前記第1の位置から前記第2の位置に向かう入力ベクトルを演算し、前記第1の位置と前記第2の位置とを結ぶ線から前記操作検知部の中心点までの垂線の長さを求め、前記垂線の長さが長いほど、前記入力ベクトルの値を補正する補正値を大きくして、出力ベクトルを算出することを特徴とする座標入力装置。
【請求項3】
前記操作検知部の形状が、円形、楕円形、又は角丸長円形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の座標入力装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記第1の時刻から前記第2の時刻までの間の時間と、前記第1の位置の座標から前記第2の位置の座標への移動量から前記操作体の移動速度を算出し、前記移動速度が所定の閾値以下のときは、前記補正値を減少させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の座標入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパッド等の座標入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ノート型パーソナルコンピュータ等の座標入力装置として、指で操作面をタッチすることによりクリック操作や画面のスクロール等を行うタッチパッドが知られている。また、近年では、スマートフォンやタブレット端末等の座標入力装置としてタッチパネルが用いられている。
【0003】
このような人の指等で直感的に機器の操作が行える座標入力装置は、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の情報端末に限らず、多くの機器に用いられるようになってきている。例えば、自動車において、カーナビゲーションの操作用、或いはオーディオ機器の操作用等に利用されている。
【0004】
近年では、このような座標入力装置において、操作性を向上させる手法が種々提案されている。例えば、特許文献1では、指やタッチペン等の操作体が操作面に接触した接触状態と、操作面から指が離れた後、近接状態となった操作体の位置の情報を利用する技術が開示されている。
【0005】
特許文献1に開示された座標入力装置では、操作面の接触状態において、操作体の移動方向、移動距離、及び移動速度に応じた速度で画面をスクロールし、接触状態から操作体が離れて近接状態となった際の近接位置を利用してベクトルを特定し、そのベクトルの方向又は長さに応じてスクロールの速度を変更している。特許文献1では、このような処理をすることにより、座標入力装置の操作性を向上させることができると記載されている。
【0006】
また、特許文献2では、操作面において操作体を操作できる十分な面積を確保できないような場合であっても、操作体の圧力を検知することによって、簡単に画像の移動表示に係る方向及び速度を決定することができるタッチパネル装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−186555号公報
【特許文献2】特開2016−103214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような座標入力装置によって操作される機器においては、操作のための座標入力装置と、操作された状態が表示される表示装置が離れている場合がある。例えば、自動車内の機器の操作において、シフトレバーの上面やステアリングホイール等にタッチパッドを設け、そのタッチパッドにおける操作によりカーナビゲーション等の操作を行う場合等である。このような場合は、ユーザはタッチパッドを見ないで操作を行うことになる。
【0009】
また、このような座標入力装置においては、設置する機器の大きさの制約やデザイン上の理由等により形状を四角形にすることができず、円形や楕円形、或いは他の幾何学形状となる場合がある。
【0010】
例えば、座標入力装置を円形にした場合、中心点付近でドラッグ(座標入力装置の表面に接触させた指等を接触させたままスライドさせる)する際には、最大で座標入力装置の円の直径と同じ距離だけドラッグさせることができる。
【0011】
しかしながら、座標入力装置の中心点から離れた位置でドラッグする際には、短い距離しか指等をドラッグさせることができない。これでは、長い距離をドラッグさせたい場合には、一度指等を座標入力装置の表面から離し、指等を元の位置に戻して再度ドラッグしなければならない。また、場合によっては、複数回ドラッグしなければならない事態も生じうる。
【0012】
特許文献1における装置においては、ドラッグ操作の途中で指等が座標入力装置の端部に到達した場合、座標入力装置の表面から指等が離れることになるが、座標入力装置で離れた指等の近接位置を検出できないので、操作のベクトルを正確に検出することができない。この場合、ベクトルの長さが短くなるのでドラッグ操作も短くなってしまい、ユーザに違和感を与えるおそれがある。
【0013】
特許文献2においては、操作体の圧力を検知することによって操作体を操作できる十分な面積を確保できない場合に対応しているが、ユーザが操作面を見ないで操作する場合、操作可能な距離が長いか短いかを予め確認することができない。このため、ユーザとしては、予め強めに操作をするといった対応をすることができない。
【0014】
本発明は、座標入力装置の改良を目的とし、さらに詳しくは、タッチパッド等の座標入力装置において、その形状に関わらず、入力の際にユーザに違和感を生じさせることのない座標入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明の第1の態様の座標入力装置は、操作体による入力操作を検知する操作検知部と、入力操作の結果を演算して演算結果を算出する演算部とを備えた座標入力装置において、前記演算部は、前記操作検知部への入力操作が所定時間継続した場合、前記操作検知部の第1の時刻における第1の位置と、前記第1の時刻後の第2の時刻に検出された第2の位置の座標を取得して前記第1の位置から前記第2の位置に向かう入力ベクトルを演算し、前記第1の位置と前記第2の位置とを結ぶ線上にある前記操作検知部の端から端までの距離である移動可能距離を演算し、前記移動可能距離が短いほど、前記入力ベクトルの値を補正する補正値を大きくして、出力ベクトルを算出することを特徴とする。
【0016】
本発明の座標入力装置によれば、第1の位置と第2の位置とを結ぶ線上における操作検知部の長さ、即ち操作体が移動可能な移動可能距離が演算され、当該移動可能距離が短いほど入力ベクトルに対する出力ベクトルの大きさが大きくなる。当該構成によれば、座標入力装置の形状が、操作体の操作位置によって異なる形状であったとしても、前記演算部によって入力ベクトルに対する出力ベクトルが補正される。従って、短い距離しか操作体を操作させることができない場合であっても、ユーザに違和感を生じさせることなく入力操作を行わせることができる。
【0017】
また、本発明の第2の態様の座標入力装置は、操作体による入力操作を検知する操作検知部と、入力操作の結果を演算して演算結果を算出する演算部とを備えた座標入力装置において、前記演算部は、前記操作検知部への入力操作が所定時間継続した場合、前記操作検知部の第1の時刻における第1の位置と、前記第1の時刻後の第2の時刻に検出された第2の位置の座標を取得して前記第1の位置から前記第2の位置に向かう入力ベクトルを演算し、前記第1の位置と前記第2の位置とを結ぶ線から前記操作検知部の基準点までの垂線の長さを求め、前記垂線の長さが長いほど、前記入力ベクトルの値を補正する補正値を大きくして、出力ベクトルを算出することを特徴とする。
【0018】
本発明の座標入力装置によれば、前記演算部により、操作体によって操作された第1の位置と第2の位置を結ぶ線から操作検知部の基準点までの垂線の長さが演算される。そして、垂線の長さが長いほど、即ち、操作検知部の基準点から遠いほど入力ベクトルに対して出力ベクトルを大きくする。これにより、座標入力装置が基準点から離れた位置で操作体の移動可能な距離が短い場合であっても、ユーザに違和感を生じさせることなく入力操作を行わせることができる。なお、この基準点は、操作検知部の形状の中心とすることが好ましいが、適用する装置に応じて適宜決定することができる。
【0019】
本発明の座標入力装置は、前記操作検知部の形状が、円形、楕円形、又は角丸長円形の場合に特に好適である。
【0020】
また、本発明の座標入力装置においては、前記演算部は、前記第1の時刻から前記第2の時刻までの間の時間と、前記第1の位置の座標から前記第2の位置の座標への移動量から前記操作体の移動速度を算出し、前記移動速度が所定の閾値以下のときは、前記補正値を減少させることが好ましい。
【0021】
ユーザが操作検知部に対して精度よく操作を行いたい場合は操作体の移動速度を遅くするため、操作体の移動速度が閾値以下のときは補正量を減少させ、ユーザに違和感を生じさせることなく入力操作を行わせることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、タッチパッド等の座標入力装置において、その形状に関わらず、入力の際にユーザに違和感を生じさせることのない座標入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態の座標入力装置の構成を示す説明図。
図2】タッチパッドにおける指の軌跡と座標の検出点を示す説明図。
図3】第1の実施形態の座標入力装置における作動を示すフローチャート。
図4】(A)は操作の速さvと伝達関数f(v)との関係を示すグラフ、(B)は操作体の移動可能距離と伝達関数f(d)との関係を示すグラフ。
図5】第2の実施形態のタッチパッドにおける指の軌跡と座標の検出点を示す説明図。
図6】第2の実施形態の座標入力装置における作動を示すフローチャート。
図7】操作の速さvと伝達関数f(v)との関係を示すグラフ。
図8】本発明の第2の実施形態の座標入力装置の構成を示す説明図。
図9】タッチパッドの操作位置の相違と座標移動係数ACLの関係を示すグラフ。
図10】第2の実施形態の変形例である座標入力装置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図1図4を参照して、本発明の第1の実施形態である座標入力装置について説明する。第1の実施形態の座標入力装置1は、タッチパッド2と、コントローラ3とを備えており、ディスプレイ4にタッチパッド2による操作の結果が表示されるように構成されている。
【0025】
タッチパッド2は、本発明における操作検知部に相当し、例えば、自動車の運転席周りに設けられ、カーナビゲーションシステムやカーオーディオ、或いはカーエアコン等の操作を行うものに利用される。タッチパッド2の形状は、図2に示すように、中心点Pを基準点とする半径rの円となっている。タッチパッド2の外周円は、図2における左右方向をx方向、上下方向をy方向として、式「x+y=r」で表される。
【0026】
また、タッチパッド2は、その表面に静電容量センサ(図示省略)が設けられており、ユーザの指やタッチペン等の操作体が触れることにより変化する静電容量を検出し、操作体の操作を検知している。なお、このタッチパッド2は、静電容量検出式のものに限らず、圧力検出式等のものを用いてもよい。
【0027】
コントローラ3は、CPU(中央演算処理装置)、メモリ、或いはインターフェース等の電子デバイスから構成され、その機能的構成として、タッチパッド2から送信されるデータが入力される入力部5と、入力されたデータの各種処理を行う演算部6と、各種データの記憶を行う記憶部7と、各種データが出力される出力部8とを備えている。
【0028】
演算部6では、単位時間毎(例えば0.01秒毎)にタッチパッド2から送信される信号を受信し、タッチパッド2になされた操作の座標、操作継続時間、移動方向、或いは移動距離の長さ等から操作の種類を判別する。タッチパッド2になされる操作は、タップ操作(指で1回たたく操作)、ダブルタップ操作(指で2回たたく操作)、ドラッグ操作(アイコン等を移動させる操作)、スワイプ操作(軽くはらう操作)、フリック操作(アイコン等をなぞる操作)、ピンチイン操作(2本指でつまんで狭める操作)、ピンチアウト操作(2本指で広げる操作)、ホールド操作(指を保持する操作)等である。
【0029】
ディスプレイ4は、例えば、カーナビゲーションシステム用のディスプレイに利用され、カーナビゲーション情報の他、カーオーディオ、或いはカーエアコンの操作情報等が表示される。また、ディスプレイ4は、車両のフロントガラスに反射させて表示させるタイプのディスプレイでもよく、メーターパネル内に設けられるディスプレイであってもよい。
【0030】
記憶部7は、RAMやROM等の記憶媒体で構成され、入力部5から入力されるデータ、及び演算部6において演算に利用されるデータが記憶される。また、記憶部7には、本発明の座標入力装置1を作動させるためのプログラムも記憶されている。
【0031】
次に、第1の実施形態の座標入力装置1における作動について説明する。図1は、ユーザがタッチパッド2の表面をドラッグした際の指の動きと、その指の操作がディスプレイ4に表示された際の動きを示している。図1におけるV1はタッチパッド2の外周付近をドラッグしたときの入力ベクトルを示しており、V2はタッチパッド2の中心付近をドラッグしたときの入力ベクトルを示している。また、V3はタッチパッド2の外周付近をゆっくりドラッグしたときの入力ベクトルを示している。
【0032】
ディスプレイ4においては、V4がユーザによって入力ベクトルV1の操作がなされたときの表示上の動きを示しており、V5は入力ベクトルV2の操作がなされたときの表示上の動きを示している。また、V6は入力ベクトルV3の操作がなされたときの表示上の動きを示している。
【0033】
図1に示すように、第1の実施形態の座標入力装置1では、コントローラ3の演算部6によって、入力ベクトルV1でタッチパッド2の外周付近において短い距離でドラッグされた結果である出力ベクトルV4と、入力ベクトルV2でタッチパッド2の中心付近において長い距離でドラッグされた結果である出力ベクトルV5が同等の長さとなるように設定されている。
【0034】
入力ベクトルV1は、タッチパッド2の外周付近をユーザが指でドラッグしたものであるが、タッチパッド2の外周付近は中心付近に比べて指を動かせる長さが短い。図2の点T1はタッチパッド2に指がタッチした始点であり、点T3が終点となる。
【0035】
ユーザが指でタッチパッド2の始点T1にタッチすると、演算部6ではタッチパッド2から送信されるデータによって始点T1の座標と、タッチされた時刻を取得する(STEP1)。ユーザが指を終点T3の方向にドラッグすると、演算部6では単位時間毎にタッチパッド2における指の位置を取得しているので、単位時間毎に指の座標が演算部6に入力される。
【0036】
図2における点T2は、タッチパッド2に指がタッチした始点T1から単位時間後に検知された指の位置である。本実施形態では、タッチパッド2への入力操作が、この単位時間のn倍(例えば2倍)継続した場合に(STEP2においてYES)、入力操作による入力ベクトルに対して補正処理を行い、ディスプレイ4における出力ベクトルを決定する。
【0037】
図2において、タッチパッド2にユーザが指で始点T1から終点T3までドラッグ操作を行うと、このドラッグ操作は単位時間のn倍以上の操作であるため、演算部6において以下の処理が行われる。
【0038】
まず、始点T1の座標(x,y)と時刻が取得され、単位時間後の点T2における座標(x,y)が取得される。次に、演算部6において、これらの情報から指の移動速度vを算出し(STEP3)、伝達関数f(v)を演算する(STEP4)。この伝達関数f(v)は、例えば、感覚量は刺激量の対数に比例するとするウェーバー・フェヒナーの法則を利用して、人間の感覚に合うように非線形に増加させる関数を用いる(式1)。図4(A)は、この式1の関数のグラフを示しており、縦軸は増加させる倍数であり、横軸は指の速さである。
【0039】
【数1】
次に、これらの座標から指の移動方向の一次関数を求める。具体的には、始点T1から単位時間後の点T2への指の移動動作を元に指の移動軌跡を予測し、これを直線Lとして認識する。直線Lは、式「ax+by+c=0」で表される。この直線Lの式と、上記2点の座標から求められる傾きを計算し、式中の係数a,b及びcを求める(STEP5)。
【0040】
また、タッチパッド2の外周円は、式「x+y=r」で表される。ここで、直線Lを表す式とタッチパッド2の外周円を示す式を用いて、始点T1から点T2までの移動方向から求められる直線Lと、タッチパッド2の外周円との2つの交点の座標T4,T5を計算し、このT4,T5間の距離d1が求められる(STEP6)。この距離は、始点T1を通る直線Lの方向において、指がタッチパッド2上を移動可能な移動可能距離となる。
【0041】
次に、2点間の距離d1を基礎として、座標移動量を増加させる伝達関数f(d)を計算する(STEP7)。この伝達関数f(d)は、dが小さいほど、f(d)が大きくなる関数を用いる。例えば、タッチパッドの中心Pから直線Lに引いた垂線の長さpに比例する伝達関数f(p)を距離dで表す伝達関数f(d)は、図4(B)のようなグラフで表される。(尚、伝達関数f(p)は、後述する。)T4,T5間の距離d1は、タッチパッド2の直径2rよりも短いので、伝達関数f(d)は、1よりも大きな値となる。
【0042】
次に、演算部6において、入力ベクトルV1を出力ベクトルV4に変換する際の座標移動係数ACLを求める(STEP8)。この座標移動係数は、「ACL=f(d)×f(v)」で求められる。そして、入力ベクトルV1と座標移動係数ACLから、出力ベクトルV4の座標を求める(STEP9)。
【0043】
入力ベクトルV1は、始点T1(x,y)から終点T3(x,y)までの長さと方向で求められる。この入力ベクトルV1に座標移動係数ACLを乗算して出力ベクトルV4の座標を求める。このように、演算部6で求められた出力ベクトルV4の座標は、出力部8を介してディスプレイ4に送信され、ディスプレイ4上において、出力ベクトルV4の操作の軌跡が表示される。
【0044】
上記操作は、入力ベクトルV2においても同様に行われる。入力ベクトルV2では、ユーザによる操作がタッチパッド2の中心点Pを通る位置でドラッグ操作が行われる。まず、始点T6の座標(x,y)が取得され、単位時間後の点T7における座標(x,y)が取得される。次に、始点T6から単位時間後の点T7への指の移動動作を元に直線Lを算出する。次に、直線Lとタッチパッド2の外周円との2つの交点T9,T10の座標を計算し、交点間の距離d2(移動可能距離)を求める。
【0045】
次に、2点間の距離d2を基礎として、座標移動量を増加させる伝達関数f(d)を計算する。入力ベクトルV2では、この距離d2がタッチパッド2における最大の位置となっている。このため、伝達関数f(d)の出力は1となる。
【0046】
次に、2点間の指の速度vを基礎として、伝達関数f(v)を求める。その後、演算部6において、入力ベクトルV2(始点T6〜終点T8)を出力ベクトルV5に変換する際の座標移動係数ACLを求める。この座標移動係数は、「ACL=f(d)×f(v)」で求められる。そして、入力ベクトルV2と座標移動係数ACLから、出力ベクトルV5の座標を求める。
【0047】
入力ベクトルV2は、伝達関数f(d)の出力が1となっているため、座標移動係数ACLは伝達関数f(v)と同じ値になる。図1においては、伝達関数f(v)が1となる状態を示しており、座標移動係数ACLも1となる。従って、ユーザが指で入力ベクトルV2の入力を行うことにより、ディスプレイ4に入力ベクトルV2と同様の長さの出力ベクトルV5が表示される。
【0048】
一方、図1における入力ベクトルV3は、ユーザが指をゆっくり動かした際の入力ベクトルである。例えば、ユーザがタッチ操作で何らかの微調整を行う場合、指をゆっくり動かす操作となる。図2において、始点T11から終点T12まで指をゆっくり動かすと、タッチパッド2で検出される操作速度が遅くなるため、伝達関数f(v)の値が小さくなる。なお、指の動きがゆっくりか否かを決める閾値は、適用される製品に応じて決めることができる。
【0049】
よって、演算部6で求められる座標移動係数ACLの値も小さくなる。このため、入力ベクトルV3に対する出力ベクトルV6の増加倍率も小さくなるので、出力ベクトルV6は入力ベクトルV3とほぼ同等の長さとなる。
【0050】
第1の実施形態の座標入力装置1では、このように、ユーザの指の軌跡からタッチパッド2内を移動可能な移動可能距離を算出し、その移動可能距離と指の操作の速度を用いて入力ベクトルV1〜V3を出力ベクトルV4〜V6に変換する演算を行っている。
【0051】
これにより、タッチパッド2の形状がディスプレイ4とは異なる形状となる場合であっても、ユーザの操作感覚に近い結果がディスプレイ4上で得られることになる。つまり、移動可能距離が短いほど入力ベクトルに対する出力ベクトルの大きさを大きくすることで、端の近くを触った場合にも、出力ベクトルの長さを充分に大きくすることができる。
【0052】
よって、本発明によれば、ユーザに違和感を与えることなくタッチパッド2の形状を適用される機器に応じて変形させることが可能となる。タッチパッド2の形状としては、楕円形、角丸長円形等の丸みのある形状にすることもでき、菱形や五角形、その他の多角形等の角張った形状とすることも可能となる。
【0053】
次に、第2の実施形態である座標入力装置1aについて、図5図10を参照して説明する。第2の実施形態の座標入力装置1aは、ハードウエア構成は第1の実施形態と同様であり、演算部6における入力ベクトルV7,V8から出力ベクトルV9,V10を求める演算が第1の実施形態と異なっている。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成の場合、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0054】
第2の実施形態では、図5に示すように、タッチパッド2の基準点となる中心点Pからユーザの指が操作したベクトルまでの距離pを算出し、その距離pに応じて座標移動係数ACLを求める。図5の点T1はタッチパッド2に指がタッチした始点であり、点T3が終点となる。
【0055】
ユーザが指でタッチパッド2の始点T1にタッチすると、演算部6ではタッチパッド2から送信されるデータによって始点T1の座標と、タッチされた時刻を取得する(STEP11)。ユーザが指を終点T3の方向にドラッグすると、演算部6では単位時間毎にタッチパッド2における指の位置を取得しているので、単位時間毎に指の座標が演算部6に入力される。
【0056】
図5における点T2は、タッチパッド2に指がタッチした始点T1から単位時間後に検知された指の位置である。演算部6では、始点T1の座標(x,y)が取得され、単位時間後の点T2における座標(x,y)が取得される。タッチパッド2への入力操作が、この単位時間のn倍(例えば2倍)継続した場合(STEP12においてYES)、演算部6において、これらの情報から指の移動速度vを算出し(STEP13)、伝達関数f(v)を演算する(STEP14)。
【0057】
本実施形態では、伝達関数f(v)は、上記式1ではなく、図7のように傾きを徐々に増加させた1次関数を接続したものとしている。このような伝達関数f(v)によっても、人間の操作感覚に合うように増加率を決定することができる。
【0058】
次に、演算部6では、これらの座標から指の移動方向の一次関数である直線L「ax+by+c=0」の係数a,b,cを求める(STEP15)。次に、直線Lからタッチパッド2の中心点Pの座標「x,y」までの垂線pの長さを求める(STEP16)。
垂線pの長さは以下の式2で求められる。
【0059】
【数2】
演算部6では、垂線の長さpを求めた後、垂線の長さpから座標移動量を増加させる増加倍率である伝達関数f(p)を計算する(STEP17)。伝達関数f(p)は下記の式3に示される関数である。ここで、ユーザが指をタッチパッド2の中心点Pを通る直線上に始点T1をおいて、その直線上をドラッグ操作した場合、「p=0」になり、直線Lの長さは半径rの2倍、即ちタッチパッド2の直径と同じ長さになる。この状態の増加率をGMINとする。一方で、仮にユーザが指をタッチパッド2の外周円状をタッチした場合は、「p=r」となり、直線Lの長さは0になる。この状態の増加率をGMAXとする。
【0060】
【数3】
この伝達関数f(p)は、イメージ的にはタッチパッド2の中心点Pから外周に進むにつれて増加率が徐々に高くなっているイメージとなる。
【0061】
その後、演算部6において、入力ベクトルV7を出力ベクトルV9に変換する際の座標移動係数ACLを求める(STEP18)。この座標移動係数は、「ACL=f(v)×f(p)」で求められる。そして、入力ベクトルV7と座標移動係数ACLから、出力ベクトルV9の座標を求める(STEP19)。
【0062】
入力ベクトルV7は、始点T1(x,y)から終点T3(x,y)までの長さと方向で求められる。この入力ベクトルV7に座標移動係数ACLを乗算して出力ベクトルV9の座標を求める。このように、演算部6で求められた出力ベクトルV9の座標は、出力部8を介してディスプレイ4に送信され、ディスプレイ4上において、出力ベクトルV9の操作の軌跡が表示される。
【0063】
図8は、タッチパッド2における指の軌跡と、ディスプレイ4における表示の軌跡を表す図である。出力ベクトルV9がユーザによってタッチパッド2の外周付近でのタッチ操作(入力ベクトルV7)がなされたときの表示上の動きを示しており、出力ベクトルV10はタッチパッド2の中心付近でのタッチ操作(入力ベクトルV8)がなされたときの表示上の動きを示している。
【0064】
図8に示すように、第2の実施形態の座標入力装置1aにおいても、コントローラ3の演算部6によって、タッチパッド2の外周付近において短い距離でドラッグされた結果と、タッチパッド2の中心点P付近において長い距離でドラッグされた結果が同等となるように設定されている。
【0065】
ここで、座標移動係数「ACL=f(p)×f(v)」において、pを最小にしたときと、pを最大にしたときの計算結果を図9に示す。図9において、線A1はpを最大に振った際の曲線、線A2はpを最小に振った際の曲線である。
【0066】
このように、タッチパッド2の中心点P付近では、指の操作速度が上がるにつれて座標移動係数が上昇しているが、上昇の割合は小さい。一方で、タッチパッド2の外周円付近では、指の操作速度の上昇に合わせて、座標移動係数の上昇割合が増加している。
【0067】
次に、第2の実施形態の座標入力装置1aの変形例について、図10を参照して説明する。この変形例においては、演算部6において、垂線の長さpから座標移動量を増加させる増加倍率である伝達関数f(p)を計算する際の手法が、上記第2の実施形態と相違している。
【0068】
当該変形例においては、伝達関数f(p)を、式3ではなく以下の式4で求める。この式4では、図10に示すように、タッチパッド2の中心点Pから距離eまでは増加倍率を0(GMIN)として、距離eから外周円までの増加倍率を徐々に増やし、タッチパッド2の外周円の位置で最大(GMAX)となるようにしている。
【0069】
【数4】
この伝達関数f(p)によれば、ユーザがタッチパッド2の中心点P付近を指で操作する場合は、入力ベクトルに対する出力ベクトルの大きさには変化がない。一方で、ユーザがタッチパッド2の外周円付近を指で操作するときは、外周円に近づくに従って入力ベクトルに対する出力ベクトルの増加倍率が増加するので、移動可能距離が短くなってもユーザは違和感なく操作することができる。
【0070】
なお、上記実施形態においては、伝達関数その他の計算式の具体例を示しているが、本発明の座標入力装置においては、上記具体例に限定することなく、適宜好適な計算式を選択して用いることができる。また、本発明の座標入力装置は、自動車に用いる場合の他、パーソナルコンピュータ等の電子機器や、冷蔵庫、レンジ等の家電にも広く適用することができる。
【0071】
本願は、日本特許庁に2017年1月17日に出願された基礎出願2017-005865号の優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。
【符号の説明】
【0072】
1,1a…座標入力装置
2…タッチパッド(操作検知部)
3…コントローラ
4…ディスプレイ
5…入力部
6…演算部
7…記憶部
8…出力部
V1,V2,V3,V7,V8…入力ベクトル
V4,V5,V6,V9,V10…出力ベクトル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10