特許第6724281号(P6724281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6724281
(24)【登録日】2020年6月29日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】すべり軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/02 20060101AFI20200706BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20200706BHJP
   F16C 9/02 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   F16C17/02 Z
   F16C33/10 Z
   F16C9/02
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-246783(P2015-246783)
(22)【出願日】2015年12月17日
(65)【公開番号】特開2017-110763(P2017-110763A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 広樹
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−145710(JP,A)
【文献】 実開昭61−101122(JP,U)
【文献】 特開2002−188624(JP,A)
【文献】 特開2005−256966(JP,A)
【文献】 特開平3−48017(JP,A)
【文献】 特開2010−84778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 3/00− 9/06
F16C 17/00− 17/26
F16C 33/00− 33/28
F01M 1/00− 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒を軸方向と平行に二分割した半割部材を上下に配置したすべり軸受であって、
前記上側の半割部材の軸方向端部の、回転方向上流側合わせ面から回転方向下流側に離間した位置と、回転方向下流側合わせ面から回転方向上流側に離間した位置との間に、円周方向に延びる第一の細溝のみを軸方向端部の両側にそれぞれ一つずつ設け、前記第一の細溝以外の細溝が設けられていないことを特徴とするすべり軸受。
【請求項2】
前記下側の半割部材の軸方向端部の、回転方向下流側合わせ面から回転方向上流側に離間した位置と、前記下側の半割部材の最下点となる位置との間に、円周方向に延びる第二の細溝のみを軸方向端部の両側にそれぞれ一つずつ設け、前記第二の細溝以外の細溝が設けられていないことを特徴とする請求項1に記載のすべり軸受。
【請求項3】
前記第一の細溝は、前記上側の半割部材の上端部より回転方向上流側端部側に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のすべり軸受。
【請求項4】
前記第一の細溝は、前記上側の半割部材の上端部を跨いで回転方向中央部に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のすべり軸受。
【請求項5】
前記第一の細溝は、前記上側の半割部材の上端部より回転方向下流側端部側に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のすべり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すべり軸受の技術に関し、円筒を軸方向と平行に二分割した半割部材を上下に配置したすべり軸受の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンのクランクシャフト等の回転軸を軸支するすべり軸受として、上記回転軸の外周面に摺接する摺動面と、該摺動面の軸方向両端部に円周方向に沿って形成され、かつ上記摺動面よりも半径方向外方に退避した逃げ部とを有するすべり軸受が知られている(特許文献1)。
このような構成を有するすべり軸受によれば、回転軸とすべり軸受との間を流通した潤滑油は前記逃げ部の内部で乱流または渦を発生させ、これによりすべり軸受から潤滑油へと熱伝達を行い、すべり軸受を冷却するようになっている(第0025欄、図3図5図8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−532036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のすべり軸受を用いた場合、上記熱伝達による冷却効果が過剰に得られてしまうため、エンジンの始動直後などの油温が低い冷間時には、潤滑油を速やかに温めることができず、潤滑油の粘性によるクランクシャフトの回転トルクが増大し、フリクションが増大するため、燃費が悪化するという問題が発生する。
また、近年の自動車用エンジンとして、ハイブリッドエンジンやアイドリングストップを行うエンジンなどのクランクシャフトが頻繁に停止するエンジンでは、潤滑油の温度が低下しやすく、クランクシャフトを再度回転させる際に上述したような問題が発生してしまう。
【0005】
そこで、本発明は係る課題に鑑み、油膜のせん断熱を利用し、潤滑油を早期昇温させることでフリクション低減効果を得ることができるすべり軸受を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、円筒を軸方向と平行に二分割した半割部材を上下に配置したすべり軸受であって、前記上側の半割部材の軸方向端部の、回転方向上流側合わせ面から回転方向下流側に離間した位置と、回転方向下流側合わせ面から回転方向上流側に離間した位置との間に、円周方向に延びる第一の細溝のみを軸方向端部の両側にそれぞれ一つずつ設け、前記第一の細溝以外の細溝が設けられていないものである。
【0008】
また、請求項2においては、前記下側の半割部材の軸方向端部の、回転方向下流側合わせ面から回転方向上流側に離間した位置と、前記下側の半割部材の最下点となる位置との間に、円周方向に延びる第二の細溝のみを軸方向端部の両側にそれぞれ一つずつ設け、前記第二の細溝以外の細溝が設けられていないものである。
【0009】
また、請求項3においては、前記第一の細溝は、前記上側の半割部材の上端部より回転方向上流側端部側に設けたものである。
【0010】
また、請求項4においては、前記第一の細溝は、前記上側の半割部材の上端部を跨いで回転方向中央部に設けたものである。
【0011】
また、請求項5においては、前記第一の細溝は、前記上側の半割部材の上端部より回転方向下流側端部側に設けたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
すなわち、油膜のせん断熱を利用し、潤滑油を早期昇温させることでフリクション低減効果を得ることができる。また、油膜圧力の発生を妨げない程度の細溝を設けることで、摺動面積を減らしつつ、フリクション低減効果を得ることができ、かつ、トータルの流出油量を抑えることができる。また、周縁部をすべり軸受の軸との当接面よりも低くすることで吸い戻し油量を増加させつつ、周縁部の高さが低すぎてサイドフロー(軸受から外部への流出油量)が増加するのを防止することでトータルの流出油量が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るすべり軸受を示す正面図。
図2】(a)本発明の第一実施形態に係るすべり軸受を構成する上側及び下側の半割部材を示す平面図(b)同じく上側の半割部材を示す図2中のI−I線断面図(c)同じく上側の半割部材を示す図2中のII−II線断面図。
図3】(a)本発明の第二実施形態に係るすべり軸受を構成する下側の半割部材を示す平面図(b)同じく下側の半割部材を示す図3中のI−I線断面図(c)同じく下側の半割部材を示す図3中のII−II線断面図。
図4】(a)本発明の第三実施形態に係るすべり軸受を構成する上側の半割部材を示す平面図(b)同じく上側の半割部材を示す図4中のI−I線断面図(c)同じく上側の半割部材を示す図4中のII−II線断面図。
図5】(a)本発明の第四実施形態に係るすべり軸受を構成する上側の半割部材を示す平面図(b)同じく上側の半割部材を示す図5中のI−I線断面図(c)同じく上側の半割部材を示す図5中のII−II線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。なお、図1はすべり軸受1の正面図であり、図面の上下を上下方向、図面の手前方向及び奥方向を軸方向(前後方向)とする。
【0016】
まず、第一の実施形態に係るすべり軸受1を構成する半割部材2U・2Lについて図1から図2を用いて説明する。
すべり軸受1は円筒状の部材であり、図1に示すように、エンジンのクランクシャフト11のすべり軸受構造に適用される。すべり軸受1は、二つの半割部材2U・2Lで構成されている。二つの半割部材2U・2Lは、円筒を軸方向と平行に二分割した形状であり、断面が半円状となるように形成されている。本実施形態においては、半割部材2U・2Lは上下に配置されており、左右に合わせ面が配置されている。クランクシャフト11をすべり軸受1で軸支する場合、所定の隙間が形成され、この隙間に対し図示せぬ油路から潤滑油が供給される。
【0017】
図2(a)においては、上側の半割部材2U及び下側の半割部材2Lを示している。なお、本実施形態においては、クランクシャフト11の回転方向を図1の矢印に示すように正面視時計回り方向とする。また、軸受角度ωは、図2(b)における右端の位置を0度とし、図2(b)において、反時計回り方向を正とする。すなわち、図2(b)において、左端の位置の軸受角度ωが180度となり、下端の位置の軸受角度ωが270度となるように定義する。
【0018】
次に、上側の半割部材2Uについて図2を用いて説明する。
図2(a)に示すように、上側の半割部材2Uの内周には円周方向に溝12が設けられており、中心に円形の孔12aが設けられている。また、上側の半割部材2Uの左右に合わせ面が配置されている。
【0019】
上側の半割部材2Uの内周の当接面において、その軸方向の端部に第一の細溝3が形成されている。
第一の細溝3は上側の半割部材2Uに設けられる。本実施形態においては、第一の細溝3は軸方向に並列して二本設けられている。詳細には、第一の細溝3は、クランクシャフト11の回転方向上流側端部3a(軸受角度ωがω0)から軸受角度ωが負となる方向(時計回り方向)に向けて円周方向に設けられる。なお、上側の半割部材2Uにおいては、図2(b)の右側の合わせ面が回転方向下流側合わせ面、図2(b)の左側の合わせ面が回転方向上流側合わせ面となる。
【0020】
第一の細溝3の回転方向上流側端部3aは、クランクシャフト11の回転方向上流側合わせ面に近接しており、回転方向上流側端部3aと回転方向上流側合わせ面とは連通することなく設けられている。
第一の細溝3の回転方向下流側端部3bは、軸受角度ωがω1となる位置に設けられている。
第一の細溝3の長さlは、回転方向上流側端部3aから回転方向下流側端部3bまでの長さに形成したものである。
第一の細溝3の軸方向の幅は、図2(c)に示すように、wとなるように形成されている。
また、第一の細溝3の底面からすべり軸受1のクランクシャフト11との当接面までの高さdは、上側の半割部材2Uの外周面から当接面までの高さDよりも短くなるように形成されている。
【0021】
また、第一の細溝3の軸方向外側面を形成する周縁部2aは、第一の細溝3の底面からの高さhが、第一の細溝3の底面からすべり軸受のクランクシャフト11との当接面までの高さdよりも低くなるように形成したよりも低くなるように形成されている。すなわち、軸方向外側の周縁部2aが周囲のクランクシャフト11との当接面よりも一段低くなるように形成されている。
【0022】
周縁部2aが周囲のクランクシャフト11との当接面よりも一段低くなるように形成されていることにより、クランクシャフト11が傾いて軸方向片側端部にのみ接触する状態(片当りする状態)となったときに、周縁部2aとクランクシャフト11との接触機会を減らすことができるため、周縁部2aの損傷を防止することができる。また、周縁部2aの一段低くなった部分の長さは、第一の細溝3の長さlよりも短くなるように形成されている。
【0023】
また、周縁部2aが周囲の当接面よりも一段低くなるように形成されていることにより、すべり軸受1の軸方向端部における隙間が広がり、吸い戻し油量が増えてトータルの流出油量が低減される。
【0024】
以上のように、すべり軸受1は、円筒を軸方向と平行に二分割した半割部材2U・2Lを上下に配置したすべり軸受であって、上側の半割部材2Uの軸方向端部に円周方向に第一の細溝3を設けたものである。
このように構成することにより、上側の半割部材2Uに第一の細溝3を設けることで、油膜のせん断熱を利用し、潤滑油を早期昇温させることでフリクション低減効果を得ることができる。油膜のせん断熱は、主に第一の細溝3内で発生する。例えば冷間始動時においてフリクション低減効果を得ることができ、トータルの流出油量を抑えることができる。
【0025】
また、第一の細溝3は、上側の半割部材2Uの回転方向上流側端部に設けたものである。
このように構成することにより、上側の半割部材2Uの下流側における油膜圧力を確保しつつ、フリクション低減効果を得ることができ、トータルの流出油量を抑えることができる。
【0026】
次に、第二の実施形態に係る下側の半割部材2Lについて図3を用いて説明する。なお下側の半割部材2L以外の構成は第一の実施形態に係る構成と同様であるので説明を省略する。
図3(a)に示すように、下側の半割部材2Lの内周の当接面において、その軸方向の端部に第二の細溝13が形成されている。
第二の細溝13は下側の半割部材2Lに設けられる。本実施形態においては、第二の細溝13は軸方向に並列して二本設けられている。詳細には、第二の細溝13は、クランクシャフト11の回転方向下流側端部13a(軸受角度ωがω2)から軸受角度ωが正となる方向(反時計回り方向)に向けて円周方向に設けられる。なお、下側の半割部材2Lにおいては、図3(b)の右側の合わせ面が回転方向上流側合わせ面、図3(b)の左側の合わせ面が回転方向下流側合わせ面となる。
【0027】
第二の細溝13の回転方向下流側端部13aは、クランクシャフト11の回転方向下流側合わせ面に近接しており、回転方向下流側端部13aと回転方向下流側合わせ面とは連通することなく設けられている。
第二の細溝13の回転方向下流側端部13bは、軸受角度ωがω3となる位置に設けられている。
第二の細溝13の長さlは、回転方向下流側端部13aから回転方向上流側端部13bまでの長さに形成したものである。
第二の細溝13の軸方向の幅は、図3(c)に示すように、wとなるように形成されている。
また、第二の細溝13の底面からすべり軸受1のクランクシャフト11との当接面までの高さdは、下側の半割部材2Lの外周面から当接面までの高さDよりも短くなるように形成されている。
【0028】
また、第二の細溝13の軸方向外側面を形成する周縁部2bは、第二の細溝13の底面からの高さhが、第二の細溝13の底面からすべり軸受1のクランクシャフト11との当接面までの高さdよりも低くなるように形成したよりも低くなるように形成されている。すなわち、軸方向外側の周縁部2bが周囲のクランクシャフト11との当接面よりも一段低くなるように形成されている。
【0029】
周縁部2bが周囲のクランクシャフト11との当接面よりも一段低くなるように形成されていることにより、クランクシャフト11が傾いて軸方向片側端部にのみ接触する状態(片当りする状態)となったときに、周縁部2bとクランクシャフト11との接触機会を減らすことができるため、周縁部2bの損傷を防止することができる。また、周縁部2bの一段低くなった部分の長さは、第二の細溝13の長さlよりも短くなるように形成されている。
【0030】
また、周縁部2bが周囲の当接面よりも一段低くなるように形成されていることにより、すべり軸受1の軸方向端部における隙間が広がり、吸い戻し油量が増えてトータルの流出油量が低減される。
【0031】
以上のように、すべり軸受1は、円筒を軸方向と平行に二分割した半割部材2U・2Lを上下に配置したすべり軸受であって、上側の半割部材2Uの軸方向端部に円周方向に第一の細溝3を設け、下側の半割部材2Lの軸方向端部に円周方向に第二の細溝13を設けたものである。
このように構成することにより、油膜のせん断熱を利用し、潤滑油を早期昇温させることでフリクション低減効果を得ることができる。油膜のせん断熱は、主に第一の細溝3及び第二の細溝13内で発生する。上側の半割部材2Uに第一の細溝3を設けるとともに、下側の半割部材2Lの軸方向端部に円周方向に第二の細溝13を設けたことで、例えば冷間始動時においてフリクション低減効果を更に得ることができ、トータルの流出油量を抑えることができる。
【0032】
次に、第三の実施形態に係る上側の半割部材2Uについて図4を用いて説明する。なお下側の半割部材2L以外の構成は第一の実施形態または第二の実施形態に係る構成と同様であるので説明を省略する。
図4(a)に示すように、上側の半割部材2Uの内周には円周方向に溝12が設けられており、中心に円形の孔12aが設けられている。また、上側の半割部材2Uの左右に合わせ面が配置されている。
【0033】
上側の半割部材2Uの内周の当接面において、その軸方向の端部に第一の細溝3が形成されている。
第一の細溝3は上側の半割部材2Uに設けられる。本実施形態においては、第一の細溝3は軸方向に並列して二本設けられている。詳細には、第一の細溝3は、クランクシャフト11の回転方向上流側端部3a(軸受角度ωがω4)から軸受角度ωが負となる方向(時計回り方向)に向けて円周方向に設けられる。なお、上側の半割部材2Uにおいては、図4(b)の右側の合わせ面が回転方向下流側合わせ面、図4(b)の左側の合わせ面が回転方向上流側合わせ面となる。
【0034】
第一の細溝3の回転方向上流側端部3aは、上側の半割部材2Uの中央部(軸受角度ωが90°)よりも上流側(軸受角度ωがω4)となる位置に設けられている。
第一の細溝3の回転方向下流側端部3bは、上側の半割部材2Uの中央部(軸受角度ωが90°)よりも下流側(軸受角度ωがω5)となる位置に設けられている。
第一の細溝3の長さlは、回転方向上流側端部3aから回転方向下流側端部3bまでの長さに形成したものである。
第一の細溝3の軸方向の幅は、図4(c)に示すように、wとなるように形成されている。
また、第一の細溝3の底面からすべり軸受1のクランクシャフト11との当接面までの高さdは、上側の半割部材2Uの外周面から当接面までの高さDよりも短くなるように形成されている。
【0035】
また、第一の細溝3の軸方向外側面を形成する周縁部2aは、第一の細溝3の底面からの高さhが、第一の細溝3の底面からすべり軸受1のクランクシャフト11との当接面までの高さdよりも低くなるように形成したよりも低くなるように形成されている。すなわち、軸方向外側の周縁部2aが周囲のクランクシャフト11との当接面よりも一段低くなるように形成されている。
【0036】
周縁部2aが周囲のクランクシャフト11との当接面よりも一段低くなるように形成されていることにより、クランクシャフト11が傾いて軸方向片側端部にのみ接触する状態(片当りする状態)となったときに、周縁部2aとクランクシャフト11との接触機会を減らすことができるため、周縁部2aの損傷を防止することができる。また、周縁部2bの一段低くなった部分の長さは、第一の細溝3の長さlよりも短くなるように形成されている。
【0037】
また、周縁部2aが周囲の当接面よりも一段低くなるように形成されていることにより、すべり軸受1の軸方向端部における隙間が広がり、吸い戻し油量が増えてトータルの流出油量が低減される。
【0038】
以上のように、第三の実施形態に係る第一の細溝3は、上側の半割部材2Uの回転方向中央部に設けたものである。
このように構成することにより、油膜のせん断熱を利用し、潤滑油を早期昇温させることでフリクション低減効果を得ることができる。油膜のせん断熱は、主に第一の細溝3内で発生する。上側の半割部材2Uの上流側及び下流側における油膜圧力を確保しつつ、フリクション低減効果を得ることができ、トータルの流出油量を抑えることができる。
【0039】
なお、第三の実施形態において、下側の半割部材2Lの構成は特に限定するものではなく、例えば第一の実施形態に係る細溝の無い下側の半割部材2Lの構成としても良いし、第二の実施形態に係る第二の細溝13を有する下側の半割部材2Lの構成としても良い。
【0040】
次に、第四の実施形態に係る上側の半割部材2Uについて図5を用いて説明する。なお下側の半割部材2L以外の構成は第一の実施形態または第二の実施形態に係る構成と同様であるので説明を省略する。
図5(a)に示すように、上側の半割部材2Uの内周には円周方向に溝12が設けられており、中心に円形の孔12aが設けられている。また、上側の半割部材2Uの左右に合わせ面が配置されている。
【0041】
上側の半割部材2Uの内周の当接面において、その軸方向の端部に第一の細溝3が形成されている。
第一の細溝3は上側の半割部材2Uに設けられる。本実施形態においては、第一の細溝3は軸方向に並列して二本設けられている。詳細には、第一の細溝3は、クランクシャフト11の回転方向上流側端部3a(軸受角度ωがω6)から軸受角度ωが負となる方向(時計回り方向)に向けて円周方向に設けられる。なお、上側の半割部材2Uにおいては、図5(b)の右側の合わせ面が回転方向下流側合わせ面、図5(b)の左側の合わせ面が回転方向上流側合わせ面となる。
【0042】
第一の細溝3の回転方向上流側端部3aは、軸受角度ωがω6となる位置に設けられている。
第一の細溝3の回転方向下流側端部3bは、軸受角度ωがω7となる位置に設けられており、クランクシャフト11の回転方向下流側合わせ面に近接しており、回転方向下流側端部3bと回転方向下流側合わせ面とは連通することなく設けられている。
第一の細溝3の長さlは、回転方向上流側端部3aから回転方向下流側端部3bまでの長さに形成したものである。
第一の細溝3の軸方向の幅は、図5(c)に示すように、wとなるように形成されている。
また、第一の細溝3の底面からすべり軸受1のクランクシャフト11との当接面までの高さdは、上側の半割部材2Uの外周面から当接面までの高さDよりも短くなるように形成されている。
【0043】
また、第一の細溝3の軸方向外側面を形成する周縁部2aは、第一の細溝3の底面からの高さhが、第一の細溝3の底面からすべり軸受1のクランクシャフト11との当接面までの高さdよりも低くなるように形成したよりも低くなるように形成されている。すなわち、軸方向外側の周縁部2aが周囲のクランクシャフト11との当接面よりも一段低くなるように形成されている。
【0044】
周縁部2aが周囲のクランクシャフト11との当接面よりも一段低くなるように形成されていることにより、クランクシャフト11が傾いて軸方向片側端部にのみ接触する状態(片当りする状態)となったときに、周縁部2aとクランクシャフト11との接触機会を減らすことができるため、周縁部2aの損傷を防止することができる。また、周縁部2aの一段低くなった部分の長さは、第一の細溝3の長さlよりも短くなるように形成されている。
【0045】
また、周縁部2aが周囲の当接面よりも一段低くなるように形成されていることにより、すべり軸受1の軸方向端部における隙間が広がり、吸い戻し油量が増えてトータルの流出油量が低減される。
【0046】
以上のように、第四の実施形態に第一の細溝3は、上側の半割部材2Uの回転方向下流側端部に設けたものである。
このように構成することにより、油膜のせん断熱を利用し、潤滑油を早期昇温させることでフリクション低減効果を得ることができる。油膜のせん断熱は、主に第一の細溝3内で発生する。上側の半割部材2Uの上流側における油膜圧力を確保しつつ、フリクション低減効果を得ることができ、トータルの流出油量を抑えることができる。
【0047】
なお、第四の実施形態において、下側の半割部材2Lの構成は特に限定するものではなく、例えば第一の実施形態に係る細溝の無い下側の半割部材2Lの構成としても良いし、第二の実施形態に係る第二の細溝13を有する下側の半割部材2Lの構成としても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 すべり軸受
2U 上側の半割部材
2L 下側の半割部材
2a 周縁部
2b 周縁部
3 第一の細溝
11 クランクシャフト(軸)
13 第二の細溝
図1
図2
図3
図4
図5