(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる厚さ0.56mm以上の成形品であって、大気下、150℃にて1000時間熱処理した後、フーリエ変換赤外分光分析によって得られる成形品表面におけるカルボキシル基のピーク強度Yと、成形品表面から0.28mmの深さにおけるカルボキシル基のピーク強度Zとの比(Y/Z)が5.0以下であって、
前記ポリアミド樹脂組成物が、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(B)水酸基および/またはアミノ基と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基とを有し、1分子中の水酸基およびアミノ基の数の和が、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多い化合物を0.1〜20重量部を配合してなり、前記(B)化合物が、(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物と、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物との反応物であり、水酸基またはアミノ基と、エポキシ基またはカルボジイミド基との反応率が10〜90%であり、かつ、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量が800以上10000以下である成形品。
大気下、150℃にて1000時間熱処理した際、フーリエ変換赤外分光分析によって得られる成形品表面におけるポリアミド樹脂組成物中の(B)化合物の濃度Vと、成形品表面から0.28mmの深さにおけるポリアミド樹脂組成物中の(B)化合物の濃度Wとの比(V/W)が1.2〜5.0である請求項1記載の成形品。
(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(B)水酸基および/またはアミノ基と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基とを有し、1分子中の水酸基およびアミノ基の数の和が、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多い化合物0.1〜20重量部を配合してなり、前記(B)化合物が、(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物と、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物との反応物であり、水酸基またはアミノ基と、エポキシ基またはカルボジイミド基との反応率が10〜90%であり、かつ、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量が800以上10000以下であるポリアミド樹脂組成物であって、ポリアミド樹脂組成物を射出成形して得られる厚さ6.4mmの棒状試験片を、大気下、150℃にて1000時間熱処理した後、フーリエ変換赤外分光分析によって得られる棒状試験片表面におけるカルボキシル基のピーク強度Yと、棒状試験片表面から0.28mmの深さにおけるカルボキシル基のピーク強度Zとの比(Y/Z)が5.0以下となるポリアミド樹脂組成物。
前記棒状試験片を大気下、150℃にて1000時間熱処理した際、フーリエ変換赤外分光分析によって得られる棒状試験片表面におけるポリアミド樹脂組成物中の(B)化合物の濃度Vと、棒状試験片表面から0.28mmの深さにおけるポリアミド樹脂組成物中の(B)化合物の濃度Wとの比(V/W)が1.2〜5.0となる請求項5記載のポリアミド樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の実施形態の成形品は、ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる厚さ0.56mm以上の成形品であって、大気下、150℃にて1000時間熱処理した後、フーリエ変換赤外分光分析によって得られる成形品表面におけるカルボキシル基のピーク強度Yと、成形品表面から0.28mmの深さにおけるカルボキシル基のピーク強度Zとの比(Y/Z)(以下、「カルボキシル基のピーク強度比」と記載する場合がある)が5.0以下であることを特徴とする。ここで、150℃にて1000時間熱処理した後のカルボキシル基のピーク強度は、後述するとおり、ポリアミド樹脂の酸化劣化による脆化の程度を表す指標である。一般的に、ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形品を大気圧下で加熱すると、ポリアミド樹脂の酸化劣化によりカルボキシル基のピーク強度比が変化するが、加熱時間がある程度経過するとカルボキシル基のピーク強度比はほぼ一定となる。また、本発明者らの検討により、熱処理温度150℃、熱処理時間1000時間の条件下におけるカルボキシル基のピーク強度比が5.0以下である成形品が、耐熱老化性、耐塩化カルシウム性および表面外観に優れることを実験的に確認している。そこで、本発明の実施形態においては、カルボキシル基のピーク強度比が一定となる条件として、150℃にて1000時間の熱処理条件を選択した。また、ポリアミド樹脂の酸化劣化は成形品表層において生じやすく、成形品内部においては、カルボキシル基のピーク強度はほぼ一定となる。そこで、本発明の実施形態においては、カルボキシル基のピーク強度が一定である成形品内部として、成形品表面から0.28mmの深さを選択し、その深さにおけるカルボキシル基のピーク強度を基準とする。このため、本発明の実施形態の成形品の厚さは、0.56mm以上である。
【0015】
厚さ0.56mm以上の成形品を、大気下、150℃にて1000時間熱処理した後、カルボキシル基のピーク強度比が5.0以下となる場合、かかる成形品は、耐熱老化性、耐塩化カルシウム性および表面外観に優れる。この原因は定かではないが、耐熱老化性の低下は、ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形品が大気下で熱を加えられることにより、酸素に接する成形品表面のポリアミド樹脂が酸化劣化し、低分子量化して脆化することに起因すると考えられる。成形品表面が脆化することによりクラックの発生が促進され、耐塩化カルシウム性も低下すると考えられる。また、成形品表面の脆化によるクラックの発生や繊維状充填材の浮き等の表面外観不良も生じる。このとき、成形品表面においては、ポリアミド樹脂の低分子量化に伴い、カルボキシル基が増加する。一方、成形品表面から0.28mm以上の深さにおいては、酸素に接しておらず酸化劣化を生じにくいため、ポリアミド樹脂の低分子量化は生じにくく、カルボキシル基の増加も生じにくい。本発明の実施形態において、カルボキシル基のピーク強度比が5.0以下であることは、成形品表面におけるポリアミド樹脂の酸化劣化が少ないことを示しており、低分子量化による脆化を抑制することができ、耐熱老化性、耐塩化カルシウム性および表面外観に優れる。カルボキシル基のピーク強度比が5.0より大きい場合、成形品表面における低分子量化による脆化のため、耐熱老化性、耐塩化カルシウム性および表面外観が低下する。カルボキシル基のピーク強度比は4.3以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましく、1.0に近いほど好ましい。
【0016】
成形品表面におけるカルボキシル基のピーク強度は、大気下、150℃にて1000時間熱処理した成形品表面に対して、フーリエ変換赤外分光光度計のマクロ赤外減衰全反射法(マクロ赤外ATR法)を用いて測定することにより求めることができる。得られたFT−IRスペクトルにおけるカルボキシル基のC=O伸縮振動のピーク強度を求め、それをアミド結合のC=O伸縮振動のピーク強度で規格化した値を、成形品表面におけるカルボキシル基のピーク強度とする。
【0017】
成形品表面から0.28mmの深さにおけるカルボキシル基のピーク強度は、大気下、150℃にて1000時間熱処理した成形品の断面に対して、フーリエ変換赤外分光光度計の顕微赤外ATR法を用いて測定することにより求めることができる。得られたFT−IRスペクトルにおけるカルボキシル基のC=O伸縮振動のピーク強度を求め、それをアミド結合のC=O伸縮振動のピーク強度で規格化した値を、成形品表面から0.28mmの深さにおけるカルボキシル基のピーク強度とする。
【0018】
一例として、実施例3により得られた厚さ6.4mmの成形品を大気下、150℃にて1000時間熱処理した後の成形品表面のFT−IRスペクトルを
図1に示す。また、成形品断面の深さ方向のFT−IRスペクトルを
図2に示す。
図1および
図2のスペクトルより、1720cm
−1付近のカルボキシル基のC=O伸縮振動のピーク強度を、1632cm
−1付近のアミド結合のC=O伸縮振動のピーク強度で規格化した値を求める。成形品表面からの距離に対して規格化したピーク強度をプロットしたものを
図3に示す。
図3より、成形品表面におけるピーク強度を、成形品表面から0.28mmの深さにおけるピーク強度で割ることにより、カルボキシル基のピーク強度比を算出することができる。
【0019】
カルボキシル基のピーク強度比が5.0以下である成形品は、例えば、後述するポリアミド樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
【0020】
本発明の実施形態の成形品が後述する(B)水酸基および/またはアミノ基と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基とを有し、1分子中の水酸基およびアミノ基の数の和が、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多い化合物(以下、「(B)化合物」と記載する場合がある)を配合してなるポリアミド樹脂組成物を成形して得られるものである場合、かかる成形品を大気下、150℃にて1000時間処理した際、フーリエ変換赤外分光分析によって得られる成形品表面におけるポリアミド樹脂組成物中の(B)化合物の濃度Vと、成形品表面から0.28mmの深さにおけるポリアミド樹脂組成物中の(B)化合物の濃度Wとの比(V/W)(以下、「(B)化合物の濃度比」と記載する場合がある)は1.2〜5.0であることが好ましい。ここで、150℃にて1000時間熱処理した後の(B)化合物の濃度比は、後述するとおり、ポリアミド樹脂の酸化劣化による脆化を抑制する(B)化合物の、酸素による影響を受けやすい成形品表面への集中の程度を表す指標である。一般的に、かかる成形品を大気圧下で加熱すると、ポリアミド樹脂の酸化劣化によりカルボキシル基のピーク強度比が変化するとともに、(B)化合物の濃度比も変化する傾向にあるが、加熱時間がある程度経過すると(B)化合物の濃度比はほぼ一定となる。そこで、本発明の実施形態においては、(B)化合物の濃度比が一定となる条件として、150℃にて1000時間の熱処理条件を選択した。また、ポリアミド樹脂の酸化劣化は成形品表層において生じやすく、(B)化合物は成形品表面に移動しやすい傾向にあるが、成形品内部においては、(B)化合物の濃度はほぼ一定となる。そこで、本発明の実施形態においては、(B)化合物の成形品表面への移動の影響を受けにくい成形品内部として、成形品表面から0.28mmの深さを選択し、その深さにおける(B)化合物の濃度を基準とする。
【0021】
(B)化合物の濃度比が1.2以上の場合、(A)ポリアミド樹脂の酸化劣化を生じやすい成形品表面に高濃度で(B)化合物を分布させることができるため、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物の反応により、(A)ポリアミド樹脂の低分子量化を効果的に抑制することができ、耐熱老化性がより向上する。さらに、分岐構造を有する(B)化合物と(A)ポリアミド樹脂が反応することにより、成形品表面に架橋層を形成するため、クラックの発生をより抑制することができ、耐塩化カルシウム性がより向上する。(B)化合物の濃度比は1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。一方、(B)化合物の濃度比が5.0以下の場合、成形品表面に過剰に(B)化合物を分布させることを抑制することができ、(B)化合物によるポリアミド樹脂の分解が抑制される。その結果、耐熱老化性がより向上する。また、成形品表面に適度に架橋層を形成することができ、耐塩化カルシウム性がより向上する。また成形品表面への(B)化合物のブリードアウトを抑制でき、表面外観がより向上する。(B)化合物の濃度比は4.5以下が好ましく、4.0以下がより好ましい。
【0022】
成形品表面におけるポリアミド樹脂組成物中の(B)化合物の濃度Vは、大気下、150℃にて1000時間熱処理した成形品表面に対して、フーリエ変換赤外分光光度計のマクロ赤外ATR法を用いて測定することにより求めることができる。得られたFT−IRスペクトルにおける(B)化合物由来のピーク強度を求め、それをアミド結合のC=O伸縮振動のピーク強度で規格化した値を、成形品表面の(B)化合物の濃度Vとする。
【0023】
成形品表面から0.28mmの深さにおけるポリアミド樹脂組成物中の(B)化合物の濃度Wの測定は、大気下、150℃にて1000時間熱処理した成形品の断面に対して、フーリエ変換赤外分光光度計の顕微赤外ATR法を用いて測定することにより求めることができる。得られたFT−IRスペクトルにおける(B)化合物由来のピーク強度を求め、それをアミド結合のC=O伸縮振動のピーク強度で規格化した値を、成形品表面から0.28mmの深さの(B)化合物の濃度Wとする。
【0024】
一例として、実施例3により得られた厚さ6.4mmの成形品を大気下、150℃にて1000時間熱処理した後の成形品表面のFT−IRスペクトルを
図1に示す。また、成形品断面の深さ方向のFT−IRスペクトルを
図2に示す。
図1および
図2のスペクトルより、1005cm
−1付近の(B)化合物の脂肪族エーテル基のC−O伸縮振動のピーク強度を、1632cm
−1付近のアミド結合のC=O伸縮振動のピーク強度で規格化した値を求める。成形品表面からの距離に対して規格化したピーク強度をプロットしたものを
図4に示す。
図4より、成形品表面のピーク強度を、成形品表面から0.28mmの深さのピーク強度で割ることにより、(B)化合物の濃度比を算出することができる。
【0025】
(B)化合物の濃度比が1.2〜5.0である成形品は、例えば、後述するポリアミド樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
【0026】
本発明の実施形態の厚さ0.56mm以上の成形品を、大気下、130℃にて100時間熱処理した際、成形品表面から0.2mmまでの深さのポリアミド樹脂組成物中のカルボキシル基濃度の増加が4×10
−5mol/g以下であることが好ましい。一般的に、ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形品を大気圧下で加熱すると、ポリアミド樹脂の酸化劣化によりカルボキシル基濃度が増加する傾向にある。また、ポリアミド樹脂の酸化劣化は成形品表層において生じやすく、成形品内部においては、カルボキシル基濃度はほぼ一定となる。そこで、本発明の実施形態においては、ポリアミド樹脂の酸化劣化のしやすさの程度を表す指標として、130℃にて100時間の熱処理条件と、ポリアミド樹脂の酸化劣化が生じやすい成形品表面から0.2mmまでの深さを選択し、かかる範囲におけるカルボキシル基の濃度変化に着目する。
【0027】
130℃にて100時間熱処理した際のカルボキシル基濃度の増加が4×10
−5mol/g以下となる場合、成形品の耐熱老化性および耐塩化カルシウム性がより向上する。この原因は定かではないが、耐熱老化性の低下は、ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形品が大気下で熱を加えられることにより、酸素に接する成形品表面の(A)ポリアミド樹脂が酸化劣化し、低分子量化して脆化することに起因すると考えられる。しかし、ポリアミド樹脂組成物中のカルボキシル末端基濃度の熱処理後の増加が抑制されれば、(A)ポリアミド樹脂の低分子量化をより抑制することができ、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性がより向上する。ポリアミド樹脂組成物が(B)化合物を含有する場合、(A)ポリアミド樹脂が低分子量化する際に増加する(A)ポリアミド樹脂のカルボキシル末端基と、(B)化合物が反応することにより、カルボキシル末端基濃度の熱処理後の増加をより抑制することができる。130℃にて100時間熱処理した際のカルボキシル基濃度の増加は1.4×10
−5mol/g以下がより好ましく、0.5×10
−5mol/g以下がさらに好ましい。
【0028】
ポリアミド樹脂組成物のカルボキシル末端基濃度は、大気下、130℃にて100時間熱処理した成形品の、表面から0.2mmまでの深さのポリアミド樹脂組成物をフライス加工機を用いて切削し、それを中和滴定法などの公知の方法で測定することができる。
【0029】
次に、本発明の実施形態の成形品に用いられるポリアミド樹脂組成物および本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物について説明する。本発明の実施形態の成形品に用いられるポリアミド樹脂組成物および本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、少なくとも、(A)ポリアミド樹脂と、(B)水酸基および/またはアミノ基と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基とを有し、1分子中の水酸基およびアミノ基の数の和が、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多い化合物((B)化合物)を配合してなることが好ましい。以下、各成分について説明する。
【0030】
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(A)ポリアミド樹脂は、そのカルボキシル末端基が、後述する(B)化合物中の水酸基および/またはアミノ基と脱水縮合反応すると考えられる。さらに、本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(A)ポリアミド樹脂のアミノ末端基とカルボキシル末端基は、(B)化合物中の水酸基および/またはアミノ基、エポキシ基および/またはカルボジイミド基と反応すると考えられる。このため、(A)ポリアミド樹脂は、(B)化合物との相溶性に優れると考えられる。
【0031】
本発明の実施形態で用いられる(A)ポリアミド樹脂とは、(i)アミノ酸、(ii)ラクタムあるいは(iii)ジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするポリアミドである。(A)ポリアミド樹脂の原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。本発明の実施形態において、(A)ポリアミド樹脂の原料として、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはポリアミドコポリマーを2種以上配合してもよい。
【0032】
ポリアミド樹脂の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリウンデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/11)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシリレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド/ポリデカメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン5T/10T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)などが挙げられる。また、ポリアミド樹脂の具体例としては、これらの混合物や共重合体なども挙げられる。ここで、「/」は共重合体を示す。以下、同様とする。
【0033】
とりわけ好ましいポリアミド樹脂は、240℃〜330℃の融点を有するポリアミド樹脂である。240℃〜330℃の融点を有するポリアミド樹脂は、耐熱性や強度に優れている。240℃以上の融点を有するポリアミド樹脂は、高温条件下において、樹脂圧力の高い状態で溶融混練することができ、後述する(B)化合物との反応性を高めることができる。このため、ポリアミド樹脂組成物中における(B)化合物の分散性をより高め、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。ポリアミド樹脂の融点は、250℃以上がより好ましい。一方、330℃以下の融点を有するポリアミド樹脂を用いることにより、溶融混練温度を適度に抑え、ポリアミド樹脂の分解を抑制することができる。このため、耐熱老化性をより向上させることができる。ここで、本発明の実施形態におけるポリアミド樹脂の融点は、示差走査熱量計を用いて、不活性ガス雰囲気下、ポリアミド樹脂を、溶融状態から20℃/分の降温速度で30℃まで降温した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度と定義する。ただし、吸熱ピークが2つ以上検出される場合には、ピーク強度の最も大きい吸熱ピークの温度を融点とする。
【0034】
240℃〜330℃の融点を有するポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン410、ナイロン56、ナイロン6T/66、ナイロン6T/6I、ナイロン6T/12、ナイロン6T/5T、ナイロン6T/M5T、ナイロン6T/6などのヘキサメチレテレフタルアミド単位を有する共重合体や、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ナイロン5T/10T、ナイロン9T、ナイロン10T、ナイロン12Tなどを挙げることができる。
【0035】
これらのポリアミド樹脂を、耐熱老化性、耐塩化カルシウム性および表面外観などの必要特性に応じて2種以上配合することも実用上好適である。240℃〜330℃の融点を有するポリアミド樹脂に、ナイロン6、ナイロン11および/またはナイロン12を配合することが好ましく、成形品の耐熱老化性をより向上させることができる。この場合、ナイロン6、ナイロン11およびナイロン12の合計配合量は、240℃〜330℃の融点を有するポリアミド樹脂100重量部に対し、5〜55重量部であることが好ましい。
【0036】
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がないが、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度(ηr)が1.5〜5.0の範囲であることが好ましい。相対粘度が1.5以上であれば、得られる成形品の機械強度、耐熱老化性をより向上させることができる。相対粘度は、2.0以上がより好ましい。一方、相対粘度が5.0以下であれば、成形性を向上させることができる。
【0037】
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(B)水酸基および/またはアミノ基と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基とを有し、1分子中の水酸基およびアミノ基の数の和が、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多い化合物を含有する。水酸基および/またはアミノ基含有化合物は、流動性等の成形加工性や150〜230℃における耐熱老化性に向上効果があるが、(A)ポリアミド樹脂との相溶性が低いためか、150℃未満および240℃以上での耐熱老化性が不十分であるという課題がある。また、水酸基および/またはアミノ基含有化合物は、成形品表層にブリードアウトし表面外観が低下する課題があり、水酸基および/またはアミノ基含有化合物の水酸基および/またはアミノ基が(A)ポリアミド樹脂のアミド結合の加水分解を促進させ、耐塩化カルシウム性に劣る課題もある。さらに、水酸基および/またはアミノ基含有化合物が(A)ポリアミド樹脂を可塑化させ、得られる成形品の機械強度が低下する課題もある。これに対して、本発明の実施形態において、(B)化合物は、その水酸基および/またはアミノ基が(A)ポリアミド樹脂のカルボキシル末端基と脱水縮合反応すると考えられることや、水酸基、アミノ基、エポキシ基および/またはカルボジイミド基が(A)ポリアミド樹脂のアミノ末端基やカルボキシル末端基と反応すると考えられることから、(A)ポリアミド樹脂との相溶性に優れ、ポリアミド樹脂組成物中において微細な分散相を形成し、150℃未満および240℃以上における耐熱老化性を向上させることができる。また、(B)化合物の成形品表層へのブリードアウトを抑制し、表面外観を向上させることができる。さらに、エポキシ基およびカルボジイミド基は、水酸基およびアミノ基と比較して、(A)ポリアミド樹脂の末端基との反応性に優れるため、(B)化合物1分子中の水酸基およびアミノ基の数の和を、エポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多くすることにより、適度に架橋構造を形成してアミド結合の加水分解による重合度低下を抑制し、かつ過剰な架橋構造の形成による脆化を抑制し、耐塩化カルシウム性を向上させることができるものと考えられる。水酸基と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基とを有する化合物がより好ましい。
【0038】
本発明の実施形態において、(B)化合物としては、例えば、後述する(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物と(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物との反応物が挙げられる。(B)化合物は、低分子化合物であってもよいし、重合体であってもよいし、縮合物であってもよい。(B)化合物の構造は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により特定することができる。
【0039】
本発明の実施形態において、(B)化合物の分岐度は、特に制限はないが、0.05〜0.70であることが好ましい。分岐度は、化合物中の分岐の程度を表す数値であり、直鎖状の化合物が分岐度0であり、完全に分岐したデンドリマーが分岐度1である。この値が大きいほど、ポリアミド樹脂組成物中に架橋構造を導入でき、成形品の機械特性を向上させることができる。分岐度を0.05以上とすることにより、ポリアミド樹脂組成物中の架橋構造が十分に形成され、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。分岐度は、0.10以上がより好ましい。一方、分岐度を0.70以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物中の架橋構造を適度に抑え、ポリアミド樹脂組成物中における(B)化合物の分散性をより高め、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。分岐度は、0.35以下がより好ましい。なお、分岐度は、下記式(2)により定義される。
分岐度=(D+T)/(D+T+L) (2)
上記式(2)中、Dはデンドリックユニットの数、Lは線状ユニットの数、Tは末端ユニットの数を表す。なお、上記D、T、Lは
13C−NMRにより測定したピークシフトの積分値から算出することができる。Dは第3級または第4級炭素原子に由来し、Tは第1級炭素原子の中で、メチル基であるものに由来し、Lは第1級または第2級炭素原子の中で、Tを除くものに由来する。
【0040】
分岐度が前述の範囲にある(B)化合物としては、例えば、後述する好ましい(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物と(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物との反応物などが挙げられる。
【0041】
本発明の実施形態で用いられる(B)化合物の水酸基価は、100〜2000mgKOH/gが好ましい。(B)化合物の水酸基価を100mgKOH/g以上とすることにより、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物との反応量を十分に確保することが容易となるため、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。(B)化合物の水酸基価は300mgKOH/g以上がより好ましい。一方、(B)化合物の水酸基価を2000mgKOH/g以下とすることにより、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物との反応性がほどよく高まり、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。また、(B)化合物の水酸基価を2000mgKOH/g以下とすることにより、過剰反応によるゲル化を抑制することができる。(B)化合物の水酸基価は1800mgKOH/g以下がより好ましい。ここで、(B)化合物の水酸基価は、(B)化合物を、無水酢酸と無水ピリジンの混合溶液でアセチル化して、それをエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定することにより求めることができる。
【0042】
本発明の実施形態で用いられる(B)化合物のアミン価は、100〜2000mgKOH/gが好ましい。(B)化合物のアミン価を100mgKOH/g以上とすることにより、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物との反応量を十分に確保することが容易となるため、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。(B)化合物のアミン価は200mgKOH/g以上がより好ましい。一方、(B)化合物のアミン価を2000mgKOH/g以下とすることにより、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物との反応性がほどよく高まるため、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。また、(B)化合物のアミン価を2000mgKOH/g以下とすることにより、過剰反応によるポリアミド樹脂組成物のゲル化を抑制することができる。(B)化合物のアミン価は1600mgKOH/g以下がより好ましい。ここで、(B)化合物のアミン価は、(B)化合物をエタノールに溶解させ、エタノール性塩酸溶液で中和滴定することにより求めることができる。
【0043】
水酸基価またはアミン価が前述の範囲にある(B)化合物としては、例えば、後述する好ましい(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物と(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物との反応物などが挙げられる。
【0044】
本発明の実施形態で用いられる(B)化合物は、25℃において固形であるか、または25℃において200mPa・s以上の粘度を有する液状であることが好ましい。その場合、溶融混練時に所望の粘度にすることが容易となり、(A)ポリアミド樹脂との相溶性をより向上させ、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。
【0045】
本発明の実施形態で使用される(B)化合物の1分子中の水酸基またはアミノ基の数は3つ以上が好ましい。1分子中の水酸基またはアミノ基の数が3つ以上の場合、(A)ポリアミド樹脂との相溶性に優れ、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。1分子中の水酸基数またはアミノ基数は、それぞれ4つ以上が好ましく、それぞれ6つ以上がさらに好ましい。
【0046】
(B)化合物の1分子中の水酸基またはアミノ基の数は、低分子化合物の場合は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、ポリマーの場合は、(B)化合物の数平均分子量と水酸基価またはアミン価を算出し、下記式(3)により算出することができる。
水酸基またはアミノ基の数=(数平均分子量×水酸基価またはアミン価)/56110 (3)
本発明の実施形態で使用される(B)化合物の1分子中のエポキシ基またはカルボジイミド基の数は2つ以上が好ましい。1分子中のエポキシ基またはカルボジイミド基の数が2つ以上の場合、(A)ポリアミド樹脂との相溶性に優れ、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。1分子中のエポキシ基数またはカルボジイミド基数は、それぞれ4つ以上が好ましく、それぞれ6つ以上がさらに好ましい。
【0047】
(B)化合物の1分子中のエポキシ基またはカルボジイミド基の数は、低分子化合物の場合は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、ポリマーの場合は、(B)化合物の数平均分子量をエポキシ当量またはカルボジイミド当量で割った値により算出することができる。
【0048】
水酸基数、アミノ基数、エポキシ基数およびカルボジイミド基数が前述の範囲にある(B)化合物としては、例えば、後述する好ましい(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物と(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物との反応物などが挙げられる。
【0049】
本発明の実施形態で使用される(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物は、1分子中に3つ以上の水酸基または3つ以上のアミノ基を有する脂肪族化合物であることが好ましい。1分子中に3つ以上の水酸基または3つ以上のアミノ基を有することにより、(B)化合物の水酸基またはアミノ基の数を好ましい範囲にすることが容易となる。1分子中の水酸基数またはアミノ基数は4つ以上がより好ましく、6つ以上がさらに好ましい。また、脂肪族化合物は芳香族化合物または脂環族化合物に比べて立体障害性が低く、(B)化合物と(A)ポリアミド樹脂との相溶性に優れるため、得られる成形品の耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができると考えられる。
【0050】
(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物の1分子中の水酸基またはアミノ基の数は、低分子化合物の場合は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、ポリマーの場合は、(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物の数平均分子量と水酸基価またはアミン価を算出し、前記式(3)により算出することができる。
【0051】
本発明の実施形態で用いられる(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物の分子量は、特に制限はないが、50〜10000の範囲が好ましい。(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物の分子量が50以上であれば、(B)化合物が溶融混練時に揮発しにくいことから、加工性に優れる。(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物の分子量は150以上が好ましく、200以上がより好ましい。一方、(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物の分子量が10000以下であれば、(B)化合物と(A)ポリアミド樹脂との相溶性がより高くなるため、本発明の効果がより顕著に奏される。(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物の分子量は6000以下が好ましく、4000以下がより好ましく、800以下がさらに好ましい。
【0052】
(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物の分子量は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、水酸基および/またはアミノ基含有化合物が縮合物の場合の分子量は、分子量として重量平均分子量を用いる。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて算出することができる。具体的には、化合物が溶解する溶媒、例えばヘキサフルオロイソプロパノールを移動相として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を標準物質として用い、カラムは溶媒に合わせ、例えばヘキサフルオロイソプロパノールを使用した場合には、島津ジーエルシー(株)製の「Shodex GPC HFIP−806M」および/または「Shodex GPC HFIP−LG」を用いて、検出器として示差屈折率計を用いて重量平均分子量を測定することができる。
【0053】
本発明の実施形態に用いられる(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物の分岐度は、特に制限はないが、0.05〜0.70であることが好ましい。それにより、(B)化合物の分岐度を好ましい範囲にすることが容易となる。分岐度は、0.10以上、0.35以下がより好ましい。分岐度は前記式(2)により定義される。
【0054】
本発明の実施形態に用いられる(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物のうち、水酸基含有化合物の水酸基価は100〜2000mgKOH/gが好ましい。水酸基価をかかる範囲とすることにより、得られる(B)化合物の水酸基価を前述の好ましい範囲にすることが容易となる。水酸基含有化合物の水酸基価は300mgKOH/g以上、1800mgKOH/g以下がより好ましい。水酸基価は、水酸基含有化合物を、無水酢酸と無水ピリジンの混合溶液でアセチル化して、それをエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定することにより求めることができる。
【0055】
水酸基含有化合物の具体例としては、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、グルコース、マンニトール、スクロース、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、トリエタノールアミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−メチルプロパントリオール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、2−メチル−1,2,4−ブタントリオールなどを挙げることができる。また、水酸基含有化合物として、繰り返し構造単位を有する水酸基含有化合物も挙げることができ、例えば、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、メチレン結合、ビニル結合、イミン結合、シロキサン結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、ケイ素−ケイ素結合、カーボネート結合、スルホニル結合、イミド結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基含有化合物が挙げられる。水酸基含有化合物は、これらの結合を2種以上含む繰り返し構造単位を含有してもよい。繰り返し構造単位を有する水酸基含有化合物として、エステル結合、カーボネート結合、エーテル結合および/またはアミド結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基含有化合物がより好ましい。
【0056】
エステル結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基含有化合物は、例えば、水酸基を1個以上有する化合物に、カルボキシル基に隣接する炭素原子が飽和炭素原子であり、かつ該炭素原子上の水素原子がすべて置換され、かつ水酸基を2個以上有するモノカルボン酸を反応させることにより得ることができる。エーテル結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基含有化合物は、例えば、水酸基を1個以上有する化合物と水酸基を1個以上有する環状エーテル化合物の開環重合により得ることができる。エステル結合とアミド結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基含有化合物は、例えば、アミノジオールと環状酸無水物との重縮合反応により得ることができる。アミノ基を含むエーテル結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基含有化合物は、例えば、トリアルカノールアミンの分子間縮合により得ることができる。カーボネート結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基含有化合物は、例えば、トリスフェノールのアリールカーボネート誘導体の重縮合反応により得ることができる。
【0057】
水酸基含有化合物の中でも、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールが好ましい。
【0058】
本発明の実施形態で用いられる(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物のうち、アミノ基含有化合物のアミン価は、100〜2000mgKOH/gが好ましい。アミン価をかかる範囲とすることにより、(B)化合物のアミン価を好ましい範囲にすることが容易となる。アミノ基含有化合物のアミン価は200mgKOH/g以上、1600mgKOH/g以下がより好ましい。なお、アミン価は、アミノ基含有化合物をエタノールに溶解させ、エタノール性塩酸溶液で中和滴定することで求めることができる。
【0059】
アミノ基含有化合物の具体例としては、1,2,3−トリアミノプロパン、1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、1,2,4−トリアミノブタンなどのアミノ基を3個有する化合物や、1,1,2,3−テトラアミノプロパン、1,2,3−トリアミノ−2−メチルアミノプロパン、1,2,3,4−テトラアミノブタンおよびその異性体などのアミノ基を4個有する化合物や、3,6,9−トリアザウンデカン−1,11−ジアミンなどのアミノ基を5個有する化合物や、3,6,9,12−テトラアザテトラデカン−1,14−ジアミン、1,1,2,2,3,3−ヘキサアミノプロパン、1,1,2,3,3−ペンタアミノ−2メチルアミノプロパン、1,1,2,2,3,4−ヘキサアミノブタンおよびこれらの異性体などのアミノ基を6個有する化合物や、エチレンイミンを重合して得られるポリエチレンイミンなどが挙げられる。また、アミノ基含有化合物としては、例えば、(i)上記アミノ基を有する化合物にアルキレンオキサイド単位を導入した化合物、(ii)トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの1分子中に3つ以上の水酸基を有する化合物および/またはその水酸基がメチルエステル化された化合物とアルキレンオキサイドとを反応させ、さらに末端基をアミノ化して得られる化合物なども挙げることができる。
【0060】
本発明の実施形態で用いられる(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物は、水酸基および/またはアミノ基とともに、他の反応性官能基を有していてもよい。他の官能基として例えば、アルデヒド基、スルホ基、イソシアネート基、オキサゾリン基、オキサジン基、エステル基、アミド基、シラノール基、シリルエーテル基などが挙げられる。
【0061】
本発明の実施形態で使用される(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物は、1分子中にエポキシ基および/またはカルボジイミド基を2つ以上有することが好ましい。それにより(B)化合物のエポキシ基および/またはカルボジイミド基の数を好ましい範囲にすることが容易となる。(B)化合物、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物のエポキシ基またはカルボジイミド基の数は4つ以上がより好ましく、6つ以上がさらに好ましい。(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物は、低分子化合物であってもよいし、重合体であってもよい。
【0062】
(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の1分子中のエポキシ基またはカルボジイミド基の数は、低分子化合物の場合は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、ポリマーの場合は、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の数平均分子量をエポキシ当量またはカルボジイミド当量で割った値により算出することができる。
【0063】
エポキシ基含有化合物の具体例として、エピクロロヒドリン、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジル基含有ビニル系重合体等を例示できる。これらを2種以上用いてもよい。
【0064】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンとビスフェノールAから製造されるもの、エピクロロヒドリンとビスフェノールFから製造されるもの、ノボラック樹脂にエピクロロヒドリンを反応させたフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エピクロロヒドリンとテトラブロモビスフェノールAから誘導されるいわゆる臭素化エポキシ樹脂、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどが例示される。
【0065】
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンと、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、p−オキシ安息香酸またはダイマー酸から製造されるエポキシ樹脂、トリメシン酸トリグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどが例示される。
【0066】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンと、アニリン、ジアミノジフェニルメタン、p−アミノフェノール、メタキシリレンジアミンまたは1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから製造されるエポキシ樹脂、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−パラアミノフェノール、トリグリシジル−メタアミノフェノール、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、トリグリシジルシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレートなどが例示される。
【0067】
脂環式エポキシ樹脂としては、シクロヘキセンオキサイド基、トリシクロデセンオキサイド基、シクロペンテンオキサイド基を有する化合物などが例示される。複素環式エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンと、ヒダントインまたはイソシアヌル酸から製造されるエポキシ樹脂などが例示される。
【0068】
グリシジル基含有ビニル系重合体としては、グリシジル基含有ビニル系単位を形成する原料モノマーをラジカル重合したものが挙げられる。グリシジル基含有ビニル系単位を形成する原料モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、p−スチリルカルボン酸グリシジルなどの不飽和モノカルボン酸のグリシジルエステル、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ポリカルボン酸のモノグリシジルエステルまたはポリグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0069】
エポキシ基含有化合物の市販品としては、低分子の多官能エポキシ化合物であるポリグリシジルエーテル化合物(例えば、阪本薬品工業(株)製「SR−TMP」、ナガセケムテックス(株)製「“デナコール”(登録商標)EX−521」など)、ポリエチレンを主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、住友化学(株)製「“ボンドファスト”(登録商標)E」)、アクリルを主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、東亞合成(株)製「“レゼダ”(登録商標)GP−301」、東亞合成(株)製「“ARUFON”(登録商標)UG−4000」、三菱レイヨン(株)製「“メタブレン”(登録商標)KP−7653」など)、アクリル・スチレン共重合体を主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、BASF社製「“Joncryl”(登録商標)−ADR−4368」、東亞合成(株)製「“ARUFON”(登録商標)UG−4040」など)、シリコーン・アクリル共重合体を主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、「“メタブレン”(登録商標)S−2200」など)、ポリエチレングリコールを主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、日油(株)製“エピオール”(登録商標)「E−1000」など)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、三菱化学(株)製“jER”(登録商標)「1004」など)、ノボラックフェノール型変性エポキシ樹脂(例えば、日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)「201」)などが挙げられる。
【0070】
カルボジイミド基含有化合物としては、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなどのジカルボジイミドや、ポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフタレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリカルボジイミドなどを挙げることができる。
【0071】
カルボジイミド基含有化合物の市販品として、日清紡ホールディングス(株)製“カルボジライト”(登録商標)、ラインケミー製“スタバクゾール(登録商標)”などを挙げることができる。
【0072】
本発明の実施形態の(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量は、特に限定はないが、800〜10000の範囲が好ましい。(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量を800以上とすることにより、(B)化合物が溶融混練時に揮発しにくくなるため、加工性に優れる。また、溶融混練時の粘度を高めることができるため、(A)ポリアミド樹脂と、(B)化合物との相溶性がより高くなり、カルボキシル基のピーク強度比および(B)化合物の濃度比を、容易に前述の所望の範囲にすることができ、耐熱老化性、耐塩化カルシウム性および表面外観がより向上する。(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量は1000以上がより好ましく、2000以上がさらに好ましい。(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量を2000以上とすることにより、湿熱処理時においても、成形品表層への(B)化合物のブリードアウトをより抑制し、表面外観をより向上させることができる。一方、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量を10000以下とすることにより、得られる(B)化合物の溶融混練時の粘度を適度に抑えることができるため、加工性に優れる。また、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物との相溶性を高く保持することができる。(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量は8000以下がより好ましい。
【0073】
(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物が縮合物の場合の分子量は、分子量として重量平均分子量を用いる。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて算出することができる。具体的には、化合物が溶解する溶媒、例えばヘキサフルオロイソプロパノールを移動相として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を標準物質として用い、カラムは溶媒に合わせ、例えばヘキサフルオロイソプロパノールを使用した場合には、島津ジーエルシー(株)製の「Shodex GPC HFIP−806M」および/または「Shodex GPC HFIP−LG」を用いて、検出器として示差屈折率計を用いて重量平均分子量を測定することができる。
【0074】
本発明の実施形態で用いられる(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物は、25℃において固形であるか、または25℃において200mPa・s以上の粘度を有する液状であることが好ましい。その場合、得られる(B)化合物の溶融混練時の粘度を所望の範囲にすることが容易となり、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物との相溶性がより高くなり、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性がより向上する。
【0075】
本発明の実施形態における(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の官能基濃度を示す指標となる、分子量を1分子中の官能基の数で割った値は、50〜3000であることが好ましい。ここで、官能基の数とは、エポキシ基およびカルボジイミド基の合計数を指す。この値は小さいほど官能基濃度が高いことを表すが、50以上とすることにより、得られる(B)化合物と(A)ポリアミド樹脂との間の過剰な反応によるゲル化を抑制でき、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量を1分子中の官能基の数で割った値は、100以上がより好ましく、1100以上がさらに好ましい。(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量を1分子中の官能基の数で割った値を1100以上とすることにより、湿熱処理時においても、成形品表層への(B)化合物のブリードアウトをより抑制し、表面外観をより向上させることができる。一方、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量を1分子中の官能基の数で割った値を3000以下とすることにより、得られる(B)化合物と(A)ポリアミド樹脂との反応を十分に確保することができ、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。かかる観点からは、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の分子量を1分子中の官能基の数で割った値は、2000以下がより好ましく、1000以下がより好ましく、300以下がさらに好ましい。
【0076】
本発明の実施態様において、(B)化合物は、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物が好ましい。
【0078】
上記一般式(1)中、X
1〜X
6はそれぞれ同一でも異なってもよく、OH、NH
2、CH
3またはORを表す。ただし、OHとNH
2とORの数の和は3以上である。また、Rはアミノ基、エポキシ基またはカルボジイミド基を有する有機基を表し、nは0〜20の範囲を表す。
【0079】
一般式(1)中におけるRは、アミノ基を有する有機基、エポキシ基を有する有機基またはカルボジイミド基を有する有機基を表す。アミノ基を有する有機基としては、例えば、置換基を有してもよいアルキルアミノ基やシクロアルキルアミノ基などが挙げられ、置換基としては、例えば、アルキレンオキサイド基やアリール基などが挙げられる。エポキシ基を有する有機基としては、例えば、エポキシ基、グリシジル基、グリシジルエーテル型エポキシ基、グリシジルエステル型エポキシ基、グリシジルアミン型エポキシ基、エポキシ基またはグリシジル基で置換された炭化水素基、エポキシ基またはグリシジル基で置換された複素環基などが挙げられる。カルボジイミド基を有する有機基としては、例えば、アルキルカルボジイミド基、シクロアルキルカルボジイミド基、アリールアルキルカルボジイミド基などが挙げられる。
【0080】
一般式(1)におけるnは0〜20の範囲を表す。nが20以下である場合、(A)ポリアミド樹脂の可塑化が抑制され、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。nは4以下がより好ましく、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をさらに向上させることができる。一方、nは1以上がより好ましく、(B)化合物の分子運動性を高めることができ、(A)ポリアミド樹脂との相溶性をさらに向上させることができる。
【0081】
一般式(1)中のOHとNH
2とORの数の和は3以上である。それにより、(A)ポリアミド樹脂との相溶性に優れ、得られる成形品の耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。ここで、OHとNH
2とORの数の和は、低分子化合物の場合は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。
【0082】
また、縮合物の場合、OHまたはNH
2の数は、一般式(1)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物の数平均分子量と水酸基価またはアミン価を算出し、前記式(3)により求めることができる。
【0083】
また、縮合物の場合、ORの数は、一般式(1)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物の数平均分子量をアミン当量、エポキシ当量またはカルボジイミド当量で割った値により算出することができる。一般式(1)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて、算出することができる。具体的には、以下の方法により算出することができる。一般式(1)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物が溶解する溶媒、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノールを移動相として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を標準物質として用いる。カラムは溶媒に合わせ、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノールを使用する場合には、島津ジーエルシー(株)製の「Shodex GPC HFIP−806M」および/または「Shodex GPC HFIP−LG」を用いて、検出器として示差屈折率計を用いて数平均分子量の測定を行うことができる。
【0084】
本発明の実施形態において、ポリアミド樹脂組成物における(B)化合物の配合量は、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましい。(B)化合物の配合量を0.1重量部以上とすることにより、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。また、カルボキシル基のピーク強度比および(B)化合物の濃度比を、容易に前述の所望の範囲にすることができる。(B)化合物の配合量は0.5重量部以上がより好ましく、2重量部以上がさらに好ましい。一方、(B)化合物の配合量を20重量部以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物中における(B)化合物の分散性をより向上させ、(B)化合物の成形品表層へのブリードアウトを抑制し、表面外観をより向上させることができる。また、ポリアミド樹脂の可塑化、分解を抑制し、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。また、カルボキシル基のピーク強度比および(B)化合物の濃度比を、容易に前述の所望の範囲にすることができる。(B)化合物の配合量は7.5重量部以下がより好ましく、6重量部以下がさらに好ましい。
【0085】
本発明の実施形態で用いられる(B)化合物の製造方法は特に限定されないが、前述の(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物と、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物をドライブレンドし、両成分の融点よりも高い温度で溶融混練する方法が好ましい。
【0086】
水酸基および/またはアミノ基と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基との反応を促進するために、触媒を添加することも好ましい。触媒の添加量は特に限定されず、(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物と、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の合計100重量部に対し、0〜1重量部が好ましく、0.01〜0.3重量部がより好ましい。
【0087】
水酸基とエポキシ基の反応を促進する触媒としては、ホスフィン類、イミダゾール類、アミン類、ジアザビシクロ類などが挙げられる。ホスフィン類の具体例としては、トリフェニルホスフィン(TPP)などが挙げられる。イミダゾール類の具体例としては、2−ヘプタデシルイミダゾール(HDI)、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾールなどが挙げられる。アミン類の具体例としては、N−ヘキサデシルモルホリン(HDM)、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、トリブチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5(DBN)、トリスジメチルアミノメチルフェノール、テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、1,4−ジアザビシクロ−(2,2,2)−オクタン(DABCO)などが挙げられる。
【0088】
水酸基とカルボジイミド基の反応を促進する触媒としては、例えば、トリアルキル鉛アルコキシド、ホウフッ化水素酸、塩化亜鉛、ナトリウムアルコキシドなどが挙げられる。
【0089】
(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物と、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物とを溶融混練することにより、(b)水酸基および/またはアミノ含有化合物中の水酸基および/またはアミノ基と、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物中のエポキシ基および/またはカルボジイミド基が反応する。また、(b)が水酸基含有化合物の場合、水酸基含有化合物間で脱水縮合反応も生じる。このようにして多分岐構造の(B)化合物を得ることができる。
【0090】
(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物と、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物を反応させて(B)化合物を作製する場合、これらの配合比は特に限定されないが、(B)化合物の1分子中の水酸基およびアミノ基の数の和が、(B)化合物および/またはその縮合物の1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多くなるようにこれら化合物を配合することが好ましい。エポキシ基およびカルボジイミド基は、水酸基およびアミノ基と比較して、(A)ポリアミド樹脂の末端基との反応性に優れる。このため、(B)化合物の1分子中の水酸基およびアミノ基の数の和を、(B)化合物の1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多くすることにより、過剰な架橋構造の形成による脆化を抑制し、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。
【0091】
また、反応させる(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物に対する(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物の重量比((b)/(b’))は、0.3以上10000未満であることが好ましい。(A)ポリアミド樹脂と(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の反応性、ならびに(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物と(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の反応性は、(A)ポリアミド樹脂と(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物の反応性よりも高い。このため、前記重量比((b)/(b’))が0.3以上の場合、過剰な反応によるゲルの生成を抑制し、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性がより向上する。
【0092】
(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物と、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物を反応させて(B)化合物を作製する場合、水酸基またはアミノ基と、エポキシ基またはカルボジイミド基の反応率は、1〜95%であることが好ましい。反応率が1%以上の場合、(B)化合物の分岐度を高め、自己凝集力を低下させることができ、(A)ポリアミド樹脂との反応性を高めることができ、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性がより向上する。反応率は10%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。一方、反応率が95%以下の場合、エポキシ基またはカルボジイミド基を適度に残存させることができ、(A)ポリアミド樹脂との反応性を高めることができる。反応率は90%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。
【0093】
水酸基および/またはアミノ基と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基の反応率は、(B)化合物を、溶媒(例えば重水素化ジメチルスルホキシド、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールなど)に溶解し、エポキシ基の場合は
1H−NMR測定によりエポキシ環由来ピークについて、(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物との反応前後の減少量を求めることにより、カルボジイミド基の場合は
13C−NMR測定によりカルボジイミド基由来ピークについて、(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物との反応前後の減少量を求めることにより、算出することができる。反応率は、下記式(4)により求めることができる。
反応率(%)={1−(e/d)}×100 (4)
上記式(4)中、dは、(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物と、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物をドライブレンドしたもののピーク面積を表し、eは(B)化合物のピーク面積を表す。
【0094】
一例として、ジペンタエリスリトールとビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004)を3:1の重量比でドライブレンドしたものの
1H−NMRスペクトルを
図5に示す。また、後述する参考例9により得た(B−7)化合物および/またはその縮合物の
1H−NMRスペクトルを
図6に示す。重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒に用い、サンプル量は0.035g、溶媒量は0.70mlとした。符号1は溶媒ピークを示す。
【0095】
図5に示す
1H−NMRスペクトルから、2.60ppmと2.80ppm付近に現れるエポキシ環由来ピーク面積の合計を求め、同様に
図6に示すピーク面積の合計を求め、反応率の算出式(4)より反応率を算出する。この際、ピーク面積は反応に寄与しないエポキシ樹脂のベンゼン環のピークの面積で規格化する。
【0096】
本発明の実施形態の成形品に用いられるポリアミド樹脂組成物および本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、さらに銅化合物を含有することができる。銅化合物は、(A)ポリアミド樹脂のアミド基に配位することに加え、(B)化合物の水酸基や水酸化物イオンとも配位結合すると考えられる。このため、銅化合物は、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物の相溶性を高める効果があると考えられる。
【0097】
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、さらに、カリウム化合物を含有することができる。カリウム化合物は銅の遊離や析出を抑制する。このため、カリウム化合物は、銅化合物と(B)化合物および(A)ポリアミド樹脂との反応を促進する効果があると考えられる。
【0098】
銅化合物としては、例えば、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、酢酸銅、銅アセチルアセトナート、炭酸銅、ほうふっ化銅、クエン酸銅、水酸化銅、硝酸銅、硫酸銅、蓚酸銅などが挙げられる。銅化合物として、これらを2種以上含有してもよい。これら銅化合物の中でも、工業的に入手できるものが好ましく、ハロゲン化銅が好適である。ハロゲン化銅としては、例えば、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅などが挙げられる。ハロゲン化銅としては、ヨウ化銅がより好ましい。
【0099】
カリウム化合物としては、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、フッ化カリウム、酢酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、硝酸カリウムなどが挙げられる。カリウム化合物として、これらを2種以上含有してもよい。これらカリウム化合物の中でも、ヨウ化カリウムが好ましい。カリウム化合物を含むことにより、成形品の表面外観、耐候性および耐金型腐食性をより向上させることができる。
【0100】
本発明の実施形態において、ポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量(重量基準)は、25〜200ppmであることが好ましい。銅元素の含有量を25ppm以上とすることにより、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物の相溶性がより向上し、成形品の耐熱老化性をより向上させることができる。ポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量(重量基準)は、80ppm以上が好ましい。一方、銅元素の含有量を200ppm以下とすることにより、銅化合物の析出や遊離による着色を抑制し、成形品の表面外観をより向上させることができる。また、銅元素の含有量を200ppm以下とすることにより、ポリアミド樹脂と銅の過剰な配位結合に起因するアミド基の水素結合力の低下を抑制し、成形品の耐熱老化性をより向上させることができる。ポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量(重量基準)は、190ppm以下が好ましい。なお、ポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量は、銅化合物の配合量を適宜調節することにより前述の所望の範囲にすることができる。
【0101】
ポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量は、以下の方法により求めることができる。まず、ポリアミド樹脂組成物のペレットを減圧乾燥する。そのペレットを550℃の電気炉で24時間灰化させ、その灰化物に濃硫酸を加えて加熱して湿式分解し、分解液を希釈する。その希釈液を原子吸光分析(検量線法)することにより、銅含有量を求めることができる。
【0102】
ポリアミド樹脂組成物中のカリウム元素の含有量に対する銅元素の含有量の比Cu/Kは、0.21〜0.43であることが好ましい。Cu/Kは、銅の析出や遊離の抑制の程度を表す指標であり、この値が小さいほど、銅の析出や遊離を抑制して、銅化合物と、(B)化合物および(A)ポリアミド樹脂との反応を促進することができる。Cu/Kを0.43以下とすることにより、銅の析出や遊離を抑制し、成形品の表面外観をより向上させることができる。また、Cu/Kを0.43以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の相溶性も向上することから、成形品の耐熱老化性より向上させることができる。一方、Cu/Kを0.21以上とすることにより、カリウムを含む化合物の分散性を向上させ、特に潮解性のヨウ化カリウムであっても塊状となりにくく、銅の析出や遊離の抑制効果が向上することから、銅化合物と、(B)化合物および(A)ポリアミド樹脂との反応が十分に促進され、成形品の耐熱老化性がより向上する。ポリアミド樹脂組成物中のカリウム元素含有量は、上記の銅含有量と同様の方法にて求めることができる。
【0103】
本発明の実施形態の成形品に用いられるポリアミド樹脂組成物および本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、さらに充填材を含有することができる。充填材としては、有機充填材、無機充填材のいずれを用いてもよく、繊維状充填材、非繊維状充填材のいずれを用いてもよい。充填材としては、繊維状充填材が好ましい。
【0104】
繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、PAN(ポリアクリロニトリル)系またはピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化珪素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミウィスカー、窒化珪素ウィスカーなどの繊維状またはウィスカー状充填材が挙げられる。繊維状充填材としては、ガラス繊維や、炭素繊維が特に好ましい。
【0105】
ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものであれば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂により被膜あるいは集束されていてもよい。さらに、ガラス繊維の断面は、円形、扁平状のひょうたん型、まゆ型、長円型、楕円型、矩形またはこれらの類似品など限定されるものではない。ガラス繊維配合ポリアミド樹脂組成物において生じやすい成形品の特有の反りを低減する観点から、長径/短径の比が1.5以上の扁平状の繊維が好ましく、2.0以上のものがさらに好ましく、10以下のものが好ましく、6.0以下のものがさらに好ましい。長径/短径の比が1.5未満では断面を扁平状にした効果が少なく、10より大きいものはガラス繊維自体の製造が困難である。
【0106】
非繊維状充填材としては、例えば、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート、珪酸カルシウムなどの非膨潤性珪酸塩、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母の膨潤性雲母に代表される膨潤性層状珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ、珪藻土、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化アンチモンなどの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドロマイト、ハイドロタルサイトなどの金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウムなどの金属水酸化物、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、セラミックビーズ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化珪素、燐酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛などが挙げられる。上記の膨潤性層状珪酸塩は、層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換されていてもよく、有機オニウムイオンとしては、例えば、アンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられる。また、これら充填材を2種以上含有してもよい。
【0107】
なお、上記充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)や公知の集束剤(例えば、カルボン酸系、エポキシ系、ウレタン系など)などにより処理されていてもよく、成形品の機械強度や表面外観をより向上させることができる。集束剤としては、エポキシ系集束剤が好ましい。充填材の処理方法としては、例えば、カップリング剤による処理の場合、常法に従って予め充填材をカップリング剤により表面処理し、ついでポリアミド樹脂と溶融混練する方法が好ましく用いられるが、予め充填材の表面処理を行わずに、充填材とポリアミド樹脂を溶融混練する際に、カップリング剤を添加するインテグラブルブレンド法を用いてもよい。カップリング剤の処理量は、充填材100重量部に対して0.05重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がより好ましい。一方、カップリング剤の処理量は、充填材100重量部に対して10重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましい。
【0108】
本発明の実施形態において、ポリアミド樹脂組成物における充填材の含有量は、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、1〜150重量部が好ましい。充填材の含有量が1重量部以上であれば、成形品の機械強度、耐熱老化性をより向上させることができる。充填材の含有量は、10重量部以上がより好ましく、20重量部以上がさらに好ましい。一方、充填材の含有量が150重量部以下であれば、成形品表面への充填材の浮きを抑制し、表面外観により優れる成形品が得られる。充填材の含有量は、80重量部以下がより好ましく、70重量部以下がさらに好ましい。
【0109】
さらに、本発明の実施形態において、ポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアミド樹脂以外の樹脂や、目的に応じて各種添加剤を含有することが可能である。
【0110】
ポリアミド樹脂以外の樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂などが挙げられる。これら樹脂を配合する場合、その含有量は、ポリアミド樹脂の特徴を十分に活かすため、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましい。
【0111】
また、各種添加剤の具体例としては、銅化合物以外の熱安定剤、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物などの可塑剤、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、耐衝撃性改良剤、発泡剤などを挙げることができる。これら添加剤を含有する場合、その含有量は、ポリアミド樹脂の特徴を十分に活かすため、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して10重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。
【0112】
銅化合物以外の熱安定剤としては、フェノール系化合物、硫黄系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。銅化合物以外の熱安定剤としては、これらを2種以上用いてもよい。
【0113】
フェノール系化合物としては、ヒンダードフェノール系化合物が好ましく用いられ、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが好ましく用いられる。
【0114】
硫黄系化合物としては、有機チオ酸系化合物、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、チオウレア系化合物等が挙げられる。これら硫黄系化合物の中でも、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物および有機チオ酸系化合物が好ましい。特に、チオエーテル構造を有するチオエーテル系化合物は、酸化された物質から酸素を受け取って還元するため、熱安定剤として好適に使用することができる。チオエーテル系化合物としては、具体的には、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)がより好ましい。硫黄系化合物の分子量は、通常200以上、好ましくは500以上であり、その上限は通常3,000である。
【0115】
アミン系化合物としては、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、フェニルナフチルアミン骨格を有する化合物およびジナフチルアミン骨格を有する化合物が好ましく、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、フェニルナフチルアミン骨格を有する化合物がさらに好ましい。これらアミン系化合物の中でも4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンおよびN,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンがより好ましく、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンおよび4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンが特に好ましい。
【0116】
硫黄系化合物またはアミン系化合物の組み合わせとしては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)と4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンの組み合わせがより好ましい。
【0117】
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、厚さ6.4mmの棒状試験片を射出成形し、大気下、150℃にて1000時間熱処理したとき、フーリエ変換赤外分光分析によって得られる棒状試験片表面におけるカルボキシル基のピーク強度Yと、棒状試験片表面から0.28mmの深さにおけるカルボキシル基のピーク強度Zとの比(Y/Z)が5.0以下となることが好ましい。また、前記棒状試験片を大気下、150℃にて1000時間熱処理したとき、フーリエ変換赤外分光分析によって得られる棒状試験片表面におけるポリアミド樹脂組成物中の(B)化合物の濃度Vと、棒状試験片表面から0.28mmの深さにおけるポリアミド樹脂組成物中の(B)化合物の濃度Wとの比(V/W)が1.2〜5.0となることが好ましい。カルボキシル基のピーク強度比および(B)化合物の濃度比の測定方法は、本発明の実施形態の成形品について説明したとおりである。
【0118】
本発明の実施形態において、ポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、特に制限はないが、溶融状態での製造や溶液状態での製造等が使用でき、反応性向上の点から、溶融状態での製造が好ましく使用できる。溶融状態での製造については、押出機による溶融混練やニーダーによる溶融混練等が使用できるが、生産性の点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましい。押出機による溶融混練については、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等の押出機を1台以上使用できるが、混練性、反応性、生産性の向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく、二軸押出機を用いた溶融混練による方法が最も好ましい。
【0119】
本発明の実施形態において、ポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物と(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物からあらかじめ作製した(B)化合物を(A)ポリアミド樹脂とともに溶融混練する方法が挙げられる。
【0120】
二軸押出機を使用して溶融混練する場合、二軸押出機への原料供給方法についても特に制限はない。(B)化合物を二軸押出機に供給する際、(B)化合物は、ポリアミド樹脂の融点よりも高い温度域では、ポリアミド樹脂の分解を促進しやすいため、(B)化合物をポリアミド樹脂供給位置よりも下流側より供給し、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物の混練時間を短くすることが好ましい。ここで、二軸押出機の原料が供給される側を上流、溶融樹脂が吐出される側を下流と定義する。
【0121】
銅化合物は、(A)ポリアミド樹脂のアミド基に配位してアミド基を保護する役割を果たすとともに、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物の相溶化剤としての役割も果たすと考えられることから、銅化合物を配合する場合には、(A)ポリアミド樹脂とともに二軸押出機に供給し、(A)ポリアミド樹脂と銅化合物を十分に反応させることが好ましい。
【0122】
二軸押出機の全スクリュー長さLとスクリュー径Dの比(L/D)は、25以上であることが好ましく、30を超えることがより好ましい。L/Dが25以上であることにより、(A)ポリアミド樹脂と必要により銅化合物を十分に混練した後に、(B)化合物を供給することが容易になる。また、銅化合物を配合する場合、(A)ポリアミド樹脂と銅化合物とを十分に混練した後に、(B)化合物を供給することが容易になる。その結果、(A)ポリアミド樹脂の分解を抑制できる。また、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物の相溶性がより向上すると考えられ、成形品の耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。
【0123】
本発明の実施形態においては、少なくとも(A)ポリアミド樹脂および必要により銅化合物を、スクリュー長さの1/2より上流側から二軸押出機に供給して溶融混練することが好ましく、スクリューセグメントの上流側の端部から供給することがより好ましい。ここでいうスクリュー長とは、スクリュー根本の(A)ポリアミド樹脂が供給される位置(フィード口)にあるスクリューセグメントの上流側の端部から、スクリュー先端部までの長さである。スクリューセグメントの上流側の端部とは、押出機に連結するスクリューセグメントの最も上流側の端に位置するスクリューピースの位置のことを示す。
【0124】
(B)化合物は、スクリュー長さの1/2より下流側から二軸押出機に供給して溶融混練することが好ましい。(B)化合物をスクリュー長の1/2より下流側から供給することにより、(A)ポリアミド樹脂と必要により銅化合物が十分に混練された状態とした後に、(B)化合物を供給することが容易になる。その結果、(A)ポリアミド樹脂の増粘を抑制しつつ、(B)化合物の反応率を高めることができ、分岐度を高めて自己凝集力を低減することができ、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物の相溶性が増すと考えられる。その結果、成形品の耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。
【0125】
二軸押出機を使用してポリアミド樹脂組成物を製造する場合、混練性、反応性の向上の点から、複数のフルフライトゾーンおよび複数のニーディングゾーンを有する二軸押出機を用いることが好ましい。フルフライトゾーンは1個以上のフルフライトより構成され、ニーディングゾーンは1個以上のニーディングディスクより構成される。
【0126】
さらに、複数ヶ所のニーディングゾーンの樹脂圧力のうち、最大となる樹脂圧力をPkmax(MPa)とし、複数ヶ所のフルフライトゾーンの樹脂圧力のうち、最小となる樹脂圧力をPfmin(MPa)とすると、
Pkmax≧Pfmin+0.3
となる条件において溶融混練することが好ましく、
Pkmax≧Pfmin+0.5
となる条件において溶融混練することがより好ましい。なお、ニーディングゾーンおよびフルフライトゾーンの樹脂圧力とは、各々のゾーンに設置された樹脂圧力計の示す樹脂圧力を指す。
【0127】
ニーディングゾーンは、フルフライトゾーンに比べて、溶融樹脂の混練性および反応性に優れる。ニーディングゾーンに溶融樹脂を充満させることにより、混練性および反応性が飛躍的に向上する。溶融樹脂の充満状態を示す一つの指標として、樹脂圧力の値があり、樹脂圧力が大きいほど、溶融樹脂が充満していることを表す一つの目安となる。すなわち二軸押出機を使用する場合、ニーディングゾーンの樹脂圧力を、フルフライトゾーンの樹脂圧力より、所定の範囲で高めることにより、反応を効果的に促進させることが可能となり、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物の相溶性が増すと考えられ、成形品の耐熱老化性および耐塩化カルシウム性をより向上させることができる。
【0128】
ニーディングゾーンにおける樹脂圧力を高める方法として、特に制限はないが、例えばニーディングゾーンの間やニーディングゾーンの下流側に、溶融樹脂を上流側に押し戻す効果のある逆スクリューゾーンや、溶融樹脂を溜める効果のあるシールリングゾーン等を導入する方法などが好ましく使用できる。逆スクリューゾーンやシールリングゾーンは、1個以上の逆スクリューや1個以上のシールリングから形成され、それらを組み合わせることも可能である。
【0129】
(B)化合物の供給位置の上流側にあるニーディングゾーンの合計長さをLn1とした場合、Ln1/Lは0.02以上であることが好ましく、0.03以上であることがさらに好ましい。一方Ln1/Lは、0.40以下であることが好ましく、0.20以下であることがさらに好ましい。Ln1/Lを0.02以上とすることにより、(A)ポリアミド樹脂の反応性を高めることができ、0.40以下とすることにより、剪断発熱を適度に抑えて樹脂の熱劣化を抑制することができる。(A)ポリアミド樹脂の溶融温度に特に制限はないが、(A)ポリアミド樹脂の熱劣化による分子量低下を抑制するため、340℃以下が好ましい。
【0130】
(B)化合物の供給位置の下流側でのニーディングゾーンの合計長さをLn2とした場合、Ln2/Lは0.02〜0.30であることが好ましい。Ln2/Lを0.02以上とすることにより、(B)化合物の反応性をより高めることができる。Ln2/Lは0.04以上がより好ましい。一方、Ln2/Lを0.30以下とすることにより、(A)ポリアミド樹脂の分解をより抑制することができる。Ln2/Lは0.16以下がより好ましい。
【0131】
本発明の実施形態において、ポリアミド樹脂組成物のさらに好ましい製造方法として、二軸押出機により(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物を溶融混練して高濃度予備混合物を作製し、その高濃度予備混合物をさらに(A)ポリアミド樹脂と、二軸押出機により溶融混練する方法が挙げられる。(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(B)化合物10〜250重量部を溶融混練して高濃度予備混合物を作製し、その高濃度予備混合物をさらに(A)ポリアミド樹脂とともに、二軸押出機により溶融混練することがより好ましい。高濃度予備混合物を作製しない場合と比較して、得られる成形品の耐熱老化性および耐塩化カルシウム性を飛躍的に向上させることができる。この要因については定かではないが、2度溶融混練することにより、各成分間の相溶性がさらに向上するためと考えられる。また、高濃度予備混合物を作製する際、(A)ポリアミド樹脂に対して(B)化合物の配合量が多くなる。滞留安定性の低下を抑制するため、二軸押出機での溶融混練時に、(B)化合物をポリアミド樹脂供給位置よりも下流側より供給し、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物の混練時間を短くすることが好ましい。高濃度予備混合物に用いる(A)ポリアミド樹脂と、高濃度予備混合物へさらに配合する(A)ポリアミド樹脂は、同一であってもよく、異なっていてもよい。高濃度予備混合物に用いられる(A)ポリアミド樹脂は、成形品の耐熱老化性をより向上させる観点から、ナイロン6、ナイロン11および/またはナイロン12が好ましい。
【0132】
かくして得られるポリアミド樹脂組成物は、公知の方法で成形することができ、ポリアミド樹脂組成物からシート、フィルム、繊維などの各種成形品を得ることができる。成形方法としては、例えば、射出成形、射出圧縮成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、プレス成形などが挙げられる。
【0133】
本発明の実施形態の成形品の厚みは0.56mm以上である。ここで、成形品の厚みとは、成形品の最薄部の厚みを指す。ただし、成形体にドレン抜きのネジ穴などが設けられている場合、そのような部分は除外するものとする。
【0134】
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物から得られる成形品は、その優れた特性を活かし、自動車エンジン周辺部品、自動車アンダーフード部品、自動車ギア部品、自動車内装部品、自動車外装部品、吸排気系部品、エンジン冷却水系部品や、自動車電装部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。具体的には、エンジンカバー、エアインテークパイプ、タイミングベルトカバー、インテークマニホールド、フィラーキャップ、スロットルボディ、クーリングファンなどの自動車エンジン周辺部品、クーリングファン、ラジエータータンクのトップおよびベース、シリンダーヘッドカバー、オイルパン、キャニスター、ブレーキ配管、燃料配管用チューブ、廃ガス系統部品などの自動車アンダーフード部品、ギア、アクチュエーター、ベアリングリテーナー、ベアリングケージ、チェーンガイド、チェーンテンショナなどの自動車ギア部品、シフトレバーブラケット、ステアリングロックブラケット、キーシリンダー、ドアインナーハンドル、ドアハンドルカウル、室内ミラーブラケット、エアコンスイッチ、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール、トリムなどの自動車内装部品、フロントフェンダー、リアフェンダー、フューエルリッド、ドアパネル、シリンダーヘッドカバー、ドアミラーステイ、テールゲートパネル、ライセンスガーニッシュ、ルーフレール、エンジンマウントブラケット、リアガーニッシュ、リアスポイラー、トランクリッド、ロッカーモール、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパーなどの自動車外装部品、エアインテークマニホールド、インタークーラーインレット、ターボチャージャ、エキゾーストパイプカバー、インナーブッシュ、ベアリングリテーナー、エンジンマウント、エンジンヘッドカバー、リゾネーター、及びスロットルボディなどの吸排気系部品、チェーンカバー、サーモスタットハウジング、アウトレットパイプ、ラジエータータンク、オイルネーター、及びデリバリーパイプなどのエンジン冷却水系部品、コネクタやワイヤーハーネスコネクタ、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、コンビネーションスイッチなどの自動車電装部品、電気・電子部品としては、例えば、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、抵抗器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、スイッチ、ナイフスイッチ、他極ロッド、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、ICやLED対応ハウジング、コンデンサー座板、ヒューズホルダー、各種ギヤー、各種ケース、キャビネットなどの電気部品、コネクター、SMT対応のコネクタ、カードコネクタ、ジャック、コイル、コイルボビン、センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレー、リレーケース、リフレクター、小型スイッチ、電源部品、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップシャーシ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、SiパワーモジュールやSiCパワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などの電子部品が挙げられる。中でも、本発明の実施形態の成形品は耐熱老化性、耐塩化カルシウム性および表面外観に優れることから、自動車アンダーフード部品に特に好ましく用いられる。
【実施例】
【0135】
以下に実施例を挙げて本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。特性評価は下記の方法に従って行った。
【0136】
[ポリアミド樹脂の融点]
ポリアミド樹脂を約5mg採取し、窒素雰囲気下、セイコーインスツル製 ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220を用い、次の条件で(A)ポリアミド樹脂の融点を測定した。ポリアミド樹脂の融点+40℃に昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で30℃まで降温し、30℃で3分間保持した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。
【0137】
[ポリアミド樹脂の相対粘度]
ポリアミド樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸中、25℃でオストワルド式粘度計を用いて相対粘度(ηr)を測定した。
【0138】
[重量平均分子量および数平均分子量]
(B)化合物、(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物2.5mgを、それぞれヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)4mlに溶解し、0.45μmのフィルターでろ過して得られた溶液を測定に用いた。測定条件を以下に示す。
装置:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Waters製)
検出器:示差屈折率計Waters410(Waters製)
カラム:Shodex GPC HFIP−806M(2本)+HFIP−LG(島津ジーエルシー(株))
流速:0.5ml/min
試料注入量:0.1ml
温度:30℃
分子量校正:ポリメチルメタクリレート。
【0139】
[水酸基価]
(b)水酸基含有化合物、(B)化合物を0.5g採取し、それぞれ250ml三角フラスコに加え、次いで、無水酢酸と無水ピリジンを1:10(質量比)に調整・混合した溶液20.00mlを採取し、前記三角フラスコに入れ、還流冷却器を取り付けて、100℃に温調したオイルバス下で20分間、撹拌しながら還流させた後、室温まで冷却した。さらに、前記三角フラスコ内に冷却器を通じてアセトン20ml、蒸留水20mlを加えた。これにフェノールフタレイン指示薬を入れて、0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液により滴定した。なお、別途測定したブランク(試料を含まない)の測定結果を差し引き、下記式(5)により水酸基価を算出した。
水酸基価[mgKOH/g]=[((B−C)×f×28.05)/S]+E (5)
但し、B:滴定に用いた0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]、C:ブランクの滴定に用いた0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]、f:0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量[g]、E:酸価を表す。
【0140】
[アミン価]
(b)アミノ基含有化合物、(B)化合物を0.5〜1.5g精秤し、それぞれ50mlのエタノールで溶解した。pH電極を備えた電位差滴定装置(京都電子工業(株)製、AT−200)を用いて、この溶液を、濃度0.1mol/Lのエタノール性塩酸溶液で中和滴定した。pH曲線の変曲点を滴定終点とし、下記式(6)によりアミン価を算出した。
アミン価[mgKOH/g]=(56.1×V×0.1×f)/W (6)
但し、W:試料の秤取量[g]、V:滴定終点での滴定量[ml]、f:0.1mol/Lのエタノール性塩酸溶液のファクターを表す。
[(B)化合物の反応率]
(B)化合物0.035gを重水素化ジメチルスルホキシド0.7mlに溶解し、エポキシ基の場合は
1H−NMR測定、カルボジイミド基の場合は
13C−NMR測定を行った。各分析条件は下記の通りである。
(1)
1H−NMR
装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
観測周波数:OBFRQ399.65MHz、OBSET124.00KHz、OBFIN10500.00Hz
積算回数:256回
(2)
13C−NMR
装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
観測周波数:OBFRQ100.40MHz、OBSET125.00KHz、OBFIN10500.00Hz
積算回数:512回。
【0141】
得られた
1H−NMRスペクトルより、エポキシ環由来ピークの面積を求めた。また得られた
13C−NMRスペクトルより、カルボジイミド基由来ピークの面積を求めた。なお、ピーク面積は、NMR装置付属の解析ソフトを用い、ベースラインとピークで囲まれた部分の面積を積分することにより算出した。(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物と、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物をドライブレンドしたもののピーク面積をdとし、(B)化合物のピーク面積をeとし、反応率は、下記式(4)により算出した。
反応率(%)={1−(e/d)}×100 (4)
【0142】
一例として、ジペンタエリスリトールとビスフェノールA型エポキシ樹脂である「三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004を3:1の重量比でドライブレンドしたものの
1H−NMRスペクトルを
図5に示す。また参考例9により得た(B−7)化合物の
1H−NMRスペクトルを
図6に示す。
図5に示す
1H−NMRスペクトルから、2.60ppmと2.80ppm付近に現れるエポキシ環由来ピーク面積の合計を求め、同様に
図2に示すピーク面積の合計を求め、反応率の算出式(4)より反応率を算出した。この際、ピーク面積は反応に寄与しないエポキシ樹脂のベンゼン環のピークの面積で規格化した。
【0143】
[分岐度]
(B)化合物、(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物を、下記条件で
13C−NMR分析した後、下記式(2)により分岐度(DB)を算出した。
分岐度=(D+T)/(D+T+L) (2)
上記式(2)中、Dはデンドリックユニットの数、Lは線状ユニットの数、Tは末端ユニットの数を表す。上記D、T、Lは
13C−NMRにより測定したピーク面積から算出した。Dは第3級または第4級炭素原子に由来し、Tは第1級炭素原子の中で、メチル基であるものに由来し、Lは第1級または第2級炭素原子の中で、Tを除くものに由来する。なお、ピーク面積は、NMR装置付属の解析ソフトを用い、ベースラインとピークで囲まれた部分の面積を積分することにより算出した。測定条件は下記の通りである。
(1)
13C−NMR
装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
測定サンプル量/溶媒量:0.035g/0.70ml
観測周波数:OBFRQ100.40MHz、OBSET125.00KHz、OBFIN10500.00Hz
積算回数:512回。
【0144】
[水酸基およびアミノ基の数と、エポキシ基およびカルボジイミド基の数]
水酸基またはアミノ基の数は、(B)化合物、(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物の数平均分子量と水酸基価またはアミン価を算出し、下記式(3)により算出した。
OHまたはNH
2の数=(数平均分子量×水酸基価またはアミン価)/56110 (3)
【0145】
また、エポキシ基またはカルボジイミド基の数は、(B)化合物、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の数平均分子量をエポキシ当量またはカルボジイミド当量で割った値により算出した。
【0146】
数平均分子量と水酸基価、アミン価は前述の方法で測定した。エポキシ当量は、(B)化合物、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物400mgを、ヘキサフルオロイソプロパノール30mlに溶解させた後、酢酸20ml、テトラエチルアンモニウムブロミド/酢酸溶液(=50g/200ml)を加え、滴定液として0.1Nの過塩素酸および指示薬としてクリスタルバイオレットを用い、溶解液の色が紫色から青緑色に変化した際の滴定量より、下記式(7)により算出した。
エポキシ当量[g/eq]=W/((F−G)×0.1×f×0.001) (7)
但し、F:滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、G:ブランクの滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、f:0.1Nの過塩素酸のファクター、W:試料の質量[g]
【0147】
カルボジイミド当量は、以下の方法で算出した。(B)化合物、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物100重量部と、内部標準物質としてフェロシアン化カリウム(東京化成工業(株)製)30重量部をドライブレンドし、約200℃で1分間熱プレスを行い、シートを作製した。その後、赤外分光光度計((株)島津製作所製、IR Prestige−21/AIM8800)を用いて、透過法で、シートの赤外吸収スペクトルを測定した。測定条件は、分解能4cm
−1、積算回数32回とした。透過法での赤外吸収スペクトルは、吸光度がシート厚みに反比例するため、内部標準ピークを用いて、カルボジイミド基のピーク強度を規格化する必要がある。2140cm
−1付近に現れるカルボジイミド基由来ピークの吸光度を、2100cm
−1付近に現れるフェロシアン化カリウムのCN基の吸収ピークの吸光度で割った値を算出した。この値からカルボジイミド当量を算出するために、あらかじめカルボジイミド当量が既知のサンプルを用いてIR測定を行い、カルボジイミド基由来ピークの吸光度と内部標準ピークの吸光度の比を用いて検量線を作成し、(B)化合物、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の吸光度比を検量線に代入し、カルボジイミド当量を算出した。なお、カルボジイミド当量が既知のサンプルとして、脂肪族ポリカルボジイミド(日清紡製、“カルボジライト”(登録商標)LA−1、カルボジイミド当量247g/mol)、芳香族ポリカルボジイミド(ラインケミー製、“スタバクゾール”(登録商標)P、カルボジイミド当量360g/mol)を用いた。
【0148】
[カルボキシル基のピーク強度比]
各実施例および比較例により得られた厚さ6.4mmの棒状試験片を、大気下、150℃にて1000時間熱処理した。熱処理後の棒状試験片表面について、フーリエ変換赤外分光光度計(アジレント・テクノロジー(株)製Varian7000FT−IR)のマクロ赤外ATR法を用いて、以下の条件でカルボキシル基のピーク強度Yを測定した。
光源:特殊セラミックス
検出器:DTGS
分解能:4cm
−1
積算回数:128回
IRE:Ge
入射角:45度
アタッチメント:1回反射ATR用アタッチメント(サンダードーム)。
【0149】
得られたFT−IRスペクトルにおけるカルボキシル基のC=O伸縮振動のピーク強度を求め、それをアミド結合のC=O伸縮振動のピーク強度で規格化した値を、成形品表面のカルボキシル基のピーク強度Yとして算出した。
【0150】
また、熱処理後の棒状試験片をバンドソーで深さ方向に切断し、さらにダイアモンドカッターで鏡面仕上げを行った断面について、フーリエ変換赤外分光光度計(パーキンエルマー(株)製Spot−light)の顕微赤外ATR法を用いて、以下の条件で棒状試験片表面から深さ方向に走査しながら、任意の各深さにおけるカルボキシル基のピーク強度を測定した。
光源:特殊セラミックス
検出器:MCT
分解能:4cm
−1
積算回数:128回/点
測定モード:ATR法
1点あたりの測定エリア:80μm×80μm。
【0151】
得られた各深さにおけるFT−IRスペクトルからカルボキシル基のC=O伸縮振動のピーク強度を求め、それをアミド結合のC=O伸縮振動のピーク強度で規格化することにより、各深さにおけるカルボキシル基のピーク強度を算出した。ピーク強度Yを成形品表面から0.28mmの深さにおけるカルボキシル基のピーク強度Zで割ることにより、カルボキシル基のピーク強度比を算出した。
【0152】
一例として、実施例3により得られた厚さ6.4mmの棒状試験片(成形品)を大気下、150℃にて1000時間熱処理した後の、成形品表面のFT−IRスペクトルを
図1に示す。また成形品断面の深さ方向のFT−IRスペクトルを
図2に示す。
図1および
図2のスペクトルより、1720cm
−1付近のカルボキシル基のC=O伸縮振動のピーク強度を、1632cm
−1付近のアミド結合のC=O伸縮振動のピーク強度で規格化した値を求めた。成形品表面からの距離に対して規格化したピーク強度をプロットしたものを
図3に示す。
図3より、成形品表面におけるピーク強度Yを、成形品表面から0.28mmの深さにおけるピーク強度Zで割ることにより、カルボキシル基のピーク強度比(Y/Z)を算出した。
【0153】
[(B)化合物の濃度比]
各実施例および比較例により得られた厚さ6.4mmの棒状試験片を、大気下、150℃にて1000時間熱処理した。熱処理後の棒状試験片表面について、フーリエ変換赤外分光光度計(アジレント・テクノロジー(株)製Varian7000FT−IR)のマクロ赤外ATR法を用いて、以下の条件で棒状試験片表面におけるポリアミド樹脂組成物中の(B)化合物の濃度Vを測定した。
光源:特殊セラミックス
検出器:DTGS
分解能:4cm
−1
積算回数:128回
IRE:Ge
入射角:45度
アタッチメント:1回反射ATR用アタッチメント(サンダードーム)。
【0154】
得られたFT−IRスペクトルにおける(B)化合物由来のピーク強度を求め、それをアミド結合のC=O伸縮振動のピーク強度で規格化した値を、成形品表面における(B)化合物の濃度Vとした。
【0155】
また、熱処理後の棒状試験片をバンドソーで深さ方向に切断し、さらにダイアモンドカッターで鏡面仕上げを行った断面について、フーリエ変換赤外分光光度計(パーキンエルマー(株)製Spot−light)の顕微赤外ATR法を用いて、以下の条件で棒状試験片表面から深さ方向に走査しながら、任意の各深さにおけるポリアミド樹脂組成物中の(B)化合物の濃度を測定した。
光源:特殊セラミックス
検出器:MCT
分解能:4cm
−1
積算回数:128回/点
測定モード:ATR法
1点あたりの測定エリア:80μm×80μm。
【0156】
得られた各深さにおけるFT−IRスペクトルから(B)化合物由来のピーク強度を求め、それをアミド結合のC=O伸縮振動のピーク強度で規格化することにより、各深さにおける(B)化合物の濃度を算出した。(B)化合物の濃度Vを成形品表面から0.28mmの深さにおける(B)化合物の濃度Wで割ることにより、(B)化合物の濃度比を得た。
【0157】
一例として、実施例3により得られた厚さ6.4mmの棒状試験片(成形品)を、大気下、150℃にて1000時間熱処理した後の、成形品表面のFT−IRスペクトルを
図1に示す。また成形品断面の深さ方向のFT−IRスペクトルを
図2に示す。
図1および
図2のスペクトルより、1005cm
−1付近の(B)化合物の脂肪族エーテル基のC−O伸縮振動のピーク強度を、1632cm
−1付近のアミド結合のC=O伸縮振動のピーク強度で規格化した値を求めた。成形品表面からの距離に対して規格化したピーク強度をプロットしたものを
図4に示す。
図4より、成形品表面におけるピーク強度を、成形品表面から0.28mmの深さにおけるピーク強度で割ることにより、(B)化合物の濃度比(V/W)を算出した。
【0158】
[カルボキシル基濃度の熱処理後の増加]
各実施例および比較例により得られた厚さ3.2mmのASTM1号ダンベル試験片を、豊国工機製フライス盤(Type:H−0−1)のステージに固定し、ステージを上下方向に操作する目盛り付ハンドル(1目盛り:0.02mm)を用いてASTM1号ダンベル試験片を上下させ、ASTM1号ダンベル試験片表面から0.2mmまでの深さのポリアミド樹脂組成物を切削した。切削したポリアミド樹脂組成物約0.50gを50ml三角フラスコに精秤し、ベンジルアルコール20mlを加え、195℃に温度調整したアルミブロックヒーターを用いて、溶解した。この溶解液に、フェノールフタレイン指示薬を加え、0.02mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量を用いて、式(8)により、ポリアミド樹脂組成物中のカルボキシル基を算出した。
カルボキシル基濃度[mol/g]=((E−F)×f×0.001×0.02)/G (8)
(但し、E:滴定に用いた0.02mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]、F:ブランクの滴定に用いた0.02mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]、f:0.02mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液のファクター、G:試料(ガラス繊維を除いた分)の質量[g])
【0159】
ついで、各実施例および比較例により得られたASTM1号ダンベル試験片を、大気下、130℃にて100時間熱処理を行った後、同様に表層のカルボキシル基濃度を測定し、熱処理後のカルボキシル基濃度の増加量を算出した。
【0160】
[耐熱老化性]
各実施例および比較例により得られた厚さ3.2mmのASTM1号ダンベル試験片について、ASTM D638に従って、引張試験機テンシロンUTA2.5T(オリエンテック社製)を用いて、クロスヘッド速度10mm/分の条件で引張試験を行い、引張強度を測定した。3回測定を行い、その平均値を耐熱老化性試験処理前引張強度として算出した。ついで、ASTM1号ダンベル試験片を、135℃、大気下のギアオーブンで3000時間、または190℃、大気下のギアオーブンで2000時間、または240℃、大気下のギアオーブンで2000時間熱処理(耐熱老化性試験処理)し、処理後の試験片について、同様の引張試験を行い、3回の引張強度測定値の平均値を耐熱老化性試験処理後の引張強度として算出した。耐熱老化性試験処理前の引張強度に対する処理後の引張強度の比(百分率)を、引張強度保持率として算出した。引張強度保持率が大きいほど、耐熱老化性に優れている。
【0161】
[耐塩化カルシウム性]
各実施例および比較例により得られた80mm×80mm×3mm厚の角板(フィルムゲート)を、60℃、95%RHに調整された恒温恒湿槽中に24時間吸湿処理した後、以下のサイクルを繰り返した。
(1)85℃、95%RHに調整された恒温恒湿槽中で1時間調湿処理する。
(2)約43重量%の飽和塩化カルシウム水溶液を含ませたガーゼを角板に塗布し、100℃の大気下で1時間熱処理する。
(3)ガーゼを取り除き、角板を室温で1時間静置し、表面目視観察によりクラックの有無を評価する。
(1)〜(3)を1サイクルとし、クラックが発生するまでのサイクル数を計測した。サイクル数が多いほど、耐塩化カルシウム性に優れる。
【0162】
[表面外観]
各実施例および比較例により得られた80mm×80mm×3mm厚の角板(フィルムゲート)を150℃の大気下で5000時間熱処理した後、角板表面の状態を目視観察し、次の基準により評価した。
A:成形品表面にクラックは認められず、かつブリード物も認められない。
B:成形品表面にクラックが認められ、ブリード物は認められない。
C:成形品表面にクラックが認められ、かつブリード物も認められる。
なお、ブリード物とは成形品表面に浮き出たものを示し、(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物、(B)化合物が室温において固体状の場合は粉ふきのようなものであり、(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物、(B)化合物が室温において液体状の場合は粘性の液状のようなものとなる。
【0163】
[耐熱水性]
実施例2〜3、14〜15により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃の条件で射出成形することにより、厚さ3.2mmのASTM1号ダンベル試験片を作製した。この試験片について、ASTM D638に従って引張試験機テンシロンUTA2.5T(オリエンテック社製)により、クロスヘッド速度10mm/分で引張試験を行った。3回測定を行い、その平均値を耐熱水性試験処理前の引張強度として算出した。ついで、ASTM1号ダンベル試験片を耐圧オートクレーブに仕込み、試験片が十分に浸かるだけのイオン交換水を加え、耐圧オートクレーブを90℃のギアオーブンに入れて6時間耐熱水性試験処理し、処理後の試験片を80℃で12時間減圧乾燥した。乾燥後の試験片について同様の引張試験を行い、3回の測定値の平均値を耐熱水性試験処理後の引張強度として算出した。耐熱水性試験処理前の引張強度に対する耐熱水性試験処理後の引張強度の比(百分率)を、引張強度保持率として算出した。引張強度保持率が大きいほど、耐熱水性に優れている。
【0164】
[耐湿熱性]
実施例10〜12、14、16、比較例3〜5により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10/10秒、スクリュー回転数:150rpm、射出圧力:100MPa、射出速度:100mm/秒の条件で、80mm×80mm×3mm厚の角板(フィルムゲート)を射出成形した。得られた角板を80℃、95%RHの条件下で1時間湿熱処理し、処理後の角板表面の状態を目視観察し、次の基準により評価した。
A:成形品表面にブリード物が認められない。
B:成形品表面にブリード物が認められる。
なお、ブリード物とは、前述の[表面外観]に記載の通りである。
【0165】
参考例1((A−2)ナイロン10T)
デカメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である10T塩と、デカメチレンジアミン全量に対して0.5mol%のデカメチレンジアミンを過剰に添加した。さらに、これら原料の合計70重量部に対して、水30重量部を添加して混合した。これを、加圧容器に仕込んで密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、反応容器から内容物をクーリングベルト上に吐出し、これを100℃で24時間真空乾燥してポリアミド樹脂オリゴマーを得た。得られたポリアミド樹脂オリゴマーを粉砕、乾燥し、50Pa、240℃で固相重合し、ηr=2.48、融点318℃のナイロン10Tを得た。
【0166】
参考例2((A−4)ナイロン4T/6T=40/60(重量比))
テトラメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である4T塩と、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である6T塩を、重量比が40:60となるように配合した。全脂肪族ジアミンに対して0.5mol%のテトラメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンをそれぞれ過剰に添加した。さらに、これら原料の合計70重量部に対して、水30重量部を添加して混合した。これを、重合缶に仕込んで密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、重合缶から内容物をクーリングベルト上に吐出し、これを100℃で24時間真空乾燥してポリアミド樹脂オリゴマーを得た。得られたポリアミド樹脂オリゴマーを粉砕、乾燥し、50Pa、240℃で固相重合し、ηr=2.48、融点336℃のナイロン4T/6T=40/60を得た。
【0167】
参考例3(B−1)
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100重量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN“(登録商標)201、1分子中のエポキシ基の平均個数7個、分子量1330、分子量/1分子中の官能基数=190)10重量部を予備混合した後、池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は53%、分岐度は0.29、水酸基価は1280mgKOH/gであった。1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとNH
2とORの数の和は3以上であった。
【0168】
参考例4(B−2)
2軸押出機のスクリュー回転数を300rpmに変更し、溶融混練時間を0.9分間に変更したこと以外は参考例3と同様にして、一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は2%、分岐度は0.15、水酸基価は1350mgKOH/gであった。1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとORの数の和は3以上であった。
【0169】
参考例5(B−3)
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100重量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201)10重量部、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7(東京化成工業(株)製)0.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを押出機に供給し、再溶融混練工程をさらに6回行い、一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は96%、分岐度は0.39、水酸基価は1170mgKOH/gであった。1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとNH
2とORの数の和は3以上であった。
【0170】
参考例6(B−4)
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100重量部に対して、脂肪族ポリカルボジイミド(日清紡ケミカル(株)製“カルボジライト”(登録商標)LA−1、1分子中のカルボジイミド基の平均個数24個、分子量6000、分子量/1分子中の官能基数=250)10重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は89%、分岐度は0.37、水酸基価は1110mgKOH/gであった。1分子中の水酸基の数は、1分子中のカルボジイミド基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとNH
2とORの数の和は3以上であった。
【0171】
参考例7(B−5)
撹拌装置を備えた容量1Lのオートクレーブ内に、ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)508g(1.0mol)、トルエン254g、水酸化カリウム0.3gを仕込み、90℃まで昇温して撹拌し、スラリー状の液体とした。次いで130℃に加熱し、エチレンオキサイド132g(3mol)を徐々にオートクレーブ内に導入し反応させた。エチレンオキサイドの導入とともに、オートクレーブ内温度は上昇した。随時冷却を加え、反応温度を140℃以下に保つようにした。反応後、140℃にて1.3kPa以下に減圧することにより、過剰のエチレンオキサイド、副生するエチレングリコールの重合体を除去した。その後、酢酸にて中和し、pH6〜7に調整してエチレングリコール変性ジペンタエリスリトールを得た。
【0172】
得られたエチレングリコール変性ジペンタエリスリトール343g(1mol)を内容積500mlの電磁誘導回転撹拌式オートクレーブに計量し、外部還元処理したエヌ・イーケムキャット製5%ルテニウム−アルミナ粉末触媒を3g仕込み、窒素置換を行った。引き続き、アンモニア26g(1.53mol)を添加し、室温(25℃)で全圧が2.0MPaGになるように水素(0.18mol)を圧入した。1000rpmの条件で撹拌しながら、反応温度が220℃となるまで加熱した。220℃における初期最高圧力は、9.8MPaGであった。圧力は、4時間で9.8MPaGから8.4MPaGに低下した。圧力降下がなくなったことを確認した後、0.5時間さらに反応を行った。その後、冷却して反応生成物を取り出し、濾過して触媒を除き、ジペンタエリスリトールポリオキシエチレンヘキサミンを得た。
【0173】
得られたジペンタエリスリトールポリオキシエチレンヘキサミン100重量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201)10重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化し、一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は49%、分岐度は0.25、アミン価は500mgKOH/gであった。1分子中のアミノ基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとNH
2とORの数の和は3以上であった。
【0174】
参考例8(B−6)
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100重量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201)500重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化し、一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は33%、分岐度は0.23、水酸基価は540mgKOH/gであった。1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも少なく、一般式(1)におけるOHとNH
2とORの数の和は3以上であった。
【0175】
参考例9(B−7)
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の数2個、分子量1650、分子量/1分子中の官能基数=825)33.3重量部を予備混合した後、池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は56%、分岐度は0.34、水酸基価は1200mgKOH/gであった。1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとNH
2とORの数の和は3以上であった。
【0176】
参考例10(B−8)
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1007、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量2900、分子量/1分子中の官能基数=1450)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は52%、分岐度は0.32、水酸基価は1160mgKOH/gであった。1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとNH
2とORの数の和は3以上であった。
【0177】
参考例11(B−9)
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1010、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量5500、分子量/1分子中の官能基数=2750)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は50%、分岐度は0.29、水酸基価は1100mgKOH/gであった。1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとNH
2とORの数の和は3以上であった。
【0178】
参考例12(B−10)
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100重量部に対して、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(東京化成工業(株)製、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量340、分子量/1分子中の官能基数=170)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は88%、分岐度は0.32、水酸基価は1290mgKOH/gであった。1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとNH
2とORの数の和は3以上であった。
【0179】
参考例13(C−1:CuI/KI(重量比)=0.23の割合で含むナイロン66マスターバッチ)
ナイロン66(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM3001−N)100重量部に対して、ヨウ化銅2.0重量部、ヨウ化カリウム40%水溶液21.7重量部を予備混合した後、(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)を用いて、シリンダー温度275℃、スクリュー回転数150rpmの条件で溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後80℃で8時間真空乾燥し、銅含有量0.60重量%のマスターバッチペレットを作製した。
【0180】
参考例14(E−1)
ナイロン6(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1010)100重量部に対して、(B−1)化合物26.7重量部を予備混合した後、(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)を用いて、シリンダー温度245℃、スクリュー回転数150rpmの条件で溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後80℃で8時間真空乾燥し、高濃度予備混合物ペレットを作製した。
【0181】
参考例15(E−2)
ナイロン6(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1010)100重量部に対して、(B−8)化合物26.7重量部を予備混合した後、(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)を用いて、シリンダー温度245℃、スクリュー回転数150rpmの条件で溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後80℃で8時間真空乾燥し、高濃度予備混合物ペレットを作製した。
【0182】
その他、本実施例および比較例に用いた(A)ポリアミド樹脂、(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物、(D)充填材は以下の通りである。
(A−1):融点260℃のナイロン66樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM3001−N)、ηr=2.78。
(A−3):融点225℃のナイロン6樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1010)、ηr=2.70。
(A−5):融点176℃のナイロン12樹脂(宇部興産(株)製“UBESTA”(登録商標)3024B)、ηr=2.50。
(b−1):ジペンタエリスリトール(東京化成工業(株)製)、分子量254、水酸基価1325mgKOH/g、1分子中の水酸基の数6。
(b−2):ジペンタエリスリトールポリオキシエチレンヘキサミン、分子量608、アミン価554mgKOH/g。
(b’−1):フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN“(登録商標)201)、1分子中のエポキシ基の平均個数7個、分子量1330、分子量/1分子中の官能基数190。
(D−1):円形断面ガラス繊維(日本電気硝子(株)製T−275H)、断面の直径10.5μm、表面処理剤:シラン系カップリング剤、結束剤:カルボン酸系、繊維長3mm。
(D−2):円形断面ガラス繊維(日本電気硝子(株)製T−717H)、断面の直径10.5μm、表面処理剤:シラン系カップリング剤、結束剤:エポキシ系、繊維長3mm。
【0183】
(実施例1
〜4、7、8、10〜19、比較例1〜
12)
表に示す(A)ポリアミド樹脂、(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物、(C)銅化合物を、シリンダー設定温度をポリアミド樹脂の融点+15℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このメインフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置、つまりスクリューセグメントの上流側の端部の位置に接続されていた。続いて、表に示す(B)化合物、(b)水酸基および/またはアミノ基含有化合物、(D)充填材、(E)高濃度予備混合物をサイドフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このサイドフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0.65の位置、つまりスクリュー長の1/2より下流側の位置に接続されていた。2軸押出機のスクリュー構成は、(B)化合物等の供給位置の上流側にあるニーディングゾーンの合計長さをLn1、(B)化合物等の供給位置の下流側にあるニーディングゾーンの合計長さをLn2とした場合、Ln1/Lが0.14、Ln2/Lが0.07となるよう構成した。また、複数ヶ所のフルフライトゾーンに設置された樹脂圧力計が示す樹脂圧力のうち、最小となる樹脂圧力Pfminと、複数ヶ所のニーディングゾーンに設置された樹脂圧力計が示す樹脂圧力のうち、最大となる樹脂圧力Pkmaxとの差(Pkmax−Pfmin)は表に示すとおりであった。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。
【0184】
得られたペレットを80℃(実施例17、19は135℃)で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃(実施例17は140℃、実施例19は160℃)の条件で、厚さ6.4mmの棒状試験片、厚さ3.2mmのASTM1号ダンベル試験片、80mm×80mm×3mm厚の角板(フィルムゲート)をそれぞれ射出成形し、各種試験片(成形品)を得た。
【0185】
各実施例および比較例の評価結果を表1〜3に示す。また、耐熱水性試験処理前後の引張強度保持率は、実施例2:80%、実施例3:94%、実施例14:86%、実施例15:108%であり、耐湿熱性の評価結果は、実施例10:B、実施例11:A、実施例12:A、実施例14:B、実施例16:A、比較例3:B、比較例4:B、比較例5:Bであった。
【0186】
【表1】
【0187】
【表2】
【0188】
【表3】
【0189】
実施例1
〜4、7、8、10〜19は比較例1〜
12と比較して、厚さ6.4mmの成形品のカルボキシル基のピーク強度比が5.0以下であったため、耐熱老化性、耐塩化カルシウム性および表面外観に優れる成形品を得ることができた。
【0190】
実施例2、7は、
比較例10、11と比較して、(B)化合物の反応率が好ましい範囲であったため、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物との相溶性が向上し、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性により優れる成形品を得ることができた。
【0191】
実施例2は、
比較例12と比較して、(B)化合物の1分子中の水酸基の数がエポキシ基の数よりも多いため、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性により優れる成形品を得ることができた。
【0192】
実施例13は、実施例2と比較して、(C)銅化合物を用いたため、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物との相溶性が向上し、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性により優れる成形品を得ることができた。
【0193】
実施例14は実施例2と比較して、実施例15は実施例3と比較して、実施例16は実施例11と比較して、高濃度予備混合物を作製し、2度溶融混練したため、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物との相溶性がさらに向上し、その結果、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性により優れる成形品を得ることができた。
【0194】
実施例2、17は、実施例18、19と比較して、(A)ポリアミド樹脂の融点が好ましい範囲であったため、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物との相溶性がより向上し、その結果、耐熱老化性および耐塩化カルシウム性により優れる成形品を得ることができた。
【0195】
実施例3は実施例2と比較して、実施例15は実施例14と比較して、エポキシ系集束剤のガラス繊維を含有するため、耐熱水性に優れる成形品を得ることができた。
【0196】
実施例11、12は実施例10と比較して、実施例16は実施例14と比較して、分子量と、分子量を1分子中の官能基の数で割った値とがそれぞれ好ましい範囲にある(b’)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物を反応させて得た(B)化合物を含有するため、耐湿熱性により優れる成形品を得ることができた。