(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通風循環運転は、別途設定による基準継続時間(C)の経過によって停止制御可能に構成し、この基準継続時間(C)は、麦乾燥に適合して別途設定した籾より長い基準継続時間(C1)に切替え可能に構成してなることを特徴とする請求項1に記載の循環式穀物乾燥機。
前記循環手段の循環速度を変速制御可能に構成し、前記計測水分値が別途設定による減速水分値(D)以上の範囲について、前記通風循環運転の循環速度を減速制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の循環式穀物乾燥機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、麦の乾燥の際は、張込運転を停止して通風循環運転に切替えても、高水分状態で貯留部で長時間の堆積が続くと、籾と相違して高水分の麦が穀物圧力によって固着し、通風循環運転によっても貯留部に張り付いて蒸れ防止が不十分となるのみならず、循環不良や乾燥ムラを招くことがあり、また、通風循環運転の長時間化によっても、麦の表面損傷を招くこととなり、乾燥品質の確保が困難であった。
【0005】
本発明の目的は、分割張込の際の煩雑な操作を要することなく、次の張込までの間の穀物堆積に伴う水分による各種穀物の蒸れ等の問題を解消することにより、単一の機体で麦を含む各種穀物の適正乾燥を可能とする汎用的な穀物乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項
1に係る発明は、
昇降機(2)によって貯留部(10)に張込まれた穀物を乾燥部(11)で順次熱風乾燥しつつ、前記昇降機(2)を含む循環手段によって前記貯留部(10)に戻す乾燥循環運転と、前記乾燥部(11)で通風乾燥する通風循環運転とを切替えて籾の乾燥制御可能に構成した循環式穀物乾燥機において、前記昇降機(2)に搬送穀物の水分値を計測する水分計(9)を付帯して前記貯留部(10)に穀物を搬送しつつ水分値を計測し、この水分値によって搬送穀物の途絶が判定された時に、前記昇降機(2)による前記貯留部(10)の張込を停止するとともに、前記貯留部(10)に張込まれた穀物の水分値が別途設定による基準水分値(A)以上の場合について前記通風循環運転に移行制御し、また、前記基準水分値(A)は、麦乾燥に適合して別途設定した籾より低い基準水分値(A1)に切替え可能に構成し、前記通風循環運転は、前記貯留部(10)への張込停止時から別途設定による基準待機時間(B)の経過後に開始制御可能に構成し、この基準待機時間(B)は、麦乾燥に適合して別途設定した籾より短い基準待機時間(B1)に切替え可能に構成してなることを特徴とする。
【0008】
請求項
2に係る発明は、請求項1
に係る発明において、前記通風循環運転は、別途設定による基準継続時間(C)の経過によって停止制御可能に構成し、この基準継続時間(C)は、麦乾燥に適合して別途設定した籾より長い基準継続時間(C1)に切替え可能に構成してなることを特徴とする。
【0009】
請求項
3に係る発明は、請求項1
または請求項2に係る発明において、前記循環手段の循環速度を変速制御可能に構成し、前記計測水分値が別途設定による減速水分値(D)以上の範囲について、前記通風循環運転の循環速度を減速制御することを特徴とする。
【0010】
請求項
4に係る発明は、請求項1から請求項
3までのいずれかに係る発明において、前記通風循環運転は、別途選択により、前記通風循環運転を規制制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明により、循環式穀物乾燥機は、穀物を貯留部(10)に張込むと、搬送穀物の途絶の判定によって昇降機(2)が停止し、搬送中に計測された水分値が基準水分値(A)以上であれば、張込停止後に通風循環が開始されて高水分穀物の蒸れを防止でき、この場合、基準水分値(A)の切替えに応じて、麦乾燥に適合する籾より低い基準水分値(A1)によって通風循環運転に移行することで、貯留部内への麦の付着を低減して麦乾燥に適合して張込み後の蒸れが防止できるので、籾乾燥と麦乾燥のそれぞれの乾燥機を要することなく、別種穀物について、それぞれの乾燥品質を確保できることから、一台の乾燥機体の汎用化が可能となる。
【0012】
加えて、循環式穀物乾燥機は、貯留部(10)への穀物張込が停止すると、通風循環運転が、その後の基準待機時間(B)の経過によって開始され、この場合、基準待機時間(B)の切替えに応じて、籾より短い麦乾燥に適する基準待機時間(B1)によって通風循環運転に移行可能であることから、麦乾燥の場合の貯留部内への付着を低減して張込み後の蒸れを効果的に防止することができる。
【0013】
請求項
2に係る発明により、請求項1
に係る発明の効果に加え、循環式穀物乾燥機は、通風循環運転を基準継続時間(C)の経過時に停止し、この基準継続時間(C)は切替えが可能で、籾より長い麦乾燥に適する基準継続時間(C1)の設定が可能であることから、麦乾燥の場合の貯留部内への付着を低減して張込み後の蒸れをさらに効果的に防止することができる。
【0014】
請求項
3に係る発明により、請求項1
または請求項
2に係る発明の効果に加え、穀物の水分値が別途設定による減速水分値(D)以上の範囲で通風循環運転の循環速度が標準より減速制御されることから、高水分状態における循環による損傷を低減して蒸れを抑えることができる。
【0015】
請求項
4に係る発明により、請求項1から請求項
3までのいずれかに係る発明の効果に加え、循環式穀物乾燥機は、穀物を貯留部(10)に張込むと、選択に対応して、搬送穀物の途絶の判定によって昇降機(2)が停止したまま、次の張込まで待機することから、豆の乾燥の場合に、循環に伴う損傷が抑えられて品質確保が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
【0018】
穀物乾燥機は、昇降機2によって貯留部10に張込まれた穀物を乾燥部11で順次熱風乾燥しつつ、上記昇降機2を含む循環手段によって貯留部10に戻す乾燥循環運転と、同様にして乾燥部11で通風乾燥する通風循環運転とを切替え可能に構成することにより、以下に述べる分割張込制御により、籾に限定されることなく、各種穀物の乾燥を開始することができる。
【0019】
分割張込制御について詳細に説明すると、その制御フローチャートを
図1に示すように、張込作業の都度、第一の制御処理ステップ(以下において、「S1」の如く略記する。)において、張込運転スイッチの操作による張込運転の開始から所定時間間隔で水分計9により穀物水分値を測定する。
【0020】
水分計9による測定水分値に基づく張込穀物の途絶の判定(S2)によって張込運転を停止(S3)するとともに、張込穀物の水分値判定(S4)を行い、別途設定による基準水分値A未満であれば、次の張込作業まで待機し、また、基準水分値A以上の場合は、別途設定の基準待機時間Bの経過を待って乾燥部11で通風乾燥する通風循環運転を開始(S5)して所定の基準継続時間Cの経過後に通風循環運転を停止(S6、S7)し、この間において、循環モータの負荷電流に基づいて循環負荷が所定の設定値内(S6a)であることを条件に通風循環運転を継続し、また、循環負荷が穀物張込に相当する所定の設定値以上になると、通風循環運転から張込運転(S1)を再開するように張込制御を構成することにより、次の張込作業に対応することができる。
【0021】
(通風循環開始)
上述の分割張込作業において、張込運転停止後の通風循環運転の開始条件である基準水分値Aは、籾の場合は高く(例えば30%以上)、また、麦の基準水分値A1は籾より低く(例えば27%以上)、また、張込運転停止から通風循環運転の開始までの基準待機時間Bは、籾の場合は長く(例えば1時間)、麦の基準待機時間B1は籾より短く(例えば、30分)し、または、待機時間を両者共通(例えば、30分)とし、穀物種別に対応した制御パラメータの切替えにより、特に、高水分の麦の分割張込作業における貯留部10内の貼り付きを防止して蒸れの問題を解消するとともに、機体内循環による麦の損傷を最小限に抑えて適正な乾燥品質を確保することができる。
【0022】
上記制御構成において、通風循環運転に入る前に通風スイッチを操作した場合に上記制御をキャンセルすることにより、作業者の介入による乾燥運転を可能に構成することができる。
【0023】
また、大豆の乾燥については、その水分値に関わらず、張込停止後の通風循環運転を規制することにより、裂皮や割れの増大を抑えて乾燥品質劣化を防止し、乾燥性能を向上することができる。
【0024】
(通風循環終了)
また、通風循環運転の継続時間が、籾について30分、麦について、籾より長い1時間を上記運転の終了条件とし、または、穀物圧力による固着を生じない水分値、例えば、籾について25%以上、麦について籾より低い22%以上となることを上記運転の終了条件とすることにより、穀物圧力による貯留部10内の固着防止、循環不良あるいは乾燥ムラの防止が可能となり、作業性の向上および乾燥性能を向上させることができる。
【0025】
(循環負荷検出)
穀物搬送系における従来の循環監視は、検出間隔が長い水分計9によることから、循環不良検出に遅れが生じることがあり、対応遅れを招くという問題があり、その解決のために、昇降機2のモータ負荷電流により、循環不良に即時対応が可能となる。
【0026】
詳細には、搬送系が正常循環の場合は、乾燥終了までの間について、昇降機2のモータ負荷電流の変動が一定の範囲内となる知見に基づき、乾燥初期において、昇降機2のモータ負荷電流の複数個の検出値から平均値αを求め、その後の乾燥中に、水分計9による穀物循環監視が正常範囲内(1粒測定は遅延気味)である場合において、負荷電流検出値が上記平均値αから所定電流値(例えば、2A)以下まで低下すると、搬送系不良(穀物詰まりが生じて昇降機2による穀物の汲み上げができなくなった)と判断し、異常報知するとともに、異常処理(異常によるパージ停止)する制御を設ける。
【0027】
このように、モータ負荷電流の連続監視によって搬送系の不良の即時判定が可能となり、搬送系の穀物やゴミの詰まりに対して適切な処置が行えるので、火災防止および穀物品質劣化防止が可能となる。また、電流値の低下傾向を監視することで、判定精度を向上することができる。
【0028】
(循環減速制御)
穀物水分が高い場合は、通常の搬送速度で穀物を循環させると、穀物品質低下(脱ぷ、圧損等)の原因となるという問題があることから、穀物水分の程度により、穀物循環時の搬送系の回転数を調節ことによって、上記問題を解決することができる。
【0029】
詳細には、汎用乾燥機としてインバータにより搬送系の回転数を変更可能とする機構を装備し、穀物一循環分の水分測定データ等により水分ムラ値を算出して通風循環運転に自動移行する穀物乾燥機において、張込穀物が途絶えてから穀物の水分ムラ値を判断し、過大な水分ムラを解消するために通風循環を行う制御について、穀物種類により、所定の減速水分値D(例えば、損傷率が懸念される高水分域となる小麦38%、籾28%)に低下するまでは、インバータにより搬送系の回転数を遅くし、減速水分値D未満となれば、インバータにより搬送系の回転数を標準に戻す制御を設ける。
【0030】
このように、張込に続く通風循環において、穀物循環時に穀物水分の程度により、搬送系の回転数を調節制御することで、穀物品質の劣化防止が可能となり、また、乾燥時においては、搬送速度と乾燥速度との関係を崩さない範囲で適用することができる。
【0031】
(機体構成)
次に、上記制御構成の穀物乾燥機の機体構成例について説明する。
図2、
図3は、それぞれ、穀粒乾燥機のフレーム構成を示す正面図、機体縦断面図である。
穀粒乾燥機は、塔型構成の箱体1の上段部に穀粒を貯留する貯留室からなる貯留部10を、下段部にその穀粒を受けて流動乾燥する乾燥手段である乾燥部11を構成する。
【0032】
箱体1の前側は、乾燥部11から穀粒を上送するバケットコンベヤ等による昇降機2と、熱風を発生させる熱風供給手段であるバーナー4を内設した加熱室5と、乾燥機を運転操作する各種スイッチおよび表示部を備える操作盤6等を備えるほか、箱体1の天井側は昇降機2で上送した穀粒を箱体1の中央まで搬送する排塵機3a付きの搬送装置3を備える。箱体1の後ろ側には排気口8を形成し、箱体1内の熱風を吸引排出する排気手段である排気ファン7を設け、箱体1の側面には、穀粒を投入する投入口(不図示)を開閉可能に構成する。
【0033】
機体各部について詳細に説明すると、昇降機2には穀粒の水分を検出する水分計9と箱体1内の穀粒を機外に排出する穀粒排出口18とをそれぞれ設ける。貯留部10の上部にはラセンによる搬送装置3によって搬送された穀粒を貯留部10の空間内に均一に拡散する拡散羽根12とを備えている。
【0034】
乾燥部11はバーナー4で発生させた熱風が通過する熱風室13と、貯留部10から穀粒が流下する網目壁で形成された流下通路14,14と、排気ファン7と連通してその吸引作用を受ける排風室15とから構成される。
【0035】
流下通路14の下端部には流下通路14にある穀粒を所定量ずつ繰り出す流量調節手段としてのロータリバルブ16を設け、このロータリバルブ16の下方にはロータリバルブ16で繰り出された穀粒を受けて昇降機2に搬送する下部ラセン17を設けている。
【0036】
操作盤6については、
図4の見取図に示すように、張込開始スイッチ、乾燥開始スイッチ、排出開始スイッチ、停止スイッチ等の作業スイッチ、運転状況を表示する各種数値の表示部D等を備えている。また、操作盤6内には一連の運転制御をする制御部を備えている。この制御部により、乾燥部11は、貯留部10から受けた穀粒を流量調節手段16によって所定流量で流動させつつ熱風供給手段4から熱風を受けて穀粒を流動乾燥する。また、制御部には、蕎麦を乾燥するための蕎麦乾燥制御処理を構成し、操作盤6のスイッチSの操作によって通常乾燥と蕎麦乾燥をモード切換可能に構成する。
【0037】
(通常乾燥制御)
通常乾燥モードによる籾等の乾燥作業は、操作盤6の張込開始スイッチを操作すると循環搬送系が稼動し、機体側部の投入口に穀粒を投入することにより穀粒は下部ラセン17を介して昇降機2まで搬送され、昇降機2から搬送装置3を経て貯留部10に張込み供給される。穀粒の投入終了後、乾燥開始スイッチを操作すると燃焼バーナ4が作動し、熱風が熱風室13に供給される。一方、ロータリバルブ16も駆動を開始し、熱風室13に供給された熱風は流下通路14の網目壁を透過して穀粒を加熱乾燥しつつ、排風室15側に吸引されて排出される。流下通路14の穀粒は乾燥作用を受けつつ流下し、順次、下部ラセン17、昇降機2、搬送装置3を経て貯留部10に戻される。水分計9に従って乾燥終了まで穀粒循環による乾燥処理を繰り返す。
【0038】
(技術的意義)
上述の構成による穀物乾燥機の技術的意義についてまとめると、次のとおりである。
【0039】
循環式穀物乾燥機1は、昇降機2によって貯留部10に張込まれた穀物を乾燥部11で順次熱風乾燥しつつ、昇降機2を含む循環手段によって貯留部10に戻す乾燥循環運転と、乾燥部11で通風乾燥する通風循環運転とを切替えて籾の乾燥制御可能に構成した循環式穀物乾燥機において、昇降機2に搬送穀物の水分値を計測する水分計9を付帯して貯留部10に穀物を搬送しつつ水分値を計測し、この水分値によって搬送穀物の途絶が判定された時に、昇降機2による貯留部10の張込を停止するとともに、貯留部10に張込まれた穀物の水分値が別途設定による基準水分値A以上の場合について通風循環運転に移行制御し、また、基準水分値Aは、麦乾燥に適合して別途設定した籾より低い基準水分値A1に切替え可能に構成する。
【0040】
上記構成により、循環式穀物乾燥機は、穀物を貯留部10に張込むと、搬送穀物の途絶の判定によって昇降機2が停止し、搬送中に計測された水分値が基準水分値A以上であれば、張込停止後に通風循環が開始されて高水分穀物の蒸れを防止でき、この場合、基準水分値Aの切替えに応じて、麦乾燥に適合する籾より低い基準水分値A1によって通風循環運転に移行することで、貯留部内への麦の付着を低減して麦乾燥に適合して張込み後の蒸れが防止できるので、籾乾燥と麦乾燥のそれぞれの乾燥機を要することなく、別種穀物について、それぞれの乾燥品質を確保できることから、一台の乾燥機体の汎用化が可能となる。
【0041】
また、通風循環運転は、貯留部10への張込停止時から別途設定による基準待機時間Bの経過後に開始制御可能に構成し、この基準待機時間Bは、麦乾燥に適合して別途設定した籾より短い基準待機時間B1に切替え可能に構成することにより、貯留部10への穀物張込が停止すると、通風循環運転が、その後の基準待機時間Bの経過によって開始され、この場合、基準待機時間Bの切替えに応じて、籾より短い麦乾燥に適する基準待機時間B1によって通風循環運転に移行可能であることから、麦乾燥の場合の貯留部内への付着を低減して張込み後の蒸れを効果的に防止することができる。
【0042】
また、通風循環運転は、通風循環運転は、別途設定による基準継続時間Cの経過によって停止制御可能に構成し、この基準継続時間Cは、麦乾燥に適合して別途設定した籾より長い基準継続時間C1に切替え可能に構成することにより、通風循環運転を基準継続時間Cの経過時に停止し、この基準継続時間Cは切替えが可能で、籾より長い麦乾燥に適する基準継続時間C1の設定が可能であることから、麦乾燥の場合の貯留部内への付着を低減して張込み後の蒸れをさらに効果的に防止することができる
【0043】
また、循環手段の循環速度を変速制御可能に構成し、計測水分値が別途設定による減速水分値D以上の範囲について、通風循環運転の循環速度を減速制御することにより、穀物の水分値が別途設定による減速水分値D以上の範囲で通風循環運転の循環速度が標準より減速制御されることから、高水分状態における循環による損傷を低減して蒸れを抑えることができる。
【0044】
また、穀物乾燥機は、別途選択により、通風循環運転を規制制御可能に構成することにより、穀物を貯留部10に張込むと、選択に対応して、搬送穀物の途絶の判定によって昇降機2が停止したまま、次の張込まで待機することから、豆の乾燥の場合に、循環に伴う損傷が抑えられて品質確保が可能となる。