特許第6724390号(P6724390)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6724390
(24)【登録日】2020年6月29日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】波長変換シート用保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20200706BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20200706BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20200706BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20200706BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20200706BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20200706BHJP
【FI】
   G02B5/20
   B32B9/00 A
   H01L33/00 410
   G02F1/13357
   B32B27/36
   B32B7/02 103
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-14265(P2016-14265)
(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公開番号】特開2017-134254(P2017-134254A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石井 敏也
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/010116(WO,A1)
【文献】 特開2008−006747(JP,A)
【文献】 特開2008−063444(JP,A)
【文献】 特開平10−330516(JP,A)
【文献】 特開2004−137419(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/029733(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0181244(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/20−5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長変換シートにおける蛍光体を保護する波長変換シート用保護フィルムであって、
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる第1の基材と、前記第1の基材の一方の面上にアンカーコート層を介して第1のバリア層とを備え、
かつ前記第1のバリア層は無機薄膜層とガスバリア性被覆層とが積層されて成り、
かつ前記第1のバリア層は第2の基材と接着層を介して接着されており、
かつ前記第1の基材の前記第1のバリア層が存在する面と反対側の面は、X線光電子分光測定(測定条件:X線源MgKα、X線出力100W)を行った場合、酸素元素と炭素元素の原子数比(O/C)が0.5〜0.7の範囲内であり、
前記第1の基材の前記第1のバリア層が存在する面と反対側の面は、X線光電子分光測定(測定条件:X線源MgKα、X線出力100W)を行った場合、C1s波形の解析から求めた官能基比(C−O/C−C)が0.3〜0.5の範囲内であることを特徴とする波長変換シート用保護フィルム。
【請求項2】
前記第2の基材と前記接着層との間に、第2のバリア層を備えることを特徴とする請求項1に記載の波長変換シート用保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換シートにおける蛍光体を保護するための波長変換シート用保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、電圧の印加により液晶の配向状態を制御し、領域ごとに光を透過または遮断することで画像等を表示する装置である。この液晶ディスプレイの光源としては、液晶ディスプレイの背面に設けられたバックライトが利用される。バックライトには、従来、冷陰極管が使用されているが、最近では長寿命、発光効率の良さ等の理由から冷陰極管に代えてLED(発光ダイオード)が使用されつつある。
【0003】
バックライトに使用されるLEDとしては、白色LED技術が用いられている。具体的には、セリウムをドープしたYAG:Ce(イットリウム・アルミニウム・ガーネット・セリウム)下方変換用蛍光体を青色(波長450nm)LEDチップで励起する方法が一般的に用いられている。この場合、LEDの青色光とYAG:Ce蛍光体から発生した波長範囲の広い黄色光とが混ざることで白色光となる。しかし、この白色光は幾分青味がかっていることが多く、しばしば「冷たい」、「涼しげな」白色という印象を与える。
【0004】
近年、量子ドットを用いたナノサイズの蛍光体が製品化されている。量子ドットとは、発光性の半導体ナノ粒子で、直径1〜20nm程度である。量子ドットは幅広い励起スペクトルを示し量子効率が高いため、LED波長変換用蛍光体として使用することができる。さらに、ドットサイズや半導体材料の種類を変更することで、発光の波長を可視域全体にわたって完全に調整することができるという利点がある。そのため、量子ドットはあらゆる色、特に照明業界で強く望まれている暖かい白色を作り出せる可能性を秘めている。加えて、発光波長が赤、緑、青に対応する3種類のドットを組み合わせて、演色評価数の異なる白色光を得ることが可能となる。このように、量子ドットを用いたバックライトを使用する液晶ディスプレイでは、従来のものよりも厚みや消費電力、コスト、製造プロセスを増やすことなく、色調が向上し、人が識別できる色の多くを表現可能となる。
【0005】
上述したような白色LEDを用いたバックライトは、所定の発光スペクトルを持つ蛍光体(量子ドット及びYAG:Ce等)を封止樹脂内に拡散させて蛍光体層を形成し、その表面をさらにバリアフィルムにて封止し、場合によってはエッジ部も封止した波長変換シートをLED光源、及び導光板と組み合わせた構造を有している。
【0006】
前記バリアフィルムは、プラスチックフィルム等の基材表面に蒸着等によって薄膜を形成して、水分や気体の透過を防ぐものである。このバリアフィルムには、透明性及びバリア性の他に、蛍光体層(より正確には蛍光体層における封止樹脂)との密着性が要求される。この密着性が不足するとバリアフィルムと蛍光体層間で剥がれが生じる。従来のバリアフィルムはその多くが食品や医療品、電子デバイスの包装材料として用いられてきたものであり、多層ラミネート構造とする場合はウレタン系の接着剤を介して貼り合わせるため、密着性に関する問題はなかった。しかし、表示デバイスとしての蛍光体層との密着性では満足な性能が得られない問題があった。
【0007】
液晶ディスプレイへの用途としては、例えば特許文献1に、蛍光体の劣化を抑制するため蛍光体をバリアフィルムで挟んだ構造を有するバックライトが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−013567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されたバリアフィルムで蛍光体層を封止したディスプレイを作製した場合、蛍光体層との密着性が不足するために、得られた白色光の寿命が短くなったり、剥がれによりムラになり、それを起点として部分的に輝度が低下してしまう問題があった。
【0010】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、波長変換シートにおける蛍光体を保護するための保護フィルムとして、長期間にわたって蛍光体層との優れた密着性を発揮することができる波長変換シート用保護フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、波長変換シートにおける蛍光体を保護する波長変換シート用保護フィルムであって、
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる第1の基材と、前記第1の基材の一方の面上にアンカーコート層を介して第1のバリア層とを備え、
かつ前記第1のバリア層は無機薄膜層とガスバリア性被覆層とが積層されて成り、
かつ前記第1のバリア層は第2の基材と接着層を介して接着されており、
かつ前記第1の基材の前記第1のバリア層が存在する面と反対側の面は、X線光電子分光測定(測定条件:X線源MgKα、X線出力100W)を行った場合、酸素元素と炭素元素の原子数比(O/C)が0.5〜0.7の範囲内であり、
前記第1の基材の前記第1のバリア層が存在する面と反対側の面は、X線光電子分光測定(測定条件:X線源MgKα、X線出力100W)を行った場合、C1s波形の解析か
ら求めた官能基比(C−O/C−C)が0.3〜0.5の範囲内であることを特徴とする波長変換シート用保護フィルムとしたものである。
【0013】
請求項に記載の発明は、前記第2の基材と前記接着層との間に、第2のバリア層を備えることを特徴とする請求項1に記載の波長変換シート用保護フィルムとしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、波長変換シートにおける蛍光体を保護するための保護フィルムとして、長期間にわたって蛍光体層との優れた密着性を有するので、剥がれによる波長変換シートのムラ、及び外観不良の発生を抑えることができる。これにより、長期間にわたってバックライトの発光効率を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の波長変換シート用保護フィルムに係る、第1の実施形態を示す模式断面図である。
図2】本発明の波長変換シート用保護フィルムに係る、第2の実施形態を示す模式断面図である。
図3】本発明の波長変換シート用保護フィルムの第1の実施形態を用いて得られる波長変換シートを示す断面模式図である。
図4】本発明の波長変換シート用保護フィルムの第2の実施形態を用いて得られる波長変換シートを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る波長変換シート用保護フィルムについて詳細に説明する。尚、同一の構成要素については便宜上の理由がない限り同一の符号を付け、重複する説明は省略する。また、図面では各部材を認識可能な大きさにするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
図1は本発明の波長変換シート用保護フィルムの第1の実施形態を示す模式断面図である。PETからなる第1の基材1の一方の面にアンカーコート層3が形成され、その上に無機薄膜層4が形成され、さらにその上にガスバリア性被覆層5が積層されている。以下、無機薄膜層4とガスバリア性被覆層5を合わせてバリア層(図示せず)と呼び、第1の基材1上のアンカーコート層3上のバリア層を第1のバリア層と呼ぶ。
【0018】
さらに第1の実施形態では、第1のバリア層は第2の基材2と接着層6を介して接着されている。
【0019】
さらに第1の実施形態では、第1の基材1の第1のバリア層が存在する面と反対側の面は、X線光電子分光測定(測定条件:X線源MgKα、X線出力100W)を行った場合、酸素元素と炭素元素の原子数比(O/C)が0.5〜0.7の範囲内であるように調整され制御されている。
【0020】
さらに好ましくは、前記第1の基材1の第1のバリア層が存在する面と反対側の面は、X線光電子分光測定(測定条件:X線源MgKα、X線出力100W)を行った場合、C1s波形の解析から求めた官能基比(C−O/C−C)が0.3〜0.5の範囲内であるように調整され制御されている。
【0021】
上記のような、第1の基材1のPETフィルム表面の原子数比(O/C)、及び官能基比(C−O/C−C)の調整・制御は、第1の基材1の表面に、酸素、窒素、アルゴン、またはそれらの混合ガスによるプラズマ処理を施し、プラズマ処理層7を形成することによって行うことができる。
【0022】
すなわち、前記のガスによるプラズマ中に第1の基材1の前記表面を暴露することで、プラズマ中のラジカルやイオンにより基材表面に官能基を付与する化学効果が得られ、プラズマ処理層7が形成される。また、イオンエッチングによって表面不純物を除去すると共に、表面粗さを大きくする物理的効果も得られる。これにより生成したヒドロキシル基とエポキシ樹脂などの蛍光体層の封止樹脂との水素結合により密着性を高めることができる。また物理的には表面粗さを大きくすることによって投錨効果により蛍光体層の封止樹脂との密着性を高めることができる。
【0023】
上記のように、PETフィルム表面の化学構造の解析には、X線光電子分光法(以下XPSと記す)を用いることができる。XPSによる測定は、被測定物質の表面から数nmの深さ領域の原子の種類と濃度や、その原子と結合している原子の種類等の結合状態を解析することができる。
以下、O/C原子数比を単にO/C比、C−O/C−C官能基比を単にC−O/C−C比と記す。
【0024】
図2は本発明の波長変換シート用保護フィルムの第2の実施形態を示す模式断面図である。第2の実施形態では、第2の基材2と前記接着層との間に、第2のバリア層を備えている。言い換えれば、第2の基材2にも一方の面にアンカーコート層3が形成され、その
上に無機薄膜層4a、ガスバリア性被覆層5aからなる第2のバリア層(図示せず)が形成されており、第1のバリア層のガスバリア性被覆層5と、第2のバリア層のガスバリア性被覆層5aとが接着層6を介して接着されている。このように、第2の基材2側にもバリア層を備えることで、バリア性を一層高めることができる。
【0025】
以下、本発明の波長変換シート用保護フィルムを構成する各要素について説明する。
【0026】
第1の基材1は2軸延伸のPETフィルムであり(以下、適宜PET基材と記す)、その厚みは優れたバリア性を得るために、12μm以上とすることが望ましいが、波長変換シートの総厚を薄くするため保護フィルムは50μm以下にすることが望ましい。
【0027】
アンカーコート層は、PET基材の表面にアンカーコート剤を塗布し、乾燥することによって形成することができる。アンカーコート剤をPET基材の表面に塗布することにより、PET基材と無機薄膜層との密着性を高めるだけでなく、レベリング作用が生じ、無機薄膜層の形成面の平坦性を向上させることができるので、クラック等の膜欠陥が少なく均一な無機薄膜層を形成とすることができる。前記アンカーコート剤としては、例えば、溶剤溶解性または水溶性のポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチレン・ビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂またはアルキルチタネート等から選択されることが好ましい。これらは単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
アンカーコート層の厚みは、5nm〜5μm程度が好ましい。より好ましくは10nm〜1μmである。このような厚さにすることで、内部応力が抑制された均一な層をPET基材上に形成することができる。また、アンカーコート層の塗布性、接着性を改良するために、アンカーコート層形成に先立って、PET基材の表面に放電処理を施してもよい。
【0029】
無機薄膜層としては酸化珪素膜または酸化アルミニウム膜を用いることができる。酸化珪素膜の場合はO/Si原子数比が1.6から2.0であることが好ましい。また、酸化アルミニウムの場合はO/Al原子数比が1.5から1.6であることが好ましい。このような比率にすることにより安定したバリア性を維持することができる。
【0030】
無機薄膜層の厚みは厚すぎると残留応力により柔軟性を保持できず、成膜後の外的要因によって亀裂が生じるおそれがある。5〜300nmの範囲の厚さに規定した無機薄膜層は膜厚の均一化とガスバリア材としての適切な柔軟性を示す。より好ましい無機薄膜層の厚さは10〜50nmである。
【0031】
無機薄膜層の作製法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、及びプラズマ気相成長法等を採用できる。生産性を考慮すれば、真空蒸着法が好ましい。さらに緻密性、及び密着性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオン・ビームアシスト法を用いて蒸着してもよい。また、酸素等の各種ガスなどを吹き込みつつ蒸着を行う(反応蒸着)ことによって、蒸着される無機薄膜層の透明性をより一層高めることができる。
【0032】
ガスバリア性被覆層の材料は、例えば、溶剤溶解性、または水溶性のポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、及びアルキルチタネート等から選択することができる。ガスバリア性被覆層は、これらの材料を用いた単独層、または2種類以上の積層によって構成することができる。
【0033】
ガスバリア性被覆層には、フィラーを添加してバリア性、摩耗性、滑り性等を向上させることもできる。フィラーとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル、粒子状無機フィラー、及び層状無機フィラーなどが挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。ガスバリア性被覆層は、前述の樹脂にフィラーを添加し、重合または縮合させることにより形成することが好ましい。
【0034】
接着層の材料は耐久性、透明性を得るためウレタン系の熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0035】
第2の基材の材料は、特に限定されるものではないが、全光線透過率が85%以上の基材が好ましい。例えば透明性が高く、耐熱性が優れた基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムを用いることができる。
【0036】
第2の基材の厚みは第1の基材の厚みと同様に、保護フィルムのバリア性を維持するために、12μm以上とすることが望ましいが、波長変換シートの総厚を薄くするため保護フィルムは50μm以下であることが好ましい。
【0037】
図3図4は、各々、本発明の波長変換シート用保護フィルム30、31を用いて得られる波長変換シート100、200を示す断面模式図である。波長変換シート100、200は、蛍光体層10と、該蛍光体層10の両面にそれぞれ保護フィルム30、31とを備えて構成されている。これにより、保護フィルム30、31の間に蛍光体層10が包み込まれた構造となっている。
【0038】
蛍光体層10と、その両面に設けられた保護フィルム30、31は、保護フィルム30、31の第1の基材1のプラズマ処理面7と蛍光体層10が対向するように積層されている。尚、波長変換シートは、100、200のように、蛍光体層10が同一構成の保護フィルムによって挟まれていてもよく、異なる構成の保護フィルムによって挟まれていてもよい。
【0039】
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、及びその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。したがって、本発明の説明によって限定されていると見なされるべきでなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0041】
はじめに、実施例、比較例におけるプラズマ処理方法、及び測定方法について述べる。
【0042】
プラズマ処理はスパッタリング装置(株式会社真空デバイス社製MSP−20−UM)を用いて行った。本装置は通常は電子顕微鏡の導電処理に用いる装置のため、白金ターゲットをマスキングして親水化処理モードでプラズマ処理を行った。真空度は10Pa、エミッション電流は30mA、処理ガスは空気を用い、プラズマ処理時間を変えることによって処理度を調整した。
【0043】
PETフィルムのO/C比とC−O/C−C比は、X線光電子分光分析装置(日本電子株式会社製、JPS−90MXV)を用いて、XPSにより求めた。具体的には、X線源として非単色化MgKα(1253.6eV)を使用し、100W(10kV−10mA
)のX線出力で測定した。O/C比を求めるための定量分析には、それぞれO1sで2.28、C1sで1.00の相対感度因子を用いた。C−O/C−C比はC1s波形の分離解析から求めた。
【0044】
<実施例1>
PETからなる第1の基材の一方の面に、シランカップリング剤、アクリルポリオール及びイソシアネート化合物を含む複合物と溶媒とを混合して得られた塗液をグラビアコートし、加熱乾燥することで約50nmのウレタン系樹脂からなるアンカーコート層を形成した。次に、アンカーコート層の上に電子線加熱方式により、O/Si比が1.8、厚さ15nmの酸化珪素膜を蒸着形成し、無機薄膜層とした。次に、テトラエトキシシラン加水分解溶液とポリビニルアルコール/水/イソプロピルアルコール混合溶液を混合することによって溶液を用意し、この溶液をグラビアコートにより塗工することによって、厚さ0.3μmのオーバーコート層を酸化珪素膜上に形成し、ガスバリア性被覆層とした。以上の工程によって第1のバリア層を作製した。この第1のバリア層と、第2の基材としての50μm厚のPETをウレタン系接着剤で貼り合わせ、図1の構成の波長変換シート用保護フィルム(プラズマ処理層7形成前)を作製した。この保護フィルムの第1の基材の第1のバリア層が存在する面と反対側の面に上記のプラズマ処理を30秒間行い、O/C比が0.52、C−O/C−C比が0.32となるように調整し、量子ドットを蛍光体とする蛍光体層と貼り合わせ、紫外線硬化させて密着性評価用の試験サンプルを作製した。
【0045】
<実施例2>
プラズマ処理を45秒間行い、O/C比が0.56、C−O/C−C比が0.36となるように第1の基材(PET)表面を調整した以外は、実施例1と同様の条件で密着性評価用の試験サンプルを作製した。
【0046】
<実施例3>
プラズマ処理を60秒間行い、O/C比が0.60、C−O/C−C比が0.40となるように第1の基材(PET)表面を調整した以外は、実施例1と同様の条件で密着性評価用の試験サンプルを作製した。
【0047】
<実施例4>
プラズマ処理を75秒間行い、O/C比が0.63、C−O/C−C比が0.44となるように第1の基材(PET)表面を調整した以外は、実施例1と同様の条件で密着性評価用の試験サンプルを作製した。
【0048】
<実施例5>
プラズマ処理を90秒間行い、O/C比が0.68、C−O/C−C比が0.48となるように第1の基材(PET)表面を調整した以外は、実施例1と同様の条件で密着性評価用の試験サンプルを作製した。
【0049】
<比較例1>
プラズマ処理を15秒間行い、O/C比が0.45、C−O/C−C比が0.26となるように第1の基材(PET)表面を調整した以外は、実施例1と同様の条件で密着性評価用の試験サンプルを作製した。
【0050】
<比較例2>
プラズマ処理を120秒間行い、O/C比が0.75、C−O/C−C比が0.55となるように第1の基材(PET)表面を調整した以外は、実施例1と同様の条件で密着性評価用の試験サンプルを作製した。
【0051】
上記の各試験サンプルの、接着された保護フィルムと蛍光体層界面を剥がしてきっかけ(剥離開始箇所)を作り、剥離強度を測定した。引張試験機は、オリエンテック社製テンシロンRTC−1250を用いて、180°の角度で剥離した時の剥離強度を測定した。剥離強度の評価において、2.0N/15mm以上を合格(○)、2.0N/15mm未満を不合格(×)と判定した
【0052】
実施例1〜5、比較例1、2で得られた各試験サンプルのO/C比、C−O/C−C比、及び剥離強度の測定結果と判定結果を表1に示す。
【表1】
【0053】
実施例1〜5で得られた本発明の波長変換シート用保護フィルムはいずれも剥離強度が2.0N/15mm以上(最大3.6N/15mm)を示し、保護フィルムと蛍光体層とで高い密着強度を有する結果が得られた。一方、比較例1、2は1.2N/15mmと1.4N/15mmであり、合格レベルである密着強度に達しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の蛍光体層との密着性の高い波長変換シート用保護フィルムを使用することで、長期間にわたって外観不良を抑えることができる波長変換シート、及びそれを用いた高い発光効率を維持することができるバックライトユニットが得られ、該バックライトユニットを使用することで、耐久性に優れたディスプレイを製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・第1の基材
2・・・第2の基材
3・・・アンカーコート層
4、4a・・・無機薄膜層
5、5a・・・ガスバリア性被覆層
6・・・接着層
7・・・・プラズマ処理層
8・・・・蛍光体
9・・・・封止樹脂
10・・・蛍光体層
20、21・・・ガスバリアフィルム
30、31・・・保護フィルム
100、200・・・波長変換シート
図1
図2
図3
図4