(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug in Hybrid Vehicle)などの車両には、原動機となる電動機への供給電力を蓄える蓄電装置としてリチウムイオン電池などの二次電池が搭載されている。この種の二次電池は、例えば、特許文献1に開示されている。
図8に示すように、特許文献1の電池は、図示しない電極組立体と電気的に接続された端子部材81を備える。端子部材81は筐体82の蓋部82aに存在する孔82bを貫通し、筐体82の外部に突出している。
【0003】
端子部材81は、筐体82内に配置された板状の集電部品83と、集電部品83に固着された電極端子としての端子部品84とを備える。端子部品84は軸方向の一端部にクリンチ部85を備える。端子部品84は、クリンチ部85の外周面に粗し面形成部84aを備える。端子部品84は、軸方向の他端側に接続部84bを備え、接続部84bは雄ネジである。この接続部84bにナットを用いてバスバーを締結することにより、電池同士が連結される。
【0004】
集電部品83は、端子部品84の粗し面形成部84aが圧入される圧入孔83aを備える。そして、圧入孔83aにクリンチ部85が圧入され、集電部品83と端子部品84が固着して、導電性が確保されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、蓄電装置を二次電池に具体化した一実施形態を
図1〜
図6にしたがって説明する。
図1及び
図2に示すように、蓄電装置としての二次電池10は、ケース12を備える。二次電池10は、ケース12に収容された電極組立体20及び図示しない電解液を備える。ケース12は、開口部13dを有する直方体状のケース本体13と、ケース本体13の開口部13dを閉塞する矩形平板状の蓋14とを有する。ケース本体13と蓋14は、何れも金属製(例えば、ステンレスやアルミニウム)である。二次電池10は、角型のリチウムイオン電池である。
【0015】
詳細に図示しないが、電極組立体20は、矩形シート状の正極電極21と矩形シート状の負極電極22とを備える。正極電極21と負極電極22とは、間にセパレータ23を介在させて層状とされた積層型である。正極電極21は、矩形状の正極用金属箔(本実施形態ではアルミニウム箔)と、その正極用金属箔の両面に存在する正極活物質層を備える。負極電極22は、矩形状の負極用金属箔(本実施形態では銅箔)と、その負極用金属箔の両面に存在する負極活物質層を備える。
【0016】
正極電極21は、一辺(長辺)の一部から突出した形状の正極集電タブ21cを有する。負極電極22は、一辺(長辺)の一部から突出した形状の負極集電タブ22cを有する。正極電極21は、それぞれの正極集電タブ21cが積層方向に沿って列状に配置されるように積層される。負極電極22は、それぞれの負極集電タブ22cが、正極集電タブ21cと重ならないように積層方向に沿って列状に配置されるように積層される。複数の正極集電タブ21cは、電極組立体20における積層方向の一端から他端までの範囲に集められている。また、複数の負極集電タブ22cも同様に、電極組立体20における積層方向の一端から他端までの範囲に集められている。
【0017】
二次電池10は、正極集電タブ21cを集めた正極タブ群21dを備える。二次電池10は、正極タブ群21dに接合された正極導電部材33を備える。二次電池10は、負極集電タブ22cを集めた負極タブ群22dを備える。二次電池10は、負極タブ群22dに接合された負極導電部材37を備える。
【0018】
二次電池10は、正極導電部材33に接合された正極の電極端子41を備える。また、二次電池10は、負極導電部材37に接合された負極の電極端子41を備える。正極の電極端子41及び負極の電極端子41は、それぞれ電極組立体20と電気を授受する。各極の電極端子41は、ケース12の内外を蓋14で貫通し、かつ蓋14に固定されている。
【0019】
次に、電極端子41について説明する。正極の電極端子41と負極の電極端子41は形状は同じである。
図3に示すように、電極端子41は、ボルト状の接続部材42と、接続部材42に固着された端子部材52とを備える。正極の電極端子41において、接続部材42は純アルミニウム製である。負極の電極端子41において、接続部材42は純銅製である。正極及び負極の端子部材52は、例えば炭素鋼、クロム鋼、ニッケルクロム鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼等の鉄系高強度鋼合金製である。端子部材52の材料である鉄系合金は、正極の接続部材42の材料である純アルミニウム、及び負極の接続部材42の材料である純銅より硬度が高い。
【0020】
図1又は
図3に示すように、接続部材42は、四角板状の基部43を有する。正極の電極端子41は、基部43が正極導電部材33に接合され、負極の電極端子41は、基部43が負極導電部材37に接合されている。
【0021】
接続部材42は、基部43の中央から立設した円筒状の筒状部44を備える。筒状部44は、電極端子41における蓋14の貫通方向に基部43から延出している。接続部材42は、筒状部44の外周面に雄ネジ44aを備える。接続部材42において、筒状部44の中心軸線Lの延びる方向を軸方向とする。接続部材42は圧入凹部45を筒状部44に備える。圧入凹部45は、軸方向に沿って筒状部44の先端面から円形状に凹む形状である。
【0022】
図4(a)又は
図4(b)に示すように、接続部材42は、筒状部44の内周面に環状突部46を二つ備える。環状突部46は、接続部材42の内周面から、接続部材42の中心軸線Lに向けて環状に突出した形状である。各環状突部46は、筒状部44の周方向全体に亘って存在する。接続部材42を軸方向から見た平面視において、環状突部46は非真円形状である。環状突部46は、筒状部44の内周面からの突出寸法が、筒状部44の周方向に沿って異なる形状である。
【0023】
環状突部46において、筒状部44の外形に相似な円であり、中心軸線Lに最も近い点P1を結んで形成される円を仮想円C1とし、この仮想円C1の直径を、筒状部44の最小内径r1とする。最小内径r1を形成する点P1を、環状突部46の最小内径部P1とする。また、環状突部46において、筒状部44の外形に相似な円であり、中心軸線Lから最も遠い点P2を結んで形成される円を仮想円C2とし、この仮想円C2の直径を、筒状部44の最大内径r2とする。最大内径r2を形成する点P2を、環状突部46の最大内径部P2とする。
【0024】
環状突部46は、最小内径部P1と最大内径部P2を滑らかに繋いだ形状である。筒状部44を軸方向から見て、二つの環状突部46同士で最小内径部P1は重なり、最大内径部P2も重なる。最小内径部P1と最大内径部P2は、筒状部44の周方向に交互に存在し、環状突部46は、筒状部44の内周面からの突出寸法が、筒状部44の周方向に沿って変化する。一つの環状突部46には、四つの最小内径部P1と最大内径部P2が交互に存在する。なお、環状突部46は、最小内径部P1及び最大内径部P2を境とした圧入凹部45の開口側及び反対側について斜面勾配が同じである。
【0025】
図1又は
図4(a)に示すように、端子部材52は、ケース12の外側に配置されている。端子部材52は、円柱状の極柱部53と、極柱部53の中心軸線Mの延びる方向に沿って突出した軸部54とを備える。極柱部53の直径r3は、接続部材42における最小内径r1及び最大内径r2より大きい。軸部54は、外周面に螺刻された螺子部54aを備える。
【0026】
図3に示すように、接続部材42の筒状部44には、端子部材52の極柱部53が圧入されている。言い換えると、端子部材52の極柱部53は、筒状部44に対し圧入された状態である。圧入状態では、各環状突部46を含む筒状部44の内周面が拡径方向に塑性変形し、各環状突部46を含む筒状部44の内周面が、極柱部53の周面に対し、周方向全体に亘って圧接している。特に、各環状突部46は、高さが低くなる状態に押し潰されている。また、各環状突部46の突出端付近は、極柱部53の圧入方向に沿って塑性流動している。
【0027】
この圧接により、極柱部53の回転及び接続部材42からの抜け出しが規制され、端子部材52は接続部材42に固着されている。また、圧接により、接続部材42と端子部材52が電気的に接続されている。
【0028】
図3又は
図5の矢印Yに示すように、筒状部44の内周面及び環状突部46から、極柱部53の周面に対し締付力が作用している。各環状突部46において、最小内径部P1と最大内径部P2の高さが異なるため、締付力の分布は、極柱部53の周方向に沿って異なり、最小内径部P1の締付力の方が、最大内径部P2の締付力より大きい。極柱部53の周面に対する筒状部44からの締付力は、極柱部53の周方向に沿って大小が交互に連続する。
【0029】
図6(a)に、極柱部53が筒状部44に圧入される前の環状突部46の金属組織を模式的に示す。圧入前、環状突部46は、塑性流動の発生していない金属結晶粒層αを構成している。
【0030】
図6(b)に、最小内径部P1が筒状部44に圧入された後の金属組織を模式的に示す。圧入後、最小内径部P1の突出端付近は、金属結晶粒が破壊され、かつ金属結晶粒が圧入方向に流れた微細結晶粒層βを構成し、その微細結晶粒層βの外周側は塑性流動層γを構成している。
【0031】
図6(c)に、最大内径部P2が筒状部44に圧入された後の金属組織を模式的に示す。圧入後、最大内径部P2の突出端付近は塑性流動層γを構成している。これは、最大内径部P2の突出寸法(高さ)は、最小内径部P1の突出寸法(高さ)に比べて小さく(低く)、金属結晶粒の破壊が少ないためである。
【0032】
図1又は
図3に示すように、二次電池10は、基部43に装着された樹脂製の端子カバー50を備える。端子カバー50は、ケース12と各極性の電極端子41とを電気的に絶縁する。二次電池10は、基部43に支持されたOリング56を備える。Oリング56は、筒状部44を取り囲む状態である。筒状部44の一部及び軸部54は、蓋14の挿通孔14bよりケース12の外部に突出(露出)している。電極端子41の基部43は、ケース12内に位置する。二次電池10は、円筒状の絶縁部材19を備える。絶縁部材19は、蓋14の挿通孔14bの内周面と、筒状部44の外周面とを絶縁する。
【0033】
接続部材42の雄ネジ44aにはナット55が螺合されている。蓋14とナット55との間には、絶縁部材19のフランジ部19aが挟圧され、フランジ部19aによってナット55と蓋14が絶縁されている。
【0034】
また、ナット55が接続部材42の雄ネジ44aに螺合されることによって、ナット55と基部43との間に、フランジ部19a、蓋14、Oリング56及び端子カバー50が狭圧されるとともに電極端子41が蓋14に締結されている。Oリング56は、圧縮状態で蓋14の内面及び基部43に密接し、挿通孔14bの周囲をシールしている。
【0035】
図2に示すように、各二次電池10は、正極の電極端子41が隣り合う二次電池10の負極の電極端子41に、負極の電極端子41が隣り合う二次電池10の正極の電極端子41にそれぞれバスバー60を介して接続され、接続された複数の二次電池10によって蓄電モジュール71が構成されている。
【0036】
図1に示すように、二次電池10同士を電気的に接続するバスバー60は、矩形板状である。バスバー60は、一対の挿通部60aを有する。端子部材52における軸部54の螺子部54aには、バスバー固定用のネジ部材としてのナット61が螺合されている。ナット61によってバスバー60が端子部材52に固定されている。
【0037】
次に、接続部材42と端子部材52を一体化する方法について説明する。
端子部材52の極柱部53を筒状部44の圧入凹部45に圧入するには、圧入凹部45の開口側の環状突部46に極柱部53を配置する。そして、図示しない圧入嵌合装置の固定治具により接続部材42を把持し、端子部材52を可動治具により把持して、該端子部材52を接続部材42の環状突部46に圧入していく。このとき、極柱部53はまず環状突部46の斜面に沿って該斜面を径方向外方へ押圧して拡径しつつ弾性変形させる。次に、極柱部53の先端部が環状突部46を乗り越えると、もう一つの環状突部46の斜面を径方向外方へ押圧して拡径しつつ弾性変形させる。そして、極柱部53全体が圧入凹部45に圧入されると、圧入作業は終了する。
【0038】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)接続部材42に端子部材52が固着された電極端子41において、筒状部44の内周面に加え、二つの環状突部46が極柱部53の周面に圧接している。各環状突部46は、最小内径部P1と最大内径部P2を備え、環状突部46による締付力の分布が周方向に変化する。このため、各環状突部46では、筒状部44の内周面よりも極柱部53に対する締付力がより強くなり、しかも締付力の高い箇所が周方向に複数存在する。このため、端子部材52を接続部材42に強固に固着できる。その結果、端子部材52にバスバー60を締結するため、端子部材52の軸部54にナット61が螺合する際、端子部材52にトルクが掛かっても端子部材52が回転することを規制でき、端子部材52と接続部材42の固着状態を維持できる。
【0039】
(2)筒状部44の内周面、及び二つの環状突部46が、端子部材52の極柱部53に圧接している。このため、接続部材42と端子部材52の接触面積を確保して、接続部材42と端子部材52の導電性を確保することができる。
【0040】
(3)正極の電極端子41において接続部材42を純アルミニウム製とし、負極の電極端子41において接続部材42を純銅製とした。純アルミニウム及び純銅は軟質金属であり塑性変形しやすい。一方、端子部材52は鉄系高強度鋼合金製であり、高強度である。このため、筒状部44に極柱部53を圧入する際、筒状部44の内周面、及び環状突部46を塑性変形させ、筒状部44の割れを防止できるとともに、極柱部53に対し圧接させることができる。したがって、正極に純アルミニウムを使用し、負極に純銅を使用するリチウムイオン二次電池は、端子部材52を接続部材42に圧入する構造を採用するのに好適である。
【0041】
(4)接続部材42の筒状部44に端子部材52の極柱部53を圧入し、筒状部44の軸方向全体に極柱部53が圧入されている。よって、例えば、導電部材の厚み内に極柱部53を圧入する場合と比べると、圧入長さを長く確保でき、端子部材52を接続部材42に強固に固着できる。
【0042】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 二つの環状突部46において、筒状部44の内周面から中心軸線Lに向けた突出寸法を環状突部46同士で異ならせてもよい。例えば、筒状部44の先端側の環状突部46の突出寸法を、奥の環状突部46の突出寸法より小さくしてもよい。
【0043】
○ 二つの環状突部46において、筒状部44を軸方向から見た場合、最小内径部P1同士が周方向にずれ、最大内径部P2同士が周方向にずれていてもよい。
○ 二つの環状突部46において、圧入凹部45の開口端側の環状突部46の点P1,P2を境として、端子部材52を圧入する側の斜面勾配を緩やかにし、反対側の斜面の勾配を大きくしてもよい。同様に、圧入凹部45の奥側の環状突部46の点P1,P2を境として、端子部材52を圧入する側の斜面勾配を緩やかにし、反対側の斜面の勾配を大きくしてもよい。このように構成した場合、端子部材52の圧入凹部45への圧入作業を容易に行うことができる。
【0044】
○ 一つの環状突部46に存在する最小内径部P1と最大内径部P2の数は三つでもよいし、五つ以上でもよい。
○ 一つの環状突部46において、最小内径部P1より小さく、最大内径部P2より大きい内径の部位があってもよい。
【0045】
○ 端子部材52において、軸部54を筒状とし、軸部54の内周面に雌ネジの螺子部54aを設けてもよい。この場合、軸部54にバスバー60を締結するには、雌ネジ製の螺子部54aには、バスバー固定用のネジ部材として、バスバー60の挿通部60aに挿通されたボルトが螺合される。
【0046】
○ 二次電池10の端子構造としては、
図7に示す形態であってもよい。各極性のタブ群21d,22d(
図7では負極のタブ群22dのみ図示)に接続された導電部材62と、導電部材62に接合され、蓋14を貫通してケース12外に突出した引出端子63と、蓋14の外面に配置された電極端子64と、この電極端子64と引出端子63とを接続する端子接続部材65と、を備えたものであってもよい。なお、引出端子63は、内側絶縁部材66によって蓋14の内面から絶縁されるとともに、外側絶縁部材67によって蓋14の外面から絶縁される。さらに、外側絶縁部材67によって電極端子64が蓋14の外面から絶縁されている。外側絶縁部材67は、蓋14に位置決めされ、その外側絶縁部材67に端子接続部材65が位置決めされている。また、電極端子64は端子接続部材65に接合され、蓋14に位置決めされている。電極端子64は、引出端子63及び端子接続部材65を介して導電部材62と電気的に接続されている。
【0047】
そして、電極端子64を接続部材68と端子部材52とで構成し、接続部材68の筒状部70に環状突部68aを設け、極柱部53の周面に対する締付力が周方向に沿って異なる状態で圧接した構造を取るように、環状突部68aの突出高さを周方向に異ならせてもよい。
【0048】
○ 環状突部は、接続部材42の軸方向に三箇所以上あってもよい。
○ 電極組立体20は、1枚の帯状の正極電極と1枚の帯状の負極電極とをセパレータで絶縁した状態で捲回軸を中心に捲回した捲回型であってもよい。
【0049】
○ 蓄電装置は、電気二重層キャパシタ等の他の蓄電装置であってもよい。
○ 実施形態では、二次電池10はリチウムイオン二次電池であったが、これに限られず、ニッケル水素化物電池等の他の二次電池であってもよい。要は、正極活物質層と負極活物質層との間をイオンが移動するとともに電荷の授受を行うものであればよい。
【0050】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(1)前記電極端子は、正極が純アルミニウム製であり、負極が純銅製である蓄電装置。
【0051】
(2)前記端子部材は、鉄系高強度鋼合金製である蓄電装置。