(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の機械式の摩耗検出器は、裏板のディスクロータとは反対側の面(シリンダ押圧面)にセンサ片の本体(例えばバネ部)を突出させることで振動部分を形成して、センサ片の先端がディスクロータに臨むようにしている。そのため、シリンダ押圧面側に配置されるシリンダやマウンティング等の他の部品との干渉を考慮して、摩耗検出器の設計を行う必要がある。つまり、形状や大きさの制限を受ける。その結果、警告音の大きさや音色が制限されたりばらついたりする場合があった。そこで、本発明の課題の一つは、例えば、他の部品の干渉を受けず、安定した警告音を発生することができるブレーキパッド摩耗検出器を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態のブレーキパッド摩耗検出器は、例えば、ディスクロータの摺動面と接触するライニングが固定された第一の面と第一の面
の裏面である第二の面とを有した裏板に
対して、第一の面と当接するように取り付けられる取付部と
、第一の面
に対して第二の面とは反対側に、取付部から突出するとともに
、反対側で
複数回屈曲されたアーム部と、アーム部に設けられ
、ライニングが摩耗した場合にディスクロータと接触す
る接触部と、を備え
、アーム部は、第一の面に沿って接触部とは反対方向に延びた第一の延設部を有する。この構成によれば、第二の面側に構成部材が突出しないので、第二の面側に配置される他の部品との干渉を考慮する必要がなく、取付部、アーム部、接触部の形状や大きさの設計の自由度が向上するので、安定した警告音を発生させやすくなる。また、アーム部を屈曲させることで、アーム部の剛性を向上するとともに、アーム部の長さを長くすることができるので、発生させる警告音の音量や音色の調整が容易になる。
また、例えば、取付部から接触部に至るまでのアーム部の長さを長くすることができる。つまり、接触部がディスクロータに接触した場合の振動部分の長さを長くすることができる。その結果、警告音の周波数を下げられる。つまり、警告音が高音になることを抑制して認識させやすい警告音を発生させられる。
【0006】
また、本実施形態のブレーキパッド摩耗検出器のアーム部は、例えば、ディスクロータの外形より外側に位置するようにしてもよい。この構成によれば、例えば、ブレーキパッド摩耗検出器が裏板の第一面側であるディスクロータ側に設けられてもディスクロータとの干渉を考慮する必要がなく、アーム部の形状や大きさの設計の自由度が向上するので、安定した警告音をより発生させやすくなる。
【0008】
また、本実施形態のブレーキパッド摩耗検出器のアーム部は、例えば、第一の延設部の端部に設けられ第二の面とは反対側に延びる第二の延設部を有してもよい。この構成によれば、例えば、取付部から接触部に至るまでのアーム部の長さを長くすることができる。つまり、接触部がディスクロータに接触した場合の振動部分の長さをさらに長くすることができる。その結果、警告音の周波数を下げられる。つまり、警告音が高音になることを抑制して認識させやすい警告音を発生させられる。
【0009】
また、本実施形態のブレーキパッド摩耗検出器のアーム部は、例えば、第二の延設部の端部に設けられ接触部が設けられた方向に折り返されるように延びる第三の延設部を有してもよい。この構成によれば、例えば、取付部から接触部に至るまでのアーム部の長さを長くすることができる。その結果、接触部がディスクロータに接触した場合の振動部分(アーム部)の長さをさらに長くすることができる。その結果、警告音の周波数を下げられる。つまり、警告音が高音になることを抑制して認識させやすい警告音を発生させられる。
【0010】
また、本実施形態のブレーキパッド摩耗検出器の取付部は、例えば、第一の面と接触する第三の面と第三の面とは反対側の第四の面とを有する板状部であり、アーム部は、第三の延設部の端部に設けられ板状部の側面を第四の面側から第三の面側に延び、さらに第四の面側に折り返されるように延びる第四の延設部を有してもよい。この構成によれば、例えば、取付部から接触部に至るまでのアーム部の長さを長くすることができる。その結果、接触部がディスクロータに接触した場合の振動部分の長さをさらに長くすることができて、警告音の周波数を下げられる。つまり、警告音が高音になることを抑制して認識させやすい警告音を発生させられる。また、第四の延設部は複数回屈曲することで、さらに剛性が向上し、警告音の音量増加に寄与できる。
【0011】
また、本実施形態のブレーキパッド摩耗検出器の接触部は、例えば、ディスクロータの内径方向に向かって延びてもよい。この構成によれば、例えば、接触部は、ディスクロータの回転力を受けやすくなり、警告音の増大に寄与できる。
【0012】
また、本実施形態のブレーキパッド摩耗検出器の裏板には、例えば、電気式摩耗検出センサが装着された場合に電気式摩耗検出センサの一部が収容される開口部が設けられ、アーム部が開口部を覆うように取付部が裏板に固定されてもよい。この構成によれば、例えば、裏板の形状を変更することなく、電気式摩耗検出センサを装着する仕様と本実施形態のブレーキパッド摩耗検出器を装着する仕様とを選択できる。
【0013】
また、本実施形態のブレーキパッド摩耗検出器は、例えば、取付部を支持するとともに、第一の面と第二の面とを跨いで裏板を挟持する挟持体を備え、挟持体は、第一の面と接する第一の挟持部と第二の面と接する第二の挟持部とを有し、第一の挟持部と第二の挟持部の少なくとも一方は、裏板の被係合部と係合する弾性係合部を有していてもよい。この構成によれば、例えば、裏板にブレーキパッド摩耗検出器を着脱する際に、弾性係合部が弾性変形して係合時の姿勢または非係合時の姿勢に変化して、裏板の被係合部と着脱することができるので、ブレーキパッド摩耗検出器の着脱作業がより容易になる。また、ブレーキパッド摩耗検出器を弾性係合部によって裏板に弾性的に係合させるため、被係合部に対するガタが軽減され取付状態が安定する。その結果、警告音の安定化に寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0016】
本実施形態で示すブレーキパッド摩耗検出器は、一例として車両に搭載されるディスクブレーキ装置に装着可能である。
【0017】
ディスクブレーキ装置には、浮動型キャリパと固定型キャリパがある。例えば、固定型キャリパを採用するディスクブレーキ装置は、車軸ハブに組付けられて車輪と一体的に回転するディスクロータと、このディスクロータの外周部の一部分を跨ぐようにして配置されるキャリパ(固定型キャリパ)を有する。キャリパは、インナー側のブレーキパッド、アウター側のブレーキパッド、およびこれらのブレーキパッドをディスクロータに押し付けるための押圧力を発生する例えば4個のピストンを備える。ディスクロータは、インナー側のブレーキパッドのライニングとアウター側のブレーキパッドのライニングによって挟持可能な円盤状の摺動面(被制動面)を有している。ディスクロータは、摺動面が制動時にインナー側のブレーキパッドのライニングおよびアウター側のブレーキパッドのライニングによって挟持されることにより、回転を制動されるようになっている。
【0018】
このように構成されるディスクブレーキ装置のライニングは、制動操作を繰り返すことにより摩耗して薄くなり、最終的には使用限界に到達して交換が望ましい状況になる。そのため、ライニングが使用限界に達した場合にユーザに警告する必要がある。本実施形態のブレーキパッド摩耗検出器は、ブレーキパッドに装着されて、例えばライニングが使用限界に達した場合、ディスクロータと接触して警告音(振動音)を発生する可聴式の機械的なセンサである。
【0019】
図1は、実施形態に係るブレーキパッド摩耗検出器10(以下、摩耗検出器という)を装着したブレーキパッド12の正面図である。ブレーキパッド12は、複数のガイド孔12aを有し、このガイド孔12aを介してキャリパに支持される。ブレーキパッド12は、ライニング14と裏板16とを有し、この裏板16に摩耗検出器10が固定されている。ライニング14が車輪とともに回転するディスクロータ18に押し当てられて摩耗して薄くなると、ライニング14が薄くなった分、制動時に裏板16がディスクロータ18に接近する。したがって、ライニング14が使用限界を迎える前の状態では、摩耗検出器10がディスクロータ18から離れている。そして、ライニング14が使用限界を迎えると摩耗検出器10と回転するディスクロータ18とが接触して、ユーザにライニング14の摩耗を認識させるための警告音(摺動音、接触音、振動音)を発生する。
【0020】
ライニング14は、車輪とともに回転するディスクロータ18の摺動面(側面)と直接接触する制動面14aと、この制動面14aの反対側で裏板16に例えば接着される接着面を有する、例えば、扇形の板状の部材である。ライニング14は、例えば、アラミド繊維や無機繊維、スチール繊維等を用いた有機系摩擦材で構成される。この有機系摩擦材は、繊維基材に各種の添加材料を加え、熱硬化樹脂で結合した複合材料とすることができる。また、ライニング14は、無機系摩擦材で構成されるものもある。
【0021】
裏板16は、ディスクロータ18の摺動面と接触するライニング14が固定された第一の面16aと、この第一の面16aとは反対側の第二の面16bとを有する、例えば概ね四角形の板状の部品である。裏板16は、ライニング14を支持するために、耐熱性および高温雰囲気中における高い機械的強度を有することが要求される。裏板16は、例えば、セラミック製のプレートや金属製のプレートを用いることができる。裏板16の背部(第二の面16b側)には、キャリパのピストンが配置されている。ユーザ(ドライバー)によりブレーキペダルが踏み込まれた場合や車両の制御部からの指令で自動制動が行われた場合等には、ピストンが作動して裏板16を押し、ブレーキパッド12をディスクロータ18に押圧して制動力を発生する。
【0022】
図2〜
図5を用いて、裏板16に固定される摩耗検出器10の形状の詳細を説明する。
図2は、摩耗検出器10の斜視図である。
図3は、摩耗検出器10の正面図である。
図4は、摩耗検出器10の側面図である。
図5は、
図4に示す摩耗検出器10におけるA−A断面図である。なお、本実施形態においては、説明のために
図2〜
図5に示すように、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは互いに直交する。X軸は、摩耗検出器10の幅(ディスクロータ18の厚み方向)に沿う。Y軸は、摩耗検出器10の長さに沿う。Z軸は、摩耗検出器10の高さに沿う。
【0023】
摩耗検出器10は、取付部20とアーム部22と接触部24とを備える。摩耗検出器10は、例えば、バネ性を有する金属材料、例えば、ステンレス等の金属板を曲げ加工して形成することができる。取付部20は、第一の面16aと接触する第三の面20aとこの第三の面20aとは反対側の第四の面20bとを有する板状部である。この取付部20は、裏板16に取り付けられる。第一の面16aは、一部に扁平な面を有し摩耗検出器10を固定するときの基準面となる。また、この第一の面16aの基準面には、ライニング14も固定されている。つまり、取付部20とライニング14とを同一高さの面に固定することにより、ライニング14の厚み(摩耗後の残り厚み)を検出するための摩耗検出器10の設置高さ(X軸方向の高さ)を決めることができる。そして、この場合、取付部20は、第一の面16aに密着固定させることが望ましい。
【0024】
本実施形態の場合、取付部20は、裏板16の第一の面16aと第二の面16bとを跨いで挟持する弾性クリップ26(挟持体)によって、第一の面16aに付勢状態で固定される。弾性クリップ26は、第一の面16aに当接する第一の付勢部26a(第一の挟持部)と第二の面16bに当接する第二の付勢部26b(第二の挟持部)と、第一の付勢部26aと第二の付勢部26bとを繋ぎ、第一の面16aと第二の面16bとを跨ぐように形成される接続部26cで構成される。なお、第一の付勢部26aは、ほぼ中央部に第一の切欠部26dが形成されて二分割されている。そして、第一の付勢部26aの一方は、取付部20を兼用している。つまり、第一の付勢部26aの一部が取付部20を形成している。また、第二の付勢部26bには、幅方向(図中Y軸方向)の両端に第二の切欠部26eが形成され、さらに、その第二の切欠部26eの内部に折返爪26fが形成されている。折返爪26fは、第二の面16b側から第一の面16aに向かう方向に折り返され、裏板16に形成された溝部16c(被係合部)と係合することにより、弾性クリップ26の位置決めを行う(
図4参照)。つまり、折返爪26fは、裏板16に対して摩耗検出器10の位置決めを行う。
【0025】
図4に示されるように、第一の付勢部26aは、接続部26cから遠い側の第一の端部26g(図中Z軸方向)が第一の面16aから第二の面16bとは反対方向に離れるように屈曲している。第一の端部26gが屈曲することにより、弾性クリップ26を裏板16に装着する場合、裏板16を第一の付勢部26aと第二の付勢部26bとの間に進入しやすくして、装着作業が容易になる。また、第二の付勢部26bは、裏板16に装着されていない自由姿勢時に第一の付勢部26aに接近する方向に斜めに傾いている。つまり、第二の付勢部26bは、裏板16に装着されたときに第二の面16bから第一の面16aとは反対の方向に押し広げられることによりバネ力を発生して、第二の面16bを付勢する。その結果、裏板16を第一の付勢部26aと第二の付勢部26bが付勢状態で挟持して、弾性クリップ26、すなわち摩耗検出器10が裏板16に固定される。
【0026】
なお、第一の付勢部26aは、接続部26cに近い側の第二の端部26hが第一の面16aから第二の面16bとは反対方向に離れるように屈曲している。このように第二の端部26hを形成することにより、第一の付勢部26aと接続部26cとの接続部分を曲げ加工する場合に、第一の付勢部26aの面が第一の面16aと平行になるように曲げ加工することができる。換言すれば、取付部20において第一の面16aと接触する第三の面20a(
図5参照)が第一の面16aと平行になるように加工することができる。その結果、弾性クリップ26により取付部20を第一の面16aに密着固定することができる。
【0027】
次に、アーム部22の詳細を説明する。アーム部22は、第一の面16aの第二の面16bとは反対側に突出するとともに当該反対側で屈曲された形状を有する。つまり、摩耗検出器10の警告音を発生する部分が裏板16の第一の面16a側のみに存在する。また、第一の面16a側でアーム部22が屈曲することにより、アーム部22の剛性を向上させている。アーム部22の剛性が向上することにより接触部24が回転するディスクロータ18に接触することにより発生する警告音を大きくすることができる。なお、発生する接触音(警告音)の周波数が高すぎると(高音になりすぎると)聞き取りにくくなる。そこで、アーム部22は、接触音の周波数を下げるような構成を有する。具体的には、アーム部22の長さを長くすることで周波数を下げて発生する音を低くしている。
【0028】
そこで、アーム部22は、
図5に示されるように、まず、第一の面16aに沿って接触部24とは反対方向に延びた第一の延設部28を有する。本実施形態の場合、第一の延設部28は、取付部20から第一の面16aに沿ってY軸方向に直線状に延びている。続いて、アーム部22は、第一の延設部28の端部28aに設けられ第二の面16bとは反対側に延びる第二の延設部30を有する。本実施形態の場合、第二の延設部30は、第一の延設部28の端部28aでほぼ直角に折り曲がりX軸方向に直線状に延びている。さらに、アーム部22は、第二の延設部30の端部30aに設けられ接触部24が設けられた方向に折り返されるように延びる第三の延設部32を有する。本実施形態の場合、第三の延設部32は、第二の延設部30の端部30aからY軸方向にほぼ直角に折り曲がりY軸方向に直線状に延びている。そして、アーム部22は、第三の延設部32の端部32aに設けられ取付部20の板状部の側面20cを第四の面20b側から第三の面20a側に延び、さらに第四の面20b側に折り返されるように延びる第四の延設部34を有する。本実施形態の場合、第四の延設部34は、第三の延設部32の端部32aでほぼ直角に折り曲がり第三の面20aに向かいX軸方向に直線状に延びる第一の折返部34aを有する。また、第四の延設部34(第一の折返部34a)は、さらに、第四の面20bを第三の面20aに向かって越えたところでほぼ直角に折り曲がり接触部24に向かいY軸方向に直線状に延びる第二の折返部34bを有し、さらにX軸方向にほぼ直角に折り返される第三の折返部34cを有する。このように、アーム部22および第四の延設部34は、複数回屈曲することにより、取付部20を基部として自由に揺動する部分の長さを摩耗検出器10のY軸方向の幅を増大することなく延ばしている。また、アーム部22を複数箇所で屈曲させていることで、アーム部22の剛性を全体として高めている。
【0029】
アーム部22は、
図1に示されるように、ディスクロータ18の外形より外側に位置するように、弾性クリップ26が、裏板16の開口部16d(凹部、窪み)に取り付けられている。また、アーム部22(第四の延設部34)には、
図1、
図2に示されるように、ディスクロータ18の内径方向に向かって延びる接触部24が設けられている。つまり、アーム部22がディスクロータ18に接触することを回避しつつ、接触部24のみが、ライニング14の摩耗により接近してきたディスクロータ18の摺動面に接触できるようにしている。また、接触部24をディスクロータ18の径方向に延ばすことにより、接触部24の延設方向に対して、ディスクロータ18の回転方向がほぼ直交するため、ディスクロータ18の回転力を接触部24が受けやすく、接触部24の撓み量(振動量)が大きくなり警告音(音量)の増大に寄与できる。
【0030】
なお、
図1、
図2に示されるように、接触部24には括れ部24aが形成され、括れ部24aより先の部分がディスクロータ18に接触するようにしている。このように括れ部24aを形成することにより接触部24がディスクロータ18と接触したときに撓みやすくなり、警告音が発生しやすくなるとともに音色が安定しやすくなる。つまり、聴きやすい音が出やすくなる。
【0031】
図6は、上述したように構成される摩耗検出器10をブレーキパッド12(裏板16)に装着した状態を示す側面図である。
図6に示されるように、本実施形態の摩耗検出器10は、ライニング14が支持される裏板16の第一の面16a側に突出している。したがって、摩耗検出器10が裏板16の第二の面16b側に存在するシリンダやマウンティング等と干渉しない。また、第一の面16a側でアーム部22を複数回屈曲させることで、接触部24がディスクロータ18と接触したときに必要な剛性(強度)を確保するとともに、必要な音色や音量を出すためのアーム部22の長さを確保することができる。なお、裏板16の第二の面16bには、ブレーキパッド12のノイズ(鳴き)を防止するためのシム36が設けられている。
図4に示されるように、摩耗検出器10の弾性クリップ26の第二の付勢部26bは、第二の面16b側に突出する。そこで、シム36の一部を切り欠いて第二の付勢部26bが露出するようにするとともに、第二の付勢部26bの突出量とシム36の厚みのいずれか一方を調整して、突出量がシム36の厚みより少なくなるようにする。その結果、第二の付勢部26bが第二の面16bから突出しないようにすることが可能になり、ブレーキパッド12をキャリパに固定するときに摩耗検出器10が干渉しないようにすることができる。
【0032】
図6において、回転するディスクロータ18にライニング14が付勢されて、摩耗が進むと、制動操作時にディスクロータ18は徐々に裏板16に接近する。そして、ライニング14が使用限界に至ると(
図6に二点鎖線で示されるディスクロータ18の位置)、ディスクロータ18と接触部24とが接触し、警告音(摺動音、接触音)を発生する。つまり、ユーザに、ライニング14が使用限界に到達したことを通知する。なお、ライニング14の使用限界は、直ちに制動力が発生できない状況を意味するのではなく、ライニング14の交換を推奨することを意味するものである。
【0033】
図7に示す摩耗検出器10aは、
図2に示す摩耗検出器10の変形例を示す斜視図である。なお、摩耗検出器10aの基本構造は、摩耗検出器10の構造と同じであり、同様な構成および同様に機能する部分には、同じ符号を付し、その説明を省略する。摩耗検出器10aの場合、アーム部22に含まれる第四の延設部34の第一の折返部34aの端部34dが幅広に構成されている。摩耗検出器10aの場合、第一の折返部34aの端部34dを傾斜させることによって、第四の延設部34(アーム部22)の剛性を向上させている。その結果、発生させる警告音をさらに増大させたり、音色をより安定化させたりすることに寄与できる。
【0034】
ところで、ライニング14の摩耗が使用限界に達したことを検出する方法として、上述したような接触部24を回転するディスクロータ18に接触させたときには接触音を発生させる機械式(可聴式)と、検出信号を出力する電気式とがある。
図8は、本実施形態の摩耗検出器10(10a)を装着可能であるとともに、
図9に示される電気式摩耗検出センサ38を装着可能な裏板16の拡大斜視図である。
図9は、電気式摩耗検出センサ38のセンサ部の概略斜視図である。電気式摩耗検出センサ38は、裏板16に固定するためのガイド溝38aが形成されたハウジング38bの内部にリード線40を埋設している。ハウジング38bは、例えば、樹脂材料で形成される。ハウジング38bは、ライニング14が摩耗して薄くなった結果、回転するディスクロータ18と接触することにより徐々に削られる。そして、ライニング14の摩耗が進み、使用限界に達するとリード線40も削られ断線に至る。図示しないセンサ本体(制御部)は、この断線を電気的に検出して、例えば、運転席のコンソールパネル等に配置された警告灯を点灯させたり、警告音やメッセージを出力して、ライニング14が使用限界に到達したことをユーザに報知する。裏板16は、電気式摩耗検出センサ38が装着された場合に当該電気式摩耗検出センサ38の一部が収容される開口部16dを有するとともに、電気式摩耗検出センサ38のガイド溝38aと係合するガイド部16eを有する。電気式摩耗検出センサ38は、ガイド溝38aにガイド部16eを挿入しながら開口部16dに嵌め込むことで位置決めされる。電気式摩耗検出センサ38は図示しない弾性クリップの爪部を溝部16c(被係合部)に係合させることにより、裏板16に固定できる。
【0035】
このように電気式摩耗検出センサ38は、上位クラスの車両やオプション装備として採用される場合がある。一方、
図2に示されるような機械式の摩耗検出器10は、コストを抑えたい車両に採用される場合がある。そして、摩耗検出器10を採用する場合と摩耗検出器10aを採用する場合とで同じ裏板16が利用できれば、部品の共用化、設計の標準化、コスト削減等に寄与できる。そこで、本実施形態の摩耗検出器10(10a)は、アーム部22が開口部16dを覆うように取付部20が裏板16に固定できるように構成されている。例えば、
図8に示す裏板16の溝部16cの位置と
図2に示す折返爪26fの位置を一致させておけば、弾性クリップ26をそのまま
図8に示される電気式摩耗検出センサ38が装着可能な裏板16に取り付けることができる。つまり、摩耗検出器10aと摩耗検出器10と同じ裏板16に選択的に装着して同様なライニング14の摩耗検出を行うことができる。
【0036】
図10には、摩耗検出器10aの変形例として摩耗検出器10bが示され、
図11には、別の変形例として摩耗検出器10cが示されている。摩耗検出器10b、摩耗検出器10cは、
図8に示す裏板16の開口部16dに対し着脱する際の着脱作業性を向上できる構造を有する。なお、摩耗検出器10b、摩耗検出器10cの基本構造は、
図7に示す摩耗検出器10aの構造と同じであり、同様な構成および同様に機能する部分には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0037】
図10に示す摩耗検出器10bは、裏板16の第二の面16bに接する第二の付勢部26b(第二の挟持部)に形成された第二の切欠部26eの内部に裏板16の第二の面16b側から第一の面16aに向かう方向に折り返され係合部として弾性係合部42を形成している。弾性係合部42は、第二の切欠部26eの幅方向(図中Y軸方向)の縁部から第一の面16aに向かう方向に延設された基部42aと、この基部42aに一端が接続され、他端が第二の付勢部26bの幅方向(図中Y軸方向)の外側に向かって傾斜した弾性部42bとを有する。取付部20に隠れているが、第二の付勢部26bの他方側の第二の切欠部26eにも同様に第二の付勢部26bの幅方向の外側に向かって傾斜した弾性部42bを有する弾性係合部42が設けられている。なお、弾性係合部42は、第二の付勢部26bを形成する板材のバネ性を利用して弾性力を確保している。
【0038】
なお、弾性係合部42は、
図8に示す裏板16の溝部16cの上方に形成された一対の凸部16fの一対の対向するガイド面16g(裏板16の幅方向(図中Y軸方向)の対向面)の間を通過するような間隔で第二の付勢部26bに形成されている。この場合、基部42aの外側面、すなわち第二の付勢部26bの幅方向(図中Y軸方向)の外側が、ガイド面16gと接触するように構成されてもよい。また、弾性係合部42の弾性部42bは、一対のガイド面16gの幅方向の離間距離(裏板16の幅方向(図中Y軸方向))より大きくなるように形成されている。
【0039】
このように構成される弾性係合部42が設けられた摩耗検出器10bを
図8に示す裏板16に装着する場合、摩耗検出器10を装着する場合と同様に、アーム部22が開口部16dを覆うように取り付ける。つまり、摩耗検出器10bは、弾性係合部42の基部42aが裏板16のガイド面16gに沿うように、上方(図中Z軸方向)から開口部16dに挿入される。このとき、弾性部42bは、一対のガイド面16gにより第二の付勢部26bの幅方向(図中Y軸方向)の内側に向かって弾性変形した非係合時の姿勢(圧縮姿勢)で挿入される。凸部16fの下方の溝部16cは、ガイド面16gより幅が広いため、弾性変形していた弾性部42bは、ガイド面16gの下端部を通過すると形状が外方向に復元して係合時の姿勢(解放姿勢)となり溝部16c内で広がって係合する。なお、溝部16cの対向幅を弾性係合部42の弾性部42bの非変形時の対向幅より狭く設定しておけば、弾性部42bは凸部16fの下面16hと弾性力を伴い係合する。その結果、摩耗検出器10bが裏板16に固定される。なお、裏板16から摩耗検出器10bを取り外す場合は、弾性部42bを第二の付勢部26bの幅方向(図中Y軸方向)の内側に弾性変形させながら、開口部16dから抜き取ればよい。
【0040】
このように摩耗検出器10bは、弾性係合部42の弾性部42bを弾性変形させながら開口部16dの溝部16cに係合させることができるので、裏板16に対する装着作業が摩耗検出器10,10aに比べてより容易になる。また、弾性係合部42が設けられた摩耗検出器10bは、交換やメンテナンスのための取り外し作業をより容易に行うことができる。さらに、弾性係合部42によって裏板16に弾性係合させるため、溝部16c(被係合部)に対する摩耗検出器10b(弾性クリップ26)のガタが軽減され摩耗検出器10bの取付状態が安定する。その結果、警告音の安定化に寄与できる。
【0041】
図11に示す別の変形例である摩耗検出器10cは、裏板16の第二の面16bに接する第二の付勢部26b(第二の挟持部)に、逆U字形状の切込部26iを形成し、この切込部26iの内部に残った部分を弾性係合部44としている。弾性係合部44は、第二の付勢部26bと連結される下端部44aを基部として、反対側の上端部44bが第二の付勢部26bから第一の付勢部26aに向かう方向(裏板16の第二の面16bから第一の面16aに向かう方向)に傾斜した弾性部44cを有する。取付部20に隠れているが、第二の付勢部26bの他方側にも同様に切込部26iが形成され、上端部44bが第二の付勢部26bから第一の付勢部26aに向かう方向に傾斜した弾性部44cを有する弾性係合部44が設けられている。なお、弾性係合部44は、第二の付勢部26bを形成する板材のバネ性を利用して弾性力を確保している。
【0042】
弾性係合部44は、
図8に示す裏板16の溝部16cの上方に形成された一対の凸部16fの形成幅(裏板16の幅方向(図中Y軸方向)の形成幅)と同等の間隔で第二の付勢部26bに形成されている。この場合、一対の弾性部44cの外側縁部(第二の付勢部26bの幅方向(図中Y軸方向)の外側縁部)の間の距離が裏板16の一対の溝部16cの幅方向の離間距離より小さく、かつ裏板16の一対のガイド面16gの離間距離より大きくなるように形成されている。
【0043】
このように構成される弾性係合部44が設けられた摩耗検出器10cを
図8に示す裏板16に装着する場合、摩耗検出器10を装着する場合と同様に、アーム部22が開口部16dを覆うように取り付ける。つまり、摩耗検出器10cは、弾性係合部44の下端部44aが裏板16の凸部16fの第二の面16bに沿うように、上方(図中Z軸方向)から開口部16dに挿入される。このとき、弾性部44cは、裏板16の第二の面16bにより第二の付勢部26bの切込部26iに嵌まり込む方向(図中X軸方向)に弾性変形した非係合時の姿勢(圧縮姿勢)で挿入される。弾性変形していた弾性部44cは、凸部16fの下端部を通過すると形状が第一の付勢部26a側に復元して係合時の姿勢(解放姿勢)となり溝部16cに弾性的に係合するとともに、凸部16fの下面16hと上端部44bとが係合する。その結果、摩耗検出器10cが裏板16に固定される。なお、裏板16から摩耗検出器10cを取り外す場合は、弾性部44cを第二の付勢部26bの切込部26iの方向(図中X軸方向)に向かって弾性変形させながら、開口部16dから抜き取ればよい。
【0044】
このように摩耗検出器10cは、弾性係合部44の弾性部44cを弾性変形させながら開口部16dの溝部16cに係合させることができるので、裏板16に対する装着作業が摩耗検出器10,10aに比べてより容易になる。また、弾性係合部44が設けられた摩耗検出器10cは、交換やメンテナンスのための取り外し作業もより容易に行うことができる。なお、溝部16cの裏板16の板厚方向の深さ(図中X軸方向の深さ)を弾性係合部44の弾性部44cの非変形時の傾斜量(突出量)より浅く設定しておけば、弾性部44cは溝部16cと弾性力を伴い係合する。その結果、溝部16c(被係合部)に対する摩耗検出器10c(弾性クリップ26)のガタが軽減され摩耗検出器10cの取付状態が安定して、警告音の安定化に寄与できる。
【0045】
なお、
図10に示す摩耗検出器10bの弾性係合部42及び
図11に示す摩耗検出器10cの弾性係合部44は、第二の付勢部26bに形成した例を説明したが、例えば、弾性係合部42や弾性係合部44を第一の付勢部26a側に形成してもよい。この場合、裏板16の溝部16cは、第一の面16a側に形成されることになる。また、第一の付勢部26aと第二の付勢部26bの両方に弾性係合部42(44)を形成してもよい。この場合、より固定強度が向上するとともに、警告音の安定化に寄与できる。
【0046】
また、上述の例では、弾性係合部42(44)は、第二の付勢部26bに幅方向(図中Y軸方向)に一対形成した例を示したが、これに限定されない。例えば、幅方向の一方を
図7に示す折返爪26fのような固定タイプとして、他方を弾性係合部42(44)のような弾性タイプとしてもよい。この場合、折返爪26f側の形成が容易になるので、コスト軽減に寄与できる。また、弾性係合部42(44)の形成数は、適宜選択可能であり、例えば、第一の付勢部26aや第二の付勢部26bの面積や裏板16側の溝部16c(被係合部)の形成可能位置にしたがって形成数を決めてもよい。例えば、第一の付勢部26aまたは第二の付勢部26bのいずれか一方に3個以上形成してもよいし、第一の付勢部26aと第二の付勢部26bのそれぞれに1個ずつ形成してもよい。
【0047】
なお、上述の実施形態では、アーム部22を各端部でほぼ直角に折り曲げる例を示したが、これに限らず、例えば、直角以外の角度に曲げてもよく、上述したようにアーム部22の長さの増加と剛性の増加が可能であり、同様の効果を得ることができる。また、第一の延設部28、第二の延設部30、第三の延設部32、第四の延設部34はそれぞれ直線状に形成する例を示したが、例えば弧状でもよいし、波状にしてもよい。この場合もアーム部22の長さの増加と剛性の増加が可能で同様の効果を得ることができる。
【0048】
また、
図2等で示される摩耗検出器10(10a)は、裏板16の第一の面16aと第二の面16bとを跨ぐ弾性クリップ26を用いて裏板16に装着される例を示したが、これに限らず、例えば、取付部20を第一の面16aに直接固定するようにしてもよい。例えば、取付部20をリベットやボルト等の締結部材を用いて第一の面16aに固定してもよい。この場合、弾性クリップ26の部分が省略可能となり、摩耗検出器10の形状がシンプルになるとともに、摩耗検出器10を曲げ加工して形成するときの工数の削減や材料の削減に寄与できる。
【0049】
また、本実施形態では、アーム部22を摩耗検出器10の長さ方向(Y軸方向)に延設した例を示したが、例えば、摩耗検出器10の高さ方向(Z軸方向)に延設してもよく、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、本実施形態で示したアーム部22の屈曲回数は、発生させたい警告音の大きさや音色に応じて選択可能であり、
図2等に示す回数より多くても少なくてもよい。また、ブレーキパッド12ごとに警告音の大きさや音色が異なるようにアーム部22を調整したり、摩耗検出器10(10a)の材料を選択してもよい。例えば、前輪側のブレーキパッド12と後輪側のブレーキパッド12で警告音の音色や大きさを異ならせてもよい。また、インナー側とアウター側で異ならせてもよい。このような構成にすることで、機械式(可聴式)の摩耗検出器10でも電気式摩耗検出センサ38のように、摩耗箇所の特定を行うことが可能になり、性能向上に寄与できる。
【0051】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や形状等のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。また、複数の実施形態間で、構成を部分的に入れ替えて実施することができる。