(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性樹脂を含むフィルムであって、KES法に従い測定されるせん断かたさが0.1gf/(cm・deg)以上4.0gf/(cm・deg)以下であり、かつ少なくとも一方の面において、KES法に従い測定される摩擦係数が0.15以上0.80以下であり、
樹脂100質量%中に、熱可塑性樹脂Aを50質量%以上100質量%以下含む層をA層としたときに、
前記フィルムが前記A層と熱可塑性樹脂を含むフィルムB層とを有する積層フィルムであって、
前記A層が、アスペクト比1以上30以下の充填剤(充填剤A)を含み、
前記B層が、アスペクト比10以上100以下の充填剤であって、前記充填剤Aよりもアスペクト比の大きい充填剤(充填剤B)を含み、
前記A層が最表層であることを特徴とするフィルム。
但し、前記熱可塑性樹脂Aは、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、及びポリエステル系エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも一つの樹脂である。
少なくとも一方の面において、KES法に従い測定される表面粗さの変動(SMD)が、1.2μm以上16μm以下であり、かつ摩擦係数の変動(MMD)が0.003以上0.07以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂を含み、KES法に従い測定されるせん断かたさが0.1gf/(cm・deg)以上4.0gf/(cm・deg)以下であり、かつ少なくとも一方の面において、KES法に従い測定される摩擦係数が0.15以上0.80以下であることが重要である。
【0029】
以下に、本発明を実施するための望ましい形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
(熱可塑性樹脂)
本発明のフィルムは、本発明の効果を損なわない限りどのような樹脂を含んでもよいが、布のような静音性、せん断変形性、曲げ柔らかさ、及び透湿性などを付与する観点から、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、及びポリエステル系エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも一つの熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。ここでエチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、及びポリエステル系エラストマーを総称して、熱可塑性樹脂Aと表現する。なお、エラストマーとは、25℃でゴム弾性を有する高分子量体をいう。
【0031】
本発明のフィルムにおける熱可塑性樹脂Aとしては、フィルムに静音性、及び布のようなせん断変形性を付与することに加え、経済性、入手容易性、製膜安定性を考慮すると、エチレン−メチルメタクリレート共重合体を用いることがより好ましい。また、透湿性を付与することを考慮すると、ポリウレタン、もしくはポリエステル系エラストマーを用いることが好ましい。上記の点をすべて考慮すると、エチレン−メチルメタクリレート共重合体とポリウレタン、もしくはエチレン−メチルメタクリレート共重合体とポリエステル系エラストマーを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0032】
本発明のフィルムは、布のような静音性、せん断変形性、及び透湿性を付与する観点から、樹脂100質量%中に、熱可塑性樹脂Aを50質量%以上100質量%以下含む層をA層としたときに、A層を含むことが好ましい。なお、熱可塑性樹脂Aに該当する樹脂がA層中に複数種存在する場合、熱可塑性樹脂Aを50質量%以上100質量%以下含むとは、熱可塑性樹脂Aに該当する樹脂の合計が50質量%以上100質量%以下であることを意味する。
【0033】
静音性、せん断変形性のさらなる改良の観点から、A層の樹脂100質量%中に、熱可塑性樹脂Aを60質量%以上90質量%以下含む態様がより好ましく、70質量%以上85質量%以下含む態様が特に好ましい。
【0034】
また、本発明のフィルムは、静音性、せん断かたさ、曲げかたさ、圧縮仕事量、摩擦係数、及び透湿度を前記の好ましい範囲とする観点から、熱可塑性樹脂A以外の熱可塑性樹脂であるポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一つの熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂Bということがある)を含むことが好ましく、さらに製膜性も維持しつつ、透湿度を向上させることを考慮すると、ポリエチレングリコールを含むことがより好ましい。
【0035】
また、本発明のフィルムは前記A層と、別のB層とを有する積層フィルムであ
る。
【0036】
本発明のフィルムがA層とB層を有する積層構成である場合、フィルムの耐ブリードアウト性を考慮すると、B層が熱可塑性樹脂Bを含む態様が好ましい。B層が熱可塑性樹脂Bを含む場合、その含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、静音性、せん断かたさ、曲げかたさ、圧縮仕事量、摩擦係数、及び透湿度のさらなる改良の観点から、B層中の樹脂100質量%中に、熱可塑性樹脂Bを5質量%以上40質量%以下含むことが好ましく、10質量%以上35質量%以下含むことがより好ましく、15質量%以上30質量%以下含むことが特に好ましい。
【0037】
なお、熱可塑性樹脂Bに該当する樹脂がB層中に複数種存在する場合、熱可塑性樹脂Bの含有量は、全ての熱可塑性樹脂Bを合計して算出するものとする。
【0038】
(せん断かたさ)
本発明のフィルムは、布のようなせん断変形性をフィルムに付与する観点から、KES法に従い測定されるせん断かたさが0.1gf/(cm・deg)以上4.0gf/(cm・deg)以下であることが重要である。(KES法参照文献 川端季雄著、「風合い評価の標準化と解析」、日本繊維機械学会風合い計量と規格化研究委員会、1980年7月、第2版)
せん断変形は、経糸と緯糸とが交差することにより構成されている布がもっとも容易に受ける変形様式である。2次元の布が3次元の曲面を容易にカバーすることができるのはこのせん断変形性に大きく依存し、せん断変形が大きい、つまり、せん断かたさが小さい方が人体のような曲面によりフィットし易く、着用感がよいものとなる。つまり、せん断かたさが0.1gf/(cm・deg)以上4.0gf/(cm・deg)以下であるフィルムは、例えば衛生材等の人体に着用する可能性のある用途に使用される際に好ましいものとなる。また、KES法に従い測定されるせん断かたさが0.1gf/(cm・deg)未満であると、製造工程(特にロール間走行時や巻き取り時)でフィルムのタルミやシワが生じる場合がある。一方、KES法に従い測定されるせん断かたさが4.0gf/(cm・deg)より大きいと、人体のような曲面にフィットしにくくなり、着用感の劣る場合がある。
【0039】
KES法に従い測定されるせん断かたさとは、Kawabata Evaluation Systemに従い測定される機械方向及び幅方向のせん断応力より算出するせん断かたさをいう。ここで、機械方向とはフィルム製造時にフィルムが進行する方向を指し、幅方向とはフィルムの搬送面に平行であり、機械方向と直交する方向を指す(以下同じ)。より具体的には、せん断変形が−2.5°、−0.5°、0.5°、及び2.5°である点における、機械方向及び幅方向のせん断応力をKES法により測定し(以下、各点におけるせん断応力をそれぞれHG
−2.5、HG
−0.5、HG
0.5、HG
2.5ということがある)、機械方向及び幅方向について、式G1を用いて正方向のせん断かたさ(G(+))を、式G2用いて負方向のせん断かたさ(G(−))を算出し、機械方向及び幅方向のG(+)及びG(−)を平均して得られるせん断かたさをいう。なお、せん断応力の測定時の条件は、室温23℃、相対湿度65%、強制荷重10gf、せん断ずり速度0.417mm/sec、及び試料のせん断変形範囲−8°〜8°である。なお、以後、KES法に従い測定されるせん断かたさのことを、単にせん断かたさと記すことがある。
式G1:G(+)=(HG
2.5−HG
0.5)/(2.5°−0.5°)
式G2:G(−)=(HG
−2.5−HG
−0.5)/(−2.5°−(−0.5°))。
【0040】
フィルムのせん断変形性をより向上させる観点から、せん断かたさは、0.1gf/(cm・deg)以上3.5gf/(cm・deg)以下であることがより好ましく、0.1gf/(cm・deg)以上2.5gf/(cm・deg)以下であることがより好ましく、0.1gf/(cm・deg)以上2.0gf/(cm・deg)以下であることがより好ましく、0.1gf/(cm・deg)以上1.5gf/(cm・deg)以下であることがさらに好ましく、0.1gf/(cm・deg)以上1.0gf/(cm・deg)以下であることが特に好ましく、0.1gf/(cm・deg)以上0.8gf/(cm・deg)以下であることが最も好ましい。
【0041】
本発明のフィルムのせん断かたさを0.1gf/(cm・deg)以上4.0gf/(cm・deg)以下、または上記の好ましい範囲とするための方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、後述する熱可塑性樹脂の含有量を調節する方法、発泡剤によりフィルムに空孔を形成させる方法、及びフィルム表面を加工する方法などが挙げられる。具体的には、後述する好ましい熱可塑性樹脂の含有量を増加させること、添加する発泡剤の量を増やして空孔率を高くすること、フィルムの表面にラビング加工を施すことにより、せん断かたさを小さくすることができる。
【0042】
(摩擦係数)
本発明のフィルムは、フィルムの生産性とフィルムに心地良い触感を付与することを両立させる観点から、少なくとも一方の面において、KES法に従い測定される摩擦係数が0.15以上0.80以下であることが重要である。いずれの面においても、KES法に従い測定される摩擦係数が0.15未満であると、フィルムが心地よい触感を有さないことがあり、また、製造工程においてフィルムが巻きズレや蛇行を起こすこともある。一方、いずれの面においても、KES法に従い測定される摩擦係数が0.80を超えると、フィルムのすべり性が不足し、製造工程でフィルムをロール状に巻き取る際にエア抜けが悪くなるため、エアかみ込みによる巻き形状不良を起こす場合がある。
【0043】
KES法に従い測定される摩擦係数とは、具体的には、試料の大きさを10cm(機械方向)×10cm(幅方向)、荷重を25gf、滑り子(標準摩擦子(指紋タイプ))の移動速度を1mm/sec、室温を23℃、相対湿度を65%としてKES法により測定する摩擦係数をいう。なお、以後、KES法に従い測定される摩擦係数のことを、単に摩擦係数ということがある。
【0044】
フィルムの触感の心地よさを向上させることに着目すると、少なくとも一方の面において、摩擦係数の下限値が0.30であることが好ましく、0.32であることがより好ましく、0.34であることがより好ましく、0.37であることがさらに好ましく、0.40であることが特に好ましく、0.45であることが最も好ましい。
【0045】
一方、フィルムの生産性を向上させることに着目すると、少なくとも一方の面において、摩擦係数の上限値が0.80であることが好ましく、0.76であることがより好ましく、0.72であることがより好ましく、0.68であることがさらに好ましく、0.64であることが特に好ましく、0.60であることが最も好ましい。
【0046】
すなわち、フィルムの生産性と触感をより両立させる観点からは、少なくとも一方の面において、摩擦係数が0.30以上0.80以下であることが好ましく、0.32以上0.76以下であることがより好ましく、0.34以上0.72以下であることがより好ましく、0.37以上0.68以下であることがさらに好ましく、0.40以上0.64以下であることが特に好ましく、0.45以上0.60以下であることが最も好ましい。
【0047】
本発明のフィルムの少なくとも一方の面において、KES法に従い測定される摩擦係数を0.15以上0.80以下、または上記の好ましい範囲とするための方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、後述の製法により製造したフィルムの表面にブラスト加工やラビング加工を施すこと、後述列挙する好ましい熱可塑性樹脂Aの含有量を調整すること、後述のB層を有する積層フィルムとして充填剤Bの含有量を調整することが挙げられる。
【0048】
ラビング加工を用いる場合、ラビング布の目を粗くしたり、ラビング加工の回数を増やすことにより、摩擦係数を小さくすることができる。また、後述列挙する好ましい熱可塑性樹脂Aの含有量を増加させると、摩擦係数を大きくすることができる。後述のB層を有する積層フィルムの場合は、充填剤Bの含有量を増加させることによっても、摩擦係数を小さくすることができる。
【0049】
(表面粗さの変動(SMD))
本発明のフィルムは、フィルムに心地良い触感を付与する観点から、少なくとも一方の面において、KES法に従い測定される表面粗さの変動(SMD)が、1.2μm以上16.0μm以下であることが好ましい。
【0050】
KES法に従い測定される表面粗さの変動(SMD)とは、具体的には、23℃、相対湿度65%の雰囲気下で、荷重を5gf、滑り子の移動速度を1mm/secとして、KES法により測定する表面粗さの変動(SMD)をいう。なお、以後、KES法に従い測定される表面粗さの変動(SMD)を、単に表面粗さの変動(SMD)ということがある。
【0051】
フィルムの触感の心地良さ、フィルムの生産性や製膜安定性を向上させることに着目すると、少なくとも一方の面において、表面粗さの変動(SMD)が1.3μm以上10.0μm以下であることがより好ましく、1.4μm以上9.0μm以下であることがより好ましく、1.6μm以上7.0μm以下であることがより好ましく、1.8μm以上6.0μm以下であることがより好ましく、2.0μm以上5.5μm以下であることがより好ましく、2.2μm以上5.0μm以下であることがさらに好ましく、2.4μm以上4.5μm以下であることが特に好ましく、2.6μm以上4.0μm以下であることが最も好ましい。
【0052】
(摩擦係数の変動(MMD))
本発明のフィルムは、フィルムに心地良い触感を付与する観点から、少なくとも一方の面において、KES法に従い測定される摩擦係数の変動(MMD)が、0.003以上0.07以下であることが好ましい。
【0053】
KES法に従い測定される摩擦係数の変動(MMD)とは、具体的には、23℃、相対湿度65%の雰囲気下で、荷重を25gf、滑り子の移動速度を1mm/secとしてKES法により測定する摩擦係数の変動(MMD)をいう。なお、以後、KES法に従い測定される摩擦係数の変動(MMD)のことを、単に摩擦係数の変動(MMD)ということがある。
【0054】
フィルムの触感の心地良さ、フィルムの生産性や製膜安定性を向上させることに着目すると、少なくとも一方の面において、摩擦係数の変動(MMD)が0.003以上0.06以下であることがより好ましく、0.003以上0.05以下であることがより好ましく、0.003以上0.04以下であることがより好ましく、0.003以上0.03以下であることがより好ましく、0.003以上0.025以下であることがより好ましく、0.003以上0.02以下であることがさらに好ましく、0.003以上0.015以下であることが特に好ましく、0.003以上0.013以下であることが最も好ましい。
【0055】
(表面粗さの変動(SMD)と摩擦係数の変動(MMD)の両立)
フィルムの触感の心地良さ、フィルムの生産性や製膜安定性を向上させる観点からは、少なくとも一方の面において、表面粗さの変動(SMD)が0.8μm以上16.0μm以下であり、かつ摩擦係数の変動(MMD)が0.003以上0.07以下であることが好ましく、表面粗さの変動(SMD)が1.3μm以上10.0μm以下であり、かつ摩擦係数の変動(MMD)が0.003以上0.06以下であることがより好ましく、表面粗さの変動(SMD)が1.4μm以上9.0μm以下であり、かつ摩擦係数の変動(MMD)が0.003以上0.05以下であることがより好ましく、表面粗さの変動(SMD)が1.6μm以上7.0μm以下であり、かつ摩擦係数の変動(MMD)が0.003以上0.04以下であることがより好ましく、表面粗さの変動(SMD)が1.8μm以上6.0μm以下であり、かつ摩擦係数の変動(MMD)が0.003以上0.03以下であることがより好ましく、表面粗さの変動(SMD)が2.0μm以上5.5μm以下であり、かつ摩擦係数の変動(MMD)が0.003以上0.025以下であることがより好ましく、表面粗さの変動(SMD)が2.2μm以上5.0μm以下であり、かつ摩擦係数の変動(MMD)が0.003以上0.02以下であることがさらに好ましく、表面粗さの変動(SMD)が2.4μm以上4.5μm以下であり、かつ摩擦係数の変動(MMD)が0.003以上0.015以下であることが特に好ましく、表面粗さの変動(SMD)が2.6μm以上4.0μm以下であり、かつ摩擦係数の変動(MMD)が0.003以上0.013以下であることが最も好ましい。
【0056】
また、
図1は、実施例1
(参考例)のフィルム及び参考例の布や不織布における、表面粗さの変動(SMD)と摩擦係数の変動(MMD)の関係を表す。
図1が示すように、参考例1(精製セルロース繊維(ユニクロ社製“テンセル”(登録商標)
図1のa1)、参考例2(絹調ポリエステル繊維(東レ製“シルックデュエット”(登録商標)
図1のa2)、参考例3(ポリプロピレン不織布(旭化成せんい(株)製“エルタス”(登録商標)
図1のa3)は、表面粗さの変動(SMD)の数値をY(μm)、摩擦係数の変動(MMD)の数値をXとしたときに、Y≦5.5、0.003≦X≦0.02
5、及び3,000X2+2.0≦Y≦9,000X2+4.0を全て満たす。すなわち、表面粗さの変動(SMD)と摩擦係数の変動(MMD)が、
図1のb1〜b5で囲まれた範囲内にある。一方、比較例1のフィルム(熱可塑性樹脂のみからなる単層フィルム
図1のa4)は、上記要件の一部を満たすのみであり、
図1のb1〜b5で囲まれた範囲外にある。フィルムの触感を布に近づけるには、表面粗さの変動(SMD)と摩擦係数の変動(MMD)を、
図1のb1〜b5で囲まれた範囲に近づけることが好ましい。
【0057】
フィルムの触感を布に近づける観点から、表面粗さの変動(SMD)と摩擦係数の変動(MMD)は、表面粗さの変動(SMD)の数値をY(μm)、摩擦係数の変動(MMD)の数値をXとしたときに、Y≦16.0、0.003≦X≦0.07、及び500X
2+1.2≦Y≦1,300X
2+10を全て満たすことが好ましく、Y≦10.0、0.003≦X≦0.06、及び700X
2+1.3≦Y≦8,000X
2+6.5を全て満たすことがより好ましく、Y≦9.0、0.003≦X≦0.05、及び1,500X
2+1.4≦Y≦9,000X
2+5.5を全て満たすことがより好ましく、Y≦7.0、0.003≦X≦0.04、及び1,500X
2+1.6≦Y≦9,000X
2+4.5を全て満たすことがさらに好ましく、Y≦6.0、0.003≦X≦0.03、及び1,500X
2+1.8≦Y≦9,000X
2+4.2を全て満たすことが特に好ましく、布と同様にY≦5.5、0.003≦X≦0.025、及び3,000X
2+2.0≦Y≦9,000X
2+4.0を全て満たすことが最も好ましい。
【0058】
(接触冷温感(Qmax))
本発明のフィルムは、フィルムに心地良い触感を付与する観点から、KES法に従い測定される接触冷温感(Qmax)が、0.02W/cm
2以上0.45W/cm
2以下であることが好ましい。
【0059】
KES法に従い測定される接触冷温感とは、一般的に、物体に触れたときに、冷たく感じるか温かく感じるかを評価する指標である。KES法に従い測定される接触冷温感(Qmax)の値は、物体に触れたときに冷たく感じる場合ほど大きく、温かく感じる場合ほど小さくなる。なお、以後、KES法に従い測定される接触冷温感(Qmax)を、単に接触冷温感(Qmax)ということがある。接触冷温感(Qmax)が0.45W/cm
2以下であることにより、肌がフィルムに触れた際に温かみを感じることとなるため、フィルムは、衛生材等の人の肌に触れる可能性のある用途に好ましく用いることができるものとなる。接触冷温感(Qmax)の下限は、衛生材に適用する観点からすると、0.02W/cm
2程度あれば十分である。
【0060】
フィルムの心地良い触感をより向上させる観点から、接触冷温感(Qmax)は0.02W/cm
2以上0.42W/cm
2以下であることがより好ましく、0.02W/cm
2以上0.39W/cm
2以下であることがより好ましく、0.02W/cm
2以上0.36W/cm
2以下であることがより好ましく、0.02W/cm
2以上0.33W/cm
2以下であることがより好ましく、0.02W/cm
2以上0.30W/cm
2以下であることがより好ましく、0.02W/cm
2以上0.27W/cm
2以下であることがより好ましく、0.02W/cm
2以上0.24W/cm
2以下であることがより好ましく、0.02W/cm
2以上0.21W/cm
2以下であることがさらに好ましく、0.02W/cm
2以上0.19W/cm
2以下であることが特に好ましく、0.02W/cm
2以上0.17W/cm
2以下であることが最も好ましい。
【0061】
本発明のフィルムの接触冷温感(Qmax)を0.45W/cm
2以下、または上記の好ましい範囲とするための方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、後述の発泡剤などを後述する好ましい種類及び割合で配合する方法や、後述の充填剤Bを加える方法、ラビング加工する方法などが挙げられる。
【0062】
より具体的には、発泡剤の含有量を増やすことや、充填剤Bの含有量を増やすこと、ラビング加工を施すことにより、フィルムの接触冷温感(Qmax)の数値を小さくすることができる。
【0063】
(曲げかたさ)
本発明のフィルムは、取り扱い性、後加工性、及び柔らかさの観点から、KES法に従い測定される曲げかたさが、1.0×10
−3gf・cm
2/cm以上40×10
−3gf・cm
2/cm以下であることが好ましく、1.0×10
−3gf・cm
2/cm以上30×10
−3gf・cm
2/cm以下であることがより好ましく、1.0×10
−3gf・cm
2/cm以上20×10
−3gf・cm
2/cm以下であることがより好ましく、1.0×10
−3gf・cm
2/cm以上10×10
−3gf・cm
2/cm以下がさらに好ましく、1.0×10
−3gf・cm
2/cm以上5.0×10
−3gf・cm
2/cm以下が特に好ましく、1.0×10
−3gf・cm
2/cm以上3.0×10
−3gf・cm
2/cm以下が最も好ましい。KES法に従い測定される曲げかたさが1.0×10
−3gf・cm
2/cm未満であれば、フィルムとしての剛性が不足し取り扱い性が悪くなることや、印刷や貼り合わせなどの後加工を施す際の後加工適性が低下することがある。逆にKES法に従い測定される曲げかたさが40×10
−3gf・cm
2/cmを超えると、フィルムの柔らかさが損なわれることがある。
【0064】
KES法に従い測定される曲げかたさとは、具体的には、試料の大きさを2cm(機械方向)×2cm(幅方向)、曲率の範囲を−2.5cm
−1〜+2.5cm
−1、変形速度を0.5cm
−1/sec、室温を23℃、相対湿度を65%としてKES法により測定する曲げかたさをいう。なお、以後、KES法に従い測定される曲げかたさのことを、単に曲げかたさということがある。 本発明のフィルムの曲げかたさを1.0×10
−3gf・cm
2/cm以上40×10
−3gf・cm
2/cm以下、または上記の好ましい範囲とするための方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、後述する充填剤や、熱可塑性樹脂の含有量を調整する方法が挙げられる。具体的には、後述する好ましい範囲内でフィルムにおける充填剤の含有量を増加させること、後述する好ましい熱可塑性樹脂の含有量を減少させることにより、曲げかたさを大きくすることができる。
【0065】
(圧縮仕事量)
本発明のフィルムは、布のようなクッション性を付与する観点から、KES法に従い測定される圧縮仕事量が0.01gf・cm/cm
2以上0.40gf・cm/cm
2以下であることが好ましく、0.02gf・cm/cm
2以上0.32gf・cm/cm
2以下であることがより好ましく、0.04gf・cm/cm
2以上0.29gf・cm/cm
2以下であることがより好ましく、0.06gf・cm/cm
2以上0.26gf・cm/cm
2以下であることがより好ましく、0.07gf・cm/cm
2以上0.23gf・cm/cm
2以下であることがさらに好ましく、0.09gf・cm/cm
2以上0.2gf・cm/cm
2以下であることが特に好ましく、0.10gf・cm/cm
2以上0.17gf・cm/cm
2以下であることが最も好ましい。
【0066】
ここで、クッション性とは、嵩高性と柔軟性を表す指標であり、フィルムを圧縮したときの仕事量(圧縮仕事量)を尺度として表現することができる。また、KES法に従い測定される圧縮仕事量とは、具体的には、試料の大きさを20cm(機械方向)×20cm(幅方向)、試料を圧縮する鋼板を面積2cm
2の円形平面を持つ鋼板、圧縮速度を20μm/sec、圧縮最大荷重を10gf/cm
2、室温を23℃、相対湿度を65%としてKES法により測定する圧縮仕事量をいう。なお、以後、KES法に従い測定される圧縮仕事量のことを、単に圧縮仕事量と記すことがある。
【0067】
本発明のフィルムの圧縮仕事量を0.01gf・cm/cm
2以上0.40gf・cm/cm
2以下、または上記の好ましい範囲とするための方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、後述の製法により製造したフィルム表面に微細な毛羽立ちを付与するための加工を施すことや、後述のB層を有する積層フィルムとして後述の充填剤Bの含有量を調整することなどが挙げられる。フィルム表面に微細な毛羽立ちを付与するための加工としては、微細な砂(研磨材)を投射する(吹きつける)ことによりフィルム表面に微細な毛羽立ちを付与するブラスト加工や、ラビング布を用いてフィルムの表面を物理的に摩擦するラビング加工などが挙げられるが、ラビング布の目の粗さやラビング回数を調整することにより圧縮仕事量の値を容易に制御できる観点から、ラビング加工が好ましい。ラビング加工を用いる場合、ラビング布の目を粗くしたり、ラビング加工の回数を増やすことにより、圧縮仕事量を大きくすることができる。後述のB層を有する積層フィルムの場合は、後述の充填剤Bの含有量を増加させることによっても、圧縮仕事量を大きくすることができる。
【0068】
(静音性)
本発明のフィルムは、手で触れたり、折り曲げたりする際に生じる耳障りな音を軽減する観点から、騒音レベルが65dB以下であることが好ましく、63dB以下であることがより好ましく、60dB以下であることがより好ましく、57dB以下であることがより好ましく、54dB以下であることがより好ましく、51dB以下であることがより好ましく、48dB以下であることがさらに好ましく、45dB以下であることが特に好ましく、43dB以下であることが最も好ましい。
【0069】
騒音レベルとは、一般に静音性を表す指標であり、ゲルボテスターにて、長辺を機械方向とするA4サイズのフィルム試料を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気下で、4サイクル約5.76秒の繰り返し疲労試験を行った際に発せられる音を、試料の中心部分より2cm離れた位置にセットした1/2インチ・エレクトリックマイクロホンにより拾音し、その音を増幅して得られた波形データを解析して得られる騒音レベル(dB)をいう。
【0070】
静音性は、特に手で触れたり、折り曲げたりする機会がある用途にフィルムを使用する場合に要求され、騒音レベルが65dB以下のフィルムは耳障りな音が小さく、例えば布のような静音性に優れたフィルムとなる。また、騒音レベルは小さいほど好ましく下限は特にないが、フィルムとして現実的に製造可能なレベルとしては38dB程度である。
【0071】
本発明のフィルムの騒音レベルを65dB以下、または上記の好ましい範囲とするための方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、後述する熱可塑性樹脂、発泡剤を好ましい種類及び割合で配合し、後述の製法によりフィルムを製造することなどが挙げられる。具体的には、後述列挙する好ましい熱可塑性樹脂の含有量を増加させ、かつ発泡剤を用いて空孔を形成させることにより、騒音レベルを小さくすることができる。
【0072】
(フィルムの透湿度)
本発明のフィルムを、衛生材などの透湿性が要求される用途に使用する場合、その透湿度は、500g/(m
2・day)以上であることが好ましく、700g/(m
2・day)以上であることがより好ましく、1,000g/(m
2・day)以上であることがより好ましく、1,500g/(m
2・day)以上であることがより好ましく、2,500g/(m
2・day)以上であることがより好ましく、3,500g/(m
2・day)以上であることがさらに好ましく、4,200g/(m
2・day)以上であることが特に好ましく、6,000g/(m
2・day)以上であることが最も好ましい。また、フィルムの透湿度は大きいほど好ましく上限は特にないが、衛生材に適用するとの観点からすると、上限は8,000g/(m
2・day)程度あれば十分と考えられる。
【0073】
なお、ここでフィルムの透湿度とは、25℃、90%RHに設定した恒温恒湿装置にて、JIS Z0208(1976)に規定された方法により測定する透湿度をいう。
【0074】
フィルムの透湿度を高めるには、例えば、熱可塑性樹脂として、ポリウレタン、ポリエステル系エラストマーを用いることが好ましい。
【0075】
(発泡剤)
本発明のフィルムは、静音性、せん断かたさ、曲げかたさ、圧縮仕事量、摩擦係数、及び透湿度を前記の好ましい範囲とする観点から、発泡剤を含む組成物から得られることが好ましい。つまり本発明のフィルムは、フィルムを製造するための組成物中の発泡剤を発泡させて、フィルム内に空孔を形成することにより得ることが好ましい。
【0076】
ここでいう発泡剤としては、フィルムを発泡させて空孔を形成するために使用できるものであれば特に限定されず、化学発泡剤、物理発泡剤などを用いることができる。但し、製膜容易性や製膜安定性を考慮すると、化学発泡剤を用いることが好ましい。化学発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどのニトロソ化合物、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウム・アゾジカルボキシレートなどのアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド化合物、カルシウムアジド、4,4’−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホニルアジドなどのアジド化合物などを用いることができるが、経済性、入手容易性、製膜安定性の観点から、炭酸水素ナトリウムを用いることがより好ましい。なお、化学発泡剤は一種類でも複数種類でもよく、さらに発泡助剤として、サリチル酸、フタル酸、しゅう酸などの有機酸や、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛などを含有しても良い。
【0077】
発泡剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、フィルムの静音性、せん断かたさ、圧縮仕事量、摩擦係数、及び透湿度のさらなる改良の観点から、フィルムを得るために用いる組成物中の樹脂全体を100質量部として、発泡剤が0.05質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましく、0.3質量部以上3質量部以下であることが特に好ましく、0.4質量部以上2質量部以下であることが最も好ましい。
【0078】
(フィルムの空孔率)
本発明のフィルムがA層を有する場合、A層は空孔を有することが好ましい。そして、フィルムの静音性、せん断かたさ、曲げかたさ、圧縮仕事量、摩擦係数、及び透湿度を前記の好ましい範囲とする観点から、A層の空孔率が20%以上90%以下であることが好ましく、20%以上60%以下であることがより好ましく、25%以上70%以下であることがより好ましく、30%以上70%以下であることがより好ましく、35%以上70%以下であることがより好ましく、40%以上70%以下であることがさらに好ましく、45%以上70%以下であることが特に好ましく、50%以上70%以下であることが最も好ましい。
【0079】
ここで、空孔率とは、倍率500倍〜1,500倍で撮影したサンプル片の機械方向−厚み方向断面写真をデジタル画像として読み込んで二値化処理を行い、空孔部分と非空孔部分のピクセル数の和に対する空孔部分のピクセル数の割合を計算して得られる空孔率をいう。厚み方向とは、機械方向と幅方向のいずれにも直交する方向を指す。
【0080】
A層の空孔率を20%以上90%以下、または上記の好ましい範囲とするための方法としては、特に限定されないが、発泡剤を用いる方法や、少なくとも一軸方向に延伸する方法が挙げられる。発泡剤を用いる場合、フィルムを製造するための組成物中の発泡剤含有量を増加させることにより、空孔率を大きくすることができる。また、フィルムを延伸する場合、延伸倍率を大きくすることで空孔率を大きくすることができる。
【0081】
(A層中の充填剤のアスペクト比)
本発明のフィルムが、前記A層とB層を有する積層構成の場合、A層が、アスペクト比1以上30以下の充填剤(充填剤A)を含み、フィルムの生産性や製膜安定性の観点から、A層が最表層であることが好ましい。A層に充填剤Aを加えることにより、曲げかたさ、摩擦係数、せん断かたさを好ましい範囲とすることが容易となる。曲げかたさ、摩擦係数、せん断かたさを好ましい範囲とする観点から、充填剤Aのアスペクト比は1以上20以下がより好ましく、1以上10以下であることが特に好ましい。
【0082】
なお、充填剤とは、諸性質を改善するために基材として加えられる物質、あるいは増量、増容、製品のコスト低減などを目的として添加する不活性物質をいう。なお、この定義を満たす限りは、充填剤は酸化防止機能や紫外線吸収機能など、別の機能を有していてもよい。
【0083】
充填剤Aとしては、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、無機の充填剤および/または有機の充填剤を使用することができる。但し、布のような心地良い触感を付与する観点から、充填剤Aとしては無機充填剤が好ましく、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化亜鉛、マイカ、タルク、カオリン、クレー、及びモンモリロナイトのうち少なくとも1種類を用いることがより好ましく、炭酸カルシウムを用いることが特に好ましい。
【0084】
なお、本発明でいう充填剤のアスペクト比とは、充填剤の平均長径/平均短径である。ここで、長径とは、充填剤粒子の平面画像を包含することができる最も面積の小さな長方形(以下、外接長方形ということがある。)の長辺の長さをいい、短径とは、外接長方形の短辺の長さをいう。平均長径とは、走査型電子顕微鏡を用いて測定した20個の充填剤の長径の平均値をいい、平均短径とは、走査型電子顕微鏡を用いて測定した20個の充填剤の短径の平均値をいう。
【0085】
(A層中の充填剤Aの含有量)
A層中の充填剤Aの含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はない。曲げかたさ、摩擦係数、及びせん断かたさを好ましい範囲とする観点から、A層の樹脂全体を100質量部とした際に、充填剤Aの含有量(M
A)が20質量部以上400質量部以下であることが好ましく、50質量部以上200質量部以下であることがより好ましく、65質量部以上150質量部以下であることがさらに好ましく、80質量部以上120質量部以下であることが特に好ましい。
【0086】
(B層中の充填剤Bのアスペクト比)
本発明のフィルムが、前記A層とB層を有する積層構成の場合、B層が、アスペクト比10以上100以下の充填剤であって、充填剤Aよりもアスペクト比の大きい充填剤(充填剤B)を含むことが好ましい。B層に充填剤Bを加えることにより、本発明のフィルムの曲げかたさ、摩擦係数、せん断かたさ、圧縮仕事量を容易に好ましい範囲とすることが可能である。曲げかたさ、摩擦係数、せん断かたさ、圧縮仕事量を好ましい範囲とする観点から、充填剤Bのアスペクト比は20以上80以下がより好ましく、30以上70以下であることが特に好ましい。
【0087】
充填剤Bとしては、無機の充填剤および/または有機の充填剤を使用することができる。但し、布のような心地良い触感を付与する観点から、充填剤Bとしては、ロックウール、ガラス繊維、及びスラグウールなどの人造鉱物繊維、ウォラストナイト、及びセピオライトなどの天然鉱物繊維、古紙粉砕材、衣料粉砕材、セルロース繊維、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、及びココナツ繊維などの植物繊維、絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、及びラクダなどの動物繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、及びアクリル繊維などの合成繊維のうち少なくとも1種類を用いることが好ましい。これらの中でも経済性、入手容易性、製膜安定性の観点から、無機の充填剤を用いることが好ましく、ロックウールを用いることがより好ましい。
【0088】
(B層中の充填剤Bの含有量)
B層中の充填剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、摩擦係数と製膜安定性を両立させる観点から、A層中の充填剤Aの含有量をM
A、B層中の充填剤Bの含有量をM
Bとした際に、M
B/M
Aの値が0.01以上0.60以下であることが好ましく、0.1以上0.45以下であることがより好ましく、0.15以上0.40以下であることがさらに好ましく、0.17以上0.35以下であることが特に好ましい。なお、ここで充填剤Bの含有量とは、B層の樹脂全体を100質量部とした場合の含有量(質量部)をいう。
【0089】
(積層構成)
本発明のフィルムがA層とB層を有する積層構成である場合、静音性、曲げ柔らかさ、布のようなクッション性、及び布のようなせん断変形性と、製膜安定性を両立させる観点から、A層の空孔率をN
A、B層の空孔率をN
Bとしたときに、N
A−N
B≧20%であることが好ましく、N
A−N
B≧25%であることがより好ましく、N
A−N
B≧30%であることがさらに好ましく、N
A−N
B≧35%であることが特に好ましく、N
A−N
B≧40%であることが最も好ましい。A層とB層の空孔率がN
A−N
B≧20%の関係を満たすことにより、静音性、曲げ柔らかさ、布のようなクッション性、及び布のようなせん断変形性を有しつつ、製膜安定性にも優れたフィルムを得ることができる。
【0090】
なお、N
A−N
Bの上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、製膜安定性の観点から、60%程度あれば十分である。
【0091】
本発明のフィルムの積層構成は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えばA層/B層、A層/B層/A層の構成が挙げられる。但し、フィルムの静音性、布のようなクッション性、及び布のようなせん断変形性と、製膜安定性を両立させる観点から、A層/B層/A層の構成が好ましい。また、A層とB層は、直接積層することも、間に接着層を設けて積層することも可能であるが、静音性、布のようなクッション性、及び布のようなせん断変形性を損なわないためには、直接積層することが好ましい。つまり、本発明のフィルムは、A層、B層、及びA層が、この順に直接積層されたことが特に好ましい。
【0092】
(フィルムの厚み)
本発明のフィルムの厚みは、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、取り扱い性と生産性の観点から、3μm以上200μm以下であることが好ましい。ここでいうフィルムの厚みとは、フィルムが単層構成であるか積層であるかにかかわらず、フィルム全体の厚みをいい、走査型電子顕微鏡でフィルム断面の写真を観察することにより測定することができる。フィルムの厚みを3μm以上とすることで、フィルムのコシが強くなり、取り扱い性に優れ、また、ロール巻姿や巻出し性が良好となる。フィルムの厚みを200μm以下とすることで、特にインフレーション製膜法においては、自重によりバブルが安定化する。
【0093】
さらに、本発明のフィルムに好ましい静音性、せん断かたさ、及び透湿度を付与する観点も考慮すると、フィルムの厚みは、5μm以上150μm以下であることがより好ましく、6μm以上40μm以下であることがより好ましく、7μm以上26μm以下であることがさらに好ましく、8μm以上16μm以下であることが特に好ましく、9μm以上14μm以下が最も好ましい。
【0094】
(添加剤)
本発明のフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で前述した成分以外の成分を含有してもよい。例えば、酸化防止剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、抗菌剤、消臭剤、耐候剤、抗酸化剤、イオン交換剤、粘着性付与剤、着色顔料、染料などを含めてもよい。
【0095】
(フィルムの製造方法)
次に、本発明のフィルムを製造する方法について具体的に説明するが、本発明のフィルムの製造方法はこれに限定されるものではない。
【0096】
本発明のフィルムを得るために用いる組成物、つまり、熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂A以外の熱可塑性樹脂、発泡剤、充填剤などを含有する組成物を得るにあたっては、各成分を溶融混練することにより組成物を製造する溶融混練法が好ましい。溶融混練方法については、特に制限はなく、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸または二軸押出機などの公知の混合機を用いることができる。中でも生産性の観点から、単軸または二軸押出機の使用が好ましい。
【0097】
次に、上記した方法により得られた組成物を用いて、インフレーション法、チューブラー法、Tダイキャスト法などの公知のフィルムの製造法により、未延伸フィルムを製造することができる。
【0098】
さらに、機械特性向上、軽量化、及び透湿性向上の観点から、得られた未延伸フィルムを一軸又は二軸延伸することが好ましく、さらに経済性や生産性も考慮すると、機械方向のみに一軸延伸することがより好ましい。また、このときの延伸倍率は、機械特性向上、軽量化、透湿性向上、経済性、生産性の観点から、1.1倍以上が好ましく、1.5倍以上8.0倍以下がより好ましい。
【0099】
フィルムを製膜した後に、印刷性、ラミネート適性、コーティング適性などを向上させる目的で各種の表面処理を施しても良い。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理などが挙げられる。いずれの方法をも用いることができるが、連続処理が可能であり、既存の製膜設備への装置設置が容易な点や処理の簡便さから、コロナ放電処理がより好ましい。
【0100】
続いて、ラビング加工を施す方法を以下に例示する。前述の方法により製膜したフィルムに対してラビング加工を施し、フィルムを毛羽立たせることで、フィルムの圧縮仕事量やせん断かたさ、摩擦係数などを調節することができる。ラビング加工は、既知のラビング装置により、フィルムにラビング布を巻き着けたラビングローラーを押し付け、ラビングローラーを回転させながらフィルムを相対的に移動させることにより行われる。なお、ラビング加工の回数に特に制限はなく、1回であっても、必要に応じて2回以上であってもよい。
【0101】
ラビングの強さはフィルム表面に触れているラビング布の長さやラビングローラーの回転数、フィルムの移動速度、フィルム表面の温度などによって適宜変更できる。また、フィルムへの塵埃などの付着を防止する観点から、ラビング後に除電器による除電を行うことが好ましい。フィルムの表面温度を変える場合、卓上型のラビング装置であれば、ホットプレートをステージ上に取り付け、フィルムを下面から加熱することによって行うことができる。また、ロール状のフィルムを連続的にラビング処理する場合には、連続するロール群にてフィルムを予め加熱し、その後、ラビング布を巻き付けたラビングローラーを回転させながら走行するフィルムに接触させることによって行うことができる。
【0102】
ラビングの条件の目安としては、下記式Mで表されるラビング距離(mm)が500mm以上となるような条件でラビングすることが好ましい。
【0103】
M = NL(2πRn/60V±1)
上記式中のNはラビングの回数であり、Lはフィルム表面に触れているラビング布の長さ(mm)であり、Rはラビング布の厚みを含めたラビングローラーの半径(mm)であり、nはラビングローラーの回転数(rpm)であり、Vはフィルムの移動速度(mm/s)である。式M中の±の符号は、ラビングローラーをフィルムの移動方向に逆らう方向に回転させる場合には+とし、同じ方向に回転させる場合には−とする。ラビング布としては、番手♯30〜♯2,000の布やすりを用いることが好ましい。
【0104】
(用途)
本発明のフィルムは、フィルムとして用いるために必要な機械特性を備え、触感、及びせん断変形性に優れるため、触感やせん断変形性を必要とする衛生材のような用途に好適に用いることができる。さらに、必要に応じて本発明のフィルムを不織布との積層体とすることも可能である。
【0105】
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂を含み、KES法に従い測定されるせん断かたさが0.1gf/(cm・deg)以上4.0gf/(cm・deg)以下であり、かつ少なくとも一方の面において、KES法に従い測定される摩擦係数が0.15以上0.80以下である限り、用途に特に制限はない。但し、触感やせん断変形性を必要とする衛生材のような用途に用いる観点からは、A層とB層を有し、A層が充填剤Aを含みかつ最表層であり、B層が充填剤Bを含み、ラビング加工を施すことで得られるフィルムであることが好ましい。
【実施例】
【0106】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
【0107】
[測定および評価方法]
実施例中に示す測定や評価は次に示すような条件で行った。
【0108】
(1)フィルムの厚みおよび積層フィルムの各層の厚み比
フィルムの製品ロールの幅方向のセンター部からサンプルを切り出した。ウルトラミクロトームを用い、サンプル片の機械方向−厚み方向断面を観察面とするように−100℃で超薄切片を採取した。走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ社製 S−3400N)を用いて倍率500倍〜1,500倍でフィルム断面の写真を撮影し、顕微鏡の測長機能を用いてフィルムの厚みおよび積層フィルムの各層の厚みを測定した。測定は、観察箇所を変えて10回行い、得られた値の平均値をフィルムの厚み(μm)および積層フィルムの各層の厚み(μm)とし、これらの値より積層フィルムの各層の厚み比を算出した。なお、フィルムの厚みは、小数第1位を四捨五入して得られた値とした。
【0109】
(2)フィルムの空孔率、A層およびB層の空孔率(%)
フィルムの厚み測定と同様にサンプルを切り出し、サンプル片の機械方向−厚み方向断面について、走査型電子顕微鏡を用いて倍率1,000倍で観察、断面写真を得た。
【0110】
続いて、画像解析ソフトImageJ(1.47V)(アメリカ国立衛生研究所)を利用して、断面写真を8ビット画像として読み込み、自動二値化処理を行い、空孔部分と非空孔部分とを色分けした。フィルムが単層構成である場合は、空孔部分と非空孔部分のピクセル数の和に対する空孔部分のピクセル数の割合を計算し、フィルムの空孔率(%)を算出した。
【0111】
フィルムがA層とB層を含む積層構成である場合は、同様にしてA層およびB層のそれぞれの領域について、空孔部分と非空孔部分のピクセル数の和に対する空孔部分のピクセル数の割合を計算し、A層およびB層の空孔率(%)を算出した。
【0112】
なお、測定は3回行い、得られた値の平均値の小数第1位を四捨五入して得られた値をフィルムの空孔率(%)又はA層、B層の空孔率(%)とした。
【0113】
(3)フィルムの透湿度
25℃、90%RHに設定した恒温恒湿装置にて、JIS Z0208(1976)に規定された方法に従って測定した。測定は3回行い、得られた値の平均値の小数第1位を四捨五入した値をフィルムの透湿度(g/(m
2・day))とした。なお、フィルムの透湿度はフィルムの製品ロールの巻外面から測定した。
【0114】
(4)KES法によるフィルムのせん断かたさ
フィルムを20cm(機械方向)×20cm(幅方向)の大きさに切取り、試料とし、試験台に取り付けた。次いで、カトーテック社製のせん断試験機KES−FB1−Aを用いて、室温23℃、相対湿度65%、強制荷重10gf、せん断ずり速度0.417mm/secの条件で、試料に−8°〜8°のせん断変形を与え、せん断変形が−2.5°、−0.5°、0.5°、及び2.5°である点におけるせん断応力を測定した(以下、各点におけるせん断応力をそれぞれHG
−2.5、HG
−0.5、HG
0.5、HG
2.5ということがある)。HG
0.5及びHG
2.5より下記式G1を用いて正方向のせん断かたさ(G(+))を、HG
−2.5及びHG
−0.5より下記式G2を用いて負方向のせん断かたさ(G(−))をそれぞれ算出した。せん断応力の測定およびG(+)、G(−)の算出は、機械方向、幅方向ともに3回(合計6回)行い、そのすべてのG(+)、G(−)の値の平均値の小数第2位を四捨五入した値をそのフィルムのせん断かたさ(gf/(cm・deg))とした。
【0115】
式G1:G(+)=(HG
2.5−HG
0.5)/(2.5°−0.5°)
式G2:G(−)=(HG
−2.5−HG
−0.5)/(−2.5°−(−0.5°))。
【0116】
なお、機械方向のせん断かたさを測定する場合は、フィルムの機械方向がせん断変形方向と直交するように試料を取り付け、幅方向のせん断かたさを測定する場合は、フィルムの幅方向がせん断変形方向と直交するように試料を取り付けた。
【0117】
(5)KES法によるフィルムの曲げかたさ
カトーテック社製のせん断試験機KES−FB2−SHを用いて、フィルムを2cm(機械方向)×2cm(幅方向)の大きさに切取り、試料とし、試験台に取り付けて、曲率−2.5cm
−1〜+2.5cm
−1の範囲で、0.5cm
−1/secの変形速度で、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気の条件下にて、フィルムの曲げかたさを測定した。機械方向、幅方向ともに測定をそれぞれ3回(合計6回)行い、そのすべてのデータの平均値の小数第5位を四捨五入した値をそのフィルムの曲げかたさ(gf・cm
2/cm)とした。
【0118】
(6)KES法によるフィルムの圧縮仕事量
フィルムを20cm(機械方向)×20cm(幅方向)の大きさに切取り、試料とし、試験台に取り付けた。次いで、カトーテック社製の自動化圧縮試験装置KES−FB3−Aを用いて、取り付けた試料を面積2cm
2の円形平面を持つ鋼板間で圧縮速度20μm/sec、圧縮最大荷重10gf/cm
2、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気の条件下で圧縮し、フィルムの圧縮仕事量(gf・cm/cm
2)を測定した。フィルムの製品ロールの巻内面、巻外面の両面ともに測定をそれぞれ3回(合計6回)行い、そのすべてのデータの平均値の小数第4位を四捨五入した値をそのフィルムの圧縮仕事量とした。
【0119】
(7)KES法によるフィルムの摩擦係数
フィルムを10cm(機械方向)×10cm(幅方向)の大きさに切取り試料とし、試験台に取り付けた。次いで、カトーテック社製の表面特性試験機KES−SE−SR−Uを用いて、荷重25gf、1mm/secの速度で滑り子をサンプルの表面で移動させ、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気の条件下にてフィルムの製品ロールの巻外面の摩擦係数を測定した。機械方向、幅方向ともに測定をそれぞれ3回(合計6回)行い、そのすべてのデータの平均値の小数第3位を四捨五入した値をそのフィルムの摩擦係数とした。なお、滑り子としては、標準摩擦子(指紋タイプ)を使用した。
【0120】
(8)KES法によるフィルムの表面粗さの変動(SMD)
フィルムを12cm(機械方向)×12cm(幅方向)の大きさに切取り、試料とし、製品ロールの巻外面が測定面となるように試験台に取り付けた。次いで、カトーテック社製の表面特性試験機KES−SE−SR−Uを用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気下にて、荷重5gf、速度1mm/secとして、測定面上で滑り子をフィルム機械方向と平行に移動させ、フィルム機械方向の表面粗さの変動を測定した。その後、同様に滑り子をフィルム幅方向と平行に移動させ、フィルム幅方向の表面粗さの変動を測定した。フィルム機械方向及び幅方向の表面粗さの変動をそれぞれ3回測定し、そのすべての値の絶対値を平均した値を、そのフィルムの表面粗さの変動(SMD)(μm)とした。なお、滑り子としては、長さ5mm、直径0.5mmのピアノ線を使用した。
【0121】
(9)KES法によるフィルムの摩擦係数の変動(MMD)
フィルムを12cm(機械方向)×12cm(幅方向)の大きさに切取り、試料とし、製品ロールの巻外面が測定面となるように試験台に取り付けた。次いで、カトーテック社製の表面特性試験機KES−SE−SR−Uを用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気下にて、荷重5gf、速度1mm/secとして、測定面上で滑り子をフィルム機械方向と平行に移動させ、フィルム機械方向の摩擦係数の変動を測定した。その後、同様に滑り子をフィルム幅方向と平行に移動させ、フィルム幅方向の摩擦係数の変動を測定した。フィルム機械方向及び幅方向の摩擦係数の変動をそれぞれ3回測定し、そのすべての値の絶対値を平均した値を、そのフィルムの摩擦係数の変動(MMD)とした。なお、滑り子としては、長さ5mm、直径0.5mmのピアノ線20本を隙間なく平行に並べたものを使用した。
【0122】
(10)KES法によるフィルムの接触冷温感(Qmax)
カトーテック社製サーモラボKES−F7IIを用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気の条件下にて、フィルムの接触冷温感(Qmax)を測定した。カトーテック社製サーモラボKES−F7IIは、フィルムを設置するための試料台と、検出器とを備えており、検出器の一面には銅薄板が貼られており、銅薄板の裏面には温度センサーが取り付けられている。試料台及び検出器にはヒーターが取り付けられており、それぞれ独立して制御装置によって温度を設定することが可能となっている。試料台にフィルムの巻外面が測定面となるように設置し、制御装置によって試料台の温度を20℃に設定し、検出器の銅薄板の温度を30℃に設定した。次いで、フィルムを設置した試料台と検出器を荷重6gf/cm
2、接触面積50mm×50mmの条件で接触させると同時に、温度センサーからのセンサー出力を記録した。測定は10回行い、得られた値の平均値をフィルムの接触冷温感(Qmax)とした。
【0123】
(11)フィルムのせん断変形性評価
任意に選定した30人を対象に触手試験を実施し、肌着に用いる布のようなせん断変形性(以下、単にせん断変形性ということがある)を有していると回答した人数により、フィルムのせん断変形性を以下のように評価した。せん断変形性は10が最も優れている。
【0124】
10:せん断変形性を有していると回答した人が26人以上
9:せん断変形性を有していると回答した人が24人以上25人以下
8:せん断変形性を有していると回答した人が22人以上23人以下
7:せん断変形性を有していると回答した人が20人以上21人以下
6:せん断変形性を有していると回答した人が18人以上19人以下
5:せん断変形性を有していると回答した人が16人以上17人以下
4:せん断変形性を有していると回答した人が14人以上15人以下
3:せん断変形性を有していると回答した人が12人以上13人以下
2:せん断変形性を有していると回答した人が10人以上11人以下
1:せん断変形性を有していると回答した人が9人以下
(12)フィルムのクッション性評価
任意に選定した30人を対象に触手試験を実施し、肌着に用いる布のようなクッション性(以下、単にクッション性ということがある)を有していると回答した人数により、フィルムのクッション性を以下のように評価した。クッション性は10が最も優れている。
【0125】
10:クッション性を有していると回答した人が26人以上
9:クッション性を有していると回答した人が24人以上25人以下
8:クッション性を有していると回答した人が22人以上23人以下
7:クッション性を有していると回答した人が20人以上21人以下
6:クッション性を有していると回答した人が18人以上19人以下
5:クッション性を有していると回答した人が16人以上17人以下
4:クッション性を有していると回答した人が14人以上15人以下
3:クッション性を有していると回答した人が12人以上13人以下
2:クッション性を有していると回答した人が10人以上11人以下
1:クッション性を有していると回答した人が9人以下
(13)製膜安定性
インフレーション法によりブロー比2.0、フィルム厚み20μmの条件で製膜を行い、3時間のうちに起こった製膜破れの回数をカウントし、回数に応じて、下記の4段階で評価した。製膜安定性はSが最も優れている。なお、積層フィルム(実施例5
(参考例)〜実施例26
(参考例)、比較例3)は、表に記載の積層厚み比となるように製膜した。
【0126】
S:製膜破れの回数 0回
A:製膜破れの回数 1回
B:製膜破れの回数 2回
C:製膜破れの回数 3回以上。
【0127】
また、製膜破れが起こった時点から、フィルムのつなぎ合わせを行って製膜を再開するまでの時間は、3時間の評価時間から除外した。
【0128】
(14)フィルムの騒音レベル(静音性)
フィルムの騒音レベルの測定、評価方法について、フィルムの騒音レベルを評価するためのセットの上面図(
図2)、側面図(
図3)を参照しながら説明する。
【0129】
フィルムの騒音レベルはリオン(株)製の無指向性マイク一式(1/2インチ・エレクトリックマイクロホン(UC−53A)、プリアンプ(NH−22))、FFT分析器(SA−78)、及びキャテック(株)製の波形分析ソフト(CAT−WAVE)、ゲルボテスター(ASTM F−392)を用いて、下記の方法にて測定し、評価した。
【0130】
機械方向がフィルム長辺方向になるようにA4サンプルaを切り出し、その短辺の両端bに両面テープを貼付した。このA4サンプルaを、形状がその短辺を円周とするロール形状となるように、ゲルボテスターのサンプルセット部分に貼り付け、室温雰囲気下で4サイクル約5.76秒の繰り返し疲労試験を行った。その際に発せられる音を、A4サンプルaの中心部分より2cm離れた位置にセットした1/2インチ・エレクトリックマイクロホンcにより拾音し、プリアンプdで増幅して、FFT分析器eによりその波形データを得た。当該波形データを波形分析ソフトにてFFT変換し、騒音レベル(dB)を採取した。なお、当該測定は外部からの音をシャットダウンするために、防音室内にて実施した。
【0131】
また、測定及び分析条件は、以下の通りとした。
【0132】
FFT分析器(SA−78)の校正設定
・Calibration mode LIN
・Transfer value(Ach 1 EU = 4.31×10
−2、Bch 1 EU = 1.11×10
−3)
・Reference value(Ach 0dB EU = 2.0×10
−5)。
【0133】
波形分析ソフト(CAT−WAVE)の校正設定
・分析モード→FFT&OCT
・トリガ設定→フリー
・時間窓関数→レクタンギュラ
・平均方法→周波数〔自動〕
・測定範囲→4サイクル5.76秒(1サイクル約1.44秒計算)
・A特性
・パワースペクトル(平均)。
【0134】
騒音レベルは、以下の方法により算出した。
【0135】
・空運転(フィルムサンプルをセットしない状態で測定する空運転)
分析周波数は人間の聴覚が特に敏感に感じる周波数帯である3,000Hz〜6,000Hzとし、12.5Hz刻みで分析点数は241ポイントとした。各周波数での空運転の騒音レベル(dB)を合計241ポイント測定した。
【0136】
・フィルムサンプルの測定
空運転と同様にして分析周波数は3,000Hz〜6,000Hzとし、12.5Hz刻みで分析点数は241ポイントとした。各周波数でのサンプルの騒音レベルを合計241ポイント測定し、各周波数でのサンプルの騒音レベル(dB)から空運転の騒音レベルを対数計算にて差し引いて、当該サンプルの各周波数における合計241ポイントのデータを算出した。得られた合計241ポイントのデータを対数計算にて合算したものを、当該サンプルの騒音レベルとした。
【0137】
ここで、騒音レベルの差し引き、合算は四則演算ではなく、下の例のように対数計算にて行った。なお、合計241ポイントのデータを対数計算にて合算してサンプルの騒音レベルを算出するにあたり、空運転の騒音レベルがサンプルの騒音レベルを上回る場合は、その周波数のデータは除外した。同様の測定を5回行い、そのすべてのデータの平均値の小数第1位を四捨五入して得られた値を当該フィルムの騒音レベル(dB)とした。
【0138】
(例)80dBと70dBの差は次のように計算した。
【0139】
騒音レベル(dB)=10log
10(10
8−10
7)=79.5dB
(例)80dBと70dBの和は次のように計算した。
【0140】
騒音レベル(dB)=10log
10(10
8+10
7)=80.4dB。
【0141】
また、
図4に各周波数の騒音レベルを表したグラフの例を記す。
図4のhは比較例1、iは比較例2、jは実施例19のデータである。
【0142】
(15)フィルム温度
放射温度計(シロ産業社製、品番:MB8R−4110C)を用いて、フィルムから50cm離れた位置より測定した。
【0143】
[熱可塑性樹脂A]
(A1)
ポリウレタン(商品名:OP85A10 、BASFジャパン製)。使用前に回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0144】
(A2)
エチレン−メチルメタクリレート共重合体(商品名:“アクリフト”(登録商標) WH303、住友化学工業(株)製)
(A3)
ポリエステル系エラストマー(商品名:“ハイトレル”(登録商標) G3548LN 、東レデュポン製)使用前に回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
【0145】
[熱可塑性樹脂B
(B1)
ポリエチレングリコール(商品名:PEG‐20000、三洋化成工業(株)製)。
【0146】
(B2)
エチレン樹脂(商品名:NUC8506、日本ユニカー(株)製)。
【0147】
(B3)
プロピレン樹脂(商品名:BC06C、日本ポリプロ(株)製)。
【0148】
[発泡剤(C)]
(C1)
炭酸水素ナトリウム(商品名:“セルボン”(登録商標)FE−507、永和化成工業(株)製)。
【0149】
[充填剤(D)]
(D1)
炭酸カルシウム(商品名:カルテックスR、アスペクト比2、丸尾カルシウム(株)製)。
【0150】
(D2)
ロックウール(商品名:RW−150、アスペクト比40、(株)ティーディーアイ製)。
【0151】
(D3)
綿繊維(商品名:コットンパウダー ♯80、アスペクト比35、サンヨー化成(株)製)。
【0152】
[フィルムの作製]
(実施例1
(参考例))
A1、C1を表1に記載の含有量でシリンダー温度175℃のスクリュー径44mmの真空ベント付二軸押出機に供給して溶融混練し、均質化した後にペレット化して組成物を得た。この組成物のペレットを、回転式ドラム型真空乾燥機を用いて、温度80℃で5時間真空乾燥した。真空乾燥した組成物のペレットをインフレーション法により、シリンダー温度190℃で、スクリュー径60mmの単軸押出機に供給し、直径250mm、リップクリアランス1.0mm、温度を175℃に設定した環状ダイスにより、ブロー比2.0にてバブル状に上向きに押出し、冷却リングにより空冷し、ダイス上方のニップロールで折りたたみながら、引き取りしてロール状に巻き取った。引き取り速度の調整により、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性及び評価結果を表1に示した。
【0153】
(実施例2
(参考例))
表1に記載の通りに、発泡剤の含有量を変更した以外は実施例1
(参考例)と同様にしてインフレーション法により、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性及び評価結果を表1に示した。
【0154】
(比較例1)
樹脂の種類及び含有量、発泡剤の含有量を表3に記載の通りに変更し、インフレーション法にてフィルムを作製する際のシリンダー温度を220℃、環状ダイスの温度を200℃に変更した以外は実施例1
(参考例)と同様にしてインフレーション法により、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性及び評価結果を表3に示した。
【0155】
(比較例2)
樹脂の種類及び含有量、発泡剤の含有量を表3に記載の通りに変更し、インフレーション法でフィルムを作製する際のシリンダー温度を240℃、環状ダイスの温度を210℃に変更した以外は実施例1
(参考例)と同様にしてインフレーション法により、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性及び評価結果を表3に示した。
【0156】
(実施例3
(参考例)、4
(参考例))
樹脂の種類及び含有量、発泡剤の含有量、充填剤の含有量を表1に記載の通りに変更し、インフレーション法にてフィルムを作製する際のシリンダー温度を195℃、環状ダイスの温度を180℃に変更した以外は実施例1
(参考例)と同様にして、インフレーション法により、厚さ80μmのフィルムを得た。得られたフィルムをロール式延伸機にて、フィルム温度85℃で機械方向に4倍に延伸した。続いて定長下、加熱ロール上で、フィルム温度95℃で1秒間熱処理後、冷却ロール上で冷却し、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性及び評価結果を表1に示した。なお、ここでいうフィルム温度とは、放射温度計を用いて、フィルムから50cm離れた位置より測定したフィルム温度をいう。
【0157】
(実施例5
(参考例)〜8
(参考例))
樹脂の種類及び含有量、発泡剤の含有量を、表1に記載の割合とし、実施例1
(参考例)と同様にして、A層およびB層に用いる組成物のペレットを得た。
【0158】
そして、表1に記載の積層厚み比となるように、この組成物のペレットをインフレーション法により、シリンダー温度195℃で、スクリュー径60mmのそれぞれ独立した単軸押出機に供給し、環状ダイスの温度を180℃とし、実施例1
(参考例)と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性及び評価結果を表1に示した。
【0159】
(比較例3)
樹脂の種類及び含有量、発泡剤の含有量を、表3に記載の割合とし、実施例1
(参考例)と同様にして、A層およびB層に用いる組成物のペレットを得た。
【0160】
そして、表3に記載の積層厚み比となるように、この組成物のペレットをインフレーション法により、シリンダー温度240℃で、スクリュー径60mmのそれぞれ独立した単軸押出機に供給し、環状ダイスの温度を210℃とし、実施例1
(参考例)と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性及び評価結果を表3に示した。
【0161】
(比較例4)
樹脂の種類及び含有量を表3に記載の通りに変更し、実施例1
(参考例)と同様にしてインフレーション法により、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性及び評価結果を表3に示した。
【0162】
(実施例10
(参考例)、12
(参考例)、14、16、18、20、24
(参考例)、25
(参考例)、26
(参考例))
樹脂の種類及び含有量、発泡剤の含有量、充填剤の含有量を表2又は3に記載の通りに変更した以外は、実施例5
(参考例)と同様にして、A層およびB層に用いる組成物のペレットを得た。そして、表2又は3に記載の積層厚み比となるように、この組成物のペレットをインフレーション法により、シリンダー温度185℃で、スクリュー径60mmのそれぞれ独立した単軸押出機に供給し、環状ダイスの温度を170℃とし、実施例5と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性及び評価結果を表2又は3に示した。
【0163】
(実施例9
(参考例)、11
(参考例)、13
(参考例)、15、17、19、21)
樹脂の種類及び含有量、発泡剤の含有量、及び充填剤の含有量を表1、2、又は3に記載の通りに変更した以外は、実施例5
(参考例)と同様にして、A層およびB層に用いる組成物のペレットを得た。そして、表1、2又は3に記載の積層厚み比となるように、この組成物のペレットをインフレーション法により、シリンダー温度185℃で、スクリュー径60mmのそれぞれ独立した単軸押出機に供給し、環状ダイスの温度を170℃とし、実施例5
(参考例)と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。
【0164】
次いで、作製したフィルムの巻外面を、ホットステージを取り付けたニュートム社製のラビング装置(NR‐10 Type3)を用いて均一にラビングした。ステージの温度は45℃に設定し、ラビング布は布やすり(理研コランダム(株)製 研磨布♯400)を用い、前述式Mで表されるラビング距離が600mmになる条件、すなわち、フィルム表面に触れているラビング布の長さLを10mm、ラビング布厚みを含めたラビングローラーの半径Rを45mm、ラビングローラーの回転数nを720rpm、フィルムの移動速度Vを120mm/sに設定し、ラビングローラーをフィルムの移動方向に逆らう方向に回転させながら2回ラビング加工を行った。もう片方の面である巻内面について同様のラビング加工を2回行った。得られたフィルムの物性及び評価結果を表1、2又は3に示した。
【0165】
(実施例22、23)
樹脂の種類及び含有量、発泡剤の含有量、及び充填剤の含有量を、表3に記載の割合とし、実施例10
(参考例)と同様にして、A層およびB層に用いる組成物のペレットを得た。
【0166】
そして、表3に記載の積層厚み比となるように、この組成物のペレットをインフレーション法により、シリンダー温度185℃で、スクリュー径60mmのそれぞれ独立した単軸押出機に供給し、環状ダイスの温度を170℃とし、実施例10
(参考例)と同様にして、それぞれ厚さ15μm、10μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性及び評価結果を表3に示した。
【0167】
(参考例1〜3)
前述の方法により、以下の布及び不織布について、厚み、せん断かたさ(G)、表面粗さの変動(SMD)、摩擦係数の変動(MMD)、圧縮仕事量、及び接触冷温感(Qmax)を測定した。その結果を表3に示す。
【0168】
(参考例1)
布を構成する全成分を100%としたときに、精製セルロース繊維(“テンセル”(登録商標))を95%、ポリウレタン繊維を5%含む布 ((株)ユニクロ製 ボクサーブリーフ(黒) レギュラー)
(参考例2)
商品名:絹調ポリエステル繊維(“シルックデュエット”(登録商標)、東レ(株)製)
(参考例3)
商品名:ポリプロピレン不織布(“エルタス”(登録商標))、旭化成せんい(株)製 目付け20g/m
2【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
【表3】
【0172】
各表における、「熱可塑性樹脂A」の項目の「質量%」及び「熱可塑性樹脂B」の項目の「質量%」は、各層の樹脂全体を100質量%とした場合の値として算出した。
【0173】
各表における「発泡剤」の項目の「質量部」及び「充填剤」の項目の「質量部」は、各層の樹脂全体を100質量部とした際の値として算出した。