【実施例】
【0038】
本実施例で用いた測定法を示す。
(1)(100)面の結晶サイズ
PHILIPS社製PW1729X線回折装置を用いて測定した。測定条件は次の通り
である。試料は2cm×2cmに切り出して、厚みが100μmにもっとも近くなるように重ね合わせて、フィルム面が回折面に並行になるようにセットする。常温・常圧下で、35kV、15mAのCuKα線にて、θが18°〜30°の範囲で回折ピークを得た。得られた(100)面の回折ピークの半値幅h(°)より下記式にて結晶サイズを求めた。
χc=43.05/h
(2)熱収縮率
フィルムサンプル標線間を200mm(標線間を長さ方向とする)にとり、フィルムを10mmに切断する。フィルムサンプルを長さ方向に吊るし、1gの荷重を長さ方向に加えて、150℃の熱風を用い30分間加熱した後、標線間の長さを測定し、フィルムの収縮量を原寸法に対する割合として百分率で表した。評価は、長手方向を長さ方向にとったもの、および幅方向を長さ方向にとったものについて、5回ずつ実施し、それぞれの平均値をもって、長手方向の150℃30分における熱収縮率、幅方向の150℃30分における熱収縮率とした。
【0039】
(3)最大突起高さ(SRmax)、ピークカウント(SPc)、および、中心線平均粗さ(SRa)
小坂研究所(株)製の光触針式(臨界角焦点エラー検出方式)3次元粗さ計(ET−3
0HK)を使用して測定した。本発明におけるSRmax・SRa値は、JIS−B0601(1994年)のRmax・Ra値に相当する3次元粗さ計での測定値である。SPcは粗さ曲線の中心線に平行に3nm離れたレベルにピークカウントレベルを設定し、曲線が平均線とピークカウントレベルを交差する2点間において、上側のピークカウントの交差する点が1個以上存在する時を1山として、この山数を測定長さ間において10回測定し、その平均値を求めた。測定方向は幅方向とし、カットオフ値0.25mm、測定長0.5mm、送りピッチ5μm、触針荷重10mg、測定スピードは100μm/s、測定本数は80本とした。
【0040】
(4)動摩擦係数
試料調湿として、23℃、65%RHで24時間フィルムをエージングし、ASTMD−1894に準じて、下記条件にてスリップテスターを用いて塗布層(B層)を設けた面と反対面との動摩擦係数を下記条件にて測定した。
【0041】
試料サイズ : 75mm(幅)×100mm(長さ)
すべり速度 : 150mm/分
加重 : 200g
(5)基材層(A層)厚み、および、塗布層(B層)厚み
1mm(幅)×10mm(長さ)のフィルム片を幅方向5mmの断面が上側にくるようにエポキシ樹脂で包埋した。該包埋物のエポキシ樹脂部分をミクロトームの試料ホルダーにセットできるようにトリミングし、LKB社製ウルトロトーム4801にダイヤモンドナイフを用いて、エポキシ樹脂包埋処理をしたフィルム片の断面を切削した。面出し後のエポキシ樹脂包埋ブロックをRuO
4雰囲気下で24時間かけて塗布層(B層)の染色を行った。染色処理後のエポキシ樹脂包埋ブロックを再度、ミクロトームにセットし、ダイヤモンドナイフを用いて切削し、染色された断面を含む超薄切片を作成した。該超薄切片を日立製H−7100FA透過型電子顕微鏡にて加速電圧を75kVとして、40000倍のフィルム断面写真を撮影し、基材層(A層)および染色された塗布層(B層)の厚みを求めた。
【0042】
(6)基材層(A層)、および、塗布層(B層)に含有する粒子の平均粒子径
日本ミクロトーム研究所製電動ミクロトームST−201を用いて断面切削したフィルムのスライス片を作成した。走査型電子顕微鏡の試料台に固定したスライス片を、スパッタリング装置を用いて真空度10
-3Torr、電圧0.25KV、電流12.5mAの条件にて10分間、イオンエッチング処理を施す。次に、同装置にて該表面に金スパッタを施し、走査型電子顕微鏡にて50000倍の厚み方向の断面写真を撮影した。ここで基材層(A層)、塗布層(B層)中それぞれに含有する粒子のn(≧10)個の円相当径の平均値を基材層(A層)、塗布層(B層)中に含有する粒子の平均粒子径とした。
【0043】
(7)基材層(A層)、および、塗布層(B層)に含有する粒子の含有量
メチルエチルケトンによって基材層(A層)と塗布層(B層)を分離させる。基材層(A層)、塗布層(B層)それぞれに対し、基材層および塗布層を構成する樹脂は溶解するが粒子は溶解させない溶媒を選択し、粒子を基材層および塗布層を構成する樹脂から遠心分離し、粒子の全体重量に対する比率(重量%)をもって基材層(A層)、塗布層(B層)の粒子含有量とする。
【0044】
(8)印画物の光沢度
フィルムの塗布面(B層表面)に、アクリル酸エステル/アミノ変性シリコーン/イソシアネート=70/29/1(重量比)で混合させた水系耐熱滑性層を設けた。その後、塗布層(B層表面)上に昇華性染料/エチルヒドロキシエチルセルロース/メチルエチルケトン/トルエン=5/5/45/45(重量比)から成る昇華型インクを塗布して、昇華型熱転写リボンを作製した。昇華型染料としては、イエロー:BASF社製バラニールイエロー5RX、マゼンタ:住友化学工業(株)製イミロカンRED−FBL、シアン:日本化薬(株)製カヤセットブルー714をそれぞれ用いた。この昇華型熱転写リボンを用い、大日本印刷(株)製デジタルフォトプリンタDS40で受像紙上に幅20mm、長さ100mmの自然画の印画を行った。その印画物の黒背景部分について、スガ試験器製デジタル変角光沢計UGV−5Dを用いてJIS−Z8741(1997年)規定の方法に従って入射角20°での鏡面光沢度値を測定し、下記基準に従って印画評価(光沢)を評価した。
S:鏡面光沢度値70%以上(優れる)
A:鏡面光沢度値65%以上70%未満(良好)
B:鏡面光沢度値50%以上65%未満(商品価値劣る)
C:鏡面光沢度値50%未満(不良)
(9)巻取性評価
フィルム製造工程で巻き取ったジャンボロールを引き出し、小幅スリット機で1m幅で1000m以上スリットして、下記基準に従って評価した。
S:巻き始め初期及び巻き取り中のシワが全くなく、巻き取りロール端面ズレが少しも認められない
A:巻き始め初期及び巻き取り中のシワが全くないが、軽微な巻き取りロール端面ズレが一部認められる
B:巻き始め初期にシワが発生するが、すぐ消失する
C:巻き始め初期に発生したシワが消失しないか、巻き取り中にシワが発生する。
【0045】
(10)加工特性評価
上記(8)の印画を行った際、印画済リボン及び印画した画像を観察し、下記基準に従って評価した。
S:印画した画像及び印画済リボンにシワが認められない
A:印画済リボンにシワが認められるが、印画した画像は良好
B:印画済リボンのシワが認められ、印画した画像に1cm未満のシワが認められる
C:印画済リボンのシワが認められ、印画した画像に1cm以上のシワが認められる
(11)生産性
製膜中のフィルム破れ回数を計測し、100時間に0〜1回生じる程度ならば「A」、2〜3回は「B」、4回以上のときには「C」とした。
【0046】
なお、上記の評価において、フィルムの長手方向(MD)や幅方向(TD)が分からない場合は、フィルムにおいて最大の屈折率を有する方向を長手方向、それに長手方向に直行する方向を幅方向とみなす。フィルムにおける最大の屈折率の方向は、フィルムの全ての方向の屈折率をアッベ屈折率計で測定して求めてもよく、例えば、位相差測定装置(複屈折測定装置)などにより遅相軸方向を決定することで求めてもよい。
【0047】
[実施例1]
富士シリシア社製、数平均粒子径2.6μmの二酸化ケイ素粒子を0.03重量%含有した、固有粘度0.61の東レ製ポリエチレンテレフタレートを押出機中で285℃に溶融させ、口金からシート状に溶融押し出しし、25℃の回転冷却ドラムに密着させて固化させ、未延伸フィルムを得た。加熱したロールの周速差を用いてフィルムの長手方向に125℃で2.4倍に延伸(1段目延伸)を行い、ついで長手方向に115℃で2.7倍に延伸(2段目延伸)した後、フィルムを走行させた状態で塗液を片面にグラビア方式により塗布した。塗液は、テレフタル酸/イソフタル酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸/エチレングリコール/1,4−ブタンジオール=30/15/5/30/20(モル%)で重縮合させた水系ポリエステル系樹脂と、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/N−メチロールアクリルアミド=75/22/1/2(重量比)で共重合させた水系アクリル系樹脂と、平均粒子径45nmのコロイダルシリカを、ポリエステル系樹脂/アクリル系樹脂/コロイダルシリカ=50/30/20(重量比)となるように混合し、固形分重量が2重量%となるように水を溶媒として用いたものを用いた。
次にこのフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、110℃で幅方向に4.0倍に延伸し、さらに220℃で熱処理し、150℃で幅方向に4.0%弛緩させて、280m/分の速度で巻き取り、厚さ4.5μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性を表に示す。
【0048】
また、得られた積層フィルムの塗布層(B層)表面にワックスを主成分とする水系耐熱滑性層を設け、塗布層とは反対側の面上に昇華型インクを塗布して昇華型熱転写リボンを作製した。その後、印画性評価を行った。
【0049】
[実施例2]
塗布塗液のコロイダルシリカの平均粒子径80nmに変えるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0050】
[実施例3]
熱処理温度を205℃に変えるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0051】
[実施例4]
熱処理温度を230℃に変えるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0052】
[実施例5]
150℃で幅方向に8.0%弛緩させるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0053】
[実施例6]
150℃で幅方向に3.0%弛緩させるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0054】
[実施例7]
二酸化ケイ素粒子の含有量を0.015重量%に変えるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0055】
[実施例8]
二酸化ケイ素粒子の含有量を0.06重量%に変えるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0056】
[実施例9]
数平均粒子径1.5μmの二酸化ケイ素粒子の含有量を0.06重量%に変えるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0057】
[実施例10]
数平均粒子径4.5μmの二酸化ケイ素粒子の含有量を0.01重量%に変えるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0058】
[実施例11]
数平均粒子径0.1μmの二酸化ケイ素粒子の含有量を0.3重量%に変えるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0059】
[実施例12]
数平均粒子径5.0μmの二酸化ケイ素粒子の含有量を0.03重量%に変えるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0060】
[
参考例1]
ポリエステル系樹脂/アクリル系樹脂/コロイダルシリカ=65/30/5(重量比)となるように混合した塗液を用いたほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0061】
[実施例14、15]
粒子含有量を表2に記載の含有量に変える以外は実施例13と同様にして積層フィルムを得た。次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0062】
[
参考例2]
フィルムに添加する粒子を、数平均粒子径が2.2μmの二酸化ケイ素粒子に変えること、塗材に添加する粒子を数平均粒子径が0.1μmとすること、塗材の最終厚みが0.120μmとなるように塗布すること以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0063】
[実施例17]
塗材に添加する粒子含有量を表2に記載の含有量とすること以外は実施例16と同様にして積層フィルムを得た。次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例16と同様の評価を行った。
【0064】
[
参考例3]
塗材に添加する粒子を数平均粒子径が0.1μmとすること、塗材の最終厚みが0.180μmとなるように塗布すること以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0065】
[比較例1]
熱処理温度を195℃に変えるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0066】
[比較例2]
熱処理温度を240℃に変えるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0067】
[比較例3]
150℃で幅方向に12.0%弛緩させるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0068】
[比較例4]
150℃で幅方向に1.5%弛緩させるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0069】
[比較例5]
二酸化ケイ素粒子の含有量を0.008重量%に変えるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0070】
[比較例6]
二酸化ケイ素粒子の含有量を0.09重量%に変えるほかは実施例1と同様にして積層フィルムを得、次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0071】
[比較例7]
フィルムに添加する粒子を、数平均粒子径が2.2μmの二酸化ケイ素粒子に変えること、粒子含有量を0.05重量%とすること、塗材に添加する粒子を数平均粒子径が0.1μmとすること、塗材の最終厚みが0.180μmとなるように塗布すること以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。次いで昇華型熱転写リボンを作成し、実施例1と同様の評価を行った。
【0072】
【表1】
【0073】
【表1】
【0074】
【表3】
【0075】
なお、表中、Tb(μm)/Da(μm)の項では、指数をEと記載している。例えば、8.8E−0.3は、8.8×10
−3を表す。