特許第6725002号(P6725002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6725002携帯用電子機器及びワイヤレス電力伝送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6725002
(24)【登録日】2020年6月29日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】携帯用電子機器及びワイヤレス電力伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/46 20060101AFI20200706BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20200706BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20200706BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20200706BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20200706BHJP
   H04R 25/00 20060101ALI20200706BHJP
   H01F 38/12 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   H01M10/46
   H01M2/10 E
   H02J7/00 301D
   H02J50/40
   H02J50/10
   H04R25/00 H
   H01F38/12
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-548485(P2018-548485)
(86)(22)【出願日】2016年11月1日
(86)【国際出願番号】JP2016082466
(87)【国際公開番号】WO2018083736
(87)【国際公開日】20180511
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】板垣 一也
(72)【発明者】
【氏名】日隈 慎二
【審査官】 辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−098187(JP,A)
【文献】 特開2014−230441(JP,A)
【文献】 特開2015−159664(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0176060(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00−50/90
H02J 7/00
H01M 10/46
H01F 38/12
H04R 25/00
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの先端部内側に配置された二次電池と、
前記ハウジング内において前記二次電池の周囲に配置された受電コイルユニットと、を備え、
前記受電コイルユニットは、第1磁性体に導線が螺旋状に巻回された第1コイルと、第2磁性体に導線が螺旋状に巻回された第2コイルと、を有し、
前記第1及び第2コイルは、前記二次電池の軸回り方向において互いに異なる位置にあり、かつ、電流が流れると各々の巻回軸において互いに逆向きの磁束が発生するように相互に接続されている、携帯用電子機器。
【請求項2】
前記第1及び第2コイルの巻回軸はそれぞれ、前記二次電池の軸周り方向に沿う部分を有する、請求項1に記載の携帯用電子機器。
【請求項3】
前記第1及び第2コイルは、前記第1コイルの一対の端部同士を結ぶ第1仮想線と、前記第2コイルの一対の端部同士を結ぶ第2仮想線と、の成す角度が、120度以下となるように配置されている、請求項1又は2に記載の携帯用電子機器。
【請求項4】
前記第1及び第2コイルは、前記第1コイルの一対の端部同士を結ぶ第1仮想線と、前記第2コイルの一対の端部同士を結ぶ第2仮想線と、の成す角度が、100度以下となるように配置されている、請求項1又は2に記載の携帯用電子機器。
【請求項5】
前記第1及び第2コイルはそれぞれ、巻回軸が前記二次電池の側面形状に沿って湾曲している、請求項1から4のいずれか一項に記載の携帯用電子機器。
【請求項6】
前記第1及び第2磁性体が互いに連結されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の携帯用電子機器。
【請求項7】
前記第1及び第2磁性体が、互いに別体であり、前記ハウジングの幅方向中央部を挟んで一方側と他方側にそれぞれ配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の携帯用電子機器。
【請求項8】
前記第1及び第2コイルは、前記ハウジングの幅方向中央部を挟んで一方側と他方側にそれぞれ配置されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の携帯用電子機器。
【請求項9】
前記第1及び第2コイルの、前記ハウジングの先端側の端部同士の離間距離が、3mm〜7mmである、請求項1から8のいずれか一項に記載の携帯用電子機器。
【請求項10】
前記第1及び第2コイルの、前記ハウジングの先端側の端部同士の離間距離が、前記二次電池の直径の38%〜100%である、請求項1から8のいずれか一項に記載の携帯用電子機器。
【請求項11】
前記受電コイルユニットの出力電力により前記二次電池を充電する充電回路を備え、
前記充電回路は電圧変換用コイルを有し、
前記電圧変換用コイルは、前記第1及び第2コイルの、前記ハウジングの先端側の端部同士の間において、磁性体に導線が螺旋状に巻回されたものである、請求項1から10のいずれか一項に記載の携帯用電子機器。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の携帯用電子機器と、給電装置と、を備え、
前記給電装置は、給電コイルと、前記給電コイルを収容する筐体と、を有し、
前記筐体は、前記携帯用電子機器の少なくとも一部を収容可能な凹部を有し、
前記給電コイルは、前記凹部の周囲を螺旋状に周回する、ワイヤレス電力伝送装置。
【請求項13】
前記給電装置は、前記給電コイルの外周を覆う筒状の第3磁性体を有する、請求項12に記載のワイヤレス電力伝送装置。
【請求項14】
前記給電装置は、前記第3磁性体の一端部から前記第3磁性体の一端部側の開口中心側に伸びる第4磁性体と、前記第3磁性体の他端部から前記第3磁性体の他端部側の開口中心側に伸びる第5磁性体と、を有する、請求項13に記載のワイヤレス電力伝送装置。
【請求項15】
前記第4磁性体は、前記筐体の前記凹部を囲む一端側開口部を有し、
前記第5磁性体は、前記凹部の底部側に位置する他端側開口部を有し、
前記一端側開口部の開口幅、及び前記他端側開口部の開口幅は、共に前記給電コイルの周回幅よりも狭い、請求項14に記載のワイヤレス電力伝送装置。
【請求項16】
前記他端側開口部の開口幅は、前記一端側開口部の開口幅よりも狭い、請求項15に記載のワイヤレス電力伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス充電に対応した携帯用電子機器、及び携帯用電子機器と給電装置との間でワイヤレスで電力を伝送するワイヤレス電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イヤホン、ヘッドセット、補聴器等のウェアラブル機器を含む携帯用電子機器では、小型化が進むと共に、電源の二次電池化が進んでいる。電源を二次電池にした場合、携帯用電子機器に充電ケーブルのコネクタを差し込んで充電する方法が考えられるが、コネクタを差し込む作業が煩雑である。また、コネクタの差込が簡単な構造にすると、今度は防水が難しくなる。これに対し、ワイヤレス電力伝送を利用した充電であれば、携帯用電子機器にコネクタを差し込む煩雑さもなければ、防水構造も取りやすい。
【0003】
下記特許文献1は、ワイヤレス充電装置に関するものであり、「充電器は、給電コイルが巻装された給電カットコアと、送信回路部と、給電可能な電源とを有し、第一の外装ケースに収納され、携帯機器は、受電コイルが巻装された受電コアと、充放電可能な二次電池と、受電回路部と、システム回路部とを有し、第二の外装ケースに収納され、受電コアは給電カットコアに囲まれており、受電コアと給電カットコアは第二の外装ケースを挟んで互いに電磁結合し、給電コイルに誘起された交流磁界は給電カットコアから円筒カットコアにわたって形成され、受電コイルに交流電流が誘起されることにより、充電器の電源から電力を給電コイルから受電コイルへ搬送される電力で携帯機器の電池を充電する」との内容を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−2580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小型化が進む携帯用電子機器にワイヤレス電力伝送を適用するには、携帯用電子機器の大型化を避けながら受電コイルを設ける必要がある。特許文献1は、受電コイルを設けるに際して携帯用電子機器の大型化を避ける工夫について何ら開示していない。
【0006】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、小型化に有利な構成の携帯用電子機器及びそれを備えるワイヤレス電力伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、携帯用電子機器である。この携帯用電子機器は、
ハウジングと、
前記ハウジングの先端部内側に配置された二次電池と、
前記ハウジング内において前記二次電池の周囲に配置された受電コイルユニットと、を備え、
前記受電コイルユニットは、第1磁性体に導線が螺旋状に巻回された第1コイルと、第2磁性体に導線が螺旋状に巻回された第2コイルと、を有し、
前記第1及び第2コイルは、前記二次電池の軸回り方向において互いに異なる位置にあり、かつ、電流が流れると各々の巻回軸において互いに逆向きの磁束が発生するように相互に接続されている。
【0008】
前記第1及び第2コイルの巻回軸はそれぞれ、前記二次電池の軸周り方向に沿う部分を有してもよい。
【0009】
前記第1及び第2コイルは、前記第1コイルの一対の端部同士を結ぶ第1仮想線と、前記第2コイルの一対の端部同士を結ぶ第2仮想線と、の成す角度が、120度以下となるように配置されてもよい。
【0010】
前記第1及び第2コイルは、前記第1コイルの一対の端部同士を結ぶ第1仮想線と、前記第2コイルの一対の端部同士を結ぶ第2仮想線と、の成す角度が、100度以下となるように配置されてもよい。
【0011】
前記第1及び第2コイルはそれぞれ、巻回軸が前記二次電池の側面形状に沿って湾曲していてもよい。
【0012】
前記第1及び第2磁性体が互いに連結されてもよい。
【0013】
前記第1及び第2磁性体が、互いに別体であり、前記ハウジングの幅方向中央部を挟んで一方側と他方側にそれぞれ配置されてもよい。
【0014】
前記第1及び第2コイルは、前記ハウジングの幅方向中央部を挟んで一方側と他方側にそれぞれ配置されてもよい。
【0015】
前記第1及び第2コイルの、前記ハウジングの先端側の端部同士の離間距離が、3mm〜7mmであってもよい。
【0016】
前記第1及び第2コイルの、前記ハウジングの先端側の端部同士の離間距離が、前記二次電池の直径の38%〜100%であってもよい。
【0017】
前記受電コイルユニットの出力電力により前記二次電池を充電する充電回路を備え、
前記充電回路は電圧変換用コイルを有し、
前記電圧変換用コイルは、前記第1及び第2コイルの、前記ハウジングの先端側の端部同士の間において、磁性体に導線が螺旋状に巻回されたものであってもよい。
【0018】
本発明のもう1つの態様は、ワイヤレス電力伝送装置であり、
前記携帯用電子機器と、給電装置と、を備え、
前記給電装置は、給電コイルと、前記給電コイルを収容する筐体と、を有し、
前記筐体は、前記携帯用電子機器の少なくとも一部を収容可能な凹部を有し、
前記給電コイルは、前記凹部の周囲を螺旋状に周回する。
【0019】
前記給電装置は、前記給電コイルの外周を覆う筒状の第3磁性体を有してもよい。
【0020】
前記給電装置は、前記第3磁性体の一端部から前記第3磁性体の一端部側の開口中心側に伸びる第4磁性体と、前記第3磁性体の他端部から前記第3磁性体の他端部側の開口中心側に伸びる第5磁性体と、を有してもよい。
【0021】
前記第4磁性体は、前記筐体の前記凹部を囲む一端側開口部を有し、
前記第5磁性体は、前記凹部の底部側に位置する他端側開口部を有し、
前記一端側開口部の開口幅、及び前記他端側開口部の開口幅は、共に前記給電コイルの周回幅よりも狭くてもよい。
【0022】
前記他端側開口部の開口幅は、前記一端側開口部の開口幅よりも狭くてもよい。
【0023】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、小型化に有利な構成の携帯用電子機器及びそれを備えるワイヤレス電力伝送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係る携帯用電子機器80の斜視図。
図2】携帯用電子機器80の要部拡大分解斜視図。
図3】携帯用電子機器80の二次電池84及び受電コイルユニット90の分解状態の斜視図。
図4】二次電池84及び受電コイルユニット90の組合せ状態の斜視図。
図5】本発明の実施の形態に係るワイヤレス電力伝送装置1における、ワイヤレス給電装置10に対する携帯用電子機器80の配置方法を示す斜視図。
図6】ワイヤレス給電装置10の送電コイルユニットの分解斜視図。
図7】ワイヤレス電力伝送装置1の要部概略断面図であって、ワイヤレス電力伝送に伴う磁束の流れを示す概略断面図。
図8図7における携帯用電子機器80の先端部を拡大した概略断面図であり、第1コイル85及び第2コイル86の傾きを示す角度α,βの説明図。
図9】ワイヤレス電力伝送装置1の概略回路ブロック図。
図10図8の角度α,βと、図9に示す受電回路93の出力電圧Voutの関係を示す表。
図11】携帯用電子機器80の変形例1を示す概略断面図。
図12】携帯用電子機器80の変形例2を示す概略断面図。
図13】変形例2におけるワイヤレス電力伝送装置の概略回路ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
図1図10を参照し、本発明の実施の形態を説明する。図1により、携帯用電子機器80の長さ方向と幅方向を定義する。図1に示すように、携帯用電子機器80は、本実施の形態では補聴器であり、ハウジング81から引き出されたケーブル82の先端に耳への挿入部83を有する。ハウジング81は、例えば長さがL、幅がW1の絶縁樹脂成形体であり、不図示のクリップ等の係止手段によりユーザの服に留めることができる。なお、携帯用電子機器80は、耳に引っ掛けたり耳に差し込んだりするタイプであってもよい。
【0028】
携帯用電子機器80は、ハウジング81の内部に、図2に示すリチウムイオン二次電池等の二次電池84及びワイヤレス受電用の受電コイルユニット90、図9に示す受電回路93及び充電回路94、並びに不図示のマイク等の機能部品を有する。なお、ワイヤレスとは、導体同士の接触を伴わないという意味である。図7に示すように、二次電池84は、ハウジング81の先端部(長さ方向における一方の端部)内側に配置される。受電コイルユニット90は、ハウジング81内において二次電池84の周囲に配置される。受電コイルユニット90は、好ましくは二次電池84の高さ範囲内に収められる。
【0029】
図3及び図4に示すように、受電コイルユニット90は、第1磁性体87に導線が螺旋状に巻回された第1コイル85と、第2磁性体88に導線が螺旋状に巻回された第2コイル86と、を有する。第1磁性体87及び第2磁性体88は、例えば、フェライト等の磁性粉の焼結体、又は金属磁性素材をポリマーに混合した可撓性を有する磁性シートである。第1磁性体87及び第2磁性体88は、互いに別体であり、ハウジング81の幅方向中央部を挟んで一方側と他方側にそれぞれ配置される。第1磁性体87及び第2磁性体88は、薄板状であって、二次電池84の側面(外周面)形状に沿って、すなわち二次電池84の軸周り方向に沿って湾曲(ここでは円筒側面状に湾曲)している。これにより、第1磁性体87及び第2磁性体88にそれぞれ巻回された第1コイル85及び第2コイル86の巻回軸も、二次電池84の側面形状(軸方向から見た側面形状)に沿って湾曲する。第1コイル85及び第2コイル86は、ハウジング81の幅方向中央部を挟んで一方側と他方側にそれぞれ配置される。第1コイル85及び第2コイル86の、ハウジング81の先端側の端部同士の離間距離G(図3)は、好ましくは3mm〜7mmである。また、離間距離G(同)は、好ましくは二次電池84の直径D(同)の38%〜100%である。
【0030】
図7に示すように、第1磁性体87及び第2磁性体88は、二次電池84の外側面(外周面)と、二次電池84の外側面と対向するハウジング81の先端部内側面との間に配置される。第1コイル85及び第2コイル86は、二次電池84の外側面と、二次電池84の外側面と対向するハウジング81の先端部内側面との間に配置される。第1コイル85及び第2コイル86は、二次電池84の軸周り方向において互いに異なる位置にあり、かつ、電流が流れると各々の巻回軸において互いに逆向きの磁束が発生するように相互に接続される(第1コイル85及び第2コイル86の相互接続線は図示省略)。具体的には、直列接続された第1コイル85及び第2コイル86に電流が流れたとき、第1磁性体87及び第2磁性体88の各々において、第1コイル85の発生する磁束と、第2コイル86に発生する磁束とが、互いに逆向きとなるように、第1コイル85及び第2コイル86が相互に接続される。
【0031】
図5及び図7に示すように、ワイヤレス給電装置10は、送電コイルユニットを収容する筐体(ハウジング)12を備える。筐体12は、例えば樹脂成形体であり、携帯用電子機器80(給電対象機器)の少なくとも一部を収容可能な凹部12aを有する。凹部12aの開口幅W2(図5)は、携帯用電子機器80の長手方向の寸法Lよりも短く、かつ携帯用電子機器80の幅方向の寸法W1よりも長い。
【0032】
図6に示すように、ワイヤレス給電装置10の送電コイルユニットは、給電コイル(送電コイル)11と、給電コイル11を巻き付けるボビン13と、第3磁性体としての円筒状磁性体14と、第4磁性体としての平板状磁性体15と、第5磁性体としての平板状磁性体16と、を備える。ボビン13は、例えば円筒状の絶縁樹脂成形体であり、凹部12aの周囲を囲むように設けられる。給電コイル11は、ボビン13の外周面に巻かれ、凹部12aの周囲を螺旋状に周回する。ボビン13は、給電コイル11の両端にそれぞれ鍔部を有してもよい。給電コイル11、ボビン13、円筒状磁性体14、平板状磁性体15、及び平板状磁性体16は、筐体12にインサート成形により埋設(一体化)されてもよいし、インサート成形によらず筐体12の内部空間に保持されてもよい。
【0033】
円筒状磁性体14は、例えばフェライト焼結体であり、給電コイル11の外周を近接して覆うように設けられる(筐体12に保持される)。平板状磁性体15は、例えばフェライト焼結体であり、円筒状磁性体14の上端(一端)部から円筒状磁性体14の上部開口中心側に伸びる。平板状磁性体16は、例えばフェライト焼結体であり、円筒状磁性体14の下端(他端)部から円筒状磁性体14の下部開口中心側に伸びる。
【0034】
平板状磁性体15は、自身の中央部に、筐体12の凹部12aを囲む上側開口部(一端側開口部)15aを有する。平板状磁性体16は、自身の中央部に、凹部12aの下方に位置する下側開口部(他端側開口部)16aを有する。上側開口部15aの開口幅、及び下側開口部16aの開口幅は、共に給電コイル11の周回幅よりも狭い。また、下側開口部16aの開口幅は、上側開口部15aの開口幅よりも狭い。
【0035】
図8において、角度βは、第1コイル85の一対の端部同士を結ぶ第1仮想線と、第2コイル86の一対の端部同士を結ぶ第2仮想線と、の成す角度である。角度αは、携帯用電子機器80の幅方向に対して前記第1及び第2仮想線がそれぞれ成す角度である。角度α,βは、α×2+β=180°の関係にある。
【0036】
図9に示す回路ブロック図において、ワイヤレス給電装置10は、給電コイル11に通電する送電回路18を有する。携帯用電子機器80は、第1コイル85及び第2コイル86に発生した誘起電圧を整流、平滑する受電回路93、及び、受電回路93からの電圧を利用して二次電池84を充電する充電回路94を有する。送電回路18が給電コイル11に通電することによって発生した磁界(図7の矢印参照)によって第1コイル85及び第2コイル86に誘起電圧が発生し、その誘起電圧により受電回路93及び充電回路94が二次電池84に充電電力を供給する。第1コイル85及び第2コイル86に発生した誘起電圧は、前述した相互接続により、互いに極性(位相)が一致し、合成電圧の絶対値は各々の誘起電圧の絶対値の合計となる。
【0037】
図10は、図8の角度α,βと、図9に示す受電回路93の出力電圧Voutの関係を示す表である。図10より、角度βが120度以下(角度αが30度以上)になると、受電回路93の出力電圧Voutが4.5V以上となる。充電回路94による充電は、充電回路94への入力電圧が4.5V以上であることが好ましい。そのため、角度βは120度以下(角度αは30度以上)であることが好ましい。さらに、角度βが100度以下(角度αが40度以上)になると、受電回路93の出力電圧は5Vの上限となる。このため、角度βは100度以下(角度αは40度以上)であることが更に好ましい。
【0038】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0039】
(1) 受電コイルユニット90を二次電池84の側面とハウジング81の内面との間に設ける構成であり、二次電池84の上下にコイル配置スペースが取れないといった制約があっても受電コイルユニット90を配置でき、小型化が進んだ携帯用電子機器80にもワイヤレス受電機能を実装可能である。ここで、携帯用電子機器80は、ワイヤレス受電機能を備えたことで、電池交換のためのスペース(蓋開閉のラッチ等)、あるいは充電用のケーブル差込用のスペースが不要となり、それによって空いたスペースを受電コイルユニット90の配置に利用することができる。
【0040】
(2) ワイヤレス給電装置10において給電コイル11は、携帯用電子機器80の少なくとも一部を収容する凹部12aの周囲を螺旋状に周回するため、凹部12a内に全体的に磁界を発生させることができ、携帯用電子機器80の第1コイル85及び第2コイル86が凹部12a内にあれば、携帯用電子機器80の置き方によらず充電が可能となる。特に、受電コイルを第1コイル85及び第2コイル86の2つとし、それぞれ互いに異なる方向の磁束に対して受電しやすい構成としているため、携帯用電子機器80の置き方(姿勢)により受電できなくなるリスクが低減される。すなわち、本実施の形態によれば、携帯用電子機器80をワイヤレス給電装置10に適切に(充電可能な姿勢で)配置することが容易であり、ユーザはワイヤレス給電装置10に対する携帯用電子機器80の配置態様を特に意識する必要がなく、充電に伴う負担が小さくて利便性が高い。またワイヤレス給電装置10に対する携帯用電子機器80の配置ミスにより電力伝送が実行できないリスクも大幅に低減できる。
【0041】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0042】
図11は、携帯用電子機器80の変形例1を示す概略断面図である。本変形例は、上述の実施の形態と比較して、第1磁性体87及び第2磁性体88が互いに連結一体化されている点で相違し、その他の点で一致する。一体化された磁性体のうち、携帯用電子機器80の幅方向中央を境に一方側が第1磁性体87で、他方側が第2磁性体88である。本変形例も、実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0043】
図12は、携帯用電子機器80の変形例2を示す概略断面図である。図13は、変形例2におけるワイヤレス電力伝送装置の概略回路ブロック図である。本変形例は、上述の変形例1と比較して、電圧変換用コイル94aが追加された点で相違し、その他の点で一致する。電圧変換用コイル94aは、充電回路94に設けられた電圧変換用のコイルであり、DC−DCコンバータの一部を構成するコイルである。電圧変換用コイル94aは、第1コイル85及び第2コイル86の、ハウジング81の先端側の端部同士の間において、第1磁性体87及び第2磁性体88に跨がって導線が螺旋状に巻回されたものである。本変形例も、実施の形態と同様の効果を奏することができる。また、本変形例によれば、電圧変換用コイル94aをハウジング81内の他の場所に別途設ける場合と比較して、省スペース化に有利である。なお、電圧変換用コイル94aは、第1磁性体87及び第2磁性体88のいずれか一方のみに巻回されてもよい。この場合、第1磁性体87と第2磁性体88との間に、実施の形態と同様に隙間があってもよい。
【0044】
携帯用電子機器80において、第1コイル85及び第2コイル86、並びに変形例2の電圧変換用コイル94aを構成する導線は、それぞれフレキシブル基板上に設けられた導体であってもよい。第1コイル85及び第2コイル86、並びに変形例2の電圧変換用コイル94aの巻回軸は、二次電池84の側面に沿って湾曲する場合に限定されず、直線状であってもよい。この場合、前記巻回軸は、二次電池84の軸周り方向に沿う部分を有するとよい。第1磁性体87及び第2磁性体88は、二次電池84の側面に沿って湾曲している場合に限定されず、平板状であってもよい。平板状の場合、二次電池84の側面に対する接平面と平行であるとよい。
【0045】
ワイヤレス給電装置10において、円筒状磁性体14、平板状磁性体15,16は、給電コイル11の内側に発生する磁界を強め、給電効率を高める役割を持つが、給電が可能である限りは、いずれか又は全部を省略してもよい。平板状磁性体16の下側開口部16aは、省略してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 ワイヤレス電力伝送装置、10 ワイヤレス給電装置、11 給電コイル(送電コイル)、12 筐体、12a 凹部、13 ボビン、14 円筒状磁性体(第3磁性体)、15 平板状磁性体(第4磁性体)、16 平板状磁性体(第5磁性体)、80 携帯用電子機器、81 ハウジング、82 ケーブル、83 挿入部、84 二次電池、90 受電コイルユニット、
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