(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0012】
1.粘着剤層
本発明の粘着剤層は、ポリオレフィンと、(メタ)アクリル系モノマーと、水素引抜型開始剤とを含有する粘着剤組成物を含み、活性エネルギー線を積算光量が3000mJ/cm
2となるように照射して後硬化した場合に下記物性(1)及び(2)を満たす。
物性(1):引張速度10mm/minの引張試験測定において、破断伸度が1200%以上であり、かつ、ひずみ1000%での応力が0.40N/mm
2以上である。
物性(2):100μmの厚みでの透湿度が50g/m
2・24hr以下である。
【0013】
(粘着剤組成物)
粘着剤層は、後記するように、粘着剤組成物を用いて形成することができる。当該粘着剤組成物は、少なくともポリオレフィンと、(メタ)アクリル系モノマーと、水素引抜型開始剤とを含有する。
【0014】
粘着剤組成物において、ポリオレフィンの種類は特に限定されず、例えば、公知のポリオレフィンを広く採用することができる。粘着剤組成物がポリオレフィンを含むことで、粘着剤層は物性(2)を満たすことができ、低い透湿性を有することができる。
【0015】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等を挙げることができる。得られる粘着剤層が低い透湿性を有し、しかも、耐久性にも優れやすいという観点から、ポリオレフィンは、エチレン−プロピレン共重合体であることが好ましい。ポリオレフィンにおいて、ポリオレフィン主鎖には、本発明の効果が阻害されない限り、オレフィン以外の単量体単位を含むこともできる。
【0016】
粘着剤組成物に含まれるポリオレフィンは1種のみであってもよいし、異なる2種以上であってもよい。
【0017】
ポリオレフィンの製造方法は特に限定されず、例えば、公知の製造方法によって、ポリオレフィンを製造することができる。あるいは、ポリオレフィンは、市販品等から入手することもできる。ポリオレフィンの市販品としては、例えば、JSR社製T7241、EP33、EP35、EP331、EP342、EP251、EP65等を挙げることができる。
【0018】
粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系モノマーの種類は特に限定されず、例えば、公知の(メタ)アクリル系モノマーを広く採用することができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル」を、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
【0019】
特に(メタ)アクリル系モノマーは、分子内に重合性官能基を2つ以上有する多官能モノマーと、分子内に重合性官能基を1つのみ有する単官能モノマーとの混合物であることが好ましい。この場合、得られる粘着剤層は、低い透湿性を維持しつつ、優れた耐久性を有することができる。
【0020】
ここで、重合性官能基とは、例えば、ラジカル重合をすることが可能な官能基を意味し、具体的には重合性二重結合であり、より具体的には重合性二重結合として(メタ)アクリロイル基を挙げることができる。
【0021】
前記多官能モノマーにおいて、分子内の重合性官能基の数は特に限定されないが、得られる粘着剤層の耐久性が優れるという点で、1分子中の重合性二重結合の数は2個以上5個以下とすることができ、2個以上3個以下とすることが好ましく、2個であることが特に好ましい。
【0022】
前記多官能モノマーの具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,9−ノナンジオール、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;その他、メタクリル酸ビニル、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート等が挙げられる。
【0023】
前記多官能モノマーとして、市販品を使用できる。市販品の多官能モノマーの例としては、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製、ライトアクリレートDCP−A)、ビスフェノールA エチレンオキサイド変性ジアクリレート(東亞合成(株)製、アロニックスM−211B)等が挙げられる。
【0024】
前記単官能モノマーは、分子内に1つのみの重合性官能基を有する。単官能モノマーの具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;その他、ベンジル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドンなどを挙げることができる。前記単官能モノマーは、アルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、中でもイソボルニルアクリレート及びイソステアリルアクリレートから選択される少なくとも1種であることが好ましく、イソボルニルアクリレートであることがより好ましい。単官能モノマーの市販品の例としては、大阪有機化学工業社製のIBXA、大阪有機化学工業社製のISTA等が挙げられる。
【0025】
前記(メタ)アクリル系モノマーが前記多官能モノマーと前記単官能モノマーとの混合物である場合、両者の混合割合は特に限定されない。例えば、前記多官能モノマー及び前記単官能モノマーの総量に対して前記多官能モノマーの含有割合を1〜99質量%とすることができ、10〜90質量%とすることが好ましく、20〜80質量%とすることがより好ましく、30〜70質量%とすることがさらに好ましく、40〜60質量%とすることが特に好ましい。
【0026】
前記(メタ)アクリル系モノマーが前記多官能モノマーと前記単官能モノマーとの混合物である場合、当該混合物は、本発明の効果が阻害されない程度であれば、その他の単量体を含むことができる。混合物がその他の単量体を含む場合、その含有量は、混合物全量に対し、10質量%とすることができ、5質量%以下とすることが好ましく、1質量%以下とすることがより好ましく、0.1質量%以下とすることが特に好ましい。
【0027】
前記粘着剤組成物に含まれる前記(メタ)アクリル系モノマーの含有量は低い透湿性が維持される限りは特に制限されない。例えば、前記粘着剤組成物に含まれる前記(メタ)アクリル系モノマーは、前記ポリオレフィン100質量部に対して1〜25質量部とすることができる。この場合、得られる粘着剤層は、性(1)及び物性(2)の両方を満たしやすく、結果として、低い透湿性を維持しつつ、優れた耐久性を有することができる。前記粘着剤組成物に含まれる前記(メタ)アクリル系モノマーの下限は、前記ポリオレフィン100質量部に対して2質量部とすることが好ましく、3質量部とすることがより好ましく、5質量部とすることが特に好ましい。前記粘着剤組成物に含まれる前記(メタ)アクリル系モノマーの上限は、前記ポリオレフィン100質量部に対して20質量部とすることが好ましく、18質量部とすることがより好ましく、15質量部とすることが特に好ましい。
【0028】
粘着剤組成物に含まれる水素引抜型開始剤としては特に限定されず、例えば、公知の水素引抜型開始剤を広く使用することができる。水素引抜型光重合開始剤とは、後記する活性エネルギー線を照射することで、開始剤自身は開裂することなく、前記アクリル変性ポリオレフィン又は後記1,2−ビニル基を有するジエン系重合体より水素を引き抜き、ポリマーに反応点を作ることができる性質を有する重合開始剤をいう。当該反応点形成により、ポリマーの架橋反応が形成される。
【0029】
水素引抜型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルギ酸メチル;4−メチルベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、O−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジクロルベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等;アセトナフトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等の芳香族ケトン化合物;テレフタルアルデヒド等の芳香族アルデヒド、メチルアントラキノン等のキノン系芳香族化合物が挙げられる。これらは1種単独で、又は、2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、反応性の点から、ベンゾフェノン系化合物が好ましく、4−メチルベンゾフェノンがより好ましい。
【0030】
粘着剤組成物において、(メタ)アクリル系モノマーと水素引抜型開始剤の含有割合は特に限定されない。例えば、粘着剤組成物中、(メタ)アクリル系モノマー100質量部に対し、水素引抜型開始剤の含有量を0.05〜30質量部とすることができ、0.1〜25質量部とすることが好ましく、0.2〜20質量部とすることがより好ましい。
【0031】
粘着剤組成物は、ポリオレフィン、(メタ)アクリル系モノマー及び水素引抜型開始剤の他、その他の成分を含有することができる。例えば、粘着剤組成物は、1,2−ビニル基を有するジエン系重合体をさらに含有することもできる。
【0032】
1,2−ビニル基を有するジエン系重合体としては特に限定されず、1,2−ビニル基を有する限り、公知のジエン系重合体を広く採用することができる。特に、1,2−ビニル基を有するジエン系重合体は、分子内に非共役ジエン構造を有する重合体であることが好ましい。このようなジエン系重合体としては、ポリブタジエン等を挙げることができる。1,2−ビニル基を有するジエン系重合体は共重合体であってもよく、例えば、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体、スチレンとブタジエンの共重合体、イソプレンとブタジエンの共重合体、イソブチレンとブタジエンの共重合体等が挙げられる。
【0033】
粘着剤組成物に含まれる1,2−ビニル基を有するジエン系重合体は1種のみであってもよいし、異なる2種以上であってもよい。
【0034】
1,2−ビニル基を有するジエン系重合体を製造する方法は特に限定されず、例えば、公知の製造方法によって、1,2−ビニル基を有するジエン系重合体を得ることができる。あるいは、1,2−ビニル基を有するジエン系重合体は市販品等から入手することもできる。このような1,2−ビニル基を有するジエン系重合体としては、例えば、ポリブタジエンとして、TOTAL社製のRICON130、RICON131、RICON134、RICON142、RICON150、RICON152、RICON153、RICON154、RICON154、RICON156、RICON157、RICON P30D等を挙げることができる。
【0035】
粘着剤組成物が1,2−ビニル基を有するジエン系重合体を含む場合、アクリル変性ポリオレフィン、水素引抜型開始剤及び1,2−ビニル基を有するジエン系重合体の含有割合は特に限定されない。例えば、粘着剤組成物において、前記ポリオレフィン100質量部に対し、1,2−ビニル基を有するジエン系重合体の含有量の下限は0.1質量部とすることができ、0.5質量部とすることが好ましく、1.0質量部とすることがより好ましい。また、粘着剤組成物において、ポリオレフィン100質量部に対し、1,2−ビニル基を有するジエン系重合体の含有量の上限は15質量部とすることができ、10質量部とすることが好ましく、8質量とすることがより好ましい。
【0036】
粘着剤組成物は、粘着剤層の粘着性及び耐久性を高めるために、さらに粘着付与剤を含むことも好ましい。粘着付与剤の種類は特に限定されず、例えば、粘着シートにおいて使用されている公知の粘着付与剤を広く使用することができる。
【0037】
粘着付与剤としては、芳香族系粘着付与剤、テルペン骨格を含む粘着付与剤、ロジン骨格を含む粘着付与剤、及び石油樹脂系粘着付与剤等を挙げることができる。粘着剤組成物が粘着付与剤を含む場合、その種類は1種のみとすることができ、あるいは、2種以上とすることもできる。
【0038】
前記粘着付与剤の軟化点(軟化温度)は特に限定されず、例えば、90℃以上程度であることが好ましく、100℃以上程度とすることができ、また、200℃以下程度であることが好ましく、180℃以下程度であることが好ましい。なお、ここでいう粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K5902及びJIS K2207のいずれかに規定する軟化点試験方法(環球法)によって測定された値として定義される。
【0039】
前記粘着付与剤の重量平均分子量(Mw)は特に限定されず、例えば、5万以下とすることができ、3万以下であることが好ましく、1万以下であることがより好ましく、8000以下であることがさらに好ましく、5000以下であることが特に好ましい。また、粘着付与剤の重量平均分子量(Mw)は、例えば、500以上とすることができ、1000以上であることが好ましく、2000以上であることがさらに好ましい。
【0040】
粘着剤組成物が前記粘着付与剤を含む場合、その含有量は特に限定されない。例えば、粘着剤組成物において、前記ポリオレフィン100質量部に対し、前記粘着付与剤の含有量の下限は1質量部とすることができ、10質量部であることが好ましく、20質量部であることがさらに好ましい。また、粘着剤組成物において、ポリオレフィン100質量部に対し、前記粘着付与剤の含有量の上限は80質量部とすることができ、70質量部であることが好ましく、60質量部であることがさらに好ましい。
【0041】
前記粘着剤組成物の調製方法は特に限定されず、所定の原料を所定の含有割合となるように混合することで調製することができる。混合方法も特に限定されず、例えば、市販の混合機を使用できる。
【0042】
粘着剤組成物は、本発明の効果が阻害されない限り、その他の成分、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、防腐剤等が含まれていてもよい。粘着剤組成物がその他の成分を含む場合、その含有量は、例えば、粘着剤組成物の全質量に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下とすることができる。
【0043】
(粘着剤層の形成方法)
粘着剤層を形成する方法は特に限定されず、例えば、公知の手法を広く適用することができる。具体的に粘着剤層の形成方法は、前記粘着剤組成物を基材上に塗布して粘着剤組成物の塗膜を形成する工程、及び、該塗膜を乾燥処理することで、粘着剤層を形成する工程を備えることができる。
【0044】
粘着剤組成物を基材に塗布するにあたって、塗布性を向上させるべく、粘着剤組成物は溶剤を含むこともできる。溶剤としては特に限定されず、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル化合物;ジエチルエーテル等のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等の塩素系炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びt−ブタノール等のアルコール等が挙げられる。溶剤は、単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0045】
粘着剤組成物が溶剤を含む場合、塗布性を考慮して、該粘着剤組成物の固形分濃度が10〜60質量%の範囲となるように溶剤を使用することが好ましく、15〜50質量%の範囲となるように溶剤を使用することがさらに好ましい。なお、粘着剤層の製造過程において、粘着剤層に含まれていた溶剤はすべて又は大部分は揮発する。
【0046】
粘着剤組成物を基材上に塗布する方法は特に限定されず、例えば、公知の塗布方法を広く採用することができる。例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の市販の塗布装置を用いて前記粘着剤組成物を塗布することができる。
【0047】
粘着剤組成物の塗布量は特に限定されず、目的とする粘着剤層の厚みに応じて適宜設定することができる。例えば、粘着剤組成物の塗布量は、後記する乾燥処理後に形成される粘着剤層の厚みが5〜1000μmとなるように調節することができる。
【0048】
粘着剤組成物を塗布するための基材の種類も特に限定的ではなく、粘着剤層の形成に用いられる基材を広く使用することができる。例えば、粘着剤組成物を塗布するための基材として、剥離シートを挙げることができる。
【0049】
剥離シートとしては、例えば、粘着シートにおいて接着剤層を保護するために使用されている、いわゆるセパレータを挙げることができる。より具体的には、剥離シートとして、離型層を備える樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0050】
剥離シートにおいて、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等を挙げることができる。
【0051】
離型層とは、前記樹脂フィルムの少なくとも片面に形成された層であって、粘着剤層の粘着力よりも小さい剥離力を有し、容易に剥離シートを剥離することができるように形成された層であることを意味する。このような離型層は、例えば、粘着シートにおいて離型層として使用される公知の成分を広く適用することができる。例えば、公知のシリコーン材料で離型層を形成することができる。
【0052】
基材として前記剥離シートを使用する場合、粘着剤組成物は、当該剥離シートの離型層面に塗布して、粘着剤組成物の塗膜を形成することができる。
【0053】
粘着剤組成物を、前記剥離シート等の基材上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥処理をすることで、粘着剤層が基材上に形成される。
【0054】
乾燥処理の条件は特に限定されず、例えば、従来から行われている粘着剤組成物の塗膜の乾燥方法を広く採用することができる。このような乾燥処理は、例えば、公知の加熱装置等を用いて行うことができる。加熱温度は、例えば、50〜200℃とすることができ、好ましくは60〜150℃とすることができる。加熱時間は溶剤が揮発し、粘着剤層の残留溶剤濃度が例えば1000ppm以下になるように設定すればよく、粘着剤組成物の濃度、所望する粘着剤層の厚み等に応じて上記温度範囲で1〜30分程度の時間内で適宜設定することが好ましい。
【0055】
乾燥処理により形成された粘着剤層には、さらに接着剤層を保護するための保護層を貼り合せることができる。この場合、保護層は、粘着剤層の基材とは逆側の面に貼り合わされる。保護層としては、例えば、前述と同様、剥離シートを挙げることができる。この保護層としての剥離シートも前記基材の場合と同様、離型層を備える樹脂フィルム等を挙げることができる。樹脂フィルムとしては、例えば、前述と同様、ポリエチレンテレフタレートフィルム等を挙げることができ、また、離型層は、例えば、公知のシリコーン材料で形成することができる。
【0056】
基材及び保護層がいずれも剥離シート(それぞれ第1の剥離シート、第2の剥離シート)である場合、基材としての剥離シート(第1の剥離シート)の離型層の剥離力と、保護層を形成するための剥離シート(第2の剥離シート)の離型層の粘着力とは異なることが好ましい。つまり、基材及び保護層がいずれも剥離シートである場合、それぞれの剥離シートの剥離力が異なることが好ましい。この場合、剥離シートを剥がすときに一方の剥離シートだけを選択的に剥がすことが容易になり、いわゆる泣き別れの現象を抑止しやすい。
【0057】
粘着剤層を形成し、必要に応じて保護層を上記のように形成した後、適宜、エージング処理を行うこともできる。エージング処理の方法は特に限定されず、例えば、15〜50℃の雰囲気下に粘着剤層を静置させる方法を挙げることができる。エージング時間は、温度によって適宜設定することができ、例えば、1日〜10日とすることができる。
【0058】
粘着剤層の厚さは特に限定されず、使用する用途等に応じて適宜設定することができる。例えば、粘着剤層の厚さは、5〜200μmとすることができ、5〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、5〜25μmであることが特に好ましい。
【0059】
(粘着剤層の物性)
前述のように、本発明の粘着剤層は、活性エネルギー線を積算光量が3000mJ/cm
2となるように照射して粘着剤層を後硬化した場合に下記物性(1)及び(2)を満たす。
物性(1):引張速度10mm/minの引張試験測定において、破断伸度が1200%以上であり、かつ、ひずみ1000%での応力が0.40N/mm
2以上である。
物性(2):100μmの厚みでの透湿度が50g/m
2・24hr以下である。
粘着剤層が上記物性(1)及び(2)の条件を満たすことにより、硬化後(後効果後)の粘着剤層は、優れた低透湿性及び耐久性を有することができる。
【0060】
上記物性を測定するにあたって、粘着剤層に照射する前記活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。紫外線の光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、無電極紫外線ランプ等を使用できる。電子線としては、例えば、コックロフトワルト型、バンデクラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線を使用できる。
【0061】
<物性(1)>
物性(1)において、引張試験の測定条件はJIS K 7161−1に準拠する。これにより、破断伸度及びひずみ1000%での応力を測定できる。具体的にこの引張試験は、引張速度は10mm/minとし、23℃、相対湿度50%の環境下で測定する。また、測定サンプルは、厚さ20μm、幅60mm、長さ250mmの後硬化の粘着剤層を、長さ方向に丸めて断面積5mm
2、高さ60mmの円柱形状に加工して用いる。チャック間距離が30mmとなるようサンプルをセットして引っ張り、測定サンプルのひずみが1000%となったときの応力値及び測定サンプルが破断した時の伸度(破断伸度)を計測する。引張試験には、島津製作所製のオートグラフAGS−Xを用いる。
【0062】
物性(1)において、活性エネルギー線照射後の粘着剤層の破断伸度が1200%以上であり、かつ、活性エネルギー線照射後の粘着剤層のひずみ1000%での応力が0.40N/mm
2以上であることで、粘着剤層は優れた耐久性をもたらすことができる。
【0063】
物性(1)において、破断伸度は1250%以上であることが好ましく、1300%以上であることがより好ましい。また、物性(1)において、破断伸度の上限は特に限定はないが、通常、破断伸度は2000%以下である。
【0064】
物性(1)において、破断伸度が1200%以上であり、かつ、ひずみ1000%での応力が0.40N/mm
2以上であることで、粘着剤層は優れた耐久性をもたらすことができる。
【0065】
物性(1)において、ひずみ1000%での応力が0.45N/mm
2以上であることが好ましく、0.5N/mm
2以上であることがより好ましい。また、物性(1)において、ひずみ1000%での応力の上限は特に限定はないが、通常、ひずみ1000%での応力は3.0N/mm
2以下である。
【0066】
粘着剤層は、活性エネルギー線照射前のひずみ1000%での応力は、例えば、0.01〜0.30N/mm
2である。
【0067】
本発明の粘着剤層は、ポリオレフィンと、(メタ)アクリル系モノマーと、水素引抜型開始剤とを含有する粘着剤組成物を用いて形成されることから、物性(1)を満たすことができる。粘着剤組成物中のポリオレフィン及び(メタ)アクリル系モノマーと、水素引抜型開始剤の種類及び量を調節することで、物性(1)における、破断伸度及びひずみ1000%での応力を適切に制御することができる。
【0068】
<物性(2)>
物性(2)において、透湿度(g/m
2・24hr)は、日本国特許第5089809に記載の方法を参照する。具体的には以下の方法で透湿度を測定する。
100μm厚みの後硬化後の粘着剤層を裏材(旭化成社製「BEMCOT M−1」)に積層して透湿度を測定するためのサンプルを得る。このサンプルを、小数点以下3桁までの重さを正確に秤量した50gの蒸留水が入った直径2.54cmの開口部付きガラスジャー又はガラス瓶(以下、「ガラス容器」と表記する)の最上部に、前記粘着剤層がガラス容器の底側に対向するように設置する。前記粘着剤層を、オープンリングカバーで定位置に保持しつつ、隙間から水蒸気等が外部へ漏れないように粘着剤層によりガラス容器の内部を密封した後、このガラス容器(粘着剤層を備えたガラス容器)を、相対湿度20%で40℃に設定したオーブンに約24時間、当該ガラス容器を直立(このとき、水がサンプルに触れない)にして設置する。その後、粘着剤層を備えたガラス容器の重量喪失を計測し、この重量喪失から透湿度(g/m
2・24hr)を算出する。なお、粘着剤層の厚み(100μm)は、粘着剤組成物の塗布量から見積もったものである。
【0069】
物性(2)において、活性エネルギー線照射後の100μm厚みの粘着剤層の透湿度が50g/m
2・24hr以下であることで、粘着剤層は低い透湿性をもたらすことができる。これにより、低透湿性が要求される用途に粘着剤層を適用することが可能となる。
【0070】
物性(2)において、透湿度は45g/m
2・24hr以下であることが好ましく、30g/m
2・24hr以下であることがより好ましい。また、物性(2)において、透湿度の下限は特に限定はないが、通常、透湿度は1g/m
2・24hr以上である。
【0071】
本発明の粘着剤層は、ポリオレフィンと、(メタ)アクリル系モノマーと、水素引抜型開始剤とを含有する粘着剤組成物を用いて形成されることから、物性(2)を満たすことができる。また、粘着剤組成物中のポリオレフィンの含有割合を調節することで、物性(2)における、透湿度の値を適切に制御することができる。
【0072】
(その他物性)
本発明の粘着剤層は、活性エネルギー線を積算光量が3000mJ/cm
2となるように照射して粘着剤層を後硬化した場合の比誘電率が3.0以下であることが好ましい。この場合、粘着剤層は、各種の画像表示装置等の接着用途に好適に使用することができる。粘着剤層を後硬化した場合の比誘電率は、例えば、ポリオレフィンを含む粘着剤組成物を使用することで、適切な範囲内に調節することができる。
【0073】
粘着剤層の比誘電率の測定は以下の手順で実施できる。粘着剤層(粘着シートから第1の剥離シート及び第2の剥離シートを剥離したもの)を2枚の銅箔の間に挟み、オートクレーブ処理(40℃、0.5MPa、30分間)を実施する。その後、誘電体測定システム((株)東陽テクニカ製、1260型)によりJIS C 2138に基づいて比誘電率を測定する。比誘電率の測定において、周波数は1MHz、測定環境は23℃、相対湿度50%とする。
【0074】
粘着剤層のゲル分率は10〜70%であり、前記後硬化後の粘着剤層のゲル分率が60〜100%であり、かつ、前記後硬化後の粘着剤層のゲル分率が後硬化前のゲル分率よりも10%以上高いことが好ましい。この場合、硬化後の粘着剤層は、基材密着性に優れ、また、優れた耐久性を有することができる。
【0075】
粘着剤層の23℃における剪断貯蔵弾性率G’は、例えば、粘着剤層の耐久性が向上しやすく、剥がれ及び気泡発生も生じにくいという観点から、1.0×10
5〜8.0×10
6の範囲とすることができる。また、粘着剤層の85℃における剪断貯蔵弾性率G’は、例えば、1.0×10
4〜8.0×10
4の範囲とすることができる。
【0076】
2.粘着シート
本発明の粘着シートは、粘着剤層のみで形成されていてもよいし、必要に応じて他の層を有していてもよい。他の層は、粘着剤層の片面又は両面に形成することができる。他の層としては、前述の剥離シートを挙げることができる。粘着剤層の両面に剥離シートが形成される場合は、前述のように、両剥離シート(第1の剥離シート及び第2の剥離シート)の剥離力が異なるようにすることができる。
【0077】
例えば、前述の粘着剤層の形成方法において、基材として剥離シートを使用し、また、保護層としても剥離シートを使用する場合は、粘着剤層の両面に剥離シートを有する粘着シート(剥離層付き粘着シート)を直接得ることができる。なお、粘着剤層を形成した後、別途、その両面に剥離シートを設けて、剥離層付き粘着シートを得ることもできる。
【0078】
粘着シートが剥離シートを有する場合、これらの剥離シートは粘着シートにおける、いわゆるセパレータとしての機能を有することができる。
【0079】
粘着シートが剥離シートを備える場合、剥離シートの厚みは特に限定されない。例えば、剥離シートの厚みは5〜300μmとすることができ、好ましくは10〜150μmとすることができる。粘着剤層の両面の剥離シートは互いに厚みが異なっていてもよい。
【0080】
図1は、粘着シートの実施形態の一例であって、断面の概略図である。
図1に示されるように、粘着シートは、粘着剤層11の片面に透明基材12aを備えることができる。この場合、粘着剤層11のもう一方の面は剥離シート12bによって覆われていることが好ましい。粘着シートを使用する場合はこの剥離シート12bを剥がして所望の被着体に粘着剤層11が密着するように貼合し、その後、後記するように活性エネルギー線を照射するなどして後硬化をすることが好ましい。透明基材としてはポリエチレンテレフタレートフィルムやアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなど光学分野に用いられる一般的なフィルムを用いることができる。またこれらの透明基材の粘着剤層側には易接着層を設けていてもよい。さらに、透明基材の粘着剤層とは逆面にはハードコート層や反射防止層、防汚層、紫外線吸収層などの機能層が備えられていてもよい。
【0081】
粘着シートは、その両表面に剥離シートを備えることもできる。粘着シートの両表面に剥離シートが備えられている場合、
図1に示されるように粘着剤層11の両表面に剥離シート12a及び12bを有することが好ましい。
【0082】
<粘着シートの使用方法(後硬化方法)>
粘着シートは、基板、フィルム等の部材(被着体)どうしを貼り合せて接着させる用途に広く使用することができる。
【0083】
例えば、一対の被着体の間に粘着シートを介在させ、被着体どうしを粘着シートで貼り合せ積層体を形成し、「後硬化」をすることで、被着体どうしを粘着シートで貼り合せることができる。なお、粘着シートが剥離シートを備える場合は、当該剥離シートを剥がした状態で、一対の被着体の間に粘着シートを介在させる。
【0084】
粘着シートにおける粘着剤層は、活性エネルギー線を照射して後硬化することで、水素引抜型開始剤が(メタ)アクリル系モノマーの水素を引き抜くことで、架橋反応が進行し得る。これにより、粘着剤層の硬化がさらに進行し、この粘着剤層の硬化によって、被着体どうしがより強固に接着される。
【0085】
ここで、粘着剤層を後硬化する方法は特に限定されず、例えば、公知の硬化方法を広く採用することができる。具体的には、活性エネルギー線を粘着剤層に照射することで、粘着剤層を後硬化することができる。なお、念のための注記に過ぎないが、粘着シートを各種用途で使用するための後硬化の条件は、前述の物性(1)及び(2)を測定するために行う後硬化の条件に限定されるものではない。
【0086】
前記活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。紫外線の光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、無電極紫外線ランプ等を使用できる。電子線としては、例えば、コックロフトワルト型、バンデクラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線を使用できる。
【0087】
活性エネルギー線照射の積算光量は、例えば500〜10000mJ/cm
2、好ましくは1000〜8000mJ/cm
2、より好ましくは1500〜6000mJ/cm
2である。
【0088】
活性エネルギー線の照射方法も特に限定されず、例えば、被着体どうしを粘着シートで貼り合せて形成させた積層体の全面に対して活性エネルギー線を照射することができる。この観点から、被着体の少なくとも一方は、透明であることが好ましい。活性エネルギー線の照射にあたっては、例えば、公知の活性エネルギー線照射装置を使用することができる。
【0089】
<粘着シートの用途>
本発明の粘着シートは、耐久性を必要とする光学部材であって、形状が複雑で積層体になってからの打抜き加工が必要な光学部材の貼合用に好ましく用いられる。
【0090】
本発明の粘着シートは、基材等の被着体に貼合し、後硬化させた後、高温高湿環境下に曝した場合であっても、耐久性に優れているため、浮きや剥がれの発生を抑制できる。本発明の粘着シートは、例えば、ポリカーボネートフィルムに貼合し、後硬化させた後、高温高湿環境下に曝した場合であっても、ポリカーボネートフィルムから浮いたり、剥がれたりすることを抑制することができる。
【0091】
本発明の粘着シートは、偏光板などの光学部材に貼合されるものであってもよい。ここで、偏光板とは、偏光子と偏光子保護フィルムを含むものであり、本発明の粘着シートは偏光子保護フィルムに貼合されることが好ましい。偏光子保護フィルムとしては、シクロオレフィン系樹脂フィルム、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースなどの酢酸セルロース系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0092】
本発明の粘着シートが両面粘着シートである場合は、2つの被着体の貼合に用いることができる。この場合、本発明の粘着シートは、タッチパネルの内部における透明光学用フィルム同士の貼合、透明光学用フィルムとガラスとの貼合、タッチパネルの透明光学用フィルムと液晶パネルとの貼合、カバーガラスと透明光学用フィルムとの貼合、カバーガラスと透明光学用フィルムとの貼合などに用いられ、いずれかの部材がポリカーボネート基材である場合に有用である。透明光学用フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムやアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなど光学分野に用いられる一般的なフィルムを用いることが出来る。また、透明光学用フィルムやポリカーボネート基材にはハードコート層が設けられていてもよい。
【0093】
本発明の粘着シートは、低い透湿性を有し、しかも、耐久性にも優れることから、各種画像表示装置等に広く適用することができ、特に低透湿性に優れることから、有機EL(OLED)等に好適に使用することができる。
【0094】
2.積層体
積層体は、前述した粘着シート又はその硬化物を備える。なお、粘着シートが剥離シートを備える場合は、当該剥離シートが剥離された状態で積層体に存在する。つまり、積層体は前記粘着剤層を備えているということができる。
【0095】
積層体は、粘着シートの両面に被着体を備えることができる。粘着シートが両面粘着シートである場合、2つの被着体を後硬化前の粘着シートで貼合した状態で活性エネルギー線を照射して、粘着剤層を後硬化することで積層体を形成することが好ましい。ここで、被着体は、基材及び光学部材であることがより好ましく、ポリカーボネートフィルム、偏光板、透明フィルム、透明樹脂またはガラスであることが特に好ましい。
【0096】
図2は、積層体の一例の断面を表す概略図である。
図2は、本発明の粘着シート21を基材22と光学部材24に貼合した積層体20の構成の一例を表す断面図である。
図2に示されているように、本発明の粘着シート21は、基材22に貼合するために用いられることが好ましく、基材22と他の光学部材24の貼合に用いられることが好ましい。なお、本発明の粘着シート21は、偏光板との貼合に用いられてもよい。
【0097】
積層体に含まれる光学部材としては、タッチパネルや画像表示装置等の光学製品における各構成部材や最表層のカバーレンズに貼合される飛散防止フィルム等を挙げることができる。タッチパネルの構成部材としては、例えば透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルム、ハードコートフィルム、耐指紋性フィルムなどが挙げられる。画像表示装置の構成部材としては、例えば液晶表示装置に用いられる反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。
【0098】
これらの部材に用いられる材料としては、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース,ポリイミド、セルロースアシレートなどが挙げられる。
【0099】
積層体は、前述のように、粘着シートの少なくとも一方の面側に被着体を積層する工程、及び前記粘着シートの粘着剤層に活性エネルギー線を照射することにより前記粘着剤層を後硬化させる工程を備える製造方法により得ることができる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0101】
粘着剤組成物の調製例
(調製例1)
ポリオレフィンとして、エチレン・プロピレンゴム(JSR社製「T7241」)を100質量部、粘着付与剤として、三井化学社製「FTR8120」を50質量部、アクリル系多官能モノマーとして、共栄社化学社製「ライトアクリレートDCP−A」(ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート)を3質量部、アクリル系単官能モノマーとして、大阪有機化学工業社製「IBXA」(イソボルニルアクリレート)を3質量部、及び、水素引抜型開始剤として、LAMBSON社製「4MBP」(4−メチルベンゾフェノン)を1質量部、それぞれ混合することで粘着剤組成物を得た。
【0102】
(調製例2)
アクリル系多官能モノマーをビスフェノールA エチレンオキサイド変性ジアクリレート(東亞合成(株)製、アロニックスM−211B)に変更したこと以外は調製例1と同様の方法で粘着剤組成物を得た。
【0103】
(調製例3)
アクリル系多官能モノマーとアクリル系単官能モノマーの添加量をいずれも5質量部に変更した以外は調製例1と同様の方法で粘着剤組成物を得た。
【0104】
(調製例4)
アクリル系多官能モノマーとアクリル系単官能モノマーの添加量をいずれも5質量部に変更した以外は調製例3と同様の方法で粘着剤組成物を得た。
【0105】
(調製例5)
アクリル系多官能モノマーとアクリル系単官能モノマーの添加量をいずれも15質量部に変更した以外は調製例1と同様の方法で粘着剤組成物を得た。
【0106】
(調製例6)
アクリル系多官能モノマー及びアクリル系単官能モノマー並びに水素引抜開始剤を使用しなかったこと以外は調製例1と同様の方法で粘着剤組成物を得た。
【0107】
(調製例7)
アクリル系重合体として、綜研化学社製「SK2094」100質量部と、粘着付与剤として、三井化学社製「FTR8120」50質量部と、水素引抜型開始剤として、LAMBSON社製「4MBP」1質量部とをそれぞれ混合することで、粘着剤組成物を得た。
【0108】
粘着剤層の形成(粘着シートの作製)
(実施例1)
調製例1で得た粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成した。第1の剥離シートとして、シリコーン系剥離剤で処理された易接着剤層を備えた厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(重セパレータフィルム、帝人デュポンフィルム(株)製、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム)を準備した。この第1の剥離シートの易接着剤層側の面に、乾燥後の塗工厚みが所望の値(20μm又は100μm)となるように、調製例1で得た粘着剤組成物を、ヨシミツ精機株式会社製「ドクターブレードYD型」にて均一に塗工し、粘着剤組成物の塗膜を作製した後、100℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥処理することで、第1の剥離シートの表面に粘着剤層を形成した。
【0109】
次いで、第1の剥離シートより剥離性の高い離型処理が施された厚さ75μmの第2の剥離シート(軽セパレータフィルム、帝人デュポンフィルム(株)製、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム)を準備した。この第2の剥離シートを、第1の剥離シートの表面に形成されている粘着剤層の上に貼り合わせた。これにより、粘着剤層が剥離力差のある1対の剥離シートに挟まれた第1の剥離シート/粘着剤層(A−1)/第2の剥離シートの構成の剥離シート付き粘着シートが得られた。
【0110】
(実施例2)
調製例1で得た粘着剤組成物を調製例2で得た粘着剤組成物に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0111】
(実施例3)
調製例1で得た粘着剤組成物を調製例3で得た粘着剤組成物に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0112】
(実施例4)
調製例1で得た粘着剤組成物を調製例4で得た粘着剤組成物に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0113】
(比較例1)
調製例1で得た粘着剤組成物を調製例5で得た粘着剤組成物に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0114】
(比較例2)
調製例1で得た粘着剤組成物を調製例6で得た粘着剤組成物に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0115】
(比較例3)
調製例1で得た粘着剤組成物を調製例7で得た粘着剤組成物に変更したこと、および剥離シート付き粘着シートを23℃、相対湿度50%の条件で7日間静置して、エージング処理を行った以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0116】
(評価方法)
<引張試験測定>
引張試験はJIS K 7161−1に準拠して、粘着剤層の破断伸度及びひずみ1000%での応力を測定した。具体的に引張試験は、引張速度は10mm/minとし、23℃、相対湿度50%の環境下で測定した。また、測定サンプルは、厚さ20μm、幅60mm、長さ250mmの後硬化の粘着剤層を、長さ方向に丸めて断面積5mm
2、高さ60mmの円柱形状に加工して用いた。チャック間距離が30mmとなるようサンプルをセットして引っ張り、測定サンプルのひずみが1000%となったときの応力値及び測定サンプルが破断した時の伸度(破断伸度)を計測した。引張試験には、島津製作所製のオートグラフAGS−Xを用いた。
【0117】
<透湿度測定>
透湿度(g/m
2・24hr)は、日本国特許第5089809に記載の方法を参照する。具体的には以下の方法で透湿度を測定した。
100μm厚みの後硬化後の粘着剤層を裏材(旭化成社製「BEMCOT M−1」)に積層して透湿度を測定するためのサンプルを得た。このサンプルを、小数点以下3桁までの重さを正確に秤量した50gの蒸留水が入った直径2.54cmの開口部付きガラス瓶の最上部に、前記粘着剤層がガラス瓶の底側に対向するように設置した。前記粘着剤層を、オープンリングカバーで定位置に保持しつつ、隙間から水蒸気等が外部へ漏れないように粘着剤層によりガラス容器の内部を密封した後、このガラス瓶(粘着剤層を備えたガラス瓶)を、相対湿度20%で40℃に設定したオーブンに約24時間、当該ガラス瓶を直立(このとき、水がサンプルに触れない)にして設置した。その後、粘着剤層を備えたガラス瓶の重量喪失を計測し、この重量喪失から透湿度(g/m
2・24hr)を算出した。なお、粘着剤層の厚み(100μm)は、粘着剤組成物の塗布量から見積もった。
【0118】
<耐久性>
粘着剤層の軽セパレータフィルムである第2の剥離シートを剥がし、偏光板(ポラテクノ(株)製、SKN−18243T)に貼合した。次に重セパレータフィルムである第1の剥離シートを剥がし、PCフィルム(帝人社製、ピュアエースGS)に貼着した。偏光板/粘着剤層/PCフィルムの構成のサンプルをオートクレーブ処理(40℃、0.5MPa、30min)し、次いで、PCフィルム側より紫外線を積算光量が3000mJ/cm
2となるように照射し、100mm×200mmの大きさの試験サンプルを得た。その後、試験サンプルを60℃,相対湿度95%の環境下に240時間静置した。その後、試験サンプルを観察し、浮き及び剥がれの発生の有無を観察し、それぞれ下記の判定基準で評価した。
≪気泡≫
○:最大長さが0.2mm以上である気泡の発生は見られなかった。
×:最大長さが0.2mm以上の気泡の発生が見られた。
≪剥がれ≫
○:1.0mm以上の剥がれが観察されなかった。
×:1.0mm以上の剥がれが観察された。
【0119】
<剪断貯蔵弾性率G’の測定>
剪断貯蔵弾性率G’は、動的粘弾性装置Rheogel―E4000(株式会社ユービーエム製)を用いて測定した。固体剪断モード、周波数1Hz、歪み1.0%の条件で、20℃〜120℃までの温度領域における粘着剤層の剪断貯蔵弾性率G’を測定し、23℃及び85℃における剪断貯蔵弾性率G’の値を算出した。測定は、実施例及び比較例で得た粘着シートの粘着剤層に、セパレータが付いた状態で紫外線を積算光量が3000mJ/cm
2となるように照射して後硬化させてから行った。
【0120】
(評価結果)
表1は、各実施例及び比較例で使用した粘着剤組成物の成分及び含有割合を示している。あわせて表1には、各実施例及び比較例で得られた粘着剤層の剪断貯蔵弾性率G’、透湿度、引張試験結果及び耐久性評価の結果を示している。
【0121】
各実施例で得られた粘着シートは低い透湿性を有し、かつ、気泡及び剥がれも発生しにくかったことから、優れた耐久性を有していた。一方、比較例1の粘着シートは、粘着剤層に含まれる(メタ)アクリル系モノマーが多すぎることから、低い透湿性を得ることができず、また、剥がれが発生しやすかった。比較例2の粘着シートは、(メタ)アクリル系モノマーを含まないため、伸度1000%での応力が小さく、気泡が発生しやすかった。比較例3の粘着シートは、粘着剤層がポリオレフィンを含まないので、物性(1)及び(2)を満たすことができず、耐久性が悪いものであった。
【0122】
【表1】
【課題】低い透湿性を有し、しかも、耐久性にも優れる粘着シートを形成することができる粘着剤層及び該粘着剤層を備える粘着シート、積層体、並びに積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の粘着剤層は、ポリオレフィンと、(メタ)アクリル系モノマーと、水素引抜型開始剤とを含有する粘着剤組成物を含み、活性エネルギー線を積算光量が3000mJ/cm