特許第6725103号(P6725103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6725103
(24)【登録日】2020年6月29日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】衣料用仕上げ剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/263 20060101AFI20200706BHJP
   D06M 15/11 20060101ALI20200706BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20200706BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20200706BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20200706BHJP
   C08L 3/04 20060101ALI20200706BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20200706BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   D06M15/263
   D06M15/11
   D06M15/643
   D06M15/53
   C08L33/06
   C08L3/04
   C08L83/04
   C08L71/02
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-241079(P2015-241079)
(22)【出願日】2015年12月10日
(65)【公開番号】特開2017-106140(P2017-106140A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100186989
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 智之
(72)【発明者】
【氏名】藤本 直文
(72)【発明者】
【氏名】藤井 志子
(72)【発明者】
【氏名】木下 隼人
【審査官】 橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−151663(JP,A)
【文献】 特開2013−151775(JP,A)
【文献】 特開2013−151776(JP,A)
【文献】 特開2006−070393(JP,A)
【文献】 特開2006−249605(JP,A)
【文献】 特開昭57−161170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00−15/715
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1以上16以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位をモノマー体の質量比率として70質量%以上100質量%以下含有し、且つガラス転移温度が−40℃以上0℃未満であるポリマー(A)、カチオン化澱粉(B)、25℃における動粘度が100mm2/s以上20,000mm2/s以下であり、アミノ当量が200g/mol以上40,000g/mol以下のアミノ変性シリコーン(C)、ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤(D)、及び水を含有する衣料用仕上げ剤組成物であって、(A)成分に対する(B)成分の質量比[(B)/(A)]が0.05以上0.25以下であ(A)成分に対する(C)成分の質量比[(C)/(A)]が0.05以上1.0以下である、衣料のしっかり感としなやかさを向上させる衣料用仕上げ剤組成物。
【請求項2】
前記ポリマー(A)のガラス転移温度が−25℃以上−8℃以下である、請求項1に記載の衣料用仕上げ剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分に対する(C)成分の質量比[(C)/(A)]が0.25以上0.6以下である、請求項1又は2に記載の衣料用仕上げ剤組成物。
【請求項4】
(A)成分の含有量が2質量%以上20質量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の衣料用仕上げ剤組成物。
【請求項5】
前記衣料用仕上げ剤組成物中のポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤(D)の含有量が、0.1質量%以上5質量%以下である、請求項1〜のいずれかに記載の衣料用仕上げ剤組成物。
【請求項6】
前記炭素数1以上16以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが、炭素数が1以上6以下のアルキル基を有するメタクリル酸エステルと炭素数が2以上6以下のアルキル基を有するアクリル酸エステルとを併用したものである、請求項1〜のいずれかに記載の衣料用仕上げ剤組成物。
【請求項7】
下記工程1〜4を含む、衣料のしっかり感としなやかさを向上させる衣料の処理方法。
工程1:請求項1〜6のいずれかに記載の衣料用仕上げ剤組成物を洗濯機の仕上げ剤投入口に投入する工程。
工程2:該衣料用仕上げ剤組成物を保持する仕上げ剤投入口に水を投入し、該衣料用仕上げ剤組成物と水とを接触させる工程。
工程3:工程2の後に、仕上げ剤投入口内の該衣料用仕上げ剤組成物を洗濯槽内に投入する工程。
工程4:洗濯槽内の水浴中で、衣料用仕上げ剤組成物と衣料を接触させる工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用仕上げ剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ファッション性に優れたニット衣料が増えている。ニット衣料は、シーツやYシャツ等の衣布帛に比べて、しなやかな風合いが求められる。ニット衣料は、単繊維を緩く撚った糸を使用し、ニット編みという編み方で構成されており、糸や糸を構成する単繊維が動きやすいため衣料全体にしなやかな風合いを与えている。
しかし、ニット衣料は単繊維を緩く撚った糸を使用しているため、糸から単繊維が抜けやすく毛羽立ちや毛玉が発生しやすい。特に、洗濯機の標準コース等の強い撹拌力下で洗濯した場合、型崩れ等の不具合が発生しやすいことから、撹拌力が弱いコースで洗濯することが推奨されている。
また、ニット衣料はアルカリ性の水に浸漬して撹拌すると、縮みや型崩れが起こりやすいため中性洗浄剤の使用が推奨されている。
【0003】
このようなニット衣料を洗濯するための組成物として、特許文献1には、ポリマーのガラス転移温度が−45℃〜20℃である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体等の水系分散体を主成分として含有し、特定の表面張力を有する繊維加工用樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、炭素数1〜16であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びエチレン性不飽和カルボン酸を構成単位として有し、且つガラス転移温度が−40℃以上0℃未満であるポリマーと、カチオン化澱粉とを含有する仕上げ剤組成物が開示されている。
更に、特許文献3〜4には、炭素数1〜16であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを構成単位として有するガラス転移温度が−40℃以上0℃未満のポリマーと、カチオン化澱粉と、カチオン性化合物とを含有する仕上げ剤組成物が開示されている。
このように、ニット衣料については衣料のしなやかさを損なわずに、毛玉の発生を防止することができる仕上げ剤組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−248432号公報
【特許文献2】特開2013−151663号公報
【特許文献3】特開2013−151775号公報
【特許文献4】特開2013−151776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜4に記載の衣料用仕上げ剤組成物は、衣料のしなやかさを損なうことなく、毛羽や毛玉の発生を抑制する効果を有するものであるが、より風合いを向上させることが望まれていた。
そこで、本発明者らが更に検討を行ったところ「しなやかさ」に加えて衣料の「しっかり感」を更に高めることで、より好ましい風合いが得られること見出した。より具体的には、本発明者らが「しなやかさ」を布の引っ張りレジリエンスにより数値化し、更に「しっかり感」を布の引っ張り仕事量により数値化して検討を行ったところ、特定のガラス転移温度を有するポリマーとカチオン化澱粉とを特定の質量比で用いると共に、特定のアミノ変性シリコーン及び非イオン性界面活性剤を併用することにより、前記各数値が従来の衣料用仕上げ剤組成物で処理した衣料における数値よりも向上することを見出した。
なお、本発明における「しっかり感」とは、例えば、引っ張り時に布が伸びにくいような性質を指し、「しなやかさ」とは、引っ張り時の布の伸びに対する回復性が高いような性質を指し、互いに異なる性質である。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を鑑みてなされたものであって、衣料の風合いを、しっかり且つしなやかにする衣料用仕上げ剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、炭素数1以上16以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位をモノマー体の質量比率として70質量%以上100質量%以下含有し、且つガラス転移温度が−40℃以上0℃未満であるポリマー(A)、カチオン化澱粉(B)、25℃における動粘度が100mm2/s以上20,000mm2/s以下であり、アミノ当量が200g/mol以上40,000g/mol以下のアミノ変性シリコーン(C)、ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤(D)、及び水を含有する衣料用仕上げ剤組成物であって、(A)成分に対する(B)成分の質量比[(B)/(A)]が0.05以上0.25以下である、衣料用仕上げ剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、衣料の風合いを、しっかり且つしなやかにする衣料用仕上げ剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[衣料用仕上げ剤組成物]
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、炭素数1以上16以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位をモノマー体の質量比率として70質量%以上100質量%以下含有し、且つガラス転移温度が−40℃以上0℃未満であるポリマー(A)、カチオン化澱粉(B)、25℃における動粘度が100mm2/s以上20,000mm2/s以下であり、アミノ当量が200g/mol以上40,000g/mol以下のアミノ変性シリコーン(C)、ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤(D)、及び水を含有する衣料用仕上げ剤組成物であって、(A)成分に対する(B)成分の質量比[(B)/(A)]が0.05以上0.25以下である衣料用仕上げ剤組成物である。
【0010】
<ポリマー(A)>
ポリマー(A)(以下、「(A)成分」ともいう)は、炭素数1以上16以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(以下、「モノマー(a1)」ともいう)由来の構成単位をモノマー体の質量比率として70質量%以上100質量%以下含有し、且つガラス転移温度が−40℃以上0℃未満であるポリマーである。本発明においてはポリマー(A)を用いることにより、衣料にしなやかな風合いを与えることができると共に、毛羽立ちを抑制することができる。
モノマー(a1)は、炭素数が1以上16以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであれば特に制限はなく、ポリマー(A)が前記ガラス転移温度を満たすのであれば1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明において、「炭素数1以上16以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル」とは、「(メタ)アクリル酸アルキルエステルであって、前記アルキル基が炭素数1以上16以下のアルキル基である化合物」をいう。また、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル」を意味する。
更に、前記アルキル基は、n−体、sec−体、tert−体、iso−体を含む、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。
【0011】
モノマー(a1)は、ポリマー(A)のガラス転移温度を−40℃以上0℃未満の範囲に調整する観点から、メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルとを併用することが好ましい。
モノマー(a1)としてアクリル酸エステルを用いる場合のアルキル基の炭素数は、ガラス転移温度の調節しやすさの観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上であり、そして、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下、より更に好ましくは6以下である。
アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸n−プロピルエステル、アクリル酸n−ブチルエステル、アクリル酸iso−ブチルエステル、アクリル酸tert−ブチルエステル、アクリル酸n−ペンチルエステル、アクリル酸n−ヘキシルエステル、アクリル酸n−ヘプチルエステル、アクリル酸n−オクチルエステル、アクリル酸2−エチルヘキシルエステルが挙げられ、アクリル酸n−ブチルエステル、アクリル酸iso−ブチルエステル、アクリル酸tert−ブチルエステル、アクリル酸2−エチルヘキシルエステルが好ましく、アクリル酸n−ブチルエステルがより好ましい。
【0012】
モノマー(a1)としてメタクリル酸エステルを用いる場合のアルキル基の炭素数は、ガラス転移温度の調節しやすさの観点から、好ましくは1以上であり、そして、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、より更に好ましくは2以下である。
メタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸n−プロピルエステル、メタクリル酸n−ブチルエステル、メタクリル酸iso−ブチルエステル、メタクリル酸tert−ブチルエステル、メタクリル酸2−エチルヘキシルエステルが挙げられ、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルエステルがより好ましい。
【0013】
両者を併用する場合は、炭素数が1以上6以下のアルキル基を有するメタクリル酸エステルと炭素数が2以上6以下のアルキル基を有するアクリル酸エステルとを併用することが好ましく、炭素数が1以上2以下のアルキル基を有するメタクリル酸エステルと炭素数が3以上5以下のアルキル基を有するアクリル酸エステルとを併用することがより好ましく、メタクリル酸メチルエステルとアクリル酸n−ブチルエステルとの併用が更に好ましい。
【0014】
メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルとを併用する場合、メタクリル酸エステルに対するアクリル酸エステルの質量比[アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル]は、(A)成分のガラス転移温度を前記範囲に調整する観点から、好ましくは55/45〜99/1、より好ましくは56/44〜80/20である。
【0015】
本明細書において、(A)成分が共重合体である場合のガラス転移温度(Tg)は、各モノマー(i)のホモポリマーのガラス転移温度〔Tg(i)〕から、下記式(I)にしたがって共重合体のガラス転移温度(Tg)を算出した。ただし、小数点以下は四捨五入し、共重合体が多官能性モノマーを含む場合には、該多官能性モノマーを除いたモノマーについて計算を行った。各モノマー(i)のホモポリマーのガラス転移温度は、表1に記載のモノマーを使用する場合には、表1に記載の値を用いた。また、表1に記載のないモノマーを用いる場合には、ガラス転移温度(Tg)は、「ポリマーハンドブック、Fourth EditionVolume1, WILEY-INTERSCIENCE, A John Wiley & Sons, Inc., Publication,1999」に記載のホモポリマーの値を用いた。
【0016】
【表1】
【0017】
【数1】

(式中、Tgは共重合体のガラス転移温度(℃)であり、Tg(i)は共重合体を構成する各モノマー(i)のホモポリマーのガラス転移温度(℃)であり、wiは共重合体を構成するモノマー(i)の重量分率である。)
【0018】
(A)成分のガラス転移温度(Tg)は、−40℃以上0℃未満である。ガラス転移温度(Tg)が−40℃未満又は0℃以上である場合は、着用等の際に衣類に発生する毛羽を抑制することができない。また、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上であると、着用等の際に衣料に発生する毛羽立ちを抑制することができず、且つ衣料のしなやかな風合いが損なわれる場合がある。毛羽の発生をより一層抑制する観点から、ガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−30℃以上、より好ましくは−25℃以上、更に好ましくは−20℃以上であり、そして、好ましくは−5℃以下、より好ましくは−8℃以下、更に好ましくは−10℃以下である。また、(A)成分のガラス転移温度(Tg)は、全自動洗濯機の仕上げ剤投入口に衣類用仕上げ剤組成物が残留することを防止する観点から、好ましくは−25℃以上−5℃以下である。
【0019】
ポリマー(A)中のモノマー(a1)に由来する構成単位のモノマー体としての質量比率(すなわち、ポリマー(A)の合成の際に用いられる全モノマー中の(a1)の含有量、以下同様の意味とする。)は、毛羽の発生を抑制する観点から、70質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは88質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
ポリマー(A)中のモノマー(a1)に由来する構成単位のモノマー体としての質量比率が100質量%未満である場合、すなわち、ポリマー(A)がモノマー(a1)とモノマー(a1)以外の他のモノマーとの共重合体である場合、モノマー(a1)以外のモノマーとしては、例えば下記のモノマー(a2)及びモノマー(a3)が挙げられる。
【0020】
<モノマー(a2)>
モノマー(a2)としては、炭素数が2以上4以下であるヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。モノマー(a2)を用いることにより、衣類等に付着した(A)成分を洗濯時に衣類から容易に洗い落とすことができる(易洗性)と共に、仕上げ剤投入口の液残りを防止することができる。
本発明において、炭素数2以上4以下であるヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであって、前記ヒドロキシアルキル基の炭素数が2以上4以下であることをいう。
モノマー(a2)のヒドロキシアルキル基としては、洗浄工程における(A)成分の衣類からの易洗性を向上させる観点、及び液残りを防止する観点から、炭素数2以上3以下のヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数2のヒドロキシアルキル基がより好ましい。
【0021】
アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルエステル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルエステルが挙げられる。
メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルエステル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチルエステルが挙げられる。
これらの中では、(A)成分の衣類からの易洗性を向上させる観点、及び液残りを防止する観点から、アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル及びメタクリル酸2−ヒドロキシエチルエステルから選ばれる1種以上が好ましい。
【0022】
(A)成分がモノマー(a2)に由来する構成単位を含有する場合、モノマー(a2)に由来する構成単位のモノマー体としての質量比率は、(A)成分の衣類からの易洗性を向上させる観点及び液残りを防止する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
【0023】
<モノマー(a3)>
モノマー(a3)としては、エチレン性不飽和カルボン酸及びその塩を用いることができる。なお、本発明において「エチレン性不飽和カルボン酸」とは、分子内にビニル基及びカルボキシ基を有する化合物をいう。
モノマー(a3)を用いることにより、衣類に付着した(A)成分の衣類からの易洗性を向上させることができると共に、仕上げ剤投入口の液残りを防止することができる。
エチレン性不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸が挙げられる。これらの中では、原料の入手容易性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
エチレン性不飽和カルボン酸塩としては、前記エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩、及びアルカリ土類金属塩を挙げることができる。また、エチレン性不飽和カルボン酸塩は、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩であってもよい。これらのエチレン性不飽和カルボン酸及びその塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
(A)成分がモノマー(a3)に由来する構成単位を含有する場合、モノマー(a3)に由来する構成単位のモノマー体としての質量比率は、衣類からの易洗性を向上させる観点及び液残りを防止する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0025】
(A)成分は、毛羽及び毛玉の発生をより抑制する観点から、前記モノマー(a1)、モノマー(a2)及びモノマー(a3)を構成単位として含む共重合体が好ましい。
なお、(A)成分としては、(A)成分の効果に影響を及ぼさない範囲で、前記モノマー(a1)〜(a3)以外のモノマーを使用してもよい。
【0026】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5万以上、より好ましくは10万以上、更に好ましくは15万以上、より更に好ましくは20万以上、より更に好ましくは25万以上、より更に好ましくは27万以上、より更に好ましくは29万以上であり、そして、好ましくは50万以下、より好ましくは45万以下、更に好ましくは40万以下、より更に好ましくは38万以下である。
なお、(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定による値をいう。より具体的には、溶離液としてクロロホルム、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン及びこれらの溶媒を組み合わせた液のいずれか、好ましくはジメチルホルムアミドを使用して測定したポリスチレン換算の分子量をいう。
【0027】
(A)成分は溶液重合や乳化重合等の方法で製造することができるが、取り扱いの容易性の観点から、乳化重合で製造することが好ましい。乳化重合の方法としては、例えば特開2008−88414号公報に記載の製造方法を挙げることができる。
【0028】
<カチオン化澱粉(B)>
本発明においては、(A)成分の衣類への吸着性を高めることを目的として、また、(A)成分を乳化重合等で製造する際の乳化安定化剤として、カチオン化澱粉(B)(以下、「(B)成分」ともいう)を用いる。
カチオン化澱粉の主骨格を形成する多糖類としては、特開2010−180320号公報に記載の澱粉等を用いることができる。具体的には、コーンスターチ、小麦スターチ、ポテトスターチ、及びタピオカスターチ等の澱粉が挙げられる。
【0029】
前記澱粉にカチオン基を導入してカチオン化澱粉とする方法は特に限定されず、例えば、多糖類と四級アンモニウムアルキル化試薬とを反応させる方法が挙げられる。
四級アンモニウムアルキル化試薬としては、例えば、特開2010−180320号公報に記載のグリシジル基を有する4級アンモニウム化合物を挙げることができ、化合物の入手の容易性の観点から、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
四級アンモニウムアルキル化試薬の具体的な製造方法としては、例えば特開昭56−36501号公報、特開平6−100603号公報、特開2010−180320号公報、及び特開平8−198901号公報等に記載の方法が挙げられる。
【0030】
(B)成分であるカチオン化澱粉の窒素原子の含有量(以下、「N質量%」ともいう)は、(A)成分の衣類への吸着性をより高める点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上、より更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.9質量%以下である。
本明細書において、N質量%とは(B)成分の全質量に対する第4級アンモニウム基由来の窒素原子の含有量(質量%)をいう。N質量%は、「第十二改正日本薬局方」(財団法人日本公定書協会・第一法規出版株式会社発行)の第43〜44頁に記載された窒素定量法(セミミクロケルダール法)に基づいて測定することができる。
【0031】
(B)成分であるカチオン化澱粉の重量平均分子量は、毛羽立ち、毛玉の発生を抑制する観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、更に好ましくは50万以上、より更に好ましくは70万以上、より更に好ましくは80万以上であり、そして、好ましくは190万以下、より更に好ましくは170万以下、より更に好ましくは150万以下、より更に好ましくは130万以下、より更に好ましくは110万以下、より更に好ましくは100万以下である。
【0032】
<アミノ変性シリコーン(C)>
本発明の衣料用仕上げ剤組成物においては、衣料に対してしっかり且つしなやかな風合いを与えることを目的として、25℃における動粘度が100mm2/s以上20,000mm2/s以下であり、アミノ当量が200g/mol以上40,000g/mol以下のアミノ変性シリコーン(以下、「(C)成分」ともいう)を用いる。
【0033】
アミノ変性シリコーンの25℃における動粘度は、衣料に対してしっかり且つしなやかな風合いを与える観点から、100mm2/s以上、好ましくは200mm2/s以上、より好ましくは500mm2/s以上であり、そして、20,000mm2/s以下、好ましくは10,000mm2/s以下、より好ましくは5,000mm2/s以下である。
なお、アミノ変性シリコーン(C)の動粘度は、化粧品原料基準第二版注解(p.1461〜1463、1984年、薬事日報社)の一般試験法の粘度測定法第1法に記載されているウベローテ型毛細管粘度計を用いて25℃で測定した値を指す。
【0034】
アミノ変性シリコーンのアミノ当量(アミノ当量とは窒素原子1個当たりの分子量)は、なめらかな風合いを付与する観点から、200g/mol以上、好ましくは1,000g/mol以上、より好ましくは2,500g/mol以上、更に好ましくは3,000g/mol以上であり、そして、40,000g/mol以下、好ましくは30,000g/mol以下、更に好ましくは20,000g/mol以下、より更に好ましくは10,000g/mol以下である。
【0035】
アミノ変性シリコーンとしては、例えば、アモジメチコーン(Amodimethicone)の名称でCTFA辞典(米国、Cosmetic Ingredient Dictionary)第3版中に記載されているものが好ましい。市販品としては、「SM 8704C」(東レ・ダウコーニング株式会社製)、「DC 929」(ダウ・コーニング社製)、「KT 1989」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、「8500 Conditioning Agent」、「DOW CORNING TORAY SS-3588」、「DOW CORNING TORAY SILSTYLE 104」(東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
【0036】
<ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤(D)>
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、前記(A)成分の乳化安定性の点から、ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤(以下、「(D)成分」ともいう)を含有する。ポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤としては、分子内に炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基及びポリオキシアルキレン基を有する非イオン性界面活性剤が好ましい。具体的にはグリセリン脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物、脂肪酸メチルエステルのアルキレンオキシド付加物、脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加物を挙げることができ、アルキレンオキシドはプロピレンオキシド又はエチレンオキシドが好ましく、アルキレンオキシドの平均付加モル数は2モル以上20モル以下が好ましい。更には前記平均付加モル数の範囲内でエチレンオキシドを平均2モル以上付加させたものが好ましい。
【0037】
(D)成分の非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。アルキル基の炭素数は、(A)成分の希釈時の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは10以上15以下、より好ましくは11以上14以下であり、更にアルキル基は、好ましくは直鎖の1級又は2級の脂肪族アルコール由来のアルキル基であり、前記ポリオキシアルキレン基は、好ましくは平均付加モル数が2モル以上、より好ましくは3モル以上、そして、好ましくは10モル以下、より好ましくは8モル以下のポリオキシエチレン基と、好ましくは平均付加モル数が0モル以上2モル以下、より好ましくは0モル以上1モル以下のオキシプロピレン基とからなるポリオキシアルキレン基であり、より好ましくはポリオキシアルキレン基を構成する全ての基がオキシエチレン基からなるポリオキシエチレン基であって、その平均モル数は、好ましくは3モル以上10モル以下、より好ましくは3モル以上8モル以下、更に好ましくは4モル以上7モル以下である。
【0038】
<水>
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は水を含有する。本発明において用いる水としては、水道水、蒸留水、及び脱イオン水等を用いることができ、中でも次亜塩素酸水で殺菌した水が好ましい。
【0039】
<各成分の配合比、及び配合量>
本発明において(A)成分に対する(B)成分の質量比[(B)/(A)]は、本発明の衣料用仕上げ剤組成物の繊維への吸着量を向上させ、しっかり且つしなやかな風合いを付与する観点から、0.05以上であり、好ましくは0.06以上、より好ましくは0.07以上であり、そして、0.25以下であり、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.15以下である。
【0040】
本発明において(B)成分に対する(C)成分の質量比[(C)/(B)]は、しっかり且つしなやかな風合いを付与する観点から、好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上、より更に好ましくは2以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは7以下である。
【0041】
本発明において(A)成分に対する(C)成分の質量比[(C)/(A)]は、しっかり且つしなやかな風合いを付与する観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.25以上であり、そして、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下である。
【0042】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物中の(A)成分の含有量は、使い勝手の観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは17質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0043】
(B)成分は、前記質量比率を満たす割合で配合することが好ましいが、前記比率の範囲を満たしたうえで、(B)成分の含有量は0.4質量%以上1質量%以下であることが好ましい。また(C)成分も前記質量比率を満たす範囲で配合することが好ましいが、前記比率を満たしたうえで、(C)成分の含有量は3質量%以上6質量%以下であることが好ましい。
【0044】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物中の(D)成分の含有量は、風合いを向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.8質量%以上、より更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは1.2質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
【0045】
<その他成分>
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、前記各成分の他に、その他の成分を含有してもよい。例えば、エタノール、プロパノール、エチレングリコール又はプロピレングリコール等の水溶性有機溶剤、クエン酸、コハク酸又は塩酸等のpH調整のための酸剤、メチルグリシン二酢酸塩やエチレンジアミン四酢酸塩等のキレート剤、公知の安定性及び賦香性に優れた香料、組成物を着色するための染料、及び防菌・防かび剤等を挙げることができる。
【0046】
本発明の衣料用の仕上げ剤組成物は、衣料をしっかり且つしなやかにするための仕上げ剤であって、柔軟剤や糊剤と同様にして用いることができる。対象衣料は特に問わないが、特にニット衣料に効果的であって、しっかり感としなやかさとを衣料に与えることができる。
また、本発明の衣料用仕上げ剤組成物を用いることで、しっかり且つしなやかな衣料を調製することができる。本発明者らはしっかり感としなやかさを数値化することに着目し、しっかり感は引っ張り試験機「KES―FB1」のWT値を用いることで数値化し、しなやかさは引っ張り試験機「KES−FB1」のRT値を用いることで数値化した。
本発明の衣料用仕上げ剤組成物で処理した衣料のWT値は、好ましくは1gf・cm/cm2以上、より好ましくは1.5gf・cm/cm2以上、更に好ましくは2gf・cm/cm2以上、より更に好ましくは2.5gf・cm/cm2以上、より更に好ましくは3gf・cm/cm2以上、より更に好ましくは3.5gf・cm/cm2以上であり、そして、好ましくは8gf・cm/cm2以下、より好ましくは7.5gf・cm/cm2以下、更に好ましくは7gf・cm/cm2以下である。
【0047】
また、本発明の衣料用仕上げ剤組成物で処理した衣料のRT値は、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、更に好ましくは30%以上、より更に好ましくは32%以上、より更に好ましくは34%以上、より更に好ましくは35%以上であり、そして、好ましくは55%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは48%以下である。
【0048】
[衣料の処理方法]
本発明の衣料用仕上げ剤組成物を用いる衣料の処理方法としては、下記工程1〜工程4を含む処理方法が好ましい。
工程1:前記衣料用仕上げ剤組成物を洗濯機の仕上げ剤投入口に投入する工程。
工程2:該衣料用仕上げ剤組成物を保持する仕上げ剤投入口に水を投入し、該衣料用仕上げ剤組成物と水とを接触させる工程。
工程3:工程2の後に、仕上げ剤投入口内の該衣料用仕上げ剤組成物を洗濯槽内に投入する工程。
工程4:洗濯槽内の水浴中で、衣料用仕上げ剤組成物と衣料を接触させる工程。
【0049】
工程1は、衣料用仕上げ剤組成物を洗濯機の仕上げ剤投入口に投入する工程である。仕上げ剤投入口に投入される該衣料用仕上げ剤組成物の質量は、水30Lに対して2g以上80g以下が一般的であるが本発明の効果を実感し易くする観点から、好ましくは5g以上、より好ましくは10g以上であり、そして、好ましくは60g以下、より好ましくは50g以下である。
【0050】
工程2は、該衣料用仕上げ剤組成物を保持する洗濯機の仕上げ剤投入口に水を投入し、該衣料用仕上げ剤組成物と水とを接触させる工程である。
仕上げ剤投入口に投入する水の流速は、0.5L/min以上4L/min以下が好ましい。
また、本発明によると、炭酸塩アルカリ度が比較的高い水、例えば10度以上60度以下の水を用いる場合であっても、本発明の効果を損なわずに処理することができる。
【0051】
なお、本明細書における炭酸塩アルカリ度とは、下記の方法に従って測定された値をいう。
<炭酸塩アルカリ度の測定方法>
検水100mlを200mlのビーカーにとり、指示薬としてブロモクレゾールグリーン−メチルレッド・エタノール溶液(和光純薬工業株式会社製)を0.15ml加える。この溶液をマグネットスターラーと回転子(長さ30mm、直径8mm)で撹拌しながら(回転数200rpm)、10mmol/l硫酸で、溶液の色が青から赤紫色になるまで滴定する。次式によって炭酸塩アルカリ度を算出する。
炭酸塩アルカリ度(度)=a×10
(aは、滴定に要した10mmol/lの硫酸の量(ml)である。上記の式において、1度は1CaCO2mg/lを意味する。)
【0052】
工程3は、工程2の後に仕上げ剤投入口内の該衣料用仕上げ剤組成物を、洗濯槽内に投入する工程である。工程2の後とは、工程2において仕上げ剤投入口内に存在する該衣料用仕上げ剤組成物と該水とが最初に接触した後を意味する。
この工程3では、衣料用仕上げ剤組成物が存在する仕上げ剤投入口に更に水を投入することで衣料用仕上げ剤組成物を洗濯槽内に流し出すことが好ましい。
【0053】
工程4は、洗濯槽内の水浴中で衣料用仕上げ剤組成物と衣料とを接触させる工程である。
洗濯槽内の水の量は、一般的に浴比で決めることができる。なお、本明細書における「浴比」とは、衣類の質量に対する水の容量の比、[水の容量(リットル)]/[衣類の質量(kg)]で表す値をいう。
浴比が小さいと衣類同士の擦れによって毛羽や毛玉が発生しやすくなる一方で、しっかり且つしなやかな風合いを付与する観点から、浴比は、好ましくは8L/kg以上、より好ましくは10L/kg以上、更に好ましくは20L/kg以上であり、そして、好ましくは80L/kg以下、より好ましくは60L/kg以下、更に好ましくは40L/kg以下である。
【実施例】
【0054】
まず、以下の合成例にしたがって各成分の合成を行った。
[各成分の合成例]
<(A)成分の合成>
合成例1:(a−1)成分の合成
窒素雰囲気下、反応容器に下記合成例4で得られたカチオン化澱粉1.1質量部、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製、GL−05)0.2質量部、及びイオン交換水48.7質量部を90℃にて均一溶解したのち60℃まで冷却した。これに、アクリル酸n−ブチル0.3質量部、メタクリル酸メチル0.2質量部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王株式会社製、エマルゲン150)1.68質量部、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩0.03質量部、及びイオン交換水19.4質量部を加え、75℃に加熱して重合を開始した。
重合開始後、メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸の最終比が(重量比19/75/5/1)になるように予め混合しておいたもの16.2質量部、及び2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩0.05質量部をイオン交換水11.9質量部に溶解した水溶液を、5時間かけて反応溶液中に滴下した。滴下終了後、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩0.004質量部を加え、1時間そのまま撹拌を続けた。冷却後、255メッシュにて反応溶液を濾過し、重合体重量が約20質量%のポリマー(a−1)を得た。
得られたポリマー(a−1)5gを20mLのメスフラスコに入れ、アセトンでメスアップした後、0.5μmのPTFEメンブランフィルターでろ過した。ろ液を用い、GPCにて分子量を測定したところ、ポリマー(a−1)の重量平均分子量は33万であった。GPC測定条件を下記に示す。
【0055】
<GPC測定条件>
カラム:α−M(アニオン)を2本直列に連結した。
溶離液:H3PO4(60mmol/L)/LiBr(50mmol/L)/DMF
流速 :1.0mL/min
カラム温度 :40℃
検出器 :RI
サンプル濃度:5mg/mL
サンプル量 :100μL
【0056】
合成例2:(a−2)成分の合成
メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸の最終比が(重量比30/64/5/1)になるようにしたこと以外は、合成例1と同様の方法で合成しポリマー(a−2)を得た。合成例1と同様の方法で分子量を測定したところ、ポリマー(a−2)の重量平均分子量は35万であった。
【0057】
合成例3:(a−3)成分の合成
メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸の最終比が(重量比38/56/5/1)になるようにしたこと以外は、合成例1と同様の方法で合成しポリマー(a−3)を得た。合成例1と同様の方法で分子量を測定したところ、ポリマー(a−3)の重量平均分子量は36万であった。
【0058】
比較合成例1:(a’−1)成分の合成
メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸の最終比が(重量比49/45/5/1)になるようにしたこと以外は、合成例1と同様の方法で合成しポリマー(a’−1)を得た。合成例1と同様の方法で分子量を測定したところ、ポリマー(a’−1)の重量平均分子量は35万であった。
【0059】
【表2】
【0060】
<(B)成分の合成>
合成例4:(b−1)成分の合成
プロペラ型撹拌羽根、冷却管、及び温度計を備えた500mL容量の4つ口フラスコに水酸化ナトリウム0.9g、イオン交換水45g、及びイソプロピルアルコール100gを入れ、この溶液を25℃に調温した。なお、以下の操作は撹拌条件下で行った。
前記溶液に対してコーンスターチ(三和澱粉工業株式会社製)100gを30分かけて投入した。更に水酸化ナトリウムの20質量%水溶液9.7gと3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド150gとの混合物を4つ口フラスコ内に投入した。投入後50℃まで昇温し、10時間撹拌した。
次に36質量%塩酸水溶液で反応液のpHを7に調整した後、25℃まで冷却した。更に36質量%塩酸水溶液を2.3gを加えた後、40℃まで昇温して反応液の粘度が50〜100mPa・sになるまで撹拌した。
更に5質量%水酸化ナトリウム水溶液で反応液のpHを5.0に調整した。この反応物をイソプロピルアルコール及び水の混合溶媒(質量比50/50)で2回洗浄して乾燥させ、カチオン化澱粉(b−1)を得た。
GPC法にて分子量を測定したところ、カチオン化澱粉(b−1)の重量平均分子量は97.2万であった。また、N質量%は0.67質量%であった。
【0061】
<実施例1〜9、及び比較例1〜5>
表3〜5に記載の配合にしたがって実施例1〜9及び比較例1〜5の衣料用仕上げ剤組成物を調製し、下記評価を行った。なお、表3〜5に記載の各成分は以下のとおりである。
〔(A)成分〕
a−1:合成例1で合成したポリマー
a−2:合成例2で合成したポリマー
a−3:合成例3で合成したポリマー
〔(A')成分〕
a'−1:比較合成例1で合成したポリマー
【0062】
〔(B)成分〕
b−1:前記合成例4により合成したカチオン化澱粉
(N質量%0.67質量%、重量平均分子量97.2万)
【0063】
〔(C)成分〕
c−1:信越化学工業株式会社、モノアミン変性シリコーンオイル「KF−864」(25℃における動粘度:1700mm2/s、アミノ当量:3800g/mol)
【0064】
〔(C')成分〕
c'−1:信越化学工業株式会社、ジメチルシリコーンエマルション「KM−902」(ベースオイル:ジメチルシリコーン、25℃における動粘度:50万mm2/s、アミノ当量:0g/mol、シリコーン濃度:50質量%)
c'−2:東レ・ダウコーニング株式会社製、ポリエーテル変性シリコーン「SH−3749」(25℃における動粘度:1,300mm2/s、アミノ当量:0g/mol、1質量%水溶液の曇点:36℃)
【0065】
〔(D)成分〕
d−1:ポリオキシエチレン(平均付加モル数:5モル)ラウリルエーテル
〔その他〕
残部:イオン交換水
【0066】
〔衣料用仕上げ剤組成物の評価方法〕
(試験布の作成)
木綿メリヤス布(綿100%、蛍光晒、株式会社谷頭商店製)250gを市販の液体洗剤(花王株式会社の商品名アタックバイオジェル(登録商標)、2012年製)を用いてバケツ洗濯機(パナソニック株式会社製、N-BK2)で洗濯した(洗剤濃度0.083質量%、20℃の水道水5L使用、洗濯5分間−すすぎ2回、浴比20L/布kg)。洗濯後、2槽式洗濯機(TOSHIBA GINZA 5.2 interior)の脱水槽で2分間脱水した。
脱水後、25℃/50%RHの環境下で12時間乾燥させて20×10cm角に裁断したものを試験布として用いた。
【0067】
(衣料用仕上げ剤組成物による試験布の処理)
前記の方法で作成した試験布(250g)を前記電気バケツ式洗濯機を用いて浴比30L/布kgとし、20℃の水道水7.5Lに柔軟剤組成物を30ml/布1kg投入し、撹拌力を「弱」に設定して5分間撹拌後、前記二槽式洗濯機の脱水槽にて脱水を2分間行い、脱水後、25℃/50%RHの環境下で12時間乾燥させた。
【0068】
(引張特性試験:WT値及びRT値の測定)
実施例及び比較例で製造した各衣料用仕上げ剤組成物を用いて、前記方法に従って処理した綿メリヤス布をKES引っ張り試験機(「KES−FB1」;カトーテック株式会社製)を用い、湿度65%、20℃の室内で24h調湿後、引っ張り試験を行った。測定条件は、SENS5×5、スピード0.2mm/秒、サンプル幅20cm、チャック幅5.0cm、伸び感度25mm/10V、上限荷重500gf/cm、TENSILE_PLESETダイヤル2で行った。なお、実施例における衣料の処理方法においては、炭酸塩アルカリ度が37度である水を用いた。
WT値(gf・cm/cm2)は引張仕事量を示し、数値が大きいほど伸びにくく、しっかり感に優れ、RT値(%)は引張レジリエンスを示し、数値が大きいほど回復性があり、しなやかであることを示す。
【0069】
(しっかり且つしなやかさ)
しっかり且つしなやかさは、以下のようにして評価した。
評価に熟練した25〜45歳の女性3人及び男性2人に対して布のしっかり且つしなやかな感じについて下記の評価により点数をつけて、官能評価を行った。
・判定基準
しっかり且つしなやかさを感じる。 :1以上2以下
しっかり又はしなやかさを感じ、どちらも感じやすい。 :0以上1未満
しっかり又はしなやかさは感じるが、どちらも感じにくい。:−1以上0未満
しっかり且つしなやかさも欠ける。 :−2以上−1未満
【0070】
上記判定基準に沿った5人の採点の平均を下記基準により評価した。
A:1以上2以下
B:0以上1未満
C:−1以上0未満
D:−2以上−1未満
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
本発明の衣料用仕上げ剤組成物によれば、衣料の風合いを、しっかり且つしなやかにすると共に、溶液に対する分散安定性を向上させることができる衣料用仕上げ剤組成物を提供することができる。