特許第6725220号(P6725220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許6725220偏光板用表面保護フィルム、偏光板、及び、偏光板の製造方法
<>
  • 特許6725220-偏光板用表面保護フィルム、偏光板、及び、偏光板の製造方法 図000007
  • 特許6725220-偏光板用表面保護フィルム、偏光板、及び、偏光板の製造方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6725220
(24)【登録日】2020年6月29日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】偏光板用表面保護フィルム、偏光板、及び、偏光板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20200706BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20200706BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20200706BHJP
【FI】
   G02B5/30
   C09J133/04
   C09J11/06
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-152257(P2015-152257)
(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公開番号】特開2017-32768(P2017-32768A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 賢一
(72)【発明者】
【氏名】天野 立巳
【審査官】 藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−111705(JP,A)
【文献】 特開2009−258294(JP,A)
【文献】 特開2005−036205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C09J 133/04
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フィルムの片面又は両面に、粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する偏光板用表面保護フィルムであって、
前記粘着剤組成物が、モノマー成分として、少なくとも、炭素数1〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを50〜97質量%、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを2〜20質量%、及び、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを0.001〜2質量%未満含有する(メタ)アクリル系ポリマー、及び、下記式で示されるシリコーン化合物を含有し、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、前記シリコーン化合物を0.01質量部〜1質量部未満含有し、
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量が150万以上の(メタ)アクリル系ポリマーを含まず、
前記粘着剤層の粘着面積1cmをTAC偏光板に貼り合わせ、23℃で30分間貼付した後、せん断方向に引張速度0.06mm/minで引っ張った際のせん断力が、15N/cm以上であり、
前記粘着剤層表面をTAC偏光板に貼り合わせ、23℃で30分間貼付した後、前記TAC偏光板から前記偏光板用表面保護フィルムを剥離し、前記TAC偏光板の前記粘着剤層表面が貼付していた面に、輝度上昇フィルムを接触させ、200gの荷重をかけた状態で、接触面と平行方向に引張速度100mm/minで引っ張った際の動摩擦力が、1N以下であることを特徴とする偏光板用表面保護フィルム。
【化1】
[式中、R及びR’は、メチル基又はフェニル基であり、R及びR’は同一でもよく、異なってもよい。また、mは0〜3000であり、nは、1〜3000である。]
【請求項2】
前記粘着剤組成物が、アルキレンオキシド基含有界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の偏光板用表面保護フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤組成物が、イオン性化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載偏光板用表面保護フィルム。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の偏光板用表面保護フィルムにより保護されることを特徴とする偏光板。
【請求項5】
偏光板表面に、請求項1〜のいずれかに記載の偏光板用表面保護フィルムの粘着剤層表面を貼り合わせる工程と、前記偏光板表面から、前記偏光板用表面保護フィルムを剥離して、前記偏光板用表面保護フィルムの粘着剤層に含まれる前記シリコーン化合物を、前記偏光板表面に転写する工程と、を含むことを特徴とするシリコーン化合物転写型偏光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板用表面保護フィルム、前記表面保護フィルムにより保護された偏光板、及び、偏光板の製造方法に関するものである。詳しくは、液晶ディスプレイに用いる偏光板に貼着することにより、偏光板の表面を保護するために使用される偏光板用表面保護フィルムに関する。例えば、偏光板用表面保護フィルムは、偏光板の製造メーカにおける偏光板出荷時の保護、液晶ディスプレイの製造メーカにおける表示装置(液晶モジュール)製造工程時の偏光板保護用途等、各種工程における偏光板の保護用途に使用される。また、本発明は、偏光板用表面保護フィルムで保護された偏光板、更には、シリコーン化合物を偏光板表面に転写したシリコーン化合物転写型偏光板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学部品・電子部品の輸送やプリント基板への実装に際して、個々の部品を所定のシートで包装した状態や、粘着テープを貼り付けた状態により、移送することが行われている。なかでも、表面保護フィルムは光学・電子部品の分野においては、特に広く用いられている。
【0003】
表面保護フィルムは、一般的に支持フィルム側に塗布された粘着剤を介して被着体に貼り合わせ、被着体の加工、搬送時に生じる傷や汚れを防止する目的で用いられる(特許文献1)。例えば、液晶ディスプレイ(LCD)パネルは、液晶セルに粘着剤を介して偏光板や波長板などの光学部材を貼り合わせることにより形成されている。これら偏光板などの光学部材は、表面保護フィルムが粘着剤を介して貼り合わされ、加工、搬送時に生じる傷や汚れから守られている。
【0004】
近年、LCDパネルに用いられる偏光板は、LCDパネルの薄型化に伴い、偏光板も薄型化され、これにより、LCDパネルの組み立て時に、輝度上昇フィルムと偏光板との距離(間隔)も薄型化に伴い狭くなり、更に薄型化されたLCDパネルや偏光板が撓むことにより、輝度上昇フィルムと偏光板が接触してしまい、偏光板に傷が生じるなどの問題が生じている。
【0005】
また、偏光板自体には、不必要なカールや意図しないカール(カールとは反り返る現象をいい、例えば、平板状のものが、どちらか一方の面側に全体的に反り返る現象、平板状のものが全体的に波打つように反り返る現象などをいう。)を生じないように、カール調整性が求められている。不必要なカールや意図しないカールが生じると、取り扱い性に劣り、例えば、偏光板などを液晶セルに貼り付ける際に、気泡の噛み込みなどの不具合が生じることがある。
【0006】
一方、表面保護フィルムの粘着剤層に、帯電防止剤の役割を果たすポリエーテル変性シリコーンを配合することにより、ポリエーテル変性シリコーンが被着体(例えば、偏光板)表面に微量転写することで、被着体に帯電防止性を付与することができ、更に、被着体と部材が接触するような場合に、被着体における動摩擦力を低下させることができ、滑り性の向上を図れ、被着体の傷発生を抑制することが可能となる。一方、被着体表面に微量転写したポリエーテル変性シリコーンの存在により、被着体におけるせん断力が低下してしまい、被着体のカール調整性に劣る問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−165460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、従来の表面保護フィルムにおける問題点を解消すべく、粘着剤層のせん断力を上昇させると共に、表面保護フィルムを貼付後、剥離した際の被着体である偏光板における動摩擦力を低下させ、偏光板のカール調整性、及び、偏光板の滑り性の両立を図ることができる偏光板用表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の偏光板用表面保護フィルムは、支持フィルムの片面又は両面に、粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する偏光板用表面保護フィルムであって、前記粘着剤組成物が、モノマー成分として、少なくとも、炭素数1〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを50〜99.9質量%含有する(メタ)アクリル系ポリマー、及び、下記式で示されるシリコーン化合物を含有し、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、前記シリコーン化合物を0.01質量部〜1質量部未満含有し、前記粘着剤層の粘着面積1cmをTAC偏光板に貼り合わせ、23℃で30分間貼付した後、せん断方向に引張速度0.06mm/minで引っ張った際のせん断力が、15N/cm以上であり、前記粘着剤層表面をTAC偏光板に貼り合わせ、23℃で30分間貼付した後、前記TAC偏光板から前記偏光板用表面保護フィルムを剥離し、前記TAC偏光板の前記粘着剤表面が貼付していた面に、輝度上昇フィルムを接触させ、200gの荷重をかけた状態で、接触面と平行方向に引張速度100mm/minで引っ張った際の動摩擦力が、1N以下であることを特徴とする。
【化1】
[式中、R及びR’は、メチル基又はフェニル基であり、R及びR’は同一でもよく、異なっていてもよい。また、mは0〜3000であり、nは、1〜3000である。]
【0010】
本発明の偏光板用表面保護フィルムは、前記粘着剤組成物が、アルキレンオキシド基含有界面活性剤を含有することが好ましい。
【0011】
本発明の偏光板用表面保護フィルムは、前記粘着剤組成物が、イオン性化合物を含有することが好ましい。
【0012】
本発明の偏光板用表面保護フィルムは、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー成分として、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを含有することが好ましい。
【0013】
本発明の偏光板用表面保護フィルムは、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー成分として、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを含有するこことが好ましい。
【0014】
本発明の偏光板は、前記偏光板用表面保護フィルムにより保護されることが好ましい。
【0015】
本発明のシリコーン化合物転写型偏光板の製造方法は、偏光板表面に、前記偏光板用表面保護フィルムの粘着剤層表面を貼り合わせる工程と、前記偏光板表面から、前記偏光板用表面保護フィルムを剥離して、前記偏光板用表面保護フィルムの粘着剤層に含まれる前記シリコーン化合物を、前記偏光板表面に転写する工程と、を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の偏光板用表面保護フィルムは、せん断力の向上が図れるため、薄型化した偏光板に偏光板用表面保護フィルムを貼り合せる際に、偏光板のカールの発生を抑制することができ、カール調整性に優れた偏光板を得ることができ、有用である。また、本発明の偏光板用表面保護フィルムを偏光板に貼付し剥離した後に、液晶ディスプレイパネルを組み立てる際に、前記偏光板と輝度上昇フィルム等が接触してしまう場合であっても、偏光板における動摩擦力を低く抑えることができるため、偏光板に傷が生じにくく、滑り性に優れ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の好ましい実施形態による偏光板用表面保護フィルム付き偏光板の概略断面図である。
図2】剥離帯電圧の測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
<偏光板用表面保護フィルム(表面保護フィルム)の全体構造>
本発明の偏光板用表面保護フィルム(以下、単に、「表面保護フィルム」という場合がある。)は、一般に、表面保護フィルム、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称される形態のものであり、特に光学部品(例えば、偏光板、波長板等の液晶ディスプレイパネル構成要素として用いられる光学部品)の加工時や搬送時に光学部品の表面を保護する表面保護フィルムとして好適である。前記表面保護フィルムにおける粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。また、ここに開示される表面保護フィルムは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。
【0020】
ここに開示される偏光板用表面保護フィルム(表面保護フィルム)の典型的な構成例としては、支持フィルム(基材)の片面又は両面に粘着剤層を有するものや、支持フィルムの片面に設けられた帯電防止層と、支持フィルムの帯電防止層とは反対側の表面に設けられた粘着剤層を備えるものが挙げられる。表面保護フィルムは、この粘着剤層を被着体(保護対象である偏光板)に貼り付けて使用される。使用前(すなわち、被着体への貼付前)の表面保護フィルムは、粘着剤層の表面(被着体への貼付面)が、少なくとも粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナーによって保護された形態であってもよい。あるいは、表面保護フィルムがロール状に巻回されることにより、粘着剤層が支持フィルムの背面(帯電防止層の表面)に当接してその表面が保護された形態であってもよい。
【0021】
<支持フィルム>
本発明の偏光板用表面保護フィルム(表面保護フィルム)は、支持フィルムの片面又は両面に、粘着剤組成物から形成される粘着剤層を有することを特徴とする。前記支持フィルムを構成する樹脂材料は、特に制限なく使用することができるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性、可撓性、寸法安定性等の特性に優れたものを使用することが好ましい。特に、支持フィルムが可撓性を有することにより、ロールコーターなどによって粘着剤組成物を塗布することができ、ロール状に巻き取ることができ、有用である。
【0022】
前記支持フィルム(基材)として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;等を主たる樹脂成分(樹脂成分のなかの主成分、典型的には50質量%以上を占める成分)とする樹脂材料から構成されたプラスチックフィルムを、前記支持フィルムとして好ましく用いることができる。前記樹脂材料の他の例としては、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等の、スチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン−プロピレン共重合体等の、オレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン6、ナイロン6,6、芳香族ポリアミド等の、アミド系ポリマー;等を樹脂材料とするものが挙げられる。前記樹脂材料のさらに他の例として、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー等が挙げられる。上述したポリマーの2種以上のブレンド物からなる支持フィルムであってもよい。
【0023】
前記支持フィルムとしては、透明な熱可塑性樹脂材料からなるプラスチックフィルムを好ましく採用することができる。前記プラスチックフィルムの中でも、ポリエステルフィルムを使用することが、より好ましい態様である。ここで、ポリエステルフィルムとは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等のエステル結合を基本とする主骨格を有するポリマー材料(ポリエステル樹脂)を主たる樹脂成分とするものをいう。かかるポリエステルフィルムは、光学特性や寸法安定性に優れる等、表面保護フィルムの支持フィルムとして、好ましい特性を有する一方、そのままでは帯電しやすい性質を有する。
【0024】
前記支持フィルムを構成する樹脂材料には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)等の各種添加剤が配合されていてもよい。前記支持フィルムの片面(粘着剤層が設けられる側の表面)には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、例えば、支持フィルムと粘着剤層との密着性(粘着剤層の投錨性)を高めるための処理であり得る。支持フィルムの表面にヒドロキシル基等の極性基が導入されるような表面処理を好ましく採用し得る。
【0025】
また、本発明の表面保護フィルムは、支持フィルムの粘着剤層とは反対側に、帯電防止層を有することも可能であるが、帯電防止機能を有する場合、更に、前記支持フィルムとして、帯電防止処理がなされてなるプラスチックフィルムを使用することも可能である。前記支持フィルムを用いることにより、剥離した際の表面保護フィルム自身の帯電が抑えられるため、好ましい。また、支持フィルムがプラスチックフィルムであり、前記プラスチックフィルムに帯電防止処理を施すことにより、表面保護フィルム自身の帯電を低減し、かつ、被着体への帯電防止機能が優れるものが得られる。なお、帯電防止機能を付与する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができ、例えば、帯電防止剤と樹脂成分から成る帯電防止性樹脂や導電性ポリマー、導電性物質を含有する導電性樹脂を塗布する方法や導電性物質を蒸着あるいはメッキする方法、また、帯電防止剤等を練り込む方法等があげられる。
【0026】
前記支持フィルムの厚みとしては、通常1〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記支持フィルムの厚みが、前記範囲内にあると、被着体である偏光板への貼り合せ作業性と被着体からの剥離作業性に優れるため、好ましい。
【0027】
<粘着剤組成物>
本発明の偏光板用表面保護フィルム(表面保護フィルム)は、前記粘着剤層を有し、前記粘着剤層は粘着剤組成物から形成されるものであり、前記粘着剤組成物としては、(メタ)アクリル系ポリマーを含有するものである。
【0028】
本発明で使用される前記粘着剤組成物は、モノマー成分として、少なくとも、炭素数1〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを50〜99.9質量%含有する(メタ)アクリル系ポリマーを含有し、粘着性を有する(メタ)アクリル系ポリマーであれば、特に限定されないが、モノマー成分として、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いるものであり、好ましくは、炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーである。前記(メタ)アクリル系モノマーとしては、1種または2種以上を主成分として使用することができる。なお、本発明における(メタ)アクリル系ポリマーとは、アクリル系ポリマーおよび/またはメタクリル系ポリマーをいい、また(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。また、主成分とは、成分中、最も多く配合される成分をいう。
【0029】
本発明の表面保護フィルムは、前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量に対して、前記炭素数1〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを、50〜99.9質量%含有し、好ましくは、60〜99質量%、より好ましくは、70〜98質量%、最も好ましくは80〜97質量%である。前記範囲内にあることにより、粘着剤組成物が適度な濡れ性を有し、粘着剤(層)の凝集力にも優れ、好ましい。
【0030】
前記炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0031】
なかでも、本発明の表面保護フィルムとして用いる場合には、へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数6〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが好適なものとしてあげられる。炭素数6〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを用いることにより、被着体への粘着力を低く制御することが容易となり、再剥離性に優れたものとなる。
【0032】
本発明の表面保護フィルムは、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー成分として、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを含有することが好ましい。前記ヒドロキシル基が、架橋の制御を容易に行うことができるため、好ましい態様となる。また、粘着剤(層)のせん断力が向上することができ、前記粘着剤を被着体に貼り合わせることにより、被着体に基づくカールを抑制でき、粘着剤と被着体との間(界面)における滑りやズレの発生を抑制でき、好ましい。
【0033】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー成分として、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、粘着剤組成物の架橋などを制御しやすくなり、ひいては流動による濡れ性の改善と、粘着剤(層)の凝集力やせん断力のバランスを制御しやすくなる。さらに、粘着剤に帯電防止剤を添加する場合、一般に架橋部位として作用しうるカルボキシル基やスルホネート基などとは異なり、ヒドロキシル基は、帯電防止剤であるイオン性化合物等と適度な相互作用を有するため、帯電防止性の面においても好適に用いることができる。
【0034】
本発明の表面保護フィルムは、前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量に対して、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを、0.1〜20質量%含有することが好ましく、より好ましくは、1〜15質量%、更に好ましくは、2〜12質量%である。前記範囲内にあると、粘着剤組成物の濡れ性と粘着剤(層)の凝集力やせん断力のバランスを制御しやすくなるため、好ましい。
【0035】
前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどがあげられる。
【0036】
本発明の表面保護フィルムは、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー成分として、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを含有することが好ましい。前記カルボキシル基が、せん断力を向上させたり、経時での粘着力の上昇を防止できるため、好ましい態様となる。特に、粘着剤(層)のせん断力が向上することにより、前記粘着剤を被着体に貼り合わせることにより、被着体に基づくカールを抑制でき、粘着剤と被着体との間(界面)における滑りやズレの発生を抑制でき、好ましい。
【0037】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー成分として、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、表面保護フィルム(粘着剤層)の経時での粘着力の上昇を抑制することができ、再剥離性、粘着力上昇防止性、及び作業性に優れる、また、粘着剤層の凝集力と共に、せん断力にも優れ、好ましい。
【0038】
本発明の表面保護フィルムは、前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量に対して、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを、2質量%未満含有することが好ましく、より好ましくは、0.001〜1.5質量%、更に好ましくは、0.005〜1質量%、最も好ましくは0.01〜0.5質量%である。前記範囲内にあると、経時での粘着力の上昇を抑制することができ、再剥離性、粘着力上昇防止性、及び作業性に優れる。また、粘着剤層の凝集力と共に、せん断力にも優れ、好ましい。なお、極性作用が大きいカルボキシル基のような酸官能基が、多数存在すると、帯電防止剤として、イオン性化合物を配合する場合に、カルボキシル基等の酸官能基とイオン性化合物が相互作用することにより、イオン伝導が妨げられ、導電効率が低下し、十分な帯電防止性が得られなくなる恐れがあり、好ましくない。
【0039】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸、カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、カルボキシルペンチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸などがあげられる。
【0040】
また、その他の重合性モノマー成分として、粘着性能のバランスが取りやすい理由から、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下(通常−100℃以上)になるようにして、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度や剥離性を調整するための重合性モノマーなどを、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0041】
前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて用いられる前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、及び、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外のその他の重合性モノマーとしては、本発明の特性を損なわない範囲内であれば、特に限定することなく用いることができる。たとえば、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマーなどの凝集力・耐熱性向上成分や、アミド基含有モノマー、イミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマーなどの粘着(接着)力向上や架橋化基点として働く官能基を有する成分を適宜用いることができる。これら重合性モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
前記シアノ基含有モノマーとしては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルがあげられる。
【0043】
前記ビニルエステルモノマーとしては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどがあげられる。
【0044】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、たとえば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、その他の置換スチレンなどがあげられる。
【0045】
前記アミド基含有モノマーとしては、たとえば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどがあげられる。
【0046】
前記イミド基含有モノマーとしては、たとえば、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミドなどがあげられる。
【0047】
前記アミノ基含有モノマーとしては、たとえば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0048】
前記エポキシ基含有モノマーとしては、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0049】
前記ビニルエーテルモノマーとしては、たとえば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどがあげられる。
【0050】
本発明において、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、及び、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外のその他の重合性モノマーは、前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(全モノマー成分)中、0〜40質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましい。前記その他の重合性モノマーを、前記範囲内で用いることにより、帯電防止剤として使用できるイオン性化合物との良好な相互作用、および良好な再剥離性を適宜調節することができる。
【0051】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が10万〜500万、好ましくは20万〜400万、さらに好ましくは30万〜300万である。重量平均分子量が10万より小さい場合は、得られる粘着剤(層)の凝集力が小さくなることにより糊残りを生じる傾向がある。一方、重量平均分子量が500万を超える場合は、ポリマーの流動性が低下し、被着体(偏光板)への濡れが不十分となり、被着体と表面保護フィルムの粘着剤組成物層との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られたものをいう。
【0052】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、0℃以下が好ましく、より好ましくは−10℃以下であり、更に好ましくは−20℃以下である(通常−100℃以上)。ガラス転移温度が0℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく、例えば、被着体(偏光板)への濡れが不十分となり、被着体と表面保護フィルムの粘着剤組成物層との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。特にガラス転移温度を−61℃以下にすることで、被着体への濡れ性と軽剥離性に優れる粘着剤組成物が得られ易くなる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより前記範囲内に調整することができる。
【0053】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系ポリマーの重合方法は特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの公知の方法により重合できるが、特に作業性の観点や、被着体(偏光板)への低汚染性など特性面から、溶液重合がより好ましい態様である。また、得られるポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0054】
<シリコーン化合物>
本発明の表面保護フィルムは、前記粘着剤組成物が下記式で示されるシリコーン化合物を含有することを特徴とする。前記シリコーン化合物を使用することにより、詳細な理由は明らかではないが、エーテル基を分子骨格中に含まないため、得られる粘着剤(層)の弾性率が低くなることを抑制でき、凝集力及びせん断力の低下を引き起こさないため、薄型化した偏光板に前記表面保護フィルムを貼り合せられた際に、偏光板のカールの発生を抑制することができ、カール調整性に優れた偏光板を得ることができる。
【化2】
【0055】
上記式中、R及びR’は、メチル基又はフェニル基であり、R及びR’は同一でもよく、異なっていてもよい。また、mは0〜3000であり、nは、1〜3000である。
【0056】
また、上記シリコーン化合物剤の市販品としての具体例は、たとえば、KF−50−100cs(メチルフェニルシリコーンオイル)、KF−50−300cs(メチルフェニルシリコーンオイル)、KF−50−1000cs(メチルフェニルシリコーンオイル)、KF−50−3000cs(メチルフェニルシリコーンオイル)、KF−53(メチルフェニルシリコーンオイル)、KF−54(メチルフェニルシリコーンオイル)、KF−96−100cs(ジメチルシリコーンオイル)、KF−96−300cs(メチルフェニルシリコーンオイル)、KF−96−1000cs(ジメチルシリコーンオイル)、KF−96−3000cs(ジメチルシリコーンオイル)、KF−96−1万cs(ジメチルシリコーンオイル)(信越化学社製)などが挙げられる。
【0057】
本発明の表面保護フィルムは、前記粘着剤組成物が、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、前記シリコーン化合物を0.01質量部〜1質量部未満含有するものであり、好ましくは、0.02〜0.98質量部であり、より好ましくは、0.03〜0.96質量部である。前記範囲内であると、せん断力と動摩擦力の両立を図ることができ、低汚染性にも優れ、好ましい。
【0058】
<アルキレンオキシド基含有界面活性剤>
本発明の表面保護フィルムは、前記粘着剤組成物が、アルキレンオキシド基含有界面活性剤を含有することが好ましい。前記粘着剤組成物に、アルキレンオキシド基含有界面活性剤を含有することにより、さらに被着体である偏光板への濡れ性に優れた粘着剤層を得ることができ、有用である。
【0059】
前記アルキレンオキシド基含有界面活性剤の具体例としては、たとえば、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルアリルエーテル等の非イオン性界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;その他、ポリオキシアルキレン鎖(ポリアルキレンオキシド鎖)を有するカチオン性界面活性剤や両イオン性界面活性剤等が挙げられる。また、前記アルキレンオキシド基含有界面活性剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
好ましい一態様としては、上記アルキレンオキシド基含有界面活性剤が、少なくとも一部に(ポリ)エチレンオキシド鎖を有する化合物である。前記(ポリ)エチレンオキシド鎖を有する化合物を配合することにより、ベースポリマーに加えて、帯電防止剤を配合する場合に、帯電防止剤との相溶性が向上し、被着体である偏光板へのブリードが好適に抑制され、低汚染性の粘着剤組成物が得られる。上記(ポリ)エチレンオキシド鎖含有化合物としては、前記化合物全体に占める(ポリ)エチレンオキシド鎖の質量が5〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜85質量%、さらに好ましくは5〜80質量%、もっとも好ましくは5〜75質量%である。
【0061】
上記アルキレンオキシド基含有界面活性剤の数平均分子量(Mn)としては、50000以下のものが好ましく、200〜30000がより好ましく、200〜10000が更に好ましく、200〜5000のものが特に好ましく用いられる。数平均分子量が50000よりも大きすぎると、アクリル系ポリマーとの相溶性が低下し粘着剤層が白化する傾向にある。数平均分子量が200よりも小さすぎると、前記ポリオキシアルキレン化合物による汚染が生じやすくなることがあり得る。なお、ここで数平均分子量とは、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により得られたポリスチレン換算の値をいう。
【0062】
また、上記アルキレンオキシド基含有界面活性剤の市販品としての具体例は、たとえば、アクアロンKH−10、アクアロンHS−10、ノイゲンEA−137、ハイテノールNF−08(第一工業社製)、ラテムルPD−420(花王社製)などが挙げられる。
【0063】
上記アルキレンオキシド基含有界面活性剤の含有量としては、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば0〜5質量部とすることができ、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.05〜1質量部である。前記範囲内であれば、帯電防止剤を配合した場合に、帯電防止剤のブリードを防止する効果が得られ、好ましい。
【0064】
さらに、前記粘着剤組成物には、アクリルオリゴマーを含有してもよい。アクリルオリゴマーは、重量平均分子量(Mw)が1000以上30000未満が好ましく、1500以上20000未満がより好ましく、2000以上10000未満がさらに好ましい。本実施形態の表面保護用途(再剥離用)のアクリル系粘着剤組成物に使用する場合は、粘着付与樹脂として機能し、粘着(接着)性を向上させ、表面保護フィルムの浮き抑制に効果がある。
【0065】
前記アクリルオリゴマーには、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを使用でき、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル;
テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。
また、前記アクリルオリゴマーには、脂環式構造を持つ(メタ)アクリル系モノマーを使用でき、たとえば、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルアクリレート、トリシクロペンタニルメタクリレート、トリシクロペンタニルアクリレート、1−アダマンチルメタクリレート、1−アダマンチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−エチル−2−アダマンチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。このような(メタ)アクリル系モノマーは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
また、前記アクリルオリゴマーは、前記(メタ)アクリル系モノマー成分単位のほかに、前記(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能な他のモノマー成分(共重合性モノマー)を共重合させて得ることも可能である。
【0067】
前記アクリルオリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、1000以上30000未満、好ましくは1500以上20000未満、さらに好ましくは2000以上10000未満である。重量平均分子量が30000以上であると、粘着(接着)性が低下する。また、重量平均分子量が1000未満であると、低分子量となるため表面保護フィルムの粘着力の低下を引き起こす。
【0068】
本発明の表面保護フィルムは、前記粘着剤組成物が、ポリオキシアルキレン鎖を有するオルガノポリシロキサンを含有しないことが好ましい。前記オルガノポリシロキサンを使用することにより、表面保護フィルム(粘着剤層)の軽剥離化や、偏光板における動摩擦力を低く抑えることができるが、一方で、せん断力の低下を招き、好ましくない態様となる。なお、せん断力が低下する詳細な理由は明らかではないが、エーテル基に加えて、シリコーン成分を骨格中に含むため、得られる粘着剤(層)の弾性率が低くなり、凝集力低下及びせん断力の低下を招くことによるものと推測される。
【0069】
<帯電防止剤>
本発明の表面保護フィルムは、前記粘着剤組成物が、帯電防止剤(帯電防止成分)を含有することができ、前記帯電防止剤として、イオン性化合物を含有することができる。前記イオン性化合物としては、アルカリ金属塩、及び/又は、低融点(融点150℃以下)のイオン性化合物(イオン液体など)が挙げられる。これらのイオン性化合物を含有することにより、優れた帯電防止性を付与することができる。
【0070】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、前記帯電防止剤の含有量は、1質量部以下が好ましく、0.001〜0.9質量部がより好ましく、更に好ましくは0.005〜0.8質量部である。前記範囲内にあると、帯電防止性と低汚染性の両立がしやすいため、好ましい。
【0071】
<架橋剤>
本発明の表面保護フィルムは、前記粘着剤組成物が、架橋剤を含有することが好ましい。また、本発明においては、前記粘着剤組成物を用いて、粘着剤層とする。例えば、前記粘着剤組成物が、前記(メタ)アクリル系ポリマーを含有する場合、前記(メタ)アクリル系ポリマーの構成単位、構成比率、架橋剤の選択および添加比率等を適宜調節して架橋することにより、より耐熱性に優れた表面保護フィルム(粘着剤層)を得ることができる。
【0072】
本発明に用いられる架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、および金属キレート化合物などを用いてもよく、特にイソシアネート化合物の使用は、好ましい態様となる。また、これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0073】
前記イソシアネート化合物としては、たとえば、トリメチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの芳香族イソシアネート類、前記イソシアネート化合物をアロファネート結合、ビウレット結合、イソシアヌレート結合、ウレトジオン結合、ウレア結合、カルボジイミド結合、ウレトンイミン結合、オキサジアジントリオン結合などにより変性したポリイソシネート変性体が挙げられる。たとえば、市販品として、商品名タケネート300S、タケネート500、タケネートD165N、タケネートD178N(以上、三井化学社製)、スミジュールT80、スミジュールL、デスモジュールN3400(以上、住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR、ミリオネートMT、コロネートL、コロネートHL、コロネートHX(以上、日本ポリウレタン工業社製)などがあげられる。これらイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよく、2官能のイソシアネート化合物と3官能以上のイソシアネート化合物を併用して用いることも可能である。架橋剤を併用して用いることにより粘着性と耐反発性(曲面に対する接着性)を両立することが可能となり、より接着信頼性に優れた表面保護フィルム(粘着剤層)を得ることができる。
【0074】
前記エポキシ化合物としては、たとえば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名TETRAD−X、三菱瓦斯化学社製)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名TETRAD−C、三菱瓦斯化学社製)などがあげられる。
【0075】
前記メラミン系樹脂としてはヘキサメチロールメラミンなどがあげられる。アジリジン誘導体としては、たとえば、市販品としての商品名HDU、TAZM、TAZO(以上、相互薬工社製)などがあげられる。
【0076】
前記金属キレート化合物としては、金属成分としてアルミニウム、鉄、スズ、チタン、ニッケルなど、キレート成分としてアセチレン、アセト酢酸メチル、乳酸エチルなどがあげられる。
【0077】
本発明に用いられる架橋剤の含有量は、例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.01〜10質量部含有されていることが好ましく、0.5〜8質量部含有されていることがより好ましく、1〜5質量部含有されていることがさらに好ましい。前記含有量が0.01質量部よりも少ない場合、架橋剤による架橋形成が不十分となり、得られる粘着剤層の凝集力が小さくなって、十分な耐熱性が得られない場合もあり、また糊残りの原因となる傾向がある。一方、含有量が10質量部を超える場合、ポリマーの凝集力が大きく、流動性が低下し、被着体(偏光板)への濡れが不十分となって、被着体と粘着剤層(粘着剤組成物層)との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。さらに、架橋剤量が多いと剥離帯電特性が低下する傾向がある。また、これらの架橋剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0078】
前記粘着剤組成物には、さらに、上述したいずれかの架橋反応をより効果的に進行させるため、架橋触媒を含有させることができる。かかる架橋触媒として、例えば、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジオクチルスズなどのスズ系触媒、トリス(アセチルアセトナト)鉄、トリス(ヘキサン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(ヘプタン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(ヘプタン−3,5−ジオナト)鉄、トリス(5−メチルヘキサン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(オクタン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(6−メチルヘプタン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉄、トリス(ノナン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(ノナン−4,6−ジオナト)鉄、トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉄、トリス(トリデカン−6,8−ジオナト)鉄、トリス(1−フェニルブタン−1,3−ジオナト)鉄、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)鉄、トリス(アセト酢酸エチル)鉄、トリス(アセト酢酸−n−プロピル)鉄、トリス(アセト酢酸イソプロピル)鉄、トリス(アセト酢酸−n−ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸−sec−ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸−tert−ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸メチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸エチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸−n−プロピル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸イソプロピル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸−n−ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸−sec−ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸−tert−ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸ベンジル)鉄、トリス(マロン酸ジメチル)鉄、トリス(マロン酸ジエチル)鉄、トリメトキシ鉄、トリエトキシ鉄、トリイソプロポキシ鉄、塩化第二鉄などの鉄系触媒を用いることができる。これら架橋触媒は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
前記架橋触媒の含有量は、特に制限されないが、例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、およそ0.0001〜1質量部が好ましく、0.001〜0.5質量部がより好ましい。前記範囲内にあると、粘着剤層を形成した際に架橋反応の速度が速く、粘着剤組成物のポットライフも長くなり、好ましい態様となる。
【0080】
更に、前記粘着剤組成物には、架橋遅延剤として、ケト−エノール互変異性を生じる化合物を含有させることができる。例えば、架橋剤を含む粘着剤組成物または架橋剤を配合して使用され得る粘着剤組成物において、前記ケト−エノール互変異性を生じる化合物を含む態様を好ましく採用することができる。これにより、架橋剤配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長する効果が実現され得る。前記架橋剤として少なくともイソシアネート化合物を使用する場合には、ケト−エノール互変異性を生じる化合物を含有させることが特に有意義である。この技術は、例えば、前記粘着剤組成物が有機溶剤溶液または無溶剤の形態である場合に好ましく適用され得る。
【0081】
前記ケト−エノール互変異性を生じる化合物としては、各種のβ−ジカルボニル化合物を用いることができる。具体例としては、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2−メチルヘキサン−3,5−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン等のβ−ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸tert−ブチル等のアセト酢酸エステル類;プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸tert−ブチル等のプロピオニル酢酸エステル類;イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸tert−ブチル等のイソブチリル酢酸エステル類;マロン酸メチル、マロン酸エチル等のマロン酸エステル類;等が挙げられる。なかでも好適な化合物として、アセチルアセトンおよびアセト酢酸エステル類が挙げられる。かかるケト−エノール互変異性を生じる化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0082】
前記ケト−エノール互変異性を生じる化合物の含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば0.1〜20質量部とすることができ、通常は0.5〜15質量部(例えば1〜10質量部)とすることが適当である。前記化合物の量が少なすぎると、十分な使用効果が発揮され難くなる場合がある。一方、前記化合物を必要以上に多く使用すると、粘着剤層に残留し、凝集力を低下させる場合がある。
【0083】
さらに、本発明の表面保護フィルムに用いられる粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、可塑剤、粘着付与剤、低分子量ポリマー、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。
【0084】
本発明の表面保護フィルムは、前記支持フィルムの片面又は両面に、前記粘着剤組成物から形成(粘着剤組成物を架橋して形成)される粘着剤層を有することを特徴とする。前記粘着剤組成物の架橋は、粘着剤組成物の塗布後に行うのが一般的であるが、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着剤層を支持フィルムなどに転写することも可能である。また、前記支持フィルム上に粘着剤層を形成する方法は特に問わないが、たとえば、前記粘着剤組成物を支持フィルムに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を支持フィルム上に形成することにより作製される。その後、粘着剤層の成分移行の調整や架橋反応の調整などを目的として養生をおこなってもよい。また、粘着剤組成物を支持フィルム上に塗布して表面保護フィルムを作製する際には、支持フィルム上に均一に塗布できるよう、前記粘着剤組成物中に重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0085】
また、本発明の表面保護フィルムを製造する際の粘着剤層の形成方法としては、粘着シート(表面保護フィルム)類の製造に用いられる公知の方法が用いられる。具体的には、たとえば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法、ダイコーターなどによる押出しコート法などがあげられる。
【0086】
本発明の表面保護フィルムは、通常、上記粘着剤層の厚みが、3〜100μmであることが好ましく、より好ましくは5〜50μm程度となるように作製する。粘着剤層の厚みが、前記範囲内にあると、適度な再剥離性と粘着(接着)性のバランスを得やすいため、好ましい。
【0087】
<セパレーター>
本発明の表面保護フィルムには、必要に応じて粘着剤層の粘着面を保護する目的で、粘着剤層表面にセパレーターを貼り合わせることが可能である。
【0088】
前記セパレーターを構成する材料としては紙やプラスチックフィルムがあるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。そのフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0089】
前記セパレーターの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μm程度である。前記範囲内にあると、粘着剤層への貼り合せ作業性と粘着剤層からの剥離作業性に優れるため、好ましい。前記セパレーターには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理をすることもできる。
【0090】
本発明の表面保護フィルムは、支持フィルム(基材)、及び、粘着剤層に加えて、帯電防止層などの他の層を含む態様でも実施され得る。
【0091】
<偏光板>
本発明の偏光板は、前記偏光板用表面保護フィルム(表面保護フィルム)により保護されたものであることが好ましい。前記表面保護フィルムは、せん断力の向上が図れるため、薄型化した偏光板に偏光板用表面保護フィルムを貼り合せられた際に、偏光板のカールの発生を抑制することができ、カール調整性に優れた偏光板を得ることができ、有用である。また、前記表面保護フィルムを偏光板に貼付し剥離した後に、液晶ディスプレイパネルを組み立てる際に、前記偏光板と輝度上昇フィルム等が接触してしまう場合であっても、偏光板における動摩擦力を低く抑えることができるため、偏光板に傷が生じにくく、滑り性に優れ、有用である。なお、図1に示すように、前記偏光板(表面保護フィルム付き偏光板5)は、偏光板2の表面に、偏光板用表面保護フィルム1の粘着剤層3の表面を貼付し、偏光板表面を、傷や埃などから保護するものである。
【0092】
<シリコーン化合物転写型偏光板の製造方法>
本発明のシリコーン化合物転写型偏光板の製造方法は、前記偏光板表面に、前記偏光板用表面保護フィルムの粘着剤層表面を貼り合わせる工程と、前記偏光板表面から、前記偏光板用表面保護フィルムを剥離して、前記偏光板用表面保護フィルムの粘着剤層に含まれる前記シリコーン化合物を、前記偏光板表面に転写する工程と、を含むことが好ましい。前記粘着剤層表面を、前記偏光板表面に貼付することにより、前記粘着剤層表面に偏析したエーテル基を分子骨格中に含まないシリコーン化合物が、前記偏光板表面に転写し、その後、前記表面保護フィルムを剥離しても、前記偏光板表面に前記シリコーン化合物が微量残存するため、得られた偏光板は、動摩擦力を低く抑えることができ、偏光板と輝度上昇フィルムなどが接触した場合であっても、偏光板自体に傷が生じにくく、滑り性に優れ、有用となる。
【0093】
前記偏光板表面に、前記偏光板用表面保護フィルムの粘着剤層表面を貼り合わせる工程としては、
その貼付時間は特に制限されないが、たとえば、23℃で50%RHの条件下で、15分以上貼付されていることが好ましい。前記範囲内であれば、前記シリコーン化合物が粘着剤表面から十分に偏光板表面へと転写(移行)することができ、好ましい態様となる。
【実施例】
【0094】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例等における配合内容、及び、特性評価については、下記のようにして測定を行った。また、表1において、粘着剤組成物の配合割合、及び、得られる(メタ)アクリル系ポリマーの物性を示し、表2において、得られた偏光板用表面保護フィルム(表面保護フィルム)、及び、前記表面保護フィルムを貼付後の偏光板における特性評価の結果を示した。
【0095】
<評価>
以下に、具体的な測定・評価方法を記載する。
【0096】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量(Mw)は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8220GPC)を用いて測定を行った。測定条件は下記の通りである。
【0097】
サンプル濃度:0.2質量%(THF溶液)
サンプル注入量:10μl
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
測定温度:40℃
カラム:
サンプルカラム;TSKguardcolumn SuperHZ−H(1本)+TSKgel SuperHZM−H(2本)
リファレンスカラム;TSKgel SuperH−RC(1本)
検出器:示差屈折計(RI)
なお、重量平均分子量はポリスチレン換算値にて求めた。
【0098】
<ガラス転移温度(Tg)の理論値>
ガラス転移温度Tg(℃)は、各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度Tgn(℃)として下記の文献値を用い、下記の式により求めた。
【0099】
式:1/(Tg+273)=Σ[Wn/(Tgn+273)]
〔式中、Tg(℃)は共重合体のガラス転移温度、Wn(−)は各モノマーの質量分率、Tgn(℃)は各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度、nは各モノマーの種類を表す。〕
文献値:
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃
アクリル酸(AA):106℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA):−15℃
4−ヒドロキブチルアクリレート(4HBA):−32℃
【0100】
なお、文献値として、「アクリル樹脂の合成・設計と新用途展開」(中央経営開発センター出版部発行)及び「Polymer Handbook」(John Wiley & Sons)を参照した。
【0101】
<せん断力の測定>
表面保護フィルムを幅10mm、長さ100mmのサイズにカットし、表面保護フィルムの粘着剤層表面に貼付されたセパレーターを剥離した後、前記表面保護フィルムの粘着剤層の粘着(接着)面積が、1cmになるように、TAC(トリアセチルセルロース)偏光板(日東電工社製、SEG1423DU偏光板、幅:25mm、長さ:100mm)に貼り合わせ、室温(23℃×50%RH)で30分、静置後、引張速度0.06mm/minで、せん断方向に引っ張り、そのときの最大荷重(N/cm)をせん断力とした。
【0102】
なお、前記せん断力(N/cm)は、15以上であり、好ましくは、15〜50、より好ましくは、20〜40である。前記せん断力が、前記範囲内であれば、表面保護フィルムを貼付した被着体である偏光板がカールしようとする際に発生するせん断方向の力に耐えることができ、表面保護フィルムの滑りやズレが生じず、被着体のカールを抑制できるため、好ましい。
【0103】
<動摩擦力(滑り性)の測定>
幅5cm、長さ15cmのサイズにカットしたTAC偏光板(日東電工社製、SEG1423DU偏光板)のTAC面全面に表面保護フィルムの粘着剤層表面を貼り付け、23℃×50%RHで30分放置した後、TAC面から表面保護フィルムを剥離した。
続いて、TAC偏光板の粘着剤層表面が貼付していた面(TAC面)と、輝度上昇フィルム(住友スリーエム社製、DBEF−D2−280)を接触させ試験片とした。この試験片の上に、荷重200gを載せた。前記荷重を載せた試験片を、伸縮性のない糸を用いて引張試験機に取り付け、測定温度25℃において、引張速度100mm/min、引張距離50mmの条件でTAC面と輝度上昇フィルムとの接触面と平行方向(水平方向)に引っ張り、試験片にかかる動摩擦力(N)の平均値(n=3)を求めた。
【0104】
なお、前記動摩擦力(N)は、1以下であり、好ましくは、0.9以下であり、より好ましくは、0.8以下である。前記範囲内にあると、偏光板における動摩擦力を低下させることができ、偏光板表面に生じる傷の抑制を図ることができ、滑り性の向上が図れ、有利となる。
【0105】
<傷の有無>
前記動摩擦力を測定した後のTAC偏光板表面(TAC面)の傷の発生具合を目視で観察した。
傷がない場合:○、傷が発生した場合:×
【0106】
<剥離帯電圧の測定>
偏光板用表面保護フィルム(表面保護フィルム)を幅70mm、長さ130mmのサイズにカットし、表面保護フィルムの粘着剤層表面に貼付されたセパレーターを剥離した後、あらかじめ除電しておいたアクリル板(厚み:2mm、幅:70mm、長さ:100mm)に貼り合わせたTAC偏光板(日東電工社製、SEG1423DU偏光板、幅:70mm、長さ:100mm)表面(TAC面)に片方の端部が30mmはみ出すようにハンドローラーにて圧着した。23℃×50%RHに一日放置した後、図2に示すように、所定の位置にサンプルをセットした。30mmはみ出した片方の端部を自動巻取り機に固定し、剥離角度150°、剥離速度30m/minとなるように剥離した。このときに発生する偏光板表面の電位(剥離帯電圧:絶対値、kV)を偏光板中央の位置に固定してある電位測定器(春日電機社製、KSD−0103)にて測定した。測定は、23℃×50%RHの環境下で行った。
【0107】
<汚染性>
表面保護フィルムを幅50mm、長さ80mmのサイズにカットし、表面保護フィルムの粘着剤層表面に貼付されたセパレーターを剥離した後、幅70mm、長さ100mmにカットしたTAC偏光板(日東電工社製、SEG1423DU偏光板)表面(TAC面)に貼り付け、23℃×50%RHに1日放置した後、表面保護フィルムを剥離し、目視で汚染性の確認を行った。
汚染がなかった場合:○、汚染があった場合:×
【0108】
<調製方法>
以下に、具体的な(メタ)アクリル系ポリマーや粘着剤組成物等の調製方法を記載する。なお、表1中の配合量(部数)は、固形分量を示した。
【0109】
<実施例1>
<(メタ)アクリル系ポリマーの調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)100質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)10質量部、アクリル酸(AA)0.02質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部、酢酸エチル157質量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って、6時間重合反応を行い、(メタ)アクリル系ポリマー溶液(40質量%)を調製した。前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は54万、ガラス転移温度(Tg)は、−67℃であった。
【0110】
<粘着剤組成物の調製>
上記(メタ)アクリル系ポリマー溶液(40質量%)を酢酸エチルで20質量%に希釈し、この溶液500質量部(固形分100質量部)に、非シリコーン系のポリエーテルであるポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸アンモニウム(第一工業製薬社製、アクアロンKH−10)0.3質量部(固形分0.3質量部)、エーテル基を含まないシリコーン化合物であるメチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製、KF−50−100cs)0.1質量部(固形分0.1質量部)、帯電防止剤であるイオン性化合物のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(東京化成工業社製、LiTFSI)0.15質量部(固形分0.15質量部)、及び、架橋剤として、脂肪族系イソシアネート化合物であるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製、コロネートHX:C/HX)3質量部(固形分3質量部)、架橋触媒として、ジラウリン酸ジブチルスズ(1質量%酢酸エチル溶液)2質量部(固形分0.02質量部)を加えて、混合攪拌を行い、粘着剤組成物 (溶液)を調製した。
【0111】
<帯電防止処理フィルムの作製>
帯電防止剤(ソルベックス社製、マイクロソルバーRMd−142、酸化スズとポリエステル樹脂を主成分とする)10重量部を、水30重量部とメタノール70重量部からなる混合溶媒で希釈することにより帯電防止剤溶液を調製した。
【0112】
得られた帯電防止剤溶液を、支持フィルムであるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm)上にマイヤーバーを用いて塗布し、130℃で1分間乾燥することにより、溶剤を除去して帯電防止層(厚さ:0.2μm)を形成し、帯電防止処理フィルムを作製した。
【0113】
<偏光板用表面保護フィルムの作製>
上記粘着剤組成物 (溶液)を、上記の帯電防止処理フィルムの帯電防止層とは反対の面に塗布し、130℃で2分間加熱して、厚さ15μmの粘着剤層を形成した。次いで、前記粘着剤層の表面に、片面にシリコーン処理を施したセパレーターであるポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼り合わせ、偏光板用表面保護フィルムを作製した。
【0114】
<実施例2〜8、及び、比較例1〜3>
表1の配合割合に基づき、実施例1と同様にして、偏光板用表面保護フィルムを作製した。なお、表1中の配合量は、固形分を示した。
【0115】
上記評価方法に従い、得られた偏光板用表面保護フィルム(表面保護フィルム)、及び、前記表面保護フィルムを貼付後の偏光板における特性評価の結果を行った。得られた結果を表2に示した。
【0116】
【表1】
【0117】
表1中の略称を、以下に説明する。
【0118】
<(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分>
2EHA:2−エチルへキシルアクリレート
AA:アクリル酸(カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー)
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート(ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー)
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート(ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー)
【0119】
<架橋剤>
C/L:芳香族系イソシアネート化合物、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物、東ソー社製、商品名:コロネートL
C/HX:脂肪族系イソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、東ソー社製、商品名:コロネートHX
【0120】
<ポリエーテル>
KH−10:ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸アンモニウム、第一工業製薬社製、商品名:アクアロンKH−10
HS−10:ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、第一工業製薬社製、商品名:アクアロンHS−10
NF−08:ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、第一工業製社薬製、商品名:ハイテノールNF−08
EA−137:ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、第一工業製薬社製、商品名:ノイゲンEA−137
KF353:ポリエーテル変性シリコーン、信越化学社製、商品名:KF−353
【0121】
<シリコーン化合物>
KF−50−100cs:メチルフェニルシリコーンオイル、信越化学社製、商品名:KF−50−100cs
KF−50−1000cs:メチルフェニルシリコーンオイル、信越化学社製、商品名:KF−50−1000cs
KF−50−3000cs:メチルフェニルシリコーンオイル、信越化学社製、商品名:KF−50−3000cs
KF−96−100cs:ジメチルシリコーンオイル、信越化学社製、商品名:KF−96−100cs
KF−96−1000cs:ジメチルシリコーンオイル、信越化学社製、商品名:KF−96−1000cs
KF−96−3000cs:ジメチルシリコーンオイル、信越化学社製、商品名:KF−96−3000cs
【0122】
<帯電防止剤(イオン性化合物)>
LiTFSI:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、東京化成工業社製
【0123】
【表2】
【0124】
上記表2の評価結果より、全ての実施例において、エーテル基を分子骨格中に含まないシリコーン化合物を配合した粘着剤層を有する偏光板用表面保護フィルムを使用することにより、所望のせん断力と動摩擦力を有することになり、カール調整性、及び、滑り性の両立を図れ、偏光板への汚染や傷の発生を抑制できることが確認できた。
【0125】
一方、上記表2の結果より、比較例1においては、前記シリコーン化合物を配合しなかったため、動摩擦力を低く抑えることができなかった。比較例2においては、前記シリコーン化合物を配合せず、ポリエーテル変性シリコーンを配合したため、せん断力が低くなることが確認された。また、比較例3では、前記シリコーン化合物を使用したにも関わらず、所定量を超えて配合したため、汚染が認められ、実用的に問題があることが確認された。
【符号の説明】
【0126】
1 偏光板用表面保護フィルム(表面保護フィルム)
2 偏光板
3 粘着剤層
4 支持フィルム
5 偏光板用表面保護フィルム付き偏光板(偏光板)
10 アクリル板
20 TAC偏光板
30 サンプル固定台
40 電位測定器
図1
図2