【文献】
日本食生活学会誌,2005年,Vol. 16, No. 3,pp. 224-229
【文献】
日本食品科学工学会誌,1996年,Vol. 43, No. 8,pp. 939-945
【文献】
薬学雑誌,1988年,Vol. 108, No. 7,pp. 653-658
【文献】
五訂 日本食品標準成分表,科学技術庁資源調査会,2004年,pp. 286-287
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のソリュブルコーヒーについて説明する。
本明細書において「ソリュブルコーヒー」とは、飲用時に水、牛乳等の液体で還元した後、即座に飲用可能なインスタント製品をいい、ソリュブルコーヒー中の固形分量は通常95質量%以上、好ましくは97質量%以上である。なお、かかる固形分量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。ここで、本明細書において「固形分量」とは、試料を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して揮発物質を除いた残分の質量をいう。
【0010】
本発明のソリュブルコーヒーは種々の形態を採り得るが、例えば、瓶等に容器詰し、飲用する際にカップ1杯分をスプーン等で計量するもの、1杯分を収容した透過性浸出パッケージ、カップ1杯分毎に小分けしたスティックタイプ等とすることができる。
【0011】
本発明のソリュブルコーヒーは、成分(A)としてクロロゲン酸類を含有する。ここで、本明細書において「クロロゲン酸類」とは、3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸及び5−カフェオイルキナ酸のモノカフェオイルキナ酸と、3−フェルラキナ酸、4−フェルラキナ酸及び5−フェルラキナ酸のモノフェルラキナ酸と、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸及び4,5−ジカフェオイルキナ酸のジカフェオイルキナ酸を併せての総称であり、本発明においては上記9種のうち少なくとも1種を含有すればよいが、すべて含有することが好ましい。
【0012】
本発明のソリュブルコーヒー中の(A)クロロゲン酸類の含有量は、生理効果及びコーヒー様の香りの増強の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.08質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、また焦げ臭の抑制の観点から、2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下がより更に好ましい。(A)クロロゲン酸類の含有量の範囲としては、本発明のソリュブルコーヒー中に、好ましくは0.05〜2質量%、より好ましくは0.05〜1.5質量%、更に好ましくは0.08〜1質量%、より更に好ましくは0.1〜0.5質量%である。なお、(A)クロロゲン酸類の含有量は上記9種の合計量に基づいて定義される。
【0013】
本発明のソリュブルコーヒーは、コーヒー様の香りを増強し、焦げ臭を抑制するために、成分(B)として水溶性食物繊維を含有する。ここで、本明細書において「水溶性食物繊維」とは、人間の消化酵素では消化されない食品中の多糖類を主体とした高分子成分の総体のうち水溶性のものをいう(綾野、ジャパンフードサイエンス、12、p.27〜37、1988)。
水溶性食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、分岐マルトデキストリン、グアーガム分解物、ガラクトマンナン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、ペクチン、ラミナリン、フコイジン、カラギーナン、直鎖グルカン等を挙げることができる。水溶性食物繊維は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、水溶性食物繊維としては、コーヒー様の香りのより一層の増強、焦げ臭のより一層の抑制の観点から、難消化性デキストリン、ポリデキストロースが好ましく、難消化性デキストリンが更に好ましい。
【0014】
難消化性デキストリンは、人間の消化酵素により加水分解されずに残るデキストリンであり、澱粉に微量の塩酸を加えて加熱し、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ等の酵素で処理して得られた食物繊維画分を分取することにより得ることができる。なお、澱粉は食品分野において使用されているものであれば、その由来は特に限定されないが、例えば、トウモロコシ、馬鈴薯、甘藷、小麦、米、もち米、タピオカ等の植物由来の澱粉等を挙げることができる。中でも、トウモロコシ由来の難消化性デキストリンが所望の効果を享受しやすい点で好ましい。
【0015】
難消化性デキストリンのデキストロース当量(DE:Dextrose Equivalent)は、コーヒー様の香りの増強、焦げ臭の抑制の観点から、1以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上が更に好ましく、8以上がより更に好ましく、9以上がより更に好ましく、そして30以下が好ましく、25以下がより好ましく、23以下が更に好ましく、20以下がより更に好ましく、15以下がより更に好ましい。かかるデキストロース当量の範囲としては、好ましくは1〜30、より好ましくは5〜25、更に好ましくは7〜23、より更に好ましくは8〜20、より更に好ましくは9〜15である。このような難消化性デキストリンとして市販品を用いることが可能であり、例えば、パインファイバー、ファイバーソル2(以上、商品名、松谷化学工業社製)、プロミター85(商品名、Tate&Lyle社製)等を挙げることができる。中でも、ファイバーソル2が好ましい。なお、ポリデキストロースとしては、例えば、ライテスII(ダニスコジャパン社製)等を挙げることができる。
【0016】
本発明のソリュブルコーヒー中の(B)水溶性食物繊維の含有量は、コーヒー様の香りの増強、焦げ臭の抑制の観点から、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましく、60質量%以上がより更に好ましく、またコーヒー様の香りの観点から、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましく、72質量%以下がより更に好ましく、70質量%以下がより更に好ましい。(B)水溶性食物繊維の含有量の範囲としては、本発明のソリュブルコーヒー中に、好ましくは30〜85質量%、より好ましくは40〜80質量%、更に好ましくは50〜75質量%、より更に好ましくは50〜72質量%、より更に好ましくは60〜70質量%である。なお、(B)水溶性食物繊維の含有量は、五訂増補日本食品標準成分表(文部科学省)に記載の分析方法に準拠し、プロスキー変法を適用することにより測定することができる。
【0017】
本発明のソリュブルコーヒー中の(A)クロロゲン酸類と(B)水溶性食物繊維との質量比[(A)/(B)]は0.0010〜0.0093であるが、コーヒー様の香りの増強の観点から、0.0011以上が好ましく、0.0013以上がより好ましく、0.0015以上が更に好ましく、また焦げ臭の抑制の観点から、0.0088以下が好ましく、0.0084以下がより好ましく、0.0082以下が更に好ましい。かかる質量比[(A)/(B)]の範囲としては、好ましくは0.0011〜0.0088、より好ましくは0.0013〜0.0084、更に好ましくは0.0015〜0.0082である。
【0018】
本発明のソリュブルコーヒーは、成分(C)としてコーヒー抽出固形分を含有する。ここで、本明細書において「コーヒー抽出固形分」とは、本発明のソリュブルコーヒーに含まれるコーヒー抽出物由来の固形分をいう。
本発明のソリュブルコーヒー中の(C)コーヒー抽出固形分の含有量は、コーヒー様の香りの観点から、15質量%以上が好ましく、18質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、また焦げ臭の観点から、41質量%以下が好ましく、33質量%以下がより好ましく、23質量%以下が更に好ましい。(C)コーヒー抽出固形分の含有量の範囲としては、本発明のソリュブルコーヒー中に、好ましくは15〜41質量%、より好ましくは18〜33質量%、更に好ましくは20〜23質量%である。
【0019】
また、本発明のソリュブルコーヒー中の(A)クロロゲン酸類と(C)コーヒー抽出固形分との質量比[(A)/(C)]は0.001〜0.028であるが、焦げ臭の観点から、0.003以上が好ましく、0.007以上がより好ましく、0.010以上が更に好ましく、またコーヒー様の香りの観点から、0.026以下が好ましく、0.024以下がより好ましく、0.022以下が更に好ましい。かかる質量比[(A)/(C)]の範囲としては、好ましくは0.003〜0.026、より好ましくは0.007〜0.024、更に好ましくは0.010〜0.022である。
【0020】
更に、本発明のソリュブルコーヒーは、前記質量比[(A)/(B)]と前記質量比[(A)/(C)]が、下記式(1);
[(A)/(B)]>0.1611×[(A)/(C)]+0.0002 (1)
に示す関係を満たすものである。
【0021】
本発明のソリュブルコーヒーは、好ましくは下記式(2)に示す関係、より好ましくは下記式(3)に示す関係を満たすと、コーヒー様の香りがより一層高められ、焦げ臭をより一層抑制することができる。
【0022】
[(A)/(B)]>0.1611×[(A)/(C)]+0.0004 (2)
[(A)/(B)]>0.1611×[(A)/(C)]+0.0006 (3)
【0023】
また、本発明のソリュブルコーヒーは、成分(D)としてカフェインを含有することができる。
本発明のソリュブルコーヒー中の(D)カフェインの含有量は、コーヒー様の香りの観点から、1質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、1.7質量%以上が更に好ましく、また焦げ臭の観点から、4質量%以下が好ましく、2.4質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。(D)カフェインの含有量の範囲としては、本発明のソリュブルコーヒー中に、好ましくは1〜4質量%、より好ましくは1.5〜2.4質量%、更に好ましくは1.7〜2質量%である。
【0024】
また、本発明のソリュブルコーヒー中の(A)クロロゲン酸類と(D)カフェインとの質量比[(A)/(D)]は、コーヒー様の香りと焦げ臭のとのバランスの観点から、0.05以上が好ましく、0.06以上がより好ましく、0.07以上が更に好ましく、0.08以上がより更に好ましく、そして0.4以下が好ましく、0.36以下がより好ましく、0.33以下が更に好ましく、0.3以下がより更に好ましい。かかる質量比[(A)/(D)]の範囲としては、好ましくは0.05〜0.4、より好ましくは0.06〜0.36、更に好ましくは0.07〜0.33、より更に好ましくは0.08〜0.3である。
【0025】
更に、本発明のソリュブルコーヒーは、コーヒー様の香りと焦げ臭とのバランスの観点から、前記質量比[(A)/(B)]と前記質量比[(A)/(D)]が、下記式(4);
[(A)/(B)]>0.0145×[(A)/(D)]+0.0002 (4)
に示す関係を満たすことが好ましい。
【0026】
本発明のソリュブルコーヒーは、好ましくは下記式(5)に示す関係、より好ましくは下記式(6)に示す関係を満たすと、コーヒー様の香りがより一層高められる。
【0027】
[(A)/(B)]>0.0145×[(A)/(D)]+0.0004 (5)
[(A)/(B)]>0.0145×[(A)/(D)]+0.0016 (6)
【0028】
また、本発明のソリュブルコーヒーは、必要により、甘味料、乳成分、ココアパウダー、酸化防止剤、香料、色素、乳化剤、保存料、調味料、酸味料、アミノ酸、たんぱく質、植物油脂、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤の1種又は2種以上を含有してもよい。
【0029】
本発明のソリュブルコーヒーは、例えば、乾燥コーヒー抽出物と、水溶性食物繊維とを、前記質量比[(A)/(B)]、前記質量比[(A)/(C)]及び前記式(1)に示す関係を満たすように配合するか、前記質量比[(A)/(B)]、前記質量比[(A)/(D)]及び前記式(4)に示す関係を満たすように配合することで製造することができる。また、コーヒー抽出物又はその濃縮物と水溶性食物繊維とを、前記質量比[(A)/(B)]、前記質量比[(A)/(C)]及び前記式(1)に示す関係を満たすように配合し乾燥するか、前記質量比[(A)/(B)]、前記質量比[(A)/(D)]及び前記式(4)に示す関係を満たすように配合し乾燥することで、ソリュブルコーヒーを製造することもできる。
【0030】
乾燥コーヒー抽出物は、例えば、深焙煎コーヒー豆から抽出されたコーヒー抽出物の中から、(A)クロロゲン酸類と(C)コーヒー抽出固形分との質量比[(A)/(C)]が0.001〜0.028であるもの、あるいは(A)クロロゲン酸類と(D)カフェインとの質量比[(A)/(D)]が0.05〜0.4であるものを選択し、乾燥することで製造することができる。抽出方法及び抽出条件は特に限定されず、公知の方法及び条件を採用することができるが、多段抽出により抽出することが好ましい。ここで、本明細書において「多段抽出」とは、複数の独立した抽出塔を配管で直列につないだ装置を用いる抽出方法であり、各抽出塔に焙煎コーヒー豆を充填し、初段の抽出塔から排出された抽出液を、順次、次の抽出塔の抽出用溶媒として使用し、コーヒー抽出物を得る方法である。多段抽出の操作及び抽出条件は、公知の方法及び条件を採用することができるが、深焙煎コーヒー豆を、加圧条件下、100℃を超える温度にて多段抽出することが好ましい。乾燥方法としては、噴霧乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。
また、乾燥コーヒー抽出物として、質量比[(A)/(C)]あるいは質量比[(A)/(D)]が前記範囲内であれば、市販のインスタントコーヒーを使用することもできる。更に、乾燥コーヒー抽出物として、焙煎度の異なる焙煎コーヒー豆から抽出されたコーヒー抽出物や、市販のインスタントコーヒーの水溶液を混合して質量比[(A)/(C)]あるいは質量比[(A)/(D)]を前記範囲内に調整し乾燥したものを使用してもよい。
【0031】
深焙煎コーヒー豆の焙煎度は、色差計で測定したL値として、14以上が好ましく、15以上がより好ましく、16以上が更に好ましく、そして25以下が好ましく、24以下がより好ましく、22以下が更に好ましい。かかるL値の範囲としては、好ましくは14〜25、より好ましくは15〜24、更に好ましくは16〜22である。ここで、本明細書において「L値」とは、黒をL値0とし、また白をL値100として、焙煎コーヒー豆の明度を色差計で測定したものである。なお、焙煎方法及び焙煎条件は特に限定されない。
抽出に使用する焙煎コーヒー豆の豆種及び産地は特に限定されず、嗜好性に応じて適宜選択することができる。また、深焙煎コーヒー豆は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。2種以上の焙煎コーヒー豆を使用する場合、豆種や産地の異なるコーヒー豆だけでなく、焙煎度の異なるコーヒー豆を使用することも可能である。焙煎度の異なるコーヒー豆を使用する場合、L値が上記範囲外のものを用いても差し支えないが、L値の平均値が上記範囲内となるように適宜組み合わせて使用することが好ましい。L値の平均値は、使用する原料焙煎コーヒー豆のL値に、当該原料焙煎コーヒー豆の含有質量比を乗じた値の総和として求められる。
【0032】
前述の実施形態に関し、本発明は更に以下のソリュブルコーヒーを開示する。
<1>
(A)クロロゲン酸類、
(B)水溶性食物繊維、及び
(C)コーヒー抽出固形分
を含み、
(A)クロロゲン酸類と(B)水溶性食物繊維との質量比[(A)/(B)]が0.0010〜0.0093であり、
(A)クロロゲン酸類と(C)コーヒー抽出固形分との質量比[(A)/(C)]が0.001〜0.028であり、かつ
前記質量比[(A)/(B)]と前記質量比[(A)/(C)]が下記式(1);
[(A)/(B)]>0.1611×[(A)/(C)]+0.0002 (1)
に示す関係を満たす、ソリュブルコーヒー。
【0033】
<2>
(D)カフェインを含み、(A)クロロゲン酸類と(D)カフェインとの質量比[(A)/(D)]が0.05〜0.4である、前記<1>記載のソリュブルコーヒー。
<3>
前記質量比[(A)/(B)]と前記質量比[(A)/(D)]が下記式(4)に示す関係を満たす、前記<2>記載のソリュブルコーヒー。
[(A)/(B)]>0.0145×[(A)/(D)]+0.0002 (4)
【0034】
<4>
(A)クロロゲン酸類、
(B)水溶性食物繊維、及び
(D)カフェイン
を含み、
(A)クロロゲン酸類と(B)水溶性食物繊維との質量比[(A)/(B)]が0.0010〜0.0093であり、
(A)クロロゲン酸類と(D)カフェインとの質量比[(A)/(D)]が0.05〜0.4であり、かつ
前記質量比[(A)/(B)]と前記質量比[(A)/(D)]が下記式(4);
[(A)/(B)]>0.0145×[(A)/(D)]+0.0002 (4)
に示す関係を満たす、ソリュブルコーヒー。
【0035】
<5>
(C)コーヒー抽出固形分を含み、(A)クロロゲン酸類と(C)コーヒー抽出固形分との質量比[(A)/(C)]が0.001〜0.028である、前記<4>記載のソリュブルコーヒー。
<6>
前記質量比[(A)/(B)]と前記質量比[(A)/(C)]が下記式(1)に示す関係を満たす、前記<5>記載のソリュブルコーヒー。
[(A)/(B)]>0.1611×[(A)/(C)]+0.0002 (1)
【0036】
<7>
ソリュブルコーヒー中の固形分量が、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上であり、また100質量%であってもよい、前記<1>〜<6>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<8>
クロロゲン酸類が、好ましくは3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸、5−カフェオイルキナ酸、3−フェルラキナ酸、4−フェルラキナ酸、5−フェルラキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸及び4,5−ジカフェオイルキナ酸から選択される1種又は2種以上であり、更に好ましくは前記9種すべてである、前記<1>〜<7>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<9>
(A)クロロゲン酸類の含有量が、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であって、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下である、前記<1>〜<8>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<10>
(A)クロロゲン酸類の含有量が、好ましくは0.05〜2質量%、より好ましくは0.05〜1.5質量%、更に好ましくは0.08〜1質量%、より更に好ましくは0.1〜0.5質量%である、前記<1>〜<9>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
【0037】
<11>
(B)水溶性食物繊維が、好ましくは難消化性デキストリン、ポリデキストロース、分岐マルトデキストリン、グアーガム分解物、ガラクトマンナン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、ペクチン、ラミナリン、フコイジン、カラギーナン及び直鎖グルカンから選択される1種又は2種以上であり、より好ましくは難消化性デキストリン及びポリデキストロースから選択される少なくとも1種であり、更に好ましくは難消化性デキストリンである、前記<1>〜<10>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<12>
難消化性デキストリンが、好ましくはトウモロコシ、馬鈴薯、甘藷、小麦、米、もち米及びタピオカから選択される植物由来であり、更に好ましくはトウモロコシ由来である、前記<11>記載のソリュブルコーヒー。
<13>
難消化性デキストリンのデキストロース当量が、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは7以上、より更に好ましくは8以上、殊更に好ましくは9以上であって、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、更に好ましくは23以下、より更に好ましくは20以下、殊更に好ましくは15以下である、前記<11>又は<12>記載のソリュブルコーヒー。
<14>
難消化性デキストリンのデキストロース当量が、好ましくは1〜30、より好ましくは5〜25、更に好ましくは7〜23、より更に好ましくは8〜20、より更に好ましくは9〜15である、前記<11>〜<13>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<15>
(B)水溶性食物繊維の含有量が、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上であって、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下、より更に好ましくは72質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下である、前記<1>〜<14>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<16>
(B)水溶性食物繊維の含有量が、好ましくは30〜85質量%、より好ましくは40〜80質量%、更に好ましくは50〜75質量%、より更に好ましくは50〜72質量%、より更に好ましくは60〜70質量%である、前記<1>〜<15>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<17>
(A)クロロゲン酸類と(B)水溶性食物繊維との質量比[(A)/(B)]が、好ましくは0.0011以上、より好ましくは0.0013以上、更に好ましくは0.0015以上であって、好ましくは0.0088以下、より好ましくは0.0084以下、更に好ましくは0.0082以下である、前記<1>〜<16>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<18>
(A)クロロゲン酸類と(B)水溶性食物繊維との質量比[(A)/(B)]が、好ましくは0.0011〜0.0088、より好ましくは0.0013〜0.0084、更に好ましくは0.0015〜0.0082である、前記<1>〜<17>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<19>
(C)コーヒー抽出固形分の含有量が、好ましくは15質量%以上、より好ましくは18質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であって、好ましくは41質量%以下、より好ましくは33質量%以下、更に好ましくは23質量%以下である、前記<1>〜<3>、<5>〜<18>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<20>
(C)コーヒー抽出固形分の含有量が、好ましくは15〜41質量%、より好ましくは18〜33質量%、更に好ましくは20〜23質量%である、前記<1>〜<3>、<5>〜<19>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
【0038】
<21>
(A)クロロゲン酸類と(C)コーヒー抽出固形分との質量比[(A)/(C)]が、好ましくは0.003以上、より好ましくは0.007以上、更に好ましくは0.010以上であって、好ましくは0.026以下、より好ましくは0.024以下、更に好ましくは0.022以下である、前記<1>〜<3>、<5>〜<20>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<22>
(A)クロロゲン酸類と(C)コーヒー抽出固形分との質量比[(A)/(C)]が、好ましくは0.003〜0.026、より好ましくは0.007〜0.024、更に好ましくは0.010〜0.022である、前記<1>〜<3>、<5>〜<21>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<23>
前記質量比[(A)/(B)]と前記質量比[(A)/(C)]が、好ましくは下記式(2)に示す関係、より好ましくは下記式(3)に示す関係を満たす、前記<1>〜<3>、<6>〜<22>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
[(A)/(B)]>0.1611×[(A)/(C)]+0.0004 (2)
[(A)/(B)]>0.1611×[(A)/(C)]+0.0006 (3)
<24>
(D)カフェインの含有量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは1.7質量%以上であって、好ましくは4質量%以下、より好ましくは2.4質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である、前記<2>〜<23>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<25>
(D)カフェインの含有量が、好ましくは1〜4質量%、より好ましくは1.5〜2.4質量%、更に好ましくは1.7〜2質量%である、前記<2>〜<24>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<26>
(A)クロロゲン酸類と(D)カフェインとの質量比[(A)/(D)]が、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.07以上、より更に好ましくは0.08以上であって、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.36以下、更に好ましくは0.33以下、より更に好ましくは0.3以下である、前記<2>〜<25>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<27>
(A)クロロゲン酸類と(D)カフェインとの質量比[(A)/(D)]が、好ましくは0.05〜0.4、より好ましくは0.06〜0.36、更に好ましくは0.07〜0.33、より更に好ましくは0.08〜0.3である、前記<2>〜<26>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<28>
前記質量比[(A)/(B)]と前記質量比[(A)/(D)]が、好ましくは下記式(5)に示す関係、より好ましくは下記式(6)に示す関係を満たす、前記<3>〜<27>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
[(A)/(B)]>0.0145×[(A)/(D)]+0.0004 (5)
[(A)/(B)]>0.0145×[(A)/(D)]+0.0016 (6)
<29>
好ましくは甘味料、乳成分、ココアパウダー、酸化防止剤、香料、色素、乳化剤、保存料、調味料、酸味料、アミノ酸、たんぱく質、植物油脂、pH調整剤及び品質安定剤から選択される1種又は2種以上の添加剤を含有する、前記<1>〜<28>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<30>
L値が、好ましくは14以上、より好ましくは15以上、更に好ましくは16以上であって、好ましくは25以下、より好ましくは24以下、更に好ましくは22以下である焙煎コーヒー豆に由来するものである、前記<1>〜<29>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
<31>
L値が、好ましくは14〜25、より好ましくは15〜24、更に好ましくは16〜22である焙煎コーヒー豆に由来するものである、前記<1>〜<30>のいずれか一に記載のソリュブルコーヒー。
【実施例】
【0039】
1.クロロゲン酸類及びカフェインの分析
分析機器はHPLCを使用した。装置の構成ユニットの型番は次の通りである。
・UV−VIS検出器:L−2420(日立ハイテクノロジーズ社製)
・カラムオーブン:L−2300(日立ハイテクノロジーズ社製)
・ポンプ:L−2130(日立ハイテクノロジーズ社製)
・オートサンプラー:L−2200(日立ハイテクノロジーズ社製)
・カラム:Cadenza CD−C18 φ4.6×150mm、粒子径3μm(インタクト社製)
【0040】
分析条件は次の通りである。
・ル注入量 :10μL
・流量 :1.0mL/min
・UV−VIS検出器設定波長:325nm
・カラムオーブン設定温度:35℃
・溶離液A:0.05M 酢酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、10mM 酢酸ナトリウム、5(V/V)%アセトニトリル溶液
・溶離液B:アセトニトリル
【0041】
濃度勾配条件(体積%)
時間 溶離液A 溶離液B
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
15.0分 95% 5%
20.0分 95% 5%
22.0分 92% 8%
50.0分 92% 8%
52.0分 10% 90%
60.0分 10% 90%
60.1分 100% 0%
70.0分 100% 0%
【0042】
HPLCでは、試料1gを精秤後、溶離液Aにて10mLにメスアップし、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A,孔径0.45μm,ジーエルサイエンス(株))にて濾過後、分析に供した。
【0043】
クロロゲン酸類の保持時間(単位:分)9種のクロロゲン酸類
・モノカフェオイルキナ酸:5.3、8.8、11.6の計3点
・モノフェルラキナ酸:13.0、19.9、21.0の計3点
・ジカフェオイルキナ酸:36.6、37.4、44.2の計3点。
ここで求めた9種のクロロゲン酸類の面積値から5−カフェオイルキナ酸を標準物質とし、質量%を求めた。
なお、カフェインの分析は、UV−VIS 検出器設定波長:270nm、カフェインを標準物質とした以外はクロロゲン酸類と同様に実施した。カフェインの保持時間は18.9分である。
【0044】
2.難消化性デキストリンの分析
(1)定量法
試料約1〜5gを精密に量り(Sp)、0.08mol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)を加え50mLにした。これに熱安定性α−アミラーゼ(ターマミル120L:ノボザイムズ社)0.1mLを加え、沸騰水浴中に入れ、30分間振とうした。放冷後、0.275mol/L水酸化ナトリウム溶液10mLでpHを7.5±0.1に調整した。たんぱく分解酵素溶液(プロテアーゼP-5380:シグマ社)0.1mLを加え、60℃で振とうしながら30分間反応させた。放冷後、0.325mol/L塩酸10mLで、pHを4.3±0.3に調整した。次いで、アミログルコシダーゼ(アミログルコシダーゼA-9913:シグマ社)0.1mLを加え、60℃で振とうしながら30分間反応させた。以上の酵素処理を終了後、直ちに沸騰水浴中で10分間加熱した後冷却し、10W/V%グリセリン溶液(内部標準物質)3mLを加え水で100mLとし酵素処理液とした。
酵素処理液50mLをイオン交換樹脂〔アンバーライトIRA-67(OH型,オルガノ社):アンバーライト200CT(H型,オルガノ社)=1:1(容量比)〕50mLを充填したカラム(ガラス管、φ20mm×300mm)に通液速度50mL/hrで通液し、更に水を通して流出液の全量を約200mLとした。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、全量を水で10mLとした後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、検液とした。検液20μLにつきHPLCにより、検液のグリセリン及び食物繊維画分のピーク面積値を測定し、次式により食物繊維成分含量を求めた。
【0045】
食物繊維成分含量(%)=〔X
1/Y
1〕×f
1×〔Z
1/Sp〕×100
〔式中、X
1は食物繊維成分のピーク面積を示し、Y
1はグリセリンのピーク面積を示し、f
1はグリセリンとブドウ糖のピーク感度補正係数(0.82)を示し、Z
1は内部標準グリセリン重量(mg)を示し、Spは秤取試料重量(mg)を示す。〕
【0046】
HPLC分析
・検出器 :示差屈折計
・カラム充填剤:TSKgel G2500PW
XL
・カラム管 :φ7.8mm×300mm
・カラム温度:80℃
・移動相 :水
・流速 :0.5mL/min
・注入量 :20μL
【0047】
(2)デキストロース当量
試料2.5gを正確に量り、水に溶かして200mLとする。この液10mLを正確に量り、0.04mol/Lヨウ素溶液10mLと、0.04mol/L水酸化ナトリウム溶液15mLを加えて20分間暗所に放置する。次に、2mol/L塩酸を5mL加えて混和した後、0.04mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する。滴定の終点近くで液が微黄色になったら、でんぷん指示薬2滴を加えて滴定を継続し、液の色が消失した時点を滴定の終点とする。別に空試験を行う。次式によりデキストロース当量(DE)を求める。
【0048】
DE=(b−a)×f×3.602/(1/1000)/(200/10)/[A×(100−B)×100]×100
〔式中、aは滴定値(mL)を示し、bはブランク値(mL)を示し、fはチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター値を示し、Aは試料の秤取量(mg)を示し、Bは試料の水分値(%)を示す。〕
【0049】
3.官能評価
ソリュブルコーヒーを80℃の熱水140mLに注ぎ、攪拌した後、コーヒー飲料を調製した。その後、コーヒー飲料を専門パネル4名が試飲し、コーヒー様の香り、焦げ臭について下記基準にて評価し、その後協議により評点を決定した。
【0050】
1)コーヒー様の香り
実施例1のコーヒー飲料のコーヒー様の香りを評点5とし、比較例3のコーヒー飲料のコーヒー様の香りを評点2として、下記の5段階で評価を行った。
5:コーヒー様の香りが強い
4:コーヒー様の香りやや強い
3:コーヒー様の香りがある
2:コーヒー様の香りがやや弱い
1:コーヒー様の香りがない
【0051】
2)焦げ臭
実施例4のコーヒー飲料の焦げ臭を評点5とし、比較例1のコーヒー飲料の焦げ臭を評点1として、下記の5段階で評価を行った。
5:焦げ臭がない
4:焦げ臭がほとんどない
3:焦げ臭がややある
2:焦げ臭がある
1:焦げ臭が強い
【0052】
製造例1
L15.5の焙煎コーヒー豆を、円筒状抽出搭(内径160mm×高さ660mm)6本に、1搭当たりの充填量が4.2kgとなるように充填した。次いで180℃の熱水を1段目の抽出搭の下部から上部へ送液した。次いで1段目の抽出搭上部から排出されたコーヒー抽出液を、2段目の抽出搭下部から上部へ送液した。この操作を3段目以降の抽出塔についても繰り返し行い、6段目の抽出搭の上部から排出されたコーヒー抽出液を、速やかに冷却するとともに回収した。抽出は全て0.3MPa(2次バルブ圧)の加圧下で行った。得られた抽出液をロータリーエバポレーター(N−1100V型、東京理科器械(株)社製)を用い30torr、50℃にて減圧加熱濃縮し、Brix10の濃縮組成物を得た。本濃縮液を、スプレードライヤー(Pulvis GB22:ヤマト科学株式会社製)にて乾燥した後、乾燥コーヒー抽出物を得た。得られた乾燥コーヒー抽出物は、固形分中のクロロゲン酸類の含有量が0.0050質量%であった。
【0053】
製造例2
L15.5の焙煎コーヒー豆の代わりに、L18の焙煎コーヒー豆を用いたこと以外は製造例1と同様の操作により乾燥コーヒー抽出物を得た。得られた乾燥コーヒー抽出物は、固形分中のクロロゲン酸類の含有量が0.0170質量%であった。
【0054】
製造例3
L15.5の焙煎コーヒー豆の代わりに、L20の焙煎コーヒー豆を用いたこと以外は製造例1と同様の操作により乾燥コーヒー抽出物を得た。得られた乾燥コーヒー抽出物は、固形分中のクロロゲン酸類の含有量が0.0250質量%であった。
【0055】
実施例1
製造例1で得られた乾燥コーヒー抽出物2.0gと、水溶性食物繊維(ファイバーソルII、松谷化学株式会社製)3.0gとを混合し、ソリュブルコーヒーを得た。得られたソリュブルコーヒーについて、分析及び官能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0056】
実施例2〜5及び比較例1〜3
水溶性食物繊維(ファイバーソルII、松谷化学株式会社製)の配合量を表1に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作によりソリュブルコーヒーを得た。得られたソリュブルコーヒーについて、分析及び官能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例6
製造例2で得られた乾燥コーヒー抽出物2.0gと、水溶性食物繊維(ファイバーソルII、松谷化学株式会社製)4.5gとを混合し、ソリュブルコーヒーを得た。得られたソリュブルコーヒーについて、分析及び官能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0059】
実施例7〜10及び比較例4、5
水溶性食物繊維(ファイバーソルII、松谷化学株式会社製)の配合量を表2に示す量に変更したこと以外は、実施例6と同様の操作によりソリュブルコーヒーを得た。得られたソリュブルコーヒーについて、分析及び官能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例11
製造例3で得られた乾燥コーヒー抽出物2.0gと、水溶性食物繊維(ファイバーソルII、松谷化学株式会社製)6.6gとを混合し、ソリュブルコーヒーを得た。得られたソリュブルコーヒーについて、分析及び官能評価を行った。その結果を表3に示す。
【0062】
実施例12〜15及び比較例6、7
水溶性食物繊維(ファイバーソルII、松谷化学株式会社製)の配合量を表3に示す量に変更したこと以外は、実施例11と同様の操作によりソリュブルコーヒーを得た。得られたソリュブルコーヒーについて、分析及び官能評価を行った。その結果を表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
表1〜3から、ソリュブルコーヒーに(B)水溶性食物繊維を含有させ、(A)クロロゲン酸類と(B)水溶性食物繊維との質量比、及び(A)クロロゲン酸類と(C)コーヒー抽出固形分との質量比が特定の範囲にあるとともに、これらの質量比が一定の関係を満たすように制御することにより、コーヒー様の香りが豊かで、焦げ臭の抑制されたコーヒー飲料が得られることが分かる。