(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内周側油路及び前記外周側油路のそれぞれは少なくとも1つの孔を有し、前記外周側油路を構成する各孔の径は、前記内周側油路を構成する各孔の径より小さい、請求項1から3のいずれかに記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
前記ピストンの内周面と前記スリーブの外周面との間、及び前記ピストンの外周面と前記油室プレートの筒状部の内周面との間をそれぞれシールするシール部材をさらに備えた、請求項5に記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のロックアップ装置において、油室の作動油を導く油路は、ボスの内周側から外周側に貫通する孔で形成されている。このような構成では、油室に流入する油量を制限できないために、ピストンが勢い良く作動し、クラッチプレートの圧接時に、すなわちクラッチオン時にショックが発生する。
【0007】
また、ロックアップ装置のクラッチ容量を大きくするためには、クラッチプレートのサイズが大きくなり、それに伴ってボスの外径も大きくする必要がある。このような状況では、ボスの形成される油路(孔)の長さが、孔径に対して非常に長くなり、加工が困難になる。
【0008】
本発明の課題は、ロックアップ装置のクラッチオン時のショックを緩和でき、しかも油室に作動油を導く油路を形成しやすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るトルクコンバータのロックアップ装置は、フロントカバーからのトルクを、タービンを介してトランスミッション側の部材に伝達するための装置である。このロックアップ装置は、クラッチ部と、ピストンと、スリーブと、油室と、を備えている。クラッチ部はフロントカバーとタービンとの間に配置されている。ピストンは、軸方向に移動自在に配置され、クラッチ部をトルク伝達状態にする。スリーブはピストンの内周面を軸方向に移動自在に支持する。油室は、クラッチ部がトルク伝達状態になるようにピストンを作動させるための作動油が供給される。そして、スリーブは、スリーブの内周側の作動油を外周側に導く内周側油路と、内周側油路からの作動油を油室に導く外周側油路と、を有する。
【0010】
この装置では、スリーブの内周側油路及び外周側油路を介して油室に作動油が供給され、これによりピストンが軸方向に移動し、クラッチ部はトルク伝達状態になる。
【0011】
ここでは、スリーブに、内周側油路と外周側油路とを別々に形成しているので、外周側油路を内周側油路より狭くしてオリフィス効果を得る等の対策をすることが容易になる。このため、油路を流れる作動油の速度等を制御したり、オイルポンプの脈動を抑えたりして、クラッチオン時のショックを緩和することが容易になる。
【0012】
また、スリーブ内で油路を分断しているために、各油路を別々に加工でき、スリーブの外径が大きくなっても、孔加工が容易になる。
【0013】
(2)好ましくは、内周側油路と外周側油路とは、トルクコンバータの回転軸線に対する角度が異なっている。
【0014】
ここでは、内周側油路と外周側油路とを別々の方向から加工することができる。したがって、加工が容易になる。
【0015】
(3)好ましくは、外周側油路は回転軸線に対して直交している。このため、回転によって油路から作動油が放出されやすくなる。
【0016】
(4)好ましくは、スリーブは、内周側油路と外周側油路との間に形成された油溜まりをさらに有する。
【0017】
ここでは、油溜まりを設けることによって、外周側油路のオリフィス効果をより効果的にすることができる。また、内周側油路と外周側油路とが油溜まりを介して連通することになるので、各油路を構成する孔の位置合わせが不要になり、加工が容易になる。
【0018】
(5)好ましくは、外周側油路の流路面積は内周側油路の流路面積より小さい。このため、前述のように、オリフィス効果を得ることができ、クラッチオン時のショックを緩和できる。
【0019】
(6)好ましくは、内周側油路及び外周側油路のそれぞれは少なくとも1つの孔を有し、外周側油路を構成する各孔の径は、内周側油路を構成する各孔の径より小さい。ここでは、前記同様に、オリフィス効果を得ることができ、クラッチオン時のショックを緩和できる。
【0020】
(7)好ましくは、この装置は、スリーブの外周部にピストンと軸方向に対向して設けられ、ピストンとともに油室を構成する油室プレートをさらに備えている。
【0021】
(8)好ましくは、油室プレートは、ピストンの外周面を移動自在に支持する筒状部を有する。
【0022】
(9)好ましくは、この装置は、ピストンの内周面とスリーブの外周面との間、ピストンの外周面と油室プレートの筒状部の内周面との間をそれぞれシールするシール部材をさらに備えている。
【発明の効果】
【0023】
以上のような本発明では、ロックアップ装置のクラッチオン時のショックを緩和でき、しかも油室に作動油を導く油路の形成が容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の一実施形態によるロックアップ装置を有するトルクコンバータ1の断面部分図である。
図1の左側にはエンジン(図示せず)が配置され、図の右側にトランスミッション(図示せず)が配置されている。なお、
図1に示すO−Oがトルクコンバータ及びロックアップ装置の回転軸線である。また、以下では、回転軸から離れる方向を「径方向」とし、回転軸に沿う方向を「軸方向」とする。
【0026】
[トルクコンバータ1の全体構成]
トルクコンバータ1は、エンジン側のクランクシャフト(図示せず)からトランスミッションの入力シャフトにトルクを伝達するための装置である。
図1に示すように、トルクコンバータ1は、フロントカバー2と、トルクコンバータ本体6と、ロックアップ装置7とから、構成されている。
【0027】
フロントカバー2は入力側の部材に固定される。フロントカバー2は、実質的に円板状の部材であり、その外周部にはトランスミッション側に突出する外周筒状部10が形成されている。
【0028】
トルクコンバータ本体6は、3種の羽根車(インペラ3、タービン4、及びステータ5)から構成されている。
【0029】
インペラ3は、フロントカバー2の外周筒状部10に溶接により固定されたインペラシェル12と、インペラシェル12の内側に固定された複数のインペラブレード13と、インペラシェル12の内周側に設けられた筒状のインペラハブ14とから、構成されている。
【0030】
タービン4は、流体室内でインペラ3に対向して配置されている。タービン4は、タービンシェル15と、タービンシェル15の内側に固定された複数のタービンブレード16と、タービンシェル15の内周側に固定されたタービンハブ17と、から構成されている。タービンハブ17は、径方向外側に延びるフランジ17aを有している。フランジ17aには、タービンシェル15の内周部が、複数のリベット(図示せず)又は溶接によって固定されている。また、タービンハブ17の内周部には、トランスミッションの入力シャフト(図示せず)が係合するスプライン孔が形成されている。
【0031】
ステータ5は、インペラ3とタービン4の内周部間に配置され、タービン4からインペラ3に戻る作動油を整流する。ステータ5は、主に、ステータキャリア20と、その外周面に設けられた複数のステータブレード21と、から構成されている。ステータキャリア20は、ワンウエイクラッチ22を介して、固定シャフトに支持されている。なお、ステータキャリア20の軸方向両側には、スラストベアリング24,25が設けられている。
【0032】
[ロックアップ装置7]
図1及び
図2に示すように、ロックアップ装置7は、フロントカバー2とタービン4との間の空間に配置されている。ロックアップ装置7は、クラッチユニット28と、ダンパ部29と、を有している。
【0033】
<クラッチユニット28>
図1及び
図2に示すように、クラッチユニット28は多板型のクラッチである。クラッチユニット28は、複数のクラッチプレート31(クラッチ部)と、ピストン32と、スリーブ33及び油室プレート34からなる支持部材35と、を有している。
【0034】
−クラッチプレート31−
複数のクラッチプレート31は、フロントカバー2とピストン32との間に配置されている。複数のクラッチプレート31は、2枚の第1クラッチプレート31aと、2枚の第2クラッチプレート31bと、を有している。第1クラッチプレート31a及び第2クラッチプレート31bのそれぞれは、環状に形成され、軸方向に交互に並べて配置されている。第1クラッチプレート31aの内周部には、複数の歯が形成されている。第1クラッチプレート31a及び第2クラッチプレート31bそれぞれの片面には、摩擦フェーシングが固定されている。第2クラッチプレート31bの外周部には、複数の歯が形成されている。
【0035】
−ピストン32−
ピストン32は、環状に形成され、フロントカバー2のトランスミッション側に配置されている。ピストン32は、支持部材35に軸方向に移動自在に支持されている。ピストン32は、押圧部32aと、複数の係合凸部32bと、を有する。押圧部32aは、複数のクラッチプレート31をフロントカバー2側に押圧する部分である。押圧部32aは、軸方向において複数のクラッチプレート31に対向するように、ピストン32の外周部に設けられている。係合凸部32bは、ピストン32の内周部に、内周側に突出して形成されている。
図3に示すように、複数の係合凸部32bは周方向に所定の間隔で形成されている。なお、
図3はピストン32をフロントカバー2側から視た正面図である。
【0036】
−支持部材35−
支持部材35を構成するスリーブ33は、フロントカバー2側の側面に、軸方向に突出する環状凸部33aを有している。したがって、環状凸部33aの内周側及び外周側には、フロントカバー2との間に隙間が形成されている。環状凸部33aはフロントカバー2の側面に溶接等により固定されており、スリーブ33はフロントカバー2と同期して回転する。また、スリーブ33の外周部において、タービン4側の端部には、径方向外方に突出する環状のフランジ33bが形成されている。
【0037】
スリーブ33には、第1クラッチプレート31aを支持するドライブハブ37が固定されている。ドライブハブ37は、実質的に円環状のハブ本体37aと、ハブ本体37aの外周部をフロントカバー2側に折り曲げて形成された筒状部37bと、を有する。
【0038】
ハブ本体37aは、スリーブ33のフロントカバー2側の側面に固定されている。筒状部37bには、軸方向に延びる複数のスリット37cが、周方向に所定の間隔で形成されている。スリット37cはフロントカバー2側が開放している。この複数のスリット37cに、第1クラッチプレート31aの内周部に形成された歯が係合している。これにより、第1クラッチプレート31aは、ドライブハブ37すなわちスリーブ33に対して、相対回転不能であり、かつ軸方向に相対移動が可能である。
【0039】
支持部材35を構成する油室プレート34は、ピストン32のタービン4側に配置されている。油室プレート34は、円板状の本体部34aと、本体部34aの外周部に形成された筒状部34bと、を有している。本体部34aは、内周部がスリーブ33のフランジ33bに固定されている。筒状部34bは、本体部34aの外周部をフロントカバー2側に折り曲げて形成されている。そして、この筒状部34bによって、ピストン32の外周部が軸方向に移動自在に支持されている。
【0040】
<油室プレート34の支持構造>
油室プレート34は、本体部34aの内周部が、スリーブ33のフランジ33bのフロントカバー2側の側面に溶接により固定されている。ここで、油室プレート34は、油室プレート34とピストン32との間に油室(後述する第1油室C1)を構成するための部材である。したがって、油室に作動油が供給されると、油室プレート34には、ピストン32から離れる側の力が作用する。しかし、油室プレート34は、力が作用する側とは逆側、すなわちフランジ33bのピストン32側の側面に固定されているので、油圧によって油室プレート34が受ける力はフランジ33bによって支持され、油室プレート34の変形を抑えることができる。
【0041】
<同期機構>
ドライブハブ37のスリット37cには、ピストン32の各係合凸部32bが係合する。これにより、ピストン32は、ドライブハブ37を介して、スリーブ33及びフロントカバー2と同期して回転する。すなわち、ドライブハブ37のスリット37cとピストン32の係合凸部32bとによって、ピストン32を支持部材35の回転と同期させるための同期機構が構成されている。
【0042】
なお、スリット37cとピストン32の係合凸部32bとは、ピストン32の全移動範囲にわたって係合している。このため、ピストン32が軸方向に移動しても、両者の係合が外れることはない。
【0043】
<油圧回路>
スリーブ33の外周面にはシール部材S1が設けられ、スリーブ33の外周面とピストン32の内周面との間がシールされている。また、ピストン32の外周面にはシール部材S2が設けられ、ピストン32の外周面と油室プレート34の筒状部34bの内周面との間がシールされている。このような構成により、ピストン32と油室プレート34との間に、ピストン32をクラッチプレート31に対して押圧するための第1油室C1が形成されている。
【0044】
スリーブ33には、タービンハブ17の内周部から供給される作動油を第1油室C1に供給するための油圧回路が形成されている。油圧回路は、第1油路P1と、第2油路P2と、油溜まりPhと、を有している。
【0045】
油溜まりPhはスリーブ33のタービン4側の側面に形成されている。より詳細には、スリーブ33のタービン4側の側面には、フロントカバー2側に凹む環状の溝33cが形成されている。そして、この溝33cを塞ぐように、環状のプレート39がスリーブ33に固定されている。すなわち、溝33c及びプレート39によって油溜まりPhが形成されている。
【0046】
第1油路P1は、スリーブ33の環状凸部33aの内周面から油溜まりPhに向かって形成されている。第1油路P1は、複数の孔から構成されており、各孔は内周から外周側にかけてタービン4に近づくように傾斜している。
【0047】
第2油路P2は、油溜まりPhと第1油室C1とを連通するように形成されている。第2油路は、複数の孔から構成されており、各孔は回転軸線に対して直交するように放射状に形成されている。すなわち、第1油路P1と第2油路P2とは、回転軸線に対して異なる角度で形成されている。
【0048】
なお、第2油路P2の全流路面積は、第1油路P1の全流路面積より小さく設定されている。また、第2油路P2を構成する各孔の径は、第1油路P1を構成する各孔の径よりも小さい。このような構成により、作動油が第1油路P1及び第2油路P2を流通する際にオリフィス効果を得ることができ、第2油路P2から流出する作動油の速度、及びオイルポンプの脈動を抑えることができ、クラッチオン時のショックを緩和することができる。しかも、この実施形態では、第1油路P1と第2油路P2との間に油溜まりPhが形成されているので、さらにオイルポンプの脈動を抑えることができる。
【0049】
また、スリーブ33の内周部とタービンハブ17との間には、第2油室C2が形成されている。この第2油室C2には、タービンハブ17のフランジ17aに形成された孔17bから作動油が供給される。そして、スリーブ33には、第2油室C2とクラッチプレート31が配置された空間との間を連通する第3油路P3が形成されている。
【0050】
<ダンパ部29>
ダンパ部29は、フロントカバー2から入力される振動を減衰する。
図4に示すように、ダンパ部29は、入力側プレート40と、内周側トーションスプリング41と、中間プレート42と、外周側トーションスプリング43と、ドリブンプレート44と、を有している。
【0051】
−入力側プレート40−
入力側プレート40は、クラッチユニット28の出力側に設けられている。具体的には、入力側プレート40は、第1サイドプレート45と、第2サイドプレート46と、を有している。
【0052】
第1サイドプレート45はエンジン側に配置されている。第1サイドプレート45は、フロントカバー2側に延びる第1クラッチ係合部45aと、複数の第1スプリング係合部45bとを、有している。
【0053】
第1クラッチ係合部45aは実質的に筒状に形成されている。第1クラッチ係合部45aには、軸方向に延びる複数の溝が周方向に所定の間隔で形成されている。複数の溝には、第2クラッチプレート31bの外周部に形成された歯が係合している。したがって、第2クラッチプレート31bと第
1サイドプレート4
5とは、相対回転不能であり、かつ軸方向に相対移動が可能である。
【0054】
複数の第1スプリング係合部45bは、第1クラッチ係合部45aのタービン側から径方向内側に延びた部分に形成されている。具体的には、複数の第1スプリング係合部45bは、周方向に所定の間隔を隔てて配置される窓部である。各第1スプリング係合部45bの内周部及び外周部には、軸方向に切り起こされた切り起こし部が、形成されている。各第1スプリング係合部45bには、内周側トーションスプリング41が配置される。また、各第1スプリング係合部45bにおいて周方向に対向する1対の壁部が、内周側トーションスプリング41の両端部に係合している。
【0055】
第2サイドプレート46はトランスミッション側に配置されている。第2サイドプレート46は、軸方向において、第1サイドプレート45と所定の間隔を隔てて配置されている。第2サイドプレート46は複数のスタッドピン47によって、第1サイドプレート45に一体回転可能に固定されている。
【0056】
第2サイドプレート46は複数の第2スプリング係合部46aを有している。複数の第2スプリング係合部46aは、周方向に所定の間隔を隔てて配置された窓部である。各第2スプリング係合部46aは、軸方向において、各第1スプリング係合部45bに対向して配置されている。各第2スプリング係合部46aの内周部と外周部には、軸方向に切り起こされた切り起こし部が形成されている。各第2スプリング係合部46aには、内周側トーションスプリング41が配置されている。また、各第2スプリング係合部46aにおいて周方向に対向する1対の壁部が、内周側トーションスプリング41の両端部に係合している。
【0057】
−内周側トーションスプリング41−
複数の内周側トーションスプリング41が周方向に並べて配置されている。
【0058】
複数の内周側トーションスプリング41のそれぞれは、大コイルスプリング41aと、小コイルスプリング41bと、から構成されている。小コイルスプリング41bは、大コイルスプリング41aの内部に挿入され、大コイルスプリング41aのスプリング長より短い。
【0059】
各内周側トーションスプリング41は、各サイドプレート45,46における第1スプリング係合部45b(窓部)及び第2スプリング係合部46a(窓部)と、後述する中間プレート42の第3スプリング係合部42a(窓部)と、に配置されている。各内周側トーションスプリング41は、第1から第3スプリング係合部45b,46a,42a(窓部)によって、周方向両端及び径方向両側が支持されている。また、各内周側トーションスプリング41は、第1及び第2スプリング係合部45b,46a(窓部)の切り起こし部によって、軸方向への飛び出しが規制されている。
【0060】
−中間プレート42−
中間プレート42は、第1サイドプレート45と第2サイドプレート46との軸方向間に配置されている。中間プレート42は、各サイドプレート45,46及びドリブンプレート44に対して相対回転可能である。中間プレート42は、内周側トーションスプリング41と外周側トーションスプリング43とを直列に作動させるための部材である。
【0061】
中間プレート42の外周部は、実質的に筒状に形成され、且つタービン4側が開口している。中間プレート42の外周筒状部は、外周側トーションスプリング43を保持している。また、外周筒状部の開口には、後述するドリブンプレート44の第5スプリング係合部44bが配置されている。
【0062】
中間プレート42は、複数の第3スプリング係合部42aと、複数の第4スプリング係合部42bと、長孔42dと、を有している。
【0063】
複数の第3スプリング係合部42aのそれぞれは、中間プレート42の内周部に設けられ、内周側トーションスプリング41に係合する。複数の第3スプリング係合部42aは、周方向に所定の間隔を隔てて配置された窓部である。各第3スプリング係合部42aは、軸方向において、各第1及び第2スプリング係合部45b,46aに対向するように、各第1及び第2スプリング係合部
45b,46aの間に配置されている。各第3スプリング係合部42aには、内周側トーションスプリング41が配置される。また、各第3スプリング係合部42aにおいて周方向に対向する1対の壁部が、内周側トーションスプリング41の両端部に係合している。
【0064】
複数の第4スプリング係合部42bのそれぞれは、中間プレート42の外周部に周方向に所定の間隔で設けられ、外周側トーションスプリング43に係合する。各第4スプリング係合部42bは、外周側トーションスプリング43の両端部に係合している。詳細には、各第4スプリング係合部42bは、外周側トーションスプリング43の両端部の内周側及び外周側に係合している。
【0065】
長孔42dは周方向に延びて形成されている。長孔42dには、スタッドピン47が挿通されている。詳細には、長孔42dにはスタッドピン47の胴部が挿通される。この状態において、スタッドピン47の両端部が、第1サイドプレート45及び第2サイドプレート46に固定される。このスタッドピン47を介して、中間プレート42は、第1及び第2サイドプレート45,46に対して相対回転可能に装着されている。
【0066】
−外周側トーションスプリング43−
複数の外周側トーションスプリング43は周方向に並べて配置されている。また、複数の外周側トーションスプリング43は、クラッチユニット28より径方向外側に配置されている。
【0067】
複数の外周側トーションスプリング43は、中間プレート42の外周部に保持され、中間プレート42を介して内周側トーションスプリング41と直列に作動する。
【0068】
各外周側トーションスプリング43の周方向両端は、中間プレート42の第4スプリング係合部42bによって支持されている。また、各外周側トーションスプリング43は、周方向に隣接する2つの第4スプリング係合部42bの間において、中間プレート42の外周部(筒状部)によって、径方向外側への飛び出しが規制されている。さらに、各外周側トーションスプリング43の周方向両端部は、ドリブンプレート44の第5スプリング係合部44bに当接している。
【0069】
−ドリブンプレート44−
ドリブンプレート44は、環状かつ円板状の部材であり、タービンシェル15に固定されている。また、ドリブンプレート44は中間プレート42に対して相対回転可能である。
【0070】
ドリブンプレート44は、本体部44aと、複数の第5スプリング係合部44bと、第1ストッパ爪44cと、第2ストッパ爪44dと、を有している。
【0071】
本体部44aは、実質的に環状に形成され、タービンシェル15に固定されている。詳細には、本体部44aは、固定手段例えば溶接によって、タービンシェル15に固定されている。
【0072】
複数の第5スプリング係合部44bのそれぞれは、本体部44aの外周部に一体にかつ軸方向エンジン側に延びて形成され、外周側トーションスプリング43に係合する。複数の第5スプリング係合部44bのそれぞれは、ドリブンプレート44の外周部を軸方向エンジン側に折り曲げて形成されている。
【0073】
複数の第5スプリング係合部44bは周方向に所定の間隔をあけて配置されている。周方向に隣接する2つの第5スプリング係合部44bの間には、外周側トーションスプリング43が配置されている。各第5スプリング係合部44bは外周側トーションスプリング43の両端部に係合している。
【0074】
<ストッパ機構>
この実施形態では、中間プレート42、第2サイドプレート46、及びドリブンプレート44のそれぞれの一部によって、各プレート42,46,44の相対回転を規制するストッパ機構が構成されている。以下、詳細に説明する。
【0075】
中間プレート42の径方向の中間部には切欠き部42cが形成されている。切欠き部42cは、径方向において、第3スプリング係合部42aと、第4スプリング係合部42bと、の間に設けられている。切欠き部42cは、周方向に長く形成され、外周側が開放されている。一方、ドリブンプレート44には、前述のように第1ストッパ爪44cが形成されており、この第1ストッパ爪44cが切欠き部42cに挿入されている。
【0076】
第1ストッパ爪44cは、ドリブンプレート44の内周部、すなわち本体部44aの内周部に設けられている。第1ストッパ爪44cは、本体部44aの内周部から軸方向エンジン側に延びる部分である。詳細には、第1ストッパ爪44cは、本体部44aの内周部を部分的に軸方向エンジン側に折り曲げて形成されている。
【0077】
このような構成では、第1ストッパ爪44cが中間プレートの切欠き部42cの周方向の端面に当接することによって、中間プレート42のドリブンプレート44に対する回転が規制される。すなわち、中間プレート42の切欠き部42c及び第1ストッパ爪44cによってストッパ機構が構成されている。
【0078】
また、第2サイドプレート46の外周端には、外周側に開く切欠き部46bが形成されている。一方、ドリブンプレート44には、前述のように第2ストッパ爪44dが形成されており、この第2ストッパ爪44dが切欠き部46bに挿入されている。
【0079】
第2ストッパ爪44dは、ドリブンプレート44の内周部、すなわち本体部44aの内周部に形成されている。第2ストッパ爪44dは、本体部44aの内周部の一部を、さらに内周側に延ばして形成されている。
【0080】
このような構成では、第2ストッパ爪44dが第2サイドプレート46の切欠き部46bの端面に当接することによって、第1及び第2サイドプレート45,46のドリブンプレート44に対する回転が規制される。すなわち、第2サイドプレート46の切欠き部46b及び第2ストッパ爪44dによってストッパ機構が構成されている。
【0081】
<ダンパ部29の位置決め構造>
ダンパ部29の位置決めのための構成を
図5により説明する。この位置決めのための構成は、ダンパ部29を径方向及び軸方向に位置決めするためのものである。
【0082】
この実施形態では、タービンシェル15は、タービンシェル本体50と、連結部材51と、を有している。タービンシェル本体50は内部にタービンブレード16が配置されている。連結部材51は、外周部にタービンシェル本体50の内周部が連結されるとともに、内周部がタービンハブ17のフランジ17aに溶接又はリベット(図示せず)により連結されている。連結部材51は、径方向の中間部に軸方向に延びる筒状部51aを有している。
【0083】
筒状部51aには、切削等によって、第1位置決め面51bと、第2位置決め面51cと、が形成されている。第1位置決め面51bは、環状でかつ回転軸線と平行に形成されている。第2位置決め面51cは、環状に形成され、かつ第1位置決め面51bのタービン4側の端部から回転軸線と直交して径方向外方に延びて形成されている。
【0084】
そして、ダンパ部29の中間プレート42の内周端面が第1位置決め面51bに当接し、これによりダンパ部29全体が径方向に位置決めされている。また、中間プレート42の内周端部の側面が第2位置決め面51cに当接し、ダンパ部29全体の軸方向タービン側への移動が規制されている。
【0085】
さらに、連結部材51の内周部において、フロントカバー2側の側面には、円板状の規制プレート54が固定されている。規制プレート54は、ダンパ部29の第1サイドプレート45の内周端よりさらに外周側に延びている。そして、第1サイドプレート45のフロントカバー2側の側面が、規制プレート54の外周端部に当接可能である。これにより、ダンパ部29全体の軸方向フロントカバー2側への移動が規制されている。
【0086】
[動作]
まず、トルクコンバータ本体6の動作について説明する。フロントカバー2及びインペラ3が回転している状態では、作動油がインペラ3からタービン4へ流れ、さらにステータ5を介してインペラ3に流れる。これにより、作動油を介してインペラ3からタービン4へトルクが伝達される。タービン4に伝達されたトルクは、タービンハブ17を介してトランスミッションの入力シャフトに伝達される。
【0087】
なお、エンジンが作動している間は、常に、作動油は、タービンハブ17の孔17bから第2油室C2に流入し、さらに第3油路P3を介してクラッチプレート31及びインペラ3に供給されている。
【0088】
トルクコンバータ1の速度比が上昇し、入力シャフトが一定の回転速度になると、第1油室C1には、第1油路P1、油溜まりPh、及び第2油路P2を介して作動油が供給される。この場合の、第1油室C1の油圧は、クラッチプレート31側に供給される作動油の油圧よりは高い。これにより、ピストン32がフロントカバー2側に移動する。この結果、ピストン32の押圧部32aが、クラッチプレート31をフロントカバー2側に押圧し、ロックアップ状態(クラッチオン状態)になる。
【0089】
以上のようなクラッチオン状態では、トルクはロックアップ装置7を介してフロントカバー2からトルクコンバータ本体6へと伝達される。具体的には、フロントカバー2に入力されたトルクは、ロックアップ装置7において「クラッチプレート31→第1及び第2サイドプレート45,46→内周側トーションスプリング41(大コイルスプリング41a及び小コイルスプリング41b)→中間プレート42→外周側トーションスプリング43→ドリブンプレート44」の経路で伝達され、タービンハブ17に出力される。
【0090】
ここで、クラッチオン状態のロックアップ装置7は、上記のようにトルクを伝達するとともに、フロントカバー2から入力されるトルク変動を減衰する。具体的には、ロックアップ装置7において捩り振動が発生すると、内周側トーションスプリング41と外周側トーションスプリング43とが、第1及び第2サイドプレート45,46とドリブンプレート44との間で直列に圧縮される。このように、内周側トーションスプリング41と外周側トーションスプリング43とが作動することによって、捩り振動に伴うトルク変動が減衰される。
【0091】
なお、ロックアップをオフ(クラッチオフ状態)にする場合は、第1油室C1がドレンに接続される。これにより、第1油室C1の作動油は、第2油路P2、油溜まりPh、及び第1油路P1を介して排出される。このような状態では、第1油室C1の油圧はクラッチプレート31側の油圧よりも低くなるので、ピストン32がタービン4側に移動する。この結果、クラッチプレート31に対するピストン32の押圧部32aの押圧が、解除される。これにより、クラッチオフ状態になる。
【0092】
[捩り特性]
次に、
図6を用いて捩り特性について説明する。ロックアップ装置7がクラッチオンの状態では、フロントカバー2からのトルクがクラッチプレート31を介してダンパ部29に伝達される。このとき、第1及び第2サイドプレート45,46と、中間プレート42及びドリブンプレート44と、が相対回転し、これらの間に捩り角度が生じると、中間プレート42を介して、内周側トーションスプリング41の大コイルスプリング41aと、外周側トーションスプリング43と、が直列に圧縮される。これにより、第1捩り剛性K1が形成される。捩り角度に対するトルクが第1捩り剛性K1によって決定される範囲を、
図6では符号J1で示している。
【0093】
次に、伝達されるトルクが大きくなると、第1及び第2サイドプレート45,46と中間プレート42との相対回転角度(捩り角度)が大きくなる。両者の相対回転角度が所定の角度になると、内周側トーションスプリング41の小コイルスプリング41bも圧縮される。すなわち、この状態では、内周側トーションスプリング41の大コイルスプリング41aと、外周側トーションスプリング43とが、直列に圧縮されるとともに、内周側トーションスプリング41の大コイルスプリング41aと小コイルスプリング41bとが並列に圧縮される。
【0094】
以上の作動により第2捩り剛性K2が形成される。捩り角度に対するトルクが、第2捩り剛性K2によって決定される範囲を、
図6では符号J2で示している。そして、捩り角度がさらに大きくなると、ドリブンプレート44の第1ストッパ爪44cが中間プレート42の切欠き部42cの端面に当接する。
【0095】
伝達されるトルクがさらに大きくなると、第1及び第2サイドプレート45,46と、中間プレート42及びドリブンプレート44(この状態では中間プレート42及びドリブンプレート44は同期して回転している)と、の相対回転角度(捩り角度)がさらに大きくなる。ここで、範囲J2以降では、中間プレート42とドリブンプレート44との相対回転が禁止されているので、外周側トーションスプリング43が作動を停止する。すなわち、範囲J2以降では、内周側トーションスプリング41の大コイルスプリング41a及び小コイルスプリング41bが圧縮される。
【0096】
以上の作動により、第3捩り剛性K3が形成される。捩り角度に対するトルクが第3捩り剛性K3によって決定される範囲を、
図6では符号J3で示している。そして、捩り角度がさらに大きくなると、ドリブンプレート44の第2ストッパ爪44dが第2サイドプレート46の切欠き部46bの端面に当接する。この状態では、内周側トーションスプリング41の大コイルスプリング41a及び小コイルスプリング41bが作動を停止する。
【0097】
[特徴]
本実施形態の装置では、スリーブ33に、内周側の第1油路P1と外周側の第2油路P2とを別々に形成しているので、各油路を別々に加工でき、スリーブ33の外径が大きくなっても、孔加工が容易になる。特に、第1油路P1と第2油路P2とを異なる方向から加工できるので、加工がより容易になる。
【0098】
また、第2油路P2の流路面積を第1油路P1の流路面積よりも小さくしてオリフィス効果が生じるようにしているので、第1油室C1に供給される作動油の速度等を抑えたり、オイルポンプの脈動を抑えたりすることができる。このため、ピストン32をスムーズに移動させることができ、クラッチオン時のショックを緩和することができる。
【0099】
第2油路P2は回転軸線に対して直交する放射状に形成されている。このため、回転によって油路から作動油が放出されやすくなる。
【0100】
第1油路P1と第2油路P2との間に油溜まりPhを設けているので、各油路P1,P2を流れる作動油に対してより効果的にオリフィス効果を得ることができる。しかも、油溜まりPhを設けることによって、第1油路P1と第2油路P2とが油溜まりPhを介して連通することになり、各油路P1.P2を構成する孔の位置合わせが不要になり、加工がさらに容易になる。
【0101】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0102】
(a)前記実施形態では、第2油路P2の流路面積を第1油路P1の流路面積よりも小さくし、かつ第2油路P2を構成する各孔の径を、第1油路P1を構成する各孔の径よりも小さくしたが、いずれか一方のみを採用するようにしてもよい。
【0103】
(b)油溜まりの形状は前記実施形態に限定されない。また、油溜まりを省略してもよい。