特許第6725313号(P6725313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6725313
(24)【登録日】2020年6月29日
(45)【発行日】2020年7月15日
(54)【発明の名称】杭基礎用のベース部材
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/14 20060101AFI20200706BHJP
【FI】
   E02D27/14
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-97791(P2016-97791)
(22)【出願日】2016年5月16日
(65)【公開番号】特開2017-206816(P2017-206816A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】508324008
【氏名又は名称】株式会社ラスコジャパン
(73)【特許権者】
【識別番号】591281862
【氏名又は名称】中井工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島谷 学
(72)【発明者】
【氏名】田中 周二
(72)【発明者】
【氏名】矢納 ひとみ
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−046642(JP,U)
【文献】 特表2012−524186(JP,A)
【文献】 特開2014−031700(JP,A)
【文献】 特開2013−087431(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0009303(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭基礎の一部材として用いられ、複数の杭が挿通される成形品である杭基礎用のベース部材であって、
前記ベース部材の中心線に対して傾斜して打ち込まれる杭の打ち込み角度を固定する貫通孔を有するガイド部が、前記中心線の周方向に沿って複数配置され、
前記複数のガイド部のうちの前記周方向に隣接する第1のガイド部の軸心方向と第2のガイド部の軸心方向とは互いにねじれの位置関係であり、
前記第1のガイド部は、前記第1のガイド部の軸心方向に長さを有する一体連結部によって前記第2のガイド部に対して周壁が接した状態で一体に連結され
前記ガイド部の前記中心線方向の長さは、前記中心線を含む面に対して直角に見たときの、前記ガイド部の軸心と両側に隣接する2つのガイド部それぞれの軸心との仮想的な交点間の前記中心線方向の長さに略一致する、
杭基礎用のベース部材。
【請求項2】
前記複数のガイド部はすべて、前記中心線に直交する同一平面において、隣接するガイド部と周壁が接する、請求項1記載の杭基礎用のベース部材。
【請求項3】
前記複数のガイド部は、前記中心線の周方向に90°ずつ配置された4つのガイド部である、請求項1又は2に記載の杭基礎用のベース部材。
【請求項4】
前記中心線を軸心とし、周壁が前記複数のガイド部の周壁に接した状態で一体に連結される中心部材がさらに配置されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の杭基礎用のベース部材。
【請求項5】
前記中心部材は支柱を内挿可能な内空を有し、
前記中心部材の周壁には前記内空までの1つ以上の貫通孔が設けられている、請求項に記載の杭基礎用のベース部材。
【請求項6】
前記中心部材は軸心方向の一方の端部が面によって塞がれ、かつ、前記面の裏面側に内空を有し、
前記中心部材の周壁には前記内空までの1つ以上の貫通が設けられている、請求項に記載の杭基礎用のベース部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はベース部材に関し、特に、杭基礎の一部材として用いられ、複数の杭が挿通される成形品である、杭基礎用のベース部材に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物を地表に立設するための基礎の一つに、地盤に杭を打ち込んで構造物を支えるための杭基礎がある。杭基礎を用いた基礎工法の一つに、ピンファンデーション工法と呼ばれる、鋼管パイプ(ピン)を地盤に対して斜めに打ち込んでその支持力によって構造物を支える工法がある。
【0003】
ピンファンデーション工法などの杭基礎を用いた基礎工法では、杭基礎の一部材として、たとえば特表2003−526747号公報(特許文献1)にも開示されているような、鋼材やプレキャストコンクリートなどで構成された定着ブロックとも呼ばれる、複数の杭が挿通されるベース部材が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−526747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような杭基礎を用いた工法では杭によって構造物が支持されるために、杭を地中へとガイドし、固定する杭基礎の強度が重要になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従う杭基礎用のベース部材は、杭基礎の一部材として用いられ、複数の杭が挿通される成形品であって、ベース部材の中心線に対して傾斜して打ち込まれる杭の打ち込み角度を固定する貫通孔を有するガイド部が、中心線の周方向に沿って複数配置され、複数のガイド部のうちの周方向に隣接する第1のガイド部の軸心方向と第2のガイド部の軸心方向とは互いにねじれの位置関係であり、第1のガイド部は、第1のガイド部の軸心方向に長さを有する一体連結部によって第2のガイド部に対して周壁が接した状態で一体に連結される。
複数のガイド部のそれぞれが当該ガイド部の軸心方向に長さを有する一体連結部によって周方向に隣接するガイド部に対して周壁が接した状態で一体に連結されることによって、当該ベース部材は鋳造などによって一体成形が可能となる。そのために、当該ベース部材の強度を向上させることができる。
【0007】
好ましくは、ガイド部の中心線方向の長さは、中心線を含む面に対して直角に見たときの、ガイド部の軸心と両側に隣接する2つのガイド部それぞれの軸心との仮想的な交点間の中心線方向の長さに略一致する。
これにより、当該ベース部材を小型化することができ、当該ベース部材を用いた杭基礎の施工における土の掘削量や埋め戻し土量を抑えて施工性を向上させることができる。
【0008】
より好ましくは、複数のガイド部はすべて、中心線に直交する同一平面において、隣接するガイド部と周壁が接する。
これにより、当該ベース部材をより小型化することができ、当該ベース部材を用いた杭基礎の施工における土の掘削量や埋め戻し土量を抑えて施工性を向上させることができる。
【0009】
好ましくは、複数のガイド部は、中心軸の周方向に90°ずつ配置された4つのガイド部である。
これにより、当該ベース部材はガイド部にガイドされた杭によってバランスよく保持される。それ故、当該ベース部材の強度のバランスを保つことができる。
【0010】
好ましくは、中心線を軸心とし、周壁が複数のガイド部の周壁に接した状態で一体に連結される中心部材がさらに配置されている。
ベース部材が中心部材を有することにより、中心部材を構造物に臨ませて当該構造物を支持することができる。
【0011】
より好ましくは、中心部材は支柱を内挿可能な内空を有し、中心部材の周壁には内空までの1つ以上の貫通孔が設けられている。
中心部材に貫通孔が設けられていることにより、中心部材に内挿された支柱に対して中心部材の周壁の外側からボルトを挿通させることができる。それ故、当該ベース部材を用いた杭基礎の施工性を向上させることができる。
【0012】
好ましくは、中心部材は軸心方向の一方の端部が面によって塞がれ、かつ、当該面の裏面側に内空を有し、中心部材の周壁には内空までの1つ以上の貫通孔が設けられている。
中心部材に上記面の裏面側の内空までの貫通孔が設けられていることにより、中心部材の周壁の外側から上記内空に工具等を挿入して、中心部材の上記面に当接された構造物に対するボルト締め等の作業を行うことができる。それ故、当該ベース部材を用いた杭基礎の施工性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、杭基礎用のベース部材の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態にかかるベース部材を斜め上方から見下ろした斜視図である。
図2】第1の実施の形態にかかるベース部材を図1における矢印A方向から見た図である。
図3】第1の実施の形態にかかるベース部材を図1における矢印B方向から見た図である。
図4】第1の実施の形態にかかるベース部材を一部材として用いた杭基礎、および当該杭基礎によって立設した構造物を示す概略説明図である。
図5】第1の実施の形態にかかるベース部材を一部材として用いた杭基礎、および当該杭基礎によって立設した構造物を示す概略説明図である。
図6】第1の実施の形態にかかるベース部材を杭基礎の一部材として用いて支柱を立設する手順を示す概略説明図である。
図7】第2の実施の形態にかかるベース部材を斜め上方から見下ろした斜視図である。
図8】第2の実施の形態にかかるベース部材を図7における矢印A方向から見た図である。
図9】第2の実施の形態にかかるベース部材を図7における矢印B方向から見た図である。
図10】第2の実施の形態にかかるベース部材を一部材として用いた杭基礎、および当該杭基礎によって立設した構造物を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しつつ、好ましい実施の形態について説明する。
実施の形態にかかるベース部材100は、杭基礎の一部材として用いられ、複数の杭が挿通される部材である。杭基礎は、ピンファウンデーション工法などの基礎工法において基礎構造物として用いられる。第1の実施の形態にかかるベース部材100はベース部材100Aと表し、第2の実施の形態にかかるベース部材100はベース部材100Bと表す。ベース部材100A,100Bを代表させてベース部材100とする。
【0016】
[第1の実施の形態]
[ベース部材の構成]
図1図3は、第1の実施の形態にかかるベース部材100Aの構成を説明するための図である。図1はベース部材100Aを斜め上方から見下ろした斜視図、図2図1における矢印A方向から見た図、図3図1における矢印B方向から見た図である。図2において前面に表された面をベース部材100Aの正面とし、図3において前面に表された面をベース部材100Aの上面とする。
【0017】
図1図3を参照して、第1の実施の形態にかかるベース部材100Aは、構造物に臨む中心部材10と、ガイド部20a〜20dとを含む。ガイド部20a〜20dを代表させてガイド部20とも称する。第1の実施の形態にかかるベース部材100Aの有する中心部材10は、構造物の支柱を固定する。
【0018】
中心部材10の軸心は、ベース部材100Aの中心線Cに一致する。ガイド部20a〜20dは、それぞれ、中心部材10の軸心C、すなわち当該ベース部材100Aの中心線Cに対して傾斜して打ち込まれる杭の打ち込み角度を固定する貫通孔h1〜h4を有する。貫通孔h1〜h4には、それぞれ、杭が内挿可能である。ガイド部20a〜20dそれぞれの軸心a1〜a4が地中に向くようにベース部材100Aが地表に設置され、ガイド部20に沿って上方から杭が打ち込まれることによって、杭は、上方から地中に向けて、中心線Cに対して傾斜する方向にガイドされる。
【0019】
4つのガイド部20a〜20dは、中心部材10の外周側に周方向、つまり中心線Cの周方向に沿って配置される。たとえば、4つのガイド部20a〜20dは、中心部材10の周方向に90°の間隔で配置されている。これにより、ベース部材100Aはガイド部20にガイドされた杭によってバランスよく保持される。それ故、ベース部材100Aを杭基礎の一部材として用いた場合の強度のバランスを保つことができる。
【0020】
各ガイド部20の軸心は、中心部材10の周方向に隣接するガイド部20の軸心と互いにねじれの位置関係にある。具体的には、ガイド部20aの軸心a1は、周方向に隣接するガイド部20bの軸心a2と互いにねじれの位置関係にあり、ガイド部20bの軸心a2は、周方向に隣接するガイド部20cの軸心a3と互いにねじれの位置関係にあり、ガイド部20cの軸心a3は、周方向に隣接するガイド部20dの軸心a4と互いにねじれの位置関係にあり、ガイド部20dの軸心a4は、周方向に隣接するガイド部20aの軸心a1と互いにねじれの位置関係にある。つまり、4本のガイド部20a〜20dは、互いにねじれの位置関係となるように中心部材10の周方向に沿って配置される。これにより、4本のガイド部20a〜20dそれぞれに異なる方向の支持力が生じ、ベース部材100Aを用いた杭基礎の支持力が向上する。
【0021】
互いにねじれの位置関係にある4つのガイド部20a〜20dは、それぞれ、軸心a1〜a4方向に長さを持つ一体連結部21によって、隣接するガイド部20と周壁が接した状態で一体に連結されている。「軸心方向に長さを持って」隣接するガイド部20に対して連結された状態とは、ガイド部20が、隣接するガイド部20にボルト位置などの規定された位置のみが連結された状態ではなく、軸心方向にある程度の長さを有して面状に連続的に接触して連結されている状態を指す。ガイド部20が隣接するガイド部20に対して「一体に連結された」状態とは、連結部分において隣接する2つのガイド部20の位置関係が可変ではなく固定されて連結されている状態を指す。4つのガイド部20a〜20dを隣接するガイド部20と一体連結部21によって一体に連結される構成とすることによって、鋳造などによって一体成形することができる。4つのガイド部20a〜20dを鋳造などによって一体成形することによって、それぞれを独立した別の部材として接合する場合より強度を向上させることができる。また、複雑な形状であっても容易に成形することができる。
【0022】
隣接するガイド部20と「周壁が接した状態で」連結された状態とは、隣接する2つのガイド部20それぞれの周壁の少なくとも一点が接しており、当該接した位置が一体連結部21に含まれている状態を指す。すなわち、隣接する2つのガイド部20は周壁の接した位置で最も接近した関係となり、その軸心間の最短長さはガイド部20の外径と等しくなる。そのため、ベース部材100A全体のサイズを小型化することができる。そのため、後述する施工方法によって当該ベース部材100Aを一部材として用いた杭基礎の施工において、土の掘削量や埋め戻し土量を抑えて施工性を向上させることができる。また、ベース部材100Aを小型化することによって軽量化されるため、ベース部材100Aの運搬が容易になる。
【0023】
好ましくは、4つのガイド部20a〜20dは、いずれも、中心線C方向に直交する同一平面において隣接するガイド部20と周壁が接する。これにより、ベース部材100Aをより小型化でき、当該ベース部材100Aを一部材として用いた杭基礎の施工性をより向上させることができる。
【0024】
より好ましくは、ガイド部20は、一体連結部21によって、さらに、周壁が中心部材10の周壁に接した状態で中心部材10にも一体に連結されている。ガイド部20がさらに中心部材10にも一体に連結されていることによって、ガイド部20と中心部材10とを、つまり、ベース部材100A全体を鋳造などによって一体成形することができる。ベース部材100A全体を鋳造などによって一体成形することによって、ベース部材100A全体の強度を向上させることができる。また、複雑な形状であっても容易に成形することができる。
【0025】
図2を参照して、ガイド部20の中心線C方向の長さH1は、図2中の長さH2と略一致する。長さH2は、ガイド部20を中心線Cを含む面に対して直角に見たときの、ガイド部20の軸心と両側に隣接する2つのガイド部20それぞれの軸心との仮想的な交点間の、中心線C方向の長さである。詳しくは、図2を参照して、ガイド部20aの中心線C方向の長さH1は、ガイド部20aを中心線Cを含む面に対して直角に見たときの(図2の場合)、ガイド部20aの軸心a1と両側に隣接する2つのガイド部20d,20bそれぞれの軸心a4,a2との仮想的な交点P1,P2間の、中心線C方向の長さH2と略一致する。ガイド部20の中心線C方向の長さH1をこのように設定することによって、杭のガイドに必要なガイド部20の軸心方向の長さを確保しつつ、ベース部材100A全体のサイズを小型化することができる。
【0026】
なお、ガイド部20それぞれの軸心方向の長さ(スリーブ長さとも言う)は、一例として100mm以上である。好ましくは、ガイド部20のスリーブ長さは150mmである。ガイド部20は、貫通孔h1〜h4それぞれ杭が内挿されることによって軸心方向に当該杭をガイドするものであるため、スリーブ長さはガイド長さとも言える。ガイド長が100mm以上、好ましくは150mm以上あることによって、ベース部材100Aを杭基礎の一部材として用いた場合に、ガイド部20に内挿された杭に対して荷重が作用した場合であっても変位を小さくすることができる。
【0027】
中心部材10は、少なくとも中心部材10を地表に設置した際に上方となる端部(以降、この端部を上端とも称し、反対側の端部を下端とも称する)側が開放された、支柱を内挿可能な中空を有する。一例として、中心部材10は貫通孔h11を有する中空筒状である。中心部材10の周壁であって、一体連結部21のない位置には、中心部材10に内挿された支柱に対して中心部材10の外周側からボルトを挿通させるための1つ以上の貫通孔11Aが設けられている。貫通孔11Aは、たとえば4つ設けられる。好ましくは、貫通孔11Aは上端付近に設けられる。貫通孔11Aが中心部材10の周壁に設けられていることによって、中心部材10の周壁の外側から支柱を固定するためのボルトを挿通し、締結することができる。そのため、ベース部材100Aを地表に設置した後でも中心部材10に支柱を固定する作業を行うことができる。故に、ベース部材100Aを地表に設置する前に中心部材10に支柱を固定しておく必要がなく、ベース部材100Aの設置作業が容易になる。
【0028】
中心部材10の上端は、ガイド部20の上端よりも上方に位置する。好ましくは、中心部材10の上端は、貫通孔11Aに挿通されたボルトを作業するためのレンチ等の工具が使用可能な程度、ガイド部20の上端よりも上方に位置する。中心部材10の下端は、ガイド部20の下端よりも上方であって、一体連結部21によってガイド部20と一体に連結されている箇所よりも下方に位置する。中心部材10の上端および下端をこのように設定することによって、ベース部材100A全体のサイズを小型化することができる。そのため、後述する施工方法によって当該ベース部材100Aを一部材として用いた杭基礎の施工において、土の掘削量や埋め戻し土量を抑えて施工性を向上させることができる。また、ベース部材100Aは小型化することによって軽量化されるため、ベース部材100Aの運搬が容易になる。
【0029】
[施工]
図4および図5は、ベース部材100Aを一部材として用いた杭基礎、および当該杭基礎によって立設した構造物を示す概略説明図である。構造物は、たとえば、ソーラーパネル用の架台である。図4は正面図であり、図5は斜視図である。
【0030】
図4および図5を参照して、ベース部材100Aは、中心線Cが鉛直となるように地表に設置される。中心部材10の内空に上端から支柱300Aの下端が挿入される。内空に支柱300Aが内挿された状態で、中心部材10の周壁の外側から貫通孔11Aを介して中心部材10の内空に向けてボルト31が挿通され締め付けられる。これにより、支柱300Aは中心部材10に対して固定される。
【0031】
4つのガイド部20a〜20dそれぞれの内空に上端から杭200が挿入される。ベース部材100Aが地表に設置されていることで、杭200は、ガイド部20にガイドされて、その軸心方向、つまり、4本の杭200が互いにねじれの位置関係を維持して地表に打ち込まれる。
【0032】
[支柱の立設工法の手順]
図6は、ベース部材100Aを杭基礎の一部材として用いて支柱300Aを立設する手順を示す概略説明図である。
図6を参照して、はじめに、施工者は、支柱300Aの設置場所にベース部材100Aを設置するための穴を掘削する(図6(a))。ベース部材100Aは、上面を上にし、中心線C方向が鉛直となるように穴内に設置される。それ故、穴は、ベース部材100Aの下端から上端までが収まる程度の大きさであればよい。上記のように、ベース部材100Aは小型化されているため、掘削量を抑えることができる。
【0033】
次に、施工者は、ベース部材100Aを、上面を上にし、中心線C方向が鉛直となるように上記の穴内に設置する(図6(b))。上記のように、ベース部材100Aは小型化されているため軽量である。したがって、支柱300Aの設置場所への搬入および穴内への設置などは、クレーン等の重機を用いることなく、施工者が人力で行うことができる。
【0034】
次に、施工者は、4つのガイド部20a〜20dそれぞれに杭200を内挿し、当該杭200を地面に打設する(図6(c))。このとき、地面への杭200の打ち込みは、ハンディータイプの電動ハンマーなどの電動工具を用いて杭200の上端部を打撃することで行うことができる。
【0035】
4つのガイド部20a〜20dは、それぞれ、中心部材10の外周面に、中心部材10の周方向に隣接するガイド部20の軸心と互いにねじれの位置関係となるように配置されているので、それぞれの軸心a1〜a4方向に沿って杭200が地面に打設されることによってそれぞれの軸心a1〜a4方向の支持力が生じる。これにより、ベース部材100Aが水平方向および上下方向に移動しないように当該ベース部材100Aを地面に対して固定することができる。すなわち、支柱300Aを立設するのに十分な支持力を確保することができる。
【0036】
次に、施工者は、中心部材10の上端から支柱300Aの下端を内挿し、中心部材10の外周から貫通孔11を介してボルト31で固定する(図6(d))。
【0037】
その後、施工者は、ベース部材100Aの周囲に土を埋め戻し、転圧する(図6(e))。上記のように、ベース部材100Aが小型化されていて掘削する穴が小さいため、埋め戻し土量も少なくてすむ。したがって、施工者は、ショベルカー等の重機を用いることなく人力で埋め戻しをすることができる。
【0038】
[第1の実施の形態の効果]
以上のように、第1の実施の形態にかかるベース部材100Aは、中心線Cに対して傾斜して打ち込まれる杭の打ち込み角度を固定する貫通孔h1〜h4を有するガイド部が、隣接するガイド部20の周壁と接した状態で、軸心方向に長さをもって一体に連結されている。そのため、ベース部材100Aは、鋳造などによって一体成形することができる。それ故、ベース部材100Aを杭基礎の一部材として用いた場合の強度を向上させることができる。また、小型化を実現することができるため、ベース部材100Aを杭基礎の一部材として用いた杭基礎の施工の際の掘削量および埋め戻し土量が軽減され、環境に対する負荷を低減させることができる。
【0039】
また、支柱を内挿可能な内空を有する中心部材10には、外周から内空までの貫通孔11Aが設けられているので、中心部材10の外周側から支柱を固定するためのボルトを締結することができる。そのため、ベース部材100Aを地表に設置した後でも中心部材10に支柱を固定することができ、施工を容易にすることができる。
【0040】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらの説明は繰り返さない。
【0041】
図7図9は、第2の実施の形態にかかるベース部材100Bの構成を説明するための図である。図7はベース部材100Aを斜め上方から見下ろした斜視図、図8図7における矢印A方向から見た図、図9図7における矢印B方向から見た図である。
【0042】
図7図9を参照して、第2の実施の形態にかかるベース部材100Bは、図1図3に表された第1の実施の形態にかかるベース部材100Aの各構成に加えて、中心部材10の上端に、構造物に当接可能な当接面12を有する。
【0043】
当接面12は、中心部材10の上端に一体に連結されている。これにより、ベース部材100Bは、当接面12も含めて鋳物によって一体成形することができる。
【0044】
ベース部材100Bの中心部材10は、少なくとも当接面12の裏面側に内空を有する。一例として、中心部材10は、上端が当接面12によって閉塞され、下端が開放された内空h21を有する。当接面12には該内空までの貫通孔13が設けられている。好ましくは、貫通孔13は、当接面12と中心線Cとの交点を中心とする。当接面12に当接された構造物は、貫通孔13を介して挿入されたボルトによって当接面12に固定される。
【0045】
中心部材10の側方であって、上端付近には、上記内空まで貫通する1つ以上の貫通孔(口)11Bが設けられている。好ましくは、貫通口11Bは、スパナやレンチ等のボルト締め工具が通過可能なサイズである。貫通口11Bが中心部材10の上端付近に設けられていることによって、中心部材10の外周側から中心部材10の内空に工具を差し入れて、当接面12の貫通孔13を介して当接面12に構造物を固定するためのボルトを締結することができる。そのため、ベース部材100Bを地表に設置した後でも中心部材10の当接面12に構造物を固定することができる。つまり、ベース部材100Bを地表に設置する前に中心部材10に構造物を固定しておく必要がないため、ベース部材100Bの設置作業が容易になる。
【0046】
第2の実施の形態にかかるベース部材100Bは、第1の実施の形態にかかるベース部材100Aと同様に、中心部材10の当接面12が支柱300Aの下端に当接され、中心部材10が支柱300Aを支持してもよい。または、図10に表されたように、複数のベース部材100Bの当接面12に基礎材300Bが当接され、これら複数のベース部材100Bの中心部材10が基礎材300Bを支持してもよい。
【0047】
[第2の実施の形態の効果]
第2の実施の形態にかかるベース部材100Bは、第1の実施の形態にかかるベース部材100Aと概ね同じ作用効果を奏する。ベース部材100Bでは中心部材10の上端に当接面12が設けられることで、構造物のサイズが中心部材10の内空よりも大きい場合であっても、当該構造物を当接面12に当接させて支持することができる。また、図10に表されたように、基礎材300Bのような長さを有する部材や面状の部材であっても、1つまたは複数のベース部材100Bの当接面12に当接させて支持することができる。
【0048】
さらに、中心部材10は当接面12の裏面側に内空を有し、外周から内空までの貫通口11Bが設けられているので、中心部材10の外周側から内空内にスパナやレンチ等のボルト締め工具を差し入れて、当接面12の貫通孔13に挿入されているボルトに対する作業を行うことができる。そのため、ベース部材100Bを地表に設置した後でも中心部材10の当接面12に構造物を固定することができ、施工を容易にすることができる。
【0049】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
10 中心部材
11A,13,h1〜h4,h11,h21 貫通孔
11B 貫通口
12 当接面
20,20a〜20d ガイド部
21 一体連結部
100,100A,100B ベース部材
200 杭
300A 支柱
300B 基礎材
a1〜a4 軸心
C 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10