【実施例】
【0011】
<1>全体構成
本発明に係る凝集沈殿装置は、原水Aを処理水Bと汚泥Cとに分離する装置である。
そして、
図1に示す凝集沈殿装置は、主要な構成要素として、凝集槽10、熟成槽20、沈殿槽30、循環ポンプ40、サイクロン50、分配槽60、および濃縮槽70と、を少なくとも具備している。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0012】
<2>凝集槽
凝集槽10は、原水Aと濃縮槽70からの越流水Mとを含む混合水Eに、無機凝集剤Dを添加して撹拌混合する機能を有する。
原水Aは、建設工事で発生した排水(建設排水)や、生活排水など種々の排水が対象となる。
越流水Mは、濃縮槽70から越流した水であり、詳細は後述する濃縮槽70の欄で説明する。
【0013】
<2.1>凝集槽の構造
凝集槽10の内部には公知の撹拌装置を設けておく。
また、凝集槽10から越流した混合水Eは、次工程の熟成槽20へと送るように構成する。
【0014】
<2.2>無機凝集剤
無機凝集剤Dは、混合水Eの中の懸濁物質を凝集させて微細なフロックを生成させるための添加剤である。
無機凝集剤Dとしては、たとえばポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化第二鉄、硫酸第二鉄のうち何れか或いはこれらの混合物を使用することができる。
図1では、原水Aを凝集槽10に送るラインの途中で無機凝集剤Dを添加しているが、凝集槽10に無機凝集剤Dを直接添加するように構成してもよい。
【0015】
<3>熟成槽
熟成槽20は、凝集槽10からの混合水Eに、高分子凝集剤Fと沈降促進剤Gとを添加して撹拌混合することで、混合水Eの中にある微細なフロックと沈降促進剤の結合を熟成する機能を有する。
【0016】
<3.1>高分子凝集剤
高分子凝集剤Fは、凝集槽10で生成された微細なフロックと沈降促進剤を結合するための添加剤である。
高分子凝集剤は、一般的には、凝集剤で生成した微細なフロックをより大きなフロックに成長させるために用いられるが、本発明では後述する沈降促進剤とフロックとの結合のために用いる点で異なる。
高分子凝集剤Fとしては、たとえばノニオン性、アニオン性、カチオン性あるいは両性の高分子凝集剤や、天然高分子凝集剤であるアルギン酸などのうち何れか或いはこれらの混合物を用いることができる。
【0017】
<3.2>沈降促進剤
沈降促進剤Gは、前記高分子凝集剤Fによって凝集槽10で生成された微細なフロックと結合することにより、より比重の大きなフロックを得るための添加剤である。
沈降促進剤Gとしては、砂などの粒状物などを用いる事ができる。
沈降促進剤Gは、新たに添加するもの、または沈降促進剤Fを添加して沈殿槽30から抜き出されたスラリー(沈殿スラリーH)から前記サイクロン50によって再度分離されたもの、の何れも含まれる。
【0018】
<3.3>各添加剤の添加方法
図1では、凝集槽10から越流した混合水Eが熟成槽20に送られる途中で沈降促進剤Gを添加し、熟成槽20に直接高分子凝集剤Fを添加しているが、本発明においてこれらの添加剤の添加態様を特段限定するものではない。
【0019】
<3.4>結合フロックの生成
前記した高分子凝集剤Fおよび沈降促進剤Gでもって、混合水Eの中には、該混合水E中のフロックと沈降促進剤Gとが結合されて、比重が大きく沈澱しやすくなるように熟成された結合フロックを含むようになる。
この混合水Eの越流分が、沈殿槽30へと供給される。
【0020】
<4>沈殿槽
沈殿槽30は、熟成槽20からの混合水Eの中の結合フロックを沈降させて、混合水Eを、前記処理水Bと沈殿スラリーHとに分離する機能を有する。
熟成槽20で大きく成長した結合フロックは、沈殿槽30の下方へと沈殿し、混合水Eは沈殿した結合フロックからなる沈殿スラリーHと、処理水Bとに分離される。
沈澱槽30の上部には複数の傾斜板を設けており、該傾斜板でもって高速で上昇する処理水Bを整流させることと一部のフロックを遮ることにより、より清澄な処理水Bのみを取り出すことができるように構成している。
沈殿槽30の底部には、沈殿スラリーHを掻き寄せて集める手段と、集めた沈殿スラリーHを引き抜くためのラインを設けており、このラインには循環ポンプ40の吸込側が接続されている。
【0021】
<5>循環ポンプ
循環ポンプ40は、少なくとも沈殿槽30から取り出した沈殿スラリーHを、サイクロン50へと送る機能を有する。
循環ポンプ40は、公知のポンプを用いることができる。
また、循環ポンプ40の吸込側には、沈殿槽30から伸びるラインの他に、後述する分配槽60から伸びるラインも接続されている。
よって、循環ポンプ40は分配槽60から循環されてきたスラリー(循環スラリー)を沈殿スラリーHに加えた状態で、サイクロン50へと送り出すことができる。
【0022】
<6>サイクロン
サイクロン50は、取り込んだ沈殿スラリーHから泥状物Jを取り出す機能を有する。
前記泥状物Jは、前記沈殿スラリーHに含まれていた沈降促進剤Gを主として含むスラッジである。
サイクロン50は、公知の分離器または分級器を用いることができる。
まず始めに、サイクロン50は、内部での遠心分離作用によって、循環ポンプ40から供給する沈殿スラリーHを、分離スラリーIと泥状物Jとに分離する。
その後、分離した泥状物Jは、沈降促進剤Fの一部または全部として熟成槽20へと供給することができる。
また、分離した分離スラリーIは、分配槽60へと送られる。
サイクロン50の遠心分離動作の際には、外部から取り込んだ空気が、内部で渦を巻いた状態を呈している。そのため、沈殿スラリーHから分離される分離スラリーIは、サイクロン50での分離過程の中で空気を含んだ状態となっている。
【0023】
<7>分配槽
分配槽60は、サイクロン50からの分離スラリーIを一旦収容して、濃縮槽70および循環ポンプ40に分配する機能を有する。
【0024】
<7.1>分配槽の構造
分配槽60は、槽外の空間と連通する開放空間61を設けている。
まず、分配槽60はサイクロン50からの分離スラリーIを収容する。前述した通り、分離スラリーIは、サイクロン50の内部で空気を含んだ状態となっている。
よって、分離スラリーIを一旦分配槽60に収容することで、分離スラリーI中の空気が開放空間61から抜けるように構成する。
【0025】
また、分配槽60では、分離スラリーIを一定時間滞留できる容積を有するものとする。これは、サイクロン50において泥状物Jとして分離しきれなかった沈降促進剤Gを、後述する循環スラリーKに含めて循環側へ返送するためである。
本構造によれば、沈降促進剤Gを濃縮槽70側に分配することが無くなるため、沈降促進剤Gのロスを大幅に低減することができる。
【0026】
<7.2>循環ライン・排出ライン
分配槽60には、循環ポンプ40の吸込側に接続する循環ラインと、濃縮槽70へと送る排出ラインとが接続してある。
前記循環ラインの途上には流量制御バルブ62を設けておき、分離スラリーIの一部である循環スラリーKの流量を制御する。
この流量制御バルブ62の流量制御によって、沈殿槽30からの引抜量の調整を可能とし、凝集沈殿装置全体の流量が一定となるように構成する。
【0027】
また、前記循環スラリーKの流量を制御した状態で、分配槽60からの越流分の分離スラリーIは、排出スラリーLとして排出ラインを経由し濃縮槽70へと送られる。
図1では、排出スラリーLに、排出ラインの途上で高分子凝集剤Fを添加しているが、本発明において必須の構成ではない。
【0028】
上記構成により、分離スラリーIは分配槽60で空気が抜けた状態となってから循環スラリーKとして循環ポンプ40に送られるため、循環ポンプ40の性能低下などの問題の発生を未然に防止することができる。
【0029】
なお、分配槽60から排出ラインを流れる排出スラリーLは、濃縮槽70まで自然流下の状態となるような位置関係としておくと、特段のエネルギーを要しない点で好ましい。
【0030】
<8>濃縮槽
濃縮槽70は、排出スラリーLを滞留させて濃縮するための装置である。
まず、濃縮槽70は、分配槽60からの排出スラリーLを収容して、所定時間滞留させて、排出スラリーLを濃縮する。
濃縮槽70内で濃縮された排出スラリーLは、適当なタイミングで、濃縮槽70の下部から排泥ポンプ80等によって最終的な汚泥Cとして抜き出され、次工程の脱水処理へと送られる。
また、排出スラリーLの抜出しは濃縮槽70に設置された汚泥界面計で抜出し量を制御することもできる。
よって、排出スラリーLを濃縮してなる汚泥Cは、常に高濃度の状態で脱水処理されることとなり、脱水効率の向上に寄与することとなる。
【0031】
また、濃縮槽70に収容した排出スラリーLの越流水Mは、凝集槽10へと循環するように構成する。
濃縮槽70から凝集槽10へ循環させる越流水Mの供給態様は、
図1に示すように越流分が自然流下の状態となるように構成すると、特段のエネルギーを要しない点で好ましい。