(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電力供給事業者からの要求に基づいて複数の需要家のうちから選択した需要家に対して需要電力の削減を要請するためのデマンドレスポンスを計画するデマンドレスポンス計画装置であって、
前記デマンドレスポンスの要請に際し、前記デマンドレスポンスの要請を行う需要家の優先度を表す需要家優先度を予め格納した需要家優先度に関する情報を予め記憶する優先度情報記憶部と、
需要電力の削減要請対象の前記需要家の組合せ毎に前記電力供給事業者との契約情報及び前記需要家との契約情報に基づいて前記需要電力の削減目標と前記需要家の組合せ毎の需要電力の削減予測量との差に基づいて課されると予測される達成度ペナルティ期待値及び前記需要家優先度を満たしていない場合に課される優先度ペナルティ期待値の和に基づいてペナルティ期待値を算出するペナルティ算出部と、
前記ペナルティ期待値を最小化する前記需要家の組合せに対応する需要家に需要電力の削減を要請するためのデマンドレスポンス計画を作成する計画作成部と、
を備えたデマンドレスポンス計画装置。
前記ペナルティ算出部は、前記需要家の過去の需要電力削減の履歴に基づいて、電力削減量の予測分布を作成し、作成した前記予測分布に基づいて前記達成度ペナルティ期待値を算出する、
請求項1記載のデマンドレスポンス計画装置。
電力供給事業者からの要求に基づいて複数の需要家のうちから選択した需要家に対して需要電力の削減を要請するためのデマンドレスポンスを計画するデマンドレスポンス計画装置で実行される方法であって、
前記デマンドレスポンスの要請に際し、前記デマンドレスポンスの要請を行う需要家の優先度を表す需要家優先度を予め格納した需要家優先度に関する情報を予め記憶する過程と、
需要電力の削減要請対象の前記需要家の組合せ毎に前記電力供給事業者との契約情報及び前記需要家との契約情報に基づいて前記需要電力の削減目標と前記需要家の組合せ毎の需要電力の削減予測量との差に基づいて課されると予測される達成度ペナルティ期待値及び前記需要家優先度を満たしていない場合に課される優先度ペナルティ期待値の和に基づいてペナルティ期待値を算出する過程と、
前記ペナルティ期待値を最小化する前記需要家の組合せに対応する需要家に需要電力の削減を要請するためのデマンドレスポンス計画を作成する過程と、
を備えた方法。
電力供給事業者からの要求に基づいて複数の需要家のうちから選択した需要家に対して需要電力の削減を要請するためのデマンドレスポンスを計画するデマンドレスポンス計画装置をコンピュータにより制御するためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記デマンドレスポンスの要請に際し、前記デマンドレスポンスの要請を行う需要家の優先度を表す需要家優先度を予め格納した需要家優先度に関する情報を予め記憶する手段と、
需要電力の削減要請対象の前記需要家の組合せ毎に前記電力供給事業者との契約情報及び前記需要家との契約情報に基づいて前記需要電力の削減目標と前記需要家の組合せ毎の需要電力の削減予測量との差に基づいて課されると予測される達成度ペナルティ期待値及び前記需要家優先度を満たしていない場合に課される優先度ペナルティ期待値の和に基づいてペナルティ期待値を算出する手段と、
前記ペナルティ期待値を最小化する前記需要家の組合せに対応する需要家に需要電力の削減を要請するためのデマンドレスポンス計画を作成する手段と、
して機能させるプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1]第1実施形態
次に図面を参照して実施形態について詳細に説明する。
図1は、実施形態の電力需給システムの概要構成ブロック図である。
電力需給システム100は、大別すると、電力供給事業者として発電電力を供給する発電事業者が運用を行い発電を行う発電事業者システム111と、電力供給事業者として商用電力を供給する系統事業者が運用を行い商用電力を供給する系統事業者システム112と、複数の需要家がそれぞれ運用を行う需要家システム114と、需要家114に対し、電力供給事業者からのデマンドレスポンス要請を実行するアグリゲート事業者が運用を行うアグリゲート事業者システム115と、電力取引市場を運営する電力取引所が運用する電力取引所システム116と、を備えている。
【0012】
図2は、アグリゲート事業者システムを構成しているデマンドレスポンス計画装置の機能構成ブロック図である。
【0013】
デマンドレスポンス計画装置10は、大別すると、デマンドレスポンス計画の最適化を行うデマンドレスポンス(DR)計画最適化部11と、発電事業者システム111、系統事業者システム112あるいは各需要家システムとデマンドレスポンス計画最適化部と通信を行うための通信インタフェース動作を行う通信インタフェース(I/F)部12と、オペレータが各種操作入力を行うための操作入力部13と、各種情報を表示するため表示部14と、操作入力部13あるいは表示部14との間の入出力インタフェース動作を行う入出力インタフェース(I/F)部15と、各需要家のデマンドレスポンス履歴に関する情報を作成する履歴情報作成部16と、履歴情報作成部16が作成したデマンドレスポンス履歴を格納する需要家履歴データベース(DB)17と、需要家履歴データベース17を参照して需要家毎の優先度である需要家優先度を計算する優先度計算部18と、優先度計算部18が計算した需要家優先度を格納する需要家優先度情報データベース(DB)19と、電力消費の削減目標に関する情報を記憶する削減目標情報データベース(DB)20と、アグリゲート事業者と需要家との間で交わされたデマンドレスポンスに関する契約情報を格納した契約情報データベース(DB)21と、デマンドレスポンス計画を作成するための各種計画作成パラメータを格納した計画作成パラメータデータベース(DB)22と、デマンドレスポンス要請対象の需要家の組合せを格納したデマンドレスポンス要請需要家組合データベース(DB)23と、を備えている。
【0014】
上記構成において、デマンドレスポンス計画最適化部11は、削減目標情報データベース19を参照して目標達成度ペナルティを計算する目標達成度ペナルティ計算部31と、需要家優先度情報データベース19を参照して優先度ペナルティを計算する優先度ペナルティ計算部32と、デマンドレスポンス要請対象の需要家組合せを作成する需要家組合せ作成部33と、を備えている。
【0015】
次に発電事業者あるいは系統事業者等のエネルギー供給業者からの電力削減要請データについて説明する。
図3は、電力削減要請データの一例の説明図である。
電力削減要請データ41は、電力削減要請対象の日付が格納された日付データ42と、要請対象の電力削減の実施時間帯を格納した一又は複数の実施時刻データ43と、各実施時刻データ43にそれぞれ対応する一又は複数の削減目標データ44と、を備えている。
【0016】
より具体的には、
図3の例の場合、日付データ42=「8月10日」であり、第1の実施時刻データ43−1=「14:00−14:30」であり、第2の実施時刻データ43−2=「14:30−15:00」であり、第1の実施時刻データ43−1に対応する時間帯の削減目標データ44−1=「2000.0kWh」であり、第2の実施時刻データ43−2に対応する時間帯の削減目標データ44−2=「2000.0kWh」である。
【0017】
図4は、需要家履歴データベースのデータ例の説明図である。
図4においては、理解の容易のため、需要家として四需要家(需要家A〜需要家D)が存在する場合を例として説明する。
【0018】
需要家履歴データベース17は、デマンドレスポンス実行日付が格納された日付データ51と、各需要家における電力削減時間帯を格納した実施時刻データ52と、電力削減時間帯毎の全需要家の削減電力量(負値の場合は、追加消費電力量)を格納した電力削減データ53と、需要家毎の平均削減量を格納した平均削減量データ54と、電力削減量の標準偏差データ55と、を備えている。
【0019】
より具体的には、例えば、日付データ=「8月3日」の実施時刻データ=「13:30−14:00」における需要家Aの削減電力量=「695.2kWh」であり、需要家Bの削減電力量=「−30.4kWh」であり、需要家Cの削減電力量=「0.0kWh」であり、需要家Dの削減電力量=「818.3kWh」である。そして、8月3日13:00〜9月8日15:00までの需要家Aの平均削減量=「720.8kWh」であり、需要家Bの平均削減量=「498.6kWh」であり、需要家Cの平均削減量=「927.9kWh」であり、需要家Dの平均削減量=「832.4kWh」である。
【0020】
さらに需要家Aの標準偏差=「σA」であり、需要家Bの標準偏差=「σB」であり、需要家Cの標準偏差=「σC」であり、需要家Dの標準偏差=「σD」である。
【0021】
図5は、契約情報データベースのデータ例の説明図である。
図5においても、理解の容易のため、需要家として四需要家(需要家A〜需要家D)が存在する場合を例として説明する。
【0022】
契約情報データデータベース21は、各需要家における電力削減時間帯を格納した実施時刻データ21Aと、電力削減時間帯毎の全需要家の削減可能電力量(最大削減可能電力量)を格納した電力削減可能量データ21Bと、を備えている。
【0023】
図5において、電力削減可能量データ21Bにおいて、数値が記入されていない部分は、削減可能電力が零、すなわち、電力削減に対応できない旨の契約(契約情報)を表している。逆に数値が記入されている部分については、記載された電力量まで削減を行う旨の契約(契約情報)となっている。
【0024】
より具体的には、例えば、実施時刻データ52=「13:00−13:00」における需要家Aの削減可能電力量=「700.0kWh」であり、需要家Bの削減可能電力量=「500.0kWh」であり、需要家Cの削減可能電力量=「0.0kWh」であり、需要家Dの削減可能電力量=「800.0kWh」である。
【0025】
同様に、例えば、実施時刻データ=「14:30−15:00」における需要家Aの削減可能電力量=「700.0kWh」であり、需要家Bの削減可能電力量=「500.0kWh」であり、需要家Cの削減可能電力量=「1000.0kWh」であり、需要家Dの削減可能電力量=「800.0kWh」である。
【0026】
図6は、デマンドレスポンス要請データの一例の説明図である。
デマンドレスポンス要請データ60は、大別すると、デマンドレスポンス要請対象の需要家を示す要請対象データ61と、デマンドレスポンス要請データ62と、を備えている。
【0027】
上記構成において、デマンドレスポンス要請データ62は、デマンドレスポンスを要請する時間帯を表す実施時刻データ63と、各需要家A〜Dへのデマンドレスポンス要請状態を表すデマンドレスポンス要請状態データ64と、を備えている。
【0028】
図6の例の場合、デマンドレスポンス要請対象の需要家は、需要家A〜Dの4需要家であるので、デマンドレスポンス要請状態データ64は、需要家Aに対応するデマンドレスポンス要請状態を表すデマンドレスポンス要請状態データ64A、需要家Bに対応するデマンドレスポンス要請状態を表すデマンドレスポンス要請状態データ64B、需要家Cに対応するデマンドレスポンス要請状態を表すデマンドレスポンス要請状態データ64C及び需要家Dに対応するデマンドレスポンス要請状態を表すデマンドレスポンス要請状態データ64Dを含んでいる。
【0029】
ある日付のある時間帯における需要家組合せ作成部により作成されたDR要請対象の需要家の組合せが、
図6に示すように、需要家の組合せ=「需要家A、需要家B及び需要家D」であった場合には、当該日付の当該時間帯において需要家Cに電力削減要請がなされることは無い。
【0030】
一方、需要家A、需要家B及び需要家Dに対しても、実施時刻データ=「13:00−13:30」、「13:30−14:00」、「15:00−15:30」、「15:30−16:00」においては、電力削減要請がなされることは無い。
【0031】
これらに対し、実施時刻データ=「14:00−14:30」及び実施時刻データ=「14:30−15:00」の2つの時間帯においては、需要家Aに対する削減要請電力量=「700.0kWh」であり、需要家Bに対する削減要請電力量=「500.0kWh」であり、需要家Dの削減要請電力量=「800.0kWh」である。
これらの結果、要請通りの電力削減がなされれば、合計2000.0(=700.0+500.0+800.0)kwhの電力削減が行えることとなる。
【0032】
次に実施形態の動作を説明する。
図7は、実施形態の動作フローチャートである。
まず最適デマンドレスポンス計画選択部34は、需要家の最適組合せを格納する集合S*を空集合(=φ)とし、デマンド要請におけるペナルティ最小値(=優先度ペナルティと達成度ペナルティの和)を格納する変数であるペナルティ最小値LeastCostを無限大(+∞)の値に設定する初期化を行う(ステップS1)。
【0033】
次に最適デマンドレスポンス計画選択部は、最初の需要家組合せS0を作成し、需要家組合せを格納する需要家組合せパラメータSに設定する(ステップS2)。
すなわち、
S←S0
とする。
需要家組合せSの作成方法としては、ランダムに作成したり、全ての組合せをしらみつぶしに作成するようにしたり、直前に作成した需要家組合せSに近い組合せ(需要家の一部を他の需要家と置き換えたり、削除したり、新たな需要家を追加する等)を選択したりするようにしてもよい。あるいは、シミューレーティッドアニーリング、タブーサーチ、遺伝的アルゴリズム等の公知のメタヒューリスティック手法を用いて作成するようにしてもよい。
【0034】
続いて、最適デマンドレスポンス計画選択部34は、ループパラメータn=1として(ステップS3)、需要家組合せSの優先度ペナルティPriorityPenalty(S)を計算する(ステップS4)。ここで、優先度ペナルティPriorityPenaltyは、需要家優先度ペナルティ期待値に相当する。
【0035】
ここで、需要家優先度について説明する。
需要家優先度は、デマンドレスポンス要請を行うに際して、優先的にデマンドレスポンス要請を行う度合いを示すものであり、本実施形態では、より需要家優先度の値が小さいほど優先度が高いものとする。
【0036】
図8は、需要家優先度の設定の一例の説明図である。
以下の説明においては、需要家として、需要家A〜需要家Eの5つの需要家がいるものとする。
【0037】
図8に示すように需要家Aの需要家優先度=1とし、需要家Bの需要家優先度=2とし、需要家Cの需要家優先度=3とし、需要家Dの需要家優先度=4とし、需要家Eの需要家優先度=5とするものとする。
すなわち、優先度は、需要家Aが一番高く、需要家A→需要家B→需要家C→需要家D→需要家Eの順番で低くなるものとする。
【0038】
次に実際の優先度ペナルティPriorityPenalty(S)の計算例について説明する。
まず、
図8に示した様に需要家優先度が設定されている場合に、デマンドレスポンス要請候補の需要家を需要家A、需要家B及び需要家Cとした場合の優先度ペナルティPriorityPenaltyの計算例を説明する。
図9は、マンドレスポンス要請候補の需要家を需要家A、需要家B及び需要家Cとした場合の優先度ペナルティPriorityPenaltyの計算例の説明図である。
本実施形態においては、各需要家の優先度ペナルティは、予め設定された需要家優先度の値と、各需要家をデマンドレスポンス要請候補として設定した順番である事後優先度の値の差として定義し、優先度ペナルティPriorityPenaltyは、各需要家の需要家優先度と事後優先度の値との差の自乗値の和と定義している。
従って、
図9に示すように、需要家Aの需要家優先度=1とし、需要家Bの需要家優先度=2とし、需要家Cの需要家優先度=3とし、需要家Dの需要家優先度=4とし、需要家Eの需要家優先度=5に対し、要家Aの事後優先度=1となり、需要家Bの事後優先度=2となり、需要家Cの事後優先度=3となり、需要家Dの事後優先度=4となり、需要家Eの事後優先度=5となった場合に、デマンドレスポンス要請候補の需要家を需要家A、需要家B及び需要家Cとした場合の優先度ペナルティPriorityPenalty(S)は、
PriorityPenalty(S)=0
となる。
【0039】
図10は、マンドレスポンス要請候補の需要家を需要家A、需要家C及び需要家Dとした場合の優先度ペナルティPriorityPenalty(S)の計算例の説明図である。
図10に示すように需要家Aの事後優先度=1となり、需要家Bの事後優先度=4となり、需要家Cの事後優先度=2となり、需要家Dの事後優先度=3となり、需要家Eの事後優先度=5となった場合に、デマンドレスポンス要請候補の需要家を需要家A、需要家C及び需要家Dとした場合の優先度ペナルティPriorityPenalty(S)は、
PriorityPenalty(S)
=(1−1)^2+(2−4)^2+(3−2)^2
+(4−3)^2+(5−5)^2
=0+4+1+1+0
=6
となる。
【0040】
図11は、マンドレスポンス要請候補の需要家を需要家A、需要家C及び需要家E0とした場合の優先度ペナルティPriorityPenalty(S)の計算例の説明図である。
従って、
図11に示すように需要家Aの事後優先度=1となり、需要家Cの事後優先度=2となり、需要家Cの事後優先度=2となり、需要家Dの事後優先度=3となり、需要家Eの事後優先度=3となった場合に、デマンドレスポンス要請候補の需要家を需要家A、需要家C及び需要家Eとした場合の優先度ペナルティPriorityPenaltyは、
PriorityPenalty(S)
=(1−1)^2+(2−4)^2+(3−2)^2
+(4−5)^2+(5−3)^2
=0+4+1+1+0
=10となる。
【0041】
次に最適デマンドレスポンス計画選択部は、需要家組合せSの達成度ペナルティTargetPenalty(S)を計算する(ステップS5)。
【0042】
図12は、達成度ペナルティの計算処理の処理フローチャートである。
まず最適デマンドレスポンス計画選択部34、需要家の電力削減状態(例えば、電力削減失敗時)に対応するペナルティ関数を作成する(ステップS12)。
ここで、ペナルティ関数としては、削減目標に対する削減実績の平均二乗誤差関数を用いる場合、削減目標を中心値とする井戸型関数を用いる場合、削減目標未達の場合にのみペナルティを課す関数等が挙げられる。
【0043】
例えば、平均二乗誤差関数の場合は、削減実績と削減目標との差の二乗に比例して達成度ペナルティTargetPenalty(S)が大きくなるようにされる。また井戸型関数の場合は、削減実績と削減目標との差の絶対値または比率がある大きさ以上の場合に一定の達成度ペナルティTargetPenalty(S)が科されるようにされる。また削減目標に未達の場合にのみ一定のペナルティを課す関数の場合は、削減量が、削減目標、削減目標マイナス一定値、または削減目標に一定の比率をかけた値、に未達の場合に達成度ペナルティTargetPenalty(S)が課されるようにされる。
【0044】
これらの関数は、一例であり、達成度ペナルティTargetPenalty(S)の値は、削減実績と削減目標との関係に基づいて適宜設定することが可能である。
【0045】
さらに需要家に対し、デマンドレスポンスの実行におけるコスト、確実性、応答速度等に関する各需要家の優先順位を考慮する場合には、所定の優先順位からのずれを、以上説明した達成度ペナルティTargetPenalty(S)に加えることも可能である。
【0046】
次に最適デマンドレスポンス計画選択部34は、各需要家の過去のデマンドレスポンス実績に基づいて電力削減量の予測分布を作成する(ステップS12)。
この場合において、需要家ごとに独立に分布関数を推定する手法を用いてもよいし、需要家の各組合せに対する分布関数を推定する手法を用いてもよい。また、ヒストグラムを作ってそのまま削減量をサンプリングに用いる手法を使ってもよいし、正規分布などの関数形を仮定してパラメータ推定した上でサンプリングする手法を用いてもよい。
【0047】
また複数の需要家の間に、業種が同じなどの理由から、削減量の傾向に共通性がみられる場合は、共通の事前分布を使った上でサンプリングするようなベイズ的な手法を用いてもよい。さらに、需要家の情報がない最初の段階では分散の大きな分布を利用し、情報が集まるにつれて確度が高まるような手法である、強化学習、バンデッドアルゴリズム等の手法を用いても良い。
【0048】
そして、最適デマンドレスポンス計画選択部34は、達成度ペナルティTargetPenalty(S)の最小値を格納する変数であるペナルティ最小値penalty_minを無限大(+∞)の値を設定し、需要家の最適組合せを格納する集合S*を空集合(=φ)とする(ステップS13)。
【0049】
続いて、最適デマンドレスポンス計画選択部34は、ループパラメータk=1として(ステップS4)、k番目の需要家組合せS(k)を作成する(ステップS15)。
需要家組合せS(k)の作成方法としては、ランダムに作成したり、全ての組合せをしらみつぶしに作成するようにしたり、直前に作成した需要家組合せS(k−1)に近い組合せ(需要家の一部を他の需要家と置き換えたり、削除したり、新たな需要家を追加する等)を選択したりするようにしてもよい。あるいは、シミューレーティッドアニーリング、タブーサーチ、遺伝的アルゴリズム等の公知のメタヒューリスティック手法を用いて作成するようにしてもよい。
【0050】
次に最適デマンドレスポンス計画選択部34は、ステップS114で作成したペナルティ関数及びステップS12で作成した需要家毎の電力削減についての予測分布に基づいてステップSで作成したk番目の需要家組合せS(k)に電力削減を行わせた場合の達成度ペナルティ期待値Penaltyを計算する(ステップS16)。
【0051】
より詳細には、需要家組合せS(k)に対して、例えば、ステップS12で作成した各需要家の削減量予測分布を用いてT回サンプリングし、各需要家の削減量の組合せを生成する。
ここで、t回目の需要家iの削減量をx
tiとする。
このとき需要家の削減量の合計量は、次式で表される。
【0053】
これに対し、ペナルティ関数が、削減目標Aとの二乗誤差により計算される場合は、t回目のペナルティは、次式で表される。
【0055】
したがって、T回試行時の、達成度ペナルティ期待値Penaltyは、次式により計算される。
【0057】
次に、最適デマンドレスポンス計画選択部34は、ステップS16で計算した達成度ペナルティ期待値Penaltyが現在のペナルティ最小値penalty_min未満であるか否かを判別する(ステップS17)。すなわち、最適デマンドレスポンス計画選択部は、次式を満たしているか否かを判別する。
Penalty<penalty_min
【0058】
ステップS17の判別において、
Penalty<penalty_min
を満たしていると判別した場合には(ステップS17;Yes)、ペナルティ最小値penalty_minにステップS16で計算したペナルティ期待値Penaltyを代入して置き換え、集合S*を需要家組合せS(k)とする(ステップS18)。
penalty_min←Penalty
S*←S(k)
そして、処理を再びステップS15に移行し、k=k+1とし、k=kmaxとなるまで同様の処理を繰り返す。
【0059】
また、ステップS17の判別において、
Penalty≧penalty_min
の場合、すなわち、
Penalty<penalty_min
を満たしていないと判別した場合には(ステップS17;No)、処理を再びステップS15に移行し、k=k+1とし、k=kmaxとなるまで同様の処理を繰り返す。
【0060】
ここで、ペナルティ期待値の計算の具体例について説明する。
説明の簡略化のため、全体として5つの需要家A〜Eのうち、需要家A、C、Dにデマンドレスポンス要請を行って電力を削減する場合を例として説明する。
【0061】
図13は、需要家A、C、Dにデマンドレスポンス要請を行って電力を削減する場合の達成度ペナルティ計算例の説明図である。
【0062】
この場合において、需要家Aの各スロット(電力量削減単位期間;例えば、30分)における削減目標値契約量は、
図13に示すように、80kWh、需要家Cの削減目標値契約量は25kWh、需要家Dの削減目標値契約量は25kWhであるものとする。
また、各スロットにおける削減目標値は、説明の簡略化のため、全て100kWhであるものとする。
【0063】
図13において、各需要家の削減目標値契約量の欄の各スロットに対応する欄には、当該スロットにおいてデマンドレスポンス要請があった場合に“1”が格納され、当該スロットにおいてデマンドレスポンス要請がなかった場合に“0”が格納されているものとする。
【0064】
例えば、第1スロット(図中、「スロット1」と表記)においては、需要家Aの削減目標値契約量の欄の各スロットに対応する欄には“0”が格納され、需要家Cの削減目標値契約量の欄の各スロットに対応する欄には“0”が格納され、需要家Dの削減目標値契約量の欄の各スロットに対応する欄には“1”が格納されているので、需要家Dにのみ削減目標値契約量25kWhのデマンドレスポンス要請がなされている。
【0065】
したがって、この場合の削減要請量合計は、25kWhとなっている。この結果、削減要請量合計から削減目標量を差し引いた電力量=25−100=−75kWhとなっており、その自乗誤差は5625(=−75^2)となる。
【0066】
また、例えば、第5スロット(図中、「スロット5」と表記)においては、需要家Aの削減目標値契約量の欄の各スロットに対応する欄には“1”が格納され、需要家Cの削減目標値契約量の欄の各スロットに対応する欄には“1”が格納され、需要家Dの削減目標値契約量の欄の各スロットに対応する欄には“1”が格納されているので、需要家Aには削減目標値契約量80kWh、需要家Cには削減目標値契約量25kWh及び需要家Dには削減目標値契約量25kWhのデマンドレスポンス要請がなされている。
【0067】
したがって、この場合の削減要請量合計は、130kWh(=80+25+25kWh)となっている。この結果、削減要請量合計から削減目標量を差し引いた電力量=130−100=30kWhとなっており、その自乗誤差は900(=30^2)となる。
第1スロットから第6スロットにおける自乗誤差の和を求め、さらに自乗和の平方根をとることで、達成度ペナルティTargetPenalty(S)を求めている。
【0068】
具体的には、
図13の例の場合、
達成度ペナルティTargetPenalty(S)
=√(5625+5625+25+900+900+900)
=118.2
となっている。
【0069】
次に最適デマンドレスポンス計画選択部34は、ステップS4で算出した優先度ペナルティPriorityPenalty(s)及びステップS5で算出した達成度ペナルティTargetPenalty(S)の和がペナルティ最小値LeastCost以下であるか否かを判別する(ステップS6)。
【0070】
すなわち、
LeastCost≧PriorityPenalty(s)
+TargetPenalty(S)
を満たしているか否かを判別する。
【0071】
ステップS6の判別において、
LeastCost≧PriorityPenalty(s)
+TargetPenalty(S)
を満たしている場合には(ステップS6;Yes)、ペナルティ最小値LeastCostを更新する(ステップS7)。
【0072】
具体的には、
LeastCost=PriorityPenalty(s)
+TargetPenalty(S)
とし、需要家の最適組合せを格納する集合S←需要家組合せパラメータSとして処理をステップS8に移行する。
【0073】
また、ステップS6の判別において、
LeastCost≧PriorityPenalty(s)
+TargetPenalty(S)
を満たしていない場合には、すなわち、
LeastCost<PriorityPenalty(s)
+TargetPenalty(S)
である場合には(ステップS6;No)、需要家組合せの次候補N(s)を作成して、需要家組合せパラメータSに設定する(ステップS8)。
そして、再び処理をステップS3に移行し、ループパラメータnがnの最大値Nmaxとなるまで同様の処理を繰り返すこととなる。
【0074】
図14は、ループパラメータn=1から順次行った場合の優先度ペナルティPriorityPenalty(s)及び達成度ペナルティTargetPenalty(S)の和の遷移の一例を説明する図である。
図14に示すように、n=1〜5までの範囲で、すなわち、需要家組合せパラメータS=S0〜S4の範囲で、優先度ペナルティPriorityPenalty(s)及び達成度ペナルティTargetPenalty(S)の和(ペナルティ合計)は、
91.5→107.4→131.1→91.0→77.4
と変化しており、この範囲で、ペナルティ最小値LeastCostは、
91.5→91.5→91.5→91.0→77.4
と変化して、徐々にペナルティ最小値LeastCostが更新されていることとなる。
【0075】
以上の説明のように、本実施形態によれば、需要家優先度を遵守しつつデマンドレスポンス要請量を満たしたデマンドレスポンス計画を立てることが可能なデマンドレスポンス計画装置を提供することができる。
また、需要家の電力需要を賄いつつ、より一層の収益を上げることが可能となる。
となる。
【0076】
[3]実施形態の変形例
以上の説明においては、アグリゲート事業者に課される優先度ペナルティ及び達成度ペナルティの和(例えば、ペナルティ金額)を最小化する手法について述べたが、電力会社から得られる金額、需要家に支払うインセンティブ額もしくはアグリゲート事業者として受け取るインセンティブ額または支払う罰金額を考慮して、「アグリゲート事業者が得る金額−アグリゲート事業者が支払う罰金額」を最大化するような最適化を実施しても構わない。この場合、実施形態におけるステップS4及びステップS5の処理において、期待値計算部分を入れ替えるだけで実現可能である。
【0077】
図15は、デマンドレスポンス計画装置をコンピュータとして構成した場合の概要構成ブロック図である。
デマンドレスポンス計画装置10は、CPUなどの制御装置71と、キーボードやマウスなどの入力装置72と、ディスプレイ装置などの表示装置73と、通信ネットワークなどを介して外部装置と通信を行う通信装置74と、ROM、RAMなど半導体記憶装置あるいは、HDD、CDドライブ装置などの外部記憶装置を含む記憶装置75と、を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0078】
本実施形態のデマンドレスポンス計画装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されるようにしてもよい。
【0079】
また、本実施形態のデマンドレスポンス計画装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のデマンドレスポンス計画装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0080】
また、本実施形態のデマンドレスポンス計画装置のプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。