(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によれば、技術者による接続設定パラメータの設定が正しく完了するまで、数値制御装置はデバイスの詳細情報を参照し、利用することができない。
【0006】
一方、例えば数値制御装置の扱いに習熟していない技術者が工作機械の立上げを行う場合等には、接続設定パラメータの設定を適切に行うために、デバイスの詳細情報を利用したいことがある。しかしながら、デバイスの詳細情報はそもそも接続設定パラメータの設定が正しく完了していなければ参照できない。したがって、数値制御装置の扱いに習熟していない技術者にとって、工作機械の立上げ作業は負担の大きいものであった。
【0007】
そこで、数値制御装置と接続されるデバイスの詳細情報を利用する前の段階における接続設定パラメータの設定作業を不要にすることができれば、換言すれば、接続設定パラメータを取得することなくデバイスの詳細情報を参照できれば、技術者が工作機械を立上げる際の作業負担を削減することが可能である。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであって、結線されたデバイスの詳細情報を接続設定前に自動取得する数値制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施の形態にかかる数値制御装置は、複数のデバイスを接続可能な数値制御装置であって、
ハードウェア的に接続された前記デバイス
と通信を行って、前記デバイスの接続順番及び前記デバイスの種類を示す情報を含む接続情報を取得する接続情報取得部と、前記接続情報を利用して接続用データを作成する接続用データ作成部と、前記接続用データを使用して前記デバイスと
の接続処理を行う接続処理実行部と、前記接続処理を行った前記デバイスから詳細情報を取得する詳細情報取得部と
、前記接続情報と接続設定パラメータとを比較する接続情報比較部
を備え、前記接続用データ作成部は、前記接続情報比較部による比較の結果、前記接続情報と前記接続設定パラメータとに問題がある場合に、前記接続情報を利用して接続用データを作成することを特徴とする。
本発明の一実施の形態にかかる数値制御装置は、前記接続用データは、アンプ、モータ、別置検出器又は入出力機器を特定する番号を含むことを特徴とする。
本発明の一実施の形態にかかる数値制御装置は、前記詳細情報取得部は
、通信を繰返し、前記デバイスから追加的な情報を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、結線されたデバイスの詳細情報を接続設定前に自動取得する数値制御装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態にかかる数値制御装置1の構成について説明する。
図2は、本発明の実施の形態にかかる数値制御装置1の要部の概略的なハードウェア構成図である。
【0013】
数値制御装置1が備えるCPU11は、数値制御装置1を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、不揮発性メモリ14に格納されたプログラムをバス20を介して読み出し、プログラムに従って数値制御装置1全体を制御する。
【0014】
不揮発性メモリ14は、例えば図示しないバッテリでバックアップされるなどして、数値制御装置1の電源がオフされても記憶状態が保持されるメモリとして構成される。不揮発性メモリ14に記憶されているプログラム、データは、利用時には揮発性メモリ13に展開されても良い。揮発性メモリ13には、不揮発性メモリ14から展開されたプログラム、データの他、一時的な計算データや表示データ、入力装置を介して入力されたデータ等が格納される。
【0015】
表示器/MDIユニット70はディスプレイやキーボード等を備えたデータ入出力装置である。表示器/MDIユニット70のキーボードから入力された指令やデータは、インタフェース15を介してCPU11に渡される。また、CPU11から出力された表示データは、インタフェース15を介して表示器/MDIユニット70のディスプレイに表示される。
【0016】
シリアルバス16は、1以上のデバイス81,82,・・・をデイジーチェーン方式で接続するためのインタフェースである。デバイス81,82,・・・から入力されたデータは、シリアルバス16を介してCPU11に渡される。また、CPU11から出力された指令やデータは、シリアルバス16を介してデバイス81,82,・・・に出力される。
【0017】
デバイス81,82,・・・はそれぞれデバイス制御部を有する。デバイス制御部は、数値制御装置の接続情報取得部(後述)の要求に応じて、当該デバイスの識別情報を送信する。識別情報は、例えばデバイスの種類等を示す情報等である。識別情報は、数値制御装置がデバイスとのハードウェアレベルの通信のみで取得することができる。
【0018】
図4は、本発明の実施の形態に係る数値制御装置1の概略的な機能構成を示すブロック図である。
図3は、従来の数値制御装置の概略的な機能構成を示すブロック図である。両者を対比しつつ、数値制御装置1の機能構成について説明する。
【0019】
従来の数値制御装置は、シリアルバスにデイジーチェーン接続された各デバイス(デバイス1,デバイス2,・・・)から接続情報を取得する接続情報取得部、接続情報と、外部から読み込まれる接続設定パラメータと、を照らし合わせて問題の有無を確認する接続情報比較部、接続設定パラメータに基づいて接続用データを作成しデバイスとの接続処理を行う接続処理実行部、接続処理が完了したデバイスから詳細情報を取得する詳細情報取得部を有する。
【0020】
接続情報とは、デイジーチェーン上のデバイスの位置を示す接続順番と、識別情報と、の対応関係を示す情報である。本実施の形態では、接続順番は、数値制御装置に近い方から1,2,・・・と昇順にナンバリングされるものとする。
図11に接続情報の一例を示す。この例では、接続順番と、識別情報としてSV(サーボアンプ)、SP(スピンドルアンプ)等のデバイスの種類を示す情報が対応付けられている。
【0021】
接続設定パラメータは本実施形態では次の3つの情報を含む。
・アンプ番号:数値制御装置と特定のアンプとのインタフェース番号。すなわち数値制御装置がアンプを一意に特定できる識別子。
・モータ番号:数値制御装置と特定のモータとのインタフェース番号。すなわち数値制御装置が
モータを一意に特定できる識別子。
・対応番号:数値制御装置上の論理軸と、アンプ番号、モータ番号との組み合わせを一意に特定するための識別子。
【0022】
図9に示すように、数値制御装置の複数の論理軸(論理軸1,2,3,・・・)は、それぞれ特定のアンプ及びモータを制御する。接続設定パラメータは、各論理軸と、各アンプ及びモータとを対応付けるためのデータである。
【0023】
接続用データとは、数値制御装置が各種アンプ、モータ等との接続を完了するために必要なデータである。接続用データは、接続設定パラメータに基づいて作成される組み合わせテーブルを用いて作成される、デバイスとの接続処理を行うための設定データである。
図13に、組み合わせテーブルの一例を示す。この組み合わせテーブルでは、アンプ番号、モータ番号、対応番号とが対応付けられている。
【0024】
接続設定パラメータを数値制御装置に読み込む手順について説明する。接続設定パラメータ設定部は、典型的にはPC(パーソナルコンピュータ)又はMDIユニット等により構成され、技術者による接続設定パラメータの入力を受け付ける。パラメータ保存部は、接続設定パラメータ設定部に入力された接続設定パラメータを保存する記憶領域であり、典型的には数値制御装置上の不揮発性メモリ上に設けられる。接続設定パラメータ読み込み部は、接続設定パラメータ保存部から接続設定パラメータを読み込んで接続情報比較部が使用できるようにする処理部である。典型的には数値制御装置上の不揮発性メモリから揮発性メモリへ接続設定パラメータを読み込む。
【0025】
一方、本実施の形態にかかる数値制御装置1は、接続情報取得部101、接続情報比較部102、接続用データ作成部103、接続処理実行部104、及びデバイスから詳細情報を取得する詳細情報取得部105を有する。
【0026】
接続情報取得部101は、数値制御装置1にハードウェア的に接続されたデバイスから、接続情報を取得する。接続情報の取得については公知技術であるから、ここでは詳細な説明を省略する。
【0027】
接続情報比較部102は、従来の数値制御装置と同様に接続情報と、接続設定パラメータ読み込み部により読み込まれる接続設定パラメータと、を照らし合わせて問題の有無を確認する。
【0028】
接続用データ作成部103は、接続情報取得部101が取得した接続情報に基づいて接続用データを作成する。従来の数値制御装置では接続用データの作成には接続設定パラメータを使用するが、本実施の形態にかかる数値制御装置1では接続設定パラメータを使用できない場合には接続情報を使用する点に特徴がある。
【0029】
接続処理実行部104は、接続用データ作成部103が作成した接続用データを使用してデバイスとの接続処理を行う。接続処理については公知技術であるから、ここでは詳細な説明を省略する。
【0030】
詳細情報取得部105は、接続処理実行部104により接続が行われたデバイスから詳細情報を取得する。接続完了後の詳細情報の取得については公知技術であるから、ここでは詳細な説明を省略する。
【0031】
図5のフローチャートを用いて、従来の数値制御装置における、デバイスからの詳細情報の取得手順について説明する。接続設定パラメータ設定部において作成され、接続設定パラメータ保存部に保存された接続設定パラメータが、接続設定パラメータ読み込み部により数値制御装置に読み込まれる。次に、数値制御装置において接続処理が行われる。すなわち、接続情報取得部が、シリアルバスにデイジーチェーン接続された各デバイスから接続情報を取得する。接続情報比較部は、取得した接続情報と、接続設定パラメータと、を照らし合わせて問題の有無を確認する。ここで問題があれば接続処理を終了する。問題なしと判断された場合は、接続処理実行部が接続設定パラメータに基づいて接続用データを作成し、デバイスとの接続処理を行う。最後に、詳細情報取得部がデバイスから詳細情報を取得する。
【0032】
一方、本実施の形態にかかる数値制御装置1におけるデバイスからの詳細情報の取得手順は次のとおりである。
図7及び
図8に示す事例を用いて数値制御装置1の動作について説明する。
図7は工作機械立ち上げ時における数値制御装置1へのデバイスの接続状況である。数値制御装置1には、サーボアンプ#1、サーボアンプ#2、スピンドルアンプ#1がこの順序でデイジーチェーン接続されているものとする。そしてサーボアンプ#1にはサーボモータ#1乃至#3が、サーボアンプ#2にはサーボモータ#4が、スピンドルアンプ#1にはスピンドルモータ#1がそれぞれ接続されている。
図8に、サーボアンプ#1、サーボアンプ#2、スピンドルアンプ#1各々の詳細情報を示す。
【0033】
図6のフローチャートを用いて、数値制御装置1におけるデバイスからの詳細情報の取得手順について説明する。
S101:接続設定パラメータ設定
接続設定パラメータ設定部において技術者により接続設定パラメータが入力される。
S102:接続設定パラメータを不揮発性メモリへ保存
S101で入力された接続設定パラメータが、不揮発性メモリ14に保存される。接続設定パラメータは一度不揮発性メモリ14に保存されると、数値制御装置1の電源が遮断されても消去されることなく保持される。
S103:接続設定パラメータ読み込み
接続設定パラメータ読み込み部により、接続設定パラメータ保存部に保存されている接続設定パラメータが揮発性メモリ13に読み込まれる。なお、工作機械立上げ時には接続設定パラメータ保存部に接続設定パラメータが保存されていないため、接続設定パラメータの読み込みは行われない。
【0034】
S104:接続情報取得
図10に示すように、接続情報取得部101は、数値制御装置1にハードウェア的に接続された各アンプ(サーボアンプ#1、サーボアンプ#2、スピンドルアンプ#1)に対して識別情報の送信を要求する。要求に応答して、各アンプは接続情報取得部101に対し識別情報を送信する。接続情報取得部101は各アンプから識別情報を受信する。これにより、シリアルバスへのデバイスの接続順序が分かる。すなわち、識別情報は数値制御装置1からの接続順に従って受信される。あるいは、各デバイスのデバイス制御部が接続順番と識別情報とをセットにして応答を送信することもできる。接続情報取得部101は、受信した識別情報と受信した順番とをセットで記憶することで、接続情報を作成する。
【0035】
図11に、接続情報取得部101が作成した接続情報を示す。この例では、識別情報としてデバイスの種類を示す「SV」「SP」等のデータのみが取得されている。この場合、数値制御装置1はハードウェアレベルでの通信により、
図12に示すように、接続順番1乃至4に4つのSV(サーボアンプ)が接続されているものと認識する。しかし、実際に数値制御装置1に接続されているサーボアンプは、
図7に示すように、3軸のサーボアンプ(サーボアンプ#1)と1軸のサーボアンプ(サーボアンプ#2)の2台である。このように、接続情報だけでは、数値制御装置1は複数軸のアンプを複数台の1軸アンプとしてしか認識することができない。すなわち、接続情報だけでは、数値制御装置1が認識できる工作機械の構成と実際の構成とは異なる場合がある。
【0036】
S105:接続情報と接続設定パラメータの確認
接続情報比較部102は、接続情報と接続設定パラメータとを比較し、設定に問題がないかを確認する。問題がない場合、すなわち接続情報と接続設定パラメータとの整合性がとれている場合は、TRUEの処理(S106)に進む。一方、問題がある場合、すなわち接続情報と接続設定パラメータとの整合性がとれていない場合は、FALSEの処理(S107)に進む。本実施の形態の場合は、S103で接続設定パラメータが取得されないので、FALSEの処理に進む。
【0037】
S106:接続用データ作成(従来技術)
接続用データ作成部103は、従来の数値制御装置と同様に、接続設定パラメータから組み合せテーブルを作成し、組み合わせテーブルから接続用データを作成する。
【0038】
S107:接続用データ作成
接続用データ作成部103は、接続情報から組み合せテーブルを作成し、組み合わせテーブルから接続用データを作成する。
【0039】
なお、従来の数値制御装置は、接続設定パラメータから組み合せテーブルを作成している。この組み合わせテーブルには、アンプ番号、モータ番号が含まれる。アンプ番号、モータ番号は、本来であれば接続設定パラメータにおいて設定すべき情報である。しかしながら、アンプ番号、モータ番号はデバイスの詳細情報を参考にしなければ容易に作成できない場合がある。しかしながら、この段階では詳細情報がまだ取得されていないため、技術者はアンプ番号、モータ番号を設定する手がかりがない。
【0040】
この点に関連して、発明者は、組み合せテーブルに含まれるアンプ番号、モータ番号が必ずしも完全に正確でなくとも、一定の条件を満たせば、デバイスとの接続処理が成功することを発見した。より具体的には、アンプ番号、モータ番号の一部に接続情報に含まれる情報(デバイスの種類を示す情報)を含めたり、アンプ番号、モータ番号を所定の形式で記述するなどの条件が整えば、アンプ番号、モータ番号がダミーデータであってもデバイスとの接続処理を行うことができる場合がある。
【0041】
例えば接続用データ作成部103は、接続情報に含まれるデバイスの種類を示す情報を含む接頭辞を作成し、接頭辞毎にシリアル番号を追加していく。シリアル番号は、接続順番に応じて付与することができる。実際の構成には複数軸を持つアンプが含まれていても、ここでは全て1軸アンプと仮定して付番していく。このようにして作成したアンプ番号、モータ番号を用いて、組み合わせテーブルを作成する。
【0042】
このように接続用データ作成部103は、S104で取得した接続情報を使用して仮のアンプ番号、モータ番号、対応番号を作成し、これらを含む仮の組み合わせテーブルを作成する。
図13に、仮の組み合わせテーブルの一例を示す。このテーブルに含まれるアンプ番号、モータ番号は、接続用データ作成部103が接続情報を元に生成した仮の情報、換言すればダミーデータである。そして接続用データ作成部103は、仮の組み合わせテーブルを用いて接続用データを作成する。
【0043】
なお、ここで作成する仮の組み合わせテーブルは、本実施の形態における詳細情報取得の用途にのみ使用することが好ましい。実際にデバイスを動作させる際には、後段で取得する詳細情報を参考として、新たに接続設定パラメータを作成し、通常の手順によりデバイスとの接続処理をやり直すことができる。
【0044】
S108:接続処理
接続処理実行部104は、S106又はS107で作成した接続用データを用いて、各アンプ、モータとの接続処理を行う。
【0045】
S109:詳細情報取得
詳細情報取得部105は、接続処理が完了した各アンプ、モータから詳細情報を取得する。この段階でようやく数値制御装置1は、例えばサーボアンプ#1が3軸アンプであることなどが認識可能になる。
なお詳細情報取得部105は、必要に応じて通信設定を変更・追加するなどしつつソフトウェアレベルでの通信を繰返し、さらに詳細な情報をデバイスから取得しても良い。
【0046】
図15は、数値制御装置1がS109で取得した詳細情報を画面表示する機能の実現例を示す図である。一方、
図14は従来の数値制御装置の画面表示の一例である。
図16のフローチャートを用いて、
図15の画面表示にかかる処理について説明する。
【0047】
数値制御装置1の表示部106(図示しない)は、技術者により接続状態確認画面が選択されると、数値制御装置1は表示用データを取得する。表示用データは、接続情報及び詳細情報を含む。接続情報は、接続情報取得部101がS104において取得したものである。また詳細情報は、詳細情報取得部105はS109において取得したものである。
【0048】
表示部106は、接続情報が取得されていれば、接続情報を画面上に表示する。
図14(従来技術)及び
図15(本実施形態)では、いずれにも接続情報が表示されている。また表示部106は、詳細情報が取得されていれば、詳細情報を画面上に表示する。
図14(従来技術)ではこの段階では詳細情報を取得する機能がないので詳細情報は表示されないが、
図15(本実施形態)では詳細情報が表示されている。
【0049】
本実施の形態によれば、技術者が接続設定パラメータの設定時にデバイスの詳細情報を参照できるので、設定の負担や設定ミスを削減することができる。また、数値制御装置とデバイスとの結線状態の詳細を視覚的に見られるので、結線の間違い等に容易に気付くことができる。
【0050】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。例えば、上述の実施形態ではデバイスがシリアルバスにデイジーチェーン接続されている場合を例として説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、接続情報取得部101が接続順番と識別情報とを取得可能であればいかなる接続形態であっても構わない。
【0051】
また、上述の実施の形態では、デバイスとしてアンプ、モータ、別置検出器等を例示したが、本発明はこれに限定されるものでなく、上述の実施の形態のデバイスと同様の動作をするものであれば、例えば操作盤、モニタ、センサ類等の入出力機器をデバイスの代わりに採用しても良い。