特許第6725712号(P6725712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6725712-水処理方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6725712
(24)【登録日】2020年6月29日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/78 20060101AFI20200713BHJP
   C02F 1/70 20060101ALI20200713BHJP
   C02F 1/72 20060101ALI20200713BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
   C02F1/78
   C02F1/70 Z
   C02F1/72 Z
   C02F1/28 D
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-17419(P2019-17419)
(22)【出願日】2019年2月1日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】奥田 健介
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−104726(JP,A)
【文献】 特開2003−062583(JP,A)
【文献】 特開2005−230731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28、70−78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭素含有成分を含む被処理水を酸化処理して処理済水を得る水処理方法であって、
前記被処理水に対して、オゾン及び過酸化水素を添加して、前記被処理水を促進酸化処理する工程(A)と、
前記工程(A)を経た前記被処理水に対して還元剤を添加して被処理水−還元剤混合物として、前記被処理水に残存する過酸化水素を分解する工程(B)と、
前記工程(B)を経た前記被処理水を、粒状体充填層に通す工程(C)と、を含み、
少なくとも、
(i)前記工程(A)を経た前記被処理水中における臭素酸イオン濃度を15μg/L以下とすること、又は、
(ii)前記工程(A)で添加する前記過酸化水素の添加量が、モル基準で、前記オゾンの添加量の2倍以上となるようにすること、
の何れかを成立させることを含む、
水処理方法。
【請求項2】
前記工程(B)における前記被処理水−還元剤混合物のpHが5.0超である、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記工程(B)で添加する前記還元剤が亜硫酸塩である、請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項4】
前記工程(C)を経た前記被処理水の酸化還元電位が0超である、請求項1〜3の何れかに記載の水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理方法に関するものである。特に、本発明は、臭素含有成分を含む被処理水を酸化処理して処理済水を得る水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オゾンが強い酸化力を有するという特性を利用して、オゾンガスを被処理水中に散気するオゾン処理により、被処理水中の有機物、無機物、及びカビ臭物質等を酸化除去する水処理が広く実施されてきた。オゾン処理では、オゾン分子による酸化分解反応と、オゾン分子が分解して生成したヒドロキシラジカルによる酸化分解反応とが行われる。近年、特に、ヒドロキシラジカルの酸化力が非常に高いことが見出され、オゾンに対して、紫外線及び過酸化水素などを組み合わせることで、ヒドロキシラジカルの生成を促進させることで、オゾン分子では分解し難い難分解性物質を分解することができる、促進酸化処理(advanced oxidation process:AOP)という水処理方法が着目されている。
【0003】
促進酸化処理では、被処理水に臭素含有成分が含有されていると、これがオゾンと反応して臭素酸イオンを生成することがある。そこで従来、促進酸化処理により生成された臭素酸イオンを分解する目的で、被処理水を促進酸化処理した後に、還元剤処理を行う処理方法が検討されてきた(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、還元剤処理工程において、促進酸化処理済みの被処理水を、pH5以下に調整した上で、還元剤と接触させる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−62583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の処理方法には、還元剤処理工程を経て得られる処理済水中における臭素酸イオン濃度を、より低濃度とする余地があった。
【0006】
また、促進酸化処理を採用した水処理方法では、促進酸化処理工程の後段に、例えば、粉末活性炭及びその他の粒状の吸着材が充填されてなる充填層(以下、「粒状体充填層」と称する。)に対して、促進酸化処理工程を経た被処理水を導入する工程を実施することが一般的に行われている。ここで、促進酸化処理工程にてヒドロキシラジカルの生成を促進する目的で、過酸化水素を添加した場合には、粒状体充填層に導入された被処理水中に過酸化水素が残留していることがある。そうすると、過酸化水素が粒状体充填層にて分解して発泡し、粒状体充填層の空隙に泡が充満して粒状体充填層を閉塞させてしまう虞があった。
【0007】
そこで、本願発明は、オゾン及び過酸化水素を併用した促進酸化処理工程を採用した水処理方法であって、粒状体充填層が過酸化水素に起因する泡により閉塞することを効果的に抑制しつつ、臭素酸イオン濃度が充分に低い処理済水を得ることができる、水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。本発明者は、臭素酸イオンが生成され難くするような態様で、オゾン及び過酸化水素を併用した促進酸化処理工程を実施すること、及び、促進酸化処理工程を経た被処理水に対して還元剤を添加して、促進酸化処理工程で消費されずに被処理水中に残留した過酸化水素を分解してから、粒状体充填層に供給することで、粒状体充填層が過酸化水素に起因する泡により閉塞することを効果的に抑制しつつ、臭素酸イオン濃度が充分に低い処理済水を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の水処理方法は、臭素含有成分を含む被処理水を酸化処理して処理済水を得る水処理方法であって、前記被処理水に対して、オゾン及び過酸化水素を添加して、前記被処理水を促進酸化処理する工程(A)と、前記工程(A)を経た前記被処理水に対して還元剤を添加して被処理水−還元剤混合物として、前記被処理水に残存する過酸化水素を分解する工程(B)と、前記工程(B)を経た前記被処理水を、粒状体充填層に通す工程(C)と、を含み、少なくとも、(i)前記工程(A)を経た前記被処理水中における臭素酸イオン濃度を15μg/L以下とすること、又は、(ii)前記工程(A)で添加する、前記過酸化水素の添加量が、モル基準で、前記オゾンの添加量の2倍以上となるようにすること、の何れかを成立させることを含むことを特徴とする。このような水処理方法によれば、粒状体充填層が過酸化水素に起因する泡により閉塞することを効果的に抑制しつつ、臭素酸イオン濃度が充分に低い処理済水を得ることができる
【0010】
ここで、本発明の水処理方法において、前記工程(B)における前記被処理水−還元剤混合物のpHが5.0超であることが好ましい。このような水処理方法により、一層良好に、粒状体充填層が過酸化水素に起因する泡により閉塞することを抑制することができるからである。
【0011】
また、本発明の水処理方法において、前記工程(B)で添加する前記還元剤が亜硫酸塩であることが好ましい。このような水処理方法により、一層良好に、粒状体充填層が過酸化水素に起因する泡により閉塞することを抑制することができるからである。
【0012】
さらに、本発明の水処理方法において、前記工程(C)を経た前記被処理水の酸化還元電位が0超であることが好ましい。このような水処理方法によれば、水処理効率を一層向上することができるからである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水処理方法によれば、オゾン及び過酸化水素を併用した促進酸化処理工程を採用した場合に、粒状体充填層が過酸化水素に起因する泡により閉塞することを効果的に抑制しつつ、臭素酸イオン濃度が充分に低い被処理水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に従う水処理方法を行う代表的な水処理装置の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。本発明の水処理方法は、特に限定されることなく、例えば、浄水場等において、臭素含有成分を含む被処理水中の有機物、無機物、及び臭気物質等を除去するための高度処理に用いられうる。また、近年利用が拡大されている下水再生水利用プロセスにおいてオゾン処理及び促進酸化処理を用いる場合であって、特に、再生水の用途が、人が直接接触する蓋然性が高い用途である場合には、快適性等を向上する観点から、本発明を好適に適用しうる。
【0016】
(水処理方法)
本発明の水処理方法は、臭素含有成分を含む被処理水を酸化処理して処理済水を得る水処理方法であって、被処理水に対して、オゾン及び過酸化水素を添加して、所定の方法で被処理水を促進酸化処理する工程(A)と、工程(A)を経た被処理水に対して還元剤を添加して被処理水−還元剤混合物として、被処理水に残存する過酸化水素を分解する工程(B)と、工程(B)を経た被処理水を、粒状体充填層に通す工程(C)と、を含むことを特徴とする。本発明の水処理方法は、被処理水を所定の方法で促進酸化処理する工程(A)の後に、過酸化水素を還元剤と反応させて還元処理して分解する工程(B)を実施してから、被処理水を粒状体充填層に通して吸着処理する工程(C)を実施することで、粒状体充填層が過酸化水素に起因する泡により閉塞することを効果的に抑制しつつ、臭素酸イオン濃度が充分に低い処理済水を得ることができる。
【0017】
図1に、本発明に従う水処理方法を実施するために用いることができる、代表的な水処理装置の一例の概略構成を示す。水処理装置100は、上述した工程(A)を実施し得る促進酸化処理槽20、工程(B)を実施し得る還元処理槽30、及び、工程(C)を実施し得る吸着処理槽40を備える。水処理装置100は、自然流下又はポンプ送水により導入口(図示しない)を経て水処理装置100内に臭素含有成分を含む被処理水を導入し、促進酸化処理槽20にて被処理水に対して過酸化水素及びオゾンを接触させた後に、更に、還元処理槽30及び吸着処理槽40にて所定の処理をして、排出口(図示しない)より装置外へと排出する。なお、以下において、水処理装置100において導入口側を「前段側」、排出口側を「後段側」と称することがある。そして、促進酸化処理槽20では、臭素酸イオンが生成され難くするような態様で促進酸化処理が実施される。
【0018】
好ましくは、水処理装置100は、促進酸化処理槽20の前段側にオゾン接触槽10を備え、且つ、オゾン接触槽10及び促進酸化処理槽20に供給するオゾンを発生させるオゾン発生装置50を備える。さらに、水処理装置100は、オゾン接触槽10を経た被処理水中における溶存オゾン濃度を測定し得る溶存オゾン濃度測定装置61を備えることが好ましい。さらにまた、水処理装置100は、任意で、工程(C)を経た被処理水中の臭素酸イオン濃度をオンサイトで測定可能な、臭素酸イオン濃度測定装置62を備えていても良い。以下の説明では、本発明にかかる促進酸化処理方法に含まれる各種工程が、各構成部にて生じる工程として記載するが、本発明にかかる水処理方法はあらゆる物理的な構成部の有無によって何ら制限されるものではない。即ち、例えば、促進酸化処理が生じうる「水槽」等の有無にかかわらず、被処理水に対してオゾン及び過酸化水素が供給されて所定の促進酸化処理が行われていれば、本発明にかかる促進酸化処理方法の範疇に含まれる。
【0019】
<被処理水>
水処理装置100の処理対象である被処理水としては、特に限定されることなく、例えば、水道水用の原水が挙げられる。具体的には、被処理水としては、ダムや河川等から取水した水、湖沼水、井戸水、湧水、及び地下水等が挙げられる。さらに、被処理水は臭素含有成分を含み、更に、有機物等の分解対象物質を含みうる。
【0020】
<オゾン接触槽>
任意の構成部であるオゾン接触槽10は、被処理水に対してオゾンを接触させる工程(D)を行う。工程(D)を、工程(A)の前段に行うことで、被処理水中における分解対象物質の分解を促進するとともに、促進酸化処理槽20において、促進酸化処理を一層効果的に実施することができる。オゾン接触槽10は、後述するオゾン発生装置50により生成されたオゾンを、第1オゾン散気装置51を介して槽内へと導入する。なお、オゾン接触槽10は、通常使用される一般的なオゾン接触槽でありうる。被処理水とオゾンとの接触は、例えば、微小な気泡として槽内へ導入されたオゾンが被処理水内を流動することにより行われる。この際、被処理水とオゾンとの接触効率を向上すべく、撹拌、気泡の微小化や、オゾン導入速度の調節等を適宜実施することができる。このようにして、被処理水と接触されたオゾンは、一部が被処理水中の分解対象物質と反応してこれらを分解し、残りは被処理水中に溶解する。
【0021】
<促進酸化処理槽>
任意に、オゾン接触槽10においてオゾンと接触された被処理水は、促進酸化処理槽20へと供給される。促進酸化処理槽20では、臭素酸イオンが生成され難くするような所定の態様で、被処理水の促進酸化処理を行う工程(A)が実施される。具体的には、本発明の水処理方法では、少なくとも、(i)工程(A)を経た被処理水中における臭素酸イオン濃度を15μg/L以下とすること、或いは、(ii)モル基準で、過酸化水素の添加量が、オゾンの添加量の、2倍以上となるようにすること、の何れかを満たすようにする。
【0022】
上記(i)のようにする場合において、工程(A)を経た被処理水中における臭素酸イオン濃度を15μg/L以下とするための具体的な方途としては、特に限定されない。上記(i)のようにするにあたり、工程(A)において、オゾン及び過酸化水素の少なくとも一方の添加量を調節しても良いし、工程(A)の前段又は工程(A)にて、被処理水に対して、次亜塩素酸塩又はアンモニウム塩を添加した状態として、工程(A)を実施しても良い。
【0023】
工程(A)を経た被処理水中における臭素酸イオン濃度は、15μg/L以下であることが好ましく、10μg/L以下であることがより好ましい。工程(A)を経た被処理水中における臭素酸イオン濃度が上記上限値以下であれば、得られる被処理水は一層水質に優れる。なお、工程(A)を経た被処理水中における臭素酸イオン濃度は、特に限定されることなく、既知の一般的な方法により測定することができる。例えば、水処理装置100は、促進酸化処理槽20と還元処理槽30とを連結する配管に、採水管(図示しない)を備えており、かかる採水管を経て採取した被処理水をイオンクロマトグラフ-ポストカラム法に従って分析することによって、被処理水中の臭素酸イオン濃度を測定することができる。
【0024】
また、上記(ii)のようにする場合には、工程(A)における過酸化水素の添加量及びオゾンの添加量のうちの少なくとも一方を調節して、過酸化水素の添加量がオゾンの添加量の、2倍以上となるようにする。ここで、モル基準で、工程(A)における過酸化水素の添加量がオゾンの添加量の、5倍以上とすることがより好ましく、10倍以上とすることが更に好ましい。一層良好に臭素酸イオンの生成を抑制することができるからである。尚、工程(A)における上記添加比率は、通常、15倍以下でありうる。
【0025】
なお、上記(i)のようにする、即ち、工程(A)を経た前記被処理水中における臭素酸イオン濃度を15μg/L以下とするための手段が、上記(ii)に明記したように、工程(A)にて、モル基準で、過酸化水素の添加量が、オゾンの添加量の、2倍以上となるようにすることであっても良い。換言すると、工程(A)において、上記(i)及び(ii)の双方が満たされても良い。さらに、工程(A)の前段に、任意工程である、被処理水に対してオゾンを接触させる工程(D)を実施する場合であっても(言い換えれば、上述したような任意の構成部であるオゾン接触槽10を設ける場合であっても)、上記(ii)の条件を成立させるにあたり、工程(D)におけるオゾンの添加量を考慮することなく、あくまでも、工程(A)におけるオゾンの添加量を基準として、工程(A)における過酸化水素の添加量を決定することが好ましい。
【0026】
促進酸化処理槽20は、オゾン接触槽10と同様に、後述するオゾン発生装置50により生成されたオゾンを、第2オゾン散気装置52を介して槽内へと導入する。そして、促進酸化処理槽20は、過酸化水素注入装置21により供給された過酸化水素及びオゾンを、被処理水と接触させる。このとき、促進酸化処理槽20内では、オゾンと過酸化水素とが反応することで、オゾンよりも酸化力の強いヒドロキシラジカルが生成される。かかるヒドロキシラジカルにより、被処理水中における分解対象物質、特に、難分解性物質が良好に分解されうる。さらに、上記ヒドロキシラジカルの生成によりオゾンが分解されるので、オゾンが過剰となり臭素含有成分とオゾンとが反応して臭素酸イオンが生成されることを抑制することができる。なお、促進酸化処理槽20及び過酸化水素注入装置21としては、一般的なものを使用することができる。
【0027】
<過酸化水素注入装置>
過酸化水素注入装置21は、工程(A)にて添加するオゾンの添加量に基づいて、促進酸化処理槽20に対して過酸化水素を供給する。図1では、促進酸化処理槽20に対して直接過酸化水素を投入する態様を示すが、促進酸化処理槽20の前段側で過酸化水素を被処理水中に供給しても良い。なお、過酸化水素注入装置21は、特に限定されることなく、水処理装置に対して取り付け可能な一般的な薬品注入手段として実装することができ、例えば、過酸化水素貯蔵タンク、供給ポンプ及び流量調節バルブ等により実装することができる。
【0028】
<オゾン発生装置>
オゾン発生装置50は、オゾン供給管70を介して第1オゾン散気装置51及び第2オゾン散気装置52と連通されており、これらを介してオゾン接触槽10及び促進酸化処理槽20に対してオゾンガスを供給する。第1オゾン散気装置51及び第2オゾン散気装置52は、例えば、空孔を有する散気管やメンブレン散気管などにより構成することができる。そして、オゾン供給管70は、第1オゾン量調節装置71及び第2オゾン量調節装置72を備えることが好ましい。第1及び第2オゾン量調節装置71及び72は、オゾン接触槽10及び促進酸化処理槽20に供給するオゾン量をそれぞれ調節できる限りにおいて特に限定されることなく、例えば、流量調節バルブとして構成されうる。第1及び第2オゾン量調節装置71及び72が流量調節バルブとして構成される場合には、流量調節バルブの開度を種々変更することにより、各槽10及び20に供給するオゾン量を調節することができる。また、オゾン発生装置50への制御信号(電気信号)を用いて、オゾンガス流量は変えずに発生オゾンガスの濃度を制御する方法も適用可能である。なお、オゾン発生装置50としては、特に限定されることなく、例えば、放電現象により発生する電子により酸素をオゾンに変換する既知のオゾン発生装置を用いることができる。なお、上記したように、オゾン接触槽10は、任意構成であるため、水処理装置100がこれを備えない場合には、第1オゾン散気装置51及び第1オゾン量調節装置71は存在せず、オゾン発生装置50により生成されたオゾンは、全て第2オゾン散気装置52を介して促進酸化処理槽20に供給される。
【0029】
<還元処理槽>
還元処理槽30では、工程(A)を経た被処理水に対して、還元剤注入装置31により還元剤を添加して被処理水−還元剤混合物として、被処理水に残存する過酸化水素を分解する工程(B)を実施する。還元剤としては、過酸化水素を還元可能な程度の還元力を呈し得る限りにおいて、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硝酸塩等のあらゆる還元剤を使用することができる。中でも、過酸化水素分解効果に加えて、被処理水中の溶存酸素濃度を低減することで、後段の工程(C)における発泡を一層良好に抑制することができるため、亜硫酸塩が好ましい。
【0030】
そして、工程(B)では、被処理水−還元剤混合物のpHが5.0超であることが好ましく、5.8以上であることがより好ましい。なお、被処理水−還元剤混合物のpHは、通常、8.6以下であり得る。被処理水−還元剤混合物のpHが5.0超であれば、過酸化水素の分解効果を一層させることができる。なお、被処理水の性状、過酸化水素の投入量によっては、工程(B)にて、pH調整剤の添加等の、pHを調節するための処理を行わなくても、上記条件が満たされる場合がある。還元処理槽30では、図示しないpH計等により被処理水−還元剤混合物のpHをモニタリングして、必要に応じて、pH調整剤注入装置32等により、硫酸及び水酸化ナトリウム等のpH調整剤を注入することができる。
【0031】
なお、工程(B)における被処理水−還元剤混合物の酸化還元電位は、−200mV以上+400mV以下であることが好ましく、0に近い値であることがより好ましい。被処理水−還元剤混合物の酸化還元電位が上記範囲内であれば、工程(B)において過酸化水素を良好に分散することができる。
【0032】
<吸着処理槽>
吸着処理槽40では、工程(B)を経た被処理水を、粒状体充填層に通す工程(C)を実施する。粒状体充填層を構成する粒状体としては、粉末活性炭等の吸着材が挙げられる。さらに、粒状体充填層を構成する粒状体が、粉末二酸化マンガン、粉末塩化鉄(III)等の分解触媒として機能し得るその他の粒状体を含んでいても良い。工程(C)では、工程(B)を経た被処理水中に残留した有機物等を粉末活性炭等の吸着材に対して吸着させることができる。また、粒状体充填層を構成する粒状体が粉末二酸化マンガン、粉末塩化鉄(III)等の分解触媒として機能し得る粒状体を含む場合には、工程(C)にて、被処理水中に残留した有機物等を分解することができる。吸着処理槽40としては、特に限定されることなく、例えば、活性炭吸着池のような一般的に使用されうる構成を採用することができる。
【0033】
本発明の水処理方法では、工程(C)に処される被処理水が工程(B)を経たものであるため、被処理水中に含まれる過酸化水素の量が非常に少ないか実質的にゼロとなり、残留過酸化水素が粒状体の表面で分解されることに起因してガスが発生することが抑制される。その結果、かかるガスが気泡となって粒状体充填層の空隙(即ち、被処理水の流路)を閉塞することが抑制されている。従って、工程(C)の効率が粒状体充填層の目詰まりによって低下する虞が少なく、水処理効率を向上させることができる。
【0034】
ここで、工程(C)を経た被処理水の酸化還元電位が0超であることが好ましく、+400mV以下であることが好ましく、0に近い値であることがより好ましい。工程(C)を経た時点における被処理水の酸化還元電位の値が0に近い正の値であれば、工程(C)を経た被処理水中に残留する還元剤の量が少ないことを意味する。従って、工程(C)を経た被処理水の酸化還元電位が0超であれば、工程(C)の後段にて、次亜塩素酸塩及び過マンガン酸カリウム等の酸化剤により残留還元剤を分解する酸化工程を実施する際の、酸化剤の添加量を少なくすることができ、コスト効果を高めることができる。言い換えれば、工程(C)を経た後であって、酸化工程を実施する前の時点における被処理水の酸化還元電位が、上記条件を満たすことが好ましい。なお、工程(A)の前段にて被処理水に対して次亜塩素酸塩を添加した場合であっても、工程(C)の後段にて、次亜塩素酸塩等の酸化剤を添加することが好ましい。
【0035】
このように、本願の水処理方法によれば、被処理水を所定の方法で促進酸化処理する工程(A)の後に、過酸化水素を還元剤と反応させて還元処理して分解する工程(B)を実施してから、被処理水を粒状体充填層に通して吸着処理する工程(C)を実施することで、粒状体充填層が過酸化水素に起因する泡により閉塞することを効果的に抑制しつつ、臭素酸イオン濃度が充分に低い処理済水を得ることができる。
【0036】
なお、本願の水処理方法を好適に実施することができる水処理装置100は、特に限定されることなく以下に挙げるような任意の構成部を備えていても良い。
【0037】
<制御装置>
水処理装置100は、制御装置80を備えていても良い。制御装置80は、さらに、オゾン供給量制御装置81及び過酸化水素供給量制御装置82を備えることが好ましい。制御装置80、オゾン供給量制御装置81及び過酸化水素供給量制御装置82は、特に限定されることなく、CPU(Central Processing Unit)等により構成することができ、図示しないが内蔵又は外付けの記憶部(例えば、メモリ)等を備えうる。
【0038】
オゾン供給量制御装置81は、溶存オゾン濃度測定装置61により測定したオゾン濃度の測定値に基づいて、オゾン接触槽10及び促進酸化処理槽20に供給するオゾン量をそれぞれ制御することができる。また、過酸化水素供給量制御装置82は、促進酸化処理槽20に供給する過酸化水素の量を制御することができる。
【0039】
以上、一例を用いて本発明の水処理方法について説明したが、本発明の水処理方法は、上記一例に限定されることはなく、適宜変更を加えることができる。例えば、工程(A)、或いは、工程(D)を実施する場合にはその前段において、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等の凝集剤を添加及び混和し、膜ろ過する工程を実施することももちろん可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の水処理方法によれば、オゾン及び過酸化水素を併用した促進酸化処理工程を採用した場合に、粒状体充填層が過酸化水素に起因する泡により閉塞することを効果的に抑制しつつ、臭素酸イオン濃度の充分に低い処理済水を得ることができる。
【符号の説明】
【0041】
10 オゾン接触槽
20 促進酸化処理槽
30 還元処理槽
40 吸着処理槽
50 オゾン発生装置
51 第1オゾン散気装置
52 第2オゾン散気装置
61 溶存オゾン濃度測定装置
62 臭素酸イオン濃度測定装置
70 オゾン供給管
71 第1オゾン量調節装置
72 第2オゾン量調節装置
80 制御装置
81 オゾン供給量制御装置
82 過酸化水素供給量制御装置
100 水処理装置
【要約】
【課題】オゾン及び過酸化水素を併用した促進酸化処理工程を採用した場合に、粒状体充填層が過酸化水素に起因する泡により閉塞することを効果的に抑制しつつ、臭素酸イオン濃度の充分に低い処理済水を得ることができる、水処理方法を提供する。
【解決手段】被処理水を所定の方法で促進酸化処理する工程(A)の後に、過酸化水素を還元剤と反応させて還元処理して分解する工程(B)を実施してから、被処理水を粒状体充填層に通して吸着処理する工程(C)を実施する、水処理方法である。
【選択図】図1
図1