(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6725863
(24)【登録日】2020年6月30日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】照明制御方法および照明制御システム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/115 20200101AFI20200713BHJP
【FI】
H05B47/115
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-162112(P2014-162112)
(22)【出願日】2014年8月8日
(65)【公開番号】特開2016-39048(P2016-39048A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100095256
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】福田 裕行
(72)【発明者】
【氏名】水井 啓喜
(72)【発明者】
【氏名】島岡 宏秀
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 亮平
(72)【発明者】
【氏名】平井 大介
【審査官】
山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−188082(JP,A)
【文献】
特表2006−507641(JP,A)
【文献】
特開2009−076956(JP,A)
【文献】
特開平07−183082(JP,A)
【文献】
特開2012−017936(JP,A)
【文献】
特開平10−079012(JP,A)
【文献】
特開平07−243686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00 − 45/58
H05B 47/00 − 47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の執務者が在席可能な室内空間における照明制御方法であって、
前記室内空間における執務者の数を検知することにより、間接的に前記室内空間における執務者同士のコミュニケーションの量を検知し、
前記執務者同士のコミュニケーションの量の増大に応じてアンビエント照明の照度の設定値を増大させ、且つ前記執務者同士のコミュニケーションの量の減少に応じてアンビエント照明の照度の設定値を減少させることを特徴とする照明制御方法。
【請求項2】
複数の執務者が在席可能な室内空間における照明制御システムであって、
前記室内空間を全体的に照明するアンビエント照明器具と、
前記室内空間における執務者の数を検知する検知部と、
前記検知部により検知した前記執務者の数から間接的に得られる前記執務者同士のコミュニケーションの量に応じて前記アンビエント照明器具を制御する制御部とを備えていることを特徴とする照明制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記執務者同士のコミュニケーションの量の増大に応じてアンビエント照明の明るさが増大し、且つ前記執務者同士のコミュニケーションの量の減少に応じてアンビエント照明の明るさが減少するように、前記アンビエント照明器具を制御することを特徴とする請求項2に記載の照明制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明制御方法および照明制御システムに関する。さらに詳細には、本発明は、例えば複数の執務者が在席可能な室内空間におけるアンビエント照明の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、照明の省エネルギー性の向上を目的に採用される照明制御として、明るさセンサー(主として机上面の照度を計測する照度計)による照度補正制御が知られている。また、人体の生体リズムなどを考慮し、ある決まった時間帯にアンビエント照明の設定値を変化させる照明制御が知られている。さらに、近年では、オフィスなどで各執務者の要求する机上面照度を満たすようにアンビエント照明の設定値を変更する照明制御が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、明るさセンサーによる照度補正制御では、初期設定によって机上面照度が決まってしまう。そのため、一定の机上面照度を保つことはできるが、照度を低くしても良い時間帯においても必要以上に照明が点灯されており、省エネルギー性の向上を図ることができなかった。
【0004】
人体の生体リズムなどを考慮して、ある決まった時間帯にアンビエント照明の設定値を変化させる照明制御では、実際の執務者の行動に関係なくアンビエント照明の設定値が変化する。そのため、執務者の行動に応じた照明への要求と実際の照明制御とが異なる場合があった。
【0005】
各執務者の要求する机上面照度を満たすようにアンビエント照明の設定値を変更する照明制御では、各執務者が要求する机上面照度を一旦設定すると、デスクワークが主の場合であっても、執務者同士のコミュニケーションが主の場合であっても、本来は要求される机上面照度が異なるにも拘らず同じ様にアンビエント照明が制御されてしまい、省エネルギー性の向上を図ることができなかった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、執務者の快適性を保ちつつ省エネルギー性の向上を図ることのできる照明制御方法および照明制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、複数の執務者が在席可能な室内空間における照明制御方法であって、
前記室内空間における執務者の数を検知することにより、間接的に前記室内空間における執務者同士のコミュニケーションの量を検知し、
前
記執務者同士のコミュニケーションの量の増大に応じてアンビエント照明の照度の設定値を増大させ、且つ前記執務者同士のコミュニケーションの量の減少に応じてアンビエント照明の照度の設定値を減少させることを特徴とする照明制御方法を提供する。
【0008】
本発明の第2形態では、複数の執務者が在席可能な室内空間における照明制御システムであって、
前記室内空間を全体的に照明するアンビエント照明器具と、
前記室内空間における執務者
の数を検知する検知部と、
前記検知部により検知した
前記執務者の数から間接的に得られる前記執務者同士のコミュニケーションの量に応じて前記アンビエント照明器具を制御する制御部とを備えていることを特徴とする照明制御システムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発明者らは、種々の研究を重ねた結果、室内空間における執務者の数とアンビエント照明の明るさへの要求との間に正の相関関係があるという知見を得た。本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、室内空間における執務者の数を検知し、検知した執務者の数に応じてアンビエント照明の設定値を変更する。さらに詳細には、本発明では、執務者の数の増大に応じてアンビエント照明の設定値を増大させ、執務者の数の減少に応じてアンビエント照明の設定値を減少させる。その結果、本発明では、執務者の快適性を保ちつつ省エネルギー性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態にかかる照明制御システムが適用される室内空間を天井から見下ろした図である。
【
図2】
図1の室内空間の部分断面図であって、本実施形態にかかる照明制御システムの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の具体的な説明に先立って、本発明にかかる照明制御の基本的な考え方を説明する。上述したように、本発明の発明者らの研究により、室内空間における執務者の数とアンビエント照明の明るさへの要求との間に正の相関関係があることが分かった。具体的には、室内空間における執務者の数が増大すれば執務者同士のコミュニケーション(打合せ、会議、雑談など)の量(回数)が多くなり、コミュニケーションの回数が増大するほどアンビエント照明の明るさへの要求が大きくなることが分かった。また、デスクワークが主の時間では、アンビエント照明の明るさへの要求が小さくなることが分かった。
【0013】
そこで、本発明では、室内空間における執務者の数とアンビエント照明の明るさへの要求との間に正の相関関係があることに着目し、室内空間における執務者の数を検知し、検知した執務者の数に応じてアンビエント照明の設定値を変更する。さらに詳細には、執務者の数の増大に応じてアンビエント照明の設定値を増大させ、執務者の数の減少に応じてアンビエント照明の設定値を減少させる。なお、デスクワーク時の各執務者の机上面照度の要求については、タスク照明によって満たすこととした。
【0014】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる照明制御システムが適用される室内空間を天井から見下ろした図である。
図2は、
図1の室内空間の部分断面図であって、本実施形態にかかる照明制御システムの構成を概略的に示す図である。本実施形態では、比較的単純な一例として、
図1および
図2に示すように、単一の出入り口11が設けられた室内空間10における照明制御に対して本発明を適用している。なお、
図1および
図2では、図面の明瞭化のために、室内空間10の壁面12における窓の図示などを省略している。
【0015】
図1および
図2を参照すると、本実施形態の照明制御システムは、室内空間10を全体的に照明するアンビエント照明器具1と、室内空間10における執務者の数を検知する検知部2と、アンビエント照明器具1を制御する制御部3と、各執務者のデスク13に設置されたタスク照明器具(タスクライト)4とを備えている。アンビエント照明器具1は主として室内空間10の壁面12および床面14の照明に寄与し、タスク照明器具4は主として各執務者の机上面13aの照明に寄与する。
【0016】
検知部2は、室内空間10の出入り口11に設置されて各執務者が装用するRF−IDメディア(ICタグ、ICカードなど)を読み取るリーダーを有する。具体的に、検知部2は、室内空間10に入退室する各執務者が装用するRF−IDメディアを読み取ることにより、室内空間10における執務者の数を検知する。ただし、検知部2の具体的な構成および設置位置については、様々な変形例が可能である。例えば、検知部2として、室内空間10の出入り口11に設置されたピープルカウンターを用いることもできる。
【0017】
検知部2の出力情報、すなわち室内空間10における執務者の数に関する情報は、制御部3に供給される。制御部3は、検知部2により検知した執務者の数に応じて、アンビエント照明器具1を制御し、ひいてはアンビエント照明の設定値を変更する。具体的に、制御部3は、執務者の数の増大に応じてアンビエント照明の明るさが増大し、且つ執務者の数の減少に応じてアンビエント照明の明るさが減少するように、アンビエント照明器具1を制御する。各執務者は、デスクワークに際して、タスク照明器具4により所要の机上面照度を確保する。
【0018】
上述したように、執務者が必要とするアンビエント照明による明るさは、室内空間10における執務者の数と、ひいてはコミュニケーション量と正の相関関係を有する。本実施形態では、執務者の数の増大に応じてアンビエント照明の設定値を増大させ、執務者の数の減少に応じてアンビエント照明の設定値を減少させているので、執務者の快適性を保ちつつ省エネルギー性の向上を図ることができる。
【0019】
一般に、執務者は、生体リズムに依存することなく、その行動パターン(コミュニケーション、デスクワークなど)を選択する。本実施形態では、執務者の数と連動する行動パターンに応じた照明制御を行っているので、執務者の快適性を保ちつつ省エネルギー性の向上を図ることができる。
【0020】
また、本実施形態では、執務者が要求する机上面照度をタスク照明によって確保し、デスクワークやコミュニケーションなどの執務者の行動パターンをアンビエント照明の制御に反映させているので、執務者の快適性を保ちつつ省エネルギー性の向上を図ることができる。
【0021】
なお、上述の実施形態では、検知部2により室内空間10における執務者の数を検知し、検知した執務者の数に応じてアンビエント照明の設定値を変更している。しかしながら、執務者の数を検知する装置が無くても、終業時刻以降に執務者数が徐々に減少し、ひいては執務者同士のコミュニケーション量が徐々に減少することを想定し、終業時刻からの時間の経過に伴ってアンビエント照明の設定値を減少させることにより、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0022】
すなわち、本発明の別の局面によれば、複数の執務者が在席可能な室内空間での照明制御において、終業時刻からの経過時間の増大に応じてアンビエント照明の設定値を減少させることにより、執務者の快適性を保ちつつ省エネルギー性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 アンビエント照明器具
2 検知部
3 制御部
4 タスク照明器具
10 室内空間
11 出入り口
12 壁面
13 デスク
13a 机上面
14 床面