(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールとエピクロルヒドリン等より得られるビスフェノール型エポキシ樹脂は、それが有するエポキシ基及び水酸基の反応性に起因して、優れた防食性、密着性、耐薬品性等を有する塗膜が得られるため、塗料用樹脂として広く使用されている。
【0003】
ところが、ビスフェノール型エポキシ樹脂は一般に自己硬化性を有しないため、硬化剤として多官能アミン、ポリアミドポリアミン等を配合した二液反応型塗料として使用される。
【0004】
しかしながら、二液反応型塗料は基材に塗布する直前に、主剤に硬化剤を配合しなければならいため取り扱いが不便であり、しかもポットライフ(可使時間)の点で実用上種々の制限がある。そのため、ビスフェノール型エポキシ樹脂としての密着性、防食性等の特性を維持し、しかも常温乾燥でき、かつ硬化剤を配合する必要のない一液・ラッカー型塗料用樹脂が切望されていた。
【0005】
このような一液・ラッカー型塗料用樹脂としては、例えばエポキシ樹脂をアミン類等で開環させ、さらにポリイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタン変性エポキシ樹脂が挙げられる(特許文献1及び2を参照)。これらのウレタン変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の特性である防食性、密着性、耐薬品性等の性能を有し、しかも常温硬化することができる。
【0006】
しかしながら、近年、一液・ラッカー型塗料において、塗膜の防食性などの諸特性を維持しつつ、更に柔軟性を向上させた塗膜を形成しつつ、有機溶剤の含有量の少ない塗料、すなわち塗料のハイソリッド化(高固形分化)を実現できる塗料用変性エポキシ樹脂の開発が望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、前記の変性エポキシ樹脂が有する防食性などの塗膜性能を維持しながら、更に塗膜の柔軟性の向上及び塗料のハイソリッド化を実現できる、塗料用変性エポキシ樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定量のジアミンを必須成分とするアミン変性エポキシ樹脂と、ポリイソシアネートとを反応させてなる塗料用変性エポキシ樹脂を用いることにより前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の項1〜7に記載されたものである。
【0011】
項1. アミン変性エポキシ樹脂(A)とポリイソシアネート(B)との反応生成物であって、
該アミン変性エポキシ樹脂(A)が、ビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)並びにジアミン(a2)0.1〜50重量%及びその他のアミン(a3)50〜99.9重量%(但し、(a2)及び(a3)の合計が100重量%である。)からなるアミン化合物が、
{(a1)のエポキシ基数}/{(a2)及び(a3)の合計アミノ基の活性水素数}が100/90〜100/110の割合で反応したものであ
り、
前記ジアミン(a2)が、プロピルジアミン、イソホロンジアミン及びダイマージアミンからなる群より選ばれる1種以上であり、
前記その他のアミン(a3)がアルカノールアミン類、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、パルミチルアミン、オレイルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン及びジブチルアミンからなる群より選ばれる1種以上であり、
前記ポリイソシアネート(B)が、脂環族のポリイソシアネートである塗料用変性エポキシ樹脂。
【0012】
項2. 前記
ダイマージアミンが、下記一般式(1)及び/又は(2)で表され
る前項1記載の塗料用変性エポキシ樹脂。
【化1】
(式(1)中、m+n=5〜16、p+q=8〜19であり、波線部は、炭素−炭素間の単結合又は二重結合を表す。)
【化2】
(式(2)中、m+n=5〜16、p+q=8〜19であり、波線部は炭素−炭素間の単結合又は二重結合を表す。)
【0013】
項3. 前記その他のアミン(a3)がアルカノールアミン類を1〜50重量%含有する前項1又は2記載の塗料用変性エポキシ樹脂。
【0014】
項4. 前記アミン変性エポキシ樹脂(A)とポリイソシアネート(B)の使用割合が、{(B)のイソシアネート基数}/{(A)の水酸基数}が0.1×10
−2〜0.30となるものである前項1〜3のいずれかに記載の塗料用変性エポキシ樹脂。
【0015】
項5. 前項1〜4のいずれかに記載の塗料用変性エポキシ樹脂を用いる一液・ラッカー型塗料。
【0016】
前項6. 不揮発分が50重量%以上である請求項5に記載の一液・ラッカー型塗料。
【0017】
前項7.アミン 変性エポキシ樹脂(A)とポリイソシアネート(B)との反応生成物の製造方法であって、
該アミン変性エポキシ樹脂(A)が、ビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)とジアミン(a2)0.1〜50重量%及びその他のアミン(a3)50〜99.9重量%(但し、(a2)及び(a3)の合計が100重量%である。)からなるアミン化合物を、
{(a1)のエポキシ基数}/{(a2)及び(a3)の合計アミノ基の活性水素数}が100/90〜100/110の割合で反応させる工程を有
し、
前記ジアミン(a2)が、プロピルジアミン、イソホロンジアミン及びダイマージアミンからなる群より選ばれる1種以上であり、
前記その他のアミン(a3)がアルカノールアミン類、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、パルミチルアミン、オレイルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン及びジブチルアミンからなる群より選ばれる1種以上であり、
前記ポリイソシアネート(B)が、脂環族のポリイソシアネートである塗料用変性エポキシ樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ジアミンを使用することにより、防食性、耐水密着性などの塗膜性能を維持しながら、更に塗膜の柔軟性の向上及び塗料のハイソリッド化を実現しうる、塗料用変性エポキシ樹脂を提供することができる。また、該変性エポキシ樹脂を用いて得られる本発明の一液・ラッカー型塗料は、溶剤含有率を低減できるため、環境適性の観点でも好適である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の塗料用変性エポキシ樹脂は、アミン変性エポキシ樹脂(A)(以下、「(A)成分」ともいう)とポリイソシアネート(B)(以下、「(B)成分」ともいう)との反応生成物であって、(A)成分がビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)(以下、「(a1)成分」ともいう)とジアミン(a2)(以下、「(a2)成分」ともいう)0.1〜50重量%及びその他のアミン(a3)(以下、「(a3)成分」ともいう)50〜99.9重量%(但し、(a2)及び(a3)の合計が100重量%である。)からなるアミン化合物を、{(a1)成分のエポキシ基数}/{(a2)成分及び(a3)成分のアミノ基の活性水素数}が100/90〜100/110の割合で反応したものである。
【0020】
上記(a1)成分としては、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンまたはβ−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシドとの反応により得られるものが挙げられる。ビスフェノール類としては、フェノールまたは2,6−ジハロフェノールとホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン等のアルデヒド類もしくはケトン類との反応の他、ジヒドロキシフェニルスルフィドの過酸による酸化、ハイドロキノン同士のエーテル化反応等により得られるものが挙げられる。ビスフェノール類の具体例としては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールΑ)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)等が挙げられる。(a1)成分は、それぞれ単独で、または2種以上を適宜に組み合わせて使用される。
【0021】
上記(a1)成分のエポキシ当量は、必ずしも限定はされないが、低粘度化の観点からは5,000程度以下であることが好ましく、100〜2,000程度であることがより好ましい。エポキシ当量が当該範囲であると、得られる塗料用変性エポキシ樹脂の分子量が過度に増大せず、該樹脂は比較的低粘度となるため、該樹脂を用いて得られる塗料のハイソリッド化が容易になるという利点がある。
【0022】
また、(A)成分の原料は、得られる変性エポキシ樹脂の防食性を維持し得る範囲で、(a1)成分以外のその他のエポキシ樹脂を併用しても良い。具体例には、脂肪族エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などの芳香族エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0023】
上記脂肪族エポキシ樹脂としては、長鎖脂肪族二塩基酸のグリシジルエステル、長鎖脂肪族ポリオールのグリシジルエーテル及びポリエーテルポリオールのグリシジルエーテル等を含む樹脂が挙げられる。長鎖脂肪族二塩基酸としては、例えば、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、8,11−ジメチル−7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボン酸、7−エチルオクタデカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキセンカルボン酸等が挙げられる。長鎖脂肪族ポリオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。また、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、ヘキサプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または二種以上を適宜に組み合わせて使用しても良い。また、その他のエポキシ樹脂の使用割合は、(a1)成分と該エポキシ樹脂の合計量を100重量%として、50重量%以下であることが好ましい。
【0024】
上記(a2)成分としては、ジアミンであれば特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2.2.4トリメチルヘキサンジアミンン、2.4.4トリメチルヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ダイマージアミンが挙げられる。これらの中でも、塗膜の適度な柔軟性、防錆性向上の点でダイマージアミンが好ましい。
【0025】
上記ダイマージアミンは、例えば特開平9−12712号公報に記載されているように、オレイン酸等の不飽和脂肪酸の二量体であるダイマー酸から誘導される化合物である。本発明では、公知のダイマージアミンを特に制限なく使用できるが、得られる変性エポキシ樹脂の高濃度でかつ低粘度を実現するため、用いるダイマージアミンとしては、下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表されるダイマージアミンが好ましく、一般式(1)’で表されるものがより好ましい。
【0026】
【化3】
(式(1)中、m+n=5〜16、p+q=8〜19であり、炭素−炭素間の単結合又は二重結合を表す。)
【0027】
【化4】
(式(2)中、m+n=5〜16、p+q=8〜19であり、炭素−炭素間の単結合又は二重結合を表す。)
【化5】
【0028】
上記ダイマージアミンの市販品としては、例えばバーサミン551(BASFジャパン(株)製)、バーサミン552(ヘンケルジャパン(株)製;バーサミン551の水添物)、PRIAMINE1071、PRIAMINE1074、PRIAMINE1075(いずれもクローダジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0029】
上記(a2)成分の使用割合は、(a2)成分及び(a3)成分の合計100重量%あたり、0.1〜50重量%程度であり、好ましくは1〜50重量%であり、より好ましくは5〜50重量%である。使用割合が0.1重量%未満の場合、粘度が上昇する傾向にあり、50重量%を超えるとゲル化が生じやすく、また塗膜の硬度や耐水密着性が低下する傾向にある。
【0030】
上記(a3)成分としては、アルカノールアミン類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、脂環族アミン類、芳香核置換脂肪族アミン類等であって、炭素数が2〜20程度のものがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または二種以上を適宜に組み合わせて使用しうる。これらの中でも素材への密着性向上の点でアルカノールアミン類が好ましい。
【0031】
上記アルカノールアミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジ−2−ヒドロキシブチルアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ベンジルエタノールアミン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を適宜に組み合わせて使用される。本発明の塗料用変性エポキシ樹脂の製造に際して、(A)成分と(B)成分との反応性や、得られる変性エポキシ樹脂の分子量調整などを考慮すれば、(a3)成分のうち、アルカノールアミン類の使用量は1〜50重量%程度であり、好ましくは1〜40重量%である。
【0032】
上記脂肪族アミン類としては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、パルミチルアミン、オレイルアミン、エルシルアミン等の一級アミン類やジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の二級アミン類があげられる。芳香族アミン類としては、トルイジン類、キシリジン類、クミジン(イソプロピルアニリン)類、ヘキシルアニリン類、ノニルアニリン類、ドデシルアニリン類等があげられる。脂環族アミン類としては、シクロペンチルアミン類、シクロヘキシルアミン類、ノルボニルアミン類があげられる。また、芳香核置換脂肪族アミン類としては、ベンジルアミン、フェネチルアミン等が挙げられる。これらのアミン類は、それぞれ単独で、または2種以上を適宜に組み合わせて使用される。
【0033】
上記(a3)成分の使用割合は、ハイソリッド化と防錆性の点から、(a2)成分及び(a3)成分の合計100重量%あたり、50〜99.9重量%程度であり、好ましくは50〜99重量%、より好ましくは50〜95重量%である。
【0034】
上記(A)成分は、(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分を下記の条件下で反応させることにより製造することができる。すなわち、各成分の未反応物を低減することができる点で{(a1)成分のエポキシ基数}/{(a2)成分及び(a3)成分の合計アミノ基の活性水素数}が100/90〜100/110程度となるように、各成分の使用量を決定する。
【0035】
上記(A)成分の製造における反応温度は、通常、50〜250℃程度であり、好ましくは80〜150℃程度である。反応温度が50℃未満であると反応速度が小さくなりすぎ、250℃を越えると、(a1)成分のエポキシ基と水酸基との反応、またはエポキシ基同士の反応等が起こり、反応生成物がゲル化しやすくなる場合がある。また、反応時間は反応温度に依存するため特に限定されないが、製造効率の面から通常は3〜10時間程度であり、好ましくは3〜6時間である。ジアミンが分岐鎖として、エポキシ化合物にジアミンが適度に組み込まれることで、最終的に得られる変性エポキシ樹脂の高ハイソリッド化を実現できると推察される。
【0036】
上記(B)成分としては、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知のポリイソシアネート類が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または二種以上を適宜に組み合わせて使用される。(B)成分の具体例としては、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、オルトトルイジンジイソシアネート、ポリフェニルポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等があげられる。これらポリイソシアネートのうち好ましくは、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0037】
本発明の塗料用変性エポキシ樹脂の製造においては、{(B)成分のイソシアネート基数}/{(A)成分の水酸基数}が0.1×10
−2〜0.3程度、好ましくは0.5×10
−2〜0.25となるように、両成分を反応させればよい。0.1×10
−2以上であると、得られる塗料用変性エポキシ樹脂の分子量が適度に高くなり、常温乾燥しうる一液型のラッカー型塗料用樹脂として好適である。一方、0.3以下であると過度の高分子量化を抑制することができ、ハイソリッド型塗料の調製に好適である。より好ましくは、0.015〜0.15である。
【0038】
上記(B)成分と(A)成分の反応条件は特に限定されないが、反応温度は、通常20〜200℃程度であり、好ましくは50〜150℃である。また、反応時間は製造効率の面から通常は3〜10時間程度であり、好ましくは3〜6時間である。
【0039】
上記反応においては、溶剤を使用できるが、各成分に対して不活性なものでなければならない。不活性溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート等のセロソルブアセテート類等の活性水素を有しないものが挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または2種以上を適宜に組み合わせて使用できる。なお、本発明の塗料用変性エポキシ樹脂の製造後であれば、希釈溶剤として、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類;イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類;などの活性水素を有する溶剤も差し支えなく使用しうる。
【0040】
本発明の塗料用変性エポキシ樹脂の重量平均分子量(ゲルパーメーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値)は、格別限定されないが、5,000〜100,000程度の範囲とするのが好ましい。重量平均分子量を5,000以上とすることで長期の高い防食性、耐水性等を有する一液・ラッカー型塗料用樹脂が得られ、また100,000以下とすることで、高粘度化を抑制したハイソリッド型塗料用に適する樹脂が得られる。
【0041】
本発明の塗料用変性エポキシ樹脂の固形分濃度については、格別限定されず、塗料化した場合の粘度等を考慮して適宜に決定すればよいが、通常は、30〜80重量%程度とされる。また、得られる塗料の取り扱い性の点から、該樹脂溶液の粘度はR〜Z
7(ガードナー法,25℃)程度に調整して用いられる。
【0042】
本発明の塗料用変性エポキシ樹脂を用いる本発明の一液・ラッカー型塗料(以下、本塗料という)について、以下に説明する。本塗料は、常温乾燥用塗料として使用できるほか、強制乾燥塗料、焼付け塗料などとしても好適である。また、本塗料は、被塗物、用途など格別限定されず広範に適用できるが、防食性、密着性等の性能を考慮すれば、下塗り用に好適である。
【0043】
本塗料の調製では、カーボンブラック、酸化チタン等の着色顔料、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料、リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等の防錆顔料を適宜に配合することができる。また、本塗料には、必要に応じて、メラミン樹脂、尿素樹脂、イソシアネート、ブロックイソシアネート等の硬化剤や、公知各種の溶剤、その他の添加剤を適宜に配合してもよい。本塗料をハイソリッド型として調製する場合は、不揮発分が通常50〜80重量%程度、好ましくは70〜80重量%とされ、また溶剤含有率は通常20〜50重量%程度、好ましくは20〜30重量%とされる。
【実施例】
【0044】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「重量部」を意味する。
【0045】
実施例1
撹拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)(三菱化学(株)製、商品名「JER1001」、エポキシ当量475g/eq)900部、ビスフェノール型エポキシ樹脂(2)(新日鉄住金(株)製、商品名「YD−128」、エポキシ当量189g/eq)300部、ダイマージアミン(クローダ製、商品名「PRIAMINE1071」)123部、ステアリルアミン46部、ジエタノールアミン60部、モノエタノールアミン11部、2−エチルヘキシルアミン30部及びキシレン724部を仕込み、これらを窒素気流下、100℃で5時間反応させて、アミン変性エポキシ樹脂(A1)を得た。次いで、同反応容器にイソホロンジイソシアネート(B)24部、シクロヘキサノン270部を仕込み、これらを窒素気流下で100℃において4時間反応させることにより、塗料用変性エポキシ樹脂を得た。この樹脂の物性値を表1に示す。なお、重量平均分子量の測定は以下の方法で行った。
【0046】
(重量平均分子量の測定)
装置: HLC−8220(東ソー(株)製)
カラム: TSKgel α−2500×1、α−3000×1
分離溶媒: DMF(LiBr 5mmol/kg含有)、
流量: 1ml/min
温度: 40℃
標準: ポリスチレン
【0047】
実施例2〜10及び比較例1〜4
(a1)成分の種類、(a2)成分の種類及び(a3)成分の種類、(a2)成分及び(a3)成分の使用割合、{(a1)成分のエポキシ基数}と{(a2)成分及び(a3)成分のアミノ基の活性水素数}との使用割合、ならびに(A)成分と(B)成分の使用割合のいずれか少なくとも1つの項目を、表1に示すように変えた他は実施例1と同様に反応させて、各種の塗料用変性エポキシ樹脂を得た。これらの物性値を表1に示す。なお、比較例1では、変性エポキシ樹脂の分子量及び粘度が高くなり、ゲル化した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1中、(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分及び(B)成分に係る数値は、いずれも仕込み重量部を示す。また各記号は、以下を意味する。
JER1001:ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)(三菱化学(株)製、商品名「JER1001」、エポキシ当量475g/eq)
YD−128:ビスフェノール型エポキシ樹脂(2)(新日鉄住金(株)製、商品名「エポトートYD−128」、エポキシ当量189g/eq)
Priamine1071:ダイマージアミン(クローダジャパン(株)製))
バーサミン551:ダイマージアミン(BASFジャパン(株)社製)
IPD:イソホロンジアミン
SA:ステアリルアミン
DEA:ジエタノールアミン
MEA:モノエタノールアミン
2EHA:2−エチルヘキシルアミン
DBA:ジブチルアミン
官能基比率:{(a1)成分のエポキシ基数}/{(a2)成分及び(a3)成分のアミノ基の活性水素数}
IPDI:イソホロンジイソシアネート
NV(%):固形分濃度
Mw:重量平均分子量
Vis:ガードナー粘度(25℃)
【0050】
(各種塗料の調製及び試験用塗膜の調製)
以下に示す組成の混合物をそれぞれペイントシェイカーで練合してラッカー型塗料を調製した。得られた塗料を、脱脂ダル鋼板(SPCC−SD、0.8×70×150mm)上に、乾燥後の膜厚が30μmとなるように、バーコーターにより塗布し、強制乾燥(80℃×20分)後、常温(20℃、60%R.H.)で6日放置し、試験用塗膜を調製し、以下の試験に供した。
【0051】
(組成)
実施例1〜10及び比較例2〜4で得られた各ラッカー型塗料用樹脂200部(固形分120部)
酸化チタン 80部
カーボンブラック 4部
沈降性硫酸バリウム 80部
リン酸アルミニウム系防錆顔料 16部
キシレン 25部
シクロヘキサノン 25部
【0052】
(塗膜の評価試験)
(1)鉛筆硬度
JIS K5600−5−4に準拠する。
【0053】
(2)柔軟性(折り曲げ試験)
チンフリースチール板(0.3×120×200mm)上に、乾燥後の膜厚が30μmとなるように、バーコーターにより各塗料を塗布し、強制乾燥(80℃×20分)後、常温(20℃、60%R.H.)で6日放置し、試験片を得た。各試験片を万力によって折り曲げ、折り曲げ部のワレの有無を確認した。間に挟む板(チンフリースチール板)の枚数で柔軟性を評価した(2Tとは挟み込む板が2枚で折り曲げ、ワレがないことを示す)。
【0054】
(3)一次密着性
JIS K5600−5−6に準じて行い、塗装後に23℃、50%R.H.の環境下で6日間養生した試験用塗膜を剥離した際の碁盤目密着性を、100として評価した。
【0055】
(4)耐水密着性
JIS K5600−6−2に準じて行い、40℃の温水中に10日間浸した試験用塗膜を剥離した際の碁盤目密着性を、100として評価した。
【0056】
(5)防食性
JIS K5600−7−9に準じて行い、塩水噴霧テスト10日間及び20日間後のセロハンテープ剥離幅(mm)で示した。
これらの評価結果を表1に示す。
【0057】
比較例2及び3では、樹脂が高粘度であったため、顔料が充分に分散せず、塗料化は不可能であった。表1の結果より、本発明で得られた塗膜(各実施例)は、比較例4に比べて、粘度、鉛筆硬度、柔軟性、一次密着性、耐水密着性及び防食性のバランスに優れ、ずれの性能も良好であった。