特許第6725870号(P6725870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6725870
(24)【登録日】2020年6月30日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】車両用ドア構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20200713BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20200713BHJP
   E05C 17/22 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
   B60J5/00 P
   B60J5/04 K
   E05C17/22 A
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-35812(P2016-35812)
(22)【出願日】2016年2月26日
(65)【公開番号】特開2017-149369(P2017-149369A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼増 信哉
(72)【発明者】
【氏名】平松 稔
(72)【発明者】
【氏名】小椋 東吾
(72)【発明者】
【氏名】小山 恭史
(72)【発明者】
【氏名】上原 直哉
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 宣博
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−143044(JP,A)
【文献】 特開2007−253895(JP,A)
【文献】 実開昭63−104575(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B60J 5/04
E05C 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタパネルと共にドアを形作り、該ドアの開閉用のヒンジが固定された一側面が車室内側のケース取付部と車室外側の間隙形成部とに区分され、段差部を介して前記ケース取付部に対し前記間隙形成部を一側方に位置させたインナパネルと、
前記ドア内で前記インナパネルの一側面に対向配置され、前記インナパネルのケース取付部に対して重ねられたケース取付部を有すると共に、該インナパネルの間隙形成部に対して間隙を形成して車室外側へ延設されたリンフォースと、
前記ドア内で前記リンフォースのケース取付部上に固定されたチェッカケース、及び該チェッカケースと車体側とを連結するチェッカアームから構成され、該チェッカアームを介して前記ドアの開操作を所定開度で規制するドアチェッカと
を備えた車両用ドア構造において、
前記リンフォースに、前記インナパネルの前記段差部を起点として該インナパネルから離間され、車室外側且つ一側方に向けて直線状に延設されて次第に前記間隙形成部に接近する斜状部を形成し
前記チェッカケースを、該チェッカケースの車室外側の端面が前記インナパネルの段差部に略一致する位置で前記リンフォースのケース取付部に固定し
ことを特徴とする車両用ドア構造。
【請求項2】
前記リンフォースの斜状部は、前記ドアチェッカにより前記ドアの開操作が規制されたときに前記チェッカアームからの引張り力に起因して前記斜状部が受ける力に沿う方向に延設された
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア構造に係り、詳しくは、車体のピラーに開閉可能に支持されたヒンジ式のドアを開閉する際に、その開度を規制するドアチェッカ箇所の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の車両用ドア構造として、例えば特許文献1に記載の技術を挙げることができる。図6は特許文献1の車両用ドア構造におけるインナパネルの前面とリンフォースとの関係を示す平断面図(図1のIII-III線断面に相当)、図7は同じくインナパネルの前面とリンフォースとの関係を示す斜視図である。
車両のドア101はインナパネル2とアウタパネル3の周囲を接合して構成され、インナパネル2が車室内側に膨出した形状をなすことにより、ドア101内にウインドレギュレータ等を収容する空間が形成されている。インナパネル2の前面2bは上下一対のヒンジ6(図7に下側を示す)を介して車体のピラーに連結され、ドア101が開閉可能に支持されている。インナパネル2の前面2bは、車室内側のケース取付部12から段差部14を介して車室外側の間隙形成部13へと連続する断面形状をなし、この段差部14によりケース取付部12に対して間隙形成部13が車両前方に位置している。
【0003】
リンフォース102はドア101内でインナパネル2の前面2bに対向配置されており、そのケース取付部103がインナパネル2のケース取付部12に隙間無く重ねられて車室外側に延設され、クランク状の断面形状をなす段差部104を介して平行部105へと連続している。結果として、インナパネル2の段差部14とリンフォース102の段差部104との間には略四角断面の間隙が形成され、この間隙はインナパネル2の間隙形成部13とリンフォース102の平行部105との間に形成された間隙へと連続している。
【0004】
ドア101内において、リンフォース102のケース取付部103上にはドアチェッカ7のチェッカケース8が固定されている。チェッカケース8内にはチェッカ孔18を介して前方よりチェッカアーム9の一端が挿入されてストッパ9aが固着され、チェッカアーム9の他端は図示しない車体側のピラーに軸支されている。ヒンジ6を中心としてドア101が開操作されると、チェッカケース8からチェッカアーム9が前方に引き出されると共に、ストッパ9aがチェッカケース8に掛止されてドア101の開操作を規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−143044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用ドア構造では、突風や乱暴な開操作等によりドア101が全開位置を超えて開方向の強い力を受けた場合(以下、オーバーラン入力を受けた場合と表現する)に、インナパネル2のケース取付部12が突出変形するという問題が生じた。
即ち、ドア101の全開位置ではチェッカアーム9が図6に示す角度に達し、ドア101の開操作が規制されることにより、チェッカアーム9を介してチェッカケース8には、図6中に矢印F1で示す車両前方やや車室外側への引張り力が作用する。この引張り力はチェッカケース8とリンフォース102との接触面を介してリンフォース102側に伝達されるが、上記した引張り力の方向に起因して、リンフォース102はチェッカケース8の接触面の車室内側よりも車室外側で大きな前方への引張り力を伝達される。
【0007】
このためリンフォース102は、図6中に矢印F2で示すインナパネル2との間の略四角断面の間隙を押し潰す方向(四角断面の対角線方向)の圧縮力を受ける。このときの圧縮力はリンフォース102にとって所謂面外方向に作用するため、圧縮力に有効に対抗することなくリンフォース102が容易に変形してしまう。結果として、引張り力を受けたインナパネル2のケース取付部12が突出変形し、この箇所は乗降の際に目に付き易い位置であることから、車両の商品性が損なわれるという問題がある。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ドアがオーバーラン入力を受けた場合であっても、インナパネルのケース取付部の突出変形等を抑制でき、これにより車両の商品性を高めることができる車両用ドア構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の車両用ドア構造は、アウタパネルと共にドアを形作り、該ドアの開閉用のヒンジが固定された一側面が車室内側のケース取付部と車室外側の間隙形成部とに区分され、段差部を介して前記ケース取付部に対し前記間隙形成部を一側方に位置させたインナパネルと、前記ドア内で前記インナパネルの一側面に対向配置され、前記インナパネルのケース取付部に対して重ねられたケース取付部を有すると共に、該インナパネルの間隙形成部に対して間隙を形成して車室外側へ延設されたリンフォースと、前記ドア内で前記リンフォースのケース取付部上に固定されたチェッカケース、及び該チェッカケースと車体側とを連結するチェッカアームから構成され、該チェッカアームを介して前記ドアの開操作を所定開度で規制するドアチェッカとを備えた車両用ドア構造において、前記リンフォースに、前記インナパネルの前記段差部を起点として該インナパネルから離間され、車室外側且つ一側方に向けて直線状に延設されて次第に前記間隙形成部に接近する斜状部を形成し、前記チェッカケースを、該チェッカケースの車室外側の端面が前記インナパネルの段差部に略一致する位置で前記リンフォースのケース取付部に固定したことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
このように構成した車両用ドア構造によれば、ドアチェッカによりドアの開操作が規制されると、チェッカケースからリンフォースへの引張り力の伝達が互いの接触面を介して行われるが、チェッカアームからの引張り力が一側方やや車室外側に向くため、リンフォースはチェッカケースの接触面の車室内側よりも車室外側で大きな一側方への引張り力を伝達される。この引張り力により、リンフォースの斜状部には延設方向にほぼ沿った圧縮力が作用することからリンフォースの変形が抑制され、必然的にインナパネルの一側面の変形も抑制される。
また、インナパネルの段差部から車室外側に離間した位置を起点として斜状部が延設された場合には、チェッカケースと斜状部との間に面内方向に沿わない平面領域が形成されて早期に変形してしまうが、このような不具合が未然に防止される。
また、チェッカケースがインナパネルの段差部から車室内側に離間している場合には、チェッカケースと斜状部との間に面内方向に沿わない平面領域が形成されて早期に変形してしまうが、このような不具合が未然に防止される。
【0011】
その他の態様として、前記リンフォースの斜状部が、前記ドアチェッカにより前記ドアの開操作が規制されたときに前記チェッカアームからの引張り力に起因して前記斜状部が受ける力に沿う方向に延設されることが好ましい(請求項2)。
この態様によれば、チェッカアームからの引張り力に起因して伝達される圧縮力が確実に斜状部に対し面内方向に作用し、その圧縮力に対抗して斜状部の剛性が最大限に発揮され、これによりリンフォースの変形が抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用ドア構造によれば、ドアがオーバーラン入力を受けた場合であっても、インナパネルのケース取付部の突出変形等を抑制でき、これにより車両の商品性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の車両用ドア構造が適用された左ドアを示す斜視図である。
図2】同じくインナパネルを取り外した左ドアを示す斜視図である。
図3】インナパネルの前面とリンフォースとの関係を示す図1のIII-III線断面図である。
図4】同じくインナパネルの前面とリンフォースとの関係を示す斜視図である。
図5図2のA箇所の要部詳細図である。
図6】特許文献1の車両用ドア構造におけるインナパネルの前面とリンフォースとの関係を示す平断面図である。
図7】同じくインナパネルの前面とリンフォースとの関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した車両用ドア構造の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態の車両用ドア構造が適用された左ドアを示す斜視図、図2は同じくインナパネルを取り外した左ドアを示す斜視図、図3はインナパネルの前面とリンフォースとの関係を示す図1のIII-III線断面図、図4は同じくインナパネルの前面とリンフォースとの関係を示す斜視図、図5図2のA箇所の要部詳細図である。以下、説明の便宜上、車両を基準として上下及び前後方向を規定し、左右方向については車室内側及び車室外側と表現する。
【0018】
車両の左ドア1(以下、単にドアという)は鋼板をプレス成型したインナパネル2及びアウタパネル3により形作られ、両パネル2,3は周囲を重ね合わせてヘミング加工により接合され、この箇所を接合部4と称する。ドア1の上部にはサッシ5が形成され、サッシ5より下側では、インナパネル2が車室内側に膨出して車室内に面する膨出面2aを形成している。膨出面2aに形成によりドア1内に空間が形成され、この空間に図示しないウインドレギュレータ等が配置されている。
【0019】
車室内側への膨出により形成されたインナパネル2の前面2bには上下一対のヒンジ6の一端が連結され、これらのヒンジ6の他端が図示しない車体のピラーに固定されることにより、車体に対してドア1がヒンジ6を中心として開閉可能に支持されている。ドア1の開操作は所定開度でドアチェッカ7により規制され、この規制位置がドア1の全開状態となる。
【0020】
以下に述べるようにドアチェッカ7はチェッカケース8とチェッカアーム9とから構成されており、チェッカケース8はドア1内でインナパネル2の前面2bに取り付けられている。ドア1の開操作を規制する際にチェッカアーム9を介してチェッカケース8には大きな力が作用することから、ドア1内に配設されたリンフォース11によりインナパネル2の前面2bが補強され、このリンフォース11を介してチェッカケース8及び上下のヒンジ6がインナパネル2の前面2bに固定されている。以下、これらのインナパネル2の前面2b及びリンフォース11に関する構造を説明する。
【0021】
特に図3,4に示すように、インナパネル2の前面2b(一側面)は、車室内側のケース取付部12と車室外側の間隙形成部13とに区分され、これらのケース取付部12と間隙形成部13との間には段差部14が形成されている。段差部14はクランク状の断面形状をなし、この段差部14を介することによりケース取付部12に対して間隙形成部13が車両前方(一側方)に位置している。以上のインナパネル2の前面2bの断面形状は、チェッカケース8の位置を含んだ上下方向の所定領域に亘って形成されている。前面2bのケース取付部12は車室内側において膨出面2aと連続し、前面2bの間隙形成部13は車室外側において前方に直角に折曲された接合面15を介して接合部4へと連続している。
【0022】
リンフォース11はドア1内でインナパネル2の前面2bに対向配置され、図1,2に示すように、インナパネル2の前面2bに略対応する上下方向及び車室内外方向の寸法を有している。図3,4に示すように、リンフォース11の車室内側の端部11aは後方に折曲され、インナパネル2の膨出面2aに重ねられてスポット溶接で接合されている。また、リンフォース11の車室外側の端部11bは前方に折曲され、インナパネル2の接合面15に重ねられてスポット溶接で接合され、これによりインナパネル2に対してリンフォース11が一体化されている。
【0023】
リンフォース11はインナパネル2のケース取付部12に対して隙間無く重なっており、以下、この箇所をケース取付部16という。また、リンフォース11はインナパネル2の間隙形成部13に対しては間隙を形成して相対向しており、その断面形状の詳細については後述する。
ドア1内において、リンフォース11のケース取付部16上にはチェッカケース8が配設されており、このチェッカケース8は四角箱状をなしている。チェッカケース8の上下に形成されたフランジ部8a(図5に示す)はケース取付部16上に重ねられ、ケース取付部12,16に貫設されたボルト孔17を介して図示しないボルトにより締結されている。
【0024】
インナパネル2及びリンフォース11のケース取付部12,16にはチェッカ孔18が貫設され、このチェッカ孔18内には前方よりチェッカアーム9の一端が挿入されてチェッカケース8を貫通し、ストッパ9aが固着されている。図示はしないがチェッカアーム9の他端は車体側のピラーに回動可能に軸支され、結果としてチェッカアーム9を介してチェッカケース8が車体側と連結されている。そして、ヒンジ6を中心としてドア1が開操作されると、チェッカケース8からチェッカアーム9が前方に引き出されると共に、ストッパ9aがチェッカケース8に掛止されてドア1の開操作を所定開度で規制する。
【0025】
図3,4から判るように、リンフォース11のケース取付部16上で、チェッカケース8はインナパネル2の段差部14に近接した位置で固定されており、チェッカケース8の車室外側の端面は車室内外方向で段差部14と略一致している。そして、リンフォース11はインナパネル2の段差部14を起点としてインナパネル2から離間し、車室外側且つ前方(一側方)に向けて直線状に延設されている。結果としてリンフォース11は、インナパネル2の間隙形成部13に対して車室外側ほど間隙を狭めながら次第に接近する斜状断面形状をなし、この断面形状の箇所を斜状部20と称する。リンフォース11の斜状部20は間隙形成部13との間に間隙を残した位置で平行部21と連続し、この平行部21は間隙形成部13に対して平行を保ちつつ車室外側に延設されて端部11bと連続している。
【0026】
リンフォース11の斜状部20の延設方向(即ち斜状部20の角度)は、ドア1の開操作がドアチェッカ7により規制されたときに、チェッカアーム9及びチェッカケース8を介して斜状部20が受ける力に沿う方向に設定されており、その詳細については後述する。
図3,4に基づき説明したように、ケース取付部12、段差部14及び間隙形成部13からなるインナパネル2の前面2bの断面形状は、上下方向の所定領域に亘って形成されている。このためチェッカケース8の車室外側には、インナパネル2の略平面状をなす間隙形成部13が上下方向の所定領域に亘って存在している。そして、図5に示すように、この略平面状をなす間隙形成部13の領域に対応して、ケース取付部16、斜状部20及び平行部21からなるリンフォース11の断面形状が上下方向の所定領域に亘って形成されている。このような領域の設定は、略平面状をなす間隙形成部13の剛性不足を補うためであるが、その詳細については後述する。
【0027】
次に、以上のように構成された車両用ドア構造において、ドア1の開操作がドアチェッカ7により規制されたときの力の発生状況を説明する。
チェッカケース8に対するチェッカアーム9の角度はドア1の開度に応じて変化し、ドア1の全開位置ではチェッカアーム9が図3に示す角度に達する。そして、チェッカアーム9のストッパ9aがチェッカケース8に掛止されてドア1の開操作を規制すると、チェッカアーム9を介してチェッカケース8には図3中に矢印F1で示す引張り力が作用する。この引張り力はチェッカケース8とリンフォース11との接触面を介してリンフォース11側に伝達され、伝達された引張り力にリンフォース11とインナパネル2の前面2bとが協調して対抗することにより、それ以上のチェッカアーム9の引き出しを規制してドア1を全開位置に保つ。
【0028】
このように、チェッカケース8からリンフォース11への引張り力の伝達は互いの接触面を介して行われるが、上記した引張り力の方向に起因して車室内外方向において均等ではない。具体的には、チェッカアーム9からの引張り力が車両前方やや車室外側に向いているため、リンフォース11はチェッカケース8の接触面の車室内側よりも車室外側で大きな前方への引張り力を伝達され、この引張り力により、チェッカケース8と隣接するリンフォース11の斜状部20には、その延設方向に沿った図3中に矢印F2で示す力、所謂面内方向の圧縮力が作用する。
【0029】
全開位置でのドア1の開度はチェッカアーム9の長さ設定等に基づき予め判明しており、ドア1の開操作を規制したときの引張り力によりリンフォース11の斜状部20が受ける圧縮力の方向も特定できる。そこで、本実施形態では、斜状部20が受ける圧縮力の方向に沿うように斜状部20の断面形状、より具体的には斜状部20の延設方向が設定されている。このため引張り力に起因して伝達される圧縮力が確実に斜状部20に対し面内方向に作用し、その圧縮力に対抗して斜状部20の剛性が最大限に発揮される。よって、ドア1がオーバーラン入力を受けた場合のリンフォース11の変形が抑制され、必然的にインナパネル2の前面2bの変形も効果的に抑制される。結果として、インナパネル2のケース取付部12の前方への突出変形を抑制でき、これにより車両の商品性を高めることができる。
【0030】
そして、以上の作用効果を奏するリンフォース11の断面形状(特に斜状部20)は、上下方向においてインナパネル2の略平面状をなす間隙形成部13に対応した領域に形成されている。リンフォース11にはチェッカケース8との接触面を介して局所的に引張り力が伝達されるものの、その引張り力によるインナパネル2の前面2bに対する影響は、接触面に対応する領域のみならず上下方向により広い領域に及び、特に段差部14を介してケース取付部12と隣接する間隙形成部13は、平面状をなしているため変形し易い。本実施形態では、このような力学的に弱い断面形状の間隙形成部13に対応するように上下方向にリンフォース11の断面形状が設定されているため、上記したケース取付部12の突出変形のみならず、間隙形成部13の変形も抑制することができる。
【0031】
また本実施形態では、チェッカケース8の車室外側の端面が車室内外方向でインナパネル2の段差部14と略一致し、且つ段差部14を起点としてリンフォース11の斜状部20がインナパネル2から離間して延設されている。よって、チェッカケース8からリンフォース11に伝達された引張り力は直接的に面内方向の圧縮力として斜状部20に作用し、その圧縮力に斜状部20が対抗して変形防止作用を奏する。
【0032】
例えばチェッカケース8の車室外側の端面がインナパネル2の段差部14から車室内側に離間して位置している場合、或いは段差部14から車室外側に離間した位置を起点としてリンフォース11の斜状部20が延設されている場合には、何れもチェッカケース8と斜状部20との間に面内方向に沿わない平面領域が形成されることになり、その平面領域が早期に変形してインナパネル2も変形してしまう。本実施形態では、チェッカケース8からの引張り力を斜状部20が直接的に受けるため、このような不具合を未然に防止してインナパネル2のケース取付部12の突出変形及び間隙形成部13の変形を一層確実に抑制することができる。
【0033】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、前側のヒンジ6を中心として開閉可能な左ドア1に具体化したが、ドアの種別はこれに限定されるものではなく任意に変更可能である。例えばリアゲート用のヒンジドアに適用してもよいし、後側のヒンジを中心として開閉可能なドアに適用してもよい。
【0034】
また上記実施形態では、リンフォース11の斜状部20が受ける圧縮力の方向に沿うように斜状部20の延設方向を設定したが、圧縮力に対して斜状部20の延設方向が多少異なっていてもよい。この場合であっても斜状部20への圧縮力がほぼ面内方向に作用することから、上記実施形態と遜色のない効果を得ることができる。
また上記実施形態では、リンフォース11の斜状部20を上下方向においてインナパネル2の間隙形成部13に対応した領域に形成したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、上下方向でチェッカケース8に対応する領域だけに斜状部20を形成してもよく、この場合であっても、インナパネル2のケース取付部12の突出変形を抑制することができる。
【0035】
また上記実施形態では、チェッカケース8の車室外側の端面を車室内外方向でインナパネル2の段差部14と略一致させると共に、その段差部14を起点としてリンフォース11をインナパネル2から離間させて斜状部20を延設したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、チェッカケース8の車室外側の端面を段差部14から車室内側に若干離間させてもよいし、段差部14から車室外側に若干離間した位置を起点としてリンフォース11の斜状部20を延設してもよい。これらの場合にはチェッカケース8と斜状部20との間に面内方向に沿わない平面領域が形成されるが、その車室内外方向の長さが短いため上記実施形態と遜色のない効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 ドア
2 インナパネル
3 アウタパネル
6 ヒンジ
7 ドアチェッカ
8 チェッカケース
9 チェッカアーム
11 リンフォース
12,16 ケース取付部
13 間隙形成部
14 段差部
20 斜状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7