特許第6725878号(P6725878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6725878
(24)【登録日】2020年6月30日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】生体用電極及び生体用電極付き着用具
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0408 20060101AFI20200713BHJP
   A61B 5/0478 20060101ALI20200713BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
   A61B5/04 300M
   A61N1/04
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-136552(P2016-136552)
(22)【出願日】2016年7月11日
(65)【公開番号】特開2018-7699(P2018-7699A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2018年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】江尻 孝一郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晴彦
【審査官】 牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−530225(JP,A)
【文献】 特開昭62−270134(JP,A)
【文献】 特開平01−266161(JP,A)
【文献】 特表2013−530777(JP,A)
【文献】 特表2005−521458(JP,A)
【文献】 特開2010−022623(JP,A)
【文献】 特表2014−505529(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0281814(US,A1)
【文献】 特開2011−206398(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0157225(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0306373(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0135863(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0260167(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/04 − 5/053
A61N 1/00 − 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体表面に接触し、生体と電気的に接続される生体用電極において、
機器類に接続される導線部を有し、且つ、可撓性及び柔軟性を有する薄板状又はシート状の配線基材と、該配線基材の表面に前記導線部と導通した状態で突設された複数の電極用凸部と、該電極用凸部を介して前記配線基材と重ね合わされた伸縮性及び柔軟性を有するとともに布部全体が導電性を有する導電性布部とを備え、
前記導電性布部に前記複数の電極用凸部を接触させた状態で前記配線基材と前記導電性布部とが重ね合わされ、該導電性布部が前記生体表面に接触するようにしたことを特徴とする生体用電極。
【請求項2】
前記導線部は、機器類と接続される接続端子と、該接続端子と前記電極用凸部とを接続する端子接続用導線を備えている請求項1に記載の生体用電極。
【請求項3】
前記導線部は、前記電極用凸部間を接続する電極間接続用導線を備えている請求項1又は2に記載の生体用電極。
【請求項4】
前記配線基材は、フレキシブルプリント配線基板である請求項1〜3の何れか1に記載の生体用電極。
【請求項5】
着用具を構成する絶縁性布部と一体化した生体用電極を備え、前記着用具を着用することにより前記生体用電極が生体表面に密着するようにした生体用電極付き着用具において、
前記生体用電極は、機器類に接続される導線部を有し、且つ、可撓性及び柔軟性を有する薄板状又はシート状の配線基材と、該配線基材の表面に前記導線部と導通した状態で突設された複数の電極用凸部と、該電極用凸部を介して前記配線基材と重ね合わされた伸縮性及び柔軟性を有するとともに布部全体が導電性を有する導電性布部とを備え、
前記導電性布部に前記複数の電極用凸部を接触させた状態で前記配線基材と前記導電性布部とが重ね合わされ、前記絶縁性布部、前記配線基材、前記電極用凸部及び前記導電性布部が順に積層配置で一体化され、前記着用具を着用することにより前記導電性布部が前記生体表面と密着するようにしたことを特徴としている生体用電極付き着用具。
【請求項6】
前記着用具は、衣類である請求項5に記載の生体用電極付き着用具。
【請求項7】
前記着用具は、筋肉、関節又は靭帯を覆う帯状、筒状、靴下状又は手袋状の装着具である請求項5に記載の生体用電極付き着用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体等の生体に接触させ、主に筋肉の刺激や身体情報の計測等に使用される生体用電極及び生体用電極付き着用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、低周波治療器などのように、人体の所望の位置に電極を接触させ、当該電極を通して筋肉に電気的刺激を与えることによって治療する装置が知られている。
【0003】
このような装置に使用される生体用電極は、皮膚に接触させるため、一般的な金属製の電極では、人体に対する十分な接触面積を確保し難く、また、接触面が人体の動作に伴う皮膚形状の変化に追随できないという問題がある。
【0004】
そこで、従来では、金属製の電極本体と皮膚との間に食塩水等の導電性媒体を含浸させたガーゼを介在させ、ガーゼと電極本体とをバンド等によって固定し、人体に対する接触面積と皮膚形状の変化に対する追随性を確保していた。
【0005】
また、導電性布を衣類に織り込むことにより一定面積を有する面状電極を形成し、その面状電極に接続端子を接続したものを使用し、衣類を着用することで電極が人体の所望の位置に接触し、皮膚形状に追随するようにしたウェアラブル装置用の生体用電極も開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−349021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、電極本体より供給される電流が食塩水等の導電性媒体を介して供給されるため電流が分散し、効率よく筋肉に刺激を与えることができないおそれがあった。
【0008】
また、導電性布からなる面状電極では、面状電極が一定の面積を有するため、実際に刺激する位置が機器類に接続される接続端子からの距離が大きいとその分の電気抵抗も大きくなりその部分における電気信号の出力が低下するおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、一定の面積を有する接触面が生体の表面に好適に密着し、且つ、好適な電気分布が得られる生体用電極及び生体用電極付き着用具の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、体表面に接触し、生体と電気的に接続される生体用電極において、機器類に接続される導線部を有し、且つ、可撓性及び柔軟性を有する薄板状又はシート状の配線基材と、該配線基材の表面に前記導線部と導通した状態で突設された複数の電極用凸部と、該電極用凸部を介して前記配線基材と重ね合わされた伸縮性及び柔軟性を有するとともに布部全体が導電性を有する導電性布部とを備え、前記導電性布部に前記複数の電極用凸部を接触させた状態で前記配線基材と前記導電性布部とが重ね合わされ、該導電性布部が前記生体表面に接触するようにした生体用電極にある。
【0011】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記導線部は、機器類と接続される接続端子と、該接続端子と前記電極用凸部とを接続する端子接続用導線とを備えていることにある。
【0012】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記導線部は、前記電極用凸部間を接続する電極間接続用導線を備えていることにある。
【0013】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1〜3の何れか1の構成に加え、前記配線基材は、フレキシブルプリント配線基板であることにある。
【0014】
請求項5に記載の発明の特徴は、着用具を構成する絶縁性布部と一体化した生体用電極を備え、前記着用具を着用することにより前記生体用電極が生体表面に密着するようにした生体用電極付き着用具において、前記生体用電極は、機器類に接続される導線部を有し、且つ、可撓性及び柔軟性を有する薄板状又はシート状の配線基材と、該配線基材の表面に前記導線部と導通した状態で突設された複数の電極用凸部と、該電極用凸部を介して前記配線基材と重ね合わされた伸縮性及び柔軟性を有するとともに布部全体が導電性を有する導電性布部とを備え、前記導電性布部に前記複数の電極用凸部を接触させた状態で前記配線基材と前記導電性布部とが重ね合わされ、前記絶縁性布部、前記配線基材、前記電極用凸部及び前記導電性布部が順に積層配置で一体化され、前記着用具を着用することにより前記導電性布部が前記生体表面と密着するようにした生体用電極付き着用具にある。
【0015】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項5の構成に加え、前記着用具は、衣類であることにある。
【0016】
請求項7に記載の発明の特徴は、請求項5の構成に加え、前記着用具は、筋肉、関節又は靭帯を覆う帯状、筒状、靴下状又は手袋状の装着具であることにある。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る生体用電極は、上述したように、生体表面に接触し、生体と電気的に接続される生体用電極において、機器類に接続される導線部を有する薄板状又はシート状の配線基材と、該配線基材の表面に前記導線部と導通した状態で突設された複数の電極用凸部と、該電極用凸部を介して前記配線基材と重ね合わされた導電性布部とを備え、該導電性布部が前記生体表面に接触するようにしたことにより、生体に対する一定の接触面積を確保しつつ、密着した状態で生体の表面変動に好適に追随できるとともに、多極化によって良好な電気分布が得られ、電流の分散や部分的な出力低下を好適に防止することができる。
【0018】
また、本発明において、前記導線部は、機器類と接続される接続端子と、該接続端子と前記電極用凸部とを接続する端子接続用導線を備えていること、又は、前記電極凸用部間を接続する電極間接続用導線を備えていることにより、生体と接触する電極部分に用途に応じて回路を構成することができる。
【0019】
更に、本発明において、前記配線基材は、フレキシブルプリント配線基板であることにより、生体の動きに伴う導電性布部の変形に対し好適且つ柔軟に追随することができる。
【0020】
本発明において、着用具を構成する絶縁性布部と一体化した生体用電極を備え、前記着用具を着用することにより前記生体用電極が生体表面に密着するようにした生体用電極付き着用具において、前記生体用電極は、機器類に接続される導線部を有する薄板状又はシート状の配線基材と、該配線基材の表面に前記導線部と導通した状態で突設された複数の電極用凸部と、該電極用凸部を介して前記配線基材と重ね合わされた導電性布部とを備え、前記絶縁性布部、前記配線基材、前記電極用凸部及び前記生体表面と密着する前記導電性布部が順に積層配置で一体化されていることにより、生体用電極を生体の所望の位置に密着させることができ、且つ、生体に対する一定の接触面積を確保しつつ、密着した状態で生体の表面変動に好適に追随でき、多極化によって良好な電気分布が得られ、電流の分散や部分的な出力低下を好適に防止することができる。
【0021】
また、本発明において、前記着用具が衣類であることにより、着用によって容易に生体用電極を生体表面に接触させることができ、また、前記着用具が筋肉、関節又は靭帯を覆う帯状、筒状、靴下状又は手袋状の装着具であることにより、目的に応じて生体の局部に生体用電極を密着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る生体用電極付き着用具の一例を示す正面図である。
図2図1中の生体用電極を示す部分拡大断面図である。
図3】(a)は配線基材の一例を示す平面図、(b)は同シートを使用した際の概略回路図である。
図4】(a)は配線基材の他の一例を示す平面図、(b)は同シートを使用した際の概略回路図である。
図5】(a)は配線基材の更に他の一例を示す平面図、(b)は同シートを使用した際の概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る生体用電極及び生体用電極付き着用具の実施態様を図1図5に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は生体用電極、符号2は生体用電極付き着用具である。
【0024】
生体用電極付き着用具2は、図1に示すように、衣類21を構成する絶縁性布部22と一体化した生体用電極1を備え、生体用電極1を機器類7に電気的に接続することによって、生体を媒介させた電気回路を有する装置を構成するようになっている。尚、図中符号71は、生体6又はその他の部分に接触させるGND用電極である。
【0025】
絶縁性布部22は、ポリエステル等の化学繊維によって伸縮性及び柔軟性を備えた布状に形成され、衣類2は、絶縁性布部22によってシャツ状、バンド状、ソックス状等の用途に適した態様に形成され、着用により生体6に密着するようになっている。
【0026】
生体用電極1は、図2に示すように、導線部31を有する薄板状又はシート状の配線基材3と、配線基材3の表面に突設された複数の電極用凸部4,4...と、電極用凸部4,4...を介して配線基材3と重ね合わされた導電性布部5とを備え、導電性布部5を生体6の表面に密着させて使用するようになっている。
【0027】
配線基材3は、フレキシブルプリント配線基板(FPC)をもって構成され、絶縁性のシート本体32の片面に銅箔等によって電気回路を成す導線部31が形成され、この導線部31が機器類7と電気的に接続されるようになっている。
【0028】
シート本体32は、ポリイミド等の絶縁性樹脂によって薄いシート状に形成され、可撓性及び柔軟性を備えている。
【0029】
導線部31は、例えば、図3に示すように、電極用凸部4,4...が実装される実装パターン部311と、電子機器類7と接続される接続端子部312と、実装パターン部311と接続端子部312とを接続する端子接続用導線313とを備え、機器類7に対し各電極用凸部4,4...が並列に接続されるようになっている。
【0030】
尚、導線部31の態様は、図3に示すものに限定されず、図4に示すように、実装パターン部311,311間、即ち、電極用凸部4,4...間を接続する電極間接続用導線314を備え、全電極用凸部4,4...を直列に接続してもよく、図5に示すように、電極間接続用導線314によって複数の電極用凸部4,4...を直列に接続した電極用凸部列を形成し、各電極用凸部列をそれぞれ端子接続用導線313によって接続端子部312に対し並列に接続してもよい。
【0031】
電極用凸部4,4...は、表面が金メッキ等の導電性金属によりメッキ処理された半球状に形成され、導線部31の実装パターン部311に実装されることにより、配線基材3の表面に互いに間隔をおいて突設されるとともに、導線部31に導通されている。
【0032】
導電性布部5は、ナノファイバー等の極細の化学繊維によって伸縮性、柔軟性を備えた布状又はシート状に形成され、化学繊維間に導電性高分子が含浸されることにより布部全体が導電性を備えている。
【0033】
また、導電性布部5は、その周縁部を絶縁性布部22に固定する固定手段を備え、導電性布部5が絶縁性布部22に固定されることにより、絶縁性布部22と導電性布部5との間に配線基材3及び電極用凸部4,4が挟持され、絶縁性布部22、配線基材3、電極用凸部4,4...及び導電性布部5が積層配置に一体化されるようになっている。
【0034】
導電性布部5を絶縁性布部22に固定する手段は、特に限定されないが、例えば、導電性布部5を構成する繊維と絶縁性布部22を構成する繊維とを編み込むようにしてもよく、導電性布部5の周縁を熱融着させてもよく、縫い付け又は貼り付けてもよい。
【0035】
そして、この導電性布部5は、各電極用凸部4と接触した状態で配線基材3に重ね合わされ、導電性布部5と配線基材3とは、電極用凸部4,4...を介して電気的に接続した状態で互いに追随して変形できるようになっている。
【0036】
このように構成された生体用電極付き着用具2は、絶縁性布部22が伸縮性を有していることによって、着用とともに衣類21が生体6の表面に密着し、それに伴い絶縁性布部22と一体化した生体用電極1も生体6に密着する。
【0037】
その際、生体用電極1は、繊維からなる導電性布部5が生体表面に密着するので、良好な肌触りと生体6に対する一定の接触面積が得られるようになっている。
【0038】
一方、この生体用電極1は、導電性布部5が伸縮性及び柔軟性を備えているので生体6の動作に追随して変形し、生体6に密着した状態が維持されるとともに、配線基材3が可撓性及び柔軟性を備えているので、導電性布部5の変形に追随できるようになっている。
【0039】
その際、配線基材3と導電性布部5とは、常に電極用凸部4,4...を介して多極で接
触しているので、導電性布部5のどの位置においても好適な電気分布を得られるようになっている。
【0040】
尚、上述の実施例では、配線基材3にフレキシブルプリント配線基板(FPC)を使用した例について説明したが、FPC以外の可撓性及び柔軟性を有する薄板状又はシート状のものを使用してもよい。
【0041】
また、上述の実施例では、着用具2としてシャツ等の衣類を使用した例について説明したが、衣類の態様は、上述の実施例に限定されず、例えば、ベスト状、腹巻状等であってもよい。
【0042】
更に、着用具2の態様は、衣類に限定されず、例えば、筋肉、関節又は靭帯を覆う帯状、筒状、靴下状又は手袋状の装着具(所謂サポーター)等であってもよい。
【0043】
また、上述の実施例では、生体用電極付き着用具2について説明したが、本発明に係る生体用電極1は、上述の実施例に示す着用具の他、椅子、寝床、その他の生体に接触して使用するものにも適用することができる。
【0044】
また、生体は、人体に限定されず、ペットや家畜等の動物にも適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 生体用電極
2 生体用電極付き着用具
21 衣類
22 絶縁性布部
3 配線基材
31 導線部
311 実装パターン部
312 接続端子部
313 端子接続用導線
314 電極間接続用導線
32 シート本体
4 電極用凸部
5 導電性布部
6 生体
7 機器類
71 GND電極
図1
図2
図3
図4
図5