特許第6725909号(P6725909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6725909
(24)【登録日】2020年6月30日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20200713BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20200713BHJP
【FI】
   A63B53/04 B
   A63B102:32
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-142382(P2015-142382)
(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公開番号】特開2017-23216(P2017-23216A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】竹地 隆晴
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−525214(JP,A)
【文献】 特開2007−044279(JP,A)
【文献】 米国特許第05464211(US,A)
【文献】 ヘッド反発調整,カスタムゴルフクラブ専門店 MAX GOLF ホームページ,[online],2012年10月25日,[2019年4月11日検索]インターネット<https://web.archive.org/web/20121025125455/http://www.max-golf.com/contents/distance/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04−53/06
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のゴルフクラブヘッドのフェース部のスプリング効果を計測する計測工程と、
前記計測工程の計測結果に基づいて、複数の調整デバイスの中から前記ゴルフクラブヘッドの取付部に取り付ける調整デバイスを選択する選択工程と、を含み、
前記調整デバイスが前記取付部に取り付けられていない状態で、前記フェース部のCT値が257μs以上であり、
前記複数の調整デバイスは、前記フェース部のスプリング効果の抑制度合が互いに異なり、
前記取付部は、前記ゴルフクラブヘッドのソール部に設けられ、
前記複数の調整デバイスは、前記フェース部の背面に当接する当接部材と、前記当接部材を支持する複数の支持部材のうちの一つとの組み合せで構成され、
前記当接部材は、前記支持部材を介して前記取付部に取り付けられ、
前記複数の支持部材は、支持する前記当接部材の向きが互いに異なる部材である、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
請求項に記載の製造方法であって、
前記当接部材はネジ軸を有し、前記複数の支持部材は、前記ネジ軸と螺合するネジ孔を有し、
前記複数の支持部材は、外形又は前記ネジ孔の向きが異なっていることにより、支持する前記当接部材の向きが互いに異なる部材である、
ことを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブヘッドの性能を向上するため、様々な構造が提案されている。例えば、特許文献1には中空のゴルフクラブヘッドの内部に骨格を設け、重心位置等の設計自由度を向上しようとしたゴルフクラブヘッドが開示されている。また、例えば、特許文献2〜4には、フェース部の中央部を補強する構造を備えたゴルフクラブヘッドが開示されている。特許文献5及び6には、交換部品を備えてユーザが好みの特性を選択可能なゴルフクラブヘッドが開示されている。特許文献5及び6には、交換部品として、打撃時のフェース部の振動の減衰を促進させる交換部品が開示されている。特許文献7には、フェース部の中央部を補強する構造を備えたゴルフクラブヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6558271号明細書
【特許文献2】米国特許第7140977号明細書
【特許文献3】米国特許第8602912号明細書
【特許文献4】特許第5438124号公報
【特許文献5】特許第4608437号公報
【特許文献6】特許第4608426号公報
【特許文献7】特表2012−525214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドライバヘッドに代表される中空のゴルフクラブヘッドでは、フェース部のスプリング効果が飛距離性能に影響する。一方、R&AやUSGAはドライバヘッドのフェース部のスプリング効果を、CT値で257μs以下(反発係数で0.83以下)に規制している。このような規制値に近いスプリング効果を有するゴルフクラブヘッドは飛距離性能の点で有利であるが、ゴルフクラブヘッドの製造においては製造誤差が発生する。したがって、スプリング効果が限りなく規制値に近くなるようにゴルフクラヘッドを設計すると、
規制値を超える個体が製造される場合がある。規制値に対して余裕を見て設計すると、規制値を大きく下回って飛距離性能に劣る個体が製造される場合がある。
【0005】
本発明の目的は、スプリング効果の個体差を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、中空のゴルフクラブヘッドのフェース部のスプリング効果を計測する計測工程と、前記計測工程の計測結果に基づいて、複数の調整デバイスの中から前記ゴルフクラブヘッドの取付部に取り付ける調整デバイスを選択する選択工程と、を含み、前記調整デバイスが前記取付部に取り付けられていない状態で、前記フェース部のCT値が257μs以上であり、前記複数の調整デバイスは、前記フェース部のスプリング効果の抑制度合が互いに異なり、前記取付部は、前記ゴルフクラブヘッドのソール部に設けられ、前記複数の調整デバイスは、前記フェース部の背面に当接する当接部材と、前記当接部材を支持する複数の支持部材のうちの一つとの組み合せで構成され、前記当接部材は、前記支持部材を介して前記取付部に取り付けられ、前記複数の支持部材は、支持する前記当接部材の向きが互いに異なる部材である、ことを特徴とする製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スプリング効果の個体差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(A)は本発明の一実施形態のゴルフクラブヘッドの斜視図、(B)は図1(A)のゴルフクラブヘッドをソール部側から見た図。
図2】(A)は図1(A)のI-I線に沿う断面図、(B)〜(F)は調整デバイスの例を示す図。
図3】本発明の一実施形態の製造方法のフローチャート。
図4】(A)〜(C)は別例の説明図。
図5】(A)及び(B)は別例の説明図。
図6】(A)〜(C)は別例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1(A)は本発明の一実施形態のゴルフクラブヘッド1の斜視図、図1(B)はゴルフクラブヘッド1をソール部13側から見た図である。ゴルフクラブヘッド1は、ヘッド本体10と調整デバイス18とを備える。
【0012】
ヘッド本体10は中空体をなしており、その周壁が、フェース部11、クラウン部12、ソール部13及びサイド部14を構成している。フェース部11は、その表面(正面)がフェース面(打撃面)を形成する。フェース面にはバルジ及びロールを形成することができる。クラウン部12はゴルフクラブヘッド1の上部を形成する。ソール部13はゴルフクラブヘッド1の底部を形成する。サイド部14はソール部13と、クラウン部12との間の部分を形成する。また、ヘッド本体10はシャフトが取付けられるホゼル部15を備える。
【0013】
図1(A)の矢印d1はフェース−バック方向を示し、矢印d2はトウーヒール方向を示す。フェース−バック方向は、通常は、飛球線方向(打球の目標方向)となる。トウ−ヒール方向は、ソール部13のトウ側端とヒール側端とを結ぶ方向とする。フェース部11の上下方向は、ゴルフクラブヘッド1を規定ライ角通りに接地した場合を基準とする。本実施形態の場合、ソール部13−クラウン部12の方向となる。
【0014】
ゴルフクラブヘッド1はドライバ用のゴルフクラブヘッドである。しかし、本発明はドライバ以外のフェアウエイウッド等も含むウッド型のゴルフクラブヘッド等、他の種類の中空ゴルフクラブヘッドに適用可能である。
【0015】
ヘッド本体10は、金属材料から作成することができ、そのような金属材料としては、チタン系金属(例えば、6Al−4V−Tiのチタン合金等)、ステンレス、ベリリウムカッパー等の銅合金が挙げられる。
【0016】
ヘッド本体10は、複数のパーツを接合して組み立てることができる。例えば、本体部材とフェース部材とから構成できる。本体部材は、クラウン部12、ソール部13、サイド部14及びフェース部11の周縁部分を構成し、フェース部11に相当する部分の一部に開口部が形成される。フェース部材は本体部材の開口部に接合される。
【0017】
ヘッド本体10は、取付部16を備える。取付部16は、本実施形態の場合、ソール部13に配設されている。具体的には、ソール部13は、周囲よりも凹んだ凹部13aを含み、取付部16は凹部13aの壁部に形成されてヘッド本体10の内部に位置している。また、取付部16は、d2方向で言うとソール部13の中央部に位置し、d1方向で言うとフェース部11側に偏った位置に配設されている。
【0018】
本実施形態の場合、取付部16はネジ孔である。取付部16は、その中心線d3がフェース部11と交差するように形成されている。取付部16には調整デバイス18を取り付け可能である。取付部16はヘッド本体10の内部に位置しているが、凹部13aを設けたことで、調整デバイス18の取り付けを比較的容易なものにしている。
【0019】
本実施形態の場合、調整デバイス18はフェース部11の背面に当接する当接部材を構成している。詳細には、調整デバイス18は、本実施形態の場合、ネジ軸18aと、頭部18bと、フェース部11の背面に対向する先端部18cとを一体に備える部材である。頭部18bには六角レンチなどの工具と係合する有底の孔が形成されている。ネジ軸18aは取付部16に螺合する軸径及びネジピッチを有している。先端部18cはフェース部11の背面(ヘッド本体10の内部空間側の面)に当接する当接部を構成している。図2(A)は図1(A)のI-I線に沿う断面図であり、フェース部11の背面に対する先端部18cの当接態様を示している。
【0020】
先端部18cがフェース部11に当接することで、当接しない場合よりもフェース部11の変形が拘束される。つまり、フェース部11の打撃時におけるスプリング効果が抑制される。先端部18cは、自然状態におけるフェース部11の背面を押圧しない程度に接触するようにしてもよいし、フェース面側に押圧する程度に接触するようにしてもよい。
【0021】
フェース部11に対する先端部18cの当接態様はフェース部11の変形の拘束度合に影響する。例えば、フェース部11の背面に対する先端部18cの当接面積が広い程、フェース部11の拘束度合が高まる。したがって、フェース部11のスプリング効果の抑制度合が互いに異なる複数の調整デバイス18を用意しておき、ヘッド本体10の個体に応じた調整デバイス18を選択することで、フェース部11のスプリング効果を調整し、かつ、個体差を低減することができる。
【0022】
図2(B)〜図2(F)は、取付部16に取付可能な五種類の調整デバイス18を例示している。図2(B)〜図2(F)の各調整デバイス18は、全長が共通でネジ軸18a及び頭部18bも同じ構成であるが、先端部18cの形状が互いに異なっている。
【0023】
図2(B)〜図2(D)の各調整デバイス18は、先端部18cが先細り形状となっている一方、先端面の面積が互いに異なっており、この中では、図2(C)の例が先端面の面積が最も大きく、図2(D)の例が先端面の面積が最も小さい。図2(B)〜図2(D)の先端面の形状は、円形となっている。図2(E)の調整デバイス18の先端部18cは球状である。図2(F)の調整デバイス18の先端部18cは柱状であり、図2(B)〜図2(F)の調整デバイス18の中で、先端面の面積が最も大きい。フェース部11の背面に対する先端部18cの当接面積が調整デバイス18の先端面の面積と同じであると仮定した場合、フェース部11の変形の拘束度合は、図2(F)の調整デバイス18が最も高い。
【0024】
ここで、R&AやUSGAはドライバヘッドのフェース部のスプリング効果を、CT値で257μs以下(反発係数で0.83以下)に規制している。このような規制値に近いスプリング効果を有するゴルフクラブヘッドは飛距離性能の点で有利であるが、ゴルフクラブヘッドの製造においては製造誤差が発生する。そこで、調整デバイス18の種類を選択することによって製造誤差を吸収し、設計者が意図するCT値に近づけることが可能である。図3は、市場に出荷する多数のゴルフクラブヘッド1の製造方法の例を示すフローチャートである。
【0025】
S1ではゴルフクラブヘッド1の設計を行う。必要に応じて試作品を製造して検証作業等を行ってもよい。ゴルフクラブヘッド1の設計においては、ヘッド本体10のフェース部11のCT値は257μs以上となるように設計してもよく、或いは、ヘッド本体10のCT値が実際に257μs以上であってもよい。CT値を規制値ぎりぎりか、規制値を超えるように設計して製造し、調整デバイス18の選択により規制値以下に下げることによって、規制値に近いCT値を持つゴルフクラブヘッド1を製造することができる。
【0026】
S2では、S1で設計したゴルフクラブヘッド1のヘッド本体10を量産する。並行して調整デバイス18も量産する。S2によりゴルフクラブヘッド1の部品が揃う。
【0027】
S3では、S2で量産したヘッド本体10のフェース部11のスプリング効果を計測する。計測の対象とするヘッド本体10は、全量産品でもよいし、一部の量産品でもよい。一部の量産品とする場合は、フェース部11の厚さ等を基準としてグループ分けし、グループ単位で一又は複数のヘッド本体10を計測の対象とし、グループ内の全量産品の計測結果とみなして調整デバイス18を共通に選択してもよい。スプリング効果の計測方法としては、例えば、R&G及びUSGAのペンデュラムテストに準拠して専用の反発計測器によりCT値を計測すればよい。
【0028】
S4では、S3の計測結果に基づいて、複数の調整デバイス18の中から取付部16に取り付ける調整デバイス18を選択し、取付部16に取り付ける。複数の調整デバイス18は、既に説明したようにフェース部11のスプリング効果の抑制度合が互いに異なるものとするが、選択可能な調整デバイス18は、少なくとも2種類あればよい。
【0029】
S5では、調整デバイス18を取り付けたゴルフクラブヘッド1のフェース部11のスプリング効果を再計測する。計測方法はS3と同じである。
【0030】
S6では、S5の再計測結果が所定範囲内に収まっているか否かを判定する。所定範囲としては、例えば、CT値で上限値を257μsとし、下限値を250μsとしてもよい。計測誤差が予想される場合は、例えば、例えば、CT値で上限値を255μsとし、下限値を248μsとしてもよい。また、上述したグループ単位で調整デバイス18を選択する場合は、グループ内の個体差を考慮して、CT値で上限値を250μsとし、下限値を240μsとしてもよい。
【0031】
再計測結果が所定範囲内に収まっていない場合はS4へ戻り、調整デバイス18を変更する。例えば、CT値が上限値を超えていた場合は、フェース部11の拘束度合がより高い調整デバイス18を選択して取り付ける。逆に、CT値が下限値を下回っていた場合は、フェース部11の拘束度合がより低い調整デバイス18を選択して取り付ける。
【0032】
再計測結果が所定範囲内に収まっている場合は、必要に応じて最終的な処理(装飾処理等)を施してゴルフクラブヘッド1の製造が完了する。
【0033】
このように本実施形態では、フェース部11のスプリング効果の個体差を低減でき、しかも、CT値の規制値に近いゴルフクラブヘッド1を安定的に製造できる。フェース部11のスプリング効果の調整は、スプリング効果の計測と、その計測結果に基づく調整デバイス18の選択とにより行うので、比較的簡易にスプリング効果を調整できる。
【0034】
<第二実施形態>
S3の計測の結果、ヘッド本体10のフェース部11のCT値が既に所定範囲内に収まっている場合もある。この場合、スプリング効果の点では調整デバイス18を取り付ける必要がない。しかし、調整デバイス18を取り付けないと重心位置やヘッド重量等が大きく異なってしまう場合があり、ゴルフクラブヘッド1の性能に影響を与える場合がある。そこで、S4で選択可能な複数の調整デバイス18の中に、スプリング効果に影響を与えない調整デバイス18を含めることができる。
【0035】
図4(A)及び図4(B)はその一例を示す。同図の調整デバイス18は、先端部18cが短く構成されており、図4(A)に示すように、先端部18cが、自然状態のフェース部11の背面から離間している。したがって、打撃時においてフェース部11の変形を拘束せず、或いは、先端部18cはフェース部11に僅かに当接するのみとなり、フェース部11のスプリング効果にほとんど影響を与えない。その一方で、ネジ18a及び頭部18bは他の調整デバイス18と同様であり、ゴルフクラブヘッド1の重心位置やヘッド重量等が大きく異なってしまう場合を回避できる。
【0036】
<第三実施形態>
第一実施形態では、調整デバイス18がネジ18a、頭部18b及び先端部18cを一体に備える構成であったが、先端部18cを選択可能な構成であってもよい。図4(C)はその一例を示す。同図の例では、ネジ18aの先端面に係合部18eが形成されており、先端部18cが係合部18eに係合する係合部18dを備えている。同図の例では、係合部18eは有底の孔であり、係合部18dはこの孔に挿入される軸である。係合部18eと係合部18dとは互いに嵌合する構成であってもよいし、接着剤等により接合される構成であってもよい。
【0037】
<第四実施形態>
第一実施形態では、複数の調整デバイス18が、互いに先端部18cの形状が異なるものを例示したが調整デバイス18の少なくとも一部の材料が互いに異なってもよい。材料が異なることにより、打撃時におけるフェース部11の変形に対する調整デバイス18の変形も異なり、フェース部11のスプリング効果の抑制度合を異ならせることができる。この場合、複数の調整デバイス18が先端部18cの形状が全部異なっていてもよいし、全部同じであってもよいし、同じ形状のものと異なる形状のものとが混在していてもよい。
【0038】
材料としては、例えば、ステンレスやアルミニウムのような金属の他、樹脂、ゴム等を挙げることができる。材料の剛性が高い場合は相対的にスプリング効果の抑制度合が高くなり、材料の剛性が低い場合は相対的にスプリング効果の抑制度合が低くなる。
【0039】
各調整デバイス18の間で、材料が異なる部分は全部であっても一部であってもよい。一部とする場合、例えば、第三実施形態のように先端部18cを選択可能な構成とし、複数の先端部18cを互いに材料が異なるものとしてもよい。
【0040】
<第五実施形態>
第一実施形態では、複数の調整デバイス18が、互いに先端部18cの形状が異なるものを例示したが、フェース部11の背面に当接する位置が互いに異なっていてもよい。図5(A)及び図5(B)はその一例を示す。図5(A)は分解図を示しており、図5(B)は組立図を示している。
【0041】
本実施形態の調整デバイス18は、当接部材181と、支持部材182とにより構成されている。当接部材181は、第一実施形態の調整デバイス18と同様の構成であり、ネジ軸181aと、頭部181bと、フェース部11の背面に対向する先端部181cとを一体に備える部材である。当接部材181は、支持部材182を介して取付部16に取り付けられ、先端部18cはフェース部11の背面に当接する当接部を構成している。
【0042】
支持部材182は、当接部材181の向きを調整する角度調整部材である。支持部材182は、ネジ軸18aが螺合するネジ孔182aを有している。取付部16に対する支持部材182の固定構造は、ネジ構造であってもよいし、圧入等の嵌合であってもよいし、接着剤等による接着であってよい。
【0043】
フェース部11に対する先端部181cの当接位置はフェース部11の変形の拘束度合に影響する。例えば、先端部181cの当接位置がフェース部11の中央部の場合、フェース部11全体の拘束度合が高まる。一方、先端部181cの当接位置がフェース部11の周縁部の場合、中央部の場合よりもフェース部11全体の拘束度合は低くなる。したがって、当接部材181が当接するフェース部11の背面の位置が互いに異なるように当接部材181を支持する複数の支持部材182を用意しておき、ヘッド本体10の個体に応じた支持部材182を選択することで、フェース部11のスプリング効果を調整し、かつ、個体差を低減することができる。なお、支持部材182毎に当接部材181を用意することも可能であるが、本実施形態では、各支持部材182に共通に当接部材181が使用可能な構成を例示する。
【0044】
図6(A)乃至図6(C)は、取付部16に取付可能な三種類の調整デバイス18(特に支持部材182)を例示している。図5(A)及び(B)の例と、図6(B)乃至図6(C)の各例の支持部材182は、互いに外形又はネジ孔182aの向きが異なっていることにより、当接部材181が当接するフェース部11の背面の位置が異なるように構成されている。
【0045】
図6(A)の支持部材182は、図5(A)及び図5(B)の例よりも当接部材181の当接位置がソール部13側に位置するように構成されている。図6(B)の支持部材182は、図6(A)の例よりも当接部材181の当接位置が更にソール部13側に位置するように構成されている。図5(B)の例と、図6(A)の例と、図6(B)の例とでは、フェース部11の変形の拘束度合は、図5(B)の例が最も高く、図6(B)の例が最も低い。
【0046】
図6(C)の例は、スプリング効果に影響を与えない調整デバイス18の一例であり、その目的は第二実施形態と同様である。本実施形態の場合、支持部材182の厚さを厚くすることで、先端部181cが、自然状態のフェース部11の背面から離間している。したがって、打撃時においてフェース部11の変形を拘束せず、或いは、先端部18cはフェース部11に僅かに当接するのみとなり、フェース部11のスプリング効果にほとんど影響を与えない。その一方で、ゴルフクラブヘッド1の重心位置やヘッド重量等が大きく異なってしまう場合を回避できる。
【0047】
本実施形態の場合、各支持部材182に当接部材181が共通なので、図3のS4においては複数の支持部材182の中からS3の計測結果に基づいて支持部材182を選択すればよいことになる。
【0048】
なお、本実施形態の当接部材181に、第一実施形態から第三実施形態の調整デバイス18の構成例を適用することも可能である。
【0049】
<第六実施形態>
第一実施形態乃至第五実施形態では、調整デバイス18の取付部位をソール部13としたが、クラウン部12やサイド部14であってもよい。また、調整デバイス18及び取付部16を一つとしたが、複数組であってもよい。複数組の調整デバイス18及び取付部16を設けた場合、全組の構造を同じとしてもよいし、構造が異なる組(例えば第一実施形態の組と第五実施形態の組が混在)があってもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 ゴルフクラブヘッド
11 フェース部
16 取付部
18 調整デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6