特許第6725981号(P6725981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6725981
(24)【登録日】2020年6月30日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】理美容用椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 1/06 20060101AFI20200713BHJP
【FI】
   A47C1/06
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-240063(P2015-240063)
(22)【出願日】2015年12月9日
(65)【公開番号】特開2017-104264(P2017-104264A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100095061
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭介
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(72)【発明者】
【氏名】村岡 孝志
(72)【発明者】
【氏名】中川 隼一
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−270952(JP,A)
【文献】 特開2014−200419(JP,A)
【文献】 実開昭48−057299(JP,U)
【文献】 実公昭42−006925(JP,Y1)
【文献】 特開2011−217843(JP,A)
【文献】 特開2007−151787(JP,A)
【文献】 特開2001−299491(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0103691(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施術者が着座する座部および背もたれ部が備えられた椅子本体部と、
前記椅子本体部を昇降させる昇降部と、
前記昇降部を操作するために前記昇降部に備えられた操作部と、
前記椅子本体部と共に前記昇降部を回転させる回転機構と、が備えられ、
前記操作部が、
前記昇降部の後方に配置された後方部と、
前記後方部に連接されると共に前記昇降部の側方に配置された側方部と、
前記昇降部に支持されて左右側方を軸とする軸部と、から構成され、接地面とほぼ平行であり、
前記操作部が操作される前における前記後方部と接地面との間が、施術者のつま先が入る程度の間隔であり、前記操作部の可動範囲の上限の高さが、施術者の踵を接地面につけたまま、浮かせたつま先が届く高さである
ことを特徴とする理美容用椅子。
【請求項2】
前記操作部が、前記軸部を軸に上下に操作され、引き上げられることで、前記椅子本体部が上昇し、踏み込まれることで、前記椅子本体部が下降する
ことを特徴とする請求項1に記載された理美容用椅子。
【請求項3】
前記椅子本体部と共に前記操作部ごと前記昇降部が回転する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された理美容用椅子。
【請求項4】
前記後方部が、前記昇降部から所定の間隔を空けて配置されると共に、起立した前記背もたれ部よりも内側に配置され、
前記側方部が、前記椅子本体部よりも内側に配置された
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された理美容用椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子の高さを調節するための昇降装置が備えられた理美容用椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、理美容施設では、被施術者が椅子に着座し、施術者が、被施術者の前後左右から、例えば、頭髪のカットや、リクライニングさせて行われる洗髪やシェービングなどの施術を自在に行いやすくするために、高さを調節するための昇降装置が備えられた椅子が用いられる。例えば、施術者は、洗髪時において両手にシャンプーが付着しており、また、シェービング時において剃刀を持っていることから両手が使えない。そのため、椅子を昇降させるための操作は、椅子の足元に備えられたスイッチで行われる。このような椅子や昇降装置として、例えば、下記特許文献1に記載された洗髪装置、および下記特許文献2に記載された理美容椅子の昇降装置がある。
【0003】
洗髪装置は、椅子の後方側の足元において、機能が異なる二種類のフットスイッチが左右に分かれて備えられている。椅子を昇降させる機能を実現するフットスイッチは、左右の片方にのみ備えられているため、例えば、椅子の後方側から施術する場合や、昇降用のフットスイッチの反対側のフットスイッチ側から施術する場合、昇降用のフットスイッチまで施術者が回り込まなければならないため、円滑に操作することができない。
【0004】
一方、理美容椅子の昇降装置は、基台の上に支持ブロックが備えられている。この支持ブロックは、この支持ブロックに対して椅子を昇降および回転させる油圧シリンダのラムが中央に備えられ、椅子を昇降させるペダルが、椅子の周囲を“コ”字状に囲う形状に形成されている。そのため、リクライニングさせた場合であっても左右の何れからでも円滑に操作することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−125881号公報
【特許文献2】特開2007−151787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載された理美容椅子の昇降装置は、上記したとおり、油圧シリンダのラムが、支持ブロックに対して椅子を回転させるため、リクライニングされた椅子を回転させて足置きがペダルの上方に配置された場合、ペダルを操作し辛い。すなわち、洗髪時において、椅子の前方に備えられたシャンプーボウルに頭部を配置させるために、リクライニングさせた椅子を180度回転させた場合、足置きがペダルのすぐ上に配置されるため、ペダルを操作し辛い。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、向きにかかわらず任意の位置で昇降操作をすることができる理美容用椅子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る理美容用椅子は、被施術者が着座する座部および背もたれ部が備えられた椅子本体部と、前記椅子本体部を昇降させる昇降部と、前記昇降部を操作するために前記昇降部に備えられた操作部と、前記椅子本体部と共に前記昇降部を回転させる回転機構と、が備えられた、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る理美容用椅子は、前記操作部が、前記昇降部の後方に配置された後方部と、この後方部に連接されると共に前記昇降部の側方に配置された側方部と、から構成された、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る理美容用椅子は、前記後方部が、前記昇降部から所定の間隔を空けて配置されると共に、起立した前記背もたれ部よりも内側に配置され、前記側方部が、前記椅子本体部よりも内側に配置された、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る理美容用椅子は、前記昇降部に支持された軸部が前記操作部に形成され、前記操作部が、前記軸部を軸に上下に操作される、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る理美容用椅子は、操作される前の前記操作部の後方部における接地面からの高さが、施術者の足の厚みよりも高く、かつ、前記軸部を軸に回転する前記操作部の可動範囲のうち、上限の高さが、施術者の足の長さよりも低い、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る理美容用椅子は、上記した構成である。すなわち、昇降部が回転して椅子本体部の向きが変わると、昇降部に備えられた操作部も同じ向きに回転するため、椅子本体部に対する操作部の相対的な位置が変化しない。したがって、椅子本体部の向きにかかわらず任意の位置で昇降操作をすることができる。
【0014】
本発明に係る理美容用椅子は、操作部が、昇降部の後方に配置された後方部と、この後方部に連接されると共に昇降部の側方に配置された側方部とから構成されている。したがって、椅子本体部の向きにかかわらず、後方側または側方の任意の位置で昇降操作をすることができる。
【0015】
本発明に係る理美容用椅子は、後方部が、昇降部から所定の間隔を空けて配置されると共に、起立した背もたれ部よりも内側に配置され、側方部が、椅子本体部よりも内側に配置されている。この構成により、施術者が椅子本体部の周囲を動き回る際、操作部が障害とならず、効率的に施術することができる。
【0016】
本発明に係る理美容用椅子は、昇降部に支持された軸部が操作部に形成され、操作部が、軸部を軸に上下に操作される。したがって、椅子本体部の向きにかかわらず任意の位置において、足を上げ下げすることで昇降操作をすることができる。
【0017】
本発明に係る理美容用椅子は、操作される前の操作部の後方部における接地面からの高さが、施術者の足の厚みよりも高く、かつ、軸部を軸に回転する操作部の可動範囲のうち、上限の高さが、施術者の足の長さ(踵からつま先までの長さ)よりも低い。すなわち、後方部と接地面との間は、つま先が入る間隔が形成される。また、操作部の可動範囲の上限の位置は、施術者の足のつま先が届く高さである。そのため、施術者は、踵を接地面に付けたまま、つま先を上下することで操作することができ、足に負担をかけずに昇降操作をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る理美容用椅子における後方側からの外観が示された外観後方斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る理美容用椅子における後方側からの一部の内部構造が示された後方斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る理美容用椅子における側方側からの外観が示された外観側方図である。
図4】本発明の実施形態に係る理美容用椅子における後方側からの外観が示された外観後方図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態に係る理美容用椅子1を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る理美容用椅子1の外観が示され、図2は、理美容用椅子1の一部の内部構造が示されている。
【0020】
図1に示されているとおり、理美容用椅子1は、被施術者(図示省略)が着座する椅子本体部2と、この椅子本体部2を昇降させる昇降部10と、この昇降部10を操作するために昇降部10に備えられた操作部12と、椅子本体部2と共に昇降部10を回転させる回転機構11とが備えられている。なお、以下の説明では、図1を基準として、着座した被施術者の正面側を前方とし、被施術者の背面側を後方とし、被施術者の左右側を側方とし、鉛直方向を上下方向とする。また、裸足、靴下を着用した足、履物を履いた足にかかわらず、「足」と表現し、靴下や履物が着用される場合は、それらの厚みや長さを適宜考慮する。
【0021】
椅子本体部2は、被施術者が座る座部3の後方端に背もたれ部4が配置され、座部3の前方端に足置き部5が連結されている。また、座部3の左右側方に肘置き部6が備えられている。椅子本体部2は、昇降部10の上に取り付けられている。
【0022】
昇降部10は、接地面に置かれた基台7の上面に取り付けられ、後方の可動フレーム8に操作部12が連結されている。昇降部10は、四角形の箱型に形成されたハウジング9が被せられ、操作部12の一部が露出している。
【0023】
図1および図2に示されているとおり、操作部12は、棒状の部材が、ほぼ“コ”字形に折り曲げられて形成されると共に昇降部10の後方および側方の周囲を囲って配置されている。操作部12は、昇降部10の後方に配置された後方部13と、この後方部13の両端に連接されると共に昇降部10の側方に配置された側方部14と、この側方部14が接続された可動フレーム8と、この可動フレーム8に接続されると共に昇降部10に支持された軸部15とから構成されている。操作部12は、軸部15を軸に可動フレーム8と共に回転することで上下に動く。なお、操作部12は、接地面に対して平行に軸部15ごと上下に上昇および下降する構成でもよい。また、操作部12を下げることで椅子本体部2が下降または上昇するか、操作部12を上げることで椅子本体部2が下降または上昇するかは任意である。
【0024】
ここで、操作部12について詳説する。図3は、側方から視した本発明の実施形態に係る理美容用椅子1の外観が示され、図4は、後方から視した理美容用椅子1の外観が示されている。図3および図4により、理美容用椅子1全体における操作部12の配置が表れている。
【0025】
図3に示されているとおり、操作部12は、後方部13が、昇降部10から所定の間隔Xを空けて配置されている。所定の間隔Xは、起立した背もたれ部4において、最も後方に張り出した箇所を基準とする後方鉛直仮想線100よりも内側の範囲であり、この所定の間隔Xの範囲内に後方部13が配置されている(図3において、後方鉛直仮想線100よりも左側)。また、図4に示されているとおり、操作部12は、側方部14が、椅子本体部2の肘置き部6よりも内側に配置され、ハウジング9の側面と同一面上に揃えられている。詳説すれば、肘置き部6において、最も側方に張り出した箇所を基準とする側方鉛直仮想線101よりも、内側に配置されている(図4において、側方鉛直仮想線101よりも左側)。
【0026】
操作前の状態で、操作部12は接地面とほぼ平行である。この状態で、後方部13における接地面からの所定の高さYは、施術者の足の厚みと同じか、足の厚みよりも高い。また、操作部12は、軸部15を軸に回転する可動範囲のうち、上限位置が、施術者の足の長さ(踵からつま先までの長さ)の範囲内である。すなわち、後方部13と接地面との間は、施術者のつま先が入る程度の間隔であり、また、操作部12の可動範囲の上限の高さは、施術者の踵を接地面につけたまま、浮かせたつま先が届く高さである。操作する際、施術者は、踵を接地面に付けたまま、つま先を上げて後方部13または側方部14に足を乗せて下方に踏込み、または、つま先を後方部13または側方部14の下に入れて上方に引き上げる。
【0027】
以上により本実施形態に係る理美容用椅子1が構成されている。
【0028】
次に、本実施形態の効果を説明する。
【0029】
上記したとおり、本実施形態によれば、椅子本体部2を昇降させる昇降部10を操作するために、操作部12が昇降部10の可動フレーム8に備えられ、椅子本体部2と共に昇降部10を回転させる回転機構11が備えられている。操作部12は、棒状の部材がほぼ“コ”字形に形成されて昇降部10の後方および側方の周囲を囲い、昇降部10の後方に配置された後方部13と、この後方部13に連接されると共に昇降部10の側方に配置された側方部14と、この側方部14が接続された可動フレーム8に接続されると共に昇降部10に支持された軸部15とから構成されている。すなわち、昇降部10が回転して椅子本体部2の向きが変わると、昇降部10に備えられた操作部12も同じ向きに回転するため、椅子本体部2に対する操作部12の相対的な位置が変化しない。したがって、背もたれ部4を起立させた状態、またはリクライニングさせた状態の何れであっても、椅子本体部2の向きにかかわらず、また、シャンプーボウルなどの設備の配置にかかわらず、後方や左右側方の任意の位置で昇降部10を操作することができる。
【0030】
本実施形態によれば、操作部12は、後方部13が、起立した背もたれ部4において、最も後方に張り出した箇所を基準とする後方鉛直仮想線100よりも内側である所定の間隔Xの範囲内に配置されている。また、操作部12は、側方部14が、肘置き部6において、側方鉛直仮想線101よりも内側に配置され、ハウジング9の側面と同一面上に揃えられている。この構成により、施術者が椅子本体部2の周囲を動き回る際、障害とならず、効率的に施術することができる。
【0031】
本実施形態によれば、操作部12は、軸部15を軸に回転することで上下に動く。したがって、椅子本体部2の向きにかかわらず任意の位置において、足を上げ下げすることで昇降部10を操作することができる。
【0032】
本実施形態によれば、操作前の状態で、後方部13における接地面からの所定の高さYは、施術者の足の厚みと同じか、足の厚みよりも高い。また、操作部12は、軸部15を軸に回転する可動範囲のうち、上限位置が、施術者の足の長さ(踵からつま先までの長さ)の範囲内である。すなわち、後方部13と接地面との間は、施術者のつま先が入る程度の間隔であり、また、操作部12の可動範囲の上限の高さは、施術者の足のつま先が届く高さである。この構成により、操作する際、施術者は、踵を接地面に付けたまま、つま先を上げて後方部13または側方部14に足を乗せて下方に踏込み、または、つま先を後方部13または側方部14の下に入れて上方に引き上げることで操作することができ、足に負担をかけずに昇降操作をすることができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 理美容用椅子
2 椅子本体部
3 座部
4 背もたれ部
5 足置き部
6 肘置き部
7 基台
8 可動フレーム
9 ハウジング
10 昇降部
11 回転機構
12 操作部
13 後方部
14 側方部
15 軸部
100 後方鉛直仮想線
101 側方鉛直仮想線
Y 所定の高さ
X 所定の間隔
図1
図2
図3
図4