(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の接触点が、前記Oリングの内周側の表面のうち前記中心軸方向について最も前記キャップ側に位置する点よりも前記ポッティング材側に位置している請求項1記載の中空糸膜モジュール。
前記第2の接触点が、前記Oリングの内周側の表面のうち前記中心軸方向について最も前記ポッティング材側に位置する点よりも前記キャップ側に位置している請求項1または2記載の中空糸膜モジュール。
前記ハウジングケースの中心軸を通る断面において、前記第1の接触点および前記第2の接触点を結んだ直線と、前記キャップの内周面および前記ポッティング材の端面の少なくとも一方とがなす角度が鈍角である請求項1から3いずれか1項記載の中空糸膜モジュール。
前記ハウジングケースの中心軸を通る断面において、前記キャップの内周面上の直線と前記第1の接触点を通る前記Oリングの接線とがなす角が0度を超える請求項1記載の中空糸膜モジュール。
前記ハウジングケースの中心軸を通る断面において、前記ポッティング材のキャップ側の端面上の直線と前記第2の接触点を通る前記Oリングの接線とがなす角が0度を超える請求項1記載の中空糸膜モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の中空糸膜モジュールの一実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る中空糸膜モジュールは、上下水道、食品工業、一般工業、医療、理化学といった様々な分野で利用され得るものである。
【0020】
図1および
図2はそれぞれ、本実施形態に係る中空糸膜モジュール1を示す側断面図および一部破断斜視図である。これらの図に示される通り本実施形態に係る中空糸膜モジュール1は、複数の中空糸膜2が束ねられてなる中空糸膜束3と、この中空糸膜束3を収容する筒状、一例として円筒状のハウジングケース5とを備えるものである。なお
図2は、中空糸膜モジュール1を、ハウジングケース5の筒軸(中心軸)を含む面で切断した状態を示しており、ここでは、半分に切断された状態の中空糸膜束3を2点鎖線で示している。
【0021】
ハウジングケース5の両端開口には、配管が接続される管路10a,11aが形成された配管接続用のキャップ10,11が配設されている。これらのキャップ10,11は、それぞれナット13によってハウジングケース5に固定装着されている。ナット13は、ハウジングケース5の両端部の外周面に形成された雄ネジ5nに螺合している。このナット13が締められると、キャップ10,11とハウジングケース5との間に配されたOリング12により、該Oリング12の内側と外側とが液密にシールされる。すなわち、ハウジングケース5とキャップ10,11とで画成される内部空間と、ハウジングケース5およびキャップ10,11の外側の空間との間が液密にシールされる。なお、Oリング12が配置されている部分の構造については、後に詳しく説明する。
【0022】
また、ハウジングケース5の一端、他端に近い部分には、ノズル5c,5dがそれぞれ形成されている。これら1対のノズル5c,5dは、ハウジングケース5の長手方向に直交する方向に突き出すように設けられており、それぞれハウジングケース5の内部に連通して流体を通過させる。
【0023】
図1に示されるように、中空糸膜束3の両端面においては、各々開口を有する複数の中空糸膜2が配列され、中空糸膜2の相互の間がポッティング材で充填されて接着部20が形成されている。
【0024】
上記構成において、キャップ10,11の管路10a,11aから流入した流体は、接着部20が形成されていることにより、中空糸膜2同士の間に漏れることなく、各中空糸膜2の中空部だけを通過する。そして、2つの接着部20の間の各中空糸膜2の外表面から滲み出した流体が、ノズル5c,5dから流出する。または、ノズル5c,5dから流入した流体が、2つの接着部20の間の各中空糸膜2の外表面から染み込み、各中空糸膜2の中空部を通過した流体が、キャップ10,11の管路10a,11aから流出する。
【0025】
中空糸膜2としては、精密ろ過膜、限外ろ過膜等を用いることができる。中空糸膜の素材は特に限定されず、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられ、また、これらの複合素材も使用できる。
【0026】
中空糸膜2の内径は50μm〜3000μmであり、好ましくは500μm〜2000μmである。内径が小さい場合、圧損が大きくなり、ろ過に悪影響を及ぼすため、中空糸膜2の内径は50μm以上とすることが好ましい。また、内径を大きくした場合、紡糸時に膜の形状を保持することが困難になるため、3000μm以下とすることが好ましい。また、中空糸膜2の内表面の平均孔径は1〜50μmが好ましく、阻止孔径は0.1〜1μmが好ましい。
【0027】
他方、中空糸膜束3の中空糸膜2の本数は、例えばハウジングケース5の内径が150mmの場合で2500本程度、ハウジングケース5の内径が250mmの場合で5000本程度とされる。
【0028】
なお、各中空糸膜2の両端部には、各中空糸膜2の外表面側に樹脂を含浸させて形成された樹脂含浸部が設けられている。そのような樹脂含浸部を設けることで、ポッティング材が中空糸膜2の細孔を通じて中空部へ侵入し、中空糸膜2の中空部が閉塞することを防止できる。さらに、中空糸膜モジュール1のろ過もしくは逆洗による洗浄を行う際、接着部20の先端が中空糸膜2の付け根近傍の外表面に接触することで中空糸膜2の付け根近傍が損傷することを防止できる。
【0029】
次に
図3も参照して、ハウジングケース5の詳細な構造について説明する。本実施形態におけるハウジングケース5は、例えば共に合成樹脂から形成された第1成形部材5aと第2成形部材5bとから構成されている。第1成形部材5aは一方のノズル5cと一体的に成形されて、ハウジングケース5の一端側(
図1および
図2中で上端側)を構成し、第2成形部材5bは他方のノズル5dと一体的に成形されて、ハウジングケース5の他端側(
図1および
図2中で下端側)を構成している。
【0030】
図3は、第1成形部材5aと第2成形部材5bとの接合部分の断面形状を示している。この
図3に示される通り第1成形部材5aは、その他の円筒状部分と比べて厚さが1/2よりやや薄い接合部分5eを有し、また第2成形部材5bは、同じく、その他の円筒状部分と比べて厚さが1/2よりやや薄い接合部分5fを有している。接合部分5eと接合部分5fとは、それぞれ円筒状のハウジングケース5の筒外周側、筒内周側に位置するようにして組み合わされ、そしてその状態で互いに接合されている。
【0031】
両接合部分5e,5fは、ハウジングケース5の筒軸方向(
図1中の上下方向)内の中間位置で互いに接合されている。この「中間位置」とは、ハウジングケース5の両端の間の部分を意味するものであって特に限定されるものではない。ただし通常は、両接合部分5e,5fの筒軸方向中央位置が、ハウジングケース5の筒軸方向中央位置と一致する状態で両接合部分5e,5fが接合される。なお接合部分5e,5fの筒軸方向長さは、例えばハウジングケース5の長さが800mm、内径が230mm程度の場合で、一般には25〜30mm程度とされる。
【0032】
両接合部分5e,5fは、例えば溶剤形の接着剤、すなわち接合部分5e,5fを構成する合成樹脂と同等の合成樹脂を溶剤に溶解させたタイプの接着剤を用いて接合されている。より詳しく説明すれば、接合部分5eの接合部分5f側を向く内周面5gと、接合部分5fの接合部分5e側を向く外周面5hとが接合される。
図3では接着領域を、ドットを付した領域5mとして示している。この接着領域5mは、接着剤および、接合部分5e,5fの接着剤によって溶融した一部からなる領域である。上述のように、接合部分5eと接合部分5fとを、それぞれハウジングケース5の筒外周側、筒内周側に位置するようにして組み合わせ、接合する構造は、十分に高い接合強度を有するものとなる。
【0033】
なお、両接合部分5e,5fの接合は、溶剤形の接着剤に限らず、その他のタイプの接着剤を用いてなされてもよいし、さらには、接着剤を用いない超音波溶着等の手法によってなされてもよい。
【0034】
ここで、一方の接合部分5eの先端部は、接合相手となる接合部分5fの外周面5hに対して斜めに向かい合う面取り面5kを有する形状とされている。この「斜めに向かい合う」とは、接合部分5eおよび5fの断面形状で考えたとき、外周面5hがハウジングケース5の長さ方向に延びる向きに対して、上記先端部が傾斜していることを意味する。このような面取り面5kを設けることにより、面取り面を形成しない場合と比べると、合成樹脂から接合部分5eを成形した後に残る成形歪、および接合部分5eを接合部分5fと接合したときの接合歪がそれぞれ1か所から2か所に分散されるので、接合部分5eの強度を高く保つことができる。
【0035】
なお本実施形態においては、接合部分5fの方にも、上記面取り面5kと向かい合う面取り面5sが形成されている。また、接合部分5fの先端部にも上記面取り面5kと同じような面取り面5tが形成され、それに対応して接合部分5eにも、面取り面5tと対面する面取り面5uが形成されている。以上の面取り面5s,5tおよび5uを形成したことにより、上に述べたのと同様に、接合部分5e,5fの強度を高く保つことができるという効果が得られる。
【0036】
以上述べたようにハウジングケース5を、ノズル5cと一体的に形成された第1成形部材5aおよび、ノズル5dと一体的に形成された第2成形部材5bの2つの部材から構成すれば、従来なされていたようにハウジングケース5を3つの場合から構成する場合と比べて、ハウジングケース5を製造するための設備が簡素化される、各部材を接合して形成した後のハウジングケース全体の寸法誤差を小さく抑えることができる、という効果が得られる。
【0037】
次に、
図4〜
図8を参照して、キャップ10,11がハウジングケース5に固定装着される部分の構造について詳しく説明する。なお、ここでは、一方のキャップ10とハウジングケース5との固定装着部分の構造について説明するが、別のキャップ11側の構造も同じであるので、その構造についての説明は省略する。
【0038】
ハウジングケース5を構成する第1成形部材5aの端部(第2成形部材5bと反対側の端部)において、その内周面には、例えば合成樹脂から形成された整流筒30が接合されている。整流筒30の接合は、例えば接着剤を用いた接着によってなされる。この整流筒30の、第1成形部材5aの内方側、つまりハウジングケース5の筒軸方向中央側の先端は、ノズル5cの内端と向かい合う延設部30aとされている。
【0039】
整流筒30の内周面には、ハウジングケース5の筒軸方向に繰り返す環状凹部と環状凸部とが設けられている。これらの環状凹部および環状凸部の断面形状は、一例として鋸歯状とされている。そして、これらの環状凹部および環状凸部の上に充填される形で、ポッティング材31が配設されている。ポッティング材31は前述した通り、複数の中空糸膜2の各々の端部において該中空糸膜2同士を接着固定して、
図1に示した接着部20を構成している。
【0040】
上述のようにポッティング材31が、環状凹部および環状凸部の上に充填される形で配設されていれば、ポッティング材31がハウジングケース5から、ハウジングケース筒軸方向に離脱してしまうことを防止できる。その効果は、上記環状凹部および環状凸部の表面を梨地加工した面としておけば、より確実なものとなる。
【0041】
なお、本実施形態では整流筒30がハウジングケース5の(より具体的には第1成形部材5aの)内周面に接合されているので、ポッティング材31は整流筒30の内周面の間において充填されている。本明細書では、このようにポッティング材31が、ハウジングケース5の内周面に固定された何らかの部材の内周面まで充填されている場合も、また、そのような部材が設けられずにポッティング材31が直接的にハウジングケース5の内周面まで充填されている場合も、同様に「ポッティング材がハウジングケースの内周面まで充填されている」と言うこととする。
【0042】
さらに、本実施形態では整流筒30の内周面に上記環状凹部および環状凸部が設けられているが、整流筒30のような部材が設けられずに、ハウジングケース5の内周面に上記環状凹部および環状凸部が設けられてもよい。本明細書では、それらのいずれの場合でも「ハウジングケースの内周面に、ハウジングケースの筒軸方向に繰り返す環状凹部と環状凸部とが設けられる」と言うこととする。
【0043】
図5に拡大図示するように、ポッティング材31のキャップ10側を向く端面には、この端面を一周する環状溝31aが形成されている。また、ポッティング材31の上記端面側を向くキャップ10の面には、環状溝31aと向かい合う環状溝10cが形成されている。そして
図4に示すように、上記環状溝31aと環状溝10cとの間にOリング12が収容されている。環状溝31aおよび環状溝10cの各断面形状は、Oリング12の外形に倣って、円弧の一部をなす形状とされている。Oリング12は、ポッティング材31およびキャップ10により密接に挟持され、環状溝31aおよび環状溝10cに緊密に収容される。
【0044】
図6は、ポッティング材31およびキャップ10によりOリング12が密接に挟持された状態をより詳細に示す図である。
【0045】
本実施形態においては、
図6に示すように、内空SPに面する、Oリング12およびキャップ10の第1の接触点P1と、内空SPに面する、Oリング12およびポッティング材31の第2の接触点P2との間のOリング12の全領域(矢印ARで示す範囲の領域)がOリング12の中心軸から見て露出するように構成されている。
【0046】
なお、内空SPは、ポッティング材31のキャップ10側の端面31bと、Oリング12の内周面12a、およびキャップ10の内周面10bにより画定される空間である。また、Oリング12の輪形状の中心を通る中心軸とは、Oリング12の内径の中心を通り、内径方向に垂直な直線である。また、Oリング12の中心軸から見てとは、中心軸上の任意の位置から内径方向に見てという意味である。Oリング12の内径の中心とは、
図7に示すように、Oリング12の内径DRの中心Cのことである。
【0047】
上述のように、第1の接触点P1と第2の接触点P2との間のOリング12の全領域がOリング12の中心軸から見て露出する構成としては、例えば、第1の接触点P1および第2の接触点P2が以下の条件を満たしている構成が挙げられる。第1の接触点P1は、Oリング12の内周側の接触点であって、ハウジングケース5の長手方向(
図6に示すX方向)について、内空SPに面するキャップ10の内周面10bの最もポッティング材31側に位置する点である。また、第2の接触点P2は、Oリング12の内周側の接触点であって、ハウジングケース5の長手方向(
図6に示すX方向)について、ポッティング材31の端面上の最もキャップ10側に位置する点である。
【0048】
第1の接触点P1は、Oリング12の内周側の表面のうち、Oリング12の中心軸方向について最もキャップ10側に位置する点P3よりもポッティング材31側に位置していることが望ましい。また、第2の接触点P2は、Oリング12の内周側の表面のうち、Oリング12の中心軸方向について最もポッティング材31側に位置する点P4よりもキャップ10側に位置していることが望ましい。
【0049】
また、
図8は、上述した第1の接触点P1および第2の接触点P2の近傍を拡大した図である。本実施形態においては、ハウジングケース5の長手方向(
図6に示すX方向)に平行な断面において、第1の接触点P1および第2の接触点P2を結んだ直線と、キャップ10の内周面10bとがなす角度θ1が鈍角となるように構成されている。また、上記直線とポッティング材31の端面31bとがなす角度θ2が鈍角となるように構成されている。なお、角度θ1および角度θ2のいずれか一方のみが鈍角となるように構成するようにしてもよい。
【0050】
また、第1の接触点P1および第2の接触点P2の間隔Lは、Oリング12の太さd1に対して15%以上且つ50%以下であることが好ましい。
【0051】
上記の通りにOリング12を配した状態で、前述したようにナット13が第1成形部材5aの雄ネジ5nに螺合され、そしてナット13が締められると、Oリング12により、該Oリング12の内側と外側とが液密にシールされる。すなわち、ハウジングケース5を構成する第1成形部材5aとキャップ10とで画成される内部空間と、第1成形部材5aおよびキャップ10の外側の空間とが液密にシールされる。
【0052】
以上の説明のように、Oリング12およびキャップ10の第1の接触点P1と、Oリング12およびポッティング材31の第2の接触点P2との間のOリング12の全領域(矢印ARで示す範囲の領域)がOリング12の中心軸から見て露出するように構成すれば、キャップ10およびポッティング材31とOリング12との間に形成される流体が滞留する領域を狭小化できる、という効果が得られる。なお、上記の液体が滞留する領域が広大になると、被処理水に含まれる微小な固形物成分がその当該領域に留まってしまうので、中空糸膜モジュール1のサニタリー性が損なわれることになる。
【0053】
また、本実施形態では、ハウジングケース5の中心軸を通る断面において、第1の接触点P1および第2の接触点P2を結んだ直線と、キャップ10の内周面およびポッティング材31の端面の少なくとも一方とがなす角度が鈍角であるように構成すれば、流体が滞留する領域をさらに狭小化できる。
【0054】
また、本実施形態では、第1の接触点P1および第2の接触点P2の、Oリング12の内径に沿った間隔が、Oリング12の太さに対して15%以上且つ50%以下であるように構成すれば、流体が滞留する領域をさらに狭小化できるとともにOリング12によるシール性を向上可能である。
【0055】
また、本実施形態では、ポッティング材31側とキャップ10側に各々環状溝31a、10cを形成して、それらの環状溝31a、10cの間にOリング12を収容させる構成によれば、例えば前述した特許文献1(国際公開第2013/136903号)に示されるように2つの平面の間にOリング12を配置する場合と比べて、Oリング12によるシール性がより確実なものになる。
【0056】
なお、特許文献1のような構成に対して、本実施形態においては、ハウジングケース5の中心軸を通る断面において、キャップ10の内周面10b上の直線と第1の接触点P1を通るOリング12の接線とがなす角が0度を超えるように構成されている。また、ハウジングケース5の中心軸を通る断面において、ポッティング材31のキャップ10側の端面上の直線と第2の接触点P2を通るOリング12の接線とがなす角が0度を超えるように構成されている。このように構成することによって、特許文献1に示される構成に対して、流体が滞留する領域を狭小化することができる。
【0057】
特に本実施形態では、環状溝31aおよび環状溝10cの各断面形状が、Oリング12の外形に倣って円弧の一部をなす形状とされ、それによりOリング12が環状溝31aおよび環状溝10cに緊密に収容されているので、上記微小な隙間が生じる可能性が極めて低くなっている。それにより本実施形態の中空糸膜モジュール1は、十分に高いサニタリー性を備えたものとなっている。
【0058】
なお、ポッティング材31側に形成される環状溝31aは、
図6に示すような円形の凹み部分を含んでなくてもよく、
図9に示すように、平坦な面と、その面からポッティング材31側に凹むことない円弧状の曲面とから形成するようにしてもよい。このように構成することで平坦な面によってOリング12を押しつぶすことができ、より液密化することができる。
【0059】
また、本実施形態では、キャップ10の内面が、第1成形部材5aに近づくに連れて次第に径が拡大するテーパ面となっている。そしてこのテーパ面とポッティング材31の端面とが、間にOリング12の周面のみを介して連なっている状態となっている。つまり、Oリング12の内側において、キャップ10の内面とポッティング材31の端面との間に、凹んだ部分や隙間は存在しない状態となっている。そこで、中空糸膜モジュール1を用いて被処理水をろ過する際、特にキャップ10側から被処理水を導入して、ろ過水をノズル5cから排出させる際に、被処理水に含まれる固形物成分が上記凹んだ部分や隙間に入り込んで、そこに留まってしまうことを防止できる。
【0060】
また、本発明は、
図6に示した構成に限らず、たとえば
図10に示すように、第1の接触点P1の位置を
図6に示した点P3の位置としてもよい。または、
図11に示すように、第1の接触点P1の位置を、
図6に示した位置よりもポッティング材31側に位置するようにしてもよい。
【0061】
また、
図12に示すように、ポッティング材31に環状溝31aを設けない構成としてもよいし、環状溝31aの深さを
図6に示す環状溝31aの深さよりも浅くするようにしてもよい。また、逆に、
図13に示すように、環状溝31aの深さを
図6に示す環状溝31aの深さよりも深くするようにしてもよい。
【0062】
また、
図14に示すように、キャップ10の内周面10bの傾斜を
図6に示すキャップ10の内周面10bの傾斜よりも緩傾斜としてもよい。または、逆に、
図6に示すキャップ10の内周面10bの傾斜よりも急傾斜としてもよい。また、
図6に示すキャップ10の内周面10bの形状を基準として、
図15に示すようにキャップ10の内周面10bの形状を凸面としてもよいし、
図16に示すように凹面としてもよい。
【0063】
ここで、ポッティング材31としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、オレフィン系ポリマー、シリコーン樹脂、フッ素含有樹脂等の高分子材料が好ましく、これらの高分子材料のいずれかでもよいし、複数の高分子材料を組み合わせて用いるようにしてもよい。また、ポッティング材31は、ろ過時に加圧によって生ずる一次側と二次側の差圧に耐え得る耐圧性を有することが必要であり、そのためには適度な硬度を有している必要がある。
【0064】
次に
図17および
図18を参照して、第1成形部材5aに設けられているノズル5cの形状について説明する。なお、第2成形部材5bに設けられているノズル5dの形状は、ノズル5cの形状と同じであるので、ここではノズル5cの形状について説明し、ノズル5dに関する説明は省略する。
【0065】
ノズル5cは、流体が通過する直管状部分と、この直管状部分の先端側に形成されたフランジ状部分5qとを有する、ラッパ管状のものとされている。そしてノズル5cの内面5pは、上記直管状部分の内周面から、フランジ状部分5qの外面(
図17中で上面)にかけて円滑に連続する形状とされている。また、上記フランジ状部分5qの外面には、ガスケットとしての例えばOリング(図示せず)を収容する環状溝5rが形成されている。
【0066】
上記構成のノズル5cには、
図18に示すように配管40が接続される。この配管40もノズル5cと同様にフランジ状部分40aを有するものである。配管40をノズル5cに接続する際には、フランジ状部分40aとフランジ状部分5qとが間に上記Oリングを介して突き合わされ、そして公知のサニタリークランプ41によって締結される。それにより、ノズル5cと配管40とが、互いに連通する状態に接続される。
【0067】
なおサニタリークランプ41は、連結部41aによって互いに開閉し得る状態に連結された2つの挟持部41bおよび41cと、挟持部41bおよび41cの各先端部に連続して形成された締結部41dおよび41fと、締結部41dおよび41fに形成された図示外の雌ネジに螺合し得る締結ボルト41gとを有するものである。挟持部41bおよび41cはそれぞれ内周面に、突き合わされたフランジ状部分40aおよびフランジ状部分5qの周縁部を挟持する図示外の内周溝を有している。
【0068】
配管40をノズル5cに接続する際には、まず挟持部41bおよび41cが開いた状態とされ、それらの各内周溝に、フランジ状部分40aおよびフランジ状部分5qの周縁部が入り込むようにして挟持部41bおよび41cが閉じられる。次いで、締結部41dおよび41fの上記雌ネジに螺合させた締結ボルト41gが締められることにより、フランジ状部分40aとフランジ状部分5qとが互いに強く押し付けられ、配管40がノズル5cと連通した状態に接続される。
【0069】
上述した通り、ノズル5cの内面5pは、直管状部分の内周面からフランジ状部分5qの外面にかけて円滑に連続する形状とされていて、その形状のままノズル5cが配管40と接続される。つまり、配管40を接続する上で、別の配管要素が組み合わされてノズル5cや配管40の内面に凹凸が形成されたりしないので、また、この接続を行うためにノズル5cや配管40の内面に特に接触する必要も無いので、ノズル5cと配管40とが高いサニタリー性を保って接続されるようになる。
【0070】
次に、本実施形態に係る中空糸膜モジュール1をろ過装置100に設置した態様の一例について
図19を参照して説明し、さらに、本実施形態に係る中空糸膜モジュール1を用いたろ過方法について説明する。なお、このろ過装置100においては、一例として内圧ろ過でのクロスフローろ過方式を想定している。
【0071】
ろ過装置100は、中空糸膜モジュール1のキャップ11の管路11aに接続されて被処理水を供給する供給配管101と、キャップ10の管路10aに接続されて循環水を送り出す循環配管102とを備えている。さらに、供給配管101や循環配管102の途中には、圧力計Pi,Poや弁101a,102aなどが配設されている。また、ろ過装置100は、ろ過水の流路となる上部ろ過水排出管103と下部ろ過水排出管104とを備えている。上部ろ過水排出管103や下部ろ過水排出管104はろ過水の合流管105に接続されており、合流管105は外部の配管(図示せず)に連絡している。なお、合流管105には、圧力計Pfや弁105aなどが配設されている。
【0072】
中空糸膜モジュール1は縦に配置され、上側のノズル5cが上部ろ過水排出管103に接続され、下側のノズル5dが下部ろ過水排出管104に接続される。
【0073】
被処理水は、供給配管101から管路11aを通じて所定の圧力で中空糸膜モジュール1に導入される。被処理水は、各中空糸膜2の中空部に導入され、中空糸膜2でろ過され、そのろ過水は各中空糸膜2の外表面から滲み出す。ろ過水は、上部ろ過水排出管103または下部ろ過水排出管104を通って合流管105に排出され、外部配管を通じて採取される。一方で、中空糸膜2を透過した被処理水は、循環水としてキャップ10の管路10aから排出され、循環配管102に送り出される。
【0074】
次に
図20〜
図22を参照して、本発明の中空糸膜モジュール内の流体速度分布をシミュレーションによって求めた結果について説明する。それと併せて、
図23〜
図25を参照して、比較例である従来の中空糸膜モジュール内の流体速度分布をシミュレーションによって求めた結果についても説明する。
【0075】
まず、シミュレーション条件について説明する。シミュレーションソフトは、CHAM社(Concentration, Heat and Momentum Limited)製の熱流体解析ソフト「PHOENICS」を用い、計算式は、KE−CHENの式を用いた。流体は20℃の水とした。そして、中空糸膜モジュールのシミュレーションモデルとして、
図20に示す本発明に対応するモデルおよび、
図23に示す従来技術に対応する比較例のモデルを用いた。
図20における各要素は既に説明したものと同じであり、3が中空糸膜束、10がキャップ、12がOリング、13がナット、30が整流筒、31がポッティング材である。一方、
図23の比較例においては、3が中空糸膜束、12がOリング、200がポッティング材、201がキャップである。また200aは、ポッティング材200のキャップ201側を向く平面である。そして201aは、キャップ201に設けられたOリング収容溝であり、このOリング収容溝201aにもポッティング材200の側を向く平面が形成されている。この
図23の構成においては、上記2つの平面の間にOリング12が挟持される。
図20および
図23の構成において、水はそれぞれキャップ10、201の下方を、図中左から右に向けて流れるものとした。
【0076】
図20のモデルおよび
図23のモデルの双方共、縦方向(ハウジングケースの長さ方向)に1/2に分割した2Dモデルを用いた。
図20の2Dモデルは、水の流入位置から中空糸膜束の一部にかかるまでの長さを0.157m、円筒状ハウジングケースの最大半径を0.115m、
図20の紙面と直交する方向のサイズを6×10
−4m、キャップ内面の傾斜角(ハウジングケースの長さ方向に直交する面に対する角度)を150°とするものである。一方、
図23の比較例の2Dモデルは、水の流入位置から中空糸膜束の一部にかかるまでの長さを0.157m、円筒状ハウジングケースの最大半径を0.132m、
図23の紙面と直交する方向のサイズを6×10
−4m、キャップ内面の傾斜角を150°とするものである。また、シミュレーションモデルのmeshセル数(モデルの分割数)は、
図19のモデルにおいて33000個、
図23のモデルにおいて38640個とした。流体のSWEEP数は1000回とし、水の流入量を
図20のモデルおよび
図23のモデルで共通の2.64m/sとした。なお、上記線速で示す水の流入量は、本来の流入量と、各モデルにおける開口断面積から算出したものである。また、円筒状のハウジングケース内の中空糸膜束のx方向(
図20、23の左右方向)およびy方向(
図20、23の上下方向)の抵抗値はそれぞれ0.4とし、空隙率は0.7とした。
【0077】
図21および
図22は、
図20のモデルに関して上記シミュレーション条件でシミュレーションを行った結果を示すものである。なお
図22は、
図21に示す矩形領域R内の結果を拡大して示している。これらの図では、水の速度分布を濃淡で表し、特に
図22では水が流れる方向を矢印で表し、水の速度の大きさを矢印の長さで表している。すなわち、矢印が長いほど水の速度が大きいことを示している。
【0078】
また
図24および
図25は、
図23のモデルに関して上記シミュレーション条件でシミュレーションを行った結果を示すものである。なお
図25は、
図24に示す矩形領域R内の結果を拡大して示している。これらの図における水の速度の表し方は、
図21および
図22におけるものと同じである。
【0079】
図22のシミュレーション結果と
図25のシミュレーション結果とを比較すると、
図22のシミュレーション結果の方が、Oリング近辺の水の速度が全般的に大きいことが分かる。これにより、本発明の中空糸膜モジュールにおけるOリング配設構造は、Oリング近辺の流体速度を高く保って、滞留が起き難くする上でも効果的であることが裏付けられている。