【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
[実施例1]
<モールドの準備>
金属部材のレーザー加工によって、モールドを作製した。金属部材は、アルミ合金A5052製であった。レーザー加工では、複数の逆円錐型の凹部(つまり、微細構造)を、モールドの平坦な表面の中心部(3cm×3cmの正方形の範囲)に形成した。いずれの凹部も同じ形状であった。凹部の径は10μmであった。凹部の径は、最終的に得られる膜担体の微細構造(円錐)の底面の直径(D1又はLh)に等しい。隣接する一対の凹部の中心間の距離は、15μmであった。この凹部の中心間の距離は、膜担体の表面において隣り合う微細構造(円錐)の頂点間の距離(D2)に等しい。凹部の深さは、10μmであった。凹部の深さは、膜担体の微細構造(円錐)の高さ(hv)に等しい。複数の凹部は、
図1に示す円錐14の配置(三角配列形式)と同じように、モールドの中心部において規則的に並んでいた。
凹部が形成されたモールドの表面(凹凸面)に対して、離型処理を施した。離型処理では、モールドの表面(凹凸面)を処理液中に約1分浸した後、モールドの表面を乾燥させた。乾燥したモールドを一晩静置した。以上の離型処理に用いた処理液には、ダイキン工業社製のオプツールHD−2100THを用いた。
【0042】
<熱インプリント工程(微細構造の転写)>
下記の熱インプリント工程によって、モールド表面の微細構造を、熱可塑性プラスチックからなる膜状の基材の表面に転写した。熱インプリント工程では、SCIVAX社製のX−300を用いた。熱インプリント工程では、微細構造(複数の凹部)が形成された上記モールドの表面を、熱可塑性プラスチックからなる膜状の基材に当てて、モールド及び基材を加熱しながら加圧した。成型温度は120℃であった。印加圧力は5.5MPaであった。転写時間は5分であった。微細構造の転写後、モールド及び基材へ圧力を印加した状態で、モールド及び基材を80℃まで冷却した。冷却後に圧力を除いた。以上の熱インプリント工程により、実施例1の膜担体を得た。この膜担体は、複数の円錐(微細構造)と平坦部とを含む表面を有していた。膜担体の表面にある凸部(円錐)の形状及びサイズは、モールドに形成された凹部(逆円錐)の形状及びサイズに一致していた。
熱可塑性プラスチックからなる膜状の基材は、ポリスチレン(PS)からなる膜(電気化学工業社製のデンカスチレンシート)であった。基材の厚さは、188μmであった。基材(膜担体)は、四角形であった。基材(膜担体)の縦幅は、50mmであり、基材(膜担体)の横幅は、50mmであった。
ブルカー・エイエックスエス社製のDSC3100を用いて、基材(膜担体)を構成するポリスチレンのガラス転移点Tgを測定した。ガラス転移点Tgの測定では、基材を、窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で加熱した。ポリスチレンのガラス転移点Tgは、106℃であった。
基材(膜担体)を構成するポリスチレンの引張モードでの貯蔵弾性率を測定した。貯蔵弾性率の測定には、ティーエイ・インストゥルメンツ社製のRSAIIIを用いた。貯蔵弾性率の測定時の周波数は1Hzであった。126℃でのポリスチレンの貯蔵弾性率は、1.8×10
6Paであった。
【0043】
[実施例2]
実施例2のモールドの表面に形成された凹部の径は10μmであった。実施例2のモールドの表面において隣接する一対の凹部の中心間の距離は、50μmであった。実施例2のモールドの表面に形成された凹部の深さは、10μmであった。モールドが異なる以外は、実施例1の同様の方法で、実施例2の膜担体を作製した。
【0044】
[実施例3]
実施例3のモールドの表面に形成された凹部の径は10μmであった。実施例3のモールドの表面において隣接する一対の凹部の中心間の距離は、15μmであった。実施例3のモールドの表面に形成された凹部の深さは、20μmであった。モールドが異なる以外は、実施例1の同様の方法で、実施例3の膜担体を作製した。
【0045】
[実施例4]
実施例4のモールドの表面に形成された凹部の径は10μmであった。実施例4のモールドの表面において隣接する一対の凹部の中心間の距離は、50μmであった。実施例4のモールドの表面に形成された凹部の深さは、20μmであった。モールドが異なる以外は、実施例1の同様の方法で、実施例4の膜担体を作製した。
【0046】
[実施例5]
実施例5のモールドの表面に形成された凹部の径は100μmであった。実施例5のモールドの表面において隣接する一対の凹部の中心間の距離は、110μmであった。実施例5のモールドの表面に形成された凹部の深さは、10μmであった。モールドが異なる以外は、実施例1の同様の方法で、実施例5の膜担体を作製した。
【0047】
[実施例6]
実施例6のモールドの表面に形成された凹部の径は100μmであった。実施例6のモールドの表面において隣接する一対の凹部の中心間の距離は、500μmであった。実施例6のモールドの表面に形成された凹部の深さは、10μmであった。モールドが異なる以外は、実施例1の同様の方法で、実施例6の膜担体を作製した。
【0048】
[実施例7]
実施例7のモールドの表面に形成された凹部の径は1000μmであった。実施例7のモールドの表面において隣接する一対の凹部の中心間の距離は、1010μmであった。実施例7のモールドの表面に形成された凹部の深さは、100μmであった。モールドが異なる以外は、実施例1の同様の方法で、実施例7の膜担体を作製した。
【0049】
[実施例8]
実施例8のモールドの表面に形成された凹部の径は1000μmであった。実施例8のモールドの表面において隣接する一対の凹部の中心間の距離は、5000μmであった。実施例8のモールドの表面に形成された凹部の深さは、100μmであった。モールドが異なる以外は、実施例1の同様の方法で、実施例8の膜担体を作製した。
【0050】
[実施例9]
実施例9のモールドの表面に形成された凹部の径は250μmであった。実施例9のモールドの表面において隣接する一対の凹部の中心間の距離は、260μmであった。実施例9のモールドの表面に形成された凹部の深さは、500μmであった。モールドが異なる以外は、実施例1の同様の方法で、実施例9の膜担体を作製した。
【0051】
[実施例10]
実施例10のモールドの表面に形成された凹部の径は250μmであった。実施例10のモールドの表面において隣接する一対の凹部の中心間の距離は、1250μmであった。実施例10のモールドの表面に形成された凹部の深さは、500μmであった。モールドが異なる以外は、実施例1の同様の方法で、実施例10の膜担体を作製した。
【0052】
[実施例11]
実施例11のモールドの表面に形成された凹部の径は1000μmであった。実施例11のモールドの表面において隣接する一対の凹部の中心間の距離は、1010μmであった。実施例11のモールドの表面に形成された凹部の深さは、500μmであった。モールドが異なる以外は、実施例1の同様の方法で、実施例11の膜担体を作製した。
【0053】
[実施例12]
実施例12のモールドの表面に形成された凹部の径は1000μmであった。実施例12のモールドの表面において隣接する一対の凹部の中心間の距離は、5000μmであった。実施例12のモールドの表面に形成された凹部の深さは、500μmであった。モールドが異なる以外は、実施例1の同様の方法で、実施例12の膜担体を作製した。
【0054】
[実施例13〜24]
実施例13〜24では、熱可塑性プラスチックからなる膜状の基材として、ポリスチレンからなる膜の代わりに、ポリカーボネート(PC)からなる膜を用いた。ポリカーボネートからなる膜としては、帝人株式会社製のパンライトを用いた。ポリカーボネートからなる基材の厚さは、200μmであった。基材(膜担体)は、四角形であった。基材(膜担体)の縦幅は、50mmであり、基材(膜担体)の横幅は、50mmであった。
ブルカー・エイエックスエス社製のDSC3100を用いて、基材(膜担体)を構成するポリカーボネートのガラス転移点Tgを測定した。ガラス転移点Tgの測定では、基材を、窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で加熱した。ポリカーボネートのガラス転移点Tgは、160℃であった。
基材(膜担体)を構成するポリカーボネートの引張モードでの貯蔵弾性率を測定した。貯蔵弾性率の測定には、ティーエイ・インストゥルメンツ社製のRSAIIIを用いた。貯蔵弾性率の測定時の周波数は1Hzであった。180℃でのポリカーボネートの貯蔵弾性率は、4.5×10
6Paであった。
膜状の基材が異なること以外は実施例1の同様の方法で、実施例13の膜担体を作製した。膜状の基材が異なること以外は実施例2の同様の方法で、実施例14の膜担体を作製した。膜状の基材が異なること以外は実施例3の同様の方法で、実施例15の膜担体を作製した。膜状の基材が異なること以外は実施例4の同様の方法で、実施例16の膜担体を作製した。膜状の基材が異なること以外は実施例5の同様の方法で、実施例17の膜担体を作製した。膜状の基材が異なること以外は実施例6の同様の方法で、実施例18の膜担体を作製した。膜状の基材が異なること以外は実施例7の同様の方法で、実施例19の膜担体を作製した。膜状の基材が異なること以外は実施例8の同様の方法で、実施例20の膜担体を作製した。膜状の基材が異なること以外は実施例9の同様の方法で、実施例21の膜担体を作製した。膜状の基材が異なること以外は実施例10の同様の方法で、実施例22の膜担体を作製した。膜状の基材が異なること以外は実施例11の同様の方法で、実施例23の膜担体を作製した。膜状の基材が異なること以外は実施例12の同様の方法で、実施例24の膜担体を作製した。
【0055】
<検知ゾーンへの試薬(抗体)の固定>
以下の方法により、各実施例の膜担体の表面(微細構造がある表面)のうち、下記の検知ゾーンA及び検知ゾーンBのみを露出させ、その他の部分をマスクで覆った。続いて、検知ゾーンA及び検知ゾーンBへUV処理を施した。
検知ゾーンA: 膜担体の下端からの距離が0.6cmであり、幅が約1mmである、ライン状の部分。
検知ゾーンB: 膜担体の下端からの距離が1.0cmであり、幅が約1mmである、ライン状の部分。
抗A型インフルエンザNP抗体(試薬A)の浮遊液Aを、検知ゾーンAへ塗布した。続いて、検知ゾーンAを温風下で良く乾燥させて、抗A型インフルエンザNP抗体を検知ゾーンAに固定した。浮遊液Aの塗布量は、18μLであった。検知ゾーンAにおいて浮遊液Aが塗布された部分の長さは、3cmであった。
抗B型インフルエンザNP抗体(試薬B)の浮遊液Bを、検知ゾーンBへ塗布した。続いて、検知ゾーンBを温風下で良く乾燥させて、抗B型インフルエンザNP抗体を検知ゾーンBに固定した。浮遊液Bの塗布量は、18μLであった。検知ゾーンBにおいて浮遊液Bが塗布された部分の長さは、3cmであった。
【0056】
<標識物質の調製>
上記の抗A型インフルエンザNP抗体(試薬A)とは異なる、精製された抗A型インフルエンザウイルスNP抗体(精製抗体A)を準備した。また、上記の抗B型インフルエンザNP抗体(試薬B)とは異なる、精製された抗B型インフルエンザウイルスNP抗体(精製抗体B)を準備した。
精製抗体Aと、青色ラテックス粒子(CM/BL セラダイン製)との共有結合により、精製抗体Aを標識した。青色ラテックス粒子の粒子径は0.394μmであった。糖、界面活性剤及びタンパク質を含むトリス緩衝液を準備した。トリス緩衝液中のラテックス粒子の濃度が0.025w/v%になるように、標識された精製抗体Aをトリス緩衝液に添加して、トリス緩衝液を懸濁した。続いて、トリス緩衝液のソニケーションを行って、トリス緩衝液中で充分に分散浮遊させた抗A型標識体を調製した。
精製抗体Aの代わりに精製抗体Bを用いたこと以外は抗A型標識体の場合と同じ方法で、トリス緩衝液中で充分に分散浮遊させた抗B型標識体を調製した。
【0057】
抗A型標識体及び抗B型標識体の混合液を調製した。この混合液をガラス繊維に塗布した。ガラス繊維の大きさは、3cm×1cmであった。ガラス繊維1平方センチメートルあたりの混合液の塗布量は、50μLであった。ガラス繊維としては、Schleicher&Schuell製の33GLASS NO.10539766を用いた。混合液が塗布されたガラス繊維を、温風下で良く乾燥させ、標識体パッドを作製した。実施例1〜24それぞれの膜担体の、検知ゾーンに近いほうの端部に、標識物質パッドを重ねた。標識物質パッドが重なる膜担体の端部の幅は2mmであった。標識物質パッドが重なる膜担体を、幅5mmの短冊状にカッターで裁断して、一体化された膜担体及び標識物質パッドから構成される液体試料検査キットを作製した。
【0058】
<検知性能の評価>
希釈溶液として、デンカ生研社製のクイックナビ―Fluに付属している検体浮遊液を準備した。検出物質として、A型インフルエンザウイルス A/Beijing/32/92(H3N2)を用いた。このA型インフルエンザウイルスを検体浮遊液で4×10
4倍に希釈して、液体試料Aを調製した。別の検出物質として、B型インフルエンザウイルス B/Shangdong/7/97を用いた。このB型インフルエンザウイルスを検体浮遊液で4×10
3倍に希釈して、液体試料Bを調製した。
実施例1〜24それぞれの液体試料検査キットの端部に、液体試料A及びBそれぞれを個別に100μLずつ滴下した。液体試料が滴下された検査キットの端部は、検出ゾーンA及び検出ゾーンBに近いほうの端部であった。滴下後の液体試料が検査キット上で移動する様子を、直上からデジタルカメラで録画した。この動画から、検査キット上を移動する液体試料の流速を算出した。実施例1〜24それぞれの検査キットにおける液体試料の流速の評価結果を、表1及び表2に示す。
各表中の二重丸印が付された実施例は、発明の効果において、丸印が付された実施例よりも優れている。各表中の丸印が付された実施例は、発明の効果において、三角印が付された実施例よりも優れている。各表中の三角印が付された実施例は、発明の効果において、X印が付された参考例よりも優れている。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
<検出の判定>
液体試料A及びBを、実施例1〜24それぞれの検査キットへ滴下してから5分後、各検査キットにおける検出ゾーンA及び検知ゾーンB其々のラインの着色の有無を目視により観察した。この観察により、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス其々の検出の有無を判定した。
【0062】
いずれの実施例の場合も、A型インフルエンザウイルスを含む液体試料Aの滴下により、抗A型インフルエンザNP抗体が固定された検知ゾーンAのみの色の変化が確認された。また、いずれの実施例の場合も、B型インフルエンザウイルスを含む液体試料Bの滴下により、抗B型インフルエンザNP抗体が固定された検知ゾーンBのみの色の変化が確認された。
【0063】
[実施例25]
実施例1の場合と全く同じ方法で、実施例25の4つの液体試料検査キットを作製した。次いで、A型インフルエンザウイルスの希釈倍率が1×10
4、2×10
4、4×10
4及び8×10
4である4種類の液体試料を調製した。これらの液体試料の調製方法は、希釈倍率以外は、上述した液体試料Aの調製方法と同じである。
実施例1〜24の場合と同様の方法で、実施例25の検査キット1つにつき、4種類の液体試料のうち1つのみを滴下して、各検査キットの検知ゾーンAにおいて、A型インフルエンザウイルスを検出した。表3に示す通り、希釈倍率が8×10
4である液体試料を滴下した検査キットの検知ゾーンAだけが、目視で確認できる色の変化を示さなかった。他の3種類の液体試料を滴下した検査キットの検知ゾーンAのいずれにおいても、目視で色の変化が確認された。
A型インフルエンザウイルスの検出前に、4つの検査キットの検知ゾーンAそれぞれのR値、G値及びB値を、レーザー顕微鏡で測定した。レーザー顕微鏡としては、レーザーテック社製のOPLETICS HYBRIDを用いた。また、A型インフルエンザウイルスの検出後に、4つの検査キットの検知ゾーンAそれぞれのR値、G値及びB値を、レーザー顕微鏡で測定した。これらの測定結果に基づき、4つの検査キットの検知ゾーンAそれぞれの検知前後におけるRGB座標間距離を計算した。計算結果を表3に示す。
【0064】
[実施例26]
実施例1の場合と全く同じ方法で、実施例26の4つの液体試料検査キットを作製した。次いで、B型インフルエンザウイルスの希釈倍率が1×10
3、2×10
3、4×10
3及び8×10
3である4種類の液体試料を調製した。これらの液体試料の調製方法は、希釈倍率以外は、上述した液体試料Bの調製方法と同じである。
実施例1〜24の場合と同様の方法で、実施例26の検査キット1つにつき、4種類の液体試料のうち1つのみを滴下して、各検査キットの検知ゾーンBにおいて、B型インフルエンザウイルスを検出した。表3に示す通り、希釈倍率が8×10
3である液体試料を滴下した検査キットの検知ゾーンBだけが、目視で確認できる色の変化を示さなかった。他の3種類の液体試料を滴下した検査キットの検知ゾーンBのいずれにおいても、目視で色の変化が確認された。
B型インフルエンザウイルスの検出前に、4つの検査キットの検知ゾーンBそれぞれのR値、G値及びB値を、上記のレーザー顕微鏡で測定した。また、B型インフルエンザウイルスの検出後に、4つの検査キットの検知ゾーンBそれぞれのR値、G値及びB値を、レーザー顕微鏡で測定した。これらの測定結果に基づき、4つの検査キットの検知ゾーンBそれぞれの検知前後におけるRGB座標間距離を計算した。計算結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
[参考例1]
参考例1では、熱可塑性プラスチックからなる膜状の基材として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる膜を用いた。ポリテトラフルオロエチレンからなる膜としては、ダイキン工業社製のポリフロンF−104を用いた。ポリテトラフルオロエチレンからなる基材の厚さは、200μmであった。基材(膜担体)は、四角形であった。基材(膜担体)の縦幅は、50mmであり、基材(膜担体)の横幅は、50mmであった。ブルカー・エイエックスエス社製のDSC3100を用いて、基材(膜担体)を構成するポリテトラフルオロエチレンの融点Tmを測定した。融点Tmの測定では、基材を、窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で加熱した。ポリテトラフルオロエチレンの融点Tmは、327℃であった。参考例1の熱インプリント工程における成型温度は、装置限界値である250℃であった。以上の事項以外は実施例1の同様の方法で、参考例1の膜担体を作製した。参考例1の膜担体の諸特徴を下記表4に示す。
【0067】
[参考例2]
参考例2のモールドの表面に形成された凹部の径は10μmであった。参考例2のモールドの表面において隣接する一対の凹部の中心間の距離は、15μmであった。参考例2のモールドの表面に形成された凹部の深さは、30μmであった。モールドが異なる以外は、実施例1の同様の方法で、参考例2の膜担体を作製した。参考例2の膜担体の諸特徴を下記表4に示す。
【0068】
[参考例3]
参考例3のモールドの表面に形成された凹部の径は1000μmであった。参考例3のモールドの表面において隣接する一対の凹部の中心間の距離は、1010μmであった。参考例3のモールドの表面に形成された凹部の深さは、2000μmであった。モールドが異なる以外は、実施例1の同様の方法で、参考例3の膜担体を作製した。参考例3の膜担体の諸特徴を下記表4に示す。
【0069】
参考例1〜3の膜担体を観察した。参考例1の膜担体では、所望の微細構造が形成されていなかった。これは、PTFEの融点が180℃よりも高く、熱インプレス工程における成型温度を装置上限値に設定しても、PTFEの弾性率が高いままであったことに起因する。参考例2の膜担体では、微細構造の折れ及び変曲が見られた。これは、微細構造のアスペクト比が2よりも大きく、膜担体をモールドからスムーズに剥離できなかったことに起因する。参考例3の膜担体では、微細構造の高さが2000μmに達しなかった。これは、参考例3のモールドの表面に形成された凹部の深さが、500μmよりも大きく、PSがモールドの凹部内に十分充填されなかったことに起因する。
【0070】
【表4】
【0071】
[参考例4]
参考例4のモールドの表面に形成された凹部の径は100μmであった。参考例4のモールドの表面において隣接する一対の凹部の中心間の距離は、1000μmであった。参考例4のモールドの表面に形成された凹部の深さは、200μmであった。モールドが異なる以外は、実施例1の同様の方法で、参考例4の膜担体を作製した。参考例4の膜担体の諸特徴を下記表5に示す。
【0072】
[参考例5]
参考例5のモールドの表面に形成された凹部の径は1000μmであった。参考例5のモールドの表面において隣接する一対の凹部の中心間の距離は、1010μmであった。参考例5のモールドの表面に形成された凹部の深さは、50μmであった。モールドが異なる以外は、実施例1の同様の方法で、参考例5の膜担体を作製した。参考例5の膜担体の諸特徴を下記表5に示す。
【0073】
実施例1〜24と同様の手法で、参考例4及び5其々の膜担体の微細構造へ滴下された液体試料の様子を、直上からデジタルカメラで観察した。参考例4及び5の膜担体のいずれにおいても、液体試料が移動しなかった。液体試料が移動しない要因は次の通りであった。参考例4では、微細構造の底面の径D1と微細構造同士の最近接中心間距離D2との比D2/D1が5より大きく、液体試料の移動のための十分な毛細管力が生じなかった。参考例5では、微細構造のアスペクト比が0.1未満であり、液体試料の移動のための十分な毛細管力が生じなかった。
【0074】
【表5】
【0075】
[参考例6]
ラインandスペース構造を膜担体の表面に形成するためのモールドを金属部材から作製する際に金属部材の表面から削り出される金属の体積を、計算した。ラインandスペース構造とは、平行に並ぶ複数の溝状の流路を有する構造である。ラインandスペース構造を形成するためのモールド自体も、
図6中の(a)及び(b)に示すように、ラインandスペース構造を有する。計算に用いた溝15の幅7は、10μmであった。計算に用いた溝15の深さ8は、10μmであった。計算に用いた溝15のピッチ9は、15μmであった。計算では、加工されたモールド表面の範囲は、3cm×3cmの正方形である、と仮定した。また、
図6のモールドを用いて形成されるラインandスペース構造の空隙率も計算した。計算結果を表6に示す。
また、複数の円柱が規則的に並んだ構造を膜担体の表面に形成するためのモールドを金属部材から作製する際に金属部材の表面から削り出される金属の体積を、計算した。このモールドは、
図7中の(a)及び(b)に示すように、平坦部16と、複数の円筒状の凹部17を有する。計算に用いた凹部17の直径10は、10μmであった。計算に用いた凹部17の深さ12は、10μmであった。計算に用いた凹部17のピッチ11は、15μmであった。計算では、加工されたモールド表面の範囲は、3cm×3cmの正方形である、と仮定した。計算結果を表6に示す。また、
図7のモールドを用いて形成される、複数の円柱が規則的に並んだ構造の空隙率も計算した。計算結果を表6に示す。
実施例1のモールドを作製する際に金属部材から削り出した金属の体積を、表6に示す。実施例1の膜担体の微細構造の空隙率を、表6に示す。
【0076】
【表6】
【0077】
表1〜5の結果から、本発明による液体試料検査キットは、熱インプリントによって作製することができ、滴下された液体試料を毛細管力によって移動させることができることが示された。また本発明によれば、検知ゾーンにおける色変化は、目視で確認できるほど大きなものであることも示された。さらに表6の結果から、微細構造を錐体とすることで、モールド作製時に削り出す金属の体積が低減され、膜担体の微細構造の空隙率が増加することが示された。