【文献】
Silvana Dimitrijevic et.al.,Formulation and characterization of electrolyte for decorative gold plating based on mercaptotriazole,Electrochimica Acta,Elsevier Ltd.,2013年 5月 2日,No.104,P.P. 330-336,URL,http://dx.doi.org/10.1016/j.electacta.2013.04.123
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1つの合金化金属イオン源を更に含み、前記合金化金属イオンの金属がコバルト、ニッケル及び鉄から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、様々なメルカプトアゾール化合物を含有する電気めっき浴から浸漬反応により析出した金合金層の厚さを示す。
【
図2】
図2は、様々なメルカプトトリアゾール化合物を含有する電気めっき浴から浸漬反応により析出した金合金層の厚さを示す。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、
(i)少なくとも1つの金イオン源、及び
(ii)少なくとも1種のメルカプトトリアゾール又はその塩
を含み、前記少なくとも1種のメルカプトトリアゾールが以下の一般式(I)又は(II):
【化2】
(式中、R
1、R
4は、相互に独立して水素、直鎖状又は分枝鎖状の、飽和又は不飽和(C
1〜C
20)炭化水素鎖、(C
8〜C
20)アラルキル基;置換又は非置換のフェニル基、ナフチル基又はカルボキシル基であり;且つ
R
2、R
3、R
5、R
6は、相互に独立して−S−X、水素、直鎖状又は分枝鎖状の、飽和又は不飽和(C
1〜C
20)炭化水素鎖、(C
8〜C
20)アラルキル基;置換又は非置換のフェニル基、ナフチル基又はカルボキシル基であり;且つ
Xは水素、(C
1〜C
4)アルキル基又はアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオン及び第4級アミンから選択される対イオンであり、且つ
R
2及びR
3のうち少なくとも1つは−S−Xであり、R
5及びR
6のうち少なくとも1つは−S−Xである)
を有する、電気めっき組成物に関する。
【0023】
電気めっき組成物は、基板上に金含有層を電着するのに適している。金含有層は純金層又は金合金層であってもよい。好ましくは、金含有層は金合金層である。更に好ましくは、金含有層は、いわゆる機能性又は硬質金層として使用される金合金層である。機能性又は硬質金層は機械的安定性が高いので、機械的摩耗に対して特に耐性がある。従って、金層、特に金合金層は、電気コネクタに使用するのに適している。
【0024】
(ii)によるメルカプトトリアゾール又はその塩は、金含有層を電着する際に金浸漬反応を大幅に減少させるか又はほぼ阻害する。
【0025】
一実施形態では、Xは好ましくはアルカリ金属イオンから選択される対イオンであり、その際、アルカリ金属イオンはナトリウムイオン、カリウムイオン及びリチウムイオンから選択される。
【0026】
別の実施形態において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6の置換フェニル又はナフチル基の置換基は、分枝鎖状又は非分枝鎖状の(C
1〜C
12)アルキル基、分枝鎖状又は非分枝鎖状の(C
2〜C
20)アルキレン基、分枝鎖状又は非分枝鎖状の(C
1〜C
12)アルコキシ基;ヒドロキシル基、及びハロゲンから独立して選択される。別の実施形態では、ハロゲンは塩素及び臭素から選択される。
【0027】
溶液中、式(I)のメルカプトトリアゾールは、2つの互変異性体で存在し得る:
【化3】
【0028】
式(I)は、従って、両方の互変異性体を含む。互変異性体は、特にR
1がH原子の場合に関連する。
【0029】
好ましい実施形態では、少なくとも1種のメルカプトトリアゾールは、一般式(I)又は(II)を有し、その際、R
1、R
4は相互に独立して水素又は直鎖状(C
1〜C
4)アルキル基であり、且つ
R
2、R
3、R
5、R
6は相互に独立して−S−X、水素又は直鎖状(C
1〜C
4)アルキル基であり;且つ
Xは水素、メチル基、エチル基、又はナトリウムイオン及びカリウムイオンから選択される対イオンであり;且つ
R
2及びR
3のうち少なくとも1つは−S−Xであり、R
5及びR
6のうち少なくとも1つは−S−Xである。
【0030】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1種のメルカプトトリアゾールは、一般式(I)又は(II)を有し、その際、R
1、R
4は相互に独立して水素、メチル基又はエチル基であり、且つ
R
2、R
3、R
5、R
6は相互に独立して−S−X、水素、メチル基又はエチル基であり、且つ
Xは水素、ナトリウムイオン又はカリウムイオンであり、且つ
R
2及びR
3のうち少なくとも1つは−S−Xであり、且つR
5及びR
6のうち少なくとも1つは−S−Xである。
【0031】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1種のメルカプトトリアゾールは一般式(I)又は(II)を有し、その際、R
1、R
4は相互に独立して水素又はメチル基であり、且つ
R
2、R
3、R
5、R
6は相互に独立して−S−X、水素又はメチル基であり、且つ
Xは水素、ナトリウムイオン又はカリウムイオンであり、且つ
R
2及びR
3のうち少なくとも1つは−S−Xであり、R
5及びR
6のうち少なくとも1つは−S−Xである。
【0032】
更に好ましい実施形態では、少なくとも1種のメルカプトトリアゾールは一般式(I)を有し、その際、R
1、R
2、R
3及びXは上記で定義した意味を有する。
【0033】
更に一層好ましい実施形態では、少なくとも1種のメルカプトトリアゾールは、5−メルカプト−1,2,3−トリアゾール;4,5−ジメルカプト−1,2,3−トリアゾール;5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール;3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール;3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール;3−メルカプト−4−メチル−1,2,4−トリアゾール;5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール及びその塩を含む群から選択される。
【0034】
更に一層好ましい実施形態では、少なくとも1種のメルカプトトリアゾールは、5−メルカプト−1,2,3−トリアゾール;4,5−ジメルカプト−1,2,3−トリアゾール;5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール;3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール;3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール及びその塩を含む群から選択される。
【0035】
更に一層好ましい実施形態では、少なくとも1種のメルカプトトリアゾールは、5−メルカプト−1,2,3−トリアゾール;3−メルカプト−4−メチル−1,2,4−トリアゾール;5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール;3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール及びその塩から選択される。
【0036】
更に一層好ましい実施形態では、少なくとも1種のメルカプトトリアゾールは、5−メルカプト−1,2,3−トリアゾール及びその塩から選択される。メルカプトトリアゾール化合物は、市販されているか又は当該技術分野で周知の方法によって調製され得る。
【0037】
一実施形態では、少なくとも1種のメルカプトトリアゾールは、電気めっき組成物中に1mg/l〜1g/lの範囲の濃度を有する。好ましくは、濃度は1g/lを下回る。更に好ましくは、濃度は1mg/l〜900mg/l、更に一層好ましくは1mg/l〜500mg/l、更に一層好ましくは5mg/l〜100mg/l、更に一層好ましくは20mg/l〜100mg/lの範囲である。少なくとも1種のメルカプトトリアゾールの濃度が高すぎる場合、金含有層の電着が完全に防止されるか又は電着された金又は金合金層が基板の表面に十分に付着しない。
【0038】
1種以上のメルカプトトリアゾールを、金又は金合金電気めっき組成物に添加すると、金浸漬反応が阻害されるが、金合金の外観は損なわれない。また、接触抵抗や硬度などの金又は硬質金層の機能特性も損なわれない。接触抵抗は望ましい低水準に維持され、金層は電子デバイス用の市販の電気接点に対して十分に硬い。更に、本発明による1種以上のメルカプトトリアゾールを金又は金合金電気めっき組成物に添加することにより、金又は硬質金層、特に硬質金層の高い耐摩耗性の有利な機能特性も損なわれない。
【0039】
電気めっき組成物は、(i)少なくとも1つの金イオン源を更に含む。金イオン源は、金(I)イオン源及び金(III)イオン源から選択され得る。金(I)イオン源は、シアン化金化合物、チオ硫酸金化合物、亜硫酸金化合物、及び金(I)ハロゲン化物を含む金(I)塩の群から選択され得る。シアン化金化合物は、シアン化金アルカリ金属、例えばシアン化金カリウム又はシアン化金ナトリウム;及びシアン化金アンモニウムから選択され得る。チオ硫酸金化合物は、チオ硫酸金アルカリ金属、例えば、チオ硫酸金三ナトリウム又はチオ硫酸金三カリウムから選択され得る。亜硫酸金化合物は、亜硫酸金アルカリ金属、例えば、亜硫酸金ナトリウム又は亜硫酸金カリウム;及び亜硫酸金アンモニウムから選択され得る。金(I)ハロゲン化物は塩化金(I)であり得る。金(III)イオン源は、金(III)三塩化物などの金(III)ハロゲン化物であり得る。好ましくは、金イオン源は、シアン化金アルカリ金属化合物、例えばシアン化金カリウム又はシアン化金ナトリウムである。更に好ましくは、金イオン源は、シアン化金カリウム、例えばジシアノ金(I)酸カリウム又はテトラシアノ金(III)酸カリウム;又はシアン化金ナトリウム、例えばジシアノ金(I)酸ナトリウム又はテトラシアノ金(III)酸ナトリウムである。更に一層好ましくは、金イオン源はジシアノ金(I)酸カリウム又はテトラシアノ金(III)酸カリウムである。シアン化金カリウムは、他の金化合物よりも良好な溶解性を有する。
【0040】
本発明の電気めっき組成物から析出した金合金層が硬質金層である一実施形態では、金イオン源は、好ましくはシアン化金化合物、更に好ましくはシアン化金アルカリ金属、例えばシアン化金カリウム又はシアン化金ナトリウム;又はシアン化金アンモニウムである。金イオン源がシアン化金化合物である場合、金含有率の高い機能性又は硬質金合金層を最も良く電着することができる。この場合、金イオンは、金−シアン化物錯体の形で、好ましくはアルカリ金属イオン−金−シアン化物錯体として、より好ましくはカリウムイオン−金−シアン化物錯体として電気めっき組成物中に含有されており、これらの錯体は金含有率の高い硬質金合金層を電着させるのに特に適している。同じことが、高電流密度で使用される電解質からの金含有層の電着についても当てはまる。なぜなら、金シアン化物錯体、アルカリ金属イオン−金−シアン化物錯体又はカリウムイオン−金−シアン化物錯体以外の金化合物は、高電流密度では安定性が低いからである。
【0041】
一実施形態では、少なくとも1つの金イオン源は、電気めっき組成物において1g/l〜50g/lの範囲、好ましくは5g/l〜50g/lの範囲、より好ましくは10g/l〜50g/lの範囲、更に一層好ましくは5g/l〜30g/lの範囲、更に一層好ましくは5g/l〜20g/lの範囲、更に一層好ましくは10g/l〜20g/lの範囲の濃度を有する。電気めっき組成物の浸漬反応で金を析出させる傾向は、組成物中に含まれる金濃度とともに高まる。
【0042】
一実施形態では、電気めっき組成物は、金イオンのための錯化剤を更に含み得る。金イオンのための錯化剤は、アルカリ金属シアン化物、例えばシアン化カリウム、シアン化ナトリウム、シアン化アンモニウム;チオ硫酸及びその塩、例えばチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム;亜硫酸及びその塩、例えば亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、カルボン酸、例えばソルビン酸;ヒドロキシカルボン酸、例えばクエン酸及びマロン酸;アミノカルボン酸、例えばエチレンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ビス−2−アミノエチルエーテル四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸;鉱酸、例えばリン酸、硫酸、ホウ酸;ホスホン酸、例えば1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,2−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチルホスホン酸、ヘキサメチレンジアミノテトラメチルホスホン酸;前記酸の塩、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩;好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩;アミン、例えばテトラエチレンペンタミン、トリエチレンテトラアミン、トリエチルアミン、ジエチレントリアミン及びエチレンジアミンから選択される。錯化剤は導電性塩としても機能し得る。
【0043】
金イオン源がシアン化金アルカリ金属化合物である一実施形態では、錯化剤は好ましくはシアン化化合物ではなく、更に好ましくはシアン化アルカリ金属ではない。
【0044】
一実施形態では、錯化剤は、電気めっき組成物において1g/l〜200g/lの範囲、好ましくは1g/l〜100g/lの範囲、更に好ましくは10g/l〜50g/lの範囲の濃度を有する。
【0045】
一実施形態では、電気めっき組成物は、少なくとも1つの合金化金属イオン源を更に含み得る。合金化金属イオンの金属は、コバルト、ニッケル及び鉄から選択される。金コバルト合金、金−ニッケル合金及び金−鉄合金は硬質金合金に属する。
【0046】
硬質金合金の析出物は、99.00質量%〜99.99質量%未満の範囲の金含有率を有する。合金化金属のコバルト、ニッケル及び/又は鉄の含有率は、硬質金合金の場合、0.03質量%未満〜0.3質量%超の範囲であり得る(ASTM B488−11、セクション7)。合金化金属は、高信頼性用途用の電気コネクタの接点材料のような産業用途に必要な金合金に最高の硬度と最高の耐摩耗性を付与する(ASTM B488−11、付録X1)。同時に、硬質金合金は、高い導電性を維持し、このことは電気コネクタ内でのそれらの使用にとって更に重要である。対照的に、金の含有率が99.90質量%以上の金の析出物は硬さが低く(ASTM B488−11、セクション4と7)、耐摩耗性が低く、従って電気コネクタの用途には適していない。
【0047】
合金化金属イオンは、コバルト(II)イオン、ニッケル(II)イオン、鉄(II)イオン、及び鉄(III)イオンから選択される。合金化金属イオン源は、炭酸コバルト、硫酸コバルト、グルコン酸コバルト、シアン化コバルトカリウム、臭化コバルト、塩化コバルト、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、酒石酸ニッケル、リン酸ニッケル、硝酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、塩化鉄、臭化鉄、クエン酸鉄、フッ化鉄、ヨウ化鉄、硝酸鉄、シュウ酸鉄、リン酸鉄、ピロリン酸鉄、硫酸鉄、及び酢酸鉄から選択される。
【0048】
一実施形態では、少なくとも1つの合金化金属イオン源は、電気めっき組成物において0.001g/l〜5g/lの範囲、好ましくは0.05g/l〜2g/lの範囲、更に好ましくは0.05g/l〜1g/lの範囲の濃度を有する。
【0049】
一実施形態では、電気めっき組成物は、金属イオンを合金化するための錯化剤を更に含み得る。金属イオンを合金化するための錯化剤は、亜硫酸及びその塩、例えば、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、カルボン酸、例えばソルビン酸;ヒドロキシカルボン酸、例えばクエン酸及びマロン酸;アミノカルボン酸、例えばエチレンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ビス−2−アミノエチルエーテル四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸;鉱酸、例えばリン酸、硫酸、ホウ酸、チオ硫酸;ホスホン酸、例えば1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,2−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチルホスホン酸、ヘキサメチレンジアミノテトラメチルホスホン酸;及び前述の酸の塩、例えばアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩;好ましくはナトリウム及びカリウム塩;アミン、例えばテトラエチレンペンタミン、トリエチレンテトラミン、トリエチルアミン、ジエチレントリアミン及びエチレンジアミンから選択され得る。錯化剤は導電性塩としても機能し得る。
【0050】
金属イオンを合金化するための錯化剤は、電気めっき組成物において1〜200g/lの範囲、好ましくは20〜150g/lの範囲の濃度を有し得る。同じ錯化剤を金イオンと合金化金属イオンに使用する場合、錯化剤の濃度は金イオンと合金化金属イオンに必要な濃度の合計である。
【0051】
一実施形態では、電気めっき組成物は、少なくとも1種の光沢剤を更に含み得る。少なくとも1種の光沢剤は、ピリジン及びキノリン化合物から選択される。ピリジン及びキノリン化合物は、置換ピリジン及び置換キノリン化合物から選択される。好ましくは、置換ピリジン及び置換キノリン化合物は、モノカルボン酸又はジカルボン酸、モノスルホン酸又はジスルホン酸、モノチオール又はジチオール置換ピリジン、キノリン、ピリジン誘導体又はキノリン誘導体から選択される。ピリジン又はキノリン誘導体は、1つ以上の位置で同じ又は異なる置換基で置換され得る。更に好ましくは、ピリジン誘導体又はキノリン誘導体は、ピリジン環の3位で置換された誘導体から選択される。更に一層好ましくは、ピリジン誘導体又はキノリン誘導体は、ピリジン又はキノリンカルボン酸、ピリジン又はキノリンスルホン酸、及びピリジン又はキノリンチオールから選択される。更に一層好ましくは、ピリジン又はキノリンカルボン酸は、それぞれのエステル及びそのアミドから選択される。更に一層好ましくは、ピリジン又はキノリンカルボン酸は、ピリジン−3−カルボン酸(ニコチン酸)、キノリン−3−カルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、ニコチン酸メチルエステル、ニコチンアミド、ニコチン酸ジエチルアミド、ピリジン−2,3−ジカルボン酸、ピリジン−3,4−ジカルボン酸及びピリジン−4−チオ酢酸から選択される。更に一層好ましくは、ピリジン又はキノリンスルホン酸は、3−ピリジンスルホン酸、4−ピリジンスルホン酸及び2−ピリジンスルホン酸から選択される。最も好ましくは、少なくとも1種の光沢剤は、ピリジン−3−カルボン酸(ニコチン酸)、ニコチンアミド、及び3−ピリジンスルホン酸から選択される。
【0052】
少なくとも1種の光沢剤は、電気めっき組成物において0.5g/l〜10g/lの範囲、好ましくは1g/l〜10g/lの範囲の濃度を有し得る。
【0053】
光沢剤は、輝きのある金層の析出を、2A/dm
2〜100A/dm
2の広い電流密度範囲にわたり有利に引き起こす。
【0054】
一実施形態では、電気めっき組成物は、少なくとも1種の酸を更に含み得る。好ましくは、少なくとも1種の酸は有機酸又は無機酸である。更に好ましくは、少なくとも1種の酸は、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、ギ酸及びポリエチレンアミノ酢酸から選択される。少なくとも1種の酸を使用して、電気めっき組成物のpH値を調整する。少なくとも1種の酸は、錯化剤として及び/又は導電性塩としても機能し得る。
【0055】
少なくとも1種の酸は、電気めっき組成物において1g/l〜200g/lの範囲の濃度を有し得る。
【0056】
一実施形態では、電気めっき組成物は、少なくとも1種のアルカリ化合物を更に含み得る。少なくとも1種のアルカリ性化合物を使用して、電気めっき組成物のpH値を調整する。少なくとも1種のアルカリ性化合物は、ナトリウム、カリウム及びマグネシウムの水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、並びに他の塩から選択される。好ましくは、少なくとも1種のアルカリ性化合物は、KOH、NaOH、K
2CO
3、Na
2CO
3、K
2HPO
4、Na
2HPO
4、NaH
2PO
4及びそれらの混合物から選択される。
【0057】
一実施形態では、電気めっき組成物は、酸性電気めっき組成物である。電気めっき組成物は、pH値が7未満、より好ましくは5未満、更に好ましくは1〜6、更に一層好ましくは3〜6、更に一層好ましくは3.5〜5.5、更に一層好ましくは3.5〜4.5であり得る。
【0058】
本発明の電気めっき組成物から析出した金合金層が硬質金層である一実施形態では、電気めっき組成物は、好ましくは酸性電気めっき組成物である。電着組成物が酸性である場合、金含有率の高い機能性又は硬質金合金層を最も良く電着することができる。
【0059】
一実施形態では、電気めっき組成物は、界面活性剤及び/又は結晶微粒化剤(grain refiner)などの更なる添加剤を含み得る。
【0060】
本発明は更に、以下の工程:
(i)上記で定義した電気めっき組成物を準備すること;
(ii)基板を前記組成物と接触させること;及び
(iii)前記基板と少なくとも1つのアノードとの間に電流を印加し、それによって金含有層を前記基板上に析出させること
を含む方法に関する。
【0061】
前記方法は、金含有層を基板上に電着するのに適している。前記方法は、少なくとも1種のメルカプトトリアゾール又はその塩を浸漬防止剤として含有する本発明の電気めっき組成物を使用する。前記方法は金浸漬反応を大幅に減少させるか又はほぼ阻害する。従って、本発明の方法は、金の消費を大幅に削減し、金又は金合金電気めっき組成物の寿命を増加させる。金含有層は、純金層又は金合金層、好ましくは金合金層、より好ましくは硬質金層であり得る。
【0062】
金含有層は、基板の表面全体に又は基板の表面の一部に析出し得る。基板の表面の一部に金属層を析出させることは、金属層の選択的析出又はめっきとも呼ばれる。このように、金含有層は、選択的に基板上に電気めっきされ得る。
【0063】
選択的めっきは、マスキング法、スポットめっき法又は筆めっき法等の公知の方法で行われ得る。マスキング法は、めっきされるべきではない基板表面の部分を覆うマスクの使用を含む。スポットめっき法では、金属化されるべき基板の部分のみ電気的に接続され、そしてめっきされる。筆めっき法は、筆で覆われたアノードを、めっきされるべき基板の領域に局所的に適用し、その際、筆は金属めっき溶液を含有する。
【0064】
基板の全表面への金属析出又は選択的金属析出のいずれの場合も、基板の導電性表面又は基板表面の一部は、本発明の電気めっき組成物と接触する。基板の表面又は基板表面の一部はカソードとして電気的に接続される。このカソードと少なくとも1つのアノードとの間に電圧が印加され、電流が基板表面又は基板表面の一部に供給される。
【0065】
電流の電流密度は、0.05A/dm
2〜100A/dm
2、好ましくは1A/dm
2〜50A/dm
2、より好ましくは1A/dm
2〜40A/dm
2、更に好ましくは5A/dm
2〜40A/dm
2、更に一層好ましくは5A/dm
2〜20A/dm
2の範囲であり得る。金含有層を電着する間により高い電流密度を印加すると、有利には、電着率、そして電着方法の生産性が増加する。
【0066】
めっき時間は変化し得る。時間は、基板上の金含有層の所望の厚さに依存する。金含有層の厚さは、0.01μm〜5μm、好ましくは0.05μm〜3μm、更に好ましくは0.05μm〜1.5μmの範囲である。
【0067】
めっきする間、本発明の電気めっき組成物は40℃〜70℃の範囲の温度に維持され得る。
【0068】
めっきする間、本発明の電気めっき組成物は静置され得るか又は撹拌され得る。撹拌は、例えば、水性めっき浴の機械的な動き、例えば、液体の振とう、撹拌又は連続的なポンピングによって又は実質的に超音波処理によって又は高温によって又はガス供給、例えば水性めっき浴を不活性ガスで若しくは単に空気でパージすることによって行われ得る。
【0069】
金含有層を基板上に電着させる方法は、基板を本発明の電気めっき組成物と接触させる前に、前処理工程を更に含み得る。前処理工程は、典型的には酸又はフッ化物を含む酸を用いる基板表面の活性化である。
【0070】
金含有層を基板上に電着させる方法は、基板を本発明の電気めっき組成物と接触させる前に、更なるめっき工程を含み得る。金又は金合金層を基板上に電着させる前に、更なるめっき工程により、更なる金属層を基板上に析出させる。更なる金属層の金属は、鉄、ニッケル、ニッケル−リン合金、銅、パラジウム、銀、コバルト及びそれらの合金、好ましくはニッケル、ニッケル−リン合金、及び銅から選択され得る。上記の金属のめっき方法は当該技術分野で知られている。
【0071】
一実施形態では、金含有層でめっきされるべき基板、即ち、金又は金合金層は導電性材料である。導電性材料は金属であってもよい。金属は金浸漬反応が起こり得るあらゆる金属であってよい。金属は、鉄、ニッケル、ニッケル−リン合金、銅、パラジウム、銀、コバルト、及びそれらの合金から選択され得る。好ましくは、基板は鉄又は銅から作られ且つニッケル層で覆われる。
【0072】
一実施形態では、金含有層を有するめっきされるべき基板は電気コネクタである。好ましくは、基板は電気コネクタの接触インターフェースである。より好ましくは、基板はプラグコネクタである。基板はプリント回路基板、電線又は電気機器の一部であり得る。
【0073】
本発明は更に、以下の工程:
(i)使用済み金又は金合金電気めっき組成物を準備すること;
(ii)上記で定義したメルカプトトリアゾールを、前記使用済み金又は金合金電気めっき組成物に添加すること、及び
(iii)基板を前記組成物と接触させること;及び
(iv)前記基板と少なくとも1つのアノードとの間に電流を印加し、それによって金又は金合金を前記基板上に析出させること
を含む方法に関する。
【0074】
前記方法は、使用済み金又は金合金電気めっき組成物を再生するのに適している。一方で、使用済み電気めっき組成物は、老化金又は金合金電気めっき組成物であり得る。老化電気めっき組成物とは、本明細書では、金の浸漬反応が適切な金又は金合金層の有効な利用と析出を妨げる程度に達した電気めっきに既に使用されている組成物を意味する。老化の程度を評価する基準は、浸漬反応による析出速度である。新たに作られた金又は金合金の電気めっき浴では、析出速度は60℃で約5nm/5分である。析出速度は電気めっき浴の寿命とともに増加する。析出速度が60℃で80〜100nm/5分に達すると、通常、金又は金合金電気めっき浴を交換する必要がある。析出速度が60℃で20〜40nm/5分に達した場合でも、浸漬反応が既に金の大きな損失を引き起こしているため、金又は金合金電気めっき浴は、もはや工業めっき用途に適していない。対照的に、本発明の方法は、老化金又は金合金電気めっき組成物における金浸漬反応を大幅に減少させるか又はほぼ阻害する。従って、本発明の方法は、老化金又は金合金電気めっき組成物を再生し、金又は金合金電気めっき組成物の寿命を大幅に増加させる。
【0075】
本発明は更に以下の工程:
(i)老化金又は金合金電気めっき組成物を準備すること;
(ii)上記で定義したメルカプトトリアゾールを前記老化金又は金合金電気めっき組成物に添加すること;及び
(iii)基板を前記組成物と接触させること;及び
(iv)前記基板と少なくとも1つのアノードとの間に電流を印加し、それによって金又は金合金を前記基板上に析出させること
を含む方法に関する。
【0076】
金層の厚さは、当該技術分野で知られているX線蛍光(XRF)で測定され得る。XRF厚さ測定は、X線で励起されている試料(基板、析出物)から放出される特徴的な蛍光放射線を利用する。強度を評価し且つ試料層の層構造を仮定することにより、厚さを計算することができる。
【0077】
一方で、使用済み電気めっき組成物は、電気めっきプロセスでしばらく使用されていなかった金又は金合金電気めっき組成物であり得る。使用されていないとは、金又は金合金電気めっき組成物が電気的に接続されず、金又は金合金が前記組成物から電着されていないことを意味する。金又は金合金電着組成物が電気めっきプロセスで使用されない間に金浸漬めっきの問題も増加することが認められた。本発明のメルカプトトリアゾールを、一時的に利用されていなかった金又は金合金電着組成物に添加すると、この組成物が再び利用される時に金浸漬反応を大幅に減少させるか又はほぼ阻害する。
【0078】
本発明は更に、以下の工程:
(i)一時的に利用されていなかった金又は金合金電気めっき組成物を準備すること;
(ii)上記で定義したメルカプトトリアゾールを前記一時的に利用されていなかった金又は金合金電気めっき組成物に添加すること、及び
(iii)基板を前記組成物と接触させること;及び
(iv)前記基板と少なくとも1つのアノードとの間に電流を印加し、それによって金又は金合金を前記基板上に析出させること
を含む方法に関する。
【0079】
本発明は更に、本発明の方法のうちの1つによって得られる金含有層で電気めっきされた基板に関する。
【0080】
本発明は更に、本発明のメルカプトトリアゾールの、電着組成物における、好ましくは金含有層のための電着組成物における浸漬防止剤としての使用に関する。
【0081】
本発明の電気めっき組成物及び方法は、金浸漬反応を大幅に減少させるか又はほぼ阻害する。このように、基板表面の不要な部分に金が析出することはない。これにより、金の損失や不良品の生産が最小限に抑えられるため、コストが節約される。さらに、金又は金合金電気めっき組成物の寿命が大幅に増加する。
【0082】
本発明のトリアゾール化合物とは対照的に、テトラゾール化合物は金浸漬反応を減少させる効果が著しく低い。また、テトラゾール化合物は金又は金合金電気めっき組成物における安定性が低く、このことがテトラゾール化合物の高い消費量につながり、処理中の分解生成物の濃度が増加するためにうまく機能せず、そして金電解液の寿命が減少する。
【0083】
実施例
例1
ニッケルを電気めっきした銅板を基板として使用した。基板を、水で濯ぎ、室温(約20℃)で15秒間酸化活性化(UniClean 675、Atotech Deutschland GmbHの製品)し、再び水で濯ぎ、その後、脱イオン水で濯ぐことによって前処理した。
【0084】
5−メルカプト−1,2,3−トリアゾールのナトリウム塩500mg/lを浸漬防止剤として更に含有する新たに作られた金コバルト合金めっき浴(Aurocor HSC、金15g/l、pH4.5、Atotech Deutschland GmbHの製品)を用いて銅パネルAに電気めっきを施した。電気めっきを、電流密度10A/dm
2、温度60℃で、撹拌しながら150秒間行った。
【0085】
めっき後、基板を、厚さ5μmの高硬度の光沢のある、均一で、よく付着している金コバルト合金層で完全に覆った。
【0086】
例2
例1に記載したようにニッケルで電気めっきし且つ前処理した銅パネルを基板として使用した。めっきされるべきではない部分をマスクするため、基板の面積の半分をテサテープで覆った。
【0087】
銅パネルBに、メルカプトトリアゾール化合物を含有しない老化金コバルト合金めっき浴(Aurocor HSC、金15g/l、pH4.5、Atotech Deutschland GmbHの製品)を接触させた。
【0088】
第1表に概要を示すように、銅パネルC〜Fを、メルカプトトリアゾール化合物又はメルカプトテトラゾール化合物をそれぞれ500mg/l含有する別個の新たに作られた金コバルト合金めっき浴(Aurocor HSC、金15g/l、pH4.5、Atotech Deutschland GmbHの製品)に接触させた。
【0089】
金コバルト合金めっき浴と接触している間、銅パネルB〜Fは電気的に接続されていなかった。従って、電気めっきによる金属の析出は不可能であった。それぞれのメルカプトアゾール化合物を含有する金コバルト合金めっき浴50mlを各パネルに使用した。金コバルト合金めっき浴を60℃の温度に保ち、400rpm(1分当たりの回転数)で常にかき混ぜた。各パネルとの接触を5分間行った。
【0090】
パネルを、それぞれの金コバルト合金めっき浴に接触させた後、浸漬反応により析出した金合金層の厚さをXRFで測定した。結果を第1表にまとめ、
図1に示す。
【表1】
【0091】
一般に、金合金層は、テープで覆われていない基板パネルの部分に析出し、金合金は、テープで覆われた基板パネルの部分に析出しなかった。本発明によるメルカプトトリアゾールを含有する金合金浴から最小限の厚さしかない金合金層を浸漬反応により析出させた。対照的に、メルカプトアゾール化合物を含有しない金合金浴又は比較のメルカプトテトラゾール化合物を含有する金合金浴からは、著しく高い層厚の金合金層が浸漬反応により析出した。さらに、比較化合物Dは、望ましくない析出物を金合金浴中に生じさせた。本発明のトリアゾール化合物とは対照的に、テトラゾール化合物は、金合金電解質において低い安定性を示し、このことはテトラゾール化合物のより高い消費につながり、処理中の分解生成物の濃度増加による機能不全につながり、そして金電解質の寿命の減少につながる。従って、本発明のメルカプトトリアゾール化合物は、金浸漬反応を大幅に減少させるか又はほぼ阻害する。
【0092】
例3
例1に記載したようにニッケルで電気めっきし且つ前処理した銅パネルを基板として使用した。
【0093】
老化金コバルト合金電気めっき浴(Aurocor HSC、Atotech Deutschland GmbHの製品)をまず60℃で30分間、活性炭で処理した。
【0094】
工程1では、基板を、電気的に接続させずに様々な時間、金めっき浴に浸漬しながら、金めっき浴を60℃に保った。浴中30秒後に、金は基板上に析出しなかった。しかしながら、2分後と3分後に、金層が浸漬反応によって基板上に析出した。
【0095】
その後の工程2では、5−メルカプト−1,2,3−トリアゾールのナトリウム塩25mg/lを金めっき浴に添加し、基板を再び、電気的に接続させずに様々な時間、金めっき浴に浸漬した。金めっき浴との接触の30秒後、2分後、3分後、さらには5分後であっても、金は浸漬反応によって基板上に析出しなかった。
【0096】
このように、本発明のメルカプトトリアゾール化合物は、老化金又は金合金電気めっき組成物における金浸漬反応を大幅に減少させるか又はほぼ阻害する。従って、本発明のメルカプトトリアゾール化合物は、老化金又は金合金電気めっき組成物を再生し、金又は金合金電気めっき組成物の寿命を大幅に増加させる。
【0097】
例4
1日目に、例3を繰り返し、同じ結果を得た。工程2の後、浴をめっき中で使用せずに1日放置した。
【0098】
2日目に、例3の工程1に従って、基板を再び金めっき浴と接触させた。浴中で3分後、金は基板に析出しなかった。しかしながら、5分後に金層が浸漬反応により基板上に析出した。
【0099】
その後、例3の工程2を行った。金めっき浴との接触の5分後であっても、金は浸漬反応によって基板上に析出しなかった。
【0100】
従って、本発明のメルカプトトリアゾール化合物を、一時的に利用されていなかった金又は金合金電着組成物に添加することも、この組成物が再び利用される時に金浸漬反応を大幅に減少させるか又はほぼ阻害する。
【0101】
例5
ニッケルで電気めっきされた銅パネルを基板として使用した。銅パネルにニッケルを電気めっきし、以下の第2表にまとめたように前処理した。第2表に挙げた各工程段階の後、銅パネルを水で濯いだ。めっきされるべきではない部分をマスクするため、基板の面積の半分をテサテープで覆った。
【0102】
銅パネルGに、メルカプトトリアゾール化合物を含まない老化金コバルト合金めっき浴(Aurocor SC、金4g/l、pH4.5、Atotech Deutschland GmbHの製品)を接触させた。
【0103】
第3表に概要を示すように、銅パネルH〜Mを、メルカプトトリアゾール化合物をそれぞれ50mg/l含有する別個の老化金コバルト合金めっき浴(Aurocor SC、金4g/l、pH4.5、Atotech Deutschland GmbHの製品)に接触させた。
【0104】
金コバルト合金めっき浴と接触させている間、ニッケルで被覆し且つ前処理した銅パネルG〜Mを電気的に接続させなかった。従って、電気めっきによる金属の析出は不可能であった。それぞれのメルカプトトリアゾール化合物を含有する金コバルト合金めっき浴50mlを各パネルに使用した。金コバルト合金めっき浴を60℃の温度に保ち、常に400rpm(1分当たりの回転数)でかき混ぜた。各パネルとの接触を5分間行った。
【0105】
パネルをそれぞれの金コバルト合金めっき浴に接触させた後、浸漬反応により析出した金合金層の厚さをXRFで測定した。結果を第3表にまとめ、
図2に示す。
【表2】
【表3】
【0106】
例5のめっき浴の金濃度が例2よりも著しく低かったので、メルカプトトリアゾール化合物を含有しないめっき浴から析出した金コバルト層の厚さ(パネルG)は例2(パネルB)よりも低かった。例5のめっき浴内の5−メルカプト−1,2,3−トリアゾールの濃度が例2よりも著しく低かったので、5−メルカプト−1,2,3−トリアゾールを含有するめっき浴から析出した金コバルト層の厚さ(パネルH)は、例2(パネルC)よりも高かった。
【0107】
一般に、金合金層はテープで覆われていない基板パネルの部分に析出し、金合金はテープで覆われた基板パネルの部分には析出しなかった。本発明によるメルカプトトリアゾールを含有する金合金浴から浸漬反応により薄い金合金層を析出させた。対照的に、メルカプトトリアゾール化合物を含有しない又は比較のアミノ変性メルカプトトリアゾール化合物を含有する金合金浴から著しく高い層厚の金合金層が浸漬反応によって析出した。従って、本発明のメルカプトトリアゾール化合物は金浸漬反応を大幅に減少させる。
【0108】
例6
析出した金層の析出速度、硬度及び付着性にメルカプトトリアゾール化合物が及ぼす影響
例1に記載したようにニッケルで電気めっきし且つ前処理した銅パネルを基板として使用した。
【0109】
まず、例5に記載したように、老化金コバルト合金めっき浴(Aurocor HSC、金15g/l、pH4.5、Atotech Deutschland GmbHの製品)の浸漬反応を測定した。
【0110】
銅パネルNを、メルカプトトリアゾール化合物を含有しないめっき浴の一部から浸漬反応によってめっきした。銅パネルPを、5−メルカプト−1,2,3−トリアゾールのナトリウム塩25mg/lを含有するめっき浴の一部から浸漬反応によってめっきした。浸漬反応によって析出した金コバルト合金層のパネルNでの厚さは82±6nmであり、パネルPでの厚さは10±4nmであった。
【0111】
その後、後の段落において特に断りのない限り、金コバルト合金層をパネルに電着するために、同じ老化金コバルト合金めっき浴を使用した。析出した合金層の析出速度、硬度及び付着性を測定した。電着を例1に記載したように行った。
【0112】
析出速度:
銅パネルQ1〜Q4を、メルカプトトリアゾール化合物を含有しない別個の老化めっき浴からめっきした。銅パネルR1〜R4を、5−メルカプト−1,2,3−トリアゾールのナトリウム塩25mg/lを含有する別個の老化めっき浴からめっきした。電流密度は、第4表に概要を示すように、5A/dm
2から20A/dm
2まで変化した。電着された金コバルト合金層の厚さをXRFで測定した。結果を第4表にまとめる。
【表4】
【0113】
メルカプトトリアゾールの不在下又は存在下における老化めっき浴からの金コバルト合金の析出速度はほぼ同じであった。従って、本発明によるメルカプトトリアゾールが金電着浴内に存在することは、析出速度に影響を及ぼさなかった。
【0114】
硬さ:
銅パネルSを、メルカプトトリアゾール化合物を含有しない老化めっき浴の一部からめっきした。銅パネルTを、5−メルカプト−1,2,3−トリアゾールのナトリウム塩25mg/lを含有する老化めっき浴の一部からめっきした。15A/dm
2の電流密度で150秒間電気めっきを行い、約5μm厚さの金コバルト合金層を得た。金コバルト合金層の硬度を、Fischer Technology,Inc.製のXRF−SDD(X線蛍光−シリコンドリフト検出器)機器、Fischerscope X-RAY XDRL型を使用してビッカース硬度試験により測定した。パネルSに電着した金コバルト合金層の硬度は180±10HV0.001であり、パネルTaの硬度は178±10HV0.001であった。
【0115】
メルカプトトリアゾールの不在下又は存在下で老化めっき浴から析出した金コバルト合金層の硬度はほぼ同じであった。従って、本発明によるメルカプトトリアゾールが金電着浴内に存在することは、析出した金含有層の硬度に影響を及ぼさなかった。
【0116】
付着性:
新たに作られた金コバルト合金めっき浴(Aurocor HSC、金15g/l、pH4.5、Atotech Deutschland GmbHの製品)を付着性の測定に用いた。電着した金含有層の付着への悪影響は、新しく作られた金又は金合金めっき浴を使用して析出を行う時に最も良く検出できる。なぜなら、これらのめっき浴は浸漬反応がわずかしかなく且つ析出物が通常、良好な付着性を有するからである。
【0117】
銅パネルU1〜U2を、メルカプトトリアゾール化合物を含有しない別個の新たに作られためっき浴からめっきした。銅パネルV1〜V2を、5−メルカプト−1,2,3−トリアゾールのナトリウム塩50mg/lを含有する別個の新たに作られためっき浴からめっきした。
【0118】
まず銅パネルU1及びV1を、電気的に接続させずに、各めっき浴に5分間接触させた。このように、パネルV1ではメルカプトトリアゾールをパネルのニッケル表面に付着させた。その後、銅パネルU1及びV1を、各めっき浴から5A/dm
2で72秒間電気めっきし、それによって金コバルト合金層をパネルに電着させた。金コバルト合金層のパネル表面への付着性を曲げ試験とテープ試験により測定した。曲げ試験を次のように行った:試験されるべきパネルの一部を一度90°に曲げた。析出した金層内に気泡が発生していない場合又は析出した金層のフレークが屈曲部から剥離していない場合は、付着性は良好と考えられた。テープ試験では、約6N/cmの付着力を有するテサテープ4102を金コバルトめっきパネルに付着させ、その後パネル面から剥がした。テープが金コバルト層の一部又は全部を剥がさなかった場合、付着力は少なくとも6N/cmと良好であり、良好な付着性であると考えられた。一方、テープが金コバルト層の一部又は全部を剥がした場合、付着性は不十分であった。
【0119】
曲げ試験とテープ試験により、パネルU1とV1のニッケル表面への金コバルト合金層の付着性がほぼ同一であり且つ良好であることが明らかになった。まず、銅パネルU2とV2をそれぞれのめっき浴に接触させ、厚さ0.1〜0.2μmの薄い金コバルト層(第1の金コバルト層)を電着させた。その後、このめっきした銅パネルを、電気的に接続させずに、それぞれのめっき浴に10秒間接触させた。このように、パネルV2については、メルカプトトリアゾールを、析出した金コバルト層の表面に付着させた。その後、銅パネルU2とV2を、それぞれのめっき浴から5A/dm
2で72秒間電気めっきし、それによってパネル上に第2の金コバルト合金層を電着させた。第1の金コバルト層の表面への第2の金コバルト合金層の付着性を、上記のように曲げ試験とテープ試験によって測定した。
【0120】
曲げ試験とテープ試験により、パネルU2とV2の第1の金コバルト層の表面への第2の金コバルト合金層の付着性がほぼ同一であり且つ良好であることが明らかになった。
【0121】
メルカプトトリアゾールの不在下又は存在下で新たに作られためっき浴から析出した金コバルト合金層の付着性はほぼ同一であった。従って、本発明によるメルカプトトリアゾールが金電着浴内に存在することは、析出した金含有層の付着性に影響を及ぼさなかった。