特許第6726190号(P6726190)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6726190UV−LEDでの多重露光によってフレキソ印刷版を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6726190
(24)【登録日】2020年6月30日
(45)【発行日】2020年7月22日
(54)【発明の名称】UV−LEDでの多重露光によってフレキソ印刷版を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/00 20060101AFI20200713BHJP
   B41C 1/00 20060101ALI20200713BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20200713BHJP
【FI】
   G03F7/00 502
   B41C1/00
   G03F7/20 511
   G03F7/20 501
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-533031(P2017-533031)
(86)(22)【出願日】2015年12月16日
(65)【公表番号】特表2018-503120(P2018-503120A)
(43)【公表日】2018年2月1日
(86)【国際出願番号】EP2015079930
(87)【国際公開番号】WO2016096945
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年11月16日
(31)【優先権主張番号】14198604.2
(32)【優先日】2014年12月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508373925
【氏名又は名称】フリント グループ ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ピーター フロンチキエウィッチ
(72)【発明者】
【氏名】トアベン ヴェントラント
(72)【発明者】
【氏名】マティアス バイヤー
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−534324(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/135865(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103331988(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0266767(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/035566(WO,A1)
【文献】 特表2012−511174(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/119096(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキソ印刷版を製造する方法であって、出発材料として光重合可能なフレキソ印刷要素を用い、該フレキソ印刷要素が、積み重ねて配置されて、
・ 寸法安定性の支持体と、
・ エラストマーバインダー、エチレン性不飽和化合物および光開始剤を少なくとも含む、光重合可能な少なくとも1つのレリーフ形成層と、
・ デジタル描画可能な層と
を少なくとも含み、
かつ前記方法は、少なくとも以下の工程:
(a)前記デジタル描画可能な層の描画によってマスクを生成する工程、
(b)該マスクを通して前記光重合可能なレリーフ形成層を化学線で露光し、かつ前記層の画像領域の光重合を行う工程、および
(c)前記レリーフ形成層の光重合されていない領域を有機溶剤で洗浄することによってか、または熱現像によって、前記光重合された層を現像する工程
を含む前記方法において、
前記工程(b)が、複数のUV−LEDからの100〜5000mW/cmの強度を有する化学線での2回以上の露光サイクル(b−1)〜(b−n)を含み、ここで、1回の露光サイクルにつき光重合可能なレリーフ形成層に入力されるエネルギーが、0.1〜5J/cmであることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
工程(b)で前記光重合可能なレリーフ形成層に入力されるエネルギーが全体で、5〜25J/cmであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1回の露光サイクルにつき入力されるエネルギーが、露光工程(b)にわたって増大することを特徴とする、請求項1項記載の方法。
【請求項4】
前記露光工程(b)を、前記フレキソ印刷要素の表面と平行な複数のUV−LEDの相対運動によって実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記複数のUV−LEDが、少なくとも1つのUV−LEDストリップ上に並べて配置されており、該UV−LEDストリップを前記フレキソ印刷要素の表面に沿って移動させることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記複数のUV−LEDが、少なくとも2つのUV−LEDストリップ上に並べて配置されており、該UV−LEDストリップの少なくとも1つは移動可能であり、かつ少なくとも1つは固定されていることを特徴とする、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
前記1つのLEDストリップまたは前記複数のLEDストリップを、前記フレキソ印刷要素の表面に対して50〜5000mm/分の速度で移動させることを特徴とする、請求項4から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程(b)で用いられるUV−LEDが、350〜405nmの波長範囲に発光極大を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
工程(b)で用いられるUV−LEDが、350nm、365nm、375nm、385nm、395nmまたは405nmで発光極大を有することを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記デジタル描画可能な層がレーザーアブレーション可能な層であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記UV−LEDと前記フレキソ印刷要素の表面との間隔が5〜30mmであることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV−LEDでの多重露光によってフレキソ印刷版を製造する方法に関する。
【0002】
フレキソ印刷版を製造するための最も一般に普及している方法は、光重合可能なレリーフ形成層を、化学線、中でも長波UV線で、写真的またはデジタル的に生成されたマスクを通して像様露光することを含む。更なる方法工程では、露光された層は、適切な溶剤または溶剤混合物で処理され、その際、露光されておらず、重合されていないレリーフ形成層の領域が溶解される一方で、露光されており、重合された領域は保持され、かつ印刷版のレリーフを形成する。
【0003】
感光性フレキソ印刷要素のデジタル描画(Bebilderung)は基本的に知られている。この場合、フレキソ印刷要素は、フォトマスクをあてがい、続けてフォトマスクを通して露光することによる従来の方法では生成されない。その代わりに、マスクは、適切な技術によってフレキソ印刷要素上にその場で直接生成される。フレキソ印刷要素に、例えば、IRレーザーによって像様にアブレーション可能である不透明なIRアブレーション層(欧州特許第654150号明細書(EP-B 654 150)、欧州特許出願公開第1069475号明細書(EP-A 1 069 475))を備えることができる。別の既知の技術には、インクジェット技術により書き込み可能な層(欧州特許出願公開第1072953号明細書(EP-A 1 072 953))またはサーモグラフィー的に書き込み可能な層(欧州特許出願公開第1070989号明細書(EP-A 1 070 989))が含まれる。このために適した技術によってこれらの層を像様に書き込んだ後、光重合可能な層が、形成されたマスクを通して化学線(aktinisches Licht)により露光される。
【0004】
化学線での像様露光は、約315nm〜420nmの範囲(長波UV領域〜可視スペクトルの紫範囲)で顕著な発光を有するUV線源を使用して標準的に行われる。最も頻繁に使用される放射線源は、約370nmの波長で発光極大を有し、かつ50mmの間隔(放射線源からフレキソ印刷要素の表面までの典型的な間隔)で測定して10mW/cm〜30mW/cmのUV強度を発生させるUV/A管である。このようなUV/A管は、例えば、Philips社の「R−UVA TL 10R」の名称で得られる。さらに、水銀蒸気ランプも像様露光のために使用され、その際、ドープされた中圧水銀蒸気ランプが有利であって、というのも、例えば、鉄および/またはガリウムドーピングによりUV/A領域で発光される割合が増大し得るからである。
【0005】
近年、光重合可能な組成物の放射線硬化のために、UV光を発するLED(発光ダイオード)もますます用いられている。
【0006】
UV硬化のために一般に用いられるLEDシステムは、現在のところ、実際には波長395nmと365nmとに集中している。別の可能なスペクトル範囲は、350nm、375nm、385nmおよび405nmである。学術的な出版物には、そのほかに、210、250nm、275nmおよび290nmの波長も言及されている。LEDは、狭い強度分布(典型的には10〜20nm)によって特徴付けられる。それらは目立ったウォームアップ段階を有さず、かつ最大強度の約10%〜100%に制御可能である。
【0007】
UV発光ダイオードで数ワット/cmの出力レベルを達成することができ、かつ発光効率(Wirkungsgrad)はUV−LEDシステムに応じて1%から20%の間である。その際、以下の大まかな規則が当てはまる:波長が短ければ短いほど、発光効率は低くなる。意図した発光波長が短ければ短いほど、製造コストは高くなる。現在のところ、面硬化のためのLEDシステムは、395nmの波長で1〜4W/cmのUV出力のものと、365nmの波長で0.5〜2W/cmの範囲のものとが、様々な供給元から得られる。
【0008】
国際公開第2008/135865号(WO 2008/135865)は、印刷版を描画ユニット上の光架橋可能な材料で位置決めし、画像データに従って版を描画し、印刷版の描画中に光架橋可能な材料を架橋するためにUV線を複数のUV発光ダイオードから版上に適用することを含む方法を記載しており、その際、印刷版は、光重合可能なフレキソ印刷版、光重合可能な凸版印刷版(Buchdruckplatte)または光重合可能なスリーブであってよい。さらに、描画ユニットから版を取り除き、引き続き複数のUV発光ダイオードからのUV線で、裏面からまたは表面からおよび場合により裏面からも露光することが記載されている。
【0009】
レーザーアブレーションにより生成されたマスクを通してフォトポリマー版をUV光で露光する間に起こる望ましくない作用は、周囲雰囲気からフォトポリマー層中に拡散する酸素による重合の阻害である。これらの層は一般的に数マイクロメートルの厚さしかなく、ひいては周囲空気からの酸素が該層を通って拡散し得るほど薄いため、他の技術によってデジタル描画可能な層を用いたときに同じ作用が起こる。
【0010】
フレキソ印刷凸版(Flexodruckklischees)は、種々の基材(フィルム(Folie)、紙、厚紙、ボール紙)の印刷に用いられる。その際、通常、アルコールもしくは水をベースとする低粘度の印刷インキ、またはUV印刷インキが用いられる。
【0011】
フレキソ印刷の典型的な特徴は、レリーフ要素のエッジを超えて低粘度の印刷インキを押し付けることである。この作用は、印刷物の階調値の上昇を招くため望ましくない。この階調値の上昇は、画像再現のコントラストを減少させ、それによって印刷画像の品質を低下させる。
【0012】
近年、いわゆるフラットトップドット(Flat−Top−Dots:(FTD))によってフレキソ印刷の印刷品質を高める開発がいくつか行われている。デジタル加工可能な通常のフレキソ印刷版は、大気中酸素の影響下で露光されるが、FTD法の場合、さらに微細な画像要素を再現することができるようにし、そうすることで解像度、コントラストおよびインキ面積率(Farbdeckung)を高めるために、架橋反応への酸素阻害の影響を排除することが試みられる。
【0013】
露光中に大気中酸素を排除する1つの可能性は、例えば、米国特許出願公開第2009/0186308号明細書(US 2009/0186308)に記載されているように、窒素下で露光することである。他の方法では、米国特許出願公開第2013/0017493号明細書(US 2013/0017493)に記載されているように、表面のUV露光前にフィルムまたは他の酸素バリア層が積層され、そうすることで酸素のその後の拡散が防止される。バリア層は、例えば、米国特許第5262275号明細書(US 5,262,275)または米国特許第8,492,074号明細書(US 8,492,074)に記載されているように、フレキソ印刷版の構造に組み込まれることもできる。または、米国特許第8808968号明細書(US 8,808,968)に記載されているように、架橋反応時に酸素の影響を排除する添加剤を含有する光重合可能な層が記載されている。
【0014】
上記のすべての方法では、より細部にわたってフレキソ印刷版上に再現することが可能である。丸い網点(いわゆるラウンドトップドット、RTD)が形成されている大気中酸素下での露光とは対照的に、FTD法の場合、平らな表面と顕著なエッジを有する網点が形作られる。そのため、より微細な網点、それに高解像度の表面構造を、これらがインキ転移を改善することで、印刷版上に描写することが可能である。
【0015】
しかしながら、FTD法がますます普及するにつれて、印刷におけるこれらの技術に固有の欠点も明らかになる。FTD凸版は、印刷において、いわゆるドットブリッジングの作用を頻繁に示す。それにともなって、当業者は、中間階調領域における個々の網点間で起こる、実際には許容され得ないインキの不規則な集合を割り出す。ドットブリッジングの原因は、これまで明らかになっていない。この作用は、印刷インキの粘度を変えることによってか、またはより高い階調値領域にシフトさせることによって軽減することができるとはいえ、妨害作用を完全に排除することはできない。しかし、FTD印刷版のシャープな輪郭のエッジと関係していることは、酸素下で露光されたRTD印刷版がこの作用を示さないことから容易にわかる。
【0016】
優れたFTD法は、高エネルギーUV−LED放射線によるフレキソ印刷版の露光である。この方法では、酸素は排除されず、その抑制作用が、高エネルギー放射線での露光によって最小限に抑えられる。
【0017】
例えば、国際公開第2012/010459号(WO 2012/010459)には、高エネルギーUV−LED放射線によるフレキソ印刷版の露光と、その後に従来のUV管での露光とを組み合わせたものが記載されている。平面式の実施形態における露光が記載されている。もっとも、経済的な理由から、1つの放射線源で済ますことが望ましい。
【0018】
米国特許出願公開第2011/0104615号明細書(US 2011/0104615)は、UV−LED露光の方法を記載しており、この方法は、有利には、ドラム回転中にドラムの軸と平行に移動するUV−LEDストリップが側方に設けられているドラム露光装置による。ドラムの回転速度、ひいては1回の露光サイクルにつき入力されるエネルギーは変化してよい。オペレーターは、回転速度を選択することによって、フレキソ印刷版上に丸いまたは平らな網点が生成されるか否かを制御することができる。60回転超/分(rpm)の回転速度の場合、丸い網点が形成される。60rpmより低いと、平らな網点が形成される。この作用は、露光中に起こる酸素拡散に基づく。露光エネルギーが低い場合、光重合可能な層の中に存在するかまたはその後に拡散する酸素は、架橋反応を停止させるのに十分である。RTDが形成される。エネルギー線量がより高い場合、ラジカル形成による連鎖開始反応は、連鎖停止反応よりもずっと速く、そのため、酸素の影響は実際にはもはや認められない。FTDが形成される。
【0019】
UV−LED露光の平面式の実施形態も記載されており、その際、UV−LED露光ユニットは、印刷版の幅を前後に案内される一方で、印刷版は、長手方向に移動させられる。しかし、米国特許出願公開第2011/0104615号明細書(US 2011/0104615)は、最適な印刷特性を有するFTD凸版を製造するために、露光プロセスをどのように制御しなければならないのかについて一切言及していない。
【0020】
米国特許第8772740号明細書(US 8,772,740)には、UV−LED露光によりFTDおよびRTDの両方が印刷版上にどのように生成され得るのかが記載されている。この場合、印刷版は、初めにレーザーで書き込まれ、次いでFTDが形成するように露光される。引き続き、印刷版は、もう一度レーザーで書き込まれ、次いでRTDを形成するように露光される。もっとも、この方法は非常に煩雑でコストがかかり、それゆえ、実際には定着していない。
【0021】
米国特許第8578854号(US 8,578,854)には、フレキソ印刷版のUV−LED露光が記載されており、ここで、UV−LED露光ユニットは、リフレクタートンネルに配置されている。このリフレクタートンネル内ではUV−LED放射線がさらに散乱され、こうして、より広い幅で固定された網点を実現することができる。この方法により、平らなおよび丸い印刷版を実現することができる。この文献からは、ドットブリッジングなどの問題を解消するために、露光をどのように制御すべきなのかを読み取ることはできない。
【0022】
最後に、国際公開第2014/035566号(WO 2014/035566)は、UV−LEDにより露光されるフレキソ印刷版を記載しており、ここで、露光は、2つの異なる波長(365nmおよび395nm)で行われる。このタイプの露光は、良好な印刷結果を得るために、網点の固定およびフランク角を可能にすると言われている。しかし、2つのUV−LEDストリップによる露光は高価である。この文献からは、網点印刷におけるドットブリッジの問題をどのように無くすことができるのかを読み取ることはできない。
【0023】
本発明の課題は、従来技術の欠点に対処する、フレキソ印刷版を製造するための安価な方法を提供することである。特に、本発明の課題は、網点印刷におけるインキブリッジの形成(いわゆるドットブリッジング)などのFTD凸版の典型的な好ましくない外観特徴が現れることなく、表面構造による印刷画像の高解像度、ひいては高いコントラストおよび良好なインキ転移を可能にする印刷FTD凸版へとUV−LED露光によりレーザー描画可能なフレキソ印刷版を加工することができる方法を提供することである。
【0024】
該課題は、
フレキソ印刷版を製造する方法であって、出発材料として光重合可能なフレキソ印刷要素を用い、該フレキソ印刷要素が、積み重ねて配置されて、
・ 寸法安定性の支持体と、
・ エラストマーバインダー、エチレン性不飽和化合物および光開始剤を少なくとも含む、光重合可能な少なくとも1つのレリーフ形成層と、
・ デジタル描画可能な層と
を少なくとも含み、
かつ該方法が、少なくとも以下の工程:
(a)デジタル描画可能な層の描画によってマスクを生成する工程、
(b)マスクを通して光重合可能なレリーフ形成層を化学線で露光し、かつ層の画像領域の光重合を行う工程、および
(c)レリーフ形成層の光重合されていない領域を有機溶剤で洗浄することによってか、または熱現像によって、光重合された層を現像する工程を含む該方法において、
工程(b)が、複数のUV−LEDからの100〜10000mW/cmの強度を有する化学線での2回以上の露光サイクル(b−1)〜(b−n)を含み、ここで、1回の露光サイクルにつき光重合可能なレリーフ形成層に入力されるエネルギーが、0.1〜5J/cmであることを特徴とする方法によって解決される。
【0025】
UV−LEDによる高い露光強度で光重合可能な層を露光すると、印刷レリーフ層の網点のいわゆる「カッピング(Cupping)」が最小限に抑えられ、かつ網点間の深さが、露光エネルギー全体を単一の露光工程において入力せずに、複数の露光サイクルに分配した場合に拡大され得ることを見出した。
【0026】
光重合可能な層に全体で入力されるエネルギー(J/cm)は、印刷版の反応性に応じて設定される。フレキソ印刷版の架橋に必要な典型的なエネルギーは、5〜25J/cmの範囲である。
【0027】
本発明の1つの好ましい実施形態では、工程(b)における光重合可能なレリーフ形成層への全エネルギー投入量は、5〜25J/cmである。
【0028】
本発明によれば、このエネルギーは、1回の露光工程において光重合可能な層に入力されるのではなく、複数の部分露光(露光サイクル)に分配され、好ましくは、少なくとも3回の部分露光が実施される。
【0029】
本発明の1つの実施形態では、1回の露光サイクルにつき入力されるエネルギーは、露光工程(b)の全継続時間にわたって一定のままである。
【0030】
例えば、0.1〜1J/cmの入力エネルギーで10〜50回の露光サイクルが実施される。
【0031】
1つの好ましい実施形態では、1回の露光サイクルにつき入力されるエネルギーは、露光工程(b)の全継続時間にわたって増加し、すなわち、あとの露光サイクルでは、その前の露光サイクルよりも高いエネルギーが入力される。
【0032】
1つの好ましい実施形態では、低い入力エネルギーによる複数の露光サイクルが初めに実施され、引き続き、より高い入力エネルギーによる1回以上の露光サイクルが実施される。
【0033】
例えば、初めに0.1〜1J/cmの入力エネルギーによる10〜40回の露光サイクルと、引き続き2〜5J/cmによる1〜5回の露光サイクルとが実施される。
【0034】
一般的に、工程(b)で用いられるUV−LEDは、350〜405nmの波長範囲、例えば350nm、365nm、375nm、385nm、395nmまたは405nmに発光極大を有する。
【0035】
有利には、個々の露光サイクル(b−1)〜(b−n)は、複数のUV−LEDをフレキソ印刷要素の表面と平行に移動させることによって実行される。好ましくは、ここで、複数のUV−LEDは、フレキソ印刷要素の表面と平行に移動させられる1つ以上のLEDストリップ上に配置される。ここで、1つのLEDストリップまたは複数のLEDストリップは、移動可能であってよいか、またはLEDストリップは、固定されており、かつフレキソ印刷要素の表面は移動可能であってよいか、または両方の手段が実行されていてよい。
【0036】
本発明1つの実施形態では、複数のUV−LEDは、少なくとも2つのUV−LEDストリップ上に並べて配置されており、そのうち少なくとも1つは移動可能であり、かつ少なくとも1つは固定されている。
【0037】
一般的に、UV−LEDストリップは、フレキソ印刷要素の表面と平行に50〜5000mm/分の相対速度で移動させられる。
【0038】
露光工程(b)は、有利には、フレキソ印刷要素の表面に沿って移動させられる1つ以上のUV−LEDストリップによって、幅Xおよび長さYを有するXYステージ上で行われる。1つのUV−LEDストリップまたは複数のUV−LEDストリップは、通常、XYステージの幅にわたって延在し、ひいては露光装置の幅全体をカバーする。露光中、UV−LEDストリップは、印刷版の全長にわたって長手方向に速度を変えて前後に数回移動させられる。その長さは、例えば2mに達し得る。ここで、本発明の1つの実施形態では、UV−LEDストリップが一方向に動かされる方法の場合にのみ露光が行われる。本発明の別の実施形態では、UV−LEDストリップが両方向(前後方向)に動かされる場合にのみ露光が行われる。
【0039】
UV−LEDストリップの出力は、有利には、500〜5000mW/cmの範囲、とりわけ有利には600〜2000mW/cmの範囲である。これは、UVAメーターにより、測定センサーとLEDストリップの保護窓との間で10mm離間して測定される。このために、測定センサーは、露光装置のベースプレート上に位置決めされ、かつ発光UV−LEDストリップは該センサー上を通過し、その際、その極大値が露光強度に相当する強度プロファイルが記録される。フレキソ印刷要素の表面に照射される光量は、UV−LEDストリップと照射表面との間の間隔がより大きい場合、それに応じてより低く、かつUV−LEDストリップと照射表面との間の間隔がより小さい場合、それに応じてより高い。本発明によれば、フレキソ印刷要素の表面に照射される出力(光度)は、100〜5000mW/cm、好ましくは500〜5000mW/cm、とりわけ好ましくは600〜2000mW/cmである。
【0040】
可能な波長は、355nm、365nm、375nm、395nm、405nmであり、好ましい波長は、365nmである。
【0041】
典型的なUV−LEDストリップは、約10mmのビーム窓幅(Strahlfensterbreite)を有し、かつ正方形配置でそれぞれ4つのLEDからなる線状に配置されたLEDアレイから構成されており、そのためLEDストリップの全長にわたって均一な光度が放射される。
【0042】
例えば、長さ1mの典型的なLEDストリップにおいては、合計125個のLEDアレイ、それに応じて500個の個々のLEDが配置されている。
【0043】
UV−LEDアレイはまた、より大きな面積を照射するために千鳥状にされて配置されていてもよい。もっとも、その場合、UV−LEDストリップには、好ましくは照射面積の均一な照度を保証するために、好ましくは側面にミラーが取り付けられなければならない。
【0044】
UV−LEDストリップは、通常、ある一定の放射角度で光を放射する。典型的な放射角度は、20〜70度の範囲であり、線状構造のUV−LEDストリップの場合、20〜40度の範囲である。照射される面積要素の幅は、ビーム窓幅、放射角度およびLEDストリップと印刷版表面との間隔から計算することができる。
【0045】
通常、印刷版表面からのストリップの間隔は、5mm〜100mm、好ましくは5〜30mmである。
【0046】
約10mmのビーム窓幅を有する通常のUV−LEDストリップの場合、照射される面積要素の幅は、15〜100mmの範囲であり、版表面から約10mmの短い間隔の場合、15mmから40mmの間である。
【0047】
UV−LEDストリップがフレキソ印刷要素の表面に対して移動する速度は、50mm/分〜10000mm/分、好ましくは100mm/分〜5000mm/分の範囲である。
【0048】
本発明の別の好ましい実施形態では、UV−LEDストリップは、低い入力エネルギーによる露光サイクルでは前後に送られ、かつ出発位置に戻るときにはスイッチが切られず、引き続き、高い入力エネルギーによる露光サイクルでは、一方向でのみ送られ、つまり出発位置に戻るときにはスイッチが切られる。こうして、全体の露光時間を実質的に短縮することができる。
【0049】
照射時間は、版表面に対するUV−LEDストリップの速度および版表面の照射面積要素の幅から算出することができる。UVA測定装置を用いて算出されるUV−LED放射線の平均出力により、そのとき1回の露光サイクル当たりの入力エネルギーを算出することができる。
【0050】
したがって、例えば、LED露光装置のUVA出力が800mW/cmであり、照射面積要素の幅が25mmであり、かつ典型的な送り速度が250mm/分の場合、照射時間は6秒であり、かつ入力エネルギーは4.8J/cmである。
【0051】
上記出力範囲におけるUV−LEDストリップを用いたフレキソ印刷版の照射に際しては、印刷版に局所的な強い加熱が生じる可能性がある。特に、運転動作が遅く、かつ出力が高い場合、印刷版は、短時間で80℃までの温度に達する可能性がある。温度上昇を抑えるために、LEDストリップと印刷版表面との間でエアナイフを冷却のために設けることが有利である。さらに、吸収および化学反応によって発生した熱を再び迅速に除去するために、露光装置のベースプレートを冷却することが可能であるべきである。
【0052】
当然ながら、複数の部分露光工程(露光サイクル)における本発明によるUV−LED露光は、印刷版がXYステージ上に固定されたままであり、かつUVA−LEDストリップがその上を移動する実施形態に限定されない。
【0053】
特に、印刷版が一定速度で搬送され、かつ個々の処理工程を経る自動式の版処理システムにおいては、個々の露光サイクルは、版がその下を通過する複数の固定されたUVA−LEDストリップにより実行される。
【0054】
別の変形例では、印刷板は一定速度で搬送され、かつUVA−LEDストリップは、低い入力エネルギーで露光サイクルを実行するために、搬送速度よりも高速で搬送方向に前後に送られる。引き続き、UVA−LEDストリップは、より高い入力エネルギーによる露光サイクルが実行される露光セクション端部の静止位置に送られる。UV−LEDストリップの出力はほぼ無限に制御可能であるため、ここでは数多くの変形例が考えられる。
【0055】
あるいは、低いエネルギーによる部分露光は、UVA−LEDストリップをウェブ方向に沿って取り付け、かつ前後に移動させ、そして露光セクション端部で、そのときに第二または第三のUVA−LEDストリップが搬送方向を横切って通過するように実行することもできる。
【0056】
UVA光の照射中に印刷版中で起こるプロセスは複雑である。複数のプロセスが並行して進み、これらは、あとの印刷にとって最適な網点形状の形成を説明することができ、かつ影響を及ぼすことができるようにするために、三次元で考慮する必要がある。
【0057】
UVA光の吸収後、印刷版中に存在する光開始剤分子は2つのラジカルに分解する。形成されるラジカルは、印刷版中に存在する低分子量架橋剤とラジカル連鎖反応において反応する。架橋剤は多官能性であるため、重合によって網目構造が形成し、これにより印刷版の露光領域は不溶性となる。光重合の速度は、一般に非常に速く、かつ第一近似において利用可能な架橋剤と利用可能なラジカルの濃度とに依存する。
【0058】
ラジカル連鎖反応は、酸素の存在によって阻害され、というのも、酸素は反応性ラジカルを捕捉し、かつより安定で、更なる重合にもはや利用可能でないラジカルに変換するからである。
【0059】
典型的な管状露光の場合、印刷版は、低い出力(約20mW/cm)のUVA光で約10分間照射される。この低い出力の場合、連鎖開始反応の速度は、連鎖停止反応の速度と同じオーダーである。それゆえ、印刷版の露光領域では、酸素による停止反応が、ラジカル形成によって開始される重合に対する競合反応として進行する。周囲空気からの酸素は、印刷版の表面でその後に拡散する可能性がある。したがって、管状露光の場合、通常、網点は印刷版の表面上で正確には結像されず、丸いドット表面を有する。当業者は、いわゆるラウンドトップドット(RTD)と呼ぶ。
【0060】
UV−LED露光の場合、ずっと短縮された時間で、より高い放射線量が版中に入力される。典型的なUV−LED露光の場合、照射される出力は約1000mW/cmである。通常の照射幅が約30mmで、かつ送り速度が100〜5000mm/分の場合、露光時間は1分未満であり、たいていの場合、数秒間の範囲である。これらの条件下で、光重合可能な層の露光領域における光吸収によって生成されるラジカルの濃度は、管状露光の場合よりも桁違いに高い。連鎖開始反応は、連鎖停止反応よりもずっと速い。光重合可能な層の中に存在するか、またはその後に拡散する酸素は、光重合に実質的な影響をもはや及ぼさない。それゆえ、網点は、未露光領域との境界に至るまで正確に結像される。シャープなエッジを有する網点が形成される。当業者は、いわゆるフラットトップドット(FTD)と呼ぶ。
【0061】
本発明によれば、FTD網点が形成されるように露光が行われる。連鎖開始反応は、酸素によって引き起こされる連鎖停止反応よりも非常に速い。それにもかかわらず、酸素の存在とその後の酸素の拡散とは、印刷版の露光領域と未露光領域との境界で依然として顕著な役割を果たす。
【0062】
特定の理論に縛られることなく、UV−LED露光条件下で考慮されるべき更なる効果があると推測される。高い露光強度によって、印刷版の露光領域中で架橋剤が突如減少する。引き続き、反応は、拡散制御下で進行し、かつ隣接する未露光領域からの架橋剤の拡散によって与えられる。しかし、架橋剤の拡散は比較的遅く、それゆえ、画像領域と非画像領域との境界付近の狭い領域でのみ作用する。現在行われている調査から、拡散作用は、露光領域の周り数μm(10〜100μm)の間隔でしか実質的な役割を果たさないと結論づけることができる。架橋剤の拡散によって、印刷版の未露光領域と露光領域との境界において、網点のドット形状、特に網点のエッジを実質的に決定する材料輸送が顕著になる。画像要素の境界で測定可能なエッジが形成する現象は、当業者に知られている。それはカッピングと呼ばれる。しかし、いわゆるカッピングと光重合可能な層中での架橋剤の拡散との関係はこれまで認められていなかった。
【0063】
したがって、高エネルギーUV−LED放射線でフレキソ印刷版を露光する場合、(1)光吸収およびラジカル形成、(2)重合、(3)光重合可能な層の中への酸素の拡散および連鎖停止、ならびに(4)光重合可能な層の中での架橋剤の拡散のプロセスとは互いに競合し、かつ相互作用してレリーフ要素の形状、ひいてはそれらの印刷挙動を決定する。
【0064】
フレキソ印刷要素の表面レベルでの光強度は、較正された適切なUV測定装置を使用して測定され、ここで、測定装置のセンサーは、版表面と放射線源との間隔と同じ間隔で放射線源から離れて配置される。適切なUV測定装置は、様々な提供元から市販されている。ここで重要なのは、測定装置が、試験されるUV波長範囲内で感度の良いものであり、かつ較正されていることである。
【0065】
円筒形のフレキソ印刷版を製造する場合、いわゆる円形露光装置を用いることも可能であり、この場合、この装置は1つ以上のLEDアレイを含む。
【0066】
一般的に、フレキソ印刷要素の裏面予備露光が実施される。このために、光重合可能な材料の層が、工程(b)の実施前に、光重合可能なフレキソ印刷要素の裏面からUV透過性の支持体フィルムを通して化学線で予備露光される。裏面予備露光は、有利には、≧1mmの厚みを有するフレキソ印刷要素において実施され、ここで、この値は、寸法安定性の支持体フィルムと光重合可能な層との合計に基づく。
【0067】
一般的に、裏面予備露光は、UV管またはUV照射器で行われる。
【0068】
出発材料として用いられる光重合可能なフレキソ印刷要素は、積み重ねて配置されて、
・ 寸法安定性の支持体と、
・ エラストマーバインダー、エチレン性不飽和化合物および光開始剤を少なくとも含む、光重合可能な少なくとも1つのレリーフ形成層と、
・ レーザーアブレーションによってデジタル描画可能な層と
を少なくとも含む。
【0069】
この方法の出発材料として用いられる光重合可能なフレキソ印刷要素用の適切な寸法安定性の支持体の例は、シート、フィルムならびに円錐形および円筒形の管(スリーブ)であって、鋼、アルミニウム、銅もしくはニッケルなどの金属製のもの、またはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド、ポリカーボネートなどのプラスチック製のもの、場合によりまたガラス繊維織物などの織物および不織布、ならびに、例えばガラス繊維とプラスチックとからの複合材料製のものである。寸法安定性の支持体として、中でも、例えば、ポリエステルフィルム、特にPETもしくはPENフィルムなどの寸法安定性の支持体フィルム、または、鋼製、好ましくは、ステンレス鋼製、磁化可能なバネ鋼製、アルミニウム製、亜鉛製、マグネシウム製、ニッケル製、クロム製または銅製の薄い金属板もしくは金属フィルムなどの可撓性の金属支持体が考慮される。
【0070】
フレキソ印刷要素の裏面予備露光が実施される場合、寸法安定性の支持体は、UV光に対して透過性でなければならない。好ましい支持体は、PET製または他のポリエステル製のプラスチックフィルムである。
【0071】
フレキソ印刷要素は、少なくとも1つの光重合可能なレリーフ形成層をさらに含む。光重合可能なレリーフ形成層は、支持体上に直接施与されていてよい。一方で、支持体とレリーフ形成層との間には、例えば接着層および/または弾性下地層などの他の層も存在していてよい。
【0072】
場合により接着層で被覆された支持体フィルムと、光重合可能なレリーフ形成層との間には、エラストマー支持体層が配置されていてもよい。支持体層は、任意に、圧縮的または光化学的に架橋可能であってよい。
【0073】
光重合可能なレリーフ形成層は、少なくとも1つのエラストマーバインダー、エチレン性不飽和化合物、光開始剤または光開始剤系、ならびに任意に1種以上の更なる成分、例えば、可塑剤、加工助剤、染料およびUV吸収剤を含む。
【0074】
フレキソ印刷要素を製造するためのエラストマーバインダーは、当業者に知られている。親水性バインダーおよび疎水性バインダーの両方を用いることができる。例として、スチレン−ジエンブロックコポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリエチレンオキシド−ポリビニルアルコールグラフトコポリマー、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン−イソプレンゴム、ポリノルボルネンゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が挙げられる。好ましくは、疎水性バインダーが用いられる。この種のバインダーは有機溶剤中に可溶性であるか、または少なくとも膨潤性である一方で、それらは水中ではほとんど不溶性であり、かつ水中では膨潤性ではないか、または少なくとも実質的に膨潤性ではない。
【0075】
エラストマーは、好ましくは、アルケニル芳香族化合物と1,3−ジエンとの熱可塑性エラストマーブロックコポリマーである。ブロックコポリマーは、直鎖状、分岐状またはラジアル状のブロックコポリマーであってよい。通常、それらはA−B−Aタイプのトリブロックコポリマーであるが、しかし、A−Bタイプのジブロックコポリマーであるか、または交互に現れる複数のエラストマーブロックと熱可塑性ブロックとを有するコポリマー、例えばA−B−A−B−Aであってもよい。2種以上の異なるブロックコポリマーの混合物を用いることもできる。市販のトリブロックコポリマーは、頻繁に特定の割合のジブロックコポリマーを含有する。ジエン単位は、1,2−または1,4−結合であってよい。スチレン−ブタジエン型またはスチレン−イソプレン型のブロックコポリマーだけでなく、スチレン−ブタジエン−イソプレン型のブロックコポリマーも用いることができる。それらは、例えば、Kraton(登録商標)の名称で市販されている。さらに、Styroflex(登録商標)の名称で入手可能である、スチレン末端ブロックと統計スチレン−ブタジエン中間ブロックとを有する熱可塑性エラストマーブロックコポリマーを用いることも可能である。ブロックコポリマーはまた、例えばSEBSゴムなどにおけるように、完全にまたは部分的に水素化されていてもよい。
【0076】
極めて好ましくは、光重合可能なレリーフ形成層中に含まれるエラストマーバインダーは、Aがスチレンであり、かつBがジエンであるA−B−A型のトリブロックコポリマーまたは(AB)型のラジアルブロックコポリマーである。
【0077】
極めて好ましくは、エラストマー支持体層中に含まれるエラストマーバインダーは、Aがスチレンであり、かつBがジエンであるA−B−A型のトリブロックコポリマー、(AB)型のラジアルブロックコポリマー、ならびにスチレンとジエンとの統計コポリマーおよびランダムコポリマーである。
【0078】
当然ながら、レリーフ形成層の特性に悪影響を及ぼさない限り、複数のバインダーの混合物を用いることも可能である。
【0079】
バインダーの総量は、レリーフ形成層の場合、通常、該レリーフ形成層の全成分の合計に対して、40〜90重量%、好ましくは40〜80重量%、とりわけ好ましくは45〜75重量%である。
【0080】
場合により存在するエラストマー支持体層の場合、エラストマーバインダーの総量は、100重量%までであってよい。通常、75〜100重量%、好ましくは85〜100重量%、とりわけ好ましくは90〜100重量%である。
【0081】
光重合可能なレリーフ形成層は、知られているとおり、バインダーと相溶性である少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物をさらに含む。適切な化合物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ重合可能である。それゆえ、これらを以下ではモノマーと呼ぶ。とりわけ有利であると判明したのは、アクリル酸もしくはメタクリル酸と一価もしくは多価アルコールとのエステルまたはアミド、アミン、アミノアルコールまたはヒドロキシルエーテルおよびヒドロキシルエステル、フマル酸もしくはマレイン酸のエステル、ビニルエーテル、ビニルエステルまたはアリル化合物である。適切なモノマーの例は、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、テトラデシルアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジオクチルフマレートおよびN−ドデシルマレイミドである。極めて好ましいモノマーは、モノアクリレート、ジアクリレートおよびトリアクリレートならびにモノメタクリレート、ジメタクリレートおよびトリメタクリレートである。当然ながら、複数の異なるモノマーの混合物を用いることもできる。モノマーの種類と量は、層の所望の特性に従って当業者により選択される。光重合可能なレリーフ形成層a)中のモノマーの量は、通常では、全成分の量に対して20重量%以下であり、一般的に3重量%から15重量%の間である。
【0082】
基本的に知られているとおり、光重合可能なレリーフ形成層は、少なくとも1種の光開始剤または光開始剤系をさらに含む。適切な開始剤の例は、メチルベンゾインまたはベンゾインエーテルなどのベンゾインまたはベンゾイン誘導体、ベンジルケタールなどのベンジル誘導体、アシルアリールホスフィンオキシド、アシルアリールホスフィン酸エステル、α−ヒドロキシケトン、多環キノンまたはベンゾフェノンである。レリーフ形成層中の光開始剤の量は、一般に、該レリーフ形成層の全成分の量に対して0.1〜5重量%である。
【0083】
同様に、エラストマー支持体層は、前述のエチレン性不飽和化合物と前述の光開始剤とを含んでよく、好ましくはそれらを含み、つまりレリーフ形成層のように光重合可能である。一般的に、支持体層中のエチレン性不飽和化合物の量は0〜15重量%である。一般的に、支持体層中の光開始剤の量は0〜5重量%である。
【0084】
レリーフ形成層および場合により任意のエラストマー支持体層は、可塑剤を含んでよい。異なる可塑剤の混合物も用いることができる。適切な可塑剤の例には、変性されたおよび未変性の天然油および天然樹脂、例えば高沸点パラフィン系、ナフテン系もしくは芳香族系の鉱油、合成オリゴマーまたは合成樹脂、例えばオリゴスチレン、高沸点エステル、オリゴマースチレン−ブタジエンコポリマー、オリゴマーα−メチルスチレン/p−メチルスチレンコポリマー、液状オリゴブタジエン、特に、500g/モルから5000g/モルまでの間の分子量を有するもの、または液状のオリゴマーアクリロニトリル−ブタジエンコポリマーもしくはオリゴマーエチレン−プロピレン−ジエンコポリマーが含まれる。好ましいのは、ポリブタジエン油であって、特に、500g/モルから5000g/モルまでの間の分子量を有するもの、高沸点脂肪族エステルであって、特に、アルキルモノカルボン酸エステルおよびアルキルジカルボン酸エステル、例えばステアリン酸エステルまたはアジピン酸エステルなど、ならびに鉱油である。任意に存在する可塑剤の量は、層の所望の特性に従って当業者により決定される。この量は、通常では、光重合可能なレリーフ形成層の全成分の合計の50重量%を超過せず、一般的に、該量は、0〜50重量%、有利には0〜40重量%である。
【0085】
レリーフ形成層の厚さは、一般的に0.3〜7mm、好ましくは0.5〜6mmである。
【0086】
1つの好ましい実施形態では、スチレン−ブタジエン型のバインダーが用いられる。とりわけ好ましいバインダーは、スチレン−ブタジエン型の直鎖状、ラジアル状または分岐状のブロックコポリマーである。これらのブロックコポリマーは、80000〜250000g/モル、好ましくは80000〜150000g/モル、とりわけ好ましくは90000〜130000g/モルの平均分子量M(重量平均)を有し、かつ20〜40重量%、好ましくは20〜35重量%、とりわけ好ましくは20〜30重量%のスチレン含有率を有する。
【0087】
本発明の別の好ましい実施形態では、バインダーは、スチレン−イソプレン型のものである。スチレン−イソプレン型の好ましいバインダーは、一般に13〜40重量%、好ましくは13〜35重量%、とりわけ好ましくは14〜30重量%のスチレンを含有する。
【0088】
光重合可能なフレキソ印刷要素は、当業者に基本的に知られている方法に従って、例えば、溶融押出、流し込み成形またはラミネート加工を単段もしくは多段の製造手順で行うことによって製造することができる。好ましいのは、レリーフ形成層の成分をまず押出機中で加熱しながら互いに混合する溶融押出による製造である。平面状のフレキソ印刷要素を製造するために、光重合可能な組成物を、押出機からスロットダイを通して2枚のフィルム間に排出し、この層複合体をカレンダー加工してよく、ここで、フィルムの種類は、所望の使用目的に従う。これは、光重合可能な層との良好な接着力を示すフィルムであるか、または容易に剥離可能な(一時的な)フィルムである。平面状のフレキソ印刷要素を製造するために、通常、十分に接着性の支持体フィルムと剥離可能なカバーフィルムとが用いられる。光重合可能な層の厚さは、一般的に0.4〜7mm、好ましくは0.5〜4mm、とりわけ好ましくは0.7〜2.5mmである。
【0089】
デジタル描画可能な層の描画は、デジタルマスクを用いて行われる。この種のマスクは、In−situマスクとしても知られている。このために、デジタル描画可能な層が光重合可能なレリーフ形成層にまず施与される。好ましくは、デジタル描画可能な層は、IRアブレーション層、インクジェット層またはサーモグラフィー的に書き込み可能な層である。好ましくは、デジタル描画可能な層は、IRレーザーによりアブレーション可能な(IRアブレーション)層である。
【0090】
IRアブレーション層またはマスクは、化学線の波長を通さず、かつ少なくとも1種のバインダー、例えばカーボンブラックなどのIR吸収剤およびUV線に対する吸収剤を通常含み、ここで、IR吸収剤とUV吸収剤の機能は、ただ1つの物質により果たされることができ、これは、例えば、カーボンブラックがIR吸収剤として使用される場合がそうであり、というのも、カーボンブラックは十分な濃度においてマスク層をUV光に対して実質的に不透過性にするからである。マスクは、IRレーザーによってIRアブレーション層に書き込まれることができ、すなわちレーザービームが当てられる箇所で層が分解され、かつ除去される。形成されたマスクを通して化学線で像様に照射されることができる。IRアブレーションマスクでフレキソ印刷要素を描画するための例は、例えば、欧州特許出願公開第654150号明細書(EP-A 654 150)または欧州特許出願公開第1069475号明細書(EP-A 1 069 475)に開示されている。
【0091】
インクジェット層の場合、インクジェットインキで書き込むことができる層、例えばゼラチン層が塗布される。これは、インクジェットプリンターによって描画可能である。例は、欧州特許出願公開第1072953号明細書(EP-A 1 072 953)に開示されている。
【0092】
サーモグラフィー層は、熱の影響下で黒色に変わる物質を含有する層である。この種の層は、例えばバインダーおよび有機銀塩を含み、かつサーマルヘッドを有するプリンターまたはIRレーザーによって描画されることができる。例は、欧州特許出願公開第1070989号明細書(EP-A 1 070 989)に開示されている。
【0093】
本発明による方法は、例えば、コンベヤベルト上に載せることによって、またはマガジンに備え付けることによって、出発材料をまず受容ユニットに挿入することにより実施することができる。出発材料が保護フィルムを有する場合、これは、受容ユニットが自動除去手段を有していない場合には除去されなければならない。
【0094】
方法工程(a)では、デジタル描画可能な層は、描画ユニットにおいてそれぞれ必要とされる技術を用いて描画される。画像情報は、制御ユニットから直接取り込まれる。
【0095】
方法工程(b)では、描画されたフレキソ印刷要素は、露光ユニットにより、生成されたマスクを通して、化学線、つまり化学的に活性な光によって照射される。
【0096】
方法工程(c)では、像様に描画されかつ露光されたフレキソ印刷要素は、適切な溶剤または溶剤の組合せを用いて現像される。この場合、レリーフ層の未露光領域、すなわちマスクで覆われた領域は除去される一方で、露光された、すなわち架橋された領域は保持される。そのほかに、デジタル描画可能な層の残りの部分が除去される。
【0097】
使用される溶剤または溶剤混合物は、用いられるフレキソ印刷要素の種類に従う。フレキソ印刷要素が水現像可能な光重合可能な層を有する場合には、水または主として水性溶剤を用いることができる。有機現像可能なフレキソ印刷要素の場合には、通常、適切な形で相互作用する異なる有機溶剤の混合物からなるフレキソ印刷版用の既知の洗浄剤が特に適している。例えば、ナフテン系または芳香族系の石油留分からの現像液であって、アルコール、例えば、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、または炭素原子5〜10個を有する脂肪族アルコールと、場合により、例えば脂環式炭化水素、テルペン炭化水素、置換ベンゼン、例えばジイソプロピルベンゼン、炭素原子5〜12個を有するエステルまたはグリコールエーテルなどの更なる成分と混合したものを用いることができる。適切な洗浄剤は、例えば欧州特許出願公開第332070号明細書(EP-A 332 070)または欧州特許出願公開第433374号明細書(EP-A 433 374)に開示されている。
【0098】
現像工程は、通常、20℃より高い温度で実施される。安全上の理由からと現像装置の設備的なコストおよび煩雑性を減らすために、有機溶剤を使用するときの温度は、用いられる洗浄剤混合物の引火点を5℃〜15℃下回るべきである。
【0099】
フレキソ印刷版の乾燥は、方法工程(d)で行うことができる。フレキソ印刷要素がPETフィルムからなる支持体を有する場合、乾燥は、有利には、40〜80℃、とりわけ好ましくは50〜70℃の温度で行われる。フレキソ印刷要素の寸法安定性の支持体が金属支持体である場合、約160℃までのより高い温度で乾燥を行うこともできる。
【0100】
得られたフレキソ印刷版は、方法工程(e)において、必要に応じて、UVA光および/またはUVC光によるデタック後処理にさらに供してよい。通常では、そのような工程が推奨される。異なる波長の光で照射が行われる場合、これは同時にあるいは連続して生じ得る。
【0101】
個々の方法工程間で、フレキソ印刷要素またはフレキソ印刷版は、一方のユニットから次のユニットへとさらに搬送される。
【0102】
現像は、熱的にも行われることができる。熱現像の場合、溶剤は用いられない。代わりに、像様露光後に、レリーフ形成層は吸収性材料と接触させられ、かつ加熱される。例えば、吸収性材料は、多孔性不織布であって、例えば、ナイロン、ポリエステル、セルロースまたは無機材料からなるものである。熱現像の過程で、レリーフ形成層の未重合部分が液化し、かつ吸収性材料により吸収され得るような温度上昇が、フレキソ印刷要素の少なくとも表面上で起こる。引き続き、使用済みの吸収性材料が除去される。熱現像に関する詳細は、例えば、米国特許第3264103号明細書(US 3,264,103)、米国特許第5175072号明細書(US 5,175,072)、国際公開第96/14603号(WO 96/14603)または国際公開第01/88615号(WO 01/88615)に開示されている。マスクは予め、場合により、適切な溶剤を用いて、または同様に熱的に除去されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1】顕著なカッピングを有する凸版のPerthometer(表面測定システム)−測定の結果を示す図
図2】最小限のカッピングを有する本発明により製造された凸版のPerthometer−測定の結果を示す図
図3】顕著なカッピングを有する網点の電子顕微鏡写真を示す図
図4】本発明による最小限のカッピングを有する網点の電子顕微鏡写真を示す図
図5】印刷試験で印刷されたテキストモチーフを示す図
図6】印刷試験VV1およびV1〜V6の印刷特性を示す図
図7】印刷試験VV1、V3、V5およびV6のドットパターンの拡大写真を示す図
【0104】
本発明を、下記の実施例によって詳細に説明する。
【実施例】
【0105】
隆起エッジ(hochstehende Raender)の計測的決定
フレキソ印刷凸版、特に個々の網点の画像要素の隆起エッジの定量的な検出は、些細な問題ではない。エッジは、ほんの数μmの高さであり、かつ光学的な方法で調べることは困難である。
【0106】
網点表面の幾何学的形状を測定するための簡単で迅速な方法は、ダイヤモンドセンサーによる機械的な表面センシングであって、該センサーは、可動式アームに固定されており、かつその変位が測定されて表面プロファイルに換算される(Perthometer−測定)。測定結果の再現性を保証するために、すべての測定は、同一測定条件により同じハーフトーン域(Rasterfeld)(階調値40%、線幅(Linienweite)89LPI)で実施する。
【0107】
測定には、送り装置SD26およびセンシングシステムBFW−250を備えたMahr社のMarSurf M400セットを使用し、5mmの測定距離で0.7mNの測定力を用いる。この測定距離における速度は0.5mm/sであり、かつ10000個の
データポイントを記録する。
【0108】
図1は、顕著な隆起エッジ、すなわち、顕著なカッピングを有する凸版についての典型的なPerthometer−測定結果を示す。これはnyloflex ACE 114 D−凸版であり、該凸版をUV−LED露光により65mm/分の低速シングルパスで露光した。
【0109】
比較のために、図2は、UV−LEDにより4000mm/分の速度で60回のパスで露光したnyloflex ACE 114D−凸版についての相応する測定結果を示す。この場合、網点のエッジはほとんど見られない。カッピングはごく僅かしか現れない。
Perthometer−結果を、電子顕微鏡写真により調べた。図3は、シングルパスでUV−LED露光された凸版の電子顕微鏡写真を示す。図4は、60回のクイックパスでUV−LED露光された凸版の相応する写真を示す。電子顕微鏡写真から、Perthometer測定の結果が一義的に確認される。
【0110】
網点エッジのカッピングまたは高さの定量的な決定のために、以下のとおりPerthometer測定を評価する。網点は、300μmの公称直径を有する。測定ニードルのオーバーシュートによる測定アーチファクトを排除するために、それぞれ網点の右側の(追従する(nachlaufend))エッジのみを測定する。エッジの高さは、(エッジ部で直接測定した)最高値と、それぞれ網点のエッジから30μmの間隔で測定した測定値との差で生じる。フレキソ印刷凸版の典型的なカッピング値は0〜10μmである。
【0111】
光重合可能なフレキソ印刷要素の凸版への加工
印刷版に入力される1回の部分露光(露光サイクル)当たりのエネルギーは、0.1〜5J/cmの範囲で変化する。相応する走行速度は、50mm/分から5000mm/分までの範囲で変化する。市販の大型サイズ(1320mm×2032mm)のUV−LED装置(Flint Group社のnyloflex NExT FV露光装置)を使用した場合、記載した走行速度でのサイクル時間は数秒から数分までである。
【0112】
使用した印刷版は、特にUV−LED光で露光するために開発されたFlint Group社のnyloflex NEF 114 Dフレキソ印刷版であった。
【0113】
フレキソ印刷要素の加工は、以下のステップを包含していた:
− カバーフィルムの剥離
− IRレーザーによる描画(Esko Graphics社のCDI Spark 4835、高解像度光学系Pixel+、マスク解像度4000dpi)
− nyloflex FIII管状露光装置での裏面露光(16秒)
− 表1に記載のUV−LED露光
− nyloflex FIIIウォッシャー中でのnylosolv Aにおけるウォッシュアウト(255mm/分)
− 乾燥(60℃で2時間)
− 光による後処理(UVA光で10分間、UVC光で1分間)。
【0114】
カバーフィルムの剥離後、フレキソ印刷版をIRレーザーのドラムに取り付けた。引き続き、3.0J/cmのレーザーエネルギーで、マスク層にテストモチーフ(図5に示す)を書き込んだ。その後、版の裏面を予備露光し、引き続きUV−LED照射によりメイン露光を行った。
【0115】
UV−LED露光は、Flint Group社の大型サイズのnyloflex NExT FV露光装置で実施した。これは1320mm×2032mmまでの版サイズ用に設計されている。大型サイズの版を露光しているかのごとく各印刷版を露光し、すなわち、露光装置の全長をUV−LEDストリップが移動した。
【0116】
nyloflex NExT FV露光装置のUV−LEDストリップの幅は9mmである。UV光は30°の角度で照射する。LEDストリップと版との間隔は10mmであり、そのため照射幅は20.5mmであった。露光装置の出力は、最大出力の80%(650mW/cmに相当)に設定した。
【0117】
露光は、下記の設定で実施した:
【表1】
【0118】
露光設定はそれぞれ、全体の入力エネルギーがそれぞれ約10J/cmとなるように選択した。大型サイズの運転操作のため、露光時間は比較的長くて25分から45分までの間である。特に明記しない限り、LEDストリップは、出発位置に戻るときにスイッチを切った。そのため、特に、試験V4の場合、露光時間は非常に長くなる。
【0119】
V1では、露光を3回の同一露光サイクルに分けた。
【0120】
V2とV3ではそれぞれ、スローパスを30回のクイックパスと組み合わせた。V4では、クイックパスのみを実行し、かつV5では、露光速度を、高速から中速を経て低速まで下げた。V6では、露光速度はV5と同じであったが、LEDストリップのスイッチを切らずに前後に移動させ、そのため全体的な露光時間が大幅に短縮した。
【0121】
凸版評価
製造した凸版を総合的に評価した。
【0122】
【表2】
【0123】
すべての凸版の硬度は、601で目標範囲内にあった。
【0124】
すべての凸版は、平らでシャープな輪郭の表面の網点(いわゆるフラットトップドット)を有していた。凸版上の第1の十分に固定されたハーフトーン域は、驚くべきことに、特に大きな変化を示さず、かつ約2%であった。試験V4の露光設定のみが3.2%の階調値の値でもって僅かに劣っていた。比較のために:124lpiの線幅で、UVA管を用いて露光されたフレキソ印刷版は、通常、凸版上で6%から8%の間の階調値しか保持することができない。
【0125】
注目すべき点は、露光設定がカッピングおよび200μm−ネガティブドットの深さに及ぼす影響であった。比較試験と同様に、試験設定V1およびV2では、深さの値は、低いものでしかなかった。これらの露光設定は、スロー動作または第一の露光パスとしてのスロー動作を特徴としていた。露光の最後になってスローパスが行われる試験V3は、他の本発明による試験のように、再び非常に良好な(高い)ドット間の深さを示す。
【0126】
印刷レリーフの網点のカッピングも同様の依存性を示す。スロー動作または露光開始時のUV−LEDストリップのスロー動作をともなう3つの試験設定は、他の試験設定よりも有意に高いエッジを示す。
【0127】
これらの結果から、露光開始時にはまだ高濃度の架橋剤が印刷版中に存在していると解釈することができる。UV−LEDストリップのスロー動作に応じて、露光開始時に高い入力エネルギーを印加すると、顕著なモノマーフローが形成され、これは、一方では、露光領域と未露光領域との境界で隆起エッジを引き起こし、他方では−また印刷版の露光領域と未露光領域との境界で−重合によってネガティブドットの深さ(Zwischentiefe)が減少する結果となる。光重合可能な層の各体積要素について、ラジカル形成、重合、酸素による停止および架橋剤の拡散の競合反応の作用は異なる。フレキソ印刷版の表面では、酸素のその後の拡散が依然として重要であり、かつ露光領域と未露光領域との境界を越えて重合が未露光領域にまで及ぶことを防止する。この場合、モノマーの拡散が、典型的な隆起エッジの形成を決定する。表面から約100μm離れると(微細なネガティブドットの深さの領域中)、酸素はもはや役割を果たさない。酸素は、非画像領域における重合を抑制するのに十分な深さまで光重合可能な層中に拡散しない。露光工程当たりのエネルギー線量が高く、かつ相応してフリーラジカルの濃度が高い場合、これらのラジカルは、非画像領域中に大いに拡散し、そのため重合によって画像ドット間の深さが減少する。
【0128】
露光の最後になって、高い入力エネルギーによるサイクル(UV−LEDストリップのスロー動作)が実施される場合、架橋剤(モノマー)の一部が早くも消費され、かつ高い入力エネルギーにもかかわらず、顕著なモノマーフローがもはや生じなくなる。画像ドット間の深さは詰められておらず、かつ網点のエッジはもはや大きく目立たない。
【0129】
印刷試験
引き続き、凸版を、同一条件下にてフレキソ印刷機で印刷し、かつ得られた印刷物を評価した。
【0130】
印刷パラメーター
印刷機:W&H単胴機
印刷インキ:アルコール性のフレキソ印刷インキFlexistar Cyan
接着テープ:Lohmann 5.3
印刷速度:100m/分
印刷設定:最適(キスプリント設定により+70μm;キスプリントは、全画像要素のおよそ半分が印刷される設定をいう。この場合、印刷シリンダーは、実質的な圧力が印加されることなく、基材とちょうど凸版面とを接触させる)
【表3】
【0131】
ドットブリッジング(Dot−Briding)の発生の影響を受けやすい試験要素として、円形のハーフトーンパターン(図5におけるモチーフA)を印刷した。さらに、それぞれ第一の印刷ハーフトーン域(モチーフB)の階調値と相応の特徴的な階調値ライン(図6を参照されたい)を調べた。表面構造化された全面の色密度(選択された表面ハーフトーンMG34、モチーフC)を、デンシメトリーにより調べた。さらに、印刷画像全体を、コントラスト、ディテールのシャープさおよびインキののりに関して複数の被験者により評価し、かつ3つのカテゴリー(非常に良好、良好、不良)に分類した。
【0132】
すべての凸版は、15%から20%までの間の面積占有率を有する第一のハーフトーン階調値を印刷し、これは124lpiのハーフトーン幅におけるFTD凸版にとって慣例である。同様に、すべての印刷物は、表面ハーフトーンにより構造化された全面の領域で高い色密度を示す。それに対して、構造化されていない表面は、僅か1.50.05の平均色密度をもたらす。
【0133】
30%〜60%の中程度の階調値でのインキブリッジングの問題は、印刷特性および円形ハーフトーンパターン(モチーフA)の印刷物から見られる。図6は、試験VV1およびV1〜V6に関連する印刷特性を示す。印刷特性では、ハーフトーン域を異なる面積占有率で印刷して評価する。印刷物のインキ面積占有率(全面積の光学密度と比較してデンシメトリーにより測定(パーセント))を、データセットの理論面積占有率と対比させる。印刷インキを押し付けることによって、印刷物の面積占有率は、理論的に計算された印刷表面よりも高い。それゆえ、フレキソ印刷における印刷特性は、図の対角線上に典型的な凸状の湾曲部を示す。ハーフトーン画像を表示するためには、この湾曲部が再現可能でかつ一致している必要がある。印刷特性における不一致は、ハーフトーンの再現を不可能にする問題を示す。図7は、印刷試験VV1、V3、V5およびV6の円形ハーフトーンの網点の拡大写真を示す。
【0134】
比較試験VV1では、網点が互いに十分な間隔を有し、かつ互いに接触しないはずであるにもかかわらず、顕微鏡写真における低い階調値でさえもインキブリッジの形成を識別することができる。その他の露光設定では、インキブリッジは示されない。この場合、より大きくて互いにほとんど接触している網点であっても、個々のドットは依然としてきれいに分かれて印刷されていた。
【0135】
印刷特性の比較においても、比較試験VV1の結果は良くない。中間階調値の領域では、印刷特性は低下し、かつ30%〜50%の領域ではほぼ水平な挙動を示す。印刷特性におけるこの凹みは、比較実験VV1において極端に強く現れている。他のすべての露光設定は、連続的に上昇し、かつ一致した印刷特性を示す。
【0136】
印刷結果は、凸版の評価と相互に関連している。したがって、顕著なカッピングおよび画像ドット間の不十分な深さを有する凸版は、高品質のハーフトーン印刷でインキブリッジを形成する傾向がある。低粘度の印刷インキは、基材と接触すると、網点のエッジを超えて押し付けられる。印刷インキは、網点間の平坦な深さに流れ、そこで乾燥する。次の印刷パスでは、最終的に印刷インキブリッジが形成されるまで、このプロセスが繰り返される。
【0137】
これらの試験では、隆起エッジの形成を防止することができ、かつ画像ドット間の十分大きい深さを達成する露光設定が、最適な印刷結果も可能にすることをはっきりと証明している。特に、低い入力エネルギーによる複数の露光(UV−LEDストリップのクイック動作)をまず行って、次いで露光の最後に、より高い入力エネルギーによる1回以上の露光(UV−LEDストリップのスロー動作)を実行する露光設定V3、V5およびV6は、印刷品質の点で最良の結果となる。そのうえ、V6は、短時間の露光で最適な印刷品質を実現する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7